説明

スラスト玉軸受、回転体支持装置及び斜板式ピストンポンプ

【課題】回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して一方向のラジアル荷重で特定の偏心量で偏心する使用条件において軌道溝の損傷を防止することが可能なスラスト玉軸受を提供する。
【解決手段】取付け手段5で鋼板製の固定側軌道盤1を軸受座4に締結し、円周方向の二等分位置上の最低座面部8、8及び両最低座面部8、8間を円周方向に繋ぐ各経路上の高座面部9、9に沿わせた状態に固定することにより、固定側軌道盤1の軌道溝6に、最低座面部8、8に支持された溝最低位部6a、6aと、高座面部9、9に支持された溝高位部6b、6bとを生じさせる。両溝最低位部6a、6aを含むアキシアル平面の向きと一方向のラジアル荷重Frの向きとを一致させて使用する限り、上記の使用条件で溝高位部6b、6b及び回転側軌道盤2の軌道溝7と玉3との接触を可能とし、これにより、すきま域が生じないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラスト玉軸受、そのスラスト玉軸受を用いた回転体支持装置、及び斜板式ピストンポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
スラスト玉軸受が回転体を回転軸方向に支持する回転体支持装置を利用したものとして斜板式ピストンポンプがある。斜板式ピストンポンプは、複数のピストンを入れたシリンダブロックと、複数のピストンの往復運動を規制するための斜板とを備え、シリンダブロックと複数のピストンとが同心回転するようになっている。回転中の各ピストンは、前記回転中心線に沿った方向の位置を斜板によって規制されつつ同方向に沿って往復移動する。シリンダブロックの各ピストンの背後に設けられた油室は、シリンダブロックの回転位置に応じて弁板の吸込みポート又は吐出ポートと連通する。シリンダブロックの回転位置に応じた各ピストンの往復移動により、油室に順次流体が吸入・吐出され、油圧ポンプとして機能する。
【0003】
各ピストンの回転抵抗を軽減するため、斜板に軸受を用いることが実施されている。負荷が比較的に小さい小型機種では、斜板がスラスト玉軸受からなる。高負荷、高速下で使用される大型機種では、斜板がスラストニードル軸受や滑り軸受からなる。斜板がスラスト玉軸受からなる場合、固定側軌道盤の中心軸は軸受中心軸に設定される。固定側軌道盤は、前記回転中心線に対して一定の傾斜をもってケーシング側に固定されている。各ピストンの先端部は、回転側軌道盤の背面に押し当られる。このようにスラスト玉軸受で各ピストンを前記回転中心線に沿った方向に支持する結果、回転側軌道盤は、軸受中心軸の傾斜に伴う分力として各ピストンから一方向のラジアル分力を与えられる。すなわち、回転側軌道盤は、全体として斜板の傾斜に基く一方向のラジアル荷重を与えられた状態で回転する(例えば、特許文献1、2)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−186665号公報
【特許文献2】特開2007−170636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スラスト玉軸受は、純アキシアル荷重を負荷された状態で全ての玉と両軌道盤の軌道溝とを均等に接触させることを前提に設計されている。このため、両軌道溝の横断面形状は、通常、円周方向全周に亘って一定に形成されている。
【0006】
図8、図9に示すように、一方向のラジアル荷重Frを与えられた回転側軌道盤51は、固定側軌道盤52に対してラジアル荷重Frと同じ方向に偏心する。回転側軌道盤51が偏心量δを生じると、玉53、53・・・と両軌道溝54、55との接触位置がずれ、回転側軌道盤51が特定の上昇量hだけ上昇する。その結果、玉53と両軌道溝54、55とが接触し、玉53に対して負荷が与えられる負荷域A1、A2が生じる。また、玉53と両軌道溝54、55との同時接触が不可能であり、玉53に対して負荷が与えられることの無いすきま域A3、A4が生じる。なお、両軌道盤51、52が同心時における回転側軌道盤51の位置を図9中に一点鎖線で示し、図8、図9は、回転側軌道盤51の偏心、上昇を誇張した図示になっている。
【0007】
すきま域A3、A4が生じると、その分、負荷域A1、A2における玉53と両軌道溝54、55との弾性接触域で負担が増し、接触面圧が過大となる。また、すきま域A3、A4と負荷域A1、A2の位置関係から、すきま域A3、A4においては、回転側の軌道溝54が負荷域A1、A2による両側からの曲げ荷重が与えられ、ひいては、スラスト玉軸受の回転により繰り返し曲げ応力が発生することになる。これら接触面圧の過大や曲げ荷重等が原因で軌道溝54、55に損傷を生じることが散見される。この問題は、斜板にスラスト玉軸受を用いたときに限らず、回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して一方向のラジアル荷重で偏心し、かつ特定の上昇量を生じた状態で回転する条件下で同じように発生する。
【0008】
回転側軌道盤51の外周にメタルブッシュを嵌合すれば、回転側軌道盤51の偏心を防ぎ、前記の損傷を防止することはできる。しかしながら、メタルブッシュの組み込み作業や設置空間を要する。小型の斜板式ピストンポンプや油圧モータ等の狭いケーシング内でメタルブッシュを使用することは好ましくない。
【0009】
上記の事情に鑑み、この発明の課題は、回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して一方向のラジアル荷重で特定の偏心量で偏心する使用条件において軌道溝の損傷を防止することが可能なスラスト玉軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するため、この発明は、軌道溝を形成された固定側軌道盤及び回転側軌道盤を備えるスラスト玉軸受において、前記固定側軌道盤を支持する軸受座と、前記固定側軌道盤を前記軸受座に固定する取付け手段とを備え、この軸受座は円周方向の二等分位置上の二箇所に形成された最低座面部と、これら最低座面部間を円周方向に繋ぐ各経路上に形成された高座面部とを有し、前記取付け手段で前記固定側軌道盤を前記二箇所の最低座面部及び高座面部に沿わせた状態に固定することにより、前記固定側軌道盤の軌道溝は前記最低座面部に支持された溝最低位部を前記二等分位置上の二箇所に生じると共に、前記高座面部に支持された溝高位部を両溝最低位部間の各経路上に生じるようになっており、前記回転側軌道盤が前記固定側軌道盤に対して前記二等分位置を含むアキシアル平面に沿った一方向のラジアル方向に特定の偏心量で偏心する状態を考えたとき、前記溝高位部及び前記回転側軌道盤の軌道溝と玉との接触が可能である構成を採用する。
ここで、円周方向は、軸受中心軸回りの円周方向のことをいう。軸受中心軸は、固定側軌道盤の中心軸に一致している。ラジアル及びアキシアルの方向概念は、軸受中心軸に基く。軸受座の座面及び固定側軌道盤の軌道溝の高低は、アキシアル方向の高低のことをいう。
【0011】
この発明の構成によれば、取付け手段で固定側軌道盤を円周方向の二等分位置上の二箇所の最低座面部及び両最低座面部間を円周方向に繋ぐ各経路上の高座面部に沿わせた状態に固定することにより、最低座面部及び高座面部の円周方向位置関係及び高低差に応じて固定側軌道盤を正面側に盛り上げ、固定側軌道盤の軌道溝のうち、円周方向の二等分位置上の二箇所に、最低座面部に支持された溝最低位部を生じさせ、両溝最低位部間の各経路上に、高座面部に支持された溝高位部を生じさせることができる。
回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して前記二等分位置を含むアキシアル平面に沿った一方向のラジアル方向に特定の偏心量で偏心する状態を考えたとき(以下、この状態を前提使用条件と称する)、それら二等分位置の二箇所上で玉と両軌道盤の軌道溝間にすきまが生じず、玉の公転半径が最も大きく変化し、回転側軌道盤に対する固定側軌道盤のアキシアル方向位置が決まる。それら二等分位置上に溝最低位部を位置させれば、両溝最低位部を繋ぐ各経路上の溝高位部は、従来例ならばすきま域が発生する領域内に位置する。
前記の偏心が玉及び両軌道盤の軌道溝間の幾何的関係に及ぼす影響は、幾何学演算で予め求めることができる。このため、溝最低位部に対する溝高位部の任意の円周方向位置における上昇量は、前提使用条件において溝高位部及び回転側軌道盤の軌道溝と玉との接触が可能であるように求めることができる。このような溝高位部を従来すきま域となる領域に存在させれば、前提使用条件で軸受を運転する限り、円周方向のどの位置においてもすきま域が発生せず、ひいては、上述の接触面圧の過大や曲げ荷重の発生が避けられる。したがって、軌道溝の損傷を防止することができる。
【0012】
固定側軌道盤、軸受座、及び取付け手段は、所定の溝最低位部及び溝高位部の発生・維持を可能な限り、適宜の構成を採用すればよい。
【0013】
具体的な構成として、前記固定側軌道盤の軌道溝は前記二等分位置を含むアキシアル平面を境とした両半周域に次の式1に従う上昇量を生じる構成を採用することができる。
【0014】
式1:Δ(θ)=dw(mi−1){cos(α|cosθ|)−cosα}+dw(me−1){cos(αcosθ)−cosα}
【0015】
式1において、Δ(θ):軸受中心軸回りの回転角度θにおける前記上昇量(ただし、前記二等分位置を含むアキシアル平面上にθ=0°、180°を定め、0°≦θ≦180°の範囲とする)、dw:玉径、mi:前記回転側軌道盤の軌道溝の溝曲率(ただし、一定とする)、α:前記特定の偏心量で偏心する状態における前記二等分位置上の呼び作用線とアキシアル平面とが成す角度、me:前記固定側軌道盤の軌道溝の溝曲率(ただし、一定とする)である。
【0016】
図8、図9に示した従来例が前提使用条件にあるとき、回転側軌道盤51の上昇量hは次の式Aで求まる。
【0017】
式A:h=dw(mi−1)(1−cosα)+dw(me−1)(1−cosα)
【0018】
式Aにおいて、dw:玉径、mi:回転側軌道盤51の軌道溝の溝曲率(ただし、円周方向全周に亘って一定とする)、α:前記特定の偏心量δで偏心する状態における前記二等分位置上の呼び作用線とアキシアル平面とが成す角度、me:固定側軌道盤52の軌道溝の溝曲率(ただし、円周方向全周に亘って一定とする)である。
【0019】
従来例のすきま域で生じるすきま量は、スラスト軸受の対称性から、二等分位置a−a、c−c(θ=0°、180°)を含むアキシアル平面を境とした半周域(0°≦θ≦180°の範囲)で円周方向にどのように変化するかを求めればよい。前提使用条件における回転側軌道盤51の軌道溝と固定側軌道盤52の軌道溝との幾何学関係から、任意のθにおけるすきま量h(θ)は、次の式Bで求めることができる。
【0020】
式B:h(θ)=dw(mi−1){cos(α|cosθ|)−cosα}+dw(me−1){cos(αcosθ)−cosα}
【0021】
上記のすきま量h(θ)が発生しないようにすれば、すきま域が発生することもない。すなわち、式1に従うと、θ=0°、180°上に溝最低位部が位置し、溝高位部は、0°<θ<180°の範囲で円周方向に連続し、任意のθにおいてすきま量h(θ)に相当する上昇量Δ(θ)をもつ。このため、前提使用条件を考えたとき、従来例ならば0°<θ<180°の範囲の経路上に生じ得たすきま量が溝高位部で相殺される。
【0022】
すなわち、式1によれば、前提使用条件下で軸受を運転する限り、溝高位部及び回転側軌道盤の軌道溝と玉との接触が可能なスラスト玉軸受を得ることができる。また、mi、meを一定とする式1によれば、軌道溝をスラスト玉軸受の標準的な形態から変更することなく、この発明を適用することができる。
【0023】
なお、この発明においては、溝高位部により各経路上におけるすきま域の発生を無くすことが可能な限り、溝高位部を適宜に生じさせればよい。例えば、式1以上の上昇量を生じさせて適宜の予圧を与えることもできる。
【0024】
また、具体的な構成として、前記取付け手段は前記固定側軌道盤と前記軸受座とをアキシアル方向にねじ止めする締結装置からなる構成を採用することができる。
【0025】
また、具体的な構成として、前記取付け手段は接着剤からなる構成を採用することもできる。
【0026】
分解性を考慮すれば、取付け手段は上述の締結装置が好ましく、部材数を考慮すれば、上述の接着が好ましい。
【0027】
具体的な構成として、前記固定側軌道盤は鋼板からなる構成を採用することができる。
【0028】
固定側軌道盤を鋼板製にすれば、取付け手段によって軸受座の最低座面部及び高座面部に沿わせる変形を容易に生じさせることができる。
【0029】
具体的な構成として、固定側軌道盤の座面はラジアル平面に沿った平面からなり、前記最低座面部及び前記高座面部は円周方向全周に亘ってラジアル方向に沿った横断面形状をもつ構成を採用することができる。
【0030】
固定側軌道盤の座面はラジアル平面に沿った平面からなるため、軸受座による支持の確保が容易であり、座面を沿わせる最低座面部及び高座面部を円周方向全周に亘ってラジアル方向に沿った横断面形状とすることができる。ひいては、最低座面部及び高座面部を複雑な曲面に形成することが避けられ、前記最低座面部及び前記高座面部の高低差に基いて溝最低位部及び溝高位部を簡単に設計することができる。
【0031】
この発明に係るスラスト玉軸受が回転体を回転中心線方向に沿った向きに支持すると共に、前記回転側軌道盤が前記一方向のラジアル荷重により特定の偏心量で偏心する状態で運転される回転体支持装置を構成することができる。
【0032】
この回転体支持装置は、前提使用条件で運転されるため、上述のように軌道溝の損傷を防止してスラスト玉軸受の交換頻度を減らすことができる。また、回転側軌道盤の偏心を前提使用条件にするため、偏心防止用のメタルブッシュ等を省略することができる。
【0033】
例えば、複数のピストンを入れたシリンダブロックと、複数のピストンの往復運動を規制するための斜板とを備え、シリンダブロックと複数のピストンとが同心回転するようになっている斜板式ピストンポンプにおいて、上述の回転体支持装置を備え、斜板はスラスト玉軸受からなり、回転体は複数のピストンからなる構成を採用すれば、メタルブッシュ等の省略によりケーシングの軸受設置部をコンパクトにしつつ、ポンプの連続運転に対する故障を防止することができる。
【0034】
上述の斜板式ピストンポンプのより具体的な構成として、前記回転側軌道盤の背面に、前記複数のピストンの配置に対応した複数のピストン受け部が形成されており、前記ピストンの先端部及び前記ピストン受け部は前記同心回転中に該ピストンの先端部が該ピストン受け部に対して滑りを生じない球面接触面を有する構成を採用することができる。
【0035】
この発明に係るスラスト玉軸受は、軸受運転中、十分な一方向のラジアル荷重で回転側軌道盤を前提使用条件に維持しなければ、軸受を安定運転させることができない。回転側軌道盤と各ピストンとは非同心に設けられているため、回転側軌道盤がピストンに対して滑りつつ相対回転しようとする。各ピストンの先端部とピストン受け部の接触点が滑らない球面接触面にすれば、各ピストンの負荷を逃がさずに回転側軌道盤に与えられる。このため、この斜板式ピストンポンプは、ラジアル荷重を十分に確保し、軸受を安定回転させることができる。
【発明の効果】
【0036】
上述のように、この発明は、取付け手段で固定側軌道盤を円周方向の二等分位置上の二箇所の最低座面部及び両最低座面部間を繋ぐ経路上の高座面部に沿わせた状態に固定することにより、固定側軌道盤の軌道溝は最低座面部に支持された溝最低位部を前記二等分位置上の二箇所に生じると共に、高座面部に支持された溝高位部を両溝最低位部間の各経路上に生じ、回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して前記二等分位置を含むアキシアル平面に沿った一方向のラジアル方向に特定の偏心量で偏心する状態を考えたとき、溝高位部及び回転側軌道盤の軌道溝と玉との接触が可能であるため、回転側軌道盤が固定側軌道盤に対して一方向のラジアル荷重で特定の偏心量で偏心する使用条件において軌道溝の損傷を防止することが可能なスラスト玉軸受を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、この発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。
図1、図2に示すように、実施形態に係るスラスト玉軸受(以下、単に「このスラスト玉軸受」と略称する。)は、固定側軌道盤1と、回転側軌道盤2と、複数の玉3、3・・・と、固定側軌道盤1を支持する軸受座4と、固定側軌道盤1を軸受座4に固定する取付け手段5とを備えている。固定側軌道盤1の中心軸C1は軸受中心軸に設定されている。なお、図1は、回転側軌道盤2に一方向のラジアル荷重Frを与えられることにより、回転側軌道盤2の中心軸C2が中心軸C1に対してラジアル荷重Frで特定の偏心量δを生じる状態(以下、この状態のときを単に「前提使用条件」と略称する)を示している。また、図1、図2は、回転側軌道盤2の偏心を誇張した図示になっている。
【0038】
固定側軌道盤1の軌道溝6及び回転側軌道盤2の軌道溝7は、それぞれ円周方向全周に亘って同じ横断面円弧状をもつ。
【0039】
軸受座4は、円周方向の二等分位置上の二箇所に形成された最低座面部8、8と、両最低座面部8、8間を円周方向に繋ぐ各経路上に形成された高座面部9、9とを有する。円周方向の二等分位置は、図1中のa−a線上に定めたθ=180°の位置、c−c線上に定めたθ=0°の位置としている。
【0040】
固定側軌道盤1の座面10は、ラジアル平面に沿った平面からなる。軌道溝6は正面側に削り出されている。固定側軌道盤は、鋼板製で軌道溝をプレス加工したものにすることができる。プレス品の固定側軌道盤は、軌道溝のプレス加工に伴う凹凸を背面にもち、ラジアル平面に沿った座面を確保し難い。また、軸受座に最低座面部及び高座面部を形成する際、係る凹凸に沿った曲面にしなければ軸受座の支持を確保し難い。固定側軌道盤1の座面10のように平面座とすれば、最低座面部8、8及び高座面部9、9の複雑曲面化を避けることができる。すなわち、最低座面部8、8及び高座面部9、9は、円周方向全周に亘ってラジアル方向に沿った横断面形状をもつように形成されている。各高座面部9は、図1中のb−b線を含むラジアル平面上に定めたθ=90°の位置で最も高い。また、各高座面部9は、0°<θ<90°の範囲で90°に近づくに連れて次第に高くなり、90°<θ<180°の範囲で180°に近づくに連れて次第に低くなっている。このため、最低座面部8、8及び高座面部9、9を形成するための削り加工は、円周方向に移動する工具をアキシアル方向に昇降させるだけでよい。
【0041】
なお、軸受座4は独立部材になっている。部材数を減らすため、他の装置のハウジング部材に最低座面部8及び高座面部9を直接に形成することもできる。軸受座4を単独部材にすれば、最低座面部8、高座面部9を形成する加工上の制限を避けることができる。
【0042】
取付け手段5で固定側軌道盤1を二箇所の最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせた状態に固定することにより、固定側軌道盤1は、高座面部9、9に沿って正面側に盛り上がった状態となる。その結果、固定側軌道盤1の軌道溝6は、最低座面部8、8に支持された溝最低位部6a、6aを前記二等分位置θ=0°、180°上の二箇所に生じると共に、高座面部9、9に支持された溝高位部6b、6bを両溝最低位部6a、6a間の各経路上(0°<θ<180°の範囲)に生じる。
【0043】
最低座面部8、8及び高座面部9、9の高低差は、前記二等分位置θ=0°、180°を含むアキシアル平面を境とした両半周域を考えると、固定側軌道盤1の軌道溝6が上述の式1に従う上昇量Δ(θ)を生じるように設けられている。固定側軌道盤1の座面10、最低座面部8、8及び高座面部9、9がラジアル方向に沿った横断面形状を円周方向全周に亘ってもち、取付け手段5により座面10の全域を最低座面部8等に密着させるため、固定側軌道盤1を沿わせた際のラジアル方向歪みは無視することができる。このため、最低座面部8、8及び高座面部9、9間に設定する高低差は、上昇量Δ(θ)に相当する値に定めればよい。
【0044】
固定側軌道盤1は鋼板からなる。固定側軌道盤1を最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせ易くするため、板厚は薄い程よい。軌道溝6を削り出すため、形成する溝深さから最低限の板厚が決まる。固定側軌道盤をプレス加工で製造する場合、薄板を用い、加工の容易化と共に、最低座面部8等に沿う変形性の向上を図ることができる。
【0045】
前提使用条件における軸受運転時、軸受座4の正面は、平面座とされた固定側軌道盤1の座面10の全域を支持することが可能になっている。これは、軸受座4と固定側軌道盤1とで一体的に負荷を受けさせ、軸受剛性の低下を防止するためである。なお、座面10の全域を軸受座4で支持する必要はない。軸受運転中の負荷時、軸受座4の支持で軌道溝6の溝最低位部6a、6a及び溝高位部6b、6bを維持しつつ負荷を受けることが可能な限り、一部に非接触域が存在することは許容される。
【0046】
取付け手段5は、固定側軌道盤1と軸受座4とをアキシアル方向にねじ止めする締結装置からなる。
【0047】
取付け手段5を構成する締結装置は、軸受座4に形成されたねじ孔部11、11・・・と、固定側軌道盤1に形成されたねじ通し孔部12、12・・・と、雄ねじ部材13、13・・・とで構成されている。
【0048】
ねじ止め箇所は、θ=0°、180°上の位置を基準に円周方向の4倍数等分位置上に配している。これは、高低差が最大になる最低座面部8、8及び高座面部9、9の最高位置を確実に締結するためである。また、各θ上におけるねじ止め箇所は、固定側軌道盤1の両肩部14、14を利用し、同一ラジアル平面上でアキシアル方向に設けられている。これは、軌道溝6の両側で等しくアキシアル方向に締結し、軌道溝6の横断面形状の崩れを防止するためである。
【0049】
雄ねじ部材13は固定側軌道盤1の正面から突き出ないことが好ましい。回転側軌道盤2の両肩部分との間のすきまをアキシアル方向に拡大させる必要がなく、雄ねじ部材13が潤滑剤の給排の抵抗にならない。
【0050】
取付け手段5のねじ止め箇所、ねじ止め箇所の構造は、固定側軌道盤1を二箇所の最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせた状態に固定することが可能な限り、適宜に定めればよい。例えば、ねじ孔を固定側軌道盤1の背面に空けたり、雄ねじ部材13を六角ボルトや全おねじ部材にすることができる。
【0051】
なお、固定側軌道盤1の両肩部14、14は、円周方向全周に亘って座面10から同一高さで設けられている。これは、固定側軌道盤1の正面の加工を従来品と同じ単純さで行うため、また、固定側軌道盤1の各幅位置における肉厚を円周方向全周に亘って均一とし、最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせる際の変形を均一に生じ易くするためである。
【0052】
固定側軌道盤1の軌道溝6と回転側軌道盤2の軌道溝7間に、4の倍数個の玉3、3、3、3・・・が前記4の倍数の円周方向等分位置に保持されている。このため、前提使用条件において溝最低位部6a、6a上に玉3があるとき、溝高位部6b、6b上に玉3が90°回転対称の配置で存在するようになり、曲げ荷重の発生を最も効果的に防止することができる。なお、等配間隔の保持は、図示省略の保持器で行うようにしたが、総玉軸受にすることもできる。また、この発明においては、すきま域が発生せず、接触面圧の過大や曲げ荷重の発生が避けられる限り、玉数や玉の円周方向に関する玉配置を適宜に決定することができる。
【0053】
上述のラジアル荷重Frの向きは、スラスト玉軸受を組み込んだ装置の構造で決まる。このため、前提使用条件は、最低座面部8、8及び高座面部9、9の円周方向に関する位置で実現することになる。溝高位部6b、6bを有効に機能させるには、軸受座4を正規の固定方向に固定するか、最低座面部8、8及び高座面部9、9をハウジング部材等の他の兼用部材に対して正規の位置関係で形成することが重要である。このスラスト玉軸受は、独立部材とされた軸受座4を正規の固定方向に固定することを容易にするため、前記二等分位置(θ=0°、180°)を識別させる表示部15、15を軸受座4に設けられている。表示部15は、点表示としたが、適宜の表示態様を採用することができる。例えば、正面、外径面、内径面等に対する塗装、刻印等の方法により、二等分位置の位置を直接に示す線表示、一方の溝高位部の範囲を示す半円周表示、両溝高位部の範囲を相異なる色で示す2つの半円周表示等を採用することができる。
【0054】
上述のように、このスラスト玉軸受は、取付け手段5で固定側軌道盤1を最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせた状態に固定することにより、前提使用条件において従来すきま域となる位置に溝高位部6b、6bを生じさせることができる。各溝高位部6b、6bは、式1に従うため、前提使用条件を見越してすきま拡大を相殺するように生じている。このため、各溝高位部6b、6b及び回転側軌道盤2の軌道溝7と玉3とは接触することが可能である。
【0055】
すなわち、このスラスト玉軸受の前提使用条件における運転状態を考えると、上述のように固定側軌道盤1を軸受座4の高座面部8、8で盛り上げるため、溝最低位部6a、6a及び溝高位部6b、6bは、回転側軌道盤2の軌道溝7との間のアキシアル方向間隔を変化させることになる。玉3は、θ=0°、180°上で軌道溝6の溝最低位部6a、6a及び回転側軌道盤2の軌道溝7と接触角αで接触する。0°<θ<90°の範囲では、θが大きくなるに連れて溝高位部6b、6bの上昇量Δ(θ)が次第に大きくなるため、玉3と両軌道溝6、7との接触が維持され、接触角がα°から次第に90°に近づく。90°<θ<180°の領域では、θが大きくなるに連れて溝高位部6bの上昇量Δ(θ)が次第に小さくなるため、玉3と両軌道溝6、7との接触が維持され、接触角が90°から次第にα°に近づく。
【0056】
したがって、このスラスト玉軸受は、前提使用条件において軸受運転を行う限り、円周方向のどの位置においてもすきま域が発生せず、接触面圧の過大や曲げ荷重の発生が避けられる。したがって、このスラスト玉軸受は、前提使用条件において軌道溝6、7の損傷を防止することができる。
【0057】
なお、玉3の公転中、転がり接触域16が両肩部14、14に食み出ることはなく、これにより、玉3の挙動の乱れが防止されている。
【0058】
この発明は、実施形態のようなものに限定されず、その構成の目的とした作用効果を奏する範囲内で適宜に変更することができる。
【0059】
一例として他の取付け手段に変更した例を図3に示す。図示の取付け手段20は、接着剤からなる。固定側軌道盤1の座面10は、取付け手段20の接着力により軸受座4の最低座面部8、8及び高座面部9、9に沿わせた状態に固定される。接着剤の種類は適宜に選択すればよい。なお、その他の構成は上述と同一にすることができる。
【0060】
以下、このスラスト玉軸受を斜板に用いた斜板式ピストンポンプの一例を図4に基いて説明する。図示のように、斜板式ピストンポンプは、複数のピストン31、31を入れたシリンダブロック32と、各ピストン31の往復運動を規制するための斜板33とを備え、シリンダブロック32と複数のピストン31、31とが同心回転するようになっている。回転中の各ピストン31は、回転中心線C3に沿った方向の位置を斜板33によって規制されつつ同方向に沿って往復移動する。シリンダブロック32のうち各ピストン31の背後に設けられた液室34は、シリンダブロック32の回転位置に応じて弁板35の吸込みポート35a又は吐出ポート35bと連通する。シリンダブロック32の回転位置に応じた各ピストン31の往復移動により、液室34に順次流体が吸入・吐出され、液体ポンプとして機能する。
【0061】
この種の斜板式ピストンポンプは、例えば、油圧ポンプ、油圧モータ、油圧トランスミッション(HST)といった油圧装置に用いることができる。
【0062】
一般に、複数のピストン31、31は、回転中心線C3回りの円周方向等分位置に設けられる。駆動軸36は、シリンダブロック32に挿入された状態で同心に固定される。駆動軸36が回転すると、シリンダブロック32が一体回転することに伴い、各ピストン31も回転する。斜板33は、シリンダブロック32及び駆動軸36の回転中心線C3に対して一定の傾斜を与えられる。
【0063】
斜板33は、このスラスト玉軸受からなる。ただし、上述の軸受座は、ケーシング37を構成する部材からなる。固定側軌道盤1がケーシング37に固定された状態で、軸受中心軸C1は、回転中心線C3に対して一定の傾斜をもっている。各ピストン31の先端部は、回転側軌道盤2の座面に押し当られる。回転側軌道盤2の座面で各ピストン31を回転中心線C3に沿った方向に支持する結果、回転側軌道盤2は、軸受中心軸C1の傾斜に伴う分力として各ピストン31から一方向のラジアル分力Fr1、Fr2を与えられる。
【0064】
この斜板式ピストンポンプに備わる回転体支持装置は、このスラスト玉軸受からなる斜板33と、複数のピストン31、31と、シリンダブロック32と、駆動軸36とからなる。駆動軸36の回転により複数のピストン31、31からなる回転体が回転し、ケーシング37に固定側軌道盤1を固定された斜板33が複数のピストン31、31を回転中心線C3に沿った向きに支持すると共に、回転側軌道盤2が一方向のラジアル荷重Fr1、Fr2により特定の偏心量で偏心する状態で運転される。
【0065】
ケーシング37は、回転側軌道盤2の偏心を規制するメタルブッシュやハウジング部分をもたない。このため、ケーシング37をコンパクトにすることができる。
【0066】
回転側軌道盤2は、一方向のラジアル分力Fr1、Fr2に由来するラジアル荷重で前記特定の偏心量を生じるようになっている。
【0067】
前記接触角αは軸受中心軸C1の傾斜角βに一致する。前記接触角αは、幾何学関係から軸受中心軸C1の回転中心線C3に対する傾斜で決まる。このため、接触角αと傾斜角βを一致させれば、式1に従うこのスラスト玉軸受を斜板33として適用することができる。
【0068】
例えば、従来例として、単式スラスト玉軸受51106(NTN株式会社の品番)を考える。この型式の軸受主要寸法は、内径dφ:30mm、外径Dφ:47mm、幅T:11mm、玉径dw:6.35、溝曲率比mi/me:1.08/1.08となっている。例えば、この型式のものがα=β=16°になった状態を仮定すると、上述の式Aから回転側軌道盤の上昇量h=0.039mmになる。すきま量h(θ)は、上述の式Bから図5に示すグラフのように求められる。なお、最大上昇量は、すきま量h(90)=Δ(90)=0.039mmとなる。図5のすきま量h(θ)に相当した上昇量Δ(θ)を固定側軌道盤1の軌道溝に生じさせれば、図4の斜板式ピストンポンプにおいて斜板33の傾斜角βを16°にするときに用いることができる。
【0069】
このスラスト玉軸受は、軸受回転中、十分なラジアル荷重で回転側軌道盤2を前提使用条件に維持しなければ、軸受を安定運転させることができない。図3に示すように、回転側軌道盤2と各ピストン31とは、非同心に設けられているため、回転側軌道盤2がピストン31に対して滑りつつ相対回転しようとする。
【0070】
そこで、図6に変更例を示すように、回転側軌道盤2の座面に、複数のピストン31、31の配置に対応した複数のピストン受け部41、41が形成されている。また、ピストン31の先端部とピストン受け部41とは、前記同心回転中にピストン31の先端部がピストン受け部41に対して滑りを生じない球面接触面を有する。
【0071】
ピストン31の先端部及びピストン受け部41の球面接触面は、互いの回転位置によらず接触を維持しつつ、軸受中心軸C1に沿った方向の視線で描いた図6(b)中に接触点Pの軌跡を一点鎖線で示すように、接触点Pの軌跡が円形を成す、すなわち接触点Pが回転側軌道盤2に対して回転方向及びラジアル方向に滑らず円形を成し、しかもラジアル分力Fr3、Fr4を生じ続けるように設計することができる。各ピストン31の先端部とピストン受け部41の接触点Pが滑らないため、各ピストン31の負荷を逃がさずに回転側軌道盤2に与えられる。このため、この斜板式ピストンポンプは、ラジアル荷重を十分に確保し、軸受を安定回転させることができる。
【0072】
一方向のラジアル分力Fr3、Fr4を得続けるには、接触点Pと、ピストン受け部41の球面接触面と、ピストン31の球面接触面との幾何学関係を、接触点Pにおける接触平面が常に回転中心線C3と直交する平面よりもラジアル平面側に傾きを有するように定めればよい。その上で接触点Pの滑りを無くすため、接触点Pを、ピストン受け部41の球面接触面とラジアル平面とが交わる位置上に定め、ピストン受け部41の球面接触面の中心Q1と接触点Pを結ぶ直線上にピストン31の球面接触面の中心Q2が位置する幾何学関係に定めればよい。例えば、図7に別例を示すように、ピストン受け部42及びピストン31の球面接触面を接触点Pがピストン受け部42の球面接触面の底点上に位置するように定めると、180度反対側で等しいラジアル分力Fr5、Fr6を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】

【図1】実施形態に係るスラスト玉軸受の前提使用条件における平面図
【図2】aは図1のa―a線の拡大断面図、bは図1のb−b線の拡大断面図、cは図1のc―c線の拡大断面図、dは図1のd―d線の拡大断面図
【図3】図1の取付け手段の変更例を示す拡大断面図
【図4】図1のスラスト玉軸受を用いた回転体支持装置を備える斜板式ピストンポンプの要部断面図
【図5】従来品の前提使用条件におけるすきま量を求めたグラフ
【図6】aは図4の回転側軌道盤の変更例を示す拡大断面図、bは前記aの背面を矢線b方向から視た平面図
【図7】aは図4の回転側軌道盤の別の変更例を示す拡大断面図、bは前記aの背面を矢線b方向から視た平面図
【図8】従来例の前提使用条件における平面図
【図9】aは図8のa―a線の拡大断面図、bは図8のb−b線の拡大断面図、cは図8のc―c線の拡大断面図
【符号の説明】
【0074】
1 固定側軌道盤
2 回転側軌道盤
3 玉
4 軸受座
5、20 取付け手段
6、7 軌道溝
6a 溝最低位部
6b 溝高位部
8 最低座面部
9 高座面部
10 座面
11 ねじ孔部
12 ねじ通し孔部
13 雄ねじ部材
14 肩部
15 表示部
16 転がり接触域
31 ピストン
32 シリンダブロック
33 斜板
36 駆動軸
37 ケーシング
41、42 ピストン受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道溝を形成された固定側軌道盤及び回転側軌道盤を備えるスラスト玉軸受において、前記固定側軌道盤を支持する軸受座と、前記固定側軌道盤を前記軸受座に固定する取付け手段とを備え、この軸受座は円周方向の二等分位置上の二箇所に形成された最低座面部と、これら最低座面部間を円周方向に繋ぐ各経路上に形成された高座面部とを有し、前記取付け手段で前記固定側軌道盤を前記二箇所の最低座面部及び高座面部に沿わせた状態に固定することにより、前記固定側軌道盤の軌道溝は前記最低座面部に支持された溝最低位部を前記二等分位置上の二箇所に生じると共に、前記高座面部に支持された溝高位部を両溝最低位部間の各経路上に生じるようになっており、前記回転側軌道盤が前記固定側軌道盤に対して前記二等分位置を含むアキシアル平面に沿った一方向のラジアル方向に特定の偏心量で偏心する状態を考えたとき、前記溝高位部及び前記回転側軌道盤の軌道溝と玉との接触が可能であることを特徴とするスラスト玉軸受。
【請求項2】
前記固定側軌道盤の軌道溝は前記二等分位置を含むアキシアル平面を境とした両半周域に次の式1に従う上昇量を生じることを特徴とする請求項1に記載のスラスト玉軸受。
式1:Δ(θ)=dw(mi−1){cos(α|cosθ|)−cosα}+dw(me−1){cos(αcosθ)−cosα}
Δ(θ):軸受中心軸回りの回転角度θにおける前記上昇量(ただし、前記二等分位置を含むアキシアル平面上にθ=0°、180°を定め、0°≦θ≦180°の範囲とする)、dw:玉径、mi:前記回転側軌道盤の軌道溝の溝曲率(ただし、一定とする)、α:前記特定の偏心量で偏心する状態における前記二等分位置上の呼び作用線とアキシアル平面とが成す角度、me:前記固定側軌道盤の軌道溝の溝曲率(ただし、一定とする)
【請求項3】
前記取付け手段は前記固定側軌道盤と前記軸受座とをアキシアル方向にねじ止めする締結装置からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト玉軸受。
【請求項4】
前記取付け手段は接着剤からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のスラスト玉軸受。
【請求項5】
前記固定側軌道盤は鋼板からなることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載のスラスト玉軸受。
【請求項6】
固定側軌道盤の座面はラジアル平面に沿った平面からなり、前記最低座面部及び前記高座面部は円周方向全周に亘ってラジアル方向に沿った横断面形状をもつことを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載のスラスト玉軸受。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1つに記載のスラスト玉軸受が回転体を回転中心線方向に沿った向きに支持すると共に、前記回転側軌道盤が前記一方向のラジアル荷重により特定の偏心量で偏心する状態で運転される回転体支持装置。
【請求項8】
複数のピストンを入れたシリンダブロックと、前記複数のピストンの往復運動を規制するための斜板とを備え、前記シリンダブロックと前記複数のピストンとが同心回転するようになっている斜板式ピストンポンプにおいて、請求項7に記載の回転体支持装置を備え、前記斜板は前記スラスト玉軸受からなり、前記回転体は前記複数のピストンからなることを特徴とする斜板式ピストンポンプ。
【請求項9】
前記回転側軌道盤の背面に、前記複数のピストンの配置に対応した複数のピストン受け部が形成されており、前記ピストンの先端部及び前記ピストン受け部は前記同心回転中に該ピストンの先端部が該ピストン受け部に対して滑りを生じない球面接触面を有することを特徴とする請求項8に記載の斜板式ピストンポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−96227(P2010−96227A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266198(P2008−266198)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】