説明

スロットルボディの製造方法

【課題】ゲート跡突起を折り取ってもスロットルボディの欠損を避けられるスロットルボディの製造方法を提供する。
【解決手段】スロットルボディ2は、内部空間が吸気通路となる円筒形のボア壁部3を有し、射出成形される。ボア壁部3は、傾斜面となっている段部3cを介して小径部3aと大径部3bとが連続して形成されている。段部3cに台座15を突出形成したうえで、射出ゲート45を台座15へ連通する。台座15及び射出ゲート45は、角部を有する釣鐘形状である。台座15は、小径部3aから大径部3bに向けて延在しており、台座15の内周面15bは小径部3aと面一となっている。台座15の側面15aは、射出ゲート45側からボア壁部3に向けて拡がる斜面となっている。溶融樹脂の硬化後、ゲート跡突起25は折り取られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関への吸入空気量を制御するスロットル装置を構成するスロットルボディの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の内燃機関においては、軽量化を目的として周辺部品の樹脂化が図られている。その一環として、内燃機関への吸入空気量を制御するスロットル装置の樹脂化も図られている。このような樹脂製のスロットル装置の製造方法として、例えば特許文献1がある。特許文献1では、スロットル装置のスロットルボディとスロットルバルブを同時に射出成形している。具体的には、成形原料(溶融樹脂)をスロットルボディ用のキャビティへ射出充填すると共に、当該スロットルボディ用のキャビティ内に一旦充填された溶融樹脂がスロットルバルブ用のキャビティへ導かれる金型を用いて、スロットルボディとスロットルバルブとを同時に射出成形している。溶融樹脂をスロットルボディ用のキャビティに射出充填する射出ゲートは、スロットルボディの円筒形ボア壁部の内周面に直接連通されている。なお、特許文献1におけるボア壁部の内径は、上下に亘って一様である。特許文献1には明記されていないが、金型内で溶融樹脂を硬化させた後、成形品を金型から離型した直後に残存しているゲート跡突起を除去したうえで、製品として完成する。ゲート跡突起は、切除するか折り取られるのが一般的である。
【0003】
一方、スロットルボディではないが、射出成形後にメッキ処理される成形品の射出成形方法として、特許文献2がある。特許文献2は、デジタルカメラ等の電子機器のシャッターボタン等の製造方法であって、成形品の本体部表面に突出する台座を設け、当該台座部分に射出ゲートを設けている。これにより、溶融樹脂硬化後にゲート跡突起を折り取っても、メッキ剥がれを台座部分のみに留めることができるとされている。
【0004】
同様に、スロットルボディ用としてではなく、精密プラスチック製品の射出成形方法として、特許文献3がある。当該特許文献3では、射出ゲートの形状を三角形状としておき、ゲート跡突起の切断を、幅の小さな部分(頂部側)から行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−44047号公報
【特許文献2】特開2009−34970号公報
【特許文献3】特開平1−234220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、射出ゲートがボア壁部に直接連通されているので、溶融樹脂の硬化後にゲート跡突起を折り取ろうとすると、ゲート跡突起と共にその周辺部も一緒にもぎ取られたような、いわゆる身食いが生じてしまう。ゲート跡突起を切除すれば身食いは生じ難いが、折り取る場合と比べて作業が煩雑である。これに対し特許文献2では、射出ゲートと成形品との間に台座を設けている。特許文献2では、ゲート跡突起を折り取った際のメッキ剥がれに着目したもので、身食いに関しては特に考慮していないが、台座を設けることで成形品本体の身食い防止にも有効であろう。しかし、特許文献2では射出ゲートの形状に関しては特に考慮しておらず、従来のような一般的な円形のゲートではゲート跡突起を折り取る際に応力が分散するので、広い範囲で身食いが発生する可能性がある。この場合、台座のみならず成形品本体部分にまで身食いが及ぶ可能性がある。一方、特許文献3では、射出ゲートの形状を三角形状としているので、仮にゲート跡突起を折り取った場合には、応力集中が生じ得る。しかし、特許文献3ではゲート跡突起はあくまで切断することを前提としており、ゲート跡突起を折る際の応力集中を利用するものではない。しかも、台座を設けていないので、仮にゲート跡突起を折ろうとすると、成形品本体に身食いが生じることは避けられない。
【0007】
また、特許文献1では射出ゲートをボア壁部に直接連通させているので、射出充填した溶融樹脂の流動抵抗及び圧力損失が大きい。これでは、射出成形時のキャビティ内圧力を高く保持するには限界があり、射出成形品であるスロットルボディの樹脂密度も低下する。樹脂密度が低いと、溶融樹脂の硬化に伴う収縮の程度も大きくなり、寸法精度が悪化する。スロットル装置は、円板状のスロットルバルブと円筒形のボア壁部との隙間の大小によって吸入空気量を制御するものなので、スロットルボディの寸法精度悪化は、吸入空気量の制御不良に直結する。
【0008】
また、特許文献2では射出ゲートと成形品本体との間に台座を設けているが、当該特許文献2はデジタルカメラのシャッターボタン等の製造方法であり、スロットルボディの製造方法に対して直接応用できるものではない。例えば、スロットルボディのどの部位に台座を介して射出ゲートを連通させればよいのか、当該連通部位の形状に応じて台座をどのような形状とすればよいのかなど、特許文献2から予測することはできない。同様に、特許文献1のボア壁部は、その内径が上下にわたって一様である。したがって、小径部と大径部とを連続して有するボア壁部を備えるスロットルボディにおいて、射出ゲートの好適な連通部位を特許文献1からは予測できない。しかも、仮に身食いの発生をある程度抑制できたとしても、ゲート跡突起を折り取った跡は凸凹となる。したがって、単にボア壁部に台座を設けるのみでは、吸入空気の流動抵抗にまで対応できない。
【0009】
そこで、本発明は上記課題を解決するものであって、ゲート跡突起を折り取ってもスロットルボディの欠損を避けられるスロットルボディの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は次の手段を採る。内燃機関への吸入空気量を制御するスロットル装置のスロットルボディの製造方法であって、前記スロットルボディは、内部空間が吸気通路となる円筒形のボア壁部を有し、溶融樹脂が射出充填されるキャビティが形成された金型によって射出成形される。そして、前記ボア壁部の内周面に台座を突出形成したうえで、溶融樹脂を射出充填する射出ゲートを前記台座へ連通し、前記射出ゲートは、少なくとも1つの角部を有する断面形状であることを特徴とする。ここでの角部とは、大きくは非直線形状を意味し、尖った角部のほか、湾曲したR形状の緩やかな角部(曲部)も含む。
【0011】
溶融樹脂の硬化後、金型から離型した直後のボア壁部内周面には、台座を介してゲート跡突起が残存している。したがって、後処理としてゲート跡突起を除去する必要がある。そこで、例えばゲート跡突起を折り取る場合、当該ゲート跡突起の周辺部位も同時にもぎ取られる所謂身食いの発生が問題となる。しかし、本発明ではゲート跡突起が台座上に形成されているので、身食いは台座部分を中心に発生し、スロットルボディのボア壁部が破損することを有効に避けられる。しかも、ゲート跡突起は少なくとも1つの角部を有する断面形状となっている。したがって、当該角部に応力集中が生じるので、身食いの発生範囲を小さく抑制することができる。この意味において、角部は応力集中部ということもできる。これにより、身食いの発生を台座部分のみに留めることができ、確実にスロットルボディの破損を防止できる。このように、ゲート跡突起を折ることで問題なく除去できれば、ゲート跡突起を切除する場合よりも簡便であり、生産性が向上する。
【0012】
前記射出ゲートの断面積(流路面積)は、該射出ゲートへ溶融樹脂を供給するランナーの断面積(流路面積)と同等とすることもできるが、ランナーの断面積より小さくすることが好ましい。つまり、射出ゲートはランナーより細い。射出ゲートの断面積がランナーの断面積より小さいということは、ランナーの先端部は先窄まり形状となっていることになる。これによれば、ゲート跡突起を除去する際の応力ないし労力が小さくなり、ゲート跡突起の除去が容易となる。また、身食いの発生範囲もより小さく抑制することができる。
【0013】
前記台座の外形寸法は、前記射出ゲートの断面積と同等とすることもできるが、射出ゲートの断面積より大きいことが好ましい。これによれば、身食いがスロットルボディにまで及ぶことを的確に防止できる。
【0014】
前記台座の断面形状は、必ずしも前記射出ゲートの断面形状に合わせる必要は無いが、前記台座の断面形状と前記射出ゲートの断面形状とを同じ形状とすることが好ましい。同じ形状とは、相似形状を含む。身食いはゲート跡突起を中心として生じるので、台座と射出ゲートとを同じ形状にしておけば、台座を無駄に大きくする必要が無い。すなわち、射出ゲートの断面形状に沿って台座が存在していることになり、台座を必要最低限の大きさで形成しながら、効率的にスロットルボディの欠損を防止できる。台座の外径寸法を抑えられれば、吸入空気の流動抵抗低減にも有利である。また、射出ゲートから射出された溶融樹脂が台座部分で滞留するなど無く円滑に流動でき、射出成形時の流動抵抗及び圧力損失を低減できる。これにより、キャビティ内における樹脂密度及び保圧力を向上できる。樹脂密度及び保圧力を向上できれば、硬化に伴う収縮の程度が小さなり、スロットルボディの寸法精度を向上できる。
【0015】
前記射出ゲートの断面形状は、少なくとも1つの角部を有する形状であれば特に限定されないが、例えば釣鐘状とすることが好ましい。釣鐘状とは、山型のような形状である。角部が鋭角であれば、必要以上に応力集中して反って身食いが大きくなるおそれがあるが、釣鐘状であれば鋭角な角部は無く、必要以上に応力集中することを避けられる。また、釣鐘状であれば、鋭角な角部を有する形状と比べて溶融樹脂の流動性が良く、流動抵抗や圧力損失の面でも有利である。
【0016】
前記台座の側面は、ボア壁部に対して垂直面とすることもできるが、前記射出ゲート側からボア壁部に向けて拡がる斜面とすることが好ましい。射出ゲートから射出された溶融樹脂は、台座からボア壁部内を拡散するように流動していくが、台座の側面が斜面となっていることで溶融樹脂が拡散流動し易く、流動抵抗や圧力損失が低減する。これにより、キャビティ内における樹脂密度及び保圧力をより向上でき、スロットルボディの寸法精度をより向上できる。
【0017】
前記ボア壁部に、傾斜面となっている段部を介して内径の異なる小径部と大径部とが連続して形成されている場合、前記台座は、前記段部に突出形成することが好ましい。この場合、射出ゲートは段部に臨んでいることになる。小径部又は大径部に台座を突出形成することもできるが、この場合、小径部又は大径部に突起(台座)が存在していることになる。これでは、小径部又は大径部に異物が存在していることになり、吸入空気の流動が阻害される要因となり得る。これに対し、台座が段部に形成されていれば、小径部と大径部とを繋ぐ傾斜面に突起が存在することになり、吸入空気の流動性が阻害され難い。
【0018】
前記台座は、前記小径部から大径部に向けて延在させ、当該台座の内周面を、前記小径部の内周面と面一とすることが好ましい。大径部の肉厚は小径部の肉厚より小さいため、溶融樹脂は大径部内を流動し難い。そこで、台座を小径部から大径部に向けて延在させることで、射出ゲート直下における大径部側への流路幅が台座によって拡がる。これにより、射出ゲートから射出された溶融樹脂を円滑に大径部側へも流動させることができ、大径部側への流動抵抗及び圧力損失を低減できる。小径部側へは、元々流動性はよい。また、台座の内周面と小径部の内周面とが面一であれば、吸入空気の流動性はより阻害され難い。
【0019】
前記台座の内周面は大径部や小径部と平行でも構わないが、台座を小径部側から大径部側へ徐々に薄肉として、該台座の内周面を傾斜させることが好ましい。また、前記台座の内周面は、前記ボア壁部と同じ曲率半径の円弧面とすることが好ましい。これによれば、溶融樹脂を大径部側へより円滑に流動させることが出来る。また、吸入空気の流動抵抗もより低減する。特に、台座を小径部側から大径部側へ徐々に薄肉としていれば、ゲート跡突起を折り取った跡が凸凹となっていても、その凸部は小径部より径方向内側に突出しないので、吸入空気の流動抵抗の増大を抑制できる。
【0020】
このように、本発明の製造方法によれば上記作用効果を得られるので、溶融樹脂の硬化後は、ゲート跡突起を折り取ることで除去することが好ましい。ゲート跡突起を折り取る場合は、切除する場合よりも効率的であり、生産性が良い。
【0021】
このとき、前記射出ゲートの角部のうち少なくとも1つが、前記ゲート跡突起を折る方向に対して後方側(反対側)にあるようにすることが好ましい。すなわち、射出ゲートの角部が1つであれば、当該角部の反対側から角部へ向けてゲート跡突起を折ることが好ましい。射出ゲートの角部が複数個ある場合は、少なくとも1つの角部が折る方向に対して後方側に存在していればよい。これによれば、折る方向に対して後端となる部分において確実に応力集中が生じるので、身食いの発生を効果的に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、射出成形直後に残存するゲート跡突起を折り取っても、ゲート跡突起の形状に基づく応力集中によって身食いが生じる範囲が狭くなる。したがって、仮に身食いが生じたとしてもその範囲は台座部分のみに留まるので、スロットルボディの欠損を防止できる。また、溶融樹脂を射出充填する際の流動抵抗及び圧力損失を低減できるので、キャビティ内の保圧力を増大でき、スロットルボディの樹脂密度を向上できる。而して、スロットルボディの樹脂密度が高まり寸法精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】スロットル装置の斜視図である。
【図2】金型の断面図である。
【図3】離型直後のボア壁部の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】ゲート跡突起を折り取った後の台座周囲の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の代表的な実施例について説明するが、これに限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0025】
(実施例)
図1に示すスロットル装置1は、自動車等の車両に搭載され、内燃機関(エンジン)の各気筒への吸入空気量を制御する装置である。スロットル装置1のスロットルボディ2は射出成形され、円筒形のボア壁部3と、モータハウジング部4と、ギアボックス部5とを有する。ボア壁部3の内部空間が、吸入空気が流動していく吸気通路となり、当該ボア壁部3の内部にスロットルバルブ10が正逆回転自在に配設されている。スロットルバルブ10の軸両端は、ボア壁部3の対向位置に設けられた軸受部6において支持されている。スロットルバルブ10は、図外のアクセルペダルの踏み込み量等に応じて回動制御される。スロットルバルブ10が回動することで、当該スロットルバルブ10の外周縁部とボア壁部3の内壁面との間の隙間(クリアランス)寸法が変化し、このクリアランスのサイズ変化によって、内燃機関へ導入される吸入吸気量が制御される。図1に示す状態が、スロットルバルブ10の全開状態である。一方、スロットルバルブ10が吸入空気の流動方向に対して略直角となる角度(図1に示す方向を基準として略水平な角度)にあるとき、吸気通路が全閉される。モータハウジング部4の内部には、スロットルバルブ10を回転駆動させる駆動手段であるモータ(図示せず)が配されている。ギアボックス部5の内部には、モータの駆動力をスロットルバルブ10へ伝達するギア機構(図示せず)が配されている。スロットルバルブ10は、略円板形状の樹脂製のバルブ体11に、軸回動中心となる金属製のスロットルシャフト12がインサート形成されて成る。
【0026】
スロットルボディ2及びバルブ体11は、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエーテルイミド(PEI)などの耐熱性が良好な熱可塑性樹脂により射出成形されている。
【0027】
図2に示すように、バルブ成形金型40は、固定金型41、可動金型42等によって構成され、それぞれを型締めした状態においてキャビティが画定される。具体的には、金型40内には、それぞれスロットルボディ2用のキャビティと、スロットルバルブ10用のキャビティ31(以下、金型40の説明に関して単にスロットルバルブ31と称す)とが形成されており、スロットルボディ2とスロットルバルブ10を同時に射出成形可能となっている。図2は、ボア壁部3用のキャビティ30における断面図である。図4に示すように、ボア壁部3には、傾斜面となっている段部3cを介して内径の小さな小径部3aと内径の大きな大径部3bとが吸入空気の流動方向に連続して形成されており、ボア壁部3用のキャビティ30(以下、金型40の説明に関して単にボア壁部30と称す)もそのような形状に形成されている。
【0028】
そのうえで、ボア壁部30の内周面には、台座15用のキャビティ35(以下、金型40の説明に関して、単に台座35と称す)が内方へ向けて突出形成されている。詳しくは、段部3cとなる部位に突出形成されている。金型40内には、溶融樹脂の流路となるランナー44が設けられており、その先端部に開口する射出ゲート45が台座35に連通されている。つまり、射出ゲート45は台座35を介してボア壁部30に連通している。ランナー44の先端部は先窄まり状となっており、射出ゲート45の断面積はランナー44の断面積より小さい。ランナー44及び射出ゲート45は、ボア壁部30の内周面に沿って周方向に等間隔で複数箇所設けられており、台座35は各射出ゲート45に設けられている。本実施例では、ランナー44、射出ゲート45、及び台座35が6箇所に設けられている(図3参照)。なお、スロットルバルブ31には、ボア壁部30用のランナー44とは異なるランナー46から溶融樹脂が供給される。ランナー46の射出ゲート47は、スロットルバルブ31に直接連通されている。
【0029】
図4,5を参照しながら台座15の形状等について説明するが、台座15用のキャビティ35についても同じである。図4,5に示すように、台座15は釣鐘形状に形成され、射出ゲート45の断面形状も台座15と同じ釣鐘形状となっている。台座15の外形寸法は、射出ゲート45の断面積(開口面積)よりも一周り大きい。したがって、正確には、台座と射出ゲート45の断面形状とは相似関係にある。台座15は小径部3aから大径部3bに向けて延在しており、台座15の内周面15bは、小径部3aの内周面と面一となっている。また、釣鐘形状を呈する台座15の頂部(曲部)は大径部3bに存在しており、台座15の側面15aは、射出ゲート45側からボア壁部3に向けて拡がる末拡がりの斜面となっている。さらに、台座15は小径部3a側から大径部3b側へ徐々に薄肉となっており、当該台座15の内周面15bも傾斜している。なお、台座15の内周面15bは、ボア壁部3と同じ曲率半径の円弧面となっている。
【0030】
次に、射出成形について説明する。まず、図2に示すように、スロットルシャフト12を金型40内に予めインサートして、スロットルバルブ31の中央部に配置されるよう固定したうえで、固定金型41と可動金型42を型締めし、キャビティを画定する。そして、ランナー44・46を通して供給されてくる溶融樹脂を、射出ゲート45・47を介してキャビティ30・31内へ射出充填する。このとき、ボア壁部30では、段部3cに臨む各射出ゲート45から射出された溶融樹脂は、小径部3a側と大径部3b側へ拡散するように流動するが、台座35の存在及びその形状によって、流路幅の狭い大径部3b側へも円滑に流動できる。これにより、溶融樹脂の流動抵抗及び圧力損失が低減され、キャビティ内を従来(例えば上記特許文献1)よりも高い圧力で保持できると共に、より長時間高いレベルで保圧できるので、樹脂密度が向上してスロットルボディ2の寸法精度が向上する。
【0031】
溶融樹脂が硬化したら、スロットルバルブ10と共にスロットルボディ2を離型する。このとき、図3に示すように、ボア壁部3の内周面には、各台座15にゲート跡突起25が残存しており、このままでは製品として使用できない。そこで、図4に示すように、ゲート跡突起25を小径部3a側から力を加えて折ることで除去する。このとき、ゲート跡突起25と共にその周辺部位も一緒にもぎ取られる、いわゆる身食いが発生する場合がある。しかし、本実施例ではゲート跡突起25が釣鐘状を呈するので、当該釣鐘の各角部に応力集中が生じ、身食い範囲が狭くなる。しかも、射出ゲート45はランナー44より断面積が小さいので応力自体も小さい。そのうえで、ゲート跡突起25は、これよりも一周り大きい台座15上に形成されている。したがって、仮に身食いが生じたとしても、図5に示すように、欠損するのは台座15部分のみに留まり、スロットルボディ2の欠損が確実に防がれる。なお、スロットルバルブ10にもゲート跡突起27が残存しているが、これは切除すればよい。
【0032】
(その他の変形例)
上記各実施例では、スロットルボディ2とスロットルバルブ10へはそれぞれ異なるランナー44・46を通して溶融樹脂を供給したが、例えば特許文献1のように、ランナー44を射出ゲート47へ分岐するように連通してもよい。また、スロットルバルブ10への射出ゲート47も、台座を介して連通させることも好ましい。ボア壁部3の内径が上下に亘って一様であり、段部3cを有しないスロットルボディであれば、台座15の形成位置は特に制限されない。上記実施例では台座15を6箇所に設けたが、2〜8箇所の範囲で適宜変更できる。この場合も、各台座はボア壁部の内周面に沿って周方向に等間隔で設けることが好ましい。
【0033】
また、上記実施例は、最も好ましい形態として例示している。この実施例と比べれば、得られる作用効果の程度が劣るが、以下のような形態とすることもできる。射出ゲートの断面形状は、応力集中部となる少なくとも1つの角部を有する非真円形であれば、釣鐘形状に限られず、三角形、四角形等の多角形や、扇形、小判形など、種々の形状にすることができる。射出ゲートの断面積は、少なくともランナーの断面積より大きくなければよい。したがって、射出ゲートの断面積とランナーの断面積とが同じでもよい。射出ゲートの断面形状と台座の断面形状が異なっていてもよい。台座の側面は、ボア壁部に対して垂直面とすることもできる。台座は、段部以外にも小径部又は大径部に設けることもできる。また、台座は、段部、小径部、及び大径部のうちいずれか2以上の部位に組み合わせて設けてもよい。この場合も、少なくとも段部には台座を形成することが好ましい。台座の内周面は、必ずしも小径部と面一とする必要はない。また、台座の内周面は円弧面に限らず平坦面でもよく、傾斜させずに小径部や大径部と平行な面でもよい。
【0034】
また、ゲート跡突起は、台座を含めて切削することもできる。この場合、ゲート跡突起の切削には、回転させながらスライド移動させることで切削する回転切削工具を使用するとよい。代表的には、公知のエンドミルを使用できる。このとき、エンドミルの回転切削により台座にはエンドミルの接線方向にせん断力が作用し、当該せん断力によって台座が欠けることがある。しかし、台座の側面を末広がりの斜面としていれば、せん断力が作用する方向への肉厚が大きくなるので、台座は欠損し難くなる。
【符号の説明】
【0035】
1 スロットル装置
2 スロットルボディ
3 ボア壁部
3a 小径部
3b 大径部
3c 段部
4 モータハウジング部
5 ギアボックス部
6 軸受部
10 スロットルバルブ
15 台座
15a 台座の側面
15b 台座の内周面
25 ゲート跡突起
30 ボア壁部用のキャビティ
31 スロットルボティ用のキャビティ
35 台座用のキャビティ
40 金型
44 ランナー
45 射出ゲート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関への吸入空気量を制御するスロットル装置のスロットルボディの製造方法であって、
前記スロットルボディは、内部空間が吸気通路となる円筒形のボア壁部を有し、溶融樹脂が射出充填されるキャビティが形成された金型によって射出成形され、
前記ボア壁部の内周面に台座を突出形成し、溶融樹脂を射出充填する射出ゲートを前記台座へ連通し、
前記射出ゲートは、少なくとも1つの角部を有する断面形状であることを特徴とする、スロットルボディの製造方法。
【請求項2】
前記射出ゲートの断面積は、該射出ゲートへ溶融樹脂を供給するランナーの断面積より小さいことを特徴とする、請求項1に記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項3】
前記台座の外径寸法は、前記射出ゲートの断面積より大きいことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項4】
前記台座の断面形状は、前記射出ゲートの断面形状と同じ形状であることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項5】
前記射出ゲートの断面形状が釣鐘状であることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項6】
前記台座の側面は、前記射出ゲート側からボア壁部に向けて拡がる斜面となっていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項7】
前記ボア壁部には、傾斜面となっている段部を介して内径の異なる小径部と大径部とが連続して形成されており、
前記台座は、前記段部に突出形成されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項8】
前記台座は、前記小径部から大径部に向けて延在しており、
前記台座の内周面は、前記小径部の内周面と面一となっていることを特徴とする、請求項7に記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項9】
前記台座は小径部側から大径部側へ徐々に薄肉となって、該台座の内周面が傾斜していることを特徴とする、請求項8に記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項10】
前記台座の内周面は、前記ボア壁部と同じ曲率半径の円弧面となっていることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項11】
溶融樹脂の硬化後、ゲート跡突起を折り取ることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のスロットルボディの製造方法。
【請求項12】
前記射出ゲートの角部のうち少なくとも1つが、前記ゲート跡突起を折る方向に対して後方側にあることを特徴とする、請求項11に記載のスロットルボディの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−106419(P2011−106419A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264716(P2009−264716)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000116574)愛三工業株式会社 (1,018)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】