説明

スポロポレニンの使用

本発明は、酸化防止剤として、天然胞子の外皮またはそのフラグメントを、たとえば有効物質を含む配合物に使用することを提供する。さらに、物質または組成物を、天然胞子の外皮またはそのフラグメントにカプセル化するか、外皮またはそのフラグメントに、化学的にまたは物理的に結合させるか、外皮もしくはそのフラグメントと混合することによって、物質または組成物の酸敗またはその他の酸化分解を抑制する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤として、および酸化防止特性を有する送達賦形剤としての、天然胞子の外皮の新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬的におよび栄養薬効的に有効な物質や食品構成成分など、多くの有効物質が、水分を含む環境や水環境で空気または溶存酸素に曝されると酸化を受けやすい。この酸化過程は多くの場合、自然光などに由来する紫外線に曝されることで誘発(すなわち開始または加速)される。とりわけ油などの脂質は酸化されやすい。
【0003】
こうした酸化のされやすさは、有効物質およびそれを含有する組成物の安定性を損なう原因となる。すなわち、効力が低下したり、および/または好ましくない副生物が発生して(たとえば油脂が酸敗すると)食品の風味が損なわれたり、医薬配合物では毒性が増したり、化粧品の外観が悪くなったり、エンジン燃料の場合、運転に問題が発生するなど、広く使用時の性能低下の原因となる可能性がある。
【0004】
有効物質を適当な送達賦形剤中にカプセル化すれば、酸素や紫外線などの環境の影響から有効物質を保護することができる。しかし多くの場合、有効物質を含む送達システムの調製は複雑であり、時間およびコストがかかる。調製した配合物が品質管理および法的な規準を満たし、有効物質の濃度を均質にするためには、サイズおよび形状にバラツキのないカプセル材料をいかにして確保するかということが問題となろう。さらに、カプセル材料のサイズをあまり大きくしないで、所望量の有効物質をカプセル材料に装填することが困難なため、配合物全体の物理的性質で妥協せざるを得なくなるおそれがある。
【0005】
さらに、いかなるカプセル化した物質も意図した使用が行われる時点で適切に放出される必要がある。しかし、使用するまでの間、この物質を確実にカプセル化した状態で保護しておこうとすると、この要件を実現することは必ずしも容易なことではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、有効物質の酸化に対する安定性を高めることで上記の問題を解決または少なくとも緩和することができる、有効物質の配合方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、酸化防止剤として天然胞子の外皮またはそのフラグメントの使用が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
「天然」という表現は、その胞子が生物によって作られたものであることを意味し、その生物は、原核生物か真核生物かの如何を問わないし、また植物か動物かの如何も問わない。胞子(該胞子は、花粉粒のほか、バクテリアなどの内生胞子も含む)は、たとえば植物由来であってもよいし、場合によっては真菌類、藻類、あるいはバクテリアなどの他の微生物であってもよい。
【0009】
胞子の外皮は、天然(“手を加えていない”)胞子を囲む外部被膜(outer coating)である。この外皮は、胞子を有機溶剤、アルカリおよび酸で順次処理して、セルロース内膜層、および外皮に結合していたり外皮内に含まれていたりする脂質、タンパク質、核酸成分などを除去することにより分離可能である。胞子から外皮を分離する方法として酵素法も使用されている。
【0010】
得られる外皮は、本質的には中空の莢構造をしており、典型的には、化学的にも物理的にも極めて安定である一方、不活性で無毒であることで知られている物質であるスポロポレニンを含んでいる(G.Shaw,“The Chemistry of Sporopollenin” in Sporopollenin,J.Brooks,M.Muir,P.Van Gijzel and G.Shaw(編),Academic Press,London and New York,1971,305〜348)。
【0011】
外皮は、既知の方法、たとえば有機溶剤と強酸、強アルカリとを組み合わせた苛酷な処理(例、還流)を使用して、胞子から得られることができる。このような好適な方法は、たとえば国際公開第2005/000280号パンフレット(10頁を参照)および下記実施例に記載されている。別の穏和な方法、たとえば酵素法(S.Gubatz,M.Rittscher,A.Meuter,A.Nagler,R.Wiermann,Grana,Suppl.1(1993)12〜17;K.Schultze Osthoff,R.Wermann,J.Plant Physiol.,131(1987)5〜15;F.Ahlers,J.Lambert,R.Wiermann,Z.Naturforsch.,54c(1999)492〜495;C.Jungfermann,F.Ahlers,M.Grote,S.Gubatz,S.Steuernagel,I.Thom,G.Wetzels and R.Wiermann,J.Plant Physiol.,151(1997)513〜519)も使用可能である。さらに別の方法として、高圧法を使用し、胞子の外皮層に存在する天然の孔から胞子内の内容物を絞り出すこともできる。この方法を使ってタンパク質または炭水化物を除去した場合、元の胞子の形態を大部分無傷で残したままで外皮を得ることができる。
【0012】
たとえばLycopodium clavatumの場合、スポロポレニンのみからなる外皮を得ることもできるし、任意選択的にキチン、グルカンおよび/またはマンナンなどの他の物質を少量含む、本質的にスポロポレニンからなる外皮を得ることもできる。元の胞子に含まれていたタンパク質の大部分は除去されている。
【0013】
薬物および栄養物質を送達する賦形剤として、胞子から誘導される外皮の使用は、国際公開第2005/000280号パンフレットによって公知である。有効物質は、外皮に化学的にまたは物理的に結合するか、外皮内にカプセル化される。外皮が、カプセル化された有効物質と、たとえば大気中の酸素との間の物理的障壁、あるいは光分解を防止する物理的障壁として機能可能であることに関して上記公報を参照。
【0014】
公知記載からの予想を超えて、本発明者は、天然胞子の外皮そのものが酸化防止剤として機能し、物質、具体的には脂質および脂質様物質を酸化から保護することを見いだした。たとえば、油中に酸素を通気すると、酸化反応によって油は急速に酸敗して刺激臭を発する。しかしその油を胞子から誘導される外皮内にカプセル化すると、下記実施例に示すように酸化速度は著しく低下する。
【0015】
この抗酸化効果は、たとえ物質がその外側にあっても、外皮と理想的に接触している、あるいは外皮と混合していると見られるので、外皮が単に酸素の進入を阻止する物理的な障壁として働くことによるものではない。また、国際公開第2005/000280号パンフレットに記載されているように、胞子から誘導される外皮は少なくとも部分的に多孔性であって微細孔を有しており、外皮層を分離するときに、この孔を通して脂質、タンパク質、核酸および炭水化物を取り去ることができる一方、外皮に有効物質を含浸させると、この孔を通して有効物質を通過させることができることも知られている。この細孔は大気中の酸素の進入を許し、外皮中にカプセル化された物質と接触するのではないかと予想されるが、実際には、たとえ酸素が孔を通過できても、カプセル化された物質の酸化は阻止されることが明らかにされている。
【0016】
それゆえ外皮それ自身、あるいは少なくとも外皮表面が酸化防止剤として機能しているように思われる。かくして本発明の文脈では、酸化防止剤としての使用は、酸化に対する物質または組成物の本来の抵抗性を高めるための使用を意味する。本発明によって提供される抗酸化効果にはこのような保護が付随するとはいっても、酸素との接触から単に物理的に保護することを包含しようとするものではない。
【0017】
本発明によれば、外皮は適当な天然胞子から導かれることができ、その由来は植物または動物の如何を問わない。この文脈で使用される「植物」という表現は、最も広い意味に解釈されるべきであり、たとえば、コケ類、真菌類、藻類裸子植物、被子植物およびシダ種子類を包含する。また、「胞子」という表現は、シダ類、コケ類および真菌類が形成する真性胞子だけでなく、種から出る植物(種子植物))が作る花粉粒やバクテリアなどの内生胞子も包含する。
【0018】
上記のような胞子が得られる好適な生物種の例を挙げれば下記のとおりである。二番目の欄は胞子の直径である。
【0019】
【表1】

本発明で使用される外皮としては、国際公開第2005/000280号パンフレットの特に4、8、9頁および実施例1に記載のタイプが可能である。外皮を抽出できるその他の胞子は、国際公開第2005/000280号パンフレットの8頁に引用されている文献に開示されている。
【0020】
本発明によれば、外皮は、それを添加される物質またはそれが使用される組成物(これには配合物を含む)の酸化安定性を高めるために使用可能である。それゆえ外皮は、その物質または組成物の酸化を遅らせるために使用可能である。
【0021】
外皮は、物質または組成物を紫外線によって誘発される酸化から保護するために使用可能である。ここでも、それは単に物理的に紫外線から保護する(すなわち遮蔽)ことを意味するものではない。それどころか、天然胞子の外皮は本来、太陽光を遮蔽する能力が比較的低いにもかかわらず、紫外線の存在下で物質の酸化傾向を抑制する能力を持ちうることが見いだされている。(たとえば、Lycopodium clavatumおよびAmbrosia trifidaから得られる外皮のスポロポレニンのスペクトルは、190〜900nmの波長範囲にわたってほぼ平坦な形をし、吸光係数の絶対値は1〜2×105m−1であり、両タイプの外皮について大きな違いはない)。単一外皮は、波長が450nmの光を約45%透過する。190nmから900nmにわたる波長の透過率は似通っている(Stephen L.Atkin,Sylvain Barrier,Zhengang Cui,Paul D.I.Fletcher,Grahame Mackenzie and Vincent Panel,未発表データ))。
【0022】
本発明によれば、外皮は、酸化防止剤として、有効物質を含む配合物に好適に使用される。有効物質は、外皮内にカプセル化されてもよいし、外皮に化学的にまたは物理的に結合してもよい。このようにして外皮は物質に対する送達賦形剤として使用可能である。別の態様として、有効物質および外皮は、単に物理的な混合物として配合物中に存在することも可能である。
【0023】
胞子から誘導される外皮は元々毒性がないため、ヒトまたは動物の体と接触する可能性が高い配合物または体に摂取される配合物における送達賦形剤としての用途に特に好適であろう。花粉に対するアレルギー反応を引き起こす可能性があるタンパク物質は、外皮成分の分離に使用される処理過程で除去されることが望ましい。
【0024】
多くの外皮の主成分であるシポロポレニンは、これまでに知られている最も抵抗性の高い天然有機物質の一つであり、ほとんどの有機溶剤に不溶であるばかりでなく、非常に厳しい圧力、温度、pH条件にも耐えることができる。このことは、この物質を送達賦形剤として非常に好適なものにしている。
【0025】
酸化防止活性に加えて、胞子から誘導される外皮を送達賦形剤として使用できる利点として期待されるいくつかの点を挙げれば、たとえば下記のとおりである。
・ 外皮は、カプセル化した物質を、大気の効果、具体的には光および/または酸素から保護する上で非常に効果的であり、そしてそれゆえ早過ぎる分解の防止に有効である。
【0026】
・ 外皮がもたらす物理的保護は、たとえば蒸発、拡散または浸出によって物質が失われるのを抑えるのに役立つ。
・ ある一つの生物から調製される外皮は、代表的な合成カプセル化材と違って、大きさ、形、表面特性がきわめて均一である。
【0027】
・ しかし、種類が違うと胞子の大きさも形状もかなり大きく変るため、有効物質の種類と所望の濃度、意図する適用部位と適用方法、所望する能動放出速度、使用するまでに予想される貯蔵条件などに合った配合物を設計することができる。
【0028】
・ たとえ小さい外皮でも比較的多量の有効物質をその中にカプセル化することが可能であろう。高い活性装填量と、小さいカプセルサイズと、カプセル化による十分な保護とを同時に実現することは、他の公知のカプセル化技術では、実現困難ではないかと思われる。
【0029】
・ 胞子の外皮は、天然由来である上に入手が容易であり、しばしば価格が安いため、有効物質の送達賦形剤として非常に好適な候補である。
胞子から誘導される外皮を使用することに付随するさらに別の利点は、国際公開第2005/000280号パンフレットの、たとえば3頁および4頁、5頁から6頁の段落に記載されているようなものであろう。
【0030】
有効物質を含有する配合物に外皮を使用すれば、その配合物を、いかなる形の送達に対しても好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものにすることができよう。たとえば、有効物質が全身的な使用(植物動物の如何を問わず、生体への摂取を目的とした医薬的または栄養薬効的有効物質、食品、その他の有効物質など)に対するものの場合、配合物は経口、静脈内、経肺、経鼻、経皮、皮下、頬、腹腔内投与など、好適な送達の形に対して好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。
【0031】
さらに前記配合物を、表面が生体表面(ここでも植物動物の如何を問わない)であれ、非生体表面であれ、有効物質の局所送達に対して好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。有効物質が表面上に放出されると、その有効物質は外皮の外に露出するが、それでも酸化からある程度保護されつづけることが可能であるため、外皮が酸化防止剤として機能することができ、カプセル化した有効物質を単に物理的に保護する障壁として機能するものでないことは特に意義深いことであろう。
【0032】
本発明において、「局所的」配合物を、生体部位、たとえば皮膚やその他の表皮、毛髪、爪、歯、そして特に皮膚への使用に対して好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。生体表面は動物植物の如何を問わないが、とりわけ動物の生体表面を対象とすることができ、その場合、動物表面は、ヒトまたはヒト以外の如何を問わないが、特にヒトの生体表面を対象とすることができよう。
【0033】
外皮を使用する配合物を、いかなる形であれ、好適な物理的形にすることができる。外皮は、適当な液体に懸濁させた懸濁液(「懸濁液」という用語にはエマルジョンおよびその他の多相分散液が含まれる)として存在してもよく、散剤や錠剤などの固体として存在してもよい。局所的な使用に適する配合物は、ローション、クリーム、軟膏、ペースト、ゲル、フォームなど、局所投与に対して知られているあらゆる物理的な形態を取ることが可能であり、そうした配合物には、たとえば、局所に投与しやすくするために使用される担体、たとえばスポンジ、綿棒、ブラシ、ティッシュ、スキンパッチ、包帯、あるいはデンタルファイバーなどに適用される配合物、あるいは適用可能な配合物が含まれる。さらに、鼻に噴霧する剤形や目や耳に滴下する剤形も可能である。あるいは、有効物質が、たとえば、ほお紅やアイシャドウあるいはファンデーションカラーのようなメーキャップ製品や、汗取りパウダーとしての使用を意図している場合は、剤形を粉末の形にすることもできる。外皮は、液体、とりわけ脂質の吸収に極めて優れており、下記実施例11に例示するように、液体をすべて外皮内にカプセル化し、効果的に乾燥した製品にすることができる。さらにその他の有効物質、たとえば補助食品、食品成分、医薬的にまたは栄養薬効的に有効な物質も粉末の形で配合することもできる。
【0034】
上記以外の好適な医薬および栄養用の剤形は、たとえば国際公開第2005/000280号パンフレットの3頁および6〜9頁に開示されている。
有効物質は、適用部位に効果をもたらすことができる物質であればいかなる物質でもよい。具体例として、医薬的および栄養薬効的に有効な物質、食品および食品成分、補助食品、除草剤、殺虫剤および害虫駆除剤、成長調節剤などの植物処理剤、抗菌物質、化粧品(香料を含む)、トイレタリ、消毒剤、洗剤およびその他の洗浄剤、接着剤、診断薬、染料およびインク、燃料、爆薬、推進薬および写真材料が挙げられる。一般に、本発明は、たとえばオリゴマーまたはポリマー性有効物質も含めて、いかなる有効物質であっても、それらの安定化に使用可能である。
【0035】
本発明の一つの実施形態において、有効物質は化粧物質である。化粧物質は、たとえばメーキャップ製品(たとえばファンデーション、パウダー、ほお紅、アイシャドウ、アイライナーおよびリップライナー、口紅、その他のスキンカラーおよびスキンペイント)、スキンケア製品(たとえばクレンザー、保湿剤、柔軟剤、スキントニックおよびフレッシュナー、ピーリング剤および角質除去剤)、香料、香水、日焼け止めおよびその他の紫外線防止剤、セルフタンニング剤、日焼け後処理剤、老化防止剤、しわ止め剤、美白剤、局所用昆虫忌避剤、脱毛剤、育毛剤およびたとえばネイルポリッシャーまたはポリッシュリムーバーなどのネイルケア製品から選択することができる。香水は複数の香料を含んでもよい。
【0036】
本発明の別の実施形態において、有効物質はトイレタリ製品に使用されるものであってもよい。したがって、有効物質は、石鹸、洗剤およびその他の界面活性剤、消臭剤および発汗防止剤、潤滑剤、香料、香水、汗取りパウダーおよびタルカムパウダー、たとえばシャンプー、コンディショナーおよびヘアダイなどのヘアケア製品、たとえば歯磨き、口腔清浄剤、口臭防止剤などのオーラルケアおよびデンタルケア製品から選択されることができる。
【0037】
本発明のさらに別の実施形態において、有効物質は家庭用品に使用されるものである。有効物質は、たとえば消毒剤およびその他の抗菌剤、香料、香水、エアフレッシュナー、昆虫忌避剤、殺虫剤、洗濯関連製品(たとえば洗濯剤およびコンディショナー)、繊維処理剤(染料を含む)、クリーニング剤、紫外線防止剤、塗料およびニスから選択されることができる。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態において、有効物質は医薬的にあるいは栄養薬効的に有効な物質であり、それらには家畜用の有効物質も含まれる。局所的送達に適する医薬的に有効な物質は、たとえば皮膚または皮膚構造の状態(たとえば座瘡、乾癬、または湿疹)を治療するために使用される物質、外傷または火傷治療薬、抗炎症薬、抗刺激薬、抗菌剤(これには抗真菌剤および抗細菌剤を含むことができる)、ビタミン剤、血管拡張剤、局所的に有効な抗生物質および消毒剤から選択されることができる。
【0039】
医薬的にまたは栄養薬効的に有効な物質は、治療または予防に使用するのに好適なものであってもよく、そして/または使用することを意図するものであってもよい。
本発明のさらに別の実施形態において、有効物質は食品であり、それには食品成分が含まれる。食品成分には、たとえば補助食品(たとえばビタミンおよびミネラル、葉酸、オメガ−3オイル、または繊維質)、香味剤、香料、着色料、保存剤、安定剤、乳化剤、または食品の食感あるいは歯ごたえ調整剤を添加することができる。
【0040】
特に、有効物質は、医薬的および栄養薬効的に有効な物質、食品、化粧物質およびトイレタリ物質から選択されることができる。
本発明の一つの実施形態において、有効物質を、局所送達に対して意図したものとし、および/または適合したものとし、および/または好適なものとすることができよう。そしてその場合、その有効物質は(特に、経皮送達による)全身的な使用を意図し、そして/または全身的な使用が可能なものでないことが好ましい。このような物質は、摂取、とりわけヒトによる摂取に対して意図したものとせず、そして/または適合したものとせず、そして/または好適なものとしないことが好ましい。
【0041】
いくつかの実施形態において、有効物質は、精油以外の物質であること、または少なくとも生体の全身への使用を意図した精油および/または使用に適する精油ではないことが好適である。
【0042】
いくつかの実施形態において、有効物質は、薬物(少なくとも全身的送達を意図する薬物および/または全身的送達に適する薬物)以外の物質か、または栄養物質以外の物質であることが好適である。
【0043】
いくつかの実施形態において、有効物質は、ビタミン、ミネラル、精油、食品用香味剤および/または栄養薬効物質以外の物質であることが好適である。
有効物質は、揮発性物質、特に香料を含んでもよい。本発明は、外皮が、使用前に揮発成分の放出を阻止するのを助けるような物質を含有する配合物に対して特に好適であることが可能である。天然胞子の外皮は多孔質であることが知られていることを思い起こせば、このことは、必ずしも予想できることではない。しかしそれにもかかわらず、下記実施例10に示すように、いくつかの事例では、外皮は、揮発性有効物質をカプセル化して、それらが大気中に揮散しないように抑制することができる。
【0044】
有効物質は、脂質または脂質様物質(たとえば油、脂肪またはワックス)であってもよく、および/または親油性物質であってもよい。有効物質は、第二の流体賦形剤、たとえば液体賦形剤中、具体的には非水性(または本質的に、または少なくとも部分的に非水性)賦形剤中、さらに具体的には非水運搬手段中、もっと具体的には脂質運搬手段、たとえば油中に存在することができる。それゆえ、有効物質は溶液または懸濁液の形で存在することができる。この「懸濁液」という表現は、エマルジョンやその他の多相分散液も包含する。第二の賦形剤は、たとえば油中水型エマルジョンでもよいし、水中油型エマルジョンでもよい。
【0045】
有効物質それ自体は天然物でもよいし、天然資源、とりわけ植物資源から誘導されるものでもよい。
いくつかの態様において、有効物質は無極性であってもよい。
【0046】
有効物質は、一つ以上の外部影響因子、たとえば熱、光、酸素または水に対して敏感であってもよい。特に、有効物質は、酸化、とりわけ大気中の酸素または溶存酸素の影響を受けやすくてもよい。有効物質は、とりわけ環境条件下において、紫外線によって誘発される酸化(すなわち光化学酸化)の影響を受けやすくてもよい。
【0047】
有効物質を含有する配合物を、酸素を含む流体環境中、たとえば空気中または溶存酸素を含む水などの液体中での貯蔵および/または使用に対して、好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。有効物質を含有する配合物を、紫外線、特に太陽光からの紫外線に曝露される環境、または曝露されるおそれのある環境での貯蔵および/または使用に対して好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。このような文脈から、本発明は、有効物質を酸化から保護するのに、そしてそれゆえ配合物全体の安定性を高めるのに特に有効である。
【0048】
本発明が使用される配合物は、複数の有効物質を含有することが可能である。たとえば2つ以上の物質を同じ外皮にカプセル化してもよい。それに代わって、またはそれに加えて、本発明によって調製される配合物は、有効物質を含有する外皮の2つ以上の集合を含み、それぞれが、異なる有効物質と化学的または物理的に結合させたものか、あるいは異なる有効物質をカプセル化したものとしてもよい。
【0049】
従って、たとえば、本発明にしたがって調製される化粧品配合物は、日焼け防止剤と昆虫忌避剤、または日焼け防止剤と保湿剤、またはファンデーションまたは他の皮膚着色剤と日焼け剤を含有することも可能である。従って、2つ以上の有効物質が、外皮がもたらす酸化防止保護効果を受けることができる。
【0050】
このことは、たとえば、2つ以上の有効物質が、互いに共存できないか、または好ましくない相互作用を及ぼし合う場合、使用するまではそれぞれ隔離しておき、意図した使用時点にその場で同時に放出させることを可能にする。
【0051】
本発明にしたがって調製される配合物は、化粧品、トイレタリ(たとえば、入浴製品、石鹸およびパーソナルケア製品)、ヘアケア製品、ネイルケア製品、歯磨き、口腔清浄剤およびデンタルフロスなどのデンタル製品、たとえば表面クリーナー、消毒剤、エアフレッシュナー、昆虫忌避剤、および洗濯関連製品および繊維処理剤などの家庭用品(屋内または屋外使用)、塗料、インク、染料およびその他の着色剤、接着剤、医薬品および栄養薬効製品、食品(食品添加物および食品成分を含む)、農業および園芸関連製品、燃料、爆薬、推進薬および写真材料から選択できる製品に含有されることができる。
【0052】
このような製品を、たとえば局所使用を含め、いかなる経路であれ、好適な経路による送達に対して、好適なものとし、および/または適合したものとし、および/または意図したものとすることができよう。
【0053】
このような製品は、とりわけ化粧品(スキンケア製品を含む)、トイレタリ、ヘアケア製品およびネイルケア製品、およびデンタル製品から選択されることができる。
本発明の別の態様において、製品は医薬品または栄養薬効製品であり、両者には家畜向けの製品も含まれる。
【0054】
本発明のさらに別の態様において、製品は食品である。
本発明にしたがって調製される配合物において、有効物質を外皮に結合させてもよいし、外皮内にカプセル化してもよい。有効物質を、物理的に外皮に結合させるか、外皮内にカプセル化するのが好適である。有効物質を、少なくとも部分的に外皮に結合させるのがさらに好適である。
【0055】
物質を化学的に外皮に結合させる方法は、たとえば国際公開第2005/000280号パンフレットの4頁から5頁の段落、および14頁から22頁および24頁から32頁にかけて記載されている。それらの方法には、外皮を化学的に修飾して、問題の物質と化学結合しやすくする方法が含まれる。化学結合には、共有結合やその他の化学結合、たとえば水素結合、スルフィド結合、ファンデルワールス結合または配位結合を含めることができる。
【0056】
有効物質と外皮との物理的な結合としては、たとえば外皮表面(内部または外部の如何を問わない)への有効物質の吸着(たとえば疎水/親水相互作用が関与)を挙げることができる。
【0057】
有効物質のカプセル化とは、外皮の壁に本来的に存在する空洞内、および/または外皮によって画される中心部の空洞内に保持させることを意味する。
有効物質を上記の一つ以上の方法によって外皮に結合させることができる。たとえば、有効物質を外皮内にカプセル化し、さらに化学的に結合させてよいし、あるいは有効物質の一部を外皮の外部表面に吸着させ、残りを外皮内に包含させてもよい。
【0058】
本発明にしたがって調製される配合物において、外皮の直径(たとえば走査型電子顕微鏡で測定)は、たとえば1〜300μmであるが、1〜250μm、3〜50μmまたは15〜40μmが好適である。草の花粉から誘導される外皮、および直径が約20μmのその他の外皮も好適ではないかと思われる。
【0059】
好ましい外皮粒子サイズは、当該有効物質または配合物をどのような方法で投与使用とするかによって左右されよう。たとえば、肺に送達しようとすれば比較的小さい粒子(たとえば鼻への送達であれば直径10μm以下、または8または5μm以下、肺の内部に送達するには5μm以下)が好ましいだろう。経口投与の場合であれば25μmより小さい粒子サイズが好適であろう。しかし有効物質(たとえば、プロバイオティクスのようなある種の栄養薬効物質)を消化器官に送達しようとすれば、粒子径は40μm以上の粒子サイズが適当であろう。全身的な使用を意図する有効物質に対しては、血流に速やかに到達できるという点で、25μm以下の粒子サイズが好ましいであろう。
【0060】
いくつかの実施形態において、たとえば、直径が30または40μm以上の外皮は、血管を透過して血流に吸収されにくいため、局所送達剤として特に好適であろう。しかし、局所送達される有効物質が毛包内に進入する必要があるときは、上記より小さい外皮、たとえば7μm以下、または5または3μm以下、または理想的には2μm以下、たとえば1〜2μmが好適であろう。
【0061】
外皮が大きいほど有効物質の装填量が高くなるという利点があるかもしれないが、それだけ配合物全体の食感および/または外観が悪くなり、そのことは経口伝達や局所伝達の場合に重要になるかもしれない。したがって、このような場合、特に、たとえば医薬または栄養薬効物質を経口送達するには、外皮直径は10μm以下が好適であろう。また、大きな外皮を使用すると、小さい外皮を多く使用する場合と比べて、配合物全体に分散する有効物質の均一性が悪くなる可能性がある。一般に有効物質の妥当な装填量を実現できるためには、最小直径として4μmが好ましいかもしれない。しかし最小直径が60μmあるいはそれよりもっと大きい方が好適という場合もあろう。
【0062】
本発明の一つの実施形態において、外皮は、追加的に天然胞子からのセルロース内膜層のすべてまたは一部を含有してもよい。このような外皮を得るには、有機溶剤とアルカリだけで処理し、酸による処理を行わないようにすればよい。たとえば、水酸化カリウムを使用して、このような塩基性加水分解を行えば、胞子のタンパク質成分が除かれ、元のセルロース内膜の少なくとも一部を残すことができる。
【0063】
本発明の一つの実施形態において、外皮は無傷のままか、実質的に無傷である。言い換えれば、このような外皮の表面に自然に存在するミクロンサイズの孔やナノサイズの孔は別にして、外皮は、有効物質をその中に装填できる内部空洞を画する連続した外部壁を提供する。しかし外皮は部分的に壊れていたり、損傷していたりしているかもしれない。したがって、特に、有効物質を化学的にまたは物理的に外皮と結合させる場合、本発明は胞子から誘導される外皮のフラグメントの使用を包含する。しかし、外皮が好適であるためには、もし無傷であれば該当する種の外皮が有するであろう表面積の少なくとも50%が、好適には少なくとも75%、または80または90%が連続していなければならない。したがって、本発明は、多くの場合、外皮のフラグメントではなく、天然胞子の外皮の使用に関する。
【0064】
外皮は、その性質(たとえば溶解性)を変えるために、または意図する投与部位を標的にして(たとえば表面をより活性にするため)、または有効物質と結合しやすくするために、化学修飾されてもよい。好適なこのような化学修飾とそれを実現するための方法は、国際公開第2005/000280号パンフレットの、具体的には4頁から5頁の段落、および14〜22頁および24〜32頁に記載されている。外皮の外側を、たとえば陽イオン基および/または陰イオン基などの官能基(国際公開第2005/000280号パンフレットおよびO.Shaw,M.Sykes,R.W.Humble,G.Mackenzie,D.Marsdan & E.Phelivan,Reactive Polymers,1988,9,211〜217)、および/または適用を意図している表面に対する外皮の親和性を高める官能基を(通常は化学的に)導入して修飾してもよい。
【0065】
有効物質を、既知の技術を使って外皮に結合させるか、または外皮内にカプセル化することができるが、この場合も国際公開第2005/000280号パンフレットに記載されている方法が好適である。具体的には、外皮を有効物質、またはその溶液または懸濁液に浸漬して、外皮に有効物質を含浸させてもよい。外皮に有効物質を含浸しやすくするには、国際公開第2005/000280号パンフレットの記載にしたがって、一つ以上の浸透促進剤を使用してもよい。これに代わってあるいは追加する形で、同じく含浸しやすくするため、(大気圧に関して)減圧または加圧操作を行ってもよい。
【0066】
外皮に装填される有効物質の量は、使用目的に応じて適当に選択されることができる。本発明にしたがって調製される配合物は、有効物質と外皮とを0.01:1〜35:1または33:1、たとえば0.01〜20:1または0.1:1〜12:1または8:1または5:1、または0.5:1〜5:1、または1:1〜5:1または8:1重量比で含有することができる。どのくらいの装填量が実現可能かは、有効物質の少なくとも一部をカプセル化しようとする場合、外皮のサイズに依存するかもしれない。
【0067】
本発明によれば、有効物質が外皮の外に存在しても、外皮はなお酸化防止効果を示す可能性があり、それゆえ配合物は、外皮の内部空洞内にカプセル化されない一部の有効物質を含有してもよい。このように、配合物には比較的高濃度で有効物質を使用することができ、有効物質と外皮との重量比は、たとえば5:1または10:1、あるいはさらに20:1または30:1を超えるかもしれない。その場合でもやはり最大好適装填量は外皮のサイズに支配される。
【0068】
いくつかの実施形態において、配合物における有効物質と外皮との重量比は、外皮を有効物質(または有効物質を含む溶液または懸濁液)で満たしたうえで、さらに、外皮の外表面に厚さ10μm以下の有効物質/溶液/懸濁液の被膜が存在するような重量比である。この状態は、有効物質と外皮との重量比が最適かつ最大の状態にあり、外皮による酸化防止効果は合理的な水準にある。
【0069】
大気の影響から有効物質を保護する効果をさらに高めるため、外皮にバリヤ層を被覆してもよい。これは、揮発性有効物質および/または酸素に敏感な物質の送達に対して特に有用であろう。標準的な条件下(通常、室温)で配合物を貯蔵するときは、好適な被膜は固体かまたは半固体であり、配合物の局所的な適用で意図される、それより高い温度(たとえば皮膚の温度)では、溶融してもよい。このような使用には脂質、たとえばバターおよびその他の固体脂肪(たとえばココアバターまたは硬化パーム核油)、油(たとえばタラ肝油)およびワックス(たとえばカルナバろうまたは蜜ろう)の被膜が好適かもしれない。特に、有効物質を局所の送達に使用することを意図するときは、被膜材料として皮膚温度または皮膚温度付近で溶融する材料(ココアバターがそのような材料の一例である)が使われるかもしれない。そうすれば、皮膚に局所塗布したときに有効物質の放出が可能になる。他の可能な被膜材料としては、手で圧力を加えれば壊すことができる材料、たとえば、投与(たとえば局所投与)時に溶融、破壊またはその他の変化を起こして有効物質が放出される、たとえばシェラックやその他の材料のようなこわれやすい固体が考えられよう。たとえばゼラチンが好適な被膜材料として考えられよう。
【0070】
望む送達経路および意図する作用部位に応じて別の既知被覆賦形剤を選択してもよい(たとえば、有効物質の放出を遅らせたり、放出の目標を定めたり、あるいは放出を制御するために被覆を使用することができる)。本発明にしたがって調製される配合物において、有効物質を保護するには、オリゴマーおよびポリマーを含む各種天然または合成被覆剤の使用も考えられる。植物から誘導される被膜材料の使用が好ましいかもしれない。
【0071】
外皮を被覆するには、既知の方法、たとえば噴霧、ローラ塗り、パンニングまたは浸漬などの塗布方法を使用できる。被覆は必ずしも外皮の外表面全体を連続したものである必要はない。
【0072】
本発明の第二の態様は、これまでに形成されている酸化生成物を物質または組成物から除去するため、天然胞子の外皮またはそのフラグメントを使用することを提供する。すなわち、すでに受けている酸化を「解消」して、酸化生成物を少なくとも一部を除去し、それによって物質または組成物の有効安定性を高めることが可能であることが発見された。たとえば、物質が油などの脂質であって、少なくとも一部がすでに酸敗してしまっている場合、その酸敗を減らすため、物質に胞子の外皮を添加し、そして/または外皮にその物質を装填してもよい。
【0073】
したがって、本発明の第二の態様は、物質または組成物の酸敗またはその他の酸化分解を抑制する方法を包含し、その方法には天然胞子の外皮またはそのフラグメントに物質または組成物をカプセル化する方法、化学的にまたは物理的に結合させる方法、またはいくつかの実施形態においては、混合する方法が含まれる。
【0074】
かくして、本発明の第二の態様は、たとえば、少なくとも部分的に酸化された有効物質または組成物を、天然胞子の外皮にカプセル化するか、または有効物質または組成物を、外皮またはそのフラグメントに、化学的にまたは物理的に結合させることにより、実施可能である。そのあと引き続いて物質または組成物が外皮から分離したとき、たとえば意図した作用部位に送達したとき、外皮と組み合わせる前と比べて酸化される度合いが少ないことが明らかになろう。このような実施形態における酸化の度合いは適当な方法、たとえば酸化反応で生成する副生物(たとえば過酸化物および/または酸)の量を評価することで測定できる。脂質有効物質の場合、酸化の度合いは、通常酸敗のレベルと一致する。
【0075】
本発明の第二の態様の実施形態において、外皮またはそのフラグメントは、天然胞子からのセルロース内膜層をすべてまたは一部を含有することが好ましいかもしれない。すでに上で述べたように、これは、胞子を有機溶剤とアルカリだけで処理し、酸で処理しなければ実現可能である。
【0076】
本発明の第二の態様にしたがえば、外皮の粒子径は20〜60μmまたは20〜50μmまたは30〜50μm、たとえば40μm前後が好適であろう。外皮はLycopodium clavatumの胞子から誘導することができる。
【0077】
本発明の第三の態様は、有効物質を酸化から保護する方法および/または有効物質または有効物質を含有する組成物の安定性を高める方法を提供する。この方法は、有効物質と天然胞子の外皮またはそのフラグメントとを配合する工程を含む。有効物質は、外皮またはフラグメント内にカプセル化するか、外皮またはフラグメントに化学的または物理的に結合させるのが適当である。
【0078】
本発明の第四の態様は、有効物質を配合する方法を提供する。その方法は、調製する配合物に酸化防止効果を付与するために、(a)天然胞子の外皮またはそのフラグメントを調製するまたは準備する工程、および(b)有効物質を外皮にカプセル化するか、または有効物質を、外皮またはフラグメントに化学的または物理的に結合させる工程を含む。
【0079】
本発明の第五の態様は、医薬的に有効な酸化防止剤として使用するための天然胞子の外皮またはそのフラグメントを提供する。
本発明の第六の態様は、ヒトまたは動物の体に酸化防止剤を送達する薬剤の製造に天然胞子の外皮またはそのフラグメントを使用することを提供する。
【0080】
本発明の第七の態様は、酸化防止剤を必要とするヒトまたは動物の患者を治療する方法を提供する。その方法は、天然胞子の外皮またはそのフラグメントの治療的に(予防的な場合も含む)有効な量を患者に投与することを含む。
【0081】
本発明の第五ないし第七の態様にしたがって、外皮またはフラグメントは、もう一つの医薬的に有効な物質、たとえばスタチンのような脂質低下剤と一緒に投与してもよい。外皮またはそのフラグメントは、酸化ストレスによって引き起こされる、あるいは増悪する疾患の治療、たとえば心臓血管疾患の治療に使用できる。外皮またはそのフラグメントは、たとえば摂取した物質から体内に発生するフリーラジカルおよび/またはその他の酸化剤によって引き起こされる疾患、あるいは増悪する疾患の治療に使用できる。かくして、外皮またはそのフラグメントは、たとえば炎症の緩和および/または癌、たとえば腸癌の治療に使用できる。
【0082】
胞子から誘導される外皮は、高レベルの水分、酸、アルカリおよび熱に対して抵抗する可能性があるため、典型的には口内で溶解も分解もしない。その上、無味である。それゆえ外皮は有効物質、たとえば医薬的または栄養薬効的に有効な物質、食品または補助食品の風味を隠蔽するために使用できる。
【0083】
かくして、本発明の第八の態様は、味覚のマスキング剤として、天然胞子の外皮またはそのフラグメントの使用を提供する。ここでは、外皮またはフラグメントは、有効物質の風味を少なくとも部分的に隠蔽するため、有効物質を含有する配合物の一部として好適に使用される。配合物は、経口による送達に対して、あるいは投与された患者に風味が知覚される可能性がある別のいかなる経路による送達に対しても、好適なものとし、そして/または適合したものとし、そして/または意図したものとすることができよう。
【0084】
本願に記載する発明の詳細な説明および請求項を通じて、「含む」および「含有する」という語は、「含むが、限定されるものではない」ことを意味し、他の部分、追加物、構成成分、整数または段階を排除しない。
【0085】
本願に記載する発明の詳細な説明および特許請求の範囲を通じて、文脈上そうでないことが明らかでない限り、単数は複数を包含する。特に、不定冠詞が使用されているところでは、文脈上そうでないことが明らかでない限り、本明細書は、複数も単数も意図しているものと理解すべきである。
【0086】
本発明の各態様の好ましい特徴は、他の態様のいずれかと関連をもって記述されている場合もある。
本発明のその他の特徴は、以下に述べる実施例から明らかとなろう。総括して言えば、本発明は、本明細書に開示する特徴(添付する特許請求の範囲および図面を含む)の新規ないずれか一つまたは新規ないずれかの組み合わせにまでおよぶ。それゆえ、本発明に関して記載される特定の態様、実施形態または実施例の特徴、整数、特性値、化合物、化学的部分構造または基は、両立しない場合を除き、本明細書に記載するほかの態様、実施形態または実施例にも適用できるものと理解すべきである。
【0087】
また、本願に開示される特徴は、同じ目的または類似の目的に役立つ別の特徴で置き換えることができる。
次に、非制限的な実施例を挙げて本発明を説明することにする。
【実施例】
【0088】
以下に挙げる実施例は、天然酸化防止剤として働く、胞子から誘導される外皮が特に油の酸化速度を引き下げる能力を実証している。そしてこのことは、外皮が、特に脂質中の、酸素に対して敏感な有効物質を送達する賦形剤として使用するのに、そしてまた投与前、投与中、および投与後にこのような物質の安定性を高めるために好適であることを示している。
【0089】
使用される外皮は、たとえばUnikem、Post Apple Scientific、FlukaおよびTibrewala Internationalから購入可能なLycopodium Clavatum L.(普通に見られるヒカゲノカズラ)の胞子から抽出した。25μmの胞子と40μmの胞子との両方を試験した。両者のうち、40μmの方は、Lycopodium Clavatum L.の亜種または遺伝子的変種から誘導した。前者の外表面が網状の紋様であるのに対して、後者は平滑で丸みを帯びている。両者とも外皮の厚さは約1.5μmであると思われる。
【0090】
下記の抽出操作を使って胞子中に存在するほかの成分(特にタンパク質成分)から外皮を分離した。“AHS”と記した試料はリン酸による酸性加水分解と水酸化カリウムによる塩基性加水分解とを行ったのに対して、“BHS”と記した試料は水酸化カリウムによる塩基性加水分解のみを行った。それゆえ、BHS試料は外皮だけでなく、セルロース内膜層の一部も含有した。
【0091】
第一に、原料胞子をアセトンに懸濁させ、還流させながら4時間攪拌した。具体的には、表面が複式になった(20cm−4cm)リービッヒ冷却器を取り付けた2リットル丸底フラスコ中で、胞子250gをアセトン750mlに溶かして4時間還流させた。次に、得られた脱脂胞子(DFS)を濾過(孔径3号)し、一晩空気乾燥した。
【0092】
塩基性加水分解した外皮(BHS)を調製するには、脱脂胞子(DFS)を6w/v%水酸化カリウム水溶液に懸濁させ、(上記の条件で)還流下に6時間攪拌した。濾過(濾過板の孔径3号)したのち、水酸化カリウム溶液の新鮮な試料に対してこの操作を反復した。懸濁液を再度濾過し(孔径3号)、得られた固体を熱水で(3回)洗い、それから熱エタノールで(2回)洗浄した。次に、エタノール中で2時間還流させ(上記の条件)、濾過し(孔径3号)、一晩空気中で乾燥した。それからさらに乾燥機中で、60℃で完全に乾燥した。
【0093】
酸性加水分解外皮(AHS)を調製するには、脱脂した胞子を85v/v%オルトリン酸(750ml)に懸濁させ、還流させながら(上記の条件)7日間攪拌した。次に、固体を濾過し(孔径3号)、水(5回、250ml)、アセトン(5回、250ml)、エタノール(1回、250ml)、2M水酸化ナトリウム(1回、250ml)、水(5回、250ml)、アセトン(1回、300ml)およびエタノール(1回、300ml)で洗浄した。つづいて固体を乾燥機中で、60℃で乾燥した。
【0094】
BHSおよびAHS生成物とも、実質的に窒素を含まなかったこと(燃焼元素分析と赤外分光法により判定)から、タンパク質および核酸は除去され、原料胞子中のアレルギーを引き起こすおそれのある成分が除去されたことが示された。さらに、両加水分解生成物は、走査型電子顕微鏡および共焦点電子顕微鏡による観察から、処理前には内部に存在していたスポロプラズムを含まず、内部が実質的に空洞のカプセル体であることが確認された。
【0095】
特に述べないかぎり、外皮への充填を次の手順に従って行った。油を40〜60℃に加熱し、エタノール数滴を混合した。得られたエマルジョンに該当外皮を加えて均一な混合物にした。これを真空下(30hPa)に1〜2時間維持した。
【0096】
実施例1−紫外線に対する安定性(1)
この実施例では、ヒマワリ油、ナタネ油または大豆油を、油:外皮の重量比が1:1となるように充填した25μmAHS外皮を使用した。
【0097】
外皮への各油の充填を上に記した手順によった。次に、各試料を紙のシート上に広げ、PhilipsTM CLEO 15W UVタイプ30の電球4個を装備するPhilipsTM Original Home SolariaタイプのHB 171/A 220〜230ボルト、50Hz、75ワットを使用して2時間紫外線を照射した。ランプが試料から13cmの距離にあるようにした。
【0098】
比較対照として、何も充填していない外皮試料に同じ処理をした。
照射したのち、滴定によって各試料の過酸化物価(PV)を測定した。それには、試料をクロロホルム(10ml)に攪拌しながら溶解し、それから酢酸(15ml)とヨウ化カリウム飽和水溶液(1ml)を一緒に加えた。フラスコに栓をしてこの混合物を1分間ふり混ぜ、それから光の当たらない場所に室温で正確に5分間放置した。次に、混合物を蒸留水75mlで希釈し、デンプン溶液を指示薬として、チオ硫酸ナトリウム水溶液(0.01N)で滴定した。得られた結果から、試料中の活性酸素量の尺度として過酸化物価を計算することができた。酸素によって脂肪が劣化すると過酸化物が生成し、その過酸化物は上記手順に従って処理すると、デンプンとの反応によって検出できる分子状ヨウ素を生成する。生成したヨウ素は、無色のヨウ化ナトリウムに変換される。それゆえ、標準的な方法(IUPAC法2.500)によってPVを決定した。
【0099】
脂質試料の過酸化物価は、脂質がどの程度劣化して過酸化物に変化したかを示す指標、すなわち酸敗の指標を与える。過酸化物価が高いほど、脂質の酸敗、すなわち脂質が受けた酸化の程度は高い。
【0100】
結果を表1に示す。
【0101】
【表2】

表1の結果は、油を外皮にカプセル化すると、紫外線に曝露したときの酸化速度が大幅に低下することを示している。このことは、酸素および/または紫外線に敏感な物質、特に脂質の送達手段としての使用に外皮がきわめて好適であることを示しており、そうすることで、使用するまでの貯蔵期間中、酸素および/または紫外線に敏感な物質を酸化から保護することができる。
【0102】
実施例2−紫外線に対する安定性(2)
エキウム油(0.5g)に25μmのAHS外皮(0.125g)を加えて油:外皮の重量比が4:1の均一混合物とした試料を2つ調製した。実施形態1と違い、混合物を真空下に置かないで、外皮に油を含浸させた。そのため、この油と外皮は、大部分の油が外皮の外に存在する単純な物理的混合物として存在した。
【0103】
実施例1の記載と同様にして、試料に紫外線を照射し、照射前と照射後の過酸化物価を測定した。この実施例でも比較対照として無希釈のエキウム油を使用した。
結果を表2に示す。
【0104】
【表3】

これらのデータは、実験誤差の範囲内で、外皮はエキウム油を紫外線から大きく保護することを示している。このケースでは、大部分の油は、外皮内にカプセル化されているというより外皮の周囲に存在している可能性が高いことから、ここで得られた結果は、外皮が天然の酸化防止特性を持つことを明らかにしている。
【0105】
実施例3−空気酸化に対する安定性(1)
この実施例では、空気酸化に対する外皮の保護的な特性を評価した。その方法として、MetrohmTM 743 Rancimat、バージョン1.0SRIを使用し、空気流速20リットル/時間、実験温度50℃の条件で、油の酸敗に対する空気中酸素の影響を定量化する尺度として、酸化誘導時間(OIT)を測定した。Rancimatは、AOCS Air Oxidation Method(AOM−AOCS Cd 12b−92)に従って、特に食用油脂の酸化安定性を測定する装置である。
【0106】
油、脂肪、脂肪酸アミドおよびその他の脂肪酸誘導体を含むすべての材料は、酸化に対してある程度、固有の抵抗性を持っている。この自然に備わっている抗酸化性の大きさは、その物質自身および、それが添加剤を含有しているときは、その添加剤によっても変動するだけでなく、どのような処理をされたかにも依存する。本来有する抵抗性を超えるまでは、酸化はゆっくり進行する傾向があるが、一旦超えると酸化は急速に加速する。OITはこのような加速が始まるまでの期間を表す。その期間は期限を表し、それを過ぎるとその検体は一般に、酸敗しているものと見なされる。
【0107】
Rancimatを使用し、加熱ブロックで所定の温度に保った試料に、濾過、乾燥した空気流を通入する。試料を通過した空気は、脱イオン水中に導入され、伝導度測定セルを通じて、水の電気伝導度が連続的に測定される。空気酸化された試料は、カルボン酸、主としてギ酸などの揮発性有機化合物を生成する。試料から流出する空気中にこのような化合物が存在すると、それに対応して最初の脱イオン水の伝導度が変化する。電気伝導度の時間的変化を表すグラフが作成され、Rancimatでは、そのグラフから時間に対する伝導度の二次導関数の極大を比較基準として自動的にOIT(酸化速度の最大変化点)を導出することができる。
【0108】
3種類の試料、すなわち、グラスウール中に混合した新鮮なエキウム油;グラスウール中に混合した空の外皮(上記の方法で調製);および40μmのAHS外皮に装填したエキウム油をそれぞれ2個ずつ調製した。後者の場合における油:外皮の比は0.5:1であった。共焦点電子顕微鏡による観察から、第三の試料は、外皮によって油がカプセル化されていることが確認された。
【0109】
接触表面を大きくするため、緩く分散した各試料の下に空気を吹き込んだ。それから、上に記載したようにRabcimatを使って試料を評価した。結果を表3に示す。
【0110】
【表4】

表3のデータは、外皮にカプセル化された油は空気酸化に対して大きく抵抗性を増し、その結果大きく安定性を増していることを示している。これは外皮による保護効果を示唆している。胞子から誘導される外皮は少なくとも部分的には多孔質であることが知られているので、外皮が、酸素の進入を妨げる単なる物理的な障壁以上の保護効果を示している可能性が高い。
【0111】
実施例4−空気酸化に対する安定性(2)
25μmのAHS使用し、カプセル化された油試料の代わりにエキウム油と外皮の物理的な混合物を使って実施例3をくり返した。物理的な混合物の油:外皮の重量比は5:1であった(外皮0.1gに対して油0.5g)。
【0112】
得られた結果を表4に示す。
【0113】
【表5】

過剰の外皮(5:1)と混合した場合、やはり、エキウム油は空気酸化から少なくとも190時間保護されることが確認された。この場合、実質的な量の油は外皮の外側に存在するはずなので、この結果は、外皮は酸素に対する純粋な物理的な障壁を提供するというより、それ自身酸化防止剤として働いていることを示唆している。
【0114】
実施例1および3は、油が外皮内にカプセル化されている場合(すなわち、共焦点電子顕微鏡で観察したところによれば、外皮ミクロカプセルの内部空洞内に収容され、外表面にはわずかしか存在しないか、全く存在しない)、紫外線によって誘発される酸化および空気酸化に対して良好な保護効果が見られることを示している。しかしこの実施例と実施例2の場合のように、油が過剰に存在し、かなりの量の油が外皮の外側に存在するため、その油が空気および環境の紫外線に容易に曝されるような場合でも、外皮自体が油の酸化を阻害する働きをすることをわれわれは発見した。
【0115】
実施例5−紫外線線に対する安定性(3)
上に記載した手順を用いて、外皮にエキウム油またはタラ肝油を充填した。いずれの場合も油と外皮の重量比は1:1とした。25μmの外皮と40μmの2種類の外皮、そしてAHS(外皮のみ)とBHS(外皮と内膜)の両方を試験した。
【0116】
各試料を時計皿上に広げて実施例1に記載したように紫外線を照射した。比較対照としてカプセル化していない油試料を同じ処理にかけた。
実施例1に記載したように、照射前および照射後の各試料の過酸化物価(PV)を測定した。
【0117】
試験した各種外皮に対する結果を表5〜8に示す。
【0118】
【表6】


これらのデータは、油を外皮内にカプセル化すると、紫外線に曝露しても酸化速度を大幅に下げることができることを確証している。
【0119】
40μmBHSに対する結果は特に注目され、両方の油を酸化から完全に保護しているように思われる。そのうえ、このケースの外皮は、油に紫外線を照射する前でさえ、過酸化物価を下げて油を「浄化する」ように見える。このことは、BHSが照射する紫外線から油を隠蔽する能力に関係なく、意味のある酸化防止効果に貢献していることを示唆しているし、ある状況下では事前に酸敗が進んでいれば、それを取り去る能力さえ持っているかもしれないことを示唆している。
【0120】
実施例6−酸敗油の「浄化」(1)
タラ肝油、40μmの外皮(AHSおよびBHSの両者)、外皮:油重量比0.5:1(すなわち、はるかに大きな油充填率)を使用して実施例5をくり返した。得られた結果を表9に示す。
【0121】
【表7】

この実験結果も、(外皮+油)の過酸化物価が元の油試料より大幅に低く、BHS(外皮+内膜)が酸敗状態を「浄化する」能力を有することを裏づけている。
【0122】
実施例7−酸敗油の浄化(2)
既に過酸化物価が20.5meq/kgのエキウム油、すなわち既に酸敗しつつあったエキウム油を使用して実施例6をくり返した。
【0123】
照射前の結果を表10に示す。
【0124】
【表8】

これらのデータも、驚いたことに40μmのBHS(すなわち外皮/内膜の組み合わせ)が、すでに酸敗している油を「浄化」する能力を持っていることを証明している。外皮にカプセル化したあとでは、元の油試料の過酸化物価は大きく低下している。外皮の割合が大きいほど効果も大きくなっている。
【0125】
実施例8−空気酸化に対する安定性(3)
タラ肝油を使用して実施例3をくり返した。
これらの試験には40μmの外皮(AHSとBHSの両方)を使用し、タラ肝油を油:外皮の重量比が1:1、3:1、5:1となるように充填した。試料管の中央部に丸めて置いた2個のグラスウールの間に各試料を装填した。油が、試料管の底に流れ落ちないよう、得られた栓を貫通するように毛細管を挿入した。Rancimatの加熱ブロックの試料管を挿入し、空気を流した。
【0126】
得られた結果を表11に示す。
【0127】
【表9】

表11のデータも、外皮にカプセル化した油が、空気酸化に対して、より大きな抵抗性を示し、格段に安定であることを示している。
【0128】
油の充填率を高くするほど、保護効果は小さくなっている。その理由は、より多くの油が外皮の外側に存在し、そして/または外皮との会合がごく緩いことにあるのではないかと思われる(カプセル化した油は外皮が元々備えている酸化防止能力の恩恵を受けるだけでなく、空気からのいくらかの物理的な保護を受ける)。
【0129】
実施例9−味覚のマスキング剤としての外皮
外皮は上記の記載に従って調製した。調製した外皮にタラ肝油(The Boots Company PLC)を、油:外皮の重量比が2:1となるように充填し、両成分の均一な混合物を1.5時間真空にかけた。
【0130】
得られた試料の味覚を3名の試験者が試験した。全員がまろやかな食感がし、油のような味覚と食感はないことを確認した。
このことは、たとえば医薬品または栄養薬効製品、食品および補助食品に味覚のマスキング剤として、外皮を使用できる可能性を示している。たとえばオメガ−3オイルのような補助食品は、たとえば多くの補助食品がそうであるように、不快な味を呈する。したがって、このような補助食品を、植物から誘導される外皮で配合することは、その補助食品を酸化から守るだけでなく、特に食品または栄養薬効製品に添加しようとする場合は、その風味および/または臭気をも隠蔽するのに役立つかもしれない。
【0131】
実施例10−揮発性有効物質の保護
この実施例では、胞子から誘導される外皮から揮発性有効物質が蒸発する速度を評価した。
【0132】
上記の記載に従って外皮(AHS、直径40μm)を調製し、ブタノールを充填した。アルコールは揮発性物質であると同時に、化粧品のような局所に使用する配合物に対しては希釈剤として広く使用されている。含浸は、室温と常圧でアルコールと外皮を混合して、自然に流体(アルコール)を外皮内にしみこませる「受動的接触法」によって行った。
【0133】
比較対照として、試料Aには無希釈ブタノール2mlを含ませた。試料Bには外皮1g中にカプセル化する形でブタノール2mlを含ませた。
各試料をペトリ皿に入れ、5分間隔で重さを計り、カプセル化されたアルコール全量が蒸発するのにかかる時間を測定した。実験はすべて3回ずつ行った。
【0134】
これらの試験結果を表12に示す。それぞれのケースの半減期は、カプセル化されたアルコールの半量が蒸発するのにかかる時間の理論的な計算値である。
【0135】
【表10】

表12は、揮発性のアルコールを外皮内にカプセル化すると、蒸発による放出をかなり抑制することができることを示している。蒸発による損失をさらに遅らせ、本発明に従って調製される配合物中の揮発性有効物質を保護しようとすれば、外皮に保護膜、たとえば脂質被覆層を形成させることができよう。
【0136】
実施例11−有効物質の高充填
油と25μmAHS外皮とを一緒に攪拌して均一な混合物を調製し、それを2時間真空(30kPa)にかけ、油を外皮に含浸させる。その油には、大豆、ヒマワリ油、エキウム油およびナタネ油を、外皮1g当たり最大3gまで、そしてタラ肝油を外皮1g当たり最大3.5gまで使用した。
【0137】
比較的高い充填率でも、油を充填した外皮は粉末の挙動を示すことが判明し、これらの油が効果的にカプセル化されていることを裏づけている。このことは共焦点顕微鏡観察でも確認された。このことは、有効物質の送達賦形剤として、胞子から誘導される外皮を使用することの利点の一つであることを示している。さらに、これらの外皮が、粉末配合物における賦形剤として、化粧品、洗浄用品または洗濯用品の局所的送達に、あるいは医薬的または栄養薬効的に有効な物質や補助食品などの送達に好適であることを示している。
【0138】
外皮1g当たりの油の充填率が5g以上になると試料はペースト状となり、油のかなりの部分が外皮の外側に存在することを示唆した。このような配合物は、たとえばクリームや軟膏としての適用に好適かもしれないし、あるいはあるタイプの食品に用途があるかもしれない。外皮1g当たりの油の充填率が2g以下の場合、粉末は、微細なさらさらの粉末となり、十分乾燥した触感を与えた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントの酸化防止剤としての使用方法。
【請求項2】
物質または組成物を、空気酸化および紫外線によって誘発される酸化の少なくとも一方から保護することを目的とする請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
外皮またはフラグメントが、有効物質を含有する配合物に酸化防止剤として使用される請求項1または請求項2に記載の使用方法。
【請求項4】
有効物質が、外皮またはフラグメント内にカプセル化されるか、または外皮もしくはフラグメントに化学的もしくは物理的に結合する請求項3の使用方法。
【請求項5】
有効物質が、少なくとも部分的に外皮内にカプセル化される請求項4に記載の使用方法。
【請求項6】
有効物質が全身的な使用を目的としたものである請求項3から請求項5のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項7】
配合物が、有効物質の局所送達を目的としたものである請求項3から請求項6のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項8】
有効物質が、医薬的および栄養薬効的に有効な物質、食品および食品構成成分、補助食品、除草剤、殺虫剤および害虫防除剤、成長調節剤などの植物処理剤、抗微生物活性物質、化粧品(香料を含む)、トイレタリ、消毒剤、洗剤および各種洗浄剤、接着剤、診断薬、染料およびインク、燃料、爆薬、推進薬、ならびに写真材料から選択される請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項9】
有効物質が化粧物質である請求項8に記載の使用方法。
【請求項10】
有効物質がトイレタリ製品への使用を目的としたものである請求項8に記載の使用方法。
【請求項11】
有効物質が家庭用品への使用を目的としたものである請求項8に記載の使用方法。
【請求項12】
有効物質が医薬的または栄養薬効的に有効な物質である請求項8に記載の使用方法。
【請求項13】
有効物質が食品である請求項8に記載の使用方法。
【請求項14】
有効物質が揮発性物質を含有している請求項3から請求項13のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項15】
有効物質が香料を含む請求項14に記載の使用方法。
【請求項16】
有効物質が脂質または脂質様物質である請求項3から請求項15のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項17】
有効物質が、熱、光、酸素および水から選択される一つ以上の外的影響に敏感である請求項3から請求項16のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項18】
有効物質が酸化を受けやすい請求項17に記載の使用方法。
【請求項19】
有効物質が、紫外線によって誘発される酸化を受けやすい請求項18に記載の使用方法。
【請求項20】
配合物が、酸素を含む流動環境での貯蔵および使用のいずれか一方を目的としたものである請求項3から請求項19のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項21】
配合物が、紫外線に曝露されるか、曝露される可能性がある環境での貯蔵および使用のいずれか一方を目的としたものである請求項3から請求項20のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項22】
配合物が一つ以上の有効物質を含有している請求項3から請求項21のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項23】
配合物が、有効物質を含有する外皮またはそのフラグメントの2つ以上の集合体を含み、各外皮またはそのフラグメントは、異なる有効物質と化学的または物理的に結合しているか、または異なる有効物質をカプセル化している請求項22に記載の使用方法。
【請求項24】
配合物が、化粧品、トイレタリ、ヘアケア製品、ネイルケア製品、デンタル製品、家庭用品、塗料、インク、染料および各種色材、接着剤、医薬品および栄養薬効製品、食品添加物および食品成分なども包む食品、農業および園芸関連製品、燃料、爆薬、推進薬、ならびに写真材料から選択される製品中に含まれている請求項3から請求項23のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項25】
製品が、化粧品(スキンケア製品を含む)、トイレタリ、ヘアケアおよびネイルケア製品、ならびにデンタル製品から選択される請求項24に記載の使用方法。
【請求項26】
製品が医薬品および栄養薬効製品である請求項24に記載の使用方法。
【請求項27】
製品が食品である請求項24に記載の使用方法。
【請求項28】
外皮またはフラグメントの直径が1〜300μmである請求項1から請求項27のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項29】
外皮またはフラグメントの直径が3〜50μmである請求項28に記載の使用方法。
【請求項30】
外皮またはフラグメントの直径が10μm以下である請求項1から請求項29のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項31】
外皮またはフラグメントが、天然胞子から誘導されるセルロース内膜層のすべてまたは一部を更に含有する請求項1から請求項30のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項32】
配合物中の有効物質と外皮またはフラグメントとの重量比が0.01:1〜35:1である請求項3から請求項31のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項33】
配合物中の有効物質と外皮またはフラグメントとの重量比が0.1:1〜5:1である請求項32に記載の使用方法。
【請求項34】
配合物中の有効物質と外皮またはフラグメントとの重量比が5:1以下である請求項3から請求項33のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項35】
外皮またはフラグメントが障壁層で被覆されている請求項3から請求項34のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項36】
障壁層が脂質被覆物質を含む請求項35に記載の使用方法。
【請求項37】
配合物を適用しようとする表面に対する外皮またはフラグメントの親和性を高める官能基の結合により、外皮またはフラグメントの外側が修飾されている請求項1から請求項36のいずれか一項に記載の使用方法。
【請求項38】
物質または組成物から、既に形成されている酸化物を除去するための、天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントの使用方法。
【請求項39】
物質または組成物の酸敗またはその他の酸化分解を抑制する方法であって、
物質または組成物を天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントにカプセル化する工程、
物質または組成物を天然胞子の外皮またはフラグメントに化学的または物理的に結合させる工程、または
物質または組成物と天然胞子の外皮またはフラグメントとを混合する工程を含む方法。
【請求項40】
物質または組成物が脂質である請求項38または請求項39に記載の方法。
【請求項41】
外皮またはフラグメントが、天然胞子から誘導されるセルロース内膜のすべてまたは一部を含有する請求項38から請求項40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
有効物質の酸化から保護と、有効成分または該有効成分を含有する組成物の安定性の向上とのいずれか一方の方法であって、
有効成分と、天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントとを配合する工程を含む方法。
【請求項43】
有効物質の配合方法であって、
(a)天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントを調製または準備する工程、および
(b)得られる配合物に酸化防止効果を付与するために、有効物質を外皮またはフラグメントにカプセル化するか、有効物質を外皮またはフラグメントに化学的または物理的に結合させるか、または有効物質と外皮またはフラグメントとを混合する工程を含む方法。
【請求項44】
医薬的に有効な酸化防止剤として使用される、天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメント。
【請求項45】
酸化防止剤を人体または動物の体に送達するための治療薬の製造における天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントの使用方法。
【請求項46】
酸化防止剤を必要とするヒトまたは動物の患者を治療する方法であって、
治療的(予防的な場合も含む)に有効な量の天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントを患者に投与する工程を含む方法。
【請求項47】
味覚のマスキング剤としての、天然胞子(該用語は花粉粒および微生物の内生胞子を包含する)の外皮またはそのフラグメントの使用方法。
【請求項48】
有効物質の香味を少なくとも部分的に隠蔽するために、有効物質を含む配合物の一部として前記外皮またはフラグメントが使用される請求項47に記載の使用方法。
【請求項49】
実質的に本願に記載されている方法である、請求項1から請求項48のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−509917(P2009−509917A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523451(P2008−523451)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002800
【国際公開番号】WO2007/012856
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(506000737)ユニバーシティ オブ ハル (3)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF HULL
【Fターム(参考)】