説明

スポンジチタン粒の製造方法

【課題】 不純物濃度の高い低級部位の除去による歩留り低下を効果的に抑制できる経済的なスポンジチタン粒の製造方法を提供する。
【解決手段】 還元反応容器内でクロール法により製造され当該反応容器から取り出されたスポンジチタン塊10を切断破砕してスポンジチタン粒を製造する際に、前記スポンジチタン塊10の外周部の少なくとも還元反応容器内面と接していた低級部位を除去すると共に、低級部位から除去された除去片を分級して大粒径の除去片を他の除去片から分離する。還元反応容器内面と接していた低級部位の除去作業を篩を兼ねる作業床20上で行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロール法により製造したスポンジチタン塊から粒状のスポンジチタンを製造するポンジチタン粒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、金属チタンは、工業的にはクロール法により製造されたスポンジチタン塊から製造されている。このスポンジチタン塊から展伸材原料用のスポンジチタン粒、半導体デバイス向けのスポンジチタン粒が採取されるが、いずれの場合も次のような工程を経てその採取が行われる。
【0003】
クロール法によるスポンジチタンの製造では、還元反応容器内に予め溶融Mgを満たしておく。そこに容器上部から四塩化チタン液を滴下し、容器内のMgと反応させることでスポンジチタン塊が生成される。この還元反応工程か終了すると、真空分離工程、冷却工程を経て、還元反応容器内からスポンジチタン塊が取り出される。
【0004】
還元反応容器からスポンジチタン塊が取り出されると、そのスポンジチタン塊のうち不純物の多い低級部位が除去される。具体的には、外周部のうち容器内面に接していた部分を作業者が機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などを使用して除去する。また、容器内面に接していなかった部分でも、窒化物が濃化した部分を作業者が目視で観察しながら機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などにより除去する。また、反応初期のゲッタリングにより不純物が濃縮している下部がプレス刃により切断除去される。ちなみに、スポンジチタン塊は容器内面に沿っておおよそ円柱形状に形成されるが、正確には反応速度等の相違によりくびれをもった異形に形成され、通常は下部及び上部の外周面は容器内面に接するが、中段部の外周面はくびれにより容器内面から離れることになり、スポンジチタン塊全体としては上下方向で圧縮された砂時計の如き形状に形成される。
【0005】
低級部位の除去が終わったスポンジチタン塊に対しては、プレス刃による大割りが行われる。得られたスポンジチタン片(大片)に対しては、多段切断機による中割りが行われる。得られたスポンジチタン片(小片)に対してはジョークラッシャーなどの破砕機による小割りが行われる。かくして、粒状のスポンジチタンが得られる。得られたスポンジチタン粒は分級工程を経て容器内に梱包される。
【0006】
以上は展伸材原料用のスポンジチタン粒の製造工程であるが、半導体デバイス向けのスポンジチタン粒の場合は、スポンジチタン塊中で汚染が最も少ない中心部のみが、外周部除去後の大割りの段階で採取される。この工程は中心部採り、中心部採取などと呼ばれている(特許文献1)。採取された中心部に対しては、プレス刃による大割り、多段切断機による中割り、ジョークラッシャーなどの破砕機による小割りが行われる。中心部以外の部分は展伸材原料として使用される。
【0007】
還元反応容器としては、通常は耐熱性に優れたステンレス鋼容器が使用される。しかし、ステンレス鋼容器では、還元反応容器から容器内の溶融Mg中へNi,Crなどの重金属が溶出し、これによりスポンジチタン塊が汚染される。このため、最近の操業では、展伸材原料用、半導体デバイス向けを問わず、少なくとも内面を鉄としたクラッド容器或いはバタリング容器を使用し、容器を原因とする汚染を防止している。しかしながら、このような容器を使用しても容器内面からのFe汚染が問題となる外周部、すなわち容器内面に接していた部分については除去対象となることは前述したとおりである。
【0008】
このように、クロール法により製造されたスポンジチタン塊からスポンジチタン粒を製造する方法では、品質確保のために不純物濃度の高い低級部位の除去が不可欠となり、これによる歩留り低下が不可避の問題になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−190024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、不純物濃度の高い低級部位の除去による歩留り低下を効果的に抑制できる経済的なスポンジチタン粒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者は、還元反応容器から取り出したスポンジチタン塊の外周部から低級部位を除去する工程、特にその工程で生じる低級部位の取り扱いに着目した。すなわち、還元反応容器から取り出したスポンジチタン塊の外周部のうち、容器内面に接していた部分については、作業者が機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などを使用して全面的に除去する。一方、容器内面に接していなかった部分については、窒化物が濃化した部分を作業者が目視で観察しながら前記機械工具などにより部分的に除去する。除去量は前者の方が圧倒的に多い。
【0012】
そして、除去量が圧倒的に多い高Fe濃度の低級部位については、従来は一律の扱いを受けており、全量が不良品として処分されるか、全量が粉末化されて鉄鋼用Ti添加材として使用されていた。
【0013】
このような状況下で、本発明者は上記目的達成のため、比較的多量に除去されるスポンジチタン塊の外周部、特に容器内面と接していた部分から除去される高Fe低級部位の再使用を企画し、様々な調査を行った。その結果、容器内面と接していた部分から除去された高Fe低級部位については、除去片の大きさにより大きな品質差のあることが判明した。すなわち、スポンジチタン塊の外周部から低級部位を除去する作業は、前述したとおり、作業者が機械工具を使用して手作業により行う。容器内面と接していた部分から低級部位を除去する場合は、スポンジチタン塊の下部、上部の相当に広い領域を全周にわたって手作業により除去作業を行うことになる。その結果、除去片の大きさは様々となる。
【0014】
大きさが様々な除去片は、従来は一律の扱いを受けていたが、大きいものと小さいものとで不純物濃度に大きな差のあることが判明したのである。すなわち、容器内面と接していた部分から除去される高Fe低級除去片は、基本的に容器内面との接触面を有しており、その接触面近傍での不純物濃度が特に高い。除去片の大きさが異なると、除去片全体の体積に占める接触面近傍の高汚染領域の比率が異なり、大きなものほど高汚染領域の比率が小さくなって品質が上がる傾向となる。つまり、大きな除去片ほど、塊外周面から深く除去される傾向が大きく、除去片全体に占める高汚染領域の体積比率が小さくなって品質が上がる傾向となるのである。
【0015】
このため、容器内面と接していた部分から除去された高Fe低級除去片を特定粒度で分級するならば、大粒度のものは高Fe低級除去片のなかでは高品質材に分類され、展伸材原料向け材料としての再使用が可能となることが判明した。
【0016】
本発明のスポンジチタン粒の製造方法は、かかる知見を基礎として完成されたものであり、還元反応容器内でクロール法により製造され当該反応容器から取り出されたスポンジチタン塊を切断破砕してスポンジチタン粒を製造する際に、前記スポンジチタン塊の外周部の少なくとも還元反応容器内面と接していた低級部位を除去し、且つ還元反応容器内面と接していた低級部位から除去された除去片を分級して大粒径の除去片を他の除去片から分離することを構成上の特徴点としている。
【0017】
本発明のスポンジチタン粒の製造方法においては、還元反応容器内でクロール法により製造され当該反応容器から取り出されたスポンジチタン塊の外周部の少なくとも還元反応容器内面と接していた低級部位を除去し、且つ還元反応容器内面と接していた低級部位から除去された除去片を分級し、大粒径の除去片を他の除去片から分離する。大きいものは不純物濃度が低く、比較的高品質であることから、大粒径の除去片を他の除去片から分離することにより、展伸材原料として再使用が可能な除去片を選別回収することができ、その再使用により歩留りが向上する。大粒径の除去片を除去された後の他の除去片、すなわち小粒径の除去片は、従来どおり鉄鋼用Ti添加材原料としての使用が可能である。
【0018】
分級に使用する篩の目開きは10〜200mmが望ましく、15〜150mmがより望ましい。この目開きが小さすぎると、分級分離される篩上の除去片の品質が低下する。すなわち、不純物濃度の高い小粒径除去片が、不純物濃度の低い大粒径除去片に多く混じり、品質が低下する。反対に目開きが小さすぎると、分級分離される篩上の除去片の品質は向上するが、分級分離量が少なくなり、歩留り向上効果が小さくなる。ここにおける目開きとは、篩穴の短径長である。例えば篩穴が正方形なら一辺の長さ、長方形なら短径の長さ、菱形なら向かい合う辺同士の距離、円形なら直径、楕円形なら短径である。
【0019】
分級の際の留意点としては、分級により分離回収される大粒径の除去片への微細な除去片の付着を阻止することが望ましい。微細な除去片は不純物濃度が高く、大粒径の除去片への付着により大粒径の除去片の品質を低下させるからである。そして、その微細な除去片の付着阻止のためには、還元反応容器内面と接していた低級部位の除去作業を篩上で行うことが望まれる。低級部位の除去作業を篩上で行うことにより、除去作業で生じた微細な除去片は篩上の大粒径の除去片に殆ど付着することなく篩下に落下し、大粒径の除去片への微細な除去片の付着による汚染、これによる再使用材料の不純物濃度上昇を可及的に回避することができる。
【0020】
また、分級により分離回収された大粒径の除去片の一部又は全部について、不純物濃度が特に高い還元反応容器内面との接触面近傍を除去するのも、再使用材料の不純物濃度低減に有効である。分離回収された大粒径の除去片の一部について、還元反応容器内面との接触面近傍を除去する場合、大粒径のものに作業を行うのが、作業性、効果が大きく合理的である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスポンジチタン粒の製造方法は、従来省みられることのなかったスポンジチタン塊外周部からの除去片、特に還元反応容器内面と接していた低級部位からの除去片を分級して大粒径の除去片を他の除去片から分離することにより、展伸材原料として再使用が可能な除去片を選別回収することができ、その再使用により歩留り向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示すスポンジチタン粒製造方法の工程図である。
【図2】還元反応容器から取り出されたスポンジチタン塊のイメージ図である。
【図3】スポンジチタン塊の外周部から低級部位を除去する作業のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、クロール法により製造されたスポンジチタン塊から展伸材原料用のスポンジチタン粒が製造される。その製造工程を図1を参照して詳しく説明する。
【0024】
クロール法によるスポンジチタン塊の製造では、還元反応工程−真空分離工程を経てスポンジチタン塊が製造される。還元反応工程では、還元反応容器にMgが装填され、加熱炉内でそのMgが溶融され、容器内が溶融Mgで満たされる。還元反応容器は、外面側がステンレス鋼、内面側が鉄とされたクラッドクラッド容器或いはバタリング容器であり、底部に鉄からなる脱着可能なロストルを装備すると共に、そのロストルを押し上げるための閉止可能な小さな開口部を底面中心部に有している。
【0025】
還元反応工程では、還元反応容器の底面中心部に設けられた開口部を閉じ、容器内を溶融Mgで満たした状態で、容器蓋の中心部を通って液状の四塩化チタンが容器内の溶融Mgに滴下される。これを継続することにより、還元反応容器内のロストル上にスポンジチタン塊が生成される。初期に生成したスポンジチタンにより溶融Mg中の不純物であるNiがゲッタリングされ、溶融Mgが精製される。このため、還元反応容器内の下部に生成されるスポンジチタンは汚染度が高く、逆にそれ以降に生成されるスポンジチタンは相対的に高品質となる。
【0026】
還元反応が終了すると、還元反応容器内に生成されたスポンジチタン塊が、真空分離処理、冷却処理の後に、還元反応容器から取り出される。還元反応容器内に生成されるスポンジチタン塊は、図2に示すように、容器内面に沿っておおよそ円柱形状に形成されるが、正確には反応速度等の相違によりくびれをもった異形に形成され、通常は下部外周面及び上部外周面は容器内面に全周にわたって接するが、中段部外周面はくびれにより容器内面から離れた砂時計の如き形状に形成される。還元反応容器内に生成されたスポンジチタン塊の取り出しは、還元反応容器の容器蓋を開いた状態で、底面中心部に設けられた開口部から押し棒を挿入し、ロストルを押し上げることにより行われる。
【0027】
図2に示すように、還元反応容器から取り出されたスポンジチタン塊10は、外周部及び底部の低級部位を除く部分が製品として使用される。外周部除去では、スポンジチタン塊10の外周部のうち容器内面に接していた円柱部分11及び12を作業者が機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などを使用して全周にわたって除去する。また、容器内面に接していなかったくびれ部分13でも、窒化物が濃化した部分を作業者が目視で観察しながら機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などにより除去する。底部除去では、反応初期のゲッタリングにより不純物が濃縮している底部14がプレス刃により切断除去される。
【0028】
低級部位の除去が終わったスポンジチタン塊に対しては、プレス刃による大割りが行われる。得られたスポンジチタン片(大片)に対しては、多段切断機による中割りが行われる。得られたスポンジチタン片(小片)に対してはジョークラッシャーなどの破砕機による小割りが行われる。かくして、粒状のスポンジチタンが得られる。得られたスポンジチタン粒は分級工程を経て容器内に梱包される。
【0029】
本実施形態で重要なのは、スポンジチタン塊の外周部除去工程、特にスポンジチタン塊10の外周部のうち容器内面に接していた円柱部分11及び12を全周除去する工程である。スポンジチタン塊の外周部除去工程では、図3に示すように、スポンジチタン塊10が横に寝かされてローラ21,21上に回転可能に載置される。スポンジチタン塊10をローラ21,21上で回転させるために当該スポンジチタン塊10にチェーン22が下方から掛けられている。作業者は作業床20上で作業を行う。作業床20は篩を兼ねており、グレーチングのような機械的強度を有した縦材と横材の組合せ格子部材により構成されている。篩の目開きは10〜200mmが望ましく、15〜150mmがより望ましく、ここでは100mmに設定されている。
【0030】
そしてスポンジチタン塊の外周部除去工程のうち、特にスポンジチタン塊10の外周部のうち容器内面に接していた円柱部分11及び12を全周除去する工程では、作業者は作業床20上に立ち、機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などを使用して、ローラ21,21上に横に寝かされた円柱部分11及び12の上側半周部分を所定深さで除去する。上側半周部分の除去が終わると、チェーン22を駆動してスポンジチタン塊10をローラ21,21上で180度回転させる。これにより、未除去部分が上側になり、この部分の除去を行う。こうして、円柱部分11及び12の全周が所定深さで全周にわたって除去する。除去深さは平均で20mm程度である。
【0031】
この除去作業においては、スポンジチタン塊10の円柱部分11及び12から様々な大きさの除去片が落下する。落下した除去片は篩を兼ねる作業床20上に落下し、その目開き寸法より大きい大粒径の除去片は作業床20上に残り、その目開き寸法より小さい小粒径の除去片は作業床20の下に落下する。これにより、大粒径の除去片は小粒径の除去片と混じり合うことなく小粒径の除去片から分離される。作業遊20上に残った大粒径の除去片は回収して展伸材原料として再使用する。作業床20の下に落下した除去片は鉄鋼Ti添加物用材料として回収する。
【0032】
篩上の大粒径の除去片のうちでも特に大きいものについては、容器内面との接触面近傍を薄く除去してFe濃度を更に低下させることができる。これにより展伸材原料、及びこれを使用する展伸材の品質を更に上げることができる。
【0033】
容器内面に接していなかったくびれ部分13の外周部除去工程では、窒化物が濃化した部分を作業者が目視で観察しながら機械工具、例えばチッパーと呼ばれる小型の削岩機などにより除去する。スポンジチタン塊10の円柱部分11及び12から除去されたFe濃化片に窒化物濃化片が混じるのは特に問題ない。
【実施例】
【0034】
クロール法により高級展伸材用スポンジチタン塊を実際に製造した(1バッチあたりのチタン生成量8ton、容器内径2000mm、高級展伸材におけるFe濃度は1000ppm以下)。高級展伸材用スポンジチタン塊が製造されると、これを、図3に示すように横に寝かしてローラ上に載せ、スポンジチタン塊の外周部のうち、還元反応容器内面と接していた上部及び下部を、作業者がチッパーと呼ばれる小型削岩機により平均20mmの厚みで全周にわたり除去した。除去量は250kgだった。
【0035】
従来例として、除去された除去片の全てを鉄鋼Ti添加物用材料に使用した。すなわち、除去された除去片の展伸材への再使用は行わなかった。この方法で得たスポンジチタン粒を消耗電極に加工し、これを用いて真空溶解することにより高級展伸材用チタンインゴットを製造した。除去片の回収再使用を行っておらず、除去片の回収率(再使用率)は0%であるので、その高級展伸材用チタンインゴットの品質に問題はなかった。
【0036】
実施例1として、外周部除去作業を通常の作業床上で行った。作業床上の除去片を全て回収し、目開きが100mmの篩により分級し、篩上の大粒径除去片を粉末化して従来例と同様の方法により低級展伸材の製造に再使用した。再使用のために回収された除去片は約100kgであり、除去片の回収率(再使用率)は除去片の全発生量に対する重量比で40%である。低級展伸材におけるFe濃度は1500ppm以下である。製造された低級展伸材のFe濃度に問題はなかった。
【0037】
実施例2として、外周部除去作業を目開きが100mmの篩を兼ねる作業床上で行った。作業床上に合計量で約100kgの大粒径除去片が分離回収された。回収された大粒径除去片を粉末化して従来例と同様の方法により中級展伸材の製造に再使用した。除去片の回収率(再使用率)は40重量%である。中級展伸材におけるFe濃度は1300ppm以下である。製造された中級展伸材のFe濃度に問題はなかった。
【0038】
実施例3として、篩を兼ねる作業床上に回収された大粒径除去片のうら、容器内面と接していたものについてその接触面近傍をチッパーにより10mm程度の厚みで削除した。表面切削後の回収大粒径除去片を粉末化して従来例と同様の方法により高級展伸材の製造に再使用した。除去片の回収率(再使用率)は30重量%である。高級展伸材におけるFe濃度は1000ppm以下である。製造された高級展伸材のFe濃度に問題はなかった。
【0039】
比較例及び実施例1〜3における除去片再使用の有無、再使用に際しての分級の有無及び詳細、回収した除去片の使用可能な展伸材の最高グレード、除去片の回収率(再使用率)を整理して表1に示す。表1には又、除去片の再使用に要する工数を、実施例1の場合を100として示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1から分かるように、スポンジチタン塊の外周部のうち、還元反応容器内面と接していた部分から生じた除去片は、分級により大粒径片を選別回収することにより再使用が可能となり、これによる歩留り向上はいうまでもない。再使用による純度低下は生じるものの、適用対象である展伸材のグレートを下げることにより再使用は可能となる。回収した大粒径除去片の容器内面と接する表面近傍を除去した場合は、同一グレードの展伸材の製造に使用可能となる。篩を兼ねる作業床上で低級部位の除去を行った場合は分級に手数がかからず、しかも比較的ハイグレードの除去片が回収される。
【0042】
比較例及び実施例1〜3は高級展伸材用スポンジチタン塊を製造する場合を示しているが、中級展伸材用スポンジチタン塊を製造する場合も傾向は同じであり、篩を兼ねる作業床上に回収された大粒径除去片は低級展伸材の製造への使用が可能であり、その大粒径除去片の容器内面と接していた表面近傍を除去した場合は中級展伸材の製造への使用が可能となる。同じように、低級展伸材用スポンジチタン塊を製造する場合は、篩を兼ねる作業床上に回収された大粒径除去片の容器内面と接していた表面近傍を除去することにより低級展伸材の製造への使用が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10 スポンジチタン塊
11,12 円柱部分
13 くびれ部分
14 底部
20 篩を兼ねる作業床
21 ローラ
22 チェーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元反応容器内でクロール法により製造され当該反応容器から取り出されたスポンジチタン塊を切断破砕してスポンジチタン粒を製造する際に、前記スポンジチタン塊の外周部の少なくとも還元反応容器内面と接していた低級部位を除去し、且つ還元反応容器内面と接していた低級部位から除去された除去片を分級して大粒径の除去片を他の除去片から分離するスポンジチタン粒の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のスポンジチタン粒の製造方法において、還元反応容器内面と接していた低級部位の除去作業を篩上で行うスポンジチタン粒の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスポンジチタン粒の製造方法において、分級により分離回収された大粒径の除去片の一部又は全部について、還元反応容器内面との接触面近傍を除去するスポンジチタン粒の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のスポンジチタン粒の製造方法において、分級に使用する篩の目開きが10〜200mmであるスポンジチタン粒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−162785(P2012−162785A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25636(P2011−25636)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(397064944)株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ (133)
【Fターム(参考)】