説明

スラリー処理

本発明は、無機スラリー処理用組成物および本組成物を用いて無機スラリーを処理する方法に関し、該スラリーを実質的に均一な相中に保つ。本組成物はTHP塩ならびに:
(i)少なくとも1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物;
(ii)不飽和酸のホスホン酸化オリゴマー;
(iii)不飽和酸のホモポリマー;および
(iv)ポリリン酸
からなる群から選択される分散剤
を含む。該THP塩は、好ましくはTHPSである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機スラリー処理用組成物に関し、該組成物を用いて無機スラリーを処理する方法にも関し、該スラリーを実質的に均一な相中に保つ。
【0002】
本発明は、特に炭酸カルシウム主体のスラリーに言及して、この中でも特に製紙プロセスにおいて使用されるものに言及して、本明細書中において記載されるが、これに限定されるものとして解釈されるべきではない。
【背景技術】
【0003】
大部分の無機スラリーは、約70重量%〜80重量%の固形分を含有する。多くの無機スラリー、特に炭酸カルシウム主体のものは、バクテリアの混入に対して敏感であることが知られており、このような混入を最小限に抑えるために、該スラリーに1種以上の殺菌活性物質を加えることが、実施されてきた。
【0004】
リン含有化合物、特にテトラキス(ヒドロキシ有機)ホスホニウム塩(THP塩)は、効果的な殺菌剤であることが知られている。本出願人により実施された実験作業によれば、例えば、炭酸カルシウム主体のスラリーへのテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩(THPS)溶液の添加により、バクテリア数が2時間で10個に抑えられるようになることが、示されている。
【0005】
しかしながら、スラリーへのTHPSのみの添加が結果的に、該スラリーの瞬時の不均一な濃縮および凝集を引き起こすことも、知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、THP塩および分散剤を含む組成物の使用が、バクテリアの混入に対する継続的な保存性を提供することを見出したが、一方同時に、該スラリーは実質的に均一な相中に保たれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、第1の態様において、本発明は無機スラリー処理用組成物を提供し、本組成物は:(a)テトラキス(ヒドロキシ有機)ホスホニウム塩(以降THP塩);ならびに
(b)(i)少なくとも1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物;
(ii)不飽和酸のホスホン酸化オリゴマー;
(iii)不飽和酸のホモポリマー;および
(iv)ポリリン酸
からなる群から選択される分散剤
を含む。
【0008】
本発明によれば、該THP塩は、好ましくはテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩である。
【0009】
あるいは、該THP塩は、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、同リン酸塩、同硝酸塩、または同蓚酸塩であってもよい。
【0010】
(b)(i)タイプの分散剤の好ましい例は、ニトリロトリス(メチレンリン酸)のナトリウム塩、特に四ナトリウム塩のような、1つの3級窒素原子を持つ化合物である。
【0011】
(b)(ii)タイプの分散剤の好ましい例は、一般式H(CHOM.CHOM)POを持つオリゴマーであるものを包含し、式中、Mが、該オリゴマーが水に溶けるようなカチオン種であり、nが、1より大きな数である。
【0012】
他の適切なオリゴマーは、本出願人の欧州特許第0 491 391号明細書に開示されるものである。
【0013】
(b)(iii)タイプの分散剤の好ましい例は、アクリル酸ホモポリマーであり、特に2000〜5000の範囲の分子量を持つホモポリマーである。
【0014】
(b)(iv)タイプの分散剤の好ましい例は、トリポリリン酸ナトリウムを包含する。
【0015】
第2の態様において、本発明は無機スラリー処理方法を提供し、該スラリーを実質的に均一な相中に保ち、本方法は、本発明の第1の態様による組成物の有効量の、該スラリーへの添加を含む。
【0016】
該無機スラリーは例えば、炭酸カルシウム主体のスラリーを含んでよい。
【0017】
あるいは、該無機スラリーは、顔料スラリー、粘土スラリー、またはセメントスラリーを含んでよい。
【0018】
好ましくは、前記組成物中における分散剤に対するTHP塩の比は(活性成分として)約2:1である。
【0019】
適切には、該組成物は、該スラリー重量に基づいて10ppm〜1000ppmの範囲の量、例えば、該スラリー重量に基づいて約750ppmにて、該スラリーへと加えられてよい。
【実施例】
【0020】
本発明を、以下の実施例により、例示する。
【0021】
これら実施例において、Setacarbとして商業上知られている75%炭酸カルシウムスラリーを:
実施例1:THP塩のみ
実施例2:THP塩および(b)(i)タイプの分散剤
実施例3:THP塩および(b)(ii)タイプの分散剤
を用いて、処理した。
【0022】
使用された各添加剤の量およびその結果を、以下の表に記す。
【0023】
【表1】

【0024】
表の注釈
(a)テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩水溶液(約75%)、TOLCIDE(登録商標)−PS75として市販。
(b)(i)ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)四ナトリウム塩水溶液、BRIQUEST(登録商標)301−32Sとして市販。
(b)(ii)ポリアクリル酸ホモポリマー、分子量2000〜5000、BEVALOID(登録商標)211として市販。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テトラキス(ヒドロキシ有機)ホスホニウム塩(以降THP塩);ならびに
(b)(i)少なくとも1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物;
(ii)不飽和酸のホスホン酸化オリゴマー;
(iii)不飽和酸のホモポリマー;および
(iv)ポリリン酸
からなる群から選択される分散剤
を含む、無機スラリー処理用組成物。
【請求項2】
前記THP塩が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記THP塩が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、同リン酸塩、同硝酸塩、または同蓚酸塩である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
分散剤(b(i))が、1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
分散剤(b(i))が、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記塩が、四ナトリウム塩である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
分散剤(b(ii))が、マレイン酸のホスホン酸化オリゴマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記オリゴマーが、一般式H(CHOM.CHOM)POを持ち、式中、Mが、該オリゴマーが水に溶けるようなカチオン種であり、nが、1より大きな数である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
分散剤(b(iii))が、アクリル酸のホモポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記ホモポリマーが、2000〜5000の範囲の分子量を持つ、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
分散剤(b(iv))が、ナトリウムトリポリリン酸である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
無機スラリー処理方法であって、該スラリーを実質的に均一な相中に保ち、該スラリーへの請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物の有効量の添加を含む方法。
【請求項13】
前記組成物中における分散剤に対するTHP塩の比が(活性成分として)約2:1である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、前記スラリー重量に基づいて10ppm〜1000ppmの範囲の量にて、該スラリーへと加えられる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が、前記スラリー重量に基づいて約750ppmの量にて、該スラリーへと加えられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記スラリーが、炭酸カルシウム主体のスラリーを含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記スラリーが、顔料スラリー、粘土スラリー、またはセメントスラリーを含む、請求項12〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
実施例に関連して本明細書中において実質的に記載される、無機スラリー処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムリン酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硝酸塩、およびテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム蓚酸塩から選択されるテトラキス(ヒドロキシ有機)ホスホニウム塩(以降THP塩);ならびに
(b)(i)少なくとも1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物;および
(ii)不飽和酸のホモポリマー
からなる群から選択される分散剤
を含む、無機スラリー処理用組成物の使用であって、該スラリーを実質的に均一な相中に保ち、該スラリーをバクテリアの混入に対して保存するための使用。
【請求項2】
前記THP塩が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記THP塩が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、同リン酸塩、同硝酸塩、または同蓚酸塩である、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
分散剤(b(i))が、1つの3級窒素原子を含有するホスホン酸化化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
分散剤(b(i))が、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)のナトリウム塩である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
前記塩が、四ナトリウム塩である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
分散剤(b(ii))が、アクリル酸のホモポリマーである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記ホモポリマーが、2000〜5000の範囲の分子量を持つ、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
有効量の前記組成物が、前記スラリーへと添加される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
前記組成物中における分散剤に対するTHP塩の比が(活性成分として)約2:1である、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記組成物が、前記スラリー重量に基づいて10ppm〜1000ppmの範囲の量にて、該スラリーへと加えられる、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
前記組成物が、前記スラリー重量に基づいて約750ppmの量にて、該スラリーへと加えられる、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記スラリーが、炭酸カルシウム主体のスラリーを含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
前記スラリーが、顔料スラリー、粘土スラリー、またはセメントスラリーを含む、請求項9〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
(a)テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムリン酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硝酸塩、およびテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム蓚酸塩から選択されるテトラキス(ヒドロキシ有機)ホスホニウム塩(以降THP塩);ならびに
(b)ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)の四ナトリウム塩である分散剤
を含む、無機スラリー処理用組成物。
【請求項16】
(a)テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムリン酸塩、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硝酸塩、およびテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム蓚酸塩から選択されるテトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩(以降THP塩);ならびに
(b)2,000〜5,000の範囲の分子量を持つアクリル酸ホモポリマーである分散剤
を含む、無機スラリー処理用組成物。
【請求項17】
前記THP塩が、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム硫酸塩である、請求項15または16に記載の組成物。
【請求項18】
無機スラリー処理方法であって、該スラリーを実質的に均一な相中に保ち、該スラリーをバクテリアの混入に対して保存するための、該スラリーへの請求項1517のいずれか1項に記載の組成物の有効量の添加を含む方法。

【公表番号】特表2006−521194(P2006−521194A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502183(P2006−502183)
【出願日】平成16年1月12日(2004.1.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000056
【国際公開番号】WO2004/066731
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(502326923)ローディア コンシューマー スペシャルティーズ リミテッド (2)
【Fターム(参考)】