説明

スルホン化コポリマーを含む光電子デバイス

本発明は、1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマー又は1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーを含んでなる光電子デバイスを提供する。1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーはスルホン化ポリアリールエーテル、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリホスファゼンから選択され、1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーはホスホン化ポリアリールエーテル、ホスホン化ポリイミド、ホスホン化ポリフェニレンオキシド、ホスホン化ポリアリーレン、ホスホン化ポリホスファゼン及びこれらの組合せから選択される。スルホン化ポリアリールエーテルは、スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロック、スルホン化ポリエーテルスルホンブロック又はこれらの組合せを有するスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマー又は1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーを含んでなる光電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電圧バイアスを受けた場合に発光する薄膜材料を使用する有機発光デバイス(OLED)のような光電子デバイスは、ますますポピュラーな形態のフラットパネルディスプレイ技術になるものと予想される。これは、OLEDが携帯電話、パーソナル・ディジタル・アシスタント(PDA)、コンピューターディスプレイ、車両用情報ディスプレイ、テレビジョンモニター並びに一般照明用光源を含む多種多様の潜在的用途を有するからである。鮮明な色、広い視角、フルモーションビデオとの適合性、広い温度範囲、薄くてコンフォーマブルな形状因子、低い所要電力、及び低コスト製造プロセスの実現可能性を有するので、OLEDは陰極線管(CRT)及び液晶ディスプレイ(LCD)に対する未来の代替技術と見られている。また、高い視感度効率のため、OLEDはある種の用途のための白熱灯及び恐らくは蛍光灯にさえ取って代わる可能性を有すると見られている。
【0003】
現行のOLEDは、透明な陽極(通例は酸化インジウムスズ(ITO))上に組み立てられている。ITOは、4.4〜4.8eVの範囲内の仕事関数を有する縮退n型半導体である。しかし、発光ポリマー(LEP)のような大抵の有機発光材料(OEM)に関しては、最高被占分子軌道(HOMO)は真空より5eV以上低い。したがって、正孔注入用の主要なエネルギーキャリヤーはITO/OEM界面にあると予想され、非効率的な正孔注入、ひいては不良な量子効率及び高い駆動電圧のような劣った総合デバイス性能をもたらす。このような非効率的正孔注入の問題を解決しようという現今の努力にもかかわらず、当技術分野では、単一成分でさらに好ましくは有機溶剤溶液型の正孔注入材料を開発することが今なお要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/031925号明細書
【特許文献2】国際公開第2006/060435号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/124784号明細書
【特許文献4】国際公開第91/06887号パンフレット
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0076627号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第2004/0149572号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0265603号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2005/0064154号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2006/0068329号明細書
【特許文献10】米国特許第7087351号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】HANACK, MICHAEL ET AL: "1,3-Bis(2-thienylmethylene)-1H,3H-thieno[3,4-c]thiophene:a precursor for a new low-band-gap polymer", CHEMISCHE BERICHTE, vol.126, 1993, pages 1487-1491
【非特許文献2】SEZAI SARAC, A.: "Electropolymerization", ENCYCLOPEDIA OF POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY, 2004, pages 1-26
【非特許文献3】Sankir et al., "Electrically conductive polyaniline-sulfonated polyarylene ether sulfone composites", Applied Physics Letters, Volume 87, pp.241910(2005)
【非特許文献4】Allcock et al., "Phenyl phosphonic acid functionalized poly[aryloxyphosphazenes] as proton-conducting membranes for direct methanol fuel cells", Journal of Membrane Science, Volume 201, pp.47-54(2002)
【非特許文献5】Andrianov et al., "Novel Route to Sulfonated Polyphosphazenes:Single-Step Synthesis Using "Noncovalent Protection" of Sulfonic Acid Functionality", Macromolecules, Volume 37, pp.4075-4080(2004)
【非特許文献6】Asano et al., "Hydrolytically Stable Polyimide Ionomer for Fuel Cell Applications", Chemistry of Materials, Volume 16, Number 15, pp.2841-2843(2004)
【非特許文献7】Einsla et al., "Sulfonated naphthalene dianhydride based polyimide copolymers for proton-exchange-membrane fuel cells II.Membrane properties and fuel cell performance", Journal of Membrane Science, Volume 255, pp.141-148(2005)
【非特許文献8】Hickner et al., "Alternative Polymer Systems for Proton Exchange Membranes(PEMs)", Chemical Reviews, Volume 104, pp.4587-4612(2004)
【非特許文献9】Meng et al., "Proton-exchange membrane electrolytes derived from phosphonic acid containing poly(arylene ether)s", European Polymer Journal, Volume 39, pp.627-631(2003)
【非特許文献10】Meng et al., "Synthesis and Proton Conductivities of Phosphonic Acid Containing Poly-(arylene ether)s", Journal of Polymer Science.Part A:Polymer Chemistry, Volume 39, 3218-3226(2001)
【非特許文献11】Miyatake et al., "Proton Conductive Polyimide Electrolytes Containing Fluorenyl Groups:Synthesis, Properties, and Branching Effect", Macromolecules, Volume 37, pp.4956-4960(2004)
【非特許文献12】Paulsdorf et al., "Ionic conductivity in polyphosphazene polymer electrolytes prepared by the living cationic polymerization", Solid State Ionics, Volume 169, pp.25-33(2004)
【非特許文献13】Saito et al., "Acid-Functionalized Poly(phenylene oxide)s:Their Preparation and Properties", Industrial & Engineering Chemical Research, Volume 44, 8626-8630(2005)
【非特許文献14】Wycisk et al., "Sulfonated polyphosphazene ion-exchange membranes", Journal of Membrane Science, Volume 199, 155-160(1996)
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマー又は1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーを含んでなる光電子デバイスに関する。
【0007】
本発明の上記その他の特徴、態様及び利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳しい説明を読んだ場合に一層よく理解されよう。添付の図面中では、図面全体を通じて類似の部分は同一の符号で表されている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、対照OLED(ひし形)及び例示的なOLED(三角形)に関する輝度対バイアス電圧曲線を示している。
【図2】図2は、対照OLED(ひし形)及び例示的なOLED(三角形)に関する効率対電流密度曲線を示している。
【図3】図3は、照明下で測定した対照OLED(ひし形)及び例示的なOLED(三角形)の電流−電圧曲線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
光起電デバイスは、電気−光又は光−電気変換器、或いは動作に際してかかるデバイスを使用する機器である。例示的な光起電デバイスには、特に限定されないが、発光ダイオード、光ファイバー及び光起電セルがある。
【0010】
縮合反応又は縮合重合は、2つの分子又は成分が反応し、同時に小さい分子を失いながら互いに共有結合する化学反応である。縮合コポリマーは、通例は2種以上の二官能性モノマーの反応から生じるが、2つの相異なる官能基を含む自己反応性モノマー(例えば、4−フルオロ−4′−ヒドロキシジフェニルスルホン)の1種以上を使用することもできる。縮合重合は、アニオン重合、カチオン重合、遊離基重合のような他の重合プロセスから区別される。
【0011】
本明細書中で使用するスルホン化芳香族縮合コポリマーとは、繰返し単位の少なくとも一部又は全部がSO3M基(式中、MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物である。)を含むコポリマーをいう。本明細書中で使用するホスホン化芳香族縮合コポリマーとは、繰返し単位の少なくとも一部又は全部がPO3M基(式中、MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物である。)を含むコポリマーをいう。多くの実施形態、特にコポリマーが光電子デバイスの正孔注入層又は正孔収集層で使用される実施形態では、可動プロトンを得るため、ポリマー中に酸形態のスルホン酸基又はホスホン酸基を使用することが望ましい場合がある。この場合、MはH又はHと上述した陽イオンの1種以上との混合物であり、若干の実施形態では、MはHであることが好ましくあり得る。
【0012】
スルホン化芳香族縮合コポリマーには、スルホン化ポリアリールエーテル、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリホスファゼンなどがある。
【0013】
別の態様では、ホスホン化芳香族縮合コポリマーには、特に限定されないが、ホスホン化ポリアリールエーテル、ホスホン化ポリイミド、ホスホン化ポリフェニレンオキシド、ホスホン化ポリアリーレン、ホスホン化ポリホスファゼンなどがある。
【0014】
ポリアリールエーテルは、主鎖繰返し単位の一部として芳香族エーテル構造単位を含んでいる。ポリアリールエーテルは、芳香族ジヒドロキシ化合物と二ハロゲン化物との縮合によって合成される。ポリアリールエーテルはまた、ケトン、スルホン、エステルなどの他の官能基も含み得る。例えば、ポリアリールエーテルがさらにイミド官能基を含む場合、かかるポリマーは当技術分野でポリエーテルイミド又はポリアリールエーテルイミドとして知られることもある。他の官能基を有するコポリマーは、必要な官能基を既に含むモノマーを適宜に選択することで合成できる。いかなる理論にも束縛されることはないが、様々な官能基は各種用途のために有用な様々な性質をコポリマーに付与することを理解すべきである。
【0015】
ポリイミドは、主鎖繰返し単位の一部として芳香族イミド構造単位を含んでいる。ポリイミドは、芳香族二無水物とジアミンとの反応によって合成できる。ポリアリールエーテルの場合と同じく、ポリイミドはさらにエーテル、スルホン、ケトンなどの他の官能基を含み得る。
【0016】
ポリフェニレンオキシドは主鎖繰返し単位の一部としてフェニルエーテル構造単位を含み、銅のような金属触媒の存在下におけるフェノールの酸化カップリングによって合成できる。
【0017】
ポリアリーレンは、芳香族基が別の芳香族基に結合してなる構造単位を含んでいる。ポリアリーレンは、当技術分野で公知の各種方法(例えば、スズキカップリング法)によって合成できる。
【0018】
ポリホスファゼンは、リン−窒素結合を有する構造単位であって、リン及び窒素の両方が有機基で置換されている構造単位を主鎖の一部として含んでいる。ポリホスファゼンは当技術分野で公知の多くの方法によって合成でき、また商業的に入手することもできる。
【0019】
若干の実施形態では、スルホン化芳香族縮合コポリマーはスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーである。一実施形態では、ポリアリールエーテルブロックコポリマーは下記式Iの構造単位を有する1以上のスルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックを含んでいる。
【0020】
【化1】

式中、
1及びR2は独立にC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
1は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
aは0又は1〜3の整数であり、
bは0又は1〜4の整数であり、
mは0又は1である。
【0021】
スルホン化芳香族縮合コポリマーは、通例、スルホン化又は非スルホン化ジヒドロキシアリールモノマーとスルホン化又は非スルホン化ジハロアリールコモノマーとの重縮合によって製造される。式Iの単位は、4,4′−ジフルオロベンゾフェノン又は4,4′−ジクロロベンゾフェノンのような1種以上の置換又は非置換ジハロベンゾフェノン、或いは1,4−ビス(4−フルオロベンゾイル)ベンゼン又は1,4−ビス(4−クロロベンゾイル)ベンゼンのようなジ(ハロベンゾイル)ベンゼンから導くことができる。特定の実施形態では、a及びmは0であり、式Iの単位は非置換ジハロベンゾフェノンから導かれる。スルホン化ジハロジアリールケトンモノマー、特にスルホン化ジハロベンゾフェノンモノマーを用いてスルホン化芳香族縮合コポリマーを製造できるが、所望ならば後スルホン化によってスルホン化芳香族縮合コポリマーを製造することもできる。後スルホン化とは、SO3、ClSO3H、Me3SiSO3Cl或いは発煙又は濃H2SO4のようなスルホン化試薬を用いる非スルホン化芳香族縮合コポリマーの直接スルホン化を意味する。スルホン化モノマーの使用は、ポリマーアーキテクチャーの制御を一層容易にすることができる。好適なスルホン化ジハロベンゾフェノンモノマーの例には、4,4′−ジフルオロ−3,3′−ジスルホン化−ベンゾフェノンナトリウム塩及びカリウム塩、4,4′−ジクロロ−3,3′−ジスルホン化−ベンゾフェノンナトリウム塩及びカリウム塩、並びに4,4′−ジフルオロベンゾフェノン−3,3′−ビス(スルホン酸)及び4,4′−ジクロロベンゾフェノン−3,3′−ビス(スルホン酸)がある。
【0022】
例示的な芳香族ジヒドロキシ化合物には、特に限定されないが、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシフェニルスルホキシド、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ジヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ジヒドロキシフェニル)スルホン、4,4−(フェニルホスフィニル)ジフェノール、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オール、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール、1−メチル−1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−イソプロピルシクロヘキサン、1−メチル−2−(4−ヒドロキシフェニル)−3−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、4,4′−オキシジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、3,3−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド及びこれらの組合せがある。ポリマーはさらに、他の芳香族ジヒドロキシモノマーからの残基を含み得る。かかる他の芳香族ジヒドロキシモノマーには、特に限定されないが、2−ジフェニルホスフィニルヒドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レソルシノール、C1-3アルキル置換レソルシノール及びこれらの組合せがある。
【0023】
スルホン化芳香族二ハロゲン化物は、特に限定されないが、クロロスルホン酸、硫酸などの適当なスルホン化剤を用いて対応する芳香族二ハロゲン化物をスルホン化することで合成できる。
【0024】
特定の実施形態では、式I中のa、b及びmは0であり、スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックは下記式IAの構造単位を含んでいる。
【0025】
【化2】

式中、Z1Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。
【0026】
スルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーはさらに、下記式IIの構造単位を有する1以上の非スルホン化ポリアリールエーテルスルホンブロックを含んでいる。
【0027】
【化3】

式中、
3及びR4は独立にC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
2は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
cは0又は1〜3の整数であり、
dは0又は1〜4の整数であり、
nは0又は1である。
【0028】
特定の実施形態では、式II中のc、d及びnは0であり、非スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックは下記式IIAの構造単位を含んでいる。
【0029】
【化4】

式中、Z2Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。
【0030】
スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックコポリマーの非スルホン化ポリアリールエーテルスルホンブロックの合成は、適当なモノマーを使用しながら、スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックの合成に関して記載したものと同じ方法によって達成される。
【0031】
別の実施形態では、スルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーは、下記式IIIの構造単位を有する1以上のスルホン化ポリエーテルスルホンブロックを含んでいる。
【0032】
【化5】

式中、
5はC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
3は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
eは0又は1〜3の整数であり、
fは0又は1〜4の整数であり、
pは0又は1である。
【0033】
若干の特定の実施形態では、式III中のe、f及びpは0であり、スルホン化ポリアリールエーテルスルホンブロックは下記の式IIIAを有している。
【0034】
【化6】

式中、Z3Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。特定の一実施形態では、
3AはC(CF3)2である。
【0035】
スルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマー中のスルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックは、一実施形態では約5〜約50モル%(mol%)、別の実施形態では約25〜約50mol%の範囲内の量で存在し得る。本明細書中で使用するモル%とは、ポリマーを生じる芳香族二ハロゲン化物モノマーの総モル数に対するモル数からなる量をいう。モル%は当技術分野で公知の各種技法によって決定でき、特に限定されないが、NMR、滴定などがある。スルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマー中のスルホン化パーセントは、一実施形態では約10〜約70モル%、別の実施形態では約10〜約35モル%の範囲内にある。かくして一実施形態では、スルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーは非スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックを約10〜約50モル%の範囲内の量で含んでいる。それに対応して、一実施形態では、スルホン化芳香族縮合コポリマーはポリマー中に組み込まれるスルホン化モノマーから生じる約30モル%以上のスルホン化を含み、別の実施形態では、スルホン化芳香族縮合コポリマーは約50モル%以上のスルホン化を含んでいる。
【0036】
別の態様では、本発明はホスホン化芳香族縮合コポリマーを含んでなる光電子デバイスに関する。若干の実施形態では、ホスホン化芳香族縮合コポリマーはホスホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーである。一実施形態では、ポリアリールエーテルブロックコポリマーは下記式IVの構造単位を有する1以上のホスホン化ポリアリールエーテルケトンブロックを含んでいる。
【0037】
【化7】

式中、
1及びR2は独立にC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
1は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
aは0又は1〜3の整数であり、
bは0又は1〜4の整数であり、
mは0又は1である。
【0038】
ホスホン化芳香族縮合コポリマーは、通例、臭素化芳香族ポリマーの後ホスホン化によって製造される。即ち、金属触媒(例えば、Ni又はPd)を用いて臭素化有機成分をジエチルホスフィットと結合することで共有P−C結合を形成する(アルブゾフ反応)。次いで、ポリマー主鎖上のホスホン酸エステル基を加水分解してホスホン酸形態にする。後ホスホン化はまた、臭素化芳香族ポリマーをn−ブチルリチウムで処理し、続いてジフェニルホスホリルクロリドと反応させ、次いで加水分解することでも達成できる。ホスホン化モノマーの使用は、通例、ポリマーアーキテクチャーの制御を一層容易にすることができる。好適なホスホン化ジヒドロキシアリールモノマー及びジハロジアリールモノマーの例には、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジホスホン化−ビフェノール、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジホスホン化−スルホニルジフェノール及び4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジホスホン化−ベンゾフェノンがある。
【0039】
スルホン化又はホスホン化芳香族二ハロゲン化物と芳香族ジヒドロキシ化合物との反応を生起させるためにはアルカリ金属化合物を使用することができ、芳香族ジヒドロキシ化合物を対応するアルカリ金属塩に転化させ得る限りは特に限定されない。例示的な化合物には、アルカリ金属炭酸塩(例えば、特に限定されないが、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム及び炭酸セシウム)、アルカリ金属炭酸水素塩(例えば、特に限定されないが、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム及び炭酸水素セシウム)並びにアルカリ金属水酸化物(例えば、特に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム)がある。反応を生起させるためには化合物の組合せも使用できる。
【0040】
スルホン化ポリアリールエーテルを製造するために有効に使用できる非プロトン性極性溶媒の若干の例には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジプロピルアセトアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N−エチル−2−ピロリドン、N−イソプロピル−2−ピロリドン、N−イソブチル−2−ピロリドン、N−n−プロピル−2−ピロリドン、N−n−ブチル−2−ピロリドン、N−シクロヘキシル−2−ピロリドン、N−メチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−3−メチル−2−ピロリドン、N−メチル−3,4,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−メチル−2−ピペリドン、N−エチル−2−ピペリドン、N−イソブチル−2−ピペリドン、N−メチル−6−メチル−2−ピペリドン、N−メチル−3−エチルピペリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、スルホラン、1−メチル−1−オキソスルホラン、1−エチル−1−オキソスルホラン、1−フェニル−1−オキソスルホラン、N,N′−ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジフェニルスルホン及びこれらの組合せがある。
【0041】
ハロゲン化芳香族溶媒を使用する場合には、相間移動触媒が使用できる。好適な相間移動触媒には、ヘキサアルキルグアニジニウム塩及びビス−グアニジニウム塩がある。通例、相間移動触媒はハロゲン化物イオン、メシレートイオン、トシレートイオン、テトラフルオロホウ酸イオン又は酢酸イオンのような陰イオン性化学種を電荷バランス用の対イオンとして含んでいる。好適なグアニジニウム塩には、米国特許第5,132,423号、同第5,116,975号及び同第5,081,298号に開示されたものがある。他の好適な相間移動触媒には、p−ジアルキルアミノピリジニウム塩、ビス−ジアルキルアミノピリジニウム塩、ビス−第四級アンモニウム塩、ビス−第四級ホスホニウム塩及びホスファゼニウム塩がある。好適なビス−第四級アンモニウム塩及びホスホニウム塩は、米国特許第4,554,357号に開示されている。好適なアミノピリジニウム塩は、米国特許第4,460,778号、同第4,513,141号及び同第4,681,949号に開示されている。好適なホスファゼニウム塩は、米国特許出願第10/950874号に開示されている。さらに、若干の実施形態では、米国特許第4,273,712号に開示された第四級アンモニウム塩及びホスホニウム塩も使用できる。
【0042】
反応は約150〜約250℃の範囲内の温度で実施できる。反応中に生じる副生物である水の除去を容易にするため、反応はしばしば水との共沸混合物を生成する溶媒の存在下で実施される。反応は通例、約1〜約72時間の範囲内の時間にわたって実施される。
【0043】
反応の完了後、当技術分野で一般に知られているように、ポリマーを非溶媒から沈殿させ、濾過によって回収し、任意には真空下において高温で乾燥して精製すればよい。
【0044】
スルホン化又はホスホン化ポリアリールエーテルは、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)によって特徴づけることができる。各種の平均分子量Mn及びMwはゲルパーミエーションクロマトグラフィーのような技法によって求められ、これは当業者に広く知られている。一実施形態では、ポリマーのMnは約20000〜約1000000グラム/モル(g/mol)の範囲内にある。別の実施形態では、Mnは約20000〜約200000g/molの範囲内にある。さらに別の実施形態では、Mnは約20000〜約50000g/molの範囲内にある。
【0045】
スルホン化又はホスホン化ポリマーは、光電子デバイス、例えば有機発光ダイオード(OLED)の製造に際して有用である。本発明のスルホン化又はホスホン化ポリマーを使用できる他の光電子デバイスには、発光電気化学セル、光検出器、光伝導セル、フォトスイッチ、フォトトランジスター及びフォトチューブがある。かくして一実施形態では、本発明は、スルホン化又はホスホン化ポリマーを含んでなる光電子デバイスに関する。別の実施形態では、本発明はスルホン化又はホスホン化ポリマーと別のポリマーとのブレンドを含んでなる光電子デバイスに関する。このような目的のために適するポリマーには、発光ポリマー、特にポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)がある。ブレンドは、通例、スルホン化又はホスホン化芳香族縮合コポリマーを約20〜約80重量%(wt%)、詳しくは約30〜約70重量%(wt%)、さらに詳しくは約40〜約60重量%(wt%)の範囲内の量で含む。特定の実施形態では、ブレンドは約50%のPEDOT及び約50%のスルホン化又はホスホン化芳香族縮合コポリマーからなる。
【0046】
有機発光デバイスによって例示される光電子デバイスは、通例、複数の層を含んでいる。かかる層には、最も簡単な場合、陽極層、対応する陰極層、及び前記陽極と前記陰極との間に配設された有機エレクトロルミネセント層がある。電極間に電圧バイアスを印加した場合、陰極からエレクトロルミネセント層中に電子が注入されると共に、エレクトロルミネセント層から陽極に電子が除去される(又は陽極からエレクトロルミネセント層中に「正孔」が「注入」される)。エレクトロルミネセント層中で正孔が電子と結合して一重項又は三重項励起子を形成する際に発光が起こると共に、一重項励起子が放射崩壊によってエネルギーを環境に移送する際に発光が起こる。
【0047】
陽極、陰極及び発光材料に加えて有機発光デバイス中に存在し得る他の構成要素には、正孔注入層、電子注入層及び電子輸送層がある。電子輸送層は陰極に接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は効率的な正孔輸送体でなく、したがってそれは陰極に向かって移動する正孔をブロックするために役立つ。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、電子輸送層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。有機発光デバイス中に存在し得る追加の構成要素には、正孔輸送層、正孔輸送発光層及び電子輸送発光層がある。
【0048】
有機エレクトロルミネセント層は、動作時に電子及び正孔の両方を実質的な濃度で含み、励起子形成及び発光のための部位を提供する有機発光デバイス中の層である。正孔注入層は、陽極に接触していて陽極からOLEDの内層への正孔注入を促進する層であり、電子注入層は、陰極に接触していて陰極からOLED中への電子注入を促進する層であり、電子輸送層は、陰極から電荷再結合部位への電子伝導を容易にする層である。電子輸送層は陰極に接触している必要はなく、多くの場合に電子輸送層は効率的な正孔輸送体でなく、したがってそれは陰極に向かって移動する正孔をブロックするために役立つ。電子輸送層を含む有機発光デバイスの動作中には、電子輸送層中に存在する電荷キャリヤー(即ち、正孔及び電子)の大部分は電子であり、電子輸送層中に存在する正孔及び電子の再結合を通じて発光が起こり得る。正孔輸送層は、OLEDの動作時に陽極から電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、陽極に接触している必要はない層である。正孔輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への正孔伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が正孔であり、残留電子との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。電子輸送発光層は、OLEDの動作時に電荷再結合部位への電子伝導を容易にすると共に、電荷キャリヤーの大部分が電子であり、残留正孔との再結合によってばかりでなくデバイス中の他の場所にある電荷再結合ゾーンからのエネルギー移行によっても発光が起こる層である。
【0049】
陽極として使用するのに適した材料には、四点プローブ技法で測定して約100オーム/平方以上のバルク導電率を有する材料がある。陽極としては、酸化インジウムスズ(ITO)がしばしば使用される。これは、ITOが光の透過に対して実質的に透明であり、したがって電気活性有機層から放出された光の脱出を容易にするからである。陽極層として使用できる他の材料には、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛インジウムスズ、酸化アンチモン及びこれらの混合物がある。
【0050】
陰極として使用するのに適した材料には、負電荷キャリヤー(電子)をOLEDの内層に注入できるゼロ原子価金属がある。陰極として使用するのに適した各種のゼロ原子価金属には、K、Li、Na、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Ag、Au、In、Sn、Zn、Zr、Sc、Y、ランタニド系列の元素、これらの合金及びこれらの混合物がある。陰極層として使用するのに適した合金材料には、Ag−Mg、Al−Li、In−Mg、Al−Ca及びAl−Au合金がある。層状の非合金構造体、例えば金属(例えば、カルシウム)又は金属フッ化物(例えば、LiF)の薄層をゼロ原子価金属(例えば、アルミニウム又は銀)の厚い層で覆ったものも、陰極として使用できる。特に、陰極はただ1種のゼロ原子価金属(とりわけ、アルミニウム金属)からなり得る。
【0051】
本発明に係る光電子デバイスは、正孔注入層中にスルホン化及び/又はホスホン化ポリマーを含んでいる。スルホン化又はホスホン化ポリマーは、H.C.Stark,Inc.からBAYTRON(登録商標)の商品名で商業的に入手できるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)及びAir Products Corporationから商業的に入手できるチエノ[3,4b]チオフェン(TT)モノマーに基づくポリマーのような従来の材料の代わりに、或いはこれらに加えて使用できる。特に、スルホン化又はホスホン化ポリマーをPEDOTとブレンドして正孔注入層を形成することができる。
【0052】
正孔輸送層で使用するのに適した材料には、1,1−ビス((ジ−4−トリルアミノ)フェニル)シクロヘキサン、N,N′−ビス(4−メチルフェニル)−N,N′−ビス(4−エチルフェニル)−(1,1′−(3,3′−ジメチル)ビフェニル)−4,4′−ジアミン、テトラキス(3−メチルフェニル)−N,N,N′,N′−2,5−フェニレンジアミン、フェニル−4−N,N−ジフェニルアミノスチレン、p−(ジエチルアミノ)ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン、トリフェニルアミン、1−フェニル−3−(p−(ジエチルアミノ)スチリル)−5−(p−(ジエチルアミノ)フェニル)ピラゾリン、1,2−trans−ビス(9H−カルバゾール−9−イル)シクロブタン、N,N,N′,N′−テトラキス(4−メチルフェニル)−(1,1′−ビフェニル)−4,4′−ジアミン、銅フタロシアニン、ポリビニルカルバゾール、(フェニルメチル)ポリシラン、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン、ポリビニルカルバゾール、トリアリールジアミン、テトラフェニルジアミン、芳香族第三アミン、ヒドラゾン誘導体、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、アミノ基を有するオキサジアゾール誘導体、及び米国特許第6,023,371号に開示されているようなポリチオフェンがある。
【0053】
電子輸送層として使用するのに適した材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)、トリス(8−ヒドロキシキノラト)アルミニウム(Alq3)、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,1−フェナントロリン、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール、1,3,4−オキサジアゾール含有ポリマー、1,3,4−トリアゾール含有ポリマー、キノキサリン含有ポリマー及びシアノPPVがある。
【0054】
発光層で使用するのに適した材料には、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)及びそのコポリマー(例えば、F8−TFB)のようなエレクトロルミネセントポリマーがある。
【0055】
一態様では、スルホン化芳香族縮合コポリマー及び/又はホスホン化芳香族縮合コポリマーは正孔収集層の一部を形成し得る一方、別の実施形態では、スルホン化芳香族縮合コポリマー及び/又はホスホン化芳香族縮合コポリマーは正孔注入層の一部を形成する。かくして一態様では、本発明はスルホン化芳香族縮合コポリマー及び/又はホスホン化芳香族縮合コポリマーの少なくとも一方を含んでなる一層効率的な有機発光デバイスを提供する。
【0056】
定義
本明細書中で使用する「芳香族基」という用語は、1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列をいう。1以上の芳香族原子団を含む原子価1以上の原子配列は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。本明細書中で使用する「芳香族基」という用語は、特に限定されないが、フェニル基、ピリジル基、フラニル基、チエニル基、ナフチル基、フェニレン基及びビフェニル基を包含する。上述の通り、芳香族基は1以上の芳香族原子団を含む。芳香族原子団は常に4n+2(式中、「n」は1以上の整数である。)の「非局在化」電子を有する環状構造であり、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などで例示される。芳香族基はまた、非芳香族成分を含んでいてもよい。例えば、ベンジル基はフェニル環(芳香族原子団)及びメチレン基(非芳香族成分)からなる芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は芳香族原子団(C63)が非芳香族成分−(CH2)4−に縮合してなる芳香族基である。便宜上、本明細書中での「芳香族基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルフェニル基はメチル基を含むC7芳香族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロフェニル基はニトロ基を含むC6芳香族基であり、ニトロ基が官能基である。芳香族基は、4−トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CF3)2PhO−)、4−クロロメチルフェン−1−イル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェン−1−イル(即ち、3−CCl3Ph−)、4−(3−ブロモプロプ−1−イル)フェン−1−イル(即ち、4−BrCH2CH2CH2Ph−)などのハロゲン化芳香族基を包含する。芳香族基のさらに他の例には、4−アリルオキシフェン−1−オキシ、4−アミノフェン−1−イル(即ち、4−H2NPh−)、3−アミノカルボニルフェン−1−イル(即ち、NH2COPh−)、4−ベンゾイルフェン−1−イル、ジシアノメチリデンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェン−1−イル、メチレンビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPhCH2PhO−)、2−エチルフェン−1−イル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェン−1−イルオキシ)(即ち、−OPh(CH2)6PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェン−1−イル(即ち、4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェン−1−イル(即ち、4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェン−1−イル(即ち、4−CH3SPh−)、3−メトキシフェン−1−イル、2−メトキシカルボニルフェン−1−イルオキシ(例えば、メチルサリチル)、2−ニトロメチルフェン−1−イル(即ち、2−NO2CH2Ph)、3−トリメチルシリルフェン−1−イル、4−t−ブチルジメチルシリルフェン−1−イル、4−ビニルフェン−1−イル、ビニリデンビス(フェニル)などがある。「C3〜C10芳香族基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む芳香族基を包含する。芳香族基1−イミダゾリル(C322−)はC3芳香族基を代表する。ベンジル基(C77−)はC7芳香族基を代表する。
【0057】
本明細書中で使用する「脂環式基」という用語は、環状であるが芳香族でない原子配列を含む原子価1以上の基をいう。本明細書中で定義される「脂環式基」は、芳香族原子団を含まない。「脂環式基」は1以上の非環式成分を含んでいてもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子配列)及びメチレン基(非環式成分)からなる脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書中での「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基を含むものと定義される。例えば、4−メチルシクロペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂環式基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2−ニトロシクロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂環式基であり、ニトロ基が官能基である。脂環式基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂環式基には、2−トリフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、4−ブロモジフルオロメチルシクロオクト−1−イル、2−クロロジフルオロメチルシクロヘキス−1−イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン−2,2−ビス(シクロヘキス−4−イル)(即ち、−C610C(CF3)2610−)、2−クロロメチルシクロヘキス−1−イル、3−ジフルオロメチレンシクロヘキス−1−イル、4−トリクロロメチルシクロヘキス−1−イルオキシ、4−ブロモジクロロメチルシクロヘキス−1−イルチオ、2−ブロモエチルシクロペント−1−イル、2−ブロモプロピルシクロヘキス−1−イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2610O−)などがある。脂環式基のさらに他の例には、4−アリルオキシシクロヘキス−1−イル、4−アミノシクロヘキス−1−イル(即ち、H2NC610−)、4−アミノカルボニルシクロペント−1−イル(即ち、NH2COC58−)、4−アセチルオキシシクロヘキス−1−イル、2,2−ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610C(CN)2610O−)、3−メチルシクロヘキス−1−イル、メチレンビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610CH2610O−)、1−エチルシクロブト−1−イル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(シクロヘキス−4−イルオキシ)(即ち、−OC610(CH2)6610O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HOCH2610−)、4−メルカプトメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、4−HSCH2610−)、4−メチルチオシクロヘキス−1−イル(即ち、4−CH3SC610−)、4−メトキシシクロヘキス−1−イル、2−メトキシカルボニルシクロヘキス−1−イルオキシ(2−CH3OCOC610O−)、4−ニトロメチルシクロヘキス−1−イル(即ち、NO2CH2610−)、3−トリメチルシリルシクロヘキス−1−イル、2−t−ブチルジメチルシリルシクロペント−1−イル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキス−1−イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2610−)、4−ビニルシクロヘキセン−1−イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などがある。「C3〜C10脂環式基」という用語は、3以上で10以下の炭素原子を含む脂環式基を包含する。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C47O−)はC4脂環式基を代表する。シクロヘキシルメチル基(C611CH2−)はC7脂環式基を代表する。
【0058】
本明細書中で使用する「脂肪族基」という用語は、環状でない線状又は枝分れ原子配列からなる原子価1以上の有機基をいう。脂肪族基は1以上の炭素原子を含むものと定義される。脂肪族基をなす原子配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素のようなヘテロ原子を含んでいてもよく、或いは炭素及び水素のみから構成されていてもよい。便宜上、本明細書中での「脂肪族基」という用語は、「環状でない線状又は枝分れ原子配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルやアミドのようなカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲の官能基で置換された有機基を含むものと定義される。例えば、4−メチルペント−1−イル基はメチル基を含むC6脂肪族基であり、メチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4−ニトロブト−1−イル基はニトロ基を含むC4脂肪族基であり、ニトロ基が官能基である。脂肪族基は、同一のもの又は相異なるものであってよい1以上のハロゲン原子を含むハロアルキル基であり得る。ハロゲン原子には、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素がある。1以上のハロゲン原子を含む脂肪族基には、ハロゲン化アルキルであるトリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2−ブロモトリメチレン(例えば、−CH2CHBrCH2−)などがある。脂肪族基のさらに他の例には、アリル、アミノカルボニル(即ち、−CONH2)、カルボニル、2,2−ジシアノイソプロピリデン(即ち、−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち、−CH3)、メチレン、エチル、エチレン、ホルミル(即ち、−CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル、メルカプトメチル(即ち、−CH2SH)、メチルチオ(即ち、−SCH3)、メチルチオメチル(即ち、−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(即ち、CH3OCO−)、ニトロメチル(即ち、−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(即ち、(CH3)3Si−)、t−ブチルジメチルシリル、3−トリメトキシシリルプロピル(即ち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2−)、ビニル、ビニリデンなどがある。さらに他の例としては、C1〜C10脂肪族基は1以上で10以下の炭素原子を含む。メチル基(即ち、CH3−)はC1脂肪族基の例である。デシル基(即ち、CH3(CH2)9−)はC10脂肪族基の例である。
【0059】
本明細書中に記載される任意の数値は、低い値と高い値との間に少なくとも2単位のひらきがあれば、低い値から高い値まで1単位ずつ大きくなる値をすべて含む。例えば、成分の量又は例えば温度、圧力、時間などのプロセス変量の値が1〜90、好ましくは20〜80、さらに好ましくは30〜70であると述べられた場合、本明細書中には15〜85、22〜68、43〜51、および30〜32などの値が明確に列挙されるものとする。1より小さい値については、1単位は場合に応じて0.0001、0.001、0.01または0.1であると考えられる。これらは明確に意図しているものの例示に過ぎず、列挙された最低値と最高値の間の数値の可能な組合せはすべて、本出願において同様に明確に述べられていると考えるべきである。
【実施例】
【0060】
一般的方法及び手順
化学薬品はAldrich Chemical Company(ミルウォーキー、米国ウィスコンシン州)から購入し、特記しない限り、受け入れたままで使用した。モノマー及び炭酸カリウムは乾燥し、窒素パージボックス内に貯蔵した。トルエンは活性化モレキュラーシーブ上で乾燥した。空気感受性及び/又は水感受性化合物との反応はすべて、標準のシュレンクライン技法を用いて乾燥窒素下で実施した。NMRスペクトルはBruker Advance 400(1H、400MHz)分光計上で記録し、残留溶媒シフトに対して照合した。分子量は数平均分子量(Mn)又は重量平均分子量(Mw)として報告され、UV検出器を備えたPerkin Elmer Series 2000測定器上でのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求めた。ポリスチレン分子量標準を用いて広範囲の標準検量線を作成し、それに対してポリマー分子量を決定した。ゲルパーミエーションカラム(Polymer Laboratories PLgel 5μm MIXED−C、300×7.5mm)の温度は40℃であり、移動相はイソプロパノール(3.6% v/v)を含むクロロホルムであった。ポリマー熱分析は、TAC7/DX熱分析器を備えたPerkin Elmer DSC7上で実施し、Pyris Softwareを用いて処理した。ガラス転移温度は第2の加熱走査上で記録した。
【0061】
ポリエーテルエーテルケトン−ポリエーテルスルホンの混合スルホン化ブロックコポリマー(SPEEK−SPES)は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中での炭酸カリウム法を用いた求核芳香族置換によって合成した。総スルホン化度は次式に従って計算した。
%SO3H=[(SPEEKのモル分率)×100%]+[(SPESのモル分率)×(SPESの%SO3H)]
ケルビンプローブ(KP)は、(電子ボルト(eV)単位の)有効表面仕事関数の変化に対応した共通プローブに対する接触電位差(ボルト(V)単位のCPD)を測定することで導体/半導体の有効表面仕事関数の変化を測定するために使用される振動キャパシター技法である。KP測定は、McAllister Technical Services社(コアダレン、米国アイダホ州83815)から購入したディジタルケルビンプローブKP6500を用いて実施した。
【実施例1】
【0062】
例1:3,3′−ジスルホン化−4,4′−ジフルオロジフェニルスルホンの合成
ジフルオロジフェニルスルホン(75.5g、0.297モル)を500mL丸底フラスコに移した。発煙硫酸(160mL)を添加した。混合物を窒素下110℃で6時間撹拌した。褐色の溶液を室温まで冷却し、1Lの氷冷脱イオン水中に注いだ。NaCl(400g)を添加して生成物を塩析し、これをブフナー漏斗上に単離した。白色のぺースト状固体を脱イオン水に再溶解し、NaOH溶液で中和し、次いで450gのNaClで沈殿させた。生成物を3:1のイソプロパノール/水から再結晶させ、真空下100℃で乾燥した。単離収量:85g(62%)。1H NMR(DMSO−d6):δ 7.44(t,2H)、7.98(m,2H)、8.17(dd,2H)。13C NMR(DMSO−d6):δ 118.42(d,2CF=25Hz)、128.32(d,3CF=4Hz)、130.99(d,3CF=11Hz)、136.08(d,4CF=4Hz)、136.61(d,2CF=19Hz)、160.51(d,1CF=258Hz)。
【実施例2】
【0063】
例2:3,3′−ジスルホン化−4,4′−ジフルオロベンゾフェノンの合成
ジフルオロベンゾフェノン(100g、0.458モル)を1L丸底フラスコに移し、250mLの発煙硫酸(30%SO3)を添加した。混合物を窒素下110℃で7時間撹拌した。混合物を室温まで冷却し、1.5Lの氷水中に注いだ。不溶物を濾別した。NaClを溶液に添加して生成物を塩析した。白色のぺースト状固体を大形のブフナー漏斗上に単離し、最小量の脱イオン水に再溶解し、NaOHを用いてpH7に中和した。生成物を再びNaClで塩析した。白色のぺースト状固体を3:1のイソプロパノール/水から再結晶させた(注意:再結晶前に多少の灰色がかった水不溶性物質を濾別した)。単離収量:71g(37%)。1H NMR(DMSO−d6):δ 7.34(t,2H)、7.72(m,2H)、8.07(dd,2H)。
【実施例3】
【0064】
例3:スルホン化ポリエーテルエーテルケトン−スルホン化ポリエーテルスルホンブロックコポリマーの合成
スルホン化ジフルオロベンゾフェノン(8g、18.9mmol)、4,4′−ビフェノール(3.669g、19.7mmol)及び炭酸カリウム(9.818g、71mmol)を、ディーン・スタークトラップ/凝縮器、窒素入口及び機械的撹拌機に連結された三つ口フラスコに移した。無水ジメチルスルホキシド(DMSO)(48mL)及びトルエン(24mL)を添加した。混合物を145℃で5時間撹拌し、共沸蒸留によって水/トルエンを除去した。4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(5.78g、22.7mmol)、3,3′−ジスルホン化−4,4′−ジフルオロジフェニルスルホン(2.605g、5.68mmol)、4,4′−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(9.298g、27.7mmol)、DMSO(12mL)及びトルエン(8mL)を添加した。混合物を145℃で1時間撹拌した。粘稠な溶液をDMSO(60mL)で希釈し、145℃でさらに1時間撹拌すると、溶液は再び粘稠になった。混合物をDMSO(100mL)で希釈し、撹拌したイソプロパノール中で沈殿させた。ポリマーを単離し、真空下で短時間乾燥し、洗液のpHが中性になるまで脱イオンで洗浄/ソークした。ポリマーを真空下100℃で乾燥した。ポリマーフィルムをDMSOから流延し、1M硫酸中に室温で24時間ソークすることで酸性化した。これらをさらに水中に6時間ソークし、真空下100℃で乾燥した。最終生成物は、GPC(DMAc/LiBr中、ポリエチレンオキシド及びポリエチレングリコール標準)で特性決定したところ、75896のMw及び29863のMnを有することが判明した。
【実施例4】
【0065】
例4:ケルビンプローブ測定
KP測定用の試料は次のようにして作製した。Applied Films Corporationから入手した酸化インジウムスズ(ITO、約110ナノメートル)被覆ガラスを導電性基板として使用した。ITO基板をアセトン、イソプロパノール及び脱イオン水で洗浄し、150℃で5分間ベークしてからKP測定を行った。ITOに関して−0.58VのCPDを得た。次いで、ITO上に例3に記載したスルホン化ポリアリールエーテルの層をそれの2wt%ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液からスピンコートし、次いで180℃で3分間ベークした。ポリマーでオーバーコートしたITOに関して−1.24VのCPDを測定した。スルホン化ポリアリールエーテル層を有するITO及び有しないITOに関するCPDの変化は、スルホン化ポリアリールエーテルでITOをオーバーコートした場合に有効仕事関数が0.66eV増加することを示している。
【実施例5】
【0066】
例5:正孔注入層として例3からのスルホン化ポリアリールエーテルを含む例示的なOLED
次のようにして例示的なOLEDを製造した。酸化インジウムスズ(ITO)で予備被覆したガラス(Applied Films社)を基板として使用した。次いで、ITO基板上にスルホン化ポリアリールエーテルの層をそれの0.3wt%DMSO溶液からスピンコートし、さらに(24℃の室温及び32%の相対湿度を有する)周囲環境中において180℃で5分間ベークした。スルホン化ポリアリールエーテル層上に緑色発光ポリマー(LEP)の層(約65nm)をスピンコートした。2×10-6トルの基礎真空度での熱蒸着によって4nmのNaF及び110nmのAlからなる二層陰極を堆積させることでデバイス製造を完了した。金属蒸着後、エポキシ樹脂でシールしたスライドガラスを用いてデバイスを封入した。
【比較例1】
【0067】
例6:対照OLED
このデバイス中にはポリマーを使用しなかった点を除き、例5と同様にして対照OLEDを製造した。
【0068】
例5及び例6で製造したOLEDの性能を、電流−電圧−輝度(I−V−L)特性を測定することで特徴づけた。輝度計(Minolta LS 110)で較正したホトダイオードを用いて(カンデラ/平方メートル(cd/m2)単位で)輝度を測定した。図1は、(カンデラ/平方メートル(cd/m2)単位で測定した)輝度を(ポルト(V)単位で測定した)バイアス電圧の関数としてプロットしたグラフを示している。図2は、(カンデラ/アンペア(cd/A)単位で測定した)効率を(ミリアンペア/平方センチメートル(mA/cm2)単位で測定した)電流密度の関数として示している。
【0069】
正孔注入層を含む例示的なデバイスは、対照デバイスに比べて低下した駆動電圧(図1)及び向上した効率(図2)を示すという事実で証明される通り、正孔注入層としてスルホン化ポリアリールエーテルを導入することはデバイス性能を顕著に向上させることが明らかにわかる。
【0070】
例3及び例4で製造したOLEDの光応答を、照明下で電流−電圧(IV)特性を測定することで特徴づけた。詳しくは、ハンドヘルド長波長(365nm)UVランプ(モデルUVL_56、UVP社(アップランド、米国カリフォルニア州91745)から入手した)を、(約3mW/cm2の強度を有する)照明光源として使用した。デバイスは透明なITO電極を通して照明した。図3は、照明下で測定したOLEDのI−V曲線を示している。スルホン化ポリアリールエーテルの正孔注入層を含むOLEDは、スルホン化ポリアリールエーテル層を含まない対照デバイスに比べて高い開路電圧(Voc、対応する電流がプロット中で最小値に達したときの電圧として定義される)を示すことが明らかにわかる。Vocの増加は、スルホン化ポリアリールエーテルがKP測定で測定して裸のITOより大きい有効仕事関数を有するという事実に合致している。
【0071】
以上、本明細書中には本発明の若干の特徴のみを例示し説明してきたが、当業者には数多くの修正及び変更が想起されるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は本発明の真の技術思想に含まれるかかる修正及び変更のすべてを包含することを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマー又は1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーを含んでなる光電子デバイス。
【請求項2】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーがスルホン酸官能基を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項3】
1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーがホスホン酸官能基を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項4】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーがスルホン化ポリアリールエーテル、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンオキシド、スルホン化ポリアリーレン、スルホン化ポリホスファゼンから選択され、1種以上のホスホン化芳香族縮合コポリマーがホスホン化ポリアリールエーテル、ホスホン化ポリイミド、ホスホン化ポリフェニレンオキシド、ホスホン化ポリアリーレン、ホスホン化ポリホスファゼン及びこれらの組合せから選択される、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項5】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーがスルホン化ポリアリールエーテル、スルホン化ポリイミド、スルホン化ポリフェニレンオキシド及びこれらの組合せから選択される、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項6】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーがスルホン化ポリアリールエーテルである、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項7】
スルホン化ポリアリールエーテルがスルホン化ポリエーテルスルホンである、請求項6記載の光電子デバイス。
【請求項8】
スルホン化ポリアリールエーテルがスルホン化ポリアリールエーテルケトンである、請求項6記載の光電子デバイス。
【請求項9】
スルホン化ポリアリールエーテルがスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーである、請求項6記載の光電子デバイス。
【請求項10】
1種以上のスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーが、下記式Iの構造単位を有する1以上のスルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックを含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化1】

(式中、
1及びR2は独立にC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
1は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
aは0又は1〜3の整数であり、
bは0又は1〜4の整数であり、
mは0又は1である。)
【請求項11】
MがHである、請求項10記載の光電子デバイス。
【請求項12】
1種以上のスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーがさらに、下記式IIの構造単位を有する1以上の非スルホン化ポリアリールエーテルスルホンブロックを含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化2】

(式中、
3及びR4は独立にC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
2は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
cは0又は1〜3の整数であり、
dは0又は1〜4の整数であり、
nは0又は1である。)
【請求項13】
1種以上のスルホン化ポリアリールエーテルブロックコポリマーがさらに、下記式IIIの構造単位を有する1以上のスルホン化ポリエーテルスルホンブロックを含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化3】

(式中、
5はC1〜C10アルキル、C3〜C12シクロアルキル、C6〜C14アリール、アリル、アルケニル、アルコキシ、ハロ又はシアノであり、
3は直接結合、O、S、CH2、SO、SO2、CO、ホスフィニルオキシド、アルケニル、アルキニル、C1〜C12脂肪族基、C3〜C12脂環式基、C3〜C12芳香族基又はこれらの組合せであり、
MはH、金属陽イオン、非金属無機陽イオン、有機陽イオン又はこれらの混合物であり、
eは0又は1〜3の整数であり、
fは0又は1〜4の整数であり、
pは0又は1である。)
【請求項14】
MがHである、請求項13記載の光電子デバイス。
【請求項15】
1以上のスルホン化ポリエーテルケトンブロックが下記式IAの構造単位を含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化4】

(式中、Z1Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。)
【請求項16】
1以上のスルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックが下記式IIAの構造単位を含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化5】

(式中、Z2Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。)
【請求項17】
1種以上のスルホン化ポリエーテルスルホンブロックコポリマーが下記式IIIAの構造単位を有する1以上のスルホン化ポリアリールエーテルスルホンブロック含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【化6】

(式中、Z3Aは直接結合、C(CF3)2又はこれらの組合せである。)
【請求項18】
1が直接結合である、請求項9記載の光電子デバイス。
【請求項19】
2がC(CF3)2である、請求項10記載の光電子デバイス。
【請求項20】
3がC(CF3)2である、請求項11記載の光電子デバイス。
【請求項21】
式Iの構造単位を有するスルホン化ポリエーテルケトンブロックを約5〜約50モル%含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【請求項22】
式Iの構造単位を有するスルホン化ポリエーテルケトンブロックを約25〜約50モル%含む、請求項9記載の光電子デバイス。
【請求項23】
式IIIの構造単位を有するスルホン化ポリエーテルスルホンブロックを約10〜約70モル%含む、請求項13記載の光電子デバイス。
【請求項24】
式IIIの構造単位を有するスルホン化ポリエーテルスルホンブロックを約10〜約35モル%含む、請求項13記載の光電子デバイス。
【請求項25】
式IIの構造単位を有する非スルホン化ポリアリールエーテルケトンブロックを約10〜約50モル%含む、請求項12記載の光電子デバイス。
【請求項26】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが約30モル%以上のスルホン化を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項27】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが約50モル%以上のスルホン化を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項28】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが約20〜約80モル%のスルホン化を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項29】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが約40〜約80モル%のスルホン化を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項30】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが約50〜約70モル%のスルホン化を含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項31】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマー及びPEDOTのブレンドを含む、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項32】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが正孔注入層を形成する、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項33】
1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーが正孔収集層を形成する、請求項1記載の光電子デバイス。
【請求項34】
1対の電極間にサンドイッチされた1以上の有機エレクトロルミネセント層及び1種以上のスルホン化芳香族縮合コポリマーを含む層を含んでなる光電子デバイス。
【請求項35】
請求項29記載の光電子デバイスの1以上を含んでなる照明光源。
【請求項36】
請求項30記載の光電子デバイスの1以上を含んでなるディスプレイデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−514162(P2010−514162A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541429(P2009−541429)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/077176
【国際公開番号】WO2008/073542
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】