説明

スリットノズル洗浄装置

【課題】 スリットノズルの洗浄及び乾燥までに要する時間を短縮させることができるスリットノズル洗浄装置を提供する 。
【解決手段】 スリットノズル6の長手方向に沿って移動可能とされたスリットノズル洗浄装置10において、スリットノズル6に洗浄液を噴出する洗浄液噴出口19を備えた洗浄液供給部17と、スリットノズル6に付着した洗浄液を拭き取る拭き取り部材16と、エア噴出口(23,23)を備えた乾燥部18とが順に設けられている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリットノズルの長手方向に沿って移動しつつ、スリットノズルの吐出口廻りを洗浄するスリットノズル洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板等の基板上にレジスト膜やカラーフィルタとなる塗布液を一定幅で塗布する装置として従来からスリットノズルが用いられている。スリットノズルを用いれば塗布液の無駄をなくし且つ効率的に塗布を行えるが、幅広となる分ノズル先端の周辺部に塗布液の回り込み量も多く、これが乾燥すると大量の異物発生の原因となる。
【0003】
そこで、特許文献1では、スリットノズルの長手方向に沿って移動する洗浄部に、洗浄液の噴出口とガスの噴出口を形成した構造が開示されている(図12参照)。
【0004】
また、特許文献2では、洗浄装置のV字状をなす受け面にノズルの下端部を臨ませ、この受け面に設けたリンスノズルからスリット近傍に洗浄液を噴出して洗浄する構造が開示されている(図8参照)。
【0005】
また特許文献3では、スリットノズルの移動方向の終端部近傍に、プリディスペンス部、洗浄部及びディップ部を配置した構成が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−262127号公報
【特許文献2】特開平7−328515号公報
【特許文献3】特開2005−270841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1では、洗浄装置がスリットノズルの長手方向に沿って移動しながら洗浄を行うが、洗浄装置のV字状をなす受け面において、下方に連続して洗浄ノズルが設けられ、上方に連続してガスノズルが設けられているため(図12参照)、スリットノズルの長手方向に沿って洗浄装置が往復動することで洗浄と乾燥とを行うことが推測される。この場合、例えば往動の際に洗浄液を噴出して復動の際にガスで乾燥させることになるため、洗浄から乾燥までに要する時間が長くなってしまう。
【0008】
また、特許文献2及び特許文献3に開示される装置では、洗浄装置がスリットノズル下端部全体を同時に洗浄するため、均一な洗浄を行うことが難しく且つ大量の洗浄液を必要とする。
【0009】
上述した点に鑑み、本発明は、スリットノズルの洗浄及び乾燥までに要する時間を短縮させることができるスリットノズル洗浄装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るスリットノズル洗浄装置は、スリットノズルの長手方向に沿って移動可能とされ、スリットノズルに洗浄液を噴出する洗浄液噴出口を備えた洗浄液供給部と、スリットノズルに付着した洗浄液を拭き取る拭き取り部材と、エア噴出口を備えた乾燥部とが順に設けられている構成とする。
【0011】
本発明に係るスリットノズル洗浄装置によれば、スリットノズルの長手方向に沿って移動可能とされ、スリットノズルに洗浄液を噴出する洗浄液噴出口を備えた洗浄液供給部と、スリットノズルに付着した洗浄液を拭き取る拭き取り部材と、エア噴出口を備えた乾燥部とが順に設けられているので、洗浄装置がスリットノズルに沿って往動する間に洗浄、拭き取り及び乾燥までが完了する。これにより、例えばスリットノズルに沿って往復することで洗浄更には乾燥までが完了する構成の洗浄装置の場合に比べて、洗浄に要する時間を大幅に短縮させることができる。
【0012】
上述したスリットノズルの洗浄装置では、乾燥部に設けたエア噴出口とは別に、洗浄液供給部にエア噴出口を設けることもできる、これにより、例えば洗浄液噴出口から噴出された洗浄液を下方に導くことも可能になり、洗浄液に一方向(下向き)の流れをつくることができる。従って洗浄効率を高めることができると共に洗浄液が周囲に飛び散ることを防ぐこともできる。
またこの構成において、洗浄液供給部に設けられたエア噴出口と乾燥部に設けられたエア噴出口とを長手方向において連続した構成とすることもできる。これにより、エア供給配管を1本にすることもでき装置構成を簡略化できる。
【0013】
また、上述したスリットノズルの洗浄装置では、洗浄液噴出口の形状として、スリットノズルの長手方向に直行する方向を長軸方向とした長口(縦長)とすることもできる。これにより、スリットノズルにおいて洗浄液があたる面積を広げることができ、洗浄液による洗浄効果を更に高めることができる。従って、洗浄装置の長手方向へ沿った移動スピードを高めることも可能になり、例えば洗浄液を削減が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のスリットノズル洗浄装置によれば、洗浄時間を大幅に短縮させることが可能になる。従って、半導体製造装置をはじめとする液体塗布装置のノズルを洗浄する装置において、特に塗布液の凝固が問題となる装置に用いられて好適であり、洗浄作業頻度が低減することによる製造ライン全体の処理効率を向上させることが期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係るスリットノズル洗浄装置を適用した塗布装置の平面図、図2は図1に示した塗布装置の側面図、図3は同洗浄装置の全体斜視図、図4は同洗浄装置の全体斜視図である。
【0016】
図1及び図2に示すように、塗布装置は基台1に一対の平行なレール(2,2)が設けられ、これらレール(2,2)の中間位置となる基台1上面の中央に基板Wの載置ステージ3が固定されている。そしてこの基板載置ステージ3を跨ぐように移動機構(4,4)がレール(2,2)間に走行可能に架け渡され、これら移動機構(4,4)間には前後にビーム(5,5)が架設されており、平面視で枠状をなすフレームが構成されている。更にビーム(5,5)の中間で移動機構(4,4)間に昇降装置を介してスリットノズル6が取り付けられている。
【0017】
このような構成の塗布装置においては、本実施の形態のスリットノズル洗浄装置10が基台1の一端側に配置されている。この洗浄装置10は、基台1の幅方向に設けられたレール11にプレート12が係合され、プレート12上に設けた洗浄用ブロック13がスリットノズル6の長手方向に沿って往復動可能とされている。
【0018】
洗浄用ブロック13は、図3及び図4に示すように側面視でV字状をなす左右の受け面(14,14)が形成され、底部に洗浄液の排出口15が形成されている。
【0019】
そして、本実施の形態においては特に、このV字状をなす左右の受け面(14,14)に、洗浄液供給部17、拭き取り部材16、乾燥部18が順に設けられている。
具体的には、洗浄装置10が実際に移動した際に、先ずは洗浄、次に拭き取り、さらには乾燥が順に行われるような配置順であれば構わない。従って、洗浄装置10のスタート位置を図3に示すような状態とし図中矢印方向(XからY)に移動させる場合は、図4に示すように左右の受け面(14,14)手前側から順に洗浄液供給部17、拭き取り部材16、乾燥部18を設けるようにしている。つまり、洗浄装置10の進行方向を基準として、拭き取り部材16の前段に洗浄液供給部17が設けられ、拭き取り部材16の後段に乾燥部18が設けられている。これにより、洗浄装置10が実際に移動した場合は、行きだけの移動でスリットノズル6に対して洗浄、拭き取り、乾燥を順に行うことができる。
【0020】
なお、洗浄装置10のスタート位置を図3に示す場合から逆とした場合は(YからX)、左右の受け面(14,14)において、拭き取り部材16を挟んでの洗浄液供給部17と乾燥部18の配置位置が図4に示す状態から逆となる。
【0021】
洗浄液供給部17は、V字状をなす左右の受け面(14,14)にスリットノズル6に洗浄液を噴出する洗浄液噴出口19が複数設けられている。図示の例では左右にそれぞれ2つの口を設けているが、噴出口19の個数はこれに限定されない。
【0022】
洗浄液噴出口19は、その形状がスリットノズル6の長手方向に直行する方向を長軸方向とした長口(縦長形状)とされている。これにより、スリットノズル6の吐出口近傍の広範囲にわたって洗浄液を強く当てることができ、洗浄効率を向上させることができる。そしてこのように洗浄効果が向上したことから、洗浄装置10の長手方向へ沿った移動スピードも高めることも可能になり例えば洗浄液削減も可能になる。
【0023】
また洗浄液噴出口19の上方にはエア噴出口(20,20)が開口されている。これにより、スリットノズル6が洗浄装置10のV字状をなす左右の受け面(14,14)内に収まった状態で実際にエアを噴出させた場合、洗浄液噴出口19から下方の排出口15へと向かう一方向(下方)のエアの流れを形成することができ、スリットノズル(例えばスリットノズルの吐出口の廻り)6に付着した洗浄液が上方へ舞い上がることなく下方の排出口15へと導くことができる。
【0024】
拭き取り部材16は、左右の受け面(14,14)の長さ方向の略中間位置に設けられており、例えばスリットノズル(スリットノズルの吐出口の廻り)6に付着した洗浄液を拭き取るためのものである。拭き取り部材16としては、例えばフェルトやスポンジ等を用いることができる。なお、拭き取り部材16は、V字状をなす左右の受け面(14,14)において下方(排出口15の近傍)に設けられている。
なお、図4に示す場合では、排出口15を挟んで左右の拭き取り部材(16,16)は長さ方向に若干ずらして取り付けられている。即ち左右対象に取り付けないことでスリットノズル6を拭き取る際の干渉を防いでいる。
【0025】
乾燥部18では左右の受け面(14,14)の上方にスリット状に形成された乾燥用のエア噴出口(23,23)が開口している。これにより、スリットノズル(例えばスリットノズルの吐出口の廻り)6にエアを吹きかけることができ、スリットノズル6を乾燥させることができる。
【0026】
なお、本実施の形態のスリットノズル洗浄装置10では、上述した洗浄液噴出口19の上方に設けられた洗浄液供給部17のエア噴出口(20,20)と、乾燥部18の上方に設けられたエア噴出口(23,23)とを連続せず独立して設け、別々のエア供給管21,22を用いて異なる圧力のエア(後述するように乾燥部18での噴出圧を大きくする)を供給するようにしているが、それぞれのエア噴出口が連続した構成とすることもできる。この場合は、エア供給配管を1本にすることができ装置構造を簡素化することができる。
【0027】
因みに本実施の形態のようにそれぞれのエア噴出口を独立して設けた場合は、例えば洗浄液供給部17のエア噴出口(20,20)からのエアの噴出圧は、洗浄液噴出口19から噴出される洗浄液に方向性をもたせる程度の小さいエア圧とし、乾燥部18のエア噴出口(23,23)からのエア噴出圧は、乾燥を促すために大きいエア圧とすることができる。すなわちエア圧をそれぞれで調整することが可能になる。
【0028】
なお、洗浄液供給部17のエア噴出口(20,20)及び乾燥部のエア噴出口(23,23)を連続させた場合はもちろんであるが、本実施の形態のようにそれぞれが独立して設けられている場合であっても、図4に示すように、V字状をなす左右の受け面(14,14)において拭き取り部材16の上方にはエア噴出口は延在している。しかしエア噴出口の形状、長さ、形成位置等はこれに限定されない。
【0029】
また、本実施の形態のスリットノズル洗浄装置10では、V字状をなす左右の受け面(14,14)に対して、スリットノズル6の高さ位置を垂直方向で変えることもできる。これにより、スリットノズル6に対して例えば拭き取り部材を接触させることなく移動でき、スリットノズル6に対して洗浄と乾燥のみを行うこともできる。
【0030】
次に、スリットノズル洗浄装置の実際の動作を説明する。
塗布が終了したスリットノズル6の下端の吐出口を洗浄するには、先ず、洗浄装置10を図1に示すスタート位置に待機させておき、移動機構4によってスリットノズル6を洗浄装置10の上方まで移動させる。
【0031】
次いで、スリットノズル6を下降させて、下端の吐出口を拭き取り部材(16,16)に当接させる。この後、洗浄液噴出口19から洗浄液をスリットノズル6の吐出口廻りに吹き付けると共にエア噴出口20からエアを噴出させた状態で、噴出洗浄装置10をレール11に沿って一端から他端に向けて(XからY)移動させる。
これにより、スリットノズル6の洗浄液供給部17に臨む部分は洗浄液により洗浄され、洗浄された部分は洗浄装置10が移動することで拭き取り部材(16,16)によって拭き取られ、更に洗浄液が拭き取られた部分は洗浄装置10が移動することで乾燥部18に臨みエアにより乾燥される。
【0032】
このように本実施の形態のスリットノズル洗浄装置10によれば、スリットノズル6に沿った行きだけの移動だけで、スリットノズル6の吐出口廻りを洗浄及び乾燥させることが可能になり、例えば行き及び帰りの移動により洗浄及び乾燥を行う洗浄装置の場合に比べて洗浄時間を大幅に短縮することができる。
【0033】
上述した実施の形態のスリットノズル洗浄装置10では、拭き取り部材(16,16)としてフェルトやスポンジを用いた場合を説明したが、これ以外にもゴムや樹脂等を用いることもできる。
【0034】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る洗浄装置を適用した塗布装置の平面図。
【図2】図1に示した塗布装置の側面図。
【図3】同洗浄装置の全体斜視図。
【図4】同洗浄装置の全体斜視図。
【符号の説明】
【0036】
1…基台、2…レール、3…基板載置ステージ、4…移動機構、5…ビーム、6…スリットノズル、10…洗浄装置、11…レール、12…プレート、13…洗浄用ブロック、14…受け面、15…排出口、16…拭き取り部材、17…洗浄液供給部、18…乾燥部、19…洗浄液噴出口、20…エア噴出口(洗浄液供給部)、21,22…エア供給管、23…エア噴出口(乾燥部)、W…基板












【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリットノズルの長手方向に沿って移動可能とされたスリットノズル洗浄装置において、スリットノズルに洗浄液を噴出する洗浄液噴出口を備えた洗浄液供給部と、前記スリットノズルに付着した洗浄液を拭き取る拭き取り部材と、エア噴出口を備えた乾燥部とが順に設けられていることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスリットノズル洗浄装置において、前記洗浄装置の進行方向を基準として、前記拭き取り部材の前段に前記洗浄液供給部が設けられ、前記拭き取り部材の後段に前記乾燥部が設けられていることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスリットノズル洗浄装置において、前記洗浄液供給部にはエア噴出口が設けられていることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載のスリットノズル洗浄装置において、前記洗浄液供給部のエア噴出口と前記乾燥部のエア噴出口とは長手方向において連続して形成されていることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。
【請求項5】
請求項1に記載のスリットノズル洗浄装置において、前記洗浄液噴出口はスリットノズルの長手方向に直行する方向を長軸方向とした長口であることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。
【請求項6】
請求項1に記載のスリットノズル洗浄装置において、前記洗浄液供給口、前記拭き取り部材、前記乾燥部のエア供給口は、前記スリットノズルの下端部が臨むV字状受け面を構成する左右傾斜面に設けられていることを特徴とするスリットノズル洗浄装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−237122(P2007−237122A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66404(P2006−66404)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】