説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物

【課題】成形時に良好な溶融流動性を改善しながら強度に優れた成形体を与える、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を目的とする。
【解決手段】下記の(1)〜(3)のいずれかである樹脂粉末組成物(E)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物である。(1)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を1個以上有する含有ポリマー(B)を含有する樹脂粉末組成物(E1)。(2)上記ポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を2個以上有する化合物(C)を含有する樹脂粉末組成物(E2)。(3)上記ポリマー(B)と1分子中に酸性基(a)を2個以上有する化合物(D)を含有する樹脂粉末組成物(E3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物としては、ポリ塩化ビニル樹脂粉末組成物やポリウレタン樹脂などが広く使用されているが、環境に対する負荷やコストの観点で代替材料が検討されている。
アクリル樹脂、ブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂は、スチレン系樹脂などの他の熱可塑性樹脂に比べて高い柔軟性を与えることができ、表皮材として要求される物性を満足させることが可能である。エポキシ基を有するアクリル系ブロック共重合体と架橋剤からなる組成物とすることで成形時に良好な溶融流動性を改善しながら耐熱性に優れた成形体が得られることが提案されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−254761号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、エポキシ結合により架橋させることで高強度化を図ることができるが、成形性が十分ではなかった。
本発明の目的は、成形時に良好な溶融流動性を改善しながら強度に優れた成形体を与える、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは上記課題を解決するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。本発明は下記の(1)〜(3)のいずれかである樹脂粉末組成物(E)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物である。
(1)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)を含有する樹脂粉末組成物(E1)。
(2)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を2個以上有する化合物(C)を含有する樹脂粉末組成物(E2)。
(3)1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)と1分子中に酸性基(a)を2個以上有する化合物(D)を含有する樹脂粉末組成物(E3)。
【発明の効果】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、成型時に良好な溶融流動性をしめし、かつ、強度に優れた成形体を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明におけるスラッシュ成形用樹脂粉末組成物とは、下記のいずれかの組成物、又はそれらの混合物である。
(1)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を1個以上有する含有ポリマー(B)を含有する組成物。
(2)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を2個以上有する化合物(C)を含有する組成物。
(3)1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)と1分子中に酸性基(a)を2個以上有する化合物(D)を含有する組成物。
【0008】
1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)としては、アクリル樹脂、オレフィン樹脂および酢酸ビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂が好ましい。
以下、各樹脂について説明する。
【0009】
<アクリル樹脂>
ポリマー(A)は、少なくとも単量体(x1)と単量体(x2)がブロック共重合した共重合体(X)に1個以上酸性基を付加させたアクリルポリマーであることが好ましい。
(A)中の酸性基は、ポリマー(B)あるいは化合物(C)の塩基性基とイオン結合するための擬似架橋点として作用する。成形体の破断強度の観点から、酸性基を1個以上有し、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下有することが好ましい。
【0010】
単量体(x1)として好ましくは、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−プロピル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸n−ペンチル、メタアクリル酸n−ヘキシル、メタアクリル酸n−ヘプチル、メタアクリル酸n−オクチル、メタアクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸ステアリルなどのメタアクリル酸アルキル(たとえば炭素数1〜18)エステルなどがあげられる。これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルがより好ましい。
【0011】
単量体(x2)としては、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ドデシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート[アルキル基の炭素数2〜20:2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシプロピルアクリレート及びヒドロキシブチルアクリレート等(アルキル基については以下同様)];アミノアルキルアクリレート[アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、アミノブチルアクリレート及びアミノヘキシルアクリレート等];グリシジルアクリレート;ポリエチレングリコール(Mw100〜10000)モノアクリレート;ポリエチレン・ポリプロピレングリコール(Mw200〜10000、オキシエチレンの含有量10〜90重量%)モノアクリレート;ポリプロピレングリコール(Mw100〜10000)モノアクリレート;酢酸ビニル、ブタジエンなどが挙げられる。
(x2)は上記化合物をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
(A)の1分子中に付加される1個以上の酸性基としては、カルボキシル基および/またはスルホン酸基が挙げられる。分子中への導入の容易性から、カルボキシル基が好ましい。
カルボキシル基の導入位置は、特に限定されるものではない。
【0013】
カルボキシル基の導入は、カルボキシル基を有する単量体が重合条件下で触媒を被毒することがない場合は、重合により直接導入することにより行うのが好ましく、カルボキシル基を有する単量体が重合時に触媒を失活させるおそれがある場合には、官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法により行うのが好ましい。
官能基変換によりカルボキシル基を導入する方法では、カルボキシル基を適当な保護基で保護した形、または、カルボキシル基の前駆体となる官能基の形でアクリル系ブロック共重合体に導入し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
【0014】
カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体としては、特に限定はないが、例えば、メタアクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタアクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどが挙げられる。
【0015】
ポリマー(B)は、少なくとも単量体(x1)と単量体(x2)がブロック共重合した共重合体(X)であって1個以上塩基性基を有するポリマーであることが好ましい。
(B)中に付加される塩基性基は、ポリマー(A)あるいは化合物(D)の酸性基とイオン結合するための擬似架橋点として作用する。成形体の破断強度の観点から、塩基性基は1個以上有し、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下有することが好ましい。
【0016】
(B)の1分子中に付加される1個以上の塩基性基としては、アミノ基が挙げられ、アミノ基の級数は限定しない。
アミノ基の導入位置は、特に限定されるものではない。
【0017】
アミノ基の導入方法は、特に限定はしないが、例えば(A)に導入されたカルボキシル基にジアミンをカルボキシル基と等モル又は過剰の量、アミド化反応させることで得ることができる。
アミノ基を有するモノマー(例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート)を共重合することによっても導入できる。
【0018】
単量体のブロック共重合手法としては、一般的な単量体の重合法等を用いることができるが、汎用性やコスト等を考慮して、有機溶剤中におけるラジカル重合法が最も適している。即ち、キシレン、トルエン等の芳香族溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤;n−ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤等の溶剤中でアゾビスイソブチロニトリル又はベンゾイルパーオキサイド等の重合開始剤の存在下、60〜150℃程度の温度範囲内で共重合反応を行うことによって、容易に目的のブロック重合体を得ることができる。
【0019】
<オレフィン樹脂>
ポリマー(A)としては、ポリプロピレン樹脂(Y1)と水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)の混合樹脂であって、いずれか又は両方が酸変性(例えばマレイン酸変性体)された樹脂が挙げられる。
ポリマー(A)は、成形体の破断強度の観点から、酸性基を1個以上有し、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下有する樹脂であることが好ましい。
(A)中に含有する酸性基は、ポリマー(B)あるいは化合物(C)の塩基性基とイオン結合するための擬似架橋点として作用する。
【0020】
本発明で使用するポリプロピレン樹脂(Y1)は、ポリプロピレンホモポリマー、α−オレフィンとのブロックあるいはランダム共重合体のいずれでもよいが、特にα−オレフィンとしてエチレンを用いたブロックあるいはランダム共重合体が成形体の柔軟性の面からいって好ましい。
【0021】
水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)は、ポリプロピレン樹脂(Y1)との相溶性に優れており、ポリプロピレン樹脂(Y1)に混練すると柔軟になり、折曲げや白化しにくい熱可塑性エラストマー組成物が得られる。水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)のスチレン含有量は30重量%以下が好ましく、柔軟性に富む表皮を得るためには5〜15重量%が適当である。水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)は、スチレンとブタジエンがランダムに共重合しているスチレンブタジエンゴムを水素添加している点で、ブロック共重合体であるスチレン・エチレンブチレン・スチレンブロックコポリマーと異なっている。
【0022】
ポリプロピレン樹脂(Y1)と水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)との混合量は、重量比で80/20〜20/80の割合であり、ポリプロピレン樹脂が多くなると、成形された表皮が硬くなり、一方少なくなると引張強度が低下する。
【0023】
ポリプロピレン樹脂(Y1)と水素添加スチレンブタジエンゴム(Y2)のいずれか又は両方に酸性基を導入する方法として、それぞれに酸変性剤を添加し反応させる方法が挙げられる。
酸変性剤としては、エチレン性二重結合と極性基を同一分子内に含む化合物が使用できる。このような化合物としては、例えば無水マレイン酸,マレイン酸,マレイン酸塩,マレイン酸エステル,アクリル酸,アクリル酸塩,アクリル酸エステル,メタクリル酸,メタクリル酸エステル,などが挙げられる。これらの中で特に無水マレイン酸が好適である。
【0024】
酸変性方法は公知の方法で行うことができる。例えば、ロールミル,バンバリーミキサー,押出機等を用いて150〜350℃の温度で溶融混練し反応させる方法、ベンゼン,トルエン,キシレン等の溶媒中で加熱反応させる方法などが挙げられる。さらに、これらの反応を速やかに進行させるために、反応系にベンゾイルパーオキサイド,ジ−t−ブチルパーオキサイド,ジクミルパーオキサイド,t−ブチルパーオキシベンゾエート,アゾビスイソブチロニトリル,アゾビスイソバレロニトリル,2,3−ジフェニル−2,3−ジメチルブタン等のラジカル発生剤を存在させてもよい。好ましい方法としてラジカル発生剤の存在下に溶融混練して変性する方法が挙げられる。
【0025】
ポリマー(B)としては、ポリマー(A)のカルボキシル基にジアミンをカルボキシル基と等モル又は過剰の量、アミド化反応させることで得ることができるアミノ基含有樹脂が挙げられる。(B)中の塩基性基は1個以上、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下であることが好ましい。
【0026】
<酢酸ビニル樹脂>
ポリマー(A)としては、カルボキシル基含有エチレン・酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0027】
カルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル共重合体(A)は、酸素又は有機過酸化物等のラジカル開始剤を用いてエチレンと酢酸ビニル、無水マレイン酸を圧力500kg/cm2 以上及び温度100〜350℃の条件下の重合、すなわち、いわゆる高圧ラジカル重合、の製造プロセスを適用して、エチレンとこの酢酸ビニルと無水マレイン酸を共重合させることで得られるものが代表的である。この重合体の柔軟性の目安となる酢酸ビニル含量(JIS−K6730の試験法による)は3重量%以上のもの、特に8重量%以上のものが好ましい。酢酸ビニル含量は高い方が柔軟で耐衝撃強度に優れるため好ましいが製造上からは40重量%程度が限界である。
(A)中に含有する酸性基は、ポリマー(B)あるいは化合物(C)の塩基性基とイオン結合するための擬似架橋点として作用する。成形体の破断強度の観点から、(A)中の酸性基は1個以上、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下であることが好ましい。
酸性基の量は共重合させる酸変性剤の量で調整することができる。
【0028】
ポリマー(B)としては、ポリマー(A)のカルボキシル基にジアミンをカルボキシル基と等モル又は過剰の量、アミド化反応させることで得ることができる。(B)中の塩基性基は1個以上、好ましくは2個以上、好ましくは6個以下であることが好ましい。
【0029】
アクリル樹脂、オレフィン樹脂、及び酢酸ビニル樹脂において、ポリマー(A)の重量平均分子量(以下Mw)は、好ましくは10,000〜500,000、さらに好ましくは30,000〜300,000である。成形体の破断強度の観点から10,000以上が好ましく、熱溶融時の溶融粘度の観点から500,000以下が好ましい。
【0030】
化合物(C)は1分子中に塩基性基(b)を2個以上有する化合物であり、分子量が500以下のものが好ましい。例えば、炭素数6〜18の脂環族ジアミン[4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等];炭素数2〜12の脂肪族ジアミン[エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等];炭素数8〜15の芳香脂肪族ジアミン[キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジアミン等]等が挙げられる。
【0031】
化合物(D)は1分子中に酸性基(a)を2個以上有する化合物であり、分子量が500以下のものが好ましい。例えば、炭素数4〜15の脂肪族ジカルボン酸[コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸、マレイン酸、フマル酸など]、炭素数8〜12の芳香族ジカルボン酸等[テレフタル酸、イソフタル酸など]、が挙げられる。
【0032】
ポリマー(A)又は化合物(D)中の酸性基(a)のモル数に対するポリマー(B)又は化合物(C)中の塩基性基(b)のモル数の比b/aが、0.5〜2.0であることが好ましく、0.6〜1.5であることがさらに好ましい。
【0033】
ポリマー(A)とポリマー(B)を混合する場合、ポリマー(A)と化合物(C)を混合する場合、ポリマー(B)と化合物(D)を混合する場合の混合方法は、通常行われる公知の方法等でよく、粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。
【0034】
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度かつ短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダーおよび3本ロール等が挙げられる。
粉体混合する場合の混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサーおよびバンバリーミキサー等が挙げられる。好ましくはヘンシェルミキサーである。
【0035】
樹脂粉末組成物(E)は、ポリマー(A)、(B)以外の熱可塑性樹脂(T)を含有してもよい。そのような樹脂(T)としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂、エチレン‐ビニルアルコール系共重合体、アクリロニトリル‐ブタジエン系樹脂(例えばABS系樹脂)、塩化ビニル‐酢酸ビニル系共重合体等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上混合して用いることができる。
樹脂粉末組成物(E)に含有する熱可塑性樹脂(T)の含有量としては、耐摩耗性と樹脂の溶融性の観点から樹脂(A)の重量に対して、0〜40重量%が好ましく、0〜30重量%が更に好ましい。
【0036】
樹脂粉末組成物(E)と熱可塑性樹脂(T)との混合方法は、通常行われる公知の方法等でよく、上記に記載の粉体混合、溶融混合のいずれでもよい。
【0037】
樹脂粉末組成物(E)はスラッシュ成型性の観点から粉末である。粉末を製造する方法は特に限定されないが、例えばブロック状又はペレット状の樹脂を冷凍粉砕法、常温粉砕法の方法で粉砕し、樹脂粉体を得る方法がある。
【0038】
これらの結果得られた粉体は、ふるい等を用いて、粒径100〜500μmのものだけを分取するのが好ましく、150〜300μmのものだけを分取するのが更に好ましい。100μmより粒径の小さいものを含んだ粉体は、粉体同士の凝集を促進させる原因となり、ハンドリング性が低下すると共に粉体流動性が悪化する。このため、パウダースラッシュ成形に用いたときに、金型の端部まで粉体が十分に届かず、成形体の意匠性が損なわれる。また、500μmより大きな粒径のものを含んだ粉体は、パウダースラッシュ成形に用いたときに、粒径の大きな粉体が十分に溶融しないため、成形体の意匠性が損なわれることとなる。
【0039】
また、本発明のスラッシュ成形用樹脂組成物とは、上記の樹脂粉末組成物(E)に、本発明に特有の効果である耐摩耗性を発現できる範囲で、必要により添加剤(F)を添加することができる。添加剤としてはフィラー、安定剤、顔料、離型剤、ブロッキング防止剤及び分散剤等が添加できる。
添加剤(F)の添加量は(E)と(F)の合計重量に対して通常0〜50重量%、好ましくは0.1〜50重量%である。
【0040】
フィラーとは、例えばカオリン、タルク、シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ベントナイト、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、ガラス繊維、黒鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、硫酸バリウム、ホウ酸亜鉛、アルミナ、マグネシア、ウォラストナイト、ゾノトライト、ウィスカー及び金属粉末等の無機フィラーが挙げられる。これらのなかで、結晶化促進の観点から、カオリン、タルク、シリカ及び酸化チタン、炭酸カルシウムが好ましく、カオリン及びタルクが更に好ましい。
【0041】
無機フィラーの体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から好ましくは0.1〜30μm、更に好ましくは1〜20μm、特に好ましくは5〜10μmである。
【0042】
安定剤とは、例えば公知の酸化防止剤及び/又は光安定剤である。
酸化防止剤とは、例えばフェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール等)、ビスフェノール系(2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)及びリン系(トリフェニルフォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト等)等が挙げられる。
光安定剤とは、紫外線吸収剤[ベンゾフェノン系(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)等]、クエンチャー[ニッケルキレート系等]、サリチル酸系[フェニルサリシレート等]、ラジカル補足剤[ヒンダードアミン系((ビス2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等)等が挙げられる。
【0043】
顔料としては、例えば公知の有機顔料及び/または無機顔料を使用することができる。有機顔料としては不溶性アゾ顔料、可溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられ、無機顔料としてはカーボンブラック、クロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化セレン化合物及び金属塩類(硫酸塩、硅酸塩、炭酸塩、リン酸塩等)金属粉末等が挙げられる。
【0044】
離型剤としては、公知の離型剤が使用でき、フッ素系離型剤(リン酸フルオロアルキルエステル等)、シリコン系離型剤(ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシル変性ジメチルポリシロキサン、エーテル変性ジメチルポリシロキサン等)、脂肪酸エステル系離型剤(アルカン(炭素数11〜24)酸アルケニル(炭素数6〜24)エステル等)、リン酸エステル系離型剤(リン酸トリブチルエステル等)等が挙げられる。
【0045】
ブロッキング防止剤としては、公知の無機系ブロッキング防止剤及び/または有機系ブロッキング防止剤を使用することができる。無機系ブロッキング防止剤としては、シリカ、タルク、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられ、有機系ブロッキング防止剤としては、粒子径10ミクロン以下の熱硬化性樹脂(熱硬化性ポリウレタン樹脂、グアナミン系樹脂、エポキシ系樹脂等)及び粒子径10ミクロン以下の熱可塑性樹脂(熱可塑性ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート樹脂等)及びマレイミド樹脂粉末等が挙げられる。
【0046】
上記添加剤(F)を樹脂粉末組成物(E)に添加、混合するときに使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機、高速剪断混合装置(ヘンシエルミキサー(登録商標、以下省略)等)、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)や円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ(登録商標、以下省略)等)を使ってドライブレンドする方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機、低速混合装置(プラネタリーミキサー等)、および円錐型スクリュー混合機(ナウタミキサ等)を使用するのが好ましい。
【0047】
本発明のスラッシュ成形用樹脂組成物をスラッシュ成形法で成形するには、例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後冷却後固化させ、シートを製造する方法で好適に実施することができる。
【0048】
本発明の成形用材料で成形されたシート厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。
これらの成形シートは金型形状により様々な形状に対応する事ができ、例えばインスツルメントパネルやドアトリム等の自動車内装部品、家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として適する。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0050】
<重合反応の転化率測定法>
本実施例に示す重合反応の転化率は以下に示すガスクロマトグラフィー(以下、GCと略記)分析装置、条件で測定した。
使用機器:(株)島津製作所製ガスクロマトグラフィーGC−14B
試料調製:サンプルを酢酸エチルにより約3倍に希釈した。
【0051】
酸性基を有するポリマー(A)の合成
製造例1
耐圧反応器内を窒素置換したのち、臭化銅0.45部、アクリル酸−n−ブチル168部、及びアクリル酸−t−ブチル1.80部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤として2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.62部をアセトニトリル(窒素バブリングしたもの)4.59部に溶解させた溶液を仕込み、溶液温度を75℃に昇温しつつ30分間攪拌した。溶液温度が75℃に到達した時点で、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11部を加えてアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0052】
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のGC分析によりアクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチルの転化率を決定した。アクリル酸−n−ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.1%の時点で、メタアクリル酸メチル168部、塩化銅0.45部、ペンタメチルジエチレントリアミン0.11部を加え、メタアクリル系重合体ブロックの重合を開始した。
【0053】
メタアクリル酸メチルを投入した時点でサンプリングを行い、これを基準としてメタアクリル酸メチルの転化率を決定した。メタアクリル酸メチルを投入後、内温を85℃に設定した。メタアクリル酸メチルの転化率が96.0%の時点でトルエン212.77部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。上記のメタアクリル系ブロック共重合体を含有する反応溶液にトルエンを加えて、重合体濃度を25%とした。この溶液100部にp−トルエンスルホン酸を0.41部加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。
更に酸化防止剤としてイルガノックス1010を0.15部添加した後、反応機内を窒素置換し、耐圧反応機中で、150℃で4時間攪拌した。30℃に冷却した反応液に固体塩基としてキョーワード500SH(協和化学製)1.75部を加えた後、反応機内を窒素置換して、2時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。
【0054】
その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル樹脂を含有する重合体溶液を得た。引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を12kPa、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のアクリル樹脂ペレット(A−1)を得た。得られたアクリル樹脂(A−1)のGPC分析を行ったところ、Mwは108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(A−1)の1分子中の酸性基の数は仕込み量から3であった。
【0055】
製造例2
製造例1でアクリル酸−t−ブチル1.8部を0.6部に変更する以外は同様の方法でアクリル樹脂(A−2)を得た。(A−2)のMwは108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(A−2)の1分子中の酸性基の数は仕込み量から1であった。
【0056】
製造例3
製造例1でアクリル酸−t−ブチル1.8部を2.4部に変更する以外は同様の方法でアクリル樹脂(A−3)を得た。(A−3)のMwは、108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(A−3)の1分子中の酸性基の数は仕込み量から4であった。
【0057】
製造例4
耐圧反応器内を窒素置換したのち、エチレン211.2部、酢酸ビニル37.3部、マレイン酸1.45部を仕込み、攪拌を開始した。その後、開始剤として過酸化ベンゾイル1.52部を仕込み、圧力500kg/cm2で液温度を200℃に昇温し、カルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル共重合体の重合を開始した。
重合開始から一定時間ごとに、サンプリング溶液のGC分析によりエチレン、酢酸ビニルの転化率を決定した。エチレンの転化率が99.0%、酢酸ビニルの転化率が99.1%の時点でトルエン750部を加え、反応器を冷却して反応を終了させた。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、カルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル共重合体を含有する重合体溶液を得た。引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を12kPa、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のカルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル樹脂ペレット(A−4)を得た。得られたカルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル樹脂ペレット(A−4)のGPC分析を行ったところ、Mwは108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたカルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル樹脂ペレット(A−4)の1分子中の酸性基の数は仕込み量から2であった。
【0058】
製造例5
2リットルの反応容器に精製スチレン0.9リットル、p−メチルスチレン0.1リットル、トリエチルアルミニウム1ミリモルを加え、80℃に加熱した後、予備混合触媒(ペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリメトキシド90マイクロモル、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート90マイクロモル、トルエン29.1ミリモル、トリイソブチルアルミニウム1.8ミリモル)16.5ミリリットルを添加し、80℃で5時間重合を行った。反応終了後、生成物をメタノールで繰り返し洗浄し、乾燥してスチレン−p−メチルスチレン共重合体390gを得た。この重合体の重量平均分子量を、1,2,4−トリクロロベンゼンを溶媒とし、130℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定したところ328,000であった。また、重量平均分子量/数平均分子量は2.60であった。さらに融点及び13C−NMR測定より、この重合体はシンジオタクチック構造を有するスチレン−p−メチルスチレン共重合体(SPS)であり、p−メチルスチレンを12モル%含有することを確認した。
更にスチレン−p−メチルスチレン共重合体1kg、無水マレイン酸30g、ラジカル発生剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂(株)社製,ノフマーBC)10gをドライブレンドし、30mm二軸押出機を用いてスクリュー回転数200rpm、設定温度300℃で溶融混練を行った。この際、樹脂温度は約330℃であった。ストランドを冷却後ペレット化し無水マレイン酸変性SPSを得た。
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン870gに対して、無水マレイン酸変性SPS30g、極性基を有するゴム状弾性体として無水マレイン酸変性SEBS(旭化成(株)社製、タフテックM−1913)100g、核剤としてメチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム(アデカ・アーガス社製、NA−11)5g、酸化防止剤として(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ・アーガス社製,PEP−36)1g、テトラキス(メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル))プロピオネート(アデカ・アーガス社製,MARK AO60)1gを加え、ヘンシェルミキサーでドライブレンドを行った後、充填材としてアミノシラン処理されたガラスファイバー(13μm/3mm)430gをサイドフィードしながら、2軸押出機にてペレット化した。得られたペレット(A−5)の1分子中の酸性基の数は仕込み量から2であった。
【0059】
塩基性基を含有するポリマー(B)の合成
製造例6
製造例1と同様の方法で重合を開始し、製造例1と同様の方法で、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。アクリル樹脂を含有する重合体溶液を得た。更に、ヘキサメチレンジアミン1.63部を添加し、1.2KPa減圧化で80℃で5時間反応させた。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル樹脂を含有する重合体溶液を得た。引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を12kPa、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のアクリル樹脂ペレット(B−1)を得た。得られたアクリル樹脂(B−1)のGPC分析を行ったところ、Mwは108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(B−1)の1分子中の塩基性基の数は仕込み量から3であった。
【0060】
製造例7
製造例6でアクリル酸−t−ブチル1.8部を0.6部、ヘキサメチレンジアミン1.63部を0.54部に変更する以外は同様の方法でアクリル樹脂(B−2)を得た。(B−2)のMwは、108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(B−2)の1分子中の塩基性基の数は仕込み量から1であった。
【0061】
製造例8
製造例6でアクリル酸−t−ブチル1.8部を2.4部、ヘキサメチレンジアミン1.63部を2.17部に変更する以外は同様の方法でアクリル樹脂(B−3)を得た。(B−3)のMwは、108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアクリル樹脂(B−3)の1分子中の塩基性基の数は仕込み量から4であった。
【0062】
製造例9
製造例4と同様の方法で重合を開始し、カルボキシル含有エチレン・酢酸ビニル樹脂を含有する重合体溶液を得た。更に、ヘキサメチレンジアミン1.45部を添加し、1.2kPa減圧化で80℃で5時間反応させた。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた上に示した加圧濾過機を用いて固体分を分離し、アクリル樹脂を含有する重合体溶液を得た。引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を12kPa、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体は排出機を通じ、φ4mmのダイスにてストランドとし、アルフローH50ES(主成分:エチレンビスステアリン酸アミド、日本油脂(株)製)の3%懸濁液で満たした水槽で冷却後、ペレタイザーにより円柱状のアミノ基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂ペレット(B−4)を得た。得られたアミノ基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂(B−4)のGPC分析を行ったところ、Mwは108000、Mn(数平均分子量)は72,000であった。得られたアミノ基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂(B−4)の1分子中の塩基性基の数は仕込み量から2であった。
【0063】
製造例10
製造例5で得られた無水マレイン酸変性SPS1040部とヘキサメチレンジアミン71.0部を添加し、1.2kPa減圧化で80℃で5時間反応させた。アミン変性SPSを得た。
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン870gに対して、アミン変性SPS30g、極性基を有するゴム状弾性体として無水マレイン酸変性SEBS(旭化成(株)社製、タフテックM−1913)100g、核剤としてメチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム(アデカ・アーガス社製、NA−11)5g、酸化防止剤として(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカ・アーガス社製,PEP−36)1g、テトラキス(メチレン−3−(3',5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシフェニル))プロピオネート(アデカ・アーガス社製,MARK AO60)1gを加え、ヘンシェルミキサーでドライブレンドを行った後、充填材としてアミノシラン処理されたガラスファイバー(13μm/3mm)430gをサイドフィードしながら、2軸押出機にてペレット化した。得られたペレット(B−5)の1分子中の塩基性基の数は仕込み量から2であった。
【0064】
製造例11
アクリル樹脂(A−1)100部とアクリル樹脂(B−1)100部とをコンティニアスニーダー[(株)栗本鐵工所製]にて、ジャケット温度200℃、滞留時間3分で溶融混合した。溶融樹脂を室温まで冷却後、粉砕機にて粉砕し、粉末状のアクリル樹脂粉末組成物(E−1)を得た。(E−1)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、1.0であった。
【0065】
実施例1
ナウタミキサー内に、アクリル樹脂粉末組成物(E−1)100部、紫外線安定剤ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)[商品名:TINUVIN 765、チバ社製]0.3部、2種類の内添離型剤であるジメチルポリシロキサン[日本ユニカー(株)製;ケイL45−1000]0.06部、カルボキシル変性シリコン[信越化学工業(株)製;X−22−3710]0.05部を投入し70℃で4時間含浸した後室温まで冷却した。最後に、ブロッキング防止剤架橋ポリメチルメタクリレート[ガンツ化成(株);ガンツパールPM−030S]0.5部を投入混合することでスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−1)を得た。
【0066】
製造例12
製造例11で(A−1)の代わりに、(A−2)、(B−1)の代わりに(B−2)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のアクリル樹脂粉末組成物(E−2)を得た。(E−2)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、1.0であった。
【0067】
実施例2
実施例1で(E−1)の代わりに、(E−2)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−2)を得た。
【0068】
製造例13
製造例11で(A−1)の代わりに(A−3)、(B−1)の代わりに、キシリレンジアミン(C−1)0.20部に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のアクリル樹脂粉末組成物(E−3)を得た。(E−3)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、0.5であった。
【0069】
実施例3
実施例1で(E−1)の代わりに、(E−3)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−3)を得た。
【0070】
製造例14
製造例11で(A−1)100部の代わりに、フタル酸(D−1)0.30部に、(B−1)の代わりに(B−3)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のアクリル樹脂粉末組成物(E−4)を得た。(E−4)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、2.0であった。
【0071】
実施例4
実施例1でアクリル樹脂(E−1)の代わりに、アクリル樹脂(E−4)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−4)を得た。
【0072】
製造例15
製造例11でアクリル樹脂(A−1)の代わりにカルボキシル基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂(A−4)に、アクリル樹脂(B−1)の代わりに、アミノ基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂(B−4)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状の酢酸ビニル樹脂(E−5)を得た。(E−5)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、1.0であった。
【0073】
実施例5
実施例1で(E−1)の代わりに、(E−5)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−5)を得た。
【0074】
製造例16
製造例11でアクリル樹脂(A−1)の代わりに(A−5)に、アクリル樹脂(B−1)の代わりに、(B−5)に変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状の酢酸ビニル樹脂(E−6)を得た。(E−6)中の酸性基(a)と塩基性基(b)との当量比([b]/[a])は、1.0であった。
【0075】
実施例6
実施例1で(E−1)の代わりに、(E−6)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−6)を得た。
【0076】
比較製造例1
製造例11でアクリル樹脂(A−1)とアクリル樹脂(B−1)を使用する代わりに、アクリル樹脂(A−1)のみを使用することに変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のアクリル樹脂(E’−1)を得た。(E’−1)中の塩基性基(b)の数は0であった。
【0077】
比較例1
次に、実施例1でアクリル樹脂(E−1)の代わりに、アクリル樹脂(E’−1)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P’−1)を得た。
【0078】
比較製造例2
製造例11でアクリル樹脂(A−1)とアクリル樹脂(B−1)を使用する代わりに、アクリル樹脂(B−1)のみを使用することに変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のアクリル樹脂(E’−2)を得た。(E’−2)中の酸性基(b)の数は0であった。
【0079】
比較例2
実施例1でアクリル樹脂(E−1)の代わりに、アクリル樹脂(E’−2)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P’−2)を得た。
【0080】
比較製造例3
製造例11でアクリル樹脂(A−1)とアクリル樹脂(B−1)を使用する代わりに、カルボキシル基含有エチレン・酢酸ビニル樹脂(A−4)のみを使用することに変更する以外は、製造例11と同様の方法で、粉末状のエチレン・酢酸ビニル樹脂粉末組成物(E’−3)を得た。(E’−3)中の酸性基(b)の数は2であった。
【0081】
比較例3
次に、実施例1で(E−1)の代わりに(E’−3)に変更する以外は、実施例1と同様の方法で、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P’−3)を得た。
【0082】
比較例4
窒素置換した15L耐圧反応器に、臭化銅8.8g、アクリル酸−n−ブチル(以下BA)1222g、グリシジルメタアクリレート(以下GMA)17.5g、アセトニトリル110g、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル8.8gを加えて攪拌し、75℃に昇温させた。その後、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下トリアミン)1.0gを添加して重合を開始させた。重合溶液を適宜サンプリングし、ガスクロマトグラフィー分析により転化率を測定した。BAの転化率が50%の時点で、GMA17.5gを追加して重合を続け、BAの転化率が97%の時点で、トルエン1246g、塩化銅6.1g、MMA539gを追加した。トリアミンを適宜追加し、反応速度を調整した。MMAの転化率が90%の時点で、トルエン6950gを追加するとともに冷却して反応を停止させ、エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体を得た。
エポキシ基含有アクリル系ブロック共重合体の100重量部に対して、架橋剤としてカルボキシル基含有アクリル系重合体であるアクトフローCBB−3098(ガラス転移温度:−42℃、重量平均分子量:3,000、酸価:98mg−KOH/g、総研化学製)を9.8重量部、触媒としてラウリン酸亜鉛を1重量部計量し、ラボプラストミル(東洋精機製)を用い、100℃、100rpmで5分間混練させ、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P’−4)を得た。
【0083】
実施例1〜6で得られたスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−1)〜(P−6)、比較例1〜4のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P’−1)〜(P’−4)を評価するために、190℃の溶融粘度、スラッシュ成形して得られたシートについて裏面溶融性、引張強度、伸び測定、耐熱性試験を下記の方法で実施した。結果を表1に示した。
【0084】
【表1】

【0085】
<190℃溶融粘度測定方法>
島津(株)製フローテスターCFT−500を用いて、以下の条件で等速昇温し、190℃の溶融粘度を測定した。
荷重 : 5kg
ダイ : 穴径0.5mm、長さ1.0mm
昇温速度 : 5℃/min.
【0086】
<表皮の作成>
低温成形を目的に、予め210℃に加熱されたしぼ模様の入ったNi電鋳型にスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(P−1)〜(P−6)、(P’−1)〜(P’−4)を充填し、10秒後余分な樹脂粉末組成物を排出した。60秒後水冷して表皮(厚さ1.0mm)を作成した。
【0087】
<裏面溶融性>
成形表皮裏面中央部を目視で観察し、以下の判定基準で溶融性を評価する。
1級:パウダーが溶融せず、成形品にならない。
2級:裏面全面にパウダーの形状の凹凸があり、かつ表面に貫通するピンホールがある。
3級:裏面全面に凹凸があり、光沢はない。表面に貫通するピンホールはない。
4級:一部未溶融のパウダーが有るが、光沢がある。
5級:均一で光沢がある。
【0088】
<引張強度、伸び測定>
成形表皮からJIS K 6301の引張試験片ダンベル1号形を3枚打ち抜き、その中心に40mm間隔で標線をした。板厚は標線間5カ所の最小値を採用した。これを25℃雰囲気下にてオートグラフに取り付け、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたるまでの破断強度、最大伸びを算出した。
【0089】
<耐熱性試験後の25℃引張強度、伸び測定>
成形表皮を、循風乾燥機中に、130℃、600時間処理した。続いて、処理後の表皮を25℃24時間静置した。続いて、これからJIS K 6301の引張試験片ダンベル1号形を3枚打ち抜き、その中心に40mm間隔で標線をした。板厚は標線間5カ所の最小値を採用した。これを25℃雰囲気下にてオートグラフに取り付け、200mm/minの速さで引っ張り、試験片が破断にいたるまでの破断強度、最大伸びを算出した。
【0090】
実施例1〜6の樹脂粉末組成物(P−1)〜(P−6)は、210℃の裏面溶融性、25℃引張強度、25℃伸び、耐熱性試験後の25℃引張強度、25℃伸びの全てにおいて優れている。また、0.3mmの破断応力が優れていることから、成形表皮の薄膜化も可能である。一方、比較例1〜4の樹脂粉末組成物(P’−1)〜(P’−4)は、溶融粘度は優れるものの、引張強度及び伸びが十分でないため、成形皮膜としては十分でない。このことより実施例1〜6の粉末組成物は、低温溶融性、引張強度、伸びを高いレベルで両立できていることから、特にインストルメントパネル用材料として優れている。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の樹脂粉末成形用材料から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等のスラッシュ成形用材料として、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等のスラッシュ成形用材料として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)〜(3)のいずれかである樹脂粉末組成物(E)を含有するスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
(1)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)を含有する樹脂粉末組成物(E1)
(2)1分子中に酸性基(a)を1個以上有するポリマー(A)と1分子中に塩基性基(b)を2個以上有する化合物(C)を含有する樹脂粉末組成物(E2)
(3)1分子中に塩基性基(b)を1個以上有するポリマー(B)と1分子中に酸性基(a)を2個以上有する化合物(D)を含有する樹脂粉末組成物(E3)
【請求項2】
ポリマー(A)が、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を有するポリマーである請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリマー(B)がアミノ基を有するポリマーである請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリマー(A)中の酸性基(a)のモル数に対するポリマー(B)中の塩基性基(b)のモル数の比b/aが、0.5〜2.0である請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
ポリマー(A)とポリマー(B)が、アクリル樹脂、オレフィン樹脂および酢酸ビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。

【公開番号】特開2013−18876(P2013−18876A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153472(P2011−153472)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】