説明

スポットサイズ変換導波路

【課題】平面状の簡易な製造工程で形成可能であり、低コスト化を実現することができるスポットサイズ変換導波路を得る。
【解決手段】この発明に係るスポットサイズ変換導波路は、導波路構造の途中においてコア上部の一定厚み層を平面テーパ状に狭めていく構造、または導波路構造の途中においてコア上部に一定厚み層を積み増し、その積み増し開始位置より段階的に平面テーパ状に前記の層の幅を広げていく構造を有する。この発明によれば、導波路を平面製造プロセスのみで実現でき、工程が簡易化されるため低コスト化が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光導波路の外部光との高効率結合のためのスポットサイズ変換導波路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光導波路の外部光との高効率結合のための光スポットサイズ変換器において、導波路厚み方向のサイズ変換のために、大きなスポットサイズを有する導波路基板上に小さなスポットサイズを有する別導波路を形成し、スポットサイズ変換部を介して接続する構成が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
あるいは、導波路厚みをテーパ状に変化させる立体的な構造が提示されている。しかしながら、製造工程は複雑化していた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−43556号公報
【特許文献2】特開平5−249331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来、導波路厚み方向のサイズ変換のためのスポットサイズ変換器の構造を実現するためには、製造工程が複雑化し、高コスト化していた。
【0006】
この発明は上述した点に鑑みてなされたもので、平面状の簡易な製造工程で形成可能であり、低コスト化を実現することができるスポットサイズ変換導波路を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るスポットサイズ変換導波路は、導波路構造の途中においてコア上部の一定厚み層を平面テーパ状に狭めていく構造、または導波路構造の途中においてコア上部に一定厚み層を積み増し、その積み増し開始位置より段階的に平面テーパ状に前記の層の幅を広げていく構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、導波路を平面製造プロセスのみで実現でき、工程が簡易化されるため低コスト化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るスポットサイズ変換導波路の構造を示す図である。
【図2】図1のスポットサイズ変換導波路部11における電磁界の伝搬シミュレーションの様子の導波路断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るスポットサイズ変換導波路の構造を示す図である。図1において、スポットサイズ変換導波路部11は、下部クラッド層1、リブ構造の導波路コア層2、コア層2の上に形成された上部コア層3により構成される。上部コア層3は、Z軸方向に進むに従い幅がテーパ状に狭まる。また、上部コア層3の手前には上部コア層4が連続的に形成されており、Z軸方向に沿って一定の幅を有している。周囲は空気またはその他の導波路コア層2、上部コア層3より低屈折率の媒質で覆われている(図示せず)。
【0011】
次に動作について説明する。21は位置12の端面に結合する外部からの入射光を表しており、入射光21は、結合後に上部コア層4が形成された導波路部13を伝搬した後にスポットサイズ変換導波路部11へと結合する。スポットサイズ変換導波路部11において、上部コア層3の幅が狭まるにつれて上部コア層3内への光のモードの存在割合が小さくなり、徐々に矢印22に示す方向に光が導波路コア層2へと移行していく。上部コア層3は最終的に消失し、導波路コア層2のみを光が伝搬することとなるため、厚み方向のスポットサイズが小さく変換されることになる。
【0012】
ここで、上部コア層3の先端幅は完全に0とする必要はなく、光のモードの上部コア層3内の存在割合が目標とするスポットサイズ変換損失以下となるように小さく設計すれば良く、製造ルールを不必要に微細化することによる製造コスト増加を避けることができる。
【0013】
図2は、上部コア層3、導波路コア層2の材料をシリコン(屈折率3.5)、下部クラッド層1の材料を酸化シリコン(屈折率1.45)、上部コア層3の厚みを1μm、そのテーパ開始時点での元々の導波路幅を3μm、テーパ距離を50μm、テーパ先端の導波路幅を1μm、リブ構造の導波路コア層2の厚みを1.5μm、リブ高さ5を0.6μm、周囲媒質を空気(屈折率1)としたスポットサイズ変換導波路部11における電磁界の伝搬シミュレーションの様子の導波路断面を示している。入射光21が伝搬にするにつれ、徐々に矢印22に示す方向に上部コア層3から導波路コア層2に光が移行している様子が示されており、テーパ先端の導波路幅が1μmと比較的大きい設計においてもほとんどの電磁界が導波路コア層2に集中することがわかる。シミュレーションでのスポットサイズ変換損失は0.1dB程度と小さい。
【0014】
この構成では、平面状のテーパ構造のみを必要とするため、すなわち、導波路構造の途中において導波路コア層2上部の一定厚みを有する上部コア層3を平面テーパ状に狭めていく構造とするため、平面製造プロセスのみで実現でき、工程が簡易化されるため低コスト化が可能である。
【0015】
また、平面テーパの形成方法としては、例えばシリコンエピタキシャル成長により上部コア層3を堆積する、またはシリコンエッチングにより上部コア層3をテーパ形状に残す、という方法が有効である。前者は、導波路の厚みが一般的に入手可能なウエハの厚みにより制約されるのに対して、さらに厚く積み増すことが可能となる効果がある。後者は、導波路形成で通常必ず用いられる平面エッチング工程のみで厚み方向スポットサイズ変換を実現できる、という効果がある。すなわち、前者は、平面テーパ形状を膜堆積によりボトムアップで形成することができ、後者は、平面テーパ形状をエッチング技術によりトップダウンで形成することができる。
【0016】
実施の形態2.
実施の形態1において、上部コア層3、導波路コア層2の材料をシリコン(屈折率3.5)、下部クラッド層1の材料を酸化シリコン(屈折率1.45)としたが、導波路を構成する材料はこれらに限定するものではなく、上部コア層3および下部クラッド層1の屈折率を導波路コア層2の屈折率以下とし導波路コア層2に光が主に閉じ込められる構成とすれば良い。周囲は導波路コア層2、上部コア層3より低屈折率の媒質とする。
【0017】
実施の形態3.
実施の形態1では、図1に示す位置12の端面を外部光の入射端面と記載したが、逆に位置12を出射端面とし、厚み方向のスポットサイズが大きくなるように変換するためのスポットサイズ変換器としてスポットサイズ変換導波路部11を使用しても良い。すなわち、導波路構造の途中において導波路コア層2の上部に一定厚みの上部コア層3を積み増し、その積み増し開始位置より位置12の出射端面に向けて、段階的に平面テーパ状に上部コア層3の幅を広げていく構造として使用しても良い。
【符号の説明】
【0018】
1 下部クラッド層、2 リブ構造の導波路コア層、3 上部コア層、4 上部コア層、5 リブ高さ、11 スポットサイズ変換導波路部、12 位置、13 導波路部、21 入射光、22 矢印。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導波路構造の途中においてコア上部の一定厚み層を平面テーパ状に狭めていく構造を有する
ことを特徴とするスポットサイズ変換導波路。
【請求項2】
導波路構造の途中においてコア上部に一定厚み層を積み増し、その積み増し開始位置より段階的に平面テーパ状に前記の層の幅を広げていく構造を有する
ことを特徴とするスポットサイズ変換導波路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスポットサイズ変換導波路において、
前記コア上部の一定厚み層の屈折率をその下部層の屈折率以下とする
ことを特徴とするスポットサイズ変換導波路。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のスポットサイズ変換導波路において、
前記平面テーパ形状を膜堆積によりボトムアップで形成する
ことを特徴とするスポットサイズ変換導波路。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか1項に記載のスポットサイズ変換導波路において、
前記平面テーパ形状をエッチング技術によりトップダウンで形成する
ことを特徴とするスポットサイズ変換導波路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−164376(P2011−164376A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27347(P2010−27347)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「超高速光伝送システム技術の研究開発(イーサネット向け超高速省電力光伝送技術)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】