説明

スラグ除去装置及びスラグ除去方法

【課題】スラグと溶融金属との比重の差を利用してスラグの収集を効率的に行うスラグ除去装置及び方法を提供する。
【解決手段】鉛直方向の開口部を有するリング状部10と、リング状部の開口部を下側から塞ぐようにされているプラグ部20と、リング状部を鉛直方向に移動させるリング状部鉛直移動機構30と、プラグ部を鉛直方向に移動させるプラグ部鉛直移動機構40とを備えているスラグ除去装置100、並びにこのスラグ除去装置100を用いるスラグ除去方法とする。この本発明のスラグ除去装置100では、リング状部10の開口部11を下側からプラグ部20で塞ぐことによって、スラグ82を保持するスラグ保持容器が形成されるようにされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属上のスラグをすくい取って除去するスラグ除去装置、及びこのスラグ除去装置を使用するスラグ除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の溶銑予備処理用のスラグ除去装置では、専用の傾動装置によって溶銑面が鍋の払い出し部分まで達するように溶銑鍋を傾かせ、そして溶銑上に浮遊するスラグを、その払い出し部分から掻き出し板で掻き出している。
【0003】
一般に溶銑の予備処理工程の後で、溶銑鍋中の溶銑上に浮遊しているスラグをこのような方法で排出する場合、スラグ除去装置を運転する運転者の技量に依存してその効率が著しく変わり、また溶銑がスラグと共にスラグスポットへ流れ出て、製品ロスを生じたり、スラグスポットが損傷するなどの問題が生じていた。
【0004】
この問題を解決するために、近年、この傾動装置を用いずに、鍋を鉛直状態に維持したままで、鍋の内部のスラグをすくい取ることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2007−515554
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、溶銑鍋を傾かせて浮遊するスラグを掻き出すという従来のスラグ除去方法の問題点を部分的に解決している。しかしながら、この特許文献1に記載の方法も、最適なスラグ除去を達成しているとは言えない。よって本発明は、他のスラグ除去装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記に示すようなものである:
【0008】
(1)鉛直方向の開口部を有するリング状部と、
上記リング状部の開口部を下側から塞ぐようにされているプラグ部と、
上記リング状部を鉛直方向に移動させるリング状部鉛直移動機構と、
上記プラグ部を鉛直方向に移動させるプラグ部鉛直移動機構と、
を備えており、上記リング状部の開口部の下側部分が、上記リング状部の底部から上方に向かってテーパー状に絞り込まれている下側テーパー状部分を有し、上記リング状部の開口部の上側部分が、上記リング状部の上部から下方に向かってテーパー状に絞り込まれている上側テーパー状部分を有し、且つ上記リング状部の開口部を下側から上記プラグ部で塞ぐことによって、上記上側テーパー状部分と上記プラグ部とでスラグ保持容器が形成され、このスラグ保持容器にスラグを保持するようにされている、溶融金属上のスラグを除去するスラグ除去装置。
【0009】
(2)上記リング状部及び上記プラグ部を、水平方向に移動させるリング状部・プラグ部水平移動機構、
を更に備えている、上記第(1)項に記載のスラグ除去装置。
【0010】
(3)上記リング状部の外周径と内周径との比(外周径:内周径)が、10:1〜2:1である、上記第(1)又は(2)項に記載のスラグ除去装置。
【0011】
(4)上記リング状部が、円筒状の外周面を有する、上記第(1)〜(3)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0012】
(5)上記リング状部が、上記溶融金属を保持している鍋の溶融金属液面部分の内周径の80%以上100%未満の外周径を有する、上記第(1)〜(4)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0013】
(6)上記上側及び下側テーパー状部分がそれぞれ、水平面に対して15°〜80°の傾斜を有する、上記第(1)〜(5)項のいずかに記載のスラグ除去装置。
【0014】
(7)上記上側テーパー状部分に沿って相対的に旋回させることができるリング状部用スクレーパーを更に備えている、上記第(1)〜(6)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0015】
(8)上記プラグ部の上側部分が、上記下側テーパー状部分に適合するプラグ部上側部分を有する、上記第(1)〜(7)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0016】
(9)上記プラグ部上側部分に沿って回転させることができるプラグ部用スクレーパーを更に備えている、上記第(1)〜(8)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0017】
(10)上記スラグ保持容器の底部が、上記スラグと上記溶融金属とを分離するための開口部を有する、上記第(1)〜(9)項のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【0018】
(11)下記の工程(a)〜(d)を含む、上記第(1)〜(10)項のいずれかに記載のスラグ除去装置を使用して上記溶融金属上のスラグを除去する方法:
(a)上記プラグ部鉛直移動機構によって、上記プラグ部を上記溶融金属中に浸漬すること、
(b)上記スラグの少なくとも一部が上記リング状部の上側テーパー状部分の上に来るようにして、上記リング状部鉛直移動機構によって、上記リング状部を少なくとも部分的に上記溶融金属中に浸漬させること、
(c)スラグ保持容器にスラグを保持するようにして、上記プラグ部鉛直移動機構によって、上記プラグ部を上方に移動させること、並びに
(d)上記スラグ保持容器にスラグを保持したままで、上記テーパー状部鉛直移動機構及び上記プラグ部鉛直移動機構によって、上記リング状部及び上記プラグ部とを上方に移動させて、上記溶融金属上からスラグを除去すること。
【0019】
(12)上記溶融金属が、脱ケイ素、脱リン及び/又は脱硫処理された溶銑である、上記第(11)項に記載のスラグ除去方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスラグ除去装置によれば、スラグと溶融金属との比重の差を利用してスラグの収集を効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(スラグ除去装置)
溶融金属上のスラグを除去する本発明のスラグ除去装置は、鉛直方向の開口部を有するリング状部と、リング状部の開口部を下側から塞ぐようにされているプラグ部と、リング状部を鉛直方向に移動させるリング状部鉛直移動機構と、プラグ部を鉛直方向に移動させるプラグ部鉛直移動機構とを備えている。
【0022】
本発明のスラグ除去装置を使用してスラグを除去される溶融金属は、脱ケイ素、脱リン及び/又は脱硫処理された溶銑、特に脱硫処理された溶銑であってよい。脱硫処理された溶銑からスラグを除去するときに溶銑上にスラグが残留すると、スラグから溶銑に硫黄分が戻ってしまうので、本発明のスラグ除去装置を用いてスラグを効果的に除去することは特に好ましい。
【0023】
(スラグ除去装置−リング状部)
本発明のスラグ除去装置で用いられるリング状部(又はドーナツ状部)は、鉛直方向の開口部を有する。
【0024】
リング状部の開口部の下側部分は、底部から上方に向かってテーパー状に絞り込まれている下側テーパー状部分を有する。この下側テーパー状部分は、リング状部を少なくとも部分的に溶融金属中に浸漬させたときに、スラグと溶融金属との比重の差によって、溶融金属上のスラグを開口部の中央部に向けて集積させる。
【0025】
リング状部の外周径と内周径との比(リング状部の外周径:リング状部の内周径)は、任意に決定することができ、例えば10:1〜2:1、特に5:1〜2:1、より特に約3:1にすることができる。リング状部の外周径に対する内周径の割合が大きい場合、リング状部を溶融金属に浸漬したときに、開口部に集まるスラグの集積の程度が小さくなり、またリング状部の外周径に対する内周径の割合が小さい場合、開口部に集まるスラグの集積の程度が大きくなる。
【0026】
リング状部の開口部の上側部分は、リング状部の上部から下方に向かってテーパー状に絞り込まれている上側テーパー状部分を有する。この上側テーパー状部分は、リング状部の開口部を下側からプラグ部で塞ぐことによって、上側テーパー状部分とプラグ部とで、スラグ保持容器を形成するようにされている。
【0027】
リング状部は、任意形状の外周形、例えば円筒状の外周面を有することができ、リング状部の外周形は特に、本発明のスラグ除去装置によってスラグを除去する溶融金属鍋への導入に適した形状にすることができる。したがって例えば、円筒状の形状の溶融金属鍋からスラグを除去する場合、リング状部が円筒状の外周面を有することが好ましいことがある。
【0028】
リング状部は具体的には例えば、三角形を回転軸から離して回転させて得られる回転体であり、且つ回転体の3つの面が、円筒状の外周面、上側テーパー状部分、及び下側テーパー状部分であってよい。また、このリング状部は例えば、台形を回転軸から離して回転させて得られる回転体であり、且つ台形の平行な2つの辺によって作られる面が内周面及び外周面であり、台形の斜辺によって作られる面が、上側テーパー状部分、及び下側テーパー状部分であってよい。
【0029】
リング状部は、本発明のスラグ除去装置によってスラグを除去する溶融金属鍋への導入が可能な任意の外周径を有することができる。したがって例えば、溶融金属を保持している鍋の溶融金属液面部分の内周径の80%以上100%未満、特に90%以上100%未満の外周径を有することができる。
【0030】
リング状部の上側テーパー状部分は、リング状部の開口部を下側からプラグ部で塞いだときに、上側テーパー状部分とプラグ部とでスラグを保持するスラグ保持容器を形成することができる任意の傾斜を有することができる。ここでこの傾斜は、上側テーパー状部分とプラグ部とで形成されるスラグ保持容器の形状、容積、スラグ排出の容易さ等を考慮して決定することができる。ここでこの傾斜が大きいことは、スラグの排出に関して好ましいことがある。具体的には、リング状部の上側テーパー状部分は、水平面に対して15°〜80°、特に30°〜80°の傾斜を有することができる。
【0031】
リング状部の下側テーパー状部分は、リング状部を溶融金属中に浸漬させていくときに、溶融金属上のスラグを開口部の中央部に向けて集積させることができる任意の傾斜を有することができる。具体的には、リング状部の下側テーパー状部分は、水平面に対して15°〜80°、特に30°〜80°の傾斜を有することができる。
【0032】
リング状部は、上側テーパー状部分とプラグ部とで作られるスラグ保持容器に捕集されたスラグからの溶融金属の分離を促進する構造を有することができる。これに関して、リング状部は例えば、リング状部自体に提供されている流路、リング状部とプラグ部との間に流路を形成するためのリング状部の表面構造等を有し、それによってスラグ保持容器の底部が、スラグと溶融金属とを分離するための開口部を有するようにすることができる。なお、スラグ保持容器の底部がスラグと溶融金属とを分離するための開口部を有するためには単に、リング状部とプラグ部とが間隔をあけてスラグ保持容器を形成するようにしてもよい。
【0033】
(スラグ除去装置−プラグ部)
本発明のスラグ除去装置で用いられるプラグ部は、リング状部の開口部を下側から塞ぐようにされている。したがって当然に、プラグ部は、リング状部の開口部の大きさに応じた大きさを有することが必要である。このプラグ部の上側部分は、リング状部の開口部を下側から塞ぐための形状を有することが必要であり、例えばプラグ部の上側部分は、開口部の下側テーパー状部分に適合するプラグ状部上側部分を有することができる。
【0034】
本発明のスラグ除去装置で用いられるプラグ部は、上側テーパー状部分とプラグ部とで作られるスラグ保持容器に捕集されたスラグからの溶融金属の分離を促進する構造を有することができる。これに関して、プラグ部は例えば、プラグ部自体に提供されている流路、リング状部とプラグ部との間に流路を形成するためのプラグ部の表面構造等を有することができ、それによってスラグ保持容器の底部が、スラグと溶融金属とを分離するための開口部を有するようにすることができる。なお、スラグ保持容器の底部がスラグと溶融金属とを分離するための開口部を有するためには単に、リング状部とプラグ部とが間隔をあけてスラグ保持容器を形成するようにしてもよい。
【0035】
(スラグ除去装置−移動機構)
本発明のスラグ除去装置で用いられるリング状部鉛直移動機構及びプラグ部鉛直移動機構はそれぞれ、リング状部及びプラグ部を鉛直方向に移動させることができる任意の機構、例えば油圧モーター、油圧シリンダー若しくは電気モーターのような動力源、又はこのような動力源と、歯車若しくはワイヤーのような動力伝達機構との組み合わせであってよい。リング状部・プラグ部水平移動機構は、リング状部及びプラグ部を水平方向に移動させることができる任意の機構、例えば上記のような機構であってよい。
【0036】
リング状部鉛直移動機構、プラグ部鉛直移動機構、及びリング状部・プラグ部水平移動機構は、それぞれ別個の装置とされていても、組み合わされて1つの機構とされていてもよい。
【0037】
リング状部及びプラグ部の溶融金属内に浸漬させることは、リング状部及び/又はプラグ部自体、並びにそれに付随する部品の重さを用いて行うことができる。しかしながら、溶融金属の比重が相対的に大きく、それによってリング状部及び/又はプラグ部自体の重さだけではリング状部及び/又はプラグ部の浸漬を行えない場合、リング状部及び/又はプラグ部を溶融金属内に押し込むための押し込み機構が必要となる。
【0038】
(スラグ除去装置−その他)
本発明のスラグ除去装置は、リング状部の上側テーパー状部分に沿って相対的に旋回させることができるリング状部用スクレーパーを更に備えていてもよい。また、本発明のスラグ除去装置は、プラグ部上側部分に沿って相対的に旋回させることができるプラグ部用スクレーパーを更に備えていてもよい。
【0039】
このようなリング状部用及びプラグ用スクレーパーはそれぞれ、リング状部の上側テーパー状部分及びプラグ部上側部分の表面のスラグを掻き落とすことができる。したがって、これらは、上側テーパー状部分とプラグ部とで作られるスラグ保持容器に捕集されたスラグの排出を確実にするために好ましいことがある。
【0040】
(スラグ除去方法)
本発明のスラグ除去装置を使用して溶融金属上のスラグを除去する本発明の方法は、下記の工程(a)〜(d)を含む:
(a)プラグ部鉛直移動機構によって、プラグ部を溶融金属中に浸漬すること、
(b)スラグの少なくとも一部がリング状部の上側テーパー状部分の上に来るようにして、リング状部鉛直移動機構によって、リング状部を少なくとも部分的に溶融金属中に浸漬させること、
(c)スラグ保持容器にスラグを保持するようにして、プラグ部鉛直移動機構によって、プラグ部を上方に移動させること、並びに
(d)スラグ保持容器にスラグを保持したままで、テーパー状部鉛直移動機構及びプラグ部鉛直移動機構によって、リング状部及びプラグ部とを上方に移動させて、溶融金属上からスラグを除去すること。
【0041】
溶融金属上のスラグを除去する本発明の方法の工程(b)において、リング状部を溶融金属中に浸漬させていくと、溶融金属に対するスラグの比重が小さいので、下側テーパー状部分に沿って溶融金属上のスラグが開口部の中央部に向けて集積される。また、リング状部を更に溶融金属中に浸漬させていくと、スラグが下側テーパー状部分を超えて、リング状部の上側テーパー状部分の上に来る。
【0042】
その後、工程(c)において、プラグ部によってリング状部の開口部を下側から塞ぐことによって、上側テーパー状部分とプラグ部とで作られるスラグ保持容器にスラグを保持し、そして工程(d)において、スラグを保持しているリング状部及びプラグ部とを上方に移動させて、溶融金属上からスラグを除去する。
【0043】
このようにして溶融金属上から除去したスラグは、スラグを保持しているリング状部及びプラグ部を水平方向に移動させて、随意のスラグポットに排出する。この排出は、リング状部の開口部を下側から塞いでいるプラグ部を下方に移動させて、上側テーパー状部分とプラグ部とで作られるスラグ保持容器の底部を開放することによって達成できる。
【0044】
(具体的態様)
以下では、図面を用いて本発明のスラグ除去装置及びスラグ除去方法の具体的態様を説明するが、これらの具体的態様は例示であり、本発明の範囲をいかようにも限定するものではない。
【0045】
図1に示す本発明のスラグ除去装置の1つの例では、溶融金属上のスラグを除去する本発明のスラグ除去装置100は、鉛直方向の開口部を有するリング状部10と、リング状部10の開口部11を下側から塞ぐようにされているプラグ部20と、リング状部10を鉛直方向に移動させるリング状部鉛直移動機構30と、プラグ部を鉛直方向に移動させるプラグ部鉛直移動機構40とを備えている。
【0046】
リング状部鉛直移動機構30は、電気モーター等の動力源31の動力によってワイヤー32を介して、矢印19で示すようにして、リング状部10を鉛直方向に移動させ、それによってリング状部10を溶融金属81内に浸漬させることができるようにされている。ここでこの溶融金属81は、溶融金属鍋80に入っており、溶融金属81上には、本発明のスラグ除去装置100によって除去するスラグ82が存在している。プラグ部鉛直移動機構40は、電気モーター等の動力源41の動力によってワイヤー42を介して、矢印29で示すようにして、プラグ部20を鉛直方向に移動させ、それによってプラグ部20を溶融金属81内に浸漬させることができるようにされている。
【0047】
リング状部10の開口部11の下側部分は、リング状部10の底部から上方に向かってテーパー状に絞り込まれている下側テーパー状部分12を有し、またリング状部10の開口部11の上側部分は、リング状部の上部から下方に向かってテーパー状に絞り込まれている上側テーパー状部分13を有する。
【0048】
また、この図1に示す本発明のスラグ除去装置100は、リング状部10及びプラグ部20を、水平方向に移動させるリング状部・プラグ部水平移動機構50を更に備えている。このリング状部・プラグ部水平移動機構50は、レール51及び横行装置52を有している。この横行装置52は、矢印59で示すようにして、レール51上を水平移動できるようにされており、それによって本発明のスラグ除去装置100を全体として、溶融金属鍋80上からスラグポット90上まで移動させることができるようにされている。
【0049】
この図1に示す本発明のスラグ除去装置で用いられているリング状部10の拡大図を図2に示す。ここで、図2(a)はリング状部10の垂直断面図であり、また図2(b)はリング状部10の上面図である。
【0050】
図2で示すリング状部10は、三角形を回転軸15から離して回転させて得られる回転体であり、且つ回転体の3つの面が、円筒状の外周面14、上側テーパー状部分13、及び下側テーパー状部分12である回転体である。このリング状部10の外周径と内周径との比(外周径(x):内周径(y))は、3:1となっている。リング状部10の上側テーパー状部分13は、水平面に対して角度pで表される傾斜を有し、またリング状部の下側テーパー状部分は、水平面に対して角度qで表される傾斜を有している。
【0051】
図1に示す本発明のスラグ除去装置で用いられているプラグ部の拡大図を図3に示す。ここで、図3(a)はプラグ部の側面図であり、図3(b)はプラグ部の上面図である。
【0052】
図3で示すプラグ部20は、2つの円錐体21及び22を互いの底面で重ね合わせた形状を有する。プラグ部20の上側部分21は、リング状部10の開口部11の下側テーパー状部分12に適合するテーパー状部分23を有する。
【0053】
図2で示されるリング状部10及び図3で示されるプラグ部20は、図4の垂直断面図に示すようにして組み合わせることによって、上側テーパー状部分13とプラグ部20の上側部分23とで作られるスラグ保持容器hを形成することができる。ここでは、リング状部10の下側テーパー状部12とプラグ部20の上側部分23とが間隔をあけてスラグ保持容器hを形成するようにして、スラグ保持容器hの底部が、スラグと溶融金属とを分離するための開口部fを有するようにしている。
【0054】
図5で示される本発明のスラグ除去装置200では、図1で示される本発明のスラグ除去装置100が更に、プラグ部用スクレーパー72及びリング状部用スクレーパー71を備えている。ここで、図5(a)で示すように、リング状部用スクレーパー71をリング状部10の上側テーパー状部分13に接触させ、そしてプラグ部20を保持している支持部と共にリング状部用スクレーパー71を旋回させることによって、リング状部用スクレーパー71を、リング状部10の上側テーパー状部分13に沿って相対的に旋回させることができる。同様に、図5(b)で示すように、プラグ部用スクレーパー72をプラグ部20の上側部分のテーパー状部分23に接触させ、そしてプラグ部20を保持している支持部と共にプラグ部20を旋回させることによって、プラグ部用スクレーパー72を、プラグ部20の上側部分のテーパー状部分23に沿って相対的に旋回させることができる。
【0055】
図1に示す本発明のスラグ除去装置100を使用して溶融金属上のスラグを除去する本発明の方法の例を、図6を用いて説明する。ここでこの図6では、図面の記載を簡潔にするために、本発明のスラグ除去装置100のうちのリング状部10及びプラグ部20以外の部分、例えばリング状部鉛直移動機構、及びプラグ部鉛直移動機構については、記載を省略している。
【0056】
図6で示される本発明のスラグ除去方法では、初めに、リング状部・プラグ部水平移動機構(図示せず)によって、リング状部10及びプラグ部20を、溶融金属81及び溶融金属81上のスラグ82を保持している溶融金属鍋80の上方に配置する(図6(a))。その後、プラグ部鉛直移動機構(図示せず)によって、プラグ部20を溶融金属81中に浸漬させ(図6(b))、そしてスラグ82がリング状部81の上側テーパー状部分13の上に来るようにして、リング状部鉛直移動機構(図示せず)によって、リング状部10を部分的に溶融金属81中に浸漬させる(図6(c)及び(d))。
【0057】
リング状部10を部分的に溶融金属81中に浸漬させた後、プラグ部鉛直移動機構(図示せず)によって、プラグ部20を上方に移動させて、プラグ部20がリング状部10の開口部を下側から塞ぎ、それによって上側テーパー状部分13とプラグ部20とで作られるスラグ保持容器にスラグ82を保持する(図6(e))。このようにしてスラグ保持容器にスラグ82を保持したままで、リング状部鉛直移動機構及びプラグ部鉛直移動機構(図示せず)によって、リング状部10及びプラグ部20を上方に移動させて、溶融金属81上からスラグ82を除去する(図6(f))。
【0058】
リング状部10及びプラグ部20によって溶融金属81上から除去したスラグ82は、スラグ82を保持しているリング状部10及びプラグ部20をスラグポット90上に移動させた後で、スラグポット90内に排出する(図6(f))。この排出は、リング状部10とプラグ部20とを離して、リング状部10の上側テーパー状部分13とプラグ部20とで作られるスラグ保持容器の底部を開放することによって行う。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明のスラグ除去装置の例を示す図である。
【図2】本発明のスラグ除去装置で用いられるリング状部の例を示す図である。
【図3】本発明のスラグ除去装置で用いられるプラグ部の例を示す図である。
【図4】本発明のスラグ除去装置で用いられるリング状部及びプラグ部の組み合わせの例を示す図である。
【図5】本発明のスラグ除去装置で用いられるプラグ部用スクレーパー及びリング状部用スクレーパーの例を示す図である。
【図6】本発明のスラグ除去装置によるスラグ除去方法の例を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
100 スラグ除去装置
10 リング状部
20 プラグ部
80 溶融金属鍋
81 溶融金属
82 スラグ
30 リング状部鉛直移動機構
40 プラグ部鉛直移動機構
50 リング状部・プラグ部水平移動機構
90 スラグポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向の開口部を有するリング状部と、
前記リング状部の開口部を下側から塞ぐようにされているプラグ部と、
前記リング状部を鉛直方向に移動させるリング状部鉛直移動機構と、
前記プラグ部を鉛直方向に移動させるプラグ部鉛直移動機構と、
を備えており、前記リング状部の開口部の下側部分が、前記リング状部の底部から上方に向かってテーパー状に絞り込まれている下側テーパー状部分を有し、前記リング状部の開口部の上側部分が、前記リング状部の上部から下方に向かってテーパー状に絞り込まれている上側テーパー状部分を有し、且つ前記リング状部の開口部を下側から前記プラグ部で塞ぐことによって、前記上側テーパー状部分と前記プラグ部とでスラグ保持容器が形成され、このスラグ保持容器にスラグを保持するようにされている、溶融金属上のスラグを除去するスラグ除去装置。
【請求項2】
前記リング状部及び前記プラグ部を、水平方向に移動させるリング状部・プラグ部水平移動機構、
を更に備えている、請求項1に記載のスラグ除去装置。
【請求項3】
前記リング状部の外周径と内周径との比(外周径:内周径)が、10:1〜2:1である、請求項1又は2に記載のスラグ除去装置。
【請求項4】
前記リング状部が、円筒状の外周面を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項5】
前記リング状部が、前記溶融金属を保持している鍋の溶融金属液面部分の内周径の80%以上100%未満の外周径を有する、請求項1〜4のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項6】
前記上側及び下側テーパー状部分がそれぞれ、水平面に対して15°〜80°の傾斜を有する、請求項1〜5のいずかに記載のスラグ除去装置。
【請求項7】
前記上側テーパー状部分に沿って相対的に旋回させることができるリング状部用スクレーパーを更に備えている、請求項1〜6のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項8】
前記プラグ部の上側部分が、前記下側テーパー状部分に適合するプラグ部上側部分を有する、請求項1〜7のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項9】
前記プラグ部上側部分に沿って回転させることができるプラグ部用スクレーパーを更に備えている、請求項1〜8のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項10】
前記スラグ保持容器の底部が、前記スラグと前記溶融金属とを分離するための開口部を有する、請求項1〜9のいずれかに記載のスラグ除去装置。
【請求項11】
下記の工程(a)〜(d)を含む、請求項1〜10のいずれかに記載のスラグ除去装置を使用して前記溶融金属上のスラグを除去する方法:
(a)前記プラグ部鉛直移動機構によって、前記プラグ部を前記溶融金属中に浸漬すること、
(b)前記スラグの少なくとも一部が前記リング状部の上側テーパー状部分の上に来るようにして、前記リング状部鉛直移動機構によって、前記リング状部を少なくとも部分的に前記溶融金属中に浸漬させること、
(c)前記スラグ保持容器にスラグを保持するようにして、前記プラグ部鉛直移動機構によって、前記プラグ部を上方に移動させること、並びに
(d)前記スラグ保持容器にスラグを保持したままで、前記テーパー状部鉛直移動機構及び前記プラグ部鉛直移動機構によって、前記リング状部及び前記プラグ部とを上方に移動させて、前記溶融金属上からスラグを除去すること。
【請求項12】
前記溶融金属が、脱ケイ素、脱リン及び/又は脱硫処理された溶銑である、請求項11に記載のスラグ除去方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−197265(P2009−197265A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38729(P2008−38729)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(501304814)ダイヤモンドエンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】