説明

スライド式電子機器

【課題】使用中に衝撃が加わることがあったとしても、第1筐体に対する第2筐体のスムーズなスライドを維持することが出来るスライド式電子機器を提供する。
【解決手段】本発明に係るスライド式電子機器においては、第1筐体1に対して第2筐体2がスライド可能に係合し、第1筐体1と第2筐体2との間には、第2筐体2のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイドレール4、4と該ガイドレール4、4に摺動可能に係合する金属製のスライド部材3とが配備されている。又、第1筐体1及び第2筐体2の何れか一方の筐体には、一対のガイドレール4、4に沿って、縦方向に伸びる左右一対のガイド溝6、6が凹設されると共に、他方の筐体には、一対のガイド溝6、6にそれぞれ摺動可能に係合する樹脂製の一対の摺動片5、5が配備されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機や各種操作端末機等の電子機器に関し、特に2つの筐体が互いにスライド可能に係合してなるスライド式電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のスライド式電子機器においては、例えば図8に示す如く、第1筐体(7)に対して第2筐体(8)がスライド可能に係合し、第2筐体(8)の内面には、第2筐体(8)のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイドレール(4)(4)が配備され、該ガイドレール(4)(4)には金属製のスライド部材(3)が摺動可能に係合し、該スライド部材(3)は第1筐体(7)の内面に連結されており、一対のガイドレール(4)(4)に沿ってスライド部材(3)が往復移動することにより、第1筐体(7)に対する第2筐体(8)のスライドが案内される(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2005−291315号公報
【特許文献2】特開2006−128808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のスライド部材(3)と一対のガイドレール(4)(4)から構成されるスライド機構においては、第1筐体(1)に対する第2筐体(8)のスムーズなスライド動作を実現するために、スライド部材(3)とガイドレール(4)(4)との間に必要最小限の遊びが必要である。
【0004】
しかしながら、図8に示す様に、第1筐体(7)及び第2筐体(8)がそれぞれ横長の外形を有し、スライド方向に沿う縦方向の寸法がスライド方向とは直交する横方向の寸法よりも小さく形成されているスライド式電子機器においては、外形寸法の制約から、スライド機構を構成するガイドレール(4)(4)の長さを充分に大きく設計することが出来ないため、スライド部材(3)とガイドレール(4)(4)との間に必要な遊びを設けた場合、第2筐体(8)にスライド方向とは交叉する方向のガタツキが生じることとなり、スムーズなスライド動作を阻害する問題があった。
【0005】
又、スライド部材(3)は板金製であるため、落下などによってスライド機構に衝撃が加わった場合、スライド部材(3)のガイドレール(4)に対する係合部(31)に応力が集中し、場合によってはスライド部材(3)の係合部(31)が塑性変形してしまい、その結果、第2筐体(8)のスライド時のガタツキが更に拡大する問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、使用中に衝撃が加わることがあったとしても、第1筐体に対する第2筐体のスムーズなスライド動作を維持することが出来るスライド式電子機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るスライド式電子機器においては、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)がスライド可能に係合し、第1筐体(1)と第2筐体(2)との間には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイドレール(4)(4)と該ガイドレール(4)(4)に摺動可能に係合する金属製のスライド部材(3)とから構成されるスライド機構が配備されている。
又、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の何れか一方の筐体には、前記一対のガイドレール(4)(4)に沿って、前記縦方向に伸びる左右一対のガイド溝(6)(6)が凹設されると共に、他方の筐体には、前記一対のガイド溝(6)(6)にそれぞれ摺動可能に係合する樹脂製の一対の摺動片(5)(5)が配備されている。
【0008】
具体的構成において、第1筐体(1)及び第2筐体(2)はそれぞれ、前記縦方向の寸法がスライド方向とは直交する横方向の寸法よりも小さく形成されている。
【0009】
上記本発明のスライド式電子機器においては、従来と同様の一対のガイドレール(4)(4)とスライド部材(3)とから構成される第1のスライド機構が配備されると共に、その両側に、一対のガイド溝(6)(6)と一対の摺動片(5)(5)から構成される第2のスライド機構が配備されているので、第1筐体(1)及び第2筐体(2)がそれぞれスライド方向とは直交する方向に長い横長の外形を有している場合においても、2つのスライド機構によるガイドによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)のスライド時のガタツキが抑制される。
【0010】
又、落下などによって両スライド機構に衝撃が加わり、第1のスライド機構を構成する金属製のスライド部材(3)に応力が集中することよって、スライド部材(3)の一部が塑性変形したとしても、第2のスライド機構を構成する摺動片(5)は樹脂製であるので、一定限度内の外力の作用では、摺動片(5)は弾性変形して、摺動片(5)とガイド溝(6)との間の遊びは適正な大きさに維持される。
従って、第2のスライド機構によるガイドによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)のスライド時のガタツキが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスライド式電子機器によれば、使用中に衝撃が加わることがあったとしても、第1筐体に対する第2筐体のスムーズなスライド動作を維持することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
本発明に係るスライド式電子機器は、図1及び図2に示す如く、表面に主にテンキーが配備された第1筐体(1)と、表面に主に機能キーが配備された第2筐体(2)とから構成され、第1筐体(1)に対して第2筐体(2)のスライドが可能となっている。
【0013】
図1に示す如く、第1筐体(1)及び第2筐体(2)はそれぞれ、第2筐体(2)のスライド方向に沿う縦方向の寸法Bがスライド方向とは直交する横方向の寸法Aよりも小さく形成されている。
【0014】
図3に示す如く、第2筐体(2)の内面には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイドレール(4)(4)が配備され、該ガイドレール(4)(4)には、板金製のスライド部材(3)が両側の係合部(31)(31)にて摺動可能に係合し、該スライド部材(3)は第1筐体(1)の内面に連結されている。
斯くして一対のガイドレール(4)(4)とスライド部材(3)とにより、第1のスライド機構が構成されている。
【0015】
又、第2筐体(2)の内面には、一対のガイドレール(4)(4)の両側に、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイド溝(6)(6)が凹設され、図4〜図7に示す如く両ガイド溝(6)(6)には、合成樹脂製の一対の摺動片(5)(5)が摺動可能に係合し、該摺動片(5)(5)は第1筐体(1)の内面に連結されている。
斯くして一対のガイド溝(6)(6)と一対の摺動片(5)(5)とにより、第2のスライド機構が構成されている。
尚、摺動片(5)の材質である合成樹脂としては、スライド部材(3)の材質である金属よりも大きな弾性(耐衝撃性)を発揮するものが採用されている。
【0016】
図6及び図7に示す如く、各摺動片(5)には、第2筐体(2)との対向面に、第2筐体(2)のスライド方向に並ぶ一対の凸部(51)(51)が形成されており、摺動片(5)が第2筐体(2)のガイド溝(6)に沿って摺動する過程における摩擦抵抗を低減させている。
【0017】
上記本発明のスライド式電子機器によれば、従来と同様の第1のスライド機構の両側に、一対のガイド溝(6)(6)と一対の摺動片(5)(5)から構成される第2のスライド機構が配備されているので、2つのスライド機構によるガイドによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)のスライド時のガタツキが抑制される。
【0018】
又、落下などによって両スライド機構に衝撃が加わり、第1のスライド機構を構成する金属製のスライド部材(3)の係合部(31)に応力が集中して、係合部(31)が塑性変形したとしても、第2のスライド機構を構成する摺動片(5)は合成樹脂製であるので、一定限度内の外力の作用では、摺動片(5)は弾性変形して、摺動片(5)とガイド溝(6)との間の遊びは適正な大きさに維持される。
従って、第2のスライド機構によるガイドによって、第1筐体(1)に対する第2筐体(2)のスライド時のガタツキが抑制され、第2筐体(2)のスムーズなスライド動作が維持される。
【0019】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば上記実施例では、第2筐体(2)にガイド溝(6)(6)を形成し、第1筐体(1)に摺動片(5)(5)を配備しているが、逆に第1筐体(1)にガイド溝(6)(6)を形成し、第2筐体(2)に摺動片(5)(5)を配備する構成も採用可能である。
又、第1のスライド機構としては、図3に示すものに限らず、従来より公知の種々のスライド機構を採用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るスライド式電子機器の閉じた状態を表わす斜視図である。
【図2】該スライド式電子機器の開いた状態を表わす斜視図である。
【図3】該スライド式電子機器の分解斜視図である。
【図4】該スライド式電子機器の横断面図である。
【図5】該スライド式電子機器の縦断面図である。
【図6】図4のA部を拡大して示す断面図である。
【図7】図5のB部を拡大して示す断面図である。
【図8】従来のスライド式電子機器を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
(1) 第1筐体
(2) 第2筐体
(3) スライド部材
(31) 係合部
(4) ガイドレール
(5) 摺動片
(6) ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1筐体(1)に対して第2筐体(2)がスライド可能に係合し、第1筐体(1)と第2筐体(2)との間には、第2筐体(2)のスライド方向に沿って伸びる左右一対のガイドレール(4)(4)と該ガイドレール(4)(4)に摺動可能に係合する金属製のスライド部材(3)とから構成されるスライド機構が配備されているスライド式電子機器において、第1筐体(1)及び第2筐体(2)の何れか一方の筐体には、前記一対のガイドレール(4)(4)に沿って、前記縦方向に伸びる左右一対のガイド溝(6)(6)が凹設されると共に、他方の筐体には、前記一対のガイド溝(6)(6)にそれぞれ摺動可能に係合する樹脂製の一対の摺動片(5)(5)が配備されていることを特徴とするスライド式電子機器。
【請求項2】
第1筐体(1)及び第2筐体(2)はそれぞれ、前記縦方向の寸法がスライド方向とは直交する横方向の寸法よりも小さく形成されている請求項1に記載のスライド式電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−156437(P2009−156437A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338168(P2007−338168)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】