セキュリティシステム及び同システムの端末システム並びに支援システム
【課題】危険物の検査スピードと検査の信頼性を向上し、セキュリティシステムを導入し易くして、社会の安全を向上する。
【解決手段】分析条件が異なる2段の分析処理を行う質量分析手段を備えた危険物検査を行なう端末システム1を検査場に設置し、質量分析手段により計測される検査対象成分の少なくとも2段目の質量分析データに基づいて危険物の有無及び種類を判定する支援システム2をセキュリティサービス事業者の事業所に設置し、それらを通信ネット3を介して情報交換可能に接続し、支援システム2は危険物の判定結果及び処置ガイダンスを通信ネット3を介して端末システム1に送信するセキュリティシステムとすることにより、ユーザはセキュリティシステムを導入し易くなる。
【解決手段】分析条件が異なる2段の分析処理を行う質量分析手段を備えた危険物検査を行なう端末システム1を検査場に設置し、質量分析手段により計測される検査対象成分の少なくとも2段目の質量分析データに基づいて危険物の有無及び種類を判定する支援システム2をセキュリティサービス事業者の事業所に設置し、それらを通信ネット3を介して情報交換可能に接続し、支援システム2は危険物の判定結果及び処置ガイダンスを通信ネット3を介して端末システム1に送信するセキュリティシステムとすることにより、ユーザはセキュリティシステムを導入し易くなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティシステムに関し、例えば手荷物、貨物、不審物等に危険物が存在するか否かを検知して、危険物に対する安全を確保するのに有用なシステムに関する。この明細書において危険物とは、爆発物を含む火薬類、毒ガス、可燃性物質、等をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港やイベント会場等のように多くの人が集まる場所においては、乗客やイベント参加者の安全を図るために、X線や金属探知機等を用いて手荷物等を検査することが広く行なわれている。また、爆発物等の危険物が仕掛けられているおそれがある場合は、危険物の有無を検査しなければならないが、危険物検査装置は一般に普及するまでに至っていない。現状は、爆発物等の危険物が仕掛けられているおそれがある場合は、専門家の派遣を依頼して、危険物の有無を確認することになる。このような危険物検査は、宅配便の荷物検査、銀行の貸し金庫等における不審物の検査にも要請がある。
【0003】
危険物を検知する代表的な方法としては、ガスクロマトグラフ方式及び質量分析方式が知られている。いずれの方式も、手荷物又は不審物等から漏れ出る微量な空気を採取(サンプリング)し、その採取空気(サンプルガス)を分析して、爆発物等の危険物を構成する物質の有無を検知するものである。
【0004】
ガスクロマトグラフ方式は、内面処理を施したシリカ製、吸着剤を充填した鉄製又はガラス製のカラムを加熱してサンプルガスを注入した後、窒素、ヘリウム又は水素等のキャリアガスを通流することにより、サンプルガスを構成する各成分が、沸点差や内面処理物質や充填材との親和性の差等により、分離されてカラムから流出することを原理とする。つまり、サンプルガスに含まれている各成分のカラム中での移動速度が異なるため、カラムから各成分が分離して流出する。このように分離して流出する成分の熱伝導度法などを適当な方法で測定し、試料の混合状態を知り、成分の分析を行なう。
【0005】
また、代表的な爆発物であるRDX、TNTは、これらを構成するNO2を検出することにより検出を行なうことが一般的である。しかしながら、NO2は爆発物の一部分であり、これだけでは化合物自体の構造を把握することが難しい。そこで、予め基準データを取得し、流出時間等との相対比較を行ない、爆発物であるか否か、またその種類を判定する。これらの一連の検知処理に約数分かかり、また相対比較のための基準データ等の取得等の装置の維持管理に極めて大きな労力が必要である。
【0006】
質量分析方式は、サンプルガスをイオン化し、真空中に配置された質量分析計により、イオンの質量(正確には、イオンの質量mを電荷zで割った値m/z)を測定する方式であり、質量分析計には四重極型質量分析計とイオントラップ型質量分析計がある。
【0007】
四重極型質量分析計は、4本の棒状の電極からなる質量分析計で、各電極には直流電圧と高周波電圧が重畳して印加されて電場が形成される。イオン化されたサンプルガス分子は電場に導入され、電場を通過するイオンは三次元的に複雑な振動を行ない、印加された直流電圧及び高調波電圧に応じたm/z比を持つイオンのみがその電場を通過して検出される。他のイオンは、電極などに衝突するなどして消滅する。したがって、直流電圧及び高調波電圧の比を一定に保ちながらスキャンすることによって、スペクトルを得ることができる。
【0008】
一方、イオントラップ型質量分析計は、2つのエンドキャップ電極と1つのリング電極より構成される。これら3つの電極に挟まれた空間にイオン化されたサンプルガス分子が導入されると、そのイオンはリング電極に印加された高周波電圧によって形成される電場に閉じ込められる(つまり、トラップされる。)。トラップされたイオンはエンドキャップ電極に印加されている別の高周波電圧を走査することによって質量順に放出され、これを検出することによってスペクトルを得ることができる。イオンは電場中に溜め込まれ、一定時間後(例えば、数十msecオーダー)に放出されるという一種の積算効果によって、高感度化が達成されている。
【0009】
このようにして得られたサンプルガスの質量スペクトルデータを分析して、サンプルガス中に含まれる爆発物等の危険物に固有の質量スペクトルの有無により、爆発物等の危険物の有無の判定と、その種類を同定することができる。この方式による爆発物の検知に要する時間は短時間(例えば、3〜8秒)である。特に、質量分析方式は、信頼性が高く、爆発物固有のイオン(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンを活性化した後、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を検出する操作を加えることにより、質量分析を繰り返し行なう多重分析を適用すれば、一層信頼性が向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、空港やイベント会場における手荷物等の検査、宅配便の荷物検査、銀行の貸し金庫等における不審物の検査において、危険物の検知が要請されているにもかかわらず、なかなか普及していない。その理由は、次の点に原因があるものと考えられる。
(1)検知時間の問題
手荷物検査は、一般に、ベルトコンベアに手荷物を載せて搬送する過程で行なわれるが、爆発物検知に時間がかかりすぎると、検査場が渋滞してしまう問題がある。例えば、コンベア速度(一般に、12m/s)を考慮すると、数秒(例えば、8秒)以内に検知完了することが望ましい。この点から見ると、ガスクロマトグラフ方式は、検知に時間がかかりすぎるので適当でない。この点、質量分析方式は、数秒で検知でき、かつ信頼性が高いので好ましい。
(2)専門知識を有する人員の養成が困難
空港等の手荷物検査においては、多数の手荷物を円滑に検査するために、多数の爆発物等の危険物検査装置を配備する必要がある。したがって、危険物検査装置の操作、保守、点検、修理、改良、変更などの取扱いに専門的な知識が要求されると、専門知識を有する人員を養成する面で困難が多い。
(3)爆発物等による人身等の安全確保
爆発物等を検知した場合、爆発物による人身等の安全確保など、処置上の問題がある。従来は、所轄の公的機関(警察署、消防署等)に連絡して、専門の爆発物処理班等の出動を要請することになる。その場合、爆発物の種類、量、形態、爆発物の収納容器によって処置が異なってくることから、爆発物処理班の出動前に、それらについて確度の高い情報を得ることができれば適切な対応が期待できる。また、当面の適切な防護処置などが速やかにわかれば、一層望ましい。
【0011】
本発明の課題は、危険物の検査スピードと検査の信頼性を向上し、セキュリティシステムを導入し易くして、社会の安全を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次に述べる手段により、上記課題を解決するものである。
【0013】
まず、質量分析方式によって危険物を検知するシステムを採用することにより、検査スピードを短時間化(好ましくは数秒(3〜8秒))して、検査時間に関する導入障害を解決する。特に、危険物の検知を2段階の多重分析(MS1/MS2)により行なうシステムを採用していることから、MS1の判定結果が「爆発物無し」の場合は検査を終了することができ、検査時間を短縮して検査場の渋滞回避に寄与することができる。また、MS1の判定結果が疑わしい場合は、分析条件が異なるMS2の分析を実行して再判定を行なうようにしているから、信頼性を一層向上させることができる。
【0014】
また、セキュリティサービス事業を創設し、危険物検査装置を含むセキュリティシステム全体の保守、点検、調整、修理、改良、変更などの設備管理等の運用管理をサービス事業者が行なう形態を可能とする。これにより、ユーザはセキュリティシステムを導入し易くなる。つまり、検査場の管理者であるユーザがセキュリティシステムを購入して資産とする従来の形態の場合は、リース等を利用して初期設備費を軽減できたとしても、設備管理に必要な人員の確保、養成、その他の運転管理に係る費用の負担が大きい。この点、セキュリティシステムの運用管理を専業とするセキュリティサービス事業を創設することにより、少なくとも、保守、点検等の設備管理に係る負担を軽減することができる。また、セキュリティサービス事業者が、運転管理に必要な人材の派遣、情報の提供などを行なうことにより、一層ユーザの負担を軽減できる。
【0015】
一方、セキュリティシステムを、検査場に少なくとも危険物検査に必要な機能を備えた端末システムと、必ずしも検査場に必要ではない支援システムとに分ける。そして、それらを専用通信回線又は公衆通信回線(インターネット等)等の通信回線で結ぶことにより、セキュリティシステムを構築する。この場合、例えば、必要な数の端末システムを1又は複数の検査場に設備し、これらの端末システムを支援する支援システムをセキュリティサービス事業者の事業所(例えば、1箇所)に設備する形態を採用できる。
【0016】
また、セキュリティサービス事業の形態としては、様々な態様が考えられる。例えば、端末システムをユーザが購入する形態、セキュリティサービス事業者が端末システムをユーザに無償供与する形態、等が考えられる。これらの形態に応じて、セキュリティサービス事業者は、セキュリティシステムに係る諸費用の他、保守等の設備管理及び運用管理、その他、サービスに係る費用を請求(課金)することが考えられる。
【0017】
イベントなどのような期間が限られている場合には、端末システムをセキュリティサービス事業者が無償供与する形態が好まれるであろう。いずれの形態であっても、ユーザにとってみれば、端末システムの保守、点検、調整、修理、改良、変更などの設備管理、あるいは人材派遣や情報の提供を受ける運用管理を、セキュリティサービス事業者にまかせることができるから、セキュリティシステムの導入が容易になる。
【0018】
具体的には、質量分析手段を備えた危険物検査を行なう端末システムを検査場に設置し、前記質量分析手段により計測される検査対象成分の質量分析データに基づいて危険物の有無及び種類を判定する支援システムをセキュリティサービス事業者の事業所に設置する。そして、前記端末システムと前記支援システムとを通信ネットを介して情報交換可能に接続し、前記支援システムは危険物の判定結果を前記通信ネットを介して前記端末システムに送信する形態とすることができる。
【0019】
また、検査対象成分の質量を分析する質量分析手段を利用者に有償又は無償で提供し、前記質量分析手段により分析された質量分析データを通信回線を介して受信し、受信した質量分析データと危険物に係る基準データとを照合し、その照合結果を前記利用者に送信する形態とすることができる。
【0020】
これらの場合において、前記支援システムは、前記判定結果とともに判定費用の請求データをデータベースに集積すると共に、前記端末システムに送信することができる。
上述したセキュリティサービス事業に適した構成のセキュリティシステムは、次の種々の形態を取ることができる。
(端末システム)
本発明の端末システムは、危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、前記質量分析手段の第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データと第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段を備え、前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせるとともに、該分析処理により分析された第1段目の質量分析データについて危険物の有無を前記第1の判定手段に判定させ、該第1の判定手段による前記第1段目の質量分析データに係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせるとともに、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データを支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記支援システムに備えられた第2の判定手段により前記第2段目の質量分析データと第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定した判定結果を前記通信手段を介して前記通信回線から取り込んで、該判定結果を前記表示手段に表示させる機能を備えて構成する。
【0021】
これに代えて、本発明の端末システムは、危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせ、該第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データを支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第1段目の質量分析データについての危険物の有無の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させ、前記第1段目に係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせ、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データを前記支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第2段目の質量分析データについての危険物の有無及び種類の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させる機能を備えて構成してもよい。
【0022】
また、上記の端末システムに、前記検査対象物の重量を計測する計量装置と、前記検査対象物のX線像を撮影するX線装置とを加え、前記制御手段は、前記危険物の判定結果が危険物有りのとき、前記計量装置とX線装置から前記検査対象物の重量とX線像とを取り込んで前記通信手段を介して通信回線に出力し、該通信回線を介して前記通信手段により受信される前記危険物の対応処置ガイドを前記表示手段に表示することができる。
(支援システム)
本発明の支援システムは、危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段によって分析条件が異なる2段の分析処理のうち、第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物有りのときに、第2段目の分析処理を実行して前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込み、該第2段目の質量分析データと危険物判定に係る第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定する構成とすることができる。
【0023】
また、これに代えて、本発明の支援システムは、危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段により分析条件が異なる2段の分析処理によって得られる第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段と、第2段目の質量分析データを第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定する第2の判定手段とを有してなり、前記制御手段は、前記端末システムから第1段目の質量分析データを前記通信回線を介して受信したとき該第1段目の質量分析データを前記第1の判定手段に判断させ、該第1の判定手段の判定結果が危険物有りのとき、第2段目の分析処理を実行させる指令を前記端末システムのアドレスを付してして前記通信回線に出力し、これに応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込んで前記第2の判定手段に判断させるものとすることができる。
【0024】
また、上記の支援システムに、前記危険物の判定結果が危険物有りのとき、前記通信手段を介して前記通信回線により受信される前記危険物の重量とX線像と、前記危険物の種類、形態、危険物の収納容器とに基づいて、危険物の対応処置ガイドを作成する処置ガイド作成手段を加え、前記制御手段は、前記対応処置ガイドを前記通信手段を介して前記通信回線に出力させることができる。
(セキュリティシステム)
本発明のセキュリティシステムは、上記の端末システムと支援システムとを通信回線等で結合することにより構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、セキュリティシステムの導入が容易になり、社会の安全を向上することができる。また、検査スピードが向上するとともに、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を爆発物検査に適用してなる一実施の形態について、図1〜図10を用いて説明する。図1は本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態の構成概念図、図2はセキュリティシステムの一実施形態のブロック構成図である。
【0027】
図1に示すように、セキュリティシステムは、ユーザである空港などの手荷物検査場に設置する端末システム1と、セキュリティサービス事業の事業所であるサービス会社に設置する支援システム2とから構成される。それらの端末システム1と支援システム2は、通信回線3を介して相互に情報を送受可能に形成されている。端末システム1は、検査対象である手荷物4から漏れ出る微量なガスを周囲の空気と一緒に吸引するガス吸引配管5と、危険物の検査結果などの情報が表示される表示部15とを備えて構成されている。また、検査場には、X線装置7が備えられており、ベルトコンベア8上を搬送される手荷物4のX線像を撮影して、金属等を透視するようになっている。
【0028】
図2を参照して、セキュリティシステムの構成と動作概要を説明する。検査対象ガスはガス吸引配管5を介して端末システム1のガスサンプリング部11に導かれる。ガスサンプリング部11によりサンプリングされたガスは、質量分析部12に導かれ、サンプリングガスの質量分析が行なわれる。質量分析部12による質量分析データは演算制御部13を介して爆発物判定部(I)14に送られる。爆発物判定部(I)14は、質量分析データを基準データIと照合し、サンプリングガスに爆発物成分が含まれているか否か、また爆発物が含まれている場合はその種類について、1段目の判定をする(MS1)。この判定結果は、演算制御部13に出力されて表示部15に表示される。また、爆発物有りの判定結果のときは、演算制御部13は質量分析部12に指令を送り、分析条件を変えて2段目の分析を行なわせる。質量分析部12から出力される2段目の質量分析データは、演算制御部13により、通信部17を介して通信回線3に出力される。通信部17は、周知のように、送信するデータを所定の送信フォーマットに生成すると共に、宛先のアドレスを付して通信回線3に出力する。また、通信部17は、通信回線3上のデータに自己宛のアドレスが付されているときは、そのデータを取り込むようになっている。なお、必要に応じて、データを暗号化・復号化する機能をもたせることが好ましい。また、演算制御部13は、X線装置7から手荷物のX線像を、計量装置8から手荷物の重量データを取り込むようになっている。
【0029】
端末システム1の通信部17から送信される2段目の質量分析データは、通信回線3を介して支援システム2の通信部21に取り込まれ、演算制御部22を介して爆発物判定部(II)23に送られる。爆発物判定部(II)23は、2段目の質量分析データを基準データIIと照合し、サンプリングガスに爆発物の成分が含まれているか否か、また爆発物が含まれている場合はその種類について、2段目の判定をする(MS2)。この2段目の判定結果は、演算制御部22及び通信部21を介して端末システム1に送信され、端末システム1の表示部15に表示されるようになっている。なお、通信部21は端末システム1の通信部17と同様の機能を有して構成されている。また、支援システム2には、データベース24、処置ガイド部25及び入力部26が備えられている。データベース24は、図3に示すように、質量スペクトルデータ(MS1)、質量スペクトルデータ(MS2)、質量分析データ(MS1)、質量分析データ(MS2)、メンテナンス・管理データ、課金データ、等のデータが格納されるようになっている。
【0030】
ここで、本実施形態の質量分析部12には、図4に示すイオントラップ型の質量分析計が適用されている。質量分析部12は、サンプルガス導入部31、減圧室32、高真空室33を備えて構成されている。サンプルガス導入部31は、サンプルガス流路34の入口から検査対象ガス30を真空ポンプなどにより吸引する。一方、サンプルガス流路34に開口された孔36に臨ませて針電極35が配置されている。針電極35は、コロナ放電により電子を放出し、大気中の酸素をイオン化(1次イオン化)する。検査対象ガス30中に爆発物に固有の成分が含まれていると、イオン化した酸素が爆発物固有の分子と反応してイオン化(2次イオン化)する。このようにして大気圧下で生成された爆発物固有のイオンは、サンプルガス流路34に開口された孔37と減圧室32に開口された孔38を通って減圧室32に導かれ、さらに孔38を通って真空室33に導入される。真空室33に導入された爆発物固有のイオンは、イオン収束部40を通ってイオントラップ部41に流入される。イオントラップ部41は、2つのエンドキャップ電極と1つのリング電極より構成される。これら3つの電極に挟まれた空間にイオン化された検査対象ガスのイオンが導入されると、そのイオンはリング電極に印加された高周波電圧によって形成される電場に閉じ込められる(つまり、トラップされる。)。トラップされたイオンはエンドキャップ電極に印加されている別の高周波電圧を走査することによって質量順に放出され、これをイオン検出器43によって検出することによってスペクトルを得ることができる。イオンは電場中に溜め込まれ、一定時間後(例えば、数十msecオーダー)に放出されるという一種の積算効果によって、高感度化が達成されている。
【0031】
このようにして得られたサンプルガスの質量スペクトルデータを分析して、サンプルガス中に含まれる爆発物等の危険物に固有の質量スペクトルの有無により、爆発物等の危険物の有無の判定と、その種類を同定することができる。この方式による爆発物の検知に要する時間は数秒(例えば、3〜8秒)である。特に、爆発物固有のイオン(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンにヘリウムガスを衝突させて親イオンの運動エネルギを内部エネルギに変換することにより、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を生成し、娘イオンを検出する多重分析(MS/MS)を適用することにより、一層信頼性が向上する。
【0032】
つまり、1段目(MS1)の質量分析において爆発物固有のイオン(親イオン)に係る質量スペクトルを測定し、このMS1の質量分析データに基づいて爆発物の有無を判定する。さらに信頼性を高めるために、2段目(MS2)の質量分析において娘イオンに係る質量スペクトルを測定し、MS2の質量分析データに基づいて爆発物の有無を判定して、信頼性を向上するようにしている。
【0033】
上記のように構成されるセキュリティシステムの詳細構成及び動作について、図5〜図9に示したフローチャートに沿って説明する。図5は、端末システム1の処理手順を示し、図6は、支援システム2の処理手順を示している。
【0034】
端末システム1は、入力部16から演算制御部13に入力される検査開始指令に応動して一連の処理を開始する。演算制御部13は、ガスサンプリング部11に指令を送り、所定量の検査対象ガスをサンプリングさせる(S1)。サンプリングガスは質量分析部12に流入され、質量分析部12は図4で説明した手順に従って1段目(MS1)の質量分析を実行する(S2)。MS1の分析により、サンプルガスを構成する成分の質量スペクトルが質量分析データとして得られる。例えば、質量分析部12は爆発物固有のイオン成分(親イオン)の質量分析データを出力する。演算制御部13は質量分析データを取り込んで爆発物判定部(I)14に送る(S3)。爆発物判定部(I)14は、予め設定されている爆発物固有のイオン成分(親イオン)の質量に対応した基準データIを保有している。そして、爆発物判定部(I)14は、入力される質量分析データを基準データIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S4)。その判定結果は演算制御部13を介して表示部5に表示される。その判定結果が「爆発物無し」のときは、演算制御部13は処理を終了する(S6)。
【0035】
一方、判定結果が「爆発物有り」のとき、演算制御部13は質量分析部12に2段目(MS2)の分析を実行する指令を送る(S6)。これに応答して、質量分析部12はMS2の分析を実行する(S7)。ここで、前述したように、MS2の分析はMS1の分析でトラップされているイオン混合物中のイオン成分(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンを活性化した後、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を検出する操作である。これにより、爆発物の判定に係る信頼性を向上することができる。
【0036】
MS2の質量分析データは、制御演算部13を介して通信部17に送られる。通信部17は、支援システム2宛の送信フォーマットに、MS2の判定実行指令とMS2の質量分析データを書き込んで通信回線3に出力する(S8)。
【0037】
支援システム2宛に送信されたMS2の判定実行指令と質量分析データは、通信回線3を介して支援システム2の通信部21により受信される。支援システム2は、図6に示すように、演算制御部22においてMS2判定実行指令の受信を確認すると(S11)、MS2の質量分析データを取り込んで爆発物判定部(II)23に送る(S12)。爆発物判定部(II)23は、予め設定されている爆発物固有のフラグメントイオン(娘イオン)の質量に対応した基準データIIを有している。そして、爆発物判定部(II)23は、入力されるMS2の質量分析データを基準データIIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S13)。その判定結果は演算制御部22を介して通信部21に送られ、端末システム1宛の送信フォーマットに、MS2の判定結果を書き込んで通信回線3に出力する(S14)。また、契約で予め定めている場合は、MS2の判定報告をデータベース24の課金データとともに登録する(S14)。なお、契約に応じて、判定費用の課金データを端末システム1に送るようにすることもできる。
【0038】
図5に戻って、端末システム1宛に送信されたMS2の判定結果は、通信回線3を介して端末システム1の通信部17により受信される(S9)。そして、演算制御部22は、MS2の判定結果を表示部15に表示させる(S10)。これらの一連の処理により、爆発物検査の処理は終了する。MS2の判定結果が、「爆発物有り」の場合は、後述する処置ガイドの機能が動作することになる。
【0039】
上述したセキュリティシステムによれば、質量分析方式により爆発物を検知しているから、十分に短い検査時間で、かつ信頼性の高い検知を行わせることができる。また、爆発物の検知を2段階の多重分析(MS1/MS2)により行なうシステムを採用していることから、MS1の判定結果が「爆発物無し」の場合は検査を終了することができ、検査時間を短縮して検査場の渋滞回避に寄与することができる。
【0040】
特に、爆発物判定部(I)14を端末システム1に備えていることから、「爆発物無し」の場合は支援システム2との通信時間が不要となるので、検査のスピードアップに有効である。なお、MS1の判定結果が疑わしい場合は、MS2の分析を実行して再判定を行なうようにしているから、信頼性を一層向上させることができる。
【0041】
図7に、MS2の判定結果が「爆発物有り」の場合の処置手順を示す。図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
(S21)
【0042】
端末システム1は、支援システム2から「危険物有り」の判定結果を受信した際、X線装置7と、計量装置7に指令を送り、検査対象物の手荷物4に係る重量及びX線像(形態情報)の記録の送信を求め、それらのデータを収集する。なお、記録が無い場合は、手荷物4の計量及びX線撮影の実行を要求する。収集した重量及びX線像は通信部17を介して支援システム2に送信する。通信部17の送信処理は前述と同様である。
(S22)
【0043】
支援システム2の通信部21は、手荷物4の重量及びX線像を受信して演算制御部22に送る。演算制御部22は、処置ガイド部25に手荷物4の重量とX線像及び爆発物判定部(II)23の判定結果である爆発物の種類と共に指令を送り、爆発物を有する手荷物4の処置についてのガイダンスの作成を要求する。処置ガイド部25は、手荷物4の重量とX線像とから爆発物重量を割りだし、爆発物の種類を考慮して、爆発の威力を推定する。この場合、X線像の画素を解析して、信管、雷管等の起爆装置の有無を判定する。このようにして得られたデータに基づいて、手荷物4に対する対応処置のガイダンスを作成する。作成した処置ガイダンスは、演算制御部22により通信部21を介して、端末システム1に送信される。処置ガイダンスには、例えば、次の内容が盛り込まれる。
【0044】
(1)爆発物の組成に関する情報、その名称(通称又は一般名)
(2)処置方法
1.退避の必要性
2.検査対象物を防護容器等に収納する必要の有無
3.所持者身柄拘束の必要の有無
4.関係機関への連絡、通報の必要の有無
これらの処置ガイダンスは、爆発物の組成及び種類に応じて、必要の有無が判断される。また、処置が必要な場合は、優先順位が付される。
(S23、S24)
【0045】
端末システム1は、処置ガイダンスを受信して、表示部15に出力表示する。また、印刷出力することもできる。これにより、検査員は表示部15に表示された処置ガイダンスに従って、退避や防護措置を講ずることにより、人身等の安全を確保することができる。なお、検査場に、防護シェルタ等の爆発に対する防護設備が備えられている場合は、その防護シェルタを自動的に動作させて爆発物の入った手荷物を覆って、人身を隔離することができる。
【0046】
このように処置ガイド部23を支援システム2に備えることにより、端末システム1のユーザは、爆発物についての専門的知識が不足していても、表示部15に処置ガイダンスが表示されるから、適切な対応処置を講ずることができる。
【0047】
図8に、端末システム1の運転状態等を管理する処理手順のフローチャートを示す。図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
(S31)
【0048】
支援システム2の演算制御部13は、通常の運転状態における各部の動作等を含む状態データを定期的に収集する。そして、収集した運転状態データを通信部17を介して支援システム2に送信する。
(S32)
支援システム2は、端末システム1の運転状態データを受信し、データベースに格納する。
(S33)
【0049】
演算制御部22は、データベース24に格納されているメンテナンス・管理データに従って、端末システム1の運転状態データをチェックし、異常の有無を確認し、データベースに登録する。
(S34,S35)
【0050】
端末システム1の異常を発見した場合は、メンテナンス・管理データに格納されている異常に対応する点検・調整要領を抽出し、端末システム1に送信する。端末システム1は、送られた点検・調整要領に従ってシステムを点検すると共に、調整を行なう。なお、必要な場合は、セキュリティサービス会社から点検員を派遣する。
【0051】
このようにして、端末システム1を備えたユーザは、運転管理の知識が不足していても、セキュリティサービス会社の支援システム2による支援を受けることができ、安心して検査業務に専念することができる。
【0052】
図9に、データベース24の更新処理のフローチャートを示す。爆発物は前述したように代表的な種類のものが基本となるが、通常、様々な改変がなされることが多い。したがって、爆発物の判定に係る基準データI、II及びMS2の分析条件等を変更する必要が生ずる。そこで、このような場合に対応するため、図9に示すようなデータベース更新機能を備えることが好ましい。同図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
【0053】
同図に示すように、支援システム2は、爆薬メーカなどから、オンライン又は他の通信手段によりデータベース更新情報を入手すると(S41)、自己のデータベース24のデータを更新すると共に、その更新データが端末システム1に関係するものであれば、端末システム1にデータ更新指示を送信する(S42)。これに応答して、端末システム1はデータ更新指示を受信すると、基準データIの変更の場合は、爆発物判定部(I)14にアクセスして基準データIを更新する。また、MS1又はMS2の分析条件の変更である場合は、質量分析部12にアクセスしてそれらの分析条件を更新する(S43)。そして、更新が終了したら、更新完了報告を支援システム2に送信する(S44)。支援システム2は、データベースの更新完了報告を受けとって確認し、処理を終了する(S45)。
【0054】
次に、図10に、図2のセキュリティシステムを適用してなるセキュリティサービス事業の一実施形態の概念図を示す。図示のように、本実施形態は、セキュリティサービス事業者の一事業所であるサービス会社51を中心に、ユーザ52、検知システム提供者53、爆薬メーカ54、公的機関等の関係機関55が、有機的な関係で結合されている。サービス会社51は、ユーザ52の検査場に設置された端末システムの運用に際して、危険物(爆発物)の検査、判定及び処置について種々のサービス、保守・点検等の管理業務の役務を支援し、これに対して契約で定めた費用を受ける。また、サービス会社51は、検知システム提供者53からデータベース更新情報の提供を受け、その費用を検知システム提供者53に支払う。さらに、サービス会社51は、爆薬メーカ54から爆発物等の危険物の処置システム(例えば、防護装置等)の提供を受け、その購入費用を爆薬メーカ54に支払う。さらに、サービス会社51は、法律の規定に従って、爆発物について知り得た情報、つまり爆発物検知情報、爆発物の種類及び量などの爆発物特定情報を、所轄の関係機関55に通報する。
【0055】
また、この例では、検知システム提供者53が端末システムの検知システムをユーザ52に提供し、その購入費用を受ける。爆薬メーカ54は、検知システム提供者53に対し、検知システムのデータベースの更新や、システムの改良にかかわる情報として、爆発物情報及び試料などを提供する。これに対し、検知システム提供者53は、爆発物検知のアルゴリズム及びデータベースを提供する。また、爆薬メーカ54は、関係機関55から改変された爆発物の情報の提供を受けて、セキュリティシステムに反映すべく、種々の情報及びデータベース等の変更をサービス会社51及び検知システム提供者53に通知する。
【0056】
図11に、本発明のセキュリティシステムに係る他の実施形態のブロック構成図を示し、図12及び図13に、その処理手順のフローチャートを示す。それらの図に示すように、本実施形態が図2〜図9に示した実施形態と異なる点は、端末システム1の爆発物判定部(I)14を、支援システム2に移したことにある。支援システム2の爆発物判定部(I)27は、爆発物判定部(I)14と何ら機能的に異なるものではない。
【0057】
本実施形態によれば、図12、図13及び図6のフローチャートに示すように、MS1、MS2の分析データは、いずれも支援システム2に伝送され、支援システム2はMS1とMS2の分析データに対する判定の双方を行なう。
【0058】
すなわち、端末システム1は、入力部16から演算制御部13に入力される検査開始指令に応動して一連の処理を開始する。演算制御部13は、ガスサンプリング部11に指令を送り、所定量の検査対象ガスをサンプリングさせる(S61)。サンプリングガスは質量分析部12に流入され、図4で説明した手順に従って1段目(MS1)の質量分析を実行する(S62)。MS1の分析により得られる質量分析データは、制御演算部13により、MS1判定実行指令と共に支援システム2に送信される(S63)。
【0059】
支援システム2は、図13に示すように、MS1判定実行指令を受信したとき(S71)、質量分析データを爆発物判定部(I)27に送って判定を実行させる(S72)。爆発物判定部(I)27は、入力される質量分析データを基準データIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S73)。その判定結果は演算制御部22を介して端末システム1に送信される(S74)。このとき、演算制御部22は、判定結果と課金データをデータベース24に格納する。また、課金データは端末システム1にも送信される。
【0060】
図12に戻って、端末システム1はMS1判定結果を受信し(S64)、その結果を表示部15に表示する(S65)。そして、MS1の判定結果が「爆発物無し」のときは、演算制御部13は処理を終了し、判定結果が「爆発物有り」のときは質量分析部12に2段目(MS2)の分析を実行する指令を送る(S66)。これに応答して、図1実施形態と同様に、質量分析部12はMS2の分析を実行する(S67)。MS2の質量分析データとその判定実行指令は、通信部17を介して支援システム2に送信される(S68)。
【0061】
これに応答して、支援システム2は、図6に示すように、演算制御部22においてMS2判定実行指令の受信を確認すると(S11)、MS2の質量分析データを取り込んで爆発物判定部(II)23に送る(S12)。爆発物判定部(II)23は、入力されるMS2の質量分析データを基準データIIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S13)。その判定結果は演算制御部22を介して通信部21に送られ、MS2の判定結果が通信回線3に出力される(S14)。このとき、契約で予め定めている場合は、MS2の判定報告をデータベース24の課金データとともに登録する(S14)。なお、契約に応じて、判定費用の課金データを端末システム1に送るようにすることもできる。
【0062】
図12に戻って、端末システム1の演算制御部22は、MS2の判定結果を通信回線3を介して受信し(S69)、MS2の判定結果を表示部15に表示させる(S70)。これらの一連の処理により、爆発物検査の処理は終了する。MS2の判定結果が、「爆発物有り」の場合は、図7で説明した処置ガイドの機能が動作することになる。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、図2に示した実施形態と同様の効果を奏するとともに、爆発物判定に係る基準データI及び基準データIIのいずれも、サービス会社所有の支援システム2に収められることから、爆発物判定(I)に係るノウハウ等の秘密情報の漏洩を回避することができるという利点がある。
【0064】
上述した図2又は図11の実施形態においては、MS1の判定結果が危険物有りのときに、演算制御部13又は演算制御部22から質量分析部12にMS2の実行指令を出力するようにした。爆発物検知に適用する場合は、本発明はこれに限らず、予め質量分析部12に対し、MS1とMS2の質量分析を連続して行なわせるようにしてもよい。爆発物の場合は、MS1の質量分析結果を待たなくても、MS2の分析条件を特定できるからである。この場合、演算制御部13は連続して質量分析部12から出力される質量分析データI、IIを一旦蓄積しておき、MS1の判定結果が危険物有りのときに、質量分析データIIを爆発物判定部(II)に出力するようにする。
【0065】
図14に、本発明のセキュリティシステムの他の実施形態の概念図を示す。本実施形態は、一般の場所における不審物のセキュリティシステムに適用する場合の例であり、端末システム1及び支援システム2は、図2〜図9の実施の形態と同じである。図示のように、端末システム1により手提げ袋9の周囲空気を吸引配管で吸い込み、危険物の有無等を検知するようにしている。この様な場合、X線装置を常に設備しているところは少ないので、可般式のX線装置10をサービス会社から提供することを想定している。
【0066】
上記の各実施形態は、爆発物を検知対象にしたセキュリティシステムを説明したが、本発明はこれに限らず、いわゆる危険物の検査及び処置を対象としたセキュリティサービス事業に適用できる。危険物としては、爆発物のほか、火薬類、毒ガス類、可燃性物質等、一般に人や社会に危害を及ぼす物質が対象となる。これらの物質の有無および種類の判定は、上述した爆発物と同様に、質量分析により、それらの物質固有のイオン成分を検知することにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態の構成概念図を示す。
【図2】本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態のブロック構成図である。
【図3】図2の実施形態のデータベース24の一実施形態を示す図である。
【図4】イオントラップ型の質量分析計を適用してなる質量分析部の構成を説明する図である。
【図5】端末システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図6】支援システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図7】端末システムの演算制御部の処置ガイダンスに係る処理フローチャートである。
【図8】支援システムの演算制御部の処置ガイダンスに係る処理フローチャートである。
【図9】セキュリティシステムのデータベース更新に係る処理フローチャートである。
【図10】本発明のセキュリティシステムを適用してなるセキュリティサービス事業の一実施形態の概念図を示す。
【図11】本発明に係るセキュリティシステムの他の実施形態のブロック構成図である。
【図12】図11実施形態の端末システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図13】図11実施形態の支援システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図14】本発明のセキュリティシステムの他の実施形態の概念図を示す。
【符号の説明】
【0068】
1 端末システム
2 支援システム
3 通信回線
4 手荷物
5 ガス吸引管
7 X線装置
11 ガスサンプリング部
12 質量分析部
13 演算制御部
14 爆発物判定部(I)
15 表示部
17 通信部
21 通信部
22 演算制御部
23 爆発物判定部(II)
24 データベース
25 処置ガイド部
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティシステムに関し、例えば手荷物、貨物、不審物等に危険物が存在するか否かを検知して、危険物に対する安全を確保するのに有用なシステムに関する。この明細書において危険物とは、爆発物を含む火薬類、毒ガス、可燃性物質、等をいうものとする。
【背景技術】
【0002】
一般に、空港やイベント会場等のように多くの人が集まる場所においては、乗客やイベント参加者の安全を図るために、X線や金属探知機等を用いて手荷物等を検査することが広く行なわれている。また、爆発物等の危険物が仕掛けられているおそれがある場合は、危険物の有無を検査しなければならないが、危険物検査装置は一般に普及するまでに至っていない。現状は、爆発物等の危険物が仕掛けられているおそれがある場合は、専門家の派遣を依頼して、危険物の有無を確認することになる。このような危険物検査は、宅配便の荷物検査、銀行の貸し金庫等における不審物の検査にも要請がある。
【0003】
危険物を検知する代表的な方法としては、ガスクロマトグラフ方式及び質量分析方式が知られている。いずれの方式も、手荷物又は不審物等から漏れ出る微量な空気を採取(サンプリング)し、その採取空気(サンプルガス)を分析して、爆発物等の危険物を構成する物質の有無を検知するものである。
【0004】
ガスクロマトグラフ方式は、内面処理を施したシリカ製、吸着剤を充填した鉄製又はガラス製のカラムを加熱してサンプルガスを注入した後、窒素、ヘリウム又は水素等のキャリアガスを通流することにより、サンプルガスを構成する各成分が、沸点差や内面処理物質や充填材との親和性の差等により、分離されてカラムから流出することを原理とする。つまり、サンプルガスに含まれている各成分のカラム中での移動速度が異なるため、カラムから各成分が分離して流出する。このように分離して流出する成分の熱伝導度法などを適当な方法で測定し、試料の混合状態を知り、成分の分析を行なう。
【0005】
また、代表的な爆発物であるRDX、TNTは、これらを構成するNO2を検出することにより検出を行なうことが一般的である。しかしながら、NO2は爆発物の一部分であり、これだけでは化合物自体の構造を把握することが難しい。そこで、予め基準データを取得し、流出時間等との相対比較を行ない、爆発物であるか否か、またその種類を判定する。これらの一連の検知処理に約数分かかり、また相対比較のための基準データ等の取得等の装置の維持管理に極めて大きな労力が必要である。
【0006】
質量分析方式は、サンプルガスをイオン化し、真空中に配置された質量分析計により、イオンの質量(正確には、イオンの質量mを電荷zで割った値m/z)を測定する方式であり、質量分析計には四重極型質量分析計とイオントラップ型質量分析計がある。
【0007】
四重極型質量分析計は、4本の棒状の電極からなる質量分析計で、各電極には直流電圧と高周波電圧が重畳して印加されて電場が形成される。イオン化されたサンプルガス分子は電場に導入され、電場を通過するイオンは三次元的に複雑な振動を行ない、印加された直流電圧及び高調波電圧に応じたm/z比を持つイオンのみがその電場を通過して検出される。他のイオンは、電極などに衝突するなどして消滅する。したがって、直流電圧及び高調波電圧の比を一定に保ちながらスキャンすることによって、スペクトルを得ることができる。
【0008】
一方、イオントラップ型質量分析計は、2つのエンドキャップ電極と1つのリング電極より構成される。これら3つの電極に挟まれた空間にイオン化されたサンプルガス分子が導入されると、そのイオンはリング電極に印加された高周波電圧によって形成される電場に閉じ込められる(つまり、トラップされる。)。トラップされたイオンはエンドキャップ電極に印加されている別の高周波電圧を走査することによって質量順に放出され、これを検出することによってスペクトルを得ることができる。イオンは電場中に溜め込まれ、一定時間後(例えば、数十msecオーダー)に放出されるという一種の積算効果によって、高感度化が達成されている。
【0009】
このようにして得られたサンプルガスの質量スペクトルデータを分析して、サンプルガス中に含まれる爆発物等の危険物に固有の質量スペクトルの有無により、爆発物等の危険物の有無の判定と、その種類を同定することができる。この方式による爆発物の検知に要する時間は短時間(例えば、3〜8秒)である。特に、質量分析方式は、信頼性が高く、爆発物固有のイオン(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンを活性化した後、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を検出する操作を加えることにより、質量分析を繰り返し行なう多重分析を適用すれば、一層信頼性が向上する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、空港やイベント会場における手荷物等の検査、宅配便の荷物検査、銀行の貸し金庫等における不審物の検査において、危険物の検知が要請されているにもかかわらず、なかなか普及していない。その理由は、次の点に原因があるものと考えられる。
(1)検知時間の問題
手荷物検査は、一般に、ベルトコンベアに手荷物を載せて搬送する過程で行なわれるが、爆発物検知に時間がかかりすぎると、検査場が渋滞してしまう問題がある。例えば、コンベア速度(一般に、12m/s)を考慮すると、数秒(例えば、8秒)以内に検知完了することが望ましい。この点から見ると、ガスクロマトグラフ方式は、検知に時間がかかりすぎるので適当でない。この点、質量分析方式は、数秒で検知でき、かつ信頼性が高いので好ましい。
(2)専門知識を有する人員の養成が困難
空港等の手荷物検査においては、多数の手荷物を円滑に検査するために、多数の爆発物等の危険物検査装置を配備する必要がある。したがって、危険物検査装置の操作、保守、点検、修理、改良、変更などの取扱いに専門的な知識が要求されると、専門知識を有する人員を養成する面で困難が多い。
(3)爆発物等による人身等の安全確保
爆発物等を検知した場合、爆発物による人身等の安全確保など、処置上の問題がある。従来は、所轄の公的機関(警察署、消防署等)に連絡して、専門の爆発物処理班等の出動を要請することになる。その場合、爆発物の種類、量、形態、爆発物の収納容器によって処置が異なってくることから、爆発物処理班の出動前に、それらについて確度の高い情報を得ることができれば適切な対応が期待できる。また、当面の適切な防護処置などが速やかにわかれば、一層望ましい。
【0011】
本発明の課題は、危険物の検査スピードと検査の信頼性を向上し、セキュリティシステムを導入し易くして、社会の安全を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、次に述べる手段により、上記課題を解決するものである。
【0013】
まず、質量分析方式によって危険物を検知するシステムを採用することにより、検査スピードを短時間化(好ましくは数秒(3〜8秒))して、検査時間に関する導入障害を解決する。特に、危険物の検知を2段階の多重分析(MS1/MS2)により行なうシステムを採用していることから、MS1の判定結果が「爆発物無し」の場合は検査を終了することができ、検査時間を短縮して検査場の渋滞回避に寄与することができる。また、MS1の判定結果が疑わしい場合は、分析条件が異なるMS2の分析を実行して再判定を行なうようにしているから、信頼性を一層向上させることができる。
【0014】
また、セキュリティサービス事業を創設し、危険物検査装置を含むセキュリティシステム全体の保守、点検、調整、修理、改良、変更などの設備管理等の運用管理をサービス事業者が行なう形態を可能とする。これにより、ユーザはセキュリティシステムを導入し易くなる。つまり、検査場の管理者であるユーザがセキュリティシステムを購入して資産とする従来の形態の場合は、リース等を利用して初期設備費を軽減できたとしても、設備管理に必要な人員の確保、養成、その他の運転管理に係る費用の負担が大きい。この点、セキュリティシステムの運用管理を専業とするセキュリティサービス事業を創設することにより、少なくとも、保守、点検等の設備管理に係る負担を軽減することができる。また、セキュリティサービス事業者が、運転管理に必要な人材の派遣、情報の提供などを行なうことにより、一層ユーザの負担を軽減できる。
【0015】
一方、セキュリティシステムを、検査場に少なくとも危険物検査に必要な機能を備えた端末システムと、必ずしも検査場に必要ではない支援システムとに分ける。そして、それらを専用通信回線又は公衆通信回線(インターネット等)等の通信回線で結ぶことにより、セキュリティシステムを構築する。この場合、例えば、必要な数の端末システムを1又は複数の検査場に設備し、これらの端末システムを支援する支援システムをセキュリティサービス事業者の事業所(例えば、1箇所)に設備する形態を採用できる。
【0016】
また、セキュリティサービス事業の形態としては、様々な態様が考えられる。例えば、端末システムをユーザが購入する形態、セキュリティサービス事業者が端末システムをユーザに無償供与する形態、等が考えられる。これらの形態に応じて、セキュリティサービス事業者は、セキュリティシステムに係る諸費用の他、保守等の設備管理及び運用管理、その他、サービスに係る費用を請求(課金)することが考えられる。
【0017】
イベントなどのような期間が限られている場合には、端末システムをセキュリティサービス事業者が無償供与する形態が好まれるであろう。いずれの形態であっても、ユーザにとってみれば、端末システムの保守、点検、調整、修理、改良、変更などの設備管理、あるいは人材派遣や情報の提供を受ける運用管理を、セキュリティサービス事業者にまかせることができるから、セキュリティシステムの導入が容易になる。
【0018】
具体的には、質量分析手段を備えた危険物検査を行なう端末システムを検査場に設置し、前記質量分析手段により計測される検査対象成分の質量分析データに基づいて危険物の有無及び種類を判定する支援システムをセキュリティサービス事業者の事業所に設置する。そして、前記端末システムと前記支援システムとを通信ネットを介して情報交換可能に接続し、前記支援システムは危険物の判定結果を前記通信ネットを介して前記端末システムに送信する形態とすることができる。
【0019】
また、検査対象成分の質量を分析する質量分析手段を利用者に有償又は無償で提供し、前記質量分析手段により分析された質量分析データを通信回線を介して受信し、受信した質量分析データと危険物に係る基準データとを照合し、その照合結果を前記利用者に送信する形態とすることができる。
【0020】
これらの場合において、前記支援システムは、前記判定結果とともに判定費用の請求データをデータベースに集積すると共に、前記端末システムに送信することができる。
上述したセキュリティサービス事業に適した構成のセキュリティシステムは、次の種々の形態を取ることができる。
(端末システム)
本発明の端末システムは、危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、前記質量分析手段の第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データと第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段を備え、前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせるとともに、該分析処理により分析された第1段目の質量分析データについて危険物の有無を前記第1の判定手段に判定させ、該第1の判定手段による前記第1段目の質量分析データに係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせるとともに、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データを支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記支援システムに備えられた第2の判定手段により前記第2段目の質量分析データと第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定した判定結果を前記通信手段を介して前記通信回線から取り込んで、該判定結果を前記表示手段に表示させる機能を備えて構成する。
【0021】
これに代えて、本発明の端末システムは、危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせ、該第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データを支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第1段目の質量分析データについての危険物の有無の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させ、前記第1段目に係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせ、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データを前記支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第2段目の質量分析データについての危険物の有無及び種類の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させる機能を備えて構成してもよい。
【0022】
また、上記の端末システムに、前記検査対象物の重量を計測する計量装置と、前記検査対象物のX線像を撮影するX線装置とを加え、前記制御手段は、前記危険物の判定結果が危険物有りのとき、前記計量装置とX線装置から前記検査対象物の重量とX線像とを取り込んで前記通信手段を介して通信回線に出力し、該通信回線を介して前記通信手段により受信される前記危険物の対応処置ガイドを前記表示手段に表示することができる。
(支援システム)
本発明の支援システムは、危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段によって分析条件が異なる2段の分析処理のうち、第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物有りのときに、第2段目の分析処理を実行して前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込み、該第2段目の質量分析データと危険物判定に係る第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定する構成とすることができる。
【0023】
また、これに代えて、本発明の支援システムは、危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段により分析条件が異なる2段の分析処理によって得られる第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段と、第2段目の質量分析データを第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定する第2の判定手段とを有してなり、前記制御手段は、前記端末システムから第1段目の質量分析データを前記通信回線を介して受信したとき該第1段目の質量分析データを前記第1の判定手段に判断させ、該第1の判定手段の判定結果が危険物有りのとき、第2段目の分析処理を実行させる指令を前記端末システムのアドレスを付してして前記通信回線に出力し、これに応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込んで前記第2の判定手段に判断させるものとすることができる。
【0024】
また、上記の支援システムに、前記危険物の判定結果が危険物有りのとき、前記通信手段を介して前記通信回線により受信される前記危険物の重量とX線像と、前記危険物の種類、形態、危険物の収納容器とに基づいて、危険物の対応処置ガイドを作成する処置ガイド作成手段を加え、前記制御手段は、前記対応処置ガイドを前記通信手段を介して前記通信回線に出力させることができる。
(セキュリティシステム)
本発明のセキュリティシステムは、上記の端末システムと支援システムとを通信回線等で結合することにより構成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、セキュリティシステムの導入が容易になり、社会の安全を向上することができる。また、検査スピードが向上するとともに、信頼性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を爆発物検査に適用してなる一実施の形態について、図1〜図10を用いて説明する。図1は本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態の構成概念図、図2はセキュリティシステムの一実施形態のブロック構成図である。
【0027】
図1に示すように、セキュリティシステムは、ユーザである空港などの手荷物検査場に設置する端末システム1と、セキュリティサービス事業の事業所であるサービス会社に設置する支援システム2とから構成される。それらの端末システム1と支援システム2は、通信回線3を介して相互に情報を送受可能に形成されている。端末システム1は、検査対象である手荷物4から漏れ出る微量なガスを周囲の空気と一緒に吸引するガス吸引配管5と、危険物の検査結果などの情報が表示される表示部15とを備えて構成されている。また、検査場には、X線装置7が備えられており、ベルトコンベア8上を搬送される手荷物4のX線像を撮影して、金属等を透視するようになっている。
【0028】
図2を参照して、セキュリティシステムの構成と動作概要を説明する。検査対象ガスはガス吸引配管5を介して端末システム1のガスサンプリング部11に導かれる。ガスサンプリング部11によりサンプリングされたガスは、質量分析部12に導かれ、サンプリングガスの質量分析が行なわれる。質量分析部12による質量分析データは演算制御部13を介して爆発物判定部(I)14に送られる。爆発物判定部(I)14は、質量分析データを基準データIと照合し、サンプリングガスに爆発物成分が含まれているか否か、また爆発物が含まれている場合はその種類について、1段目の判定をする(MS1)。この判定結果は、演算制御部13に出力されて表示部15に表示される。また、爆発物有りの判定結果のときは、演算制御部13は質量分析部12に指令を送り、分析条件を変えて2段目の分析を行なわせる。質量分析部12から出力される2段目の質量分析データは、演算制御部13により、通信部17を介して通信回線3に出力される。通信部17は、周知のように、送信するデータを所定の送信フォーマットに生成すると共に、宛先のアドレスを付して通信回線3に出力する。また、通信部17は、通信回線3上のデータに自己宛のアドレスが付されているときは、そのデータを取り込むようになっている。なお、必要に応じて、データを暗号化・復号化する機能をもたせることが好ましい。また、演算制御部13は、X線装置7から手荷物のX線像を、計量装置8から手荷物の重量データを取り込むようになっている。
【0029】
端末システム1の通信部17から送信される2段目の質量分析データは、通信回線3を介して支援システム2の通信部21に取り込まれ、演算制御部22を介して爆発物判定部(II)23に送られる。爆発物判定部(II)23は、2段目の質量分析データを基準データIIと照合し、サンプリングガスに爆発物の成分が含まれているか否か、また爆発物が含まれている場合はその種類について、2段目の判定をする(MS2)。この2段目の判定結果は、演算制御部22及び通信部21を介して端末システム1に送信され、端末システム1の表示部15に表示されるようになっている。なお、通信部21は端末システム1の通信部17と同様の機能を有して構成されている。また、支援システム2には、データベース24、処置ガイド部25及び入力部26が備えられている。データベース24は、図3に示すように、質量スペクトルデータ(MS1)、質量スペクトルデータ(MS2)、質量分析データ(MS1)、質量分析データ(MS2)、メンテナンス・管理データ、課金データ、等のデータが格納されるようになっている。
【0030】
ここで、本実施形態の質量分析部12には、図4に示すイオントラップ型の質量分析計が適用されている。質量分析部12は、サンプルガス導入部31、減圧室32、高真空室33を備えて構成されている。サンプルガス導入部31は、サンプルガス流路34の入口から検査対象ガス30を真空ポンプなどにより吸引する。一方、サンプルガス流路34に開口された孔36に臨ませて針電極35が配置されている。針電極35は、コロナ放電により電子を放出し、大気中の酸素をイオン化(1次イオン化)する。検査対象ガス30中に爆発物に固有の成分が含まれていると、イオン化した酸素が爆発物固有の分子と反応してイオン化(2次イオン化)する。このようにして大気圧下で生成された爆発物固有のイオンは、サンプルガス流路34に開口された孔37と減圧室32に開口された孔38を通って減圧室32に導かれ、さらに孔38を通って真空室33に導入される。真空室33に導入された爆発物固有のイオンは、イオン収束部40を通ってイオントラップ部41に流入される。イオントラップ部41は、2つのエンドキャップ電極と1つのリング電極より構成される。これら3つの電極に挟まれた空間にイオン化された検査対象ガスのイオンが導入されると、そのイオンはリング電極に印加された高周波電圧によって形成される電場に閉じ込められる(つまり、トラップされる。)。トラップされたイオンはエンドキャップ電極に印加されている別の高周波電圧を走査することによって質量順に放出され、これをイオン検出器43によって検出することによってスペクトルを得ることができる。イオンは電場中に溜め込まれ、一定時間後(例えば、数十msecオーダー)に放出されるという一種の積算効果によって、高感度化が達成されている。
【0031】
このようにして得られたサンプルガスの質量スペクトルデータを分析して、サンプルガス中に含まれる爆発物等の危険物に固有の質量スペクトルの有無により、爆発物等の危険物の有無の判定と、その種類を同定することができる。この方式による爆発物の検知に要する時間は数秒(例えば、3〜8秒)である。特に、爆発物固有のイオン(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンにヘリウムガスを衝突させて親イオンの運動エネルギを内部エネルギに変換することにより、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を生成し、娘イオンを検出する多重分析(MS/MS)を適用することにより、一層信頼性が向上する。
【0032】
つまり、1段目(MS1)の質量分析において爆発物固有のイオン(親イオン)に係る質量スペクトルを測定し、このMS1の質量分析データに基づいて爆発物の有無を判定する。さらに信頼性を高めるために、2段目(MS2)の質量分析において娘イオンに係る質量スペクトルを測定し、MS2の質量分析データに基づいて爆発物の有無を判定して、信頼性を向上するようにしている。
【0033】
上記のように構成されるセキュリティシステムの詳細構成及び動作について、図5〜図9に示したフローチャートに沿って説明する。図5は、端末システム1の処理手順を示し、図6は、支援システム2の処理手順を示している。
【0034】
端末システム1は、入力部16から演算制御部13に入力される検査開始指令に応動して一連の処理を開始する。演算制御部13は、ガスサンプリング部11に指令を送り、所定量の検査対象ガスをサンプリングさせる(S1)。サンプリングガスは質量分析部12に流入され、質量分析部12は図4で説明した手順に従って1段目(MS1)の質量分析を実行する(S2)。MS1の分析により、サンプルガスを構成する成分の質量スペクトルが質量分析データとして得られる。例えば、質量分析部12は爆発物固有のイオン成分(親イオン)の質量分析データを出力する。演算制御部13は質量分析データを取り込んで爆発物判定部(I)14に送る(S3)。爆発物判定部(I)14は、予め設定されている爆発物固有のイオン成分(親イオン)の質量に対応した基準データIを保有している。そして、爆発物判定部(I)14は、入力される質量分析データを基準データIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S4)。その判定結果は演算制御部13を介して表示部5に表示される。その判定結果が「爆発物無し」のときは、演算制御部13は処理を終了する(S6)。
【0035】
一方、判定結果が「爆発物有り」のとき、演算制御部13は質量分析部12に2段目(MS2)の分析を実行する指令を送る(S6)。これに応答して、質量分析部12はMS2の分析を実行する(S7)。ここで、前述したように、MS2の分析はMS1の分析でトラップされているイオン混合物中のイオン成分(親イオン)のみをイオン混合物から分離し、その親イオンを活性化した後、その親イオンに由来するフラグメントイオン(娘イオン)を検出する操作である。これにより、爆発物の判定に係る信頼性を向上することができる。
【0036】
MS2の質量分析データは、制御演算部13を介して通信部17に送られる。通信部17は、支援システム2宛の送信フォーマットに、MS2の判定実行指令とMS2の質量分析データを書き込んで通信回線3に出力する(S8)。
【0037】
支援システム2宛に送信されたMS2の判定実行指令と質量分析データは、通信回線3を介して支援システム2の通信部21により受信される。支援システム2は、図6に示すように、演算制御部22においてMS2判定実行指令の受信を確認すると(S11)、MS2の質量分析データを取り込んで爆発物判定部(II)23に送る(S12)。爆発物判定部(II)23は、予め設定されている爆発物固有のフラグメントイオン(娘イオン)の質量に対応した基準データIIを有している。そして、爆発物判定部(II)23は、入力されるMS2の質量分析データを基準データIIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S13)。その判定結果は演算制御部22を介して通信部21に送られ、端末システム1宛の送信フォーマットに、MS2の判定結果を書き込んで通信回線3に出力する(S14)。また、契約で予め定めている場合は、MS2の判定報告をデータベース24の課金データとともに登録する(S14)。なお、契約に応じて、判定費用の課金データを端末システム1に送るようにすることもできる。
【0038】
図5に戻って、端末システム1宛に送信されたMS2の判定結果は、通信回線3を介して端末システム1の通信部17により受信される(S9)。そして、演算制御部22は、MS2の判定結果を表示部15に表示させる(S10)。これらの一連の処理により、爆発物検査の処理は終了する。MS2の判定結果が、「爆発物有り」の場合は、後述する処置ガイドの機能が動作することになる。
【0039】
上述したセキュリティシステムによれば、質量分析方式により爆発物を検知しているから、十分に短い検査時間で、かつ信頼性の高い検知を行わせることができる。また、爆発物の検知を2段階の多重分析(MS1/MS2)により行なうシステムを採用していることから、MS1の判定結果が「爆発物無し」の場合は検査を終了することができ、検査時間を短縮して検査場の渋滞回避に寄与することができる。
【0040】
特に、爆発物判定部(I)14を端末システム1に備えていることから、「爆発物無し」の場合は支援システム2との通信時間が不要となるので、検査のスピードアップに有効である。なお、MS1の判定結果が疑わしい場合は、MS2の分析を実行して再判定を行なうようにしているから、信頼性を一層向上させることができる。
【0041】
図7に、MS2の判定結果が「爆発物有り」の場合の処置手順を示す。図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
(S21)
【0042】
端末システム1は、支援システム2から「危険物有り」の判定結果を受信した際、X線装置7と、計量装置7に指令を送り、検査対象物の手荷物4に係る重量及びX線像(形態情報)の記録の送信を求め、それらのデータを収集する。なお、記録が無い場合は、手荷物4の計量及びX線撮影の実行を要求する。収集した重量及びX線像は通信部17を介して支援システム2に送信する。通信部17の送信処理は前述と同様である。
(S22)
【0043】
支援システム2の通信部21は、手荷物4の重量及びX線像を受信して演算制御部22に送る。演算制御部22は、処置ガイド部25に手荷物4の重量とX線像及び爆発物判定部(II)23の判定結果である爆発物の種類と共に指令を送り、爆発物を有する手荷物4の処置についてのガイダンスの作成を要求する。処置ガイド部25は、手荷物4の重量とX線像とから爆発物重量を割りだし、爆発物の種類を考慮して、爆発の威力を推定する。この場合、X線像の画素を解析して、信管、雷管等の起爆装置の有無を判定する。このようにして得られたデータに基づいて、手荷物4に対する対応処置のガイダンスを作成する。作成した処置ガイダンスは、演算制御部22により通信部21を介して、端末システム1に送信される。処置ガイダンスには、例えば、次の内容が盛り込まれる。
【0044】
(1)爆発物の組成に関する情報、その名称(通称又は一般名)
(2)処置方法
1.退避の必要性
2.検査対象物を防護容器等に収納する必要の有無
3.所持者身柄拘束の必要の有無
4.関係機関への連絡、通報の必要の有無
これらの処置ガイダンスは、爆発物の組成及び種類に応じて、必要の有無が判断される。また、処置が必要な場合は、優先順位が付される。
(S23、S24)
【0045】
端末システム1は、処置ガイダンスを受信して、表示部15に出力表示する。また、印刷出力することもできる。これにより、検査員は表示部15に表示された処置ガイダンスに従って、退避や防護措置を講ずることにより、人身等の安全を確保することができる。なお、検査場に、防護シェルタ等の爆発に対する防護設備が備えられている場合は、その防護シェルタを自動的に動作させて爆発物の入った手荷物を覆って、人身を隔離することができる。
【0046】
このように処置ガイド部23を支援システム2に備えることにより、端末システム1のユーザは、爆発物についての専門的知識が不足していても、表示部15に処置ガイダンスが表示されるから、適切な対応処置を講ずることができる。
【0047】
図8に、端末システム1の運転状態等を管理する処理手順のフローチャートを示す。図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
(S31)
【0048】
支援システム2の演算制御部13は、通常の運転状態における各部の動作等を含む状態データを定期的に収集する。そして、収集した運転状態データを通信部17を介して支援システム2に送信する。
(S32)
支援システム2は、端末システム1の運転状態データを受信し、データベースに格納する。
(S33)
【0049】
演算制御部22は、データベース24に格納されているメンテナンス・管理データに従って、端末システム1の運転状態データをチェックし、異常の有無を確認し、データベースに登録する。
(S34,S35)
【0050】
端末システム1の異常を発見した場合は、メンテナンス・管理データに格納されている異常に対応する点検・調整要領を抽出し、端末システム1に送信する。端末システム1は、送られた点検・調整要領に従ってシステムを点検すると共に、調整を行なう。なお、必要な場合は、セキュリティサービス会社から点検員を派遣する。
【0051】
このようにして、端末システム1を備えたユーザは、運転管理の知識が不足していても、セキュリティサービス会社の支援システム2による支援を受けることができ、安心して検査業務に専念することができる。
【0052】
図9に、データベース24の更新処理のフローチャートを示す。爆発物は前述したように代表的な種類のものが基本となるが、通常、様々な改変がなされることが多い。したがって、爆発物の判定に係る基準データI、II及びMS2の分析条件等を変更する必要が生ずる。そこで、このような場合に対応するため、図9に示すようなデータベース更新機能を備えることが好ましい。同図において、端末システム1の処理ブロックは一重線で示し、支援システム2の処理ブロックは二重線で示している。
【0053】
同図に示すように、支援システム2は、爆薬メーカなどから、オンライン又は他の通信手段によりデータベース更新情報を入手すると(S41)、自己のデータベース24のデータを更新すると共に、その更新データが端末システム1に関係するものであれば、端末システム1にデータ更新指示を送信する(S42)。これに応答して、端末システム1はデータ更新指示を受信すると、基準データIの変更の場合は、爆発物判定部(I)14にアクセスして基準データIを更新する。また、MS1又はMS2の分析条件の変更である場合は、質量分析部12にアクセスしてそれらの分析条件を更新する(S43)。そして、更新が終了したら、更新完了報告を支援システム2に送信する(S44)。支援システム2は、データベースの更新完了報告を受けとって確認し、処理を終了する(S45)。
【0054】
次に、図10に、図2のセキュリティシステムを適用してなるセキュリティサービス事業の一実施形態の概念図を示す。図示のように、本実施形態は、セキュリティサービス事業者の一事業所であるサービス会社51を中心に、ユーザ52、検知システム提供者53、爆薬メーカ54、公的機関等の関係機関55が、有機的な関係で結合されている。サービス会社51は、ユーザ52の検査場に設置された端末システムの運用に際して、危険物(爆発物)の検査、判定及び処置について種々のサービス、保守・点検等の管理業務の役務を支援し、これに対して契約で定めた費用を受ける。また、サービス会社51は、検知システム提供者53からデータベース更新情報の提供を受け、その費用を検知システム提供者53に支払う。さらに、サービス会社51は、爆薬メーカ54から爆発物等の危険物の処置システム(例えば、防護装置等)の提供を受け、その購入費用を爆薬メーカ54に支払う。さらに、サービス会社51は、法律の規定に従って、爆発物について知り得た情報、つまり爆発物検知情報、爆発物の種類及び量などの爆発物特定情報を、所轄の関係機関55に通報する。
【0055】
また、この例では、検知システム提供者53が端末システムの検知システムをユーザ52に提供し、その購入費用を受ける。爆薬メーカ54は、検知システム提供者53に対し、検知システムのデータベースの更新や、システムの改良にかかわる情報として、爆発物情報及び試料などを提供する。これに対し、検知システム提供者53は、爆発物検知のアルゴリズム及びデータベースを提供する。また、爆薬メーカ54は、関係機関55から改変された爆発物の情報の提供を受けて、セキュリティシステムに反映すべく、種々の情報及びデータベース等の変更をサービス会社51及び検知システム提供者53に通知する。
【0056】
図11に、本発明のセキュリティシステムに係る他の実施形態のブロック構成図を示し、図12及び図13に、その処理手順のフローチャートを示す。それらの図に示すように、本実施形態が図2〜図9に示した実施形態と異なる点は、端末システム1の爆発物判定部(I)14を、支援システム2に移したことにある。支援システム2の爆発物判定部(I)27は、爆発物判定部(I)14と何ら機能的に異なるものではない。
【0057】
本実施形態によれば、図12、図13及び図6のフローチャートに示すように、MS1、MS2の分析データは、いずれも支援システム2に伝送され、支援システム2はMS1とMS2の分析データに対する判定の双方を行なう。
【0058】
すなわち、端末システム1は、入力部16から演算制御部13に入力される検査開始指令に応動して一連の処理を開始する。演算制御部13は、ガスサンプリング部11に指令を送り、所定量の検査対象ガスをサンプリングさせる(S61)。サンプリングガスは質量分析部12に流入され、図4で説明した手順に従って1段目(MS1)の質量分析を実行する(S62)。MS1の分析により得られる質量分析データは、制御演算部13により、MS1判定実行指令と共に支援システム2に送信される(S63)。
【0059】
支援システム2は、図13に示すように、MS1判定実行指令を受信したとき(S71)、質量分析データを爆発物判定部(I)27に送って判定を実行させる(S72)。爆発物判定部(I)27は、入力される質量分析データを基準データIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S73)。その判定結果は演算制御部22を介して端末システム1に送信される(S74)。このとき、演算制御部22は、判定結果と課金データをデータベース24に格納する。また、課金データは端末システム1にも送信される。
【0060】
図12に戻って、端末システム1はMS1判定結果を受信し(S64)、その結果を表示部15に表示する(S65)。そして、MS1の判定結果が「爆発物無し」のときは、演算制御部13は処理を終了し、判定結果が「爆発物有り」のときは質量分析部12に2段目(MS2)の分析を実行する指令を送る(S66)。これに応答して、図1実施形態と同様に、質量分析部12はMS2の分析を実行する(S67)。MS2の質量分析データとその判定実行指令は、通信部17を介して支援システム2に送信される(S68)。
【0061】
これに応答して、支援システム2は、図6に示すように、演算制御部22においてMS2判定実行指令の受信を確認すると(S11)、MS2の質量分析データを取り込んで爆発物判定部(II)23に送る(S12)。爆発物判定部(II)23は、入力されるMS2の質量分析データを基準データIIと照らし合わせ、一致する成分の有無を判定する(S13)。その判定結果は演算制御部22を介して通信部21に送られ、MS2の判定結果が通信回線3に出力される(S14)。このとき、契約で予め定めている場合は、MS2の判定報告をデータベース24の課金データとともに登録する(S14)。なお、契約に応じて、判定費用の課金データを端末システム1に送るようにすることもできる。
【0062】
図12に戻って、端末システム1の演算制御部22は、MS2の判定結果を通信回線3を介して受信し(S69)、MS2の判定結果を表示部15に表示させる(S70)。これらの一連の処理により、爆発物検査の処理は終了する。MS2の判定結果が、「爆発物有り」の場合は、図7で説明した処置ガイドの機能が動作することになる。
【0063】
したがって、本実施形態によれば、図2に示した実施形態と同様の効果を奏するとともに、爆発物判定に係る基準データI及び基準データIIのいずれも、サービス会社所有の支援システム2に収められることから、爆発物判定(I)に係るノウハウ等の秘密情報の漏洩を回避することができるという利点がある。
【0064】
上述した図2又は図11の実施形態においては、MS1の判定結果が危険物有りのときに、演算制御部13又は演算制御部22から質量分析部12にMS2の実行指令を出力するようにした。爆発物検知に適用する場合は、本発明はこれに限らず、予め質量分析部12に対し、MS1とMS2の質量分析を連続して行なわせるようにしてもよい。爆発物の場合は、MS1の質量分析結果を待たなくても、MS2の分析条件を特定できるからである。この場合、演算制御部13は連続して質量分析部12から出力される質量分析データI、IIを一旦蓄積しておき、MS1の判定結果が危険物有りのときに、質量分析データIIを爆発物判定部(II)に出力するようにする。
【0065】
図14に、本発明のセキュリティシステムの他の実施形態の概念図を示す。本実施形態は、一般の場所における不審物のセキュリティシステムに適用する場合の例であり、端末システム1及び支援システム2は、図2〜図9の実施の形態と同じである。図示のように、端末システム1により手提げ袋9の周囲空気を吸引配管で吸い込み、危険物の有無等を検知するようにしている。この様な場合、X線装置を常に設備しているところは少ないので、可般式のX線装置10をサービス会社から提供することを想定している。
【0066】
上記の各実施形態は、爆発物を検知対象にしたセキュリティシステムを説明したが、本発明はこれに限らず、いわゆる危険物の検査及び処置を対象としたセキュリティサービス事業に適用できる。危険物としては、爆発物のほか、火薬類、毒ガス類、可燃性物質等、一般に人や社会に危害を及ぼす物質が対象となる。これらの物質の有無および種類の判定は、上述した爆発物と同様に、質量分析により、それらの物質固有のイオン成分を検知することにより行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態の構成概念図を示す。
【図2】本発明に係るセキュリティシステムの一実施形態のブロック構成図である。
【図3】図2の実施形態のデータベース24の一実施形態を示す図である。
【図4】イオントラップ型の質量分析計を適用してなる質量分析部の構成を説明する図である。
【図5】端末システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図6】支援システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図7】端末システムの演算制御部の処置ガイダンスに係る処理フローチャートである。
【図8】支援システムの演算制御部の処置ガイダンスに係る処理フローチャートである。
【図9】セキュリティシステムのデータベース更新に係る処理フローチャートである。
【図10】本発明のセキュリティシステムを適用してなるセキュリティサービス事業の一実施形態の概念図を示す。
【図11】本発明に係るセキュリティシステムの他の実施形態のブロック構成図である。
【図12】図11実施形態の端末システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図13】図11実施形態の支援システムの演算制御部の処理フローチャートである。
【図14】本発明のセキュリティシステムの他の実施形態の概念図を示す。
【符号の説明】
【0068】
1 端末システム
2 支援システム
3 通信回線
4 手荷物
5 ガス吸引管
7 X線装置
11 ガスサンプリング部
12 質量分析部
13 演算制御部
14 爆発物判定部(I)
15 表示部
17 通信部
21 通信部
22 演算制御部
23 爆発物判定部(II)
24 データベース
25 処置ガイド部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムであって、
前記端末システムは、検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該サンプリングガスの分析を行う分析手段と、第1の基準データを有し該分析された分析データに基づいて危険物について判定を行う第1の判定手段と、前記支援システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、表示手段と、端末システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記支援システムは、前記端末システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、危険物の判定に関するデータを少なくとも格納したデータベースと、前記端末システムから受信した分析データと前記データベースに格納された基準データとを比較して危険物について判定を行う第2の判定手段と、支援システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記端末システムの第1の判定手段は、第1の基準データを有し、前記分析データと前記第1の基準データとを照合して危険物の有無を判定する第1段目の判定処理を行い、
該第1段目の判定処理の結果、危険物有りと判定した場合には、前記端末システムの制御手段は、前記分析手段において第2の分析処理を実行させ、該第2の分析データを前記通信手段を介して前記支援システムに送信し、
前記支援システムの第2の判定手段は第2の基準データを有し、前記端末システムから通信手段を介して受け取った第2の分析データと前記第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類について第2段目の判定処理を行うことを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項2】
前記サンプリング手段は、検査対象物の周辺の空気を採取するものであり、前記分析手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングされた空気中の危険物を分析する質量分析手段であることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティシステム。
【請求項3】
前記質量分析手段は、イオントラップ型の質量分析を行うものであり、サンプルガス導入部と、減圧室と、高真空室とを備え、サンプルガス導入部においては、コロナ放電による電子の放出により採取した空気中の酸素をイオン化し、該イオン化した酸素を爆発物固有の分子と反応させてイオン化することでトラップし、前記高真空室のイオン検出器で検出することによって質量スベクトルを得ることを特徴とする請求項2に記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記第1の基準データは、前記爆発物固有のイオン成分の質量に対応した基準データであり、前記第1の判定手段においては、第1段目の判定処理として、質量分析データと前記第1の基準データとを照合して該爆発物固有のイオン成分の有無を判定することを特徴とする請求項3に記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
前記第2の基準データは、前記第2の分析処理において前記爆発物固有のイオンをイオン混合物から分離したデータに、ヘリウムガスを衝突させてその運動工ネルギを内部エネルギに変換することにより生成したフラグメントイオンの質量に対応した基準データであり、前記第2の判定手段においては、第2段日の判定処理として、第2段目の質量分析データと前記第2の基準データとを照合して該爆発物の有無及び種類についてより確実性の高い判定を行うこと特徴とする請求項4に記載のセキュリティシステム。
【請求項6】
前記端末システムは、検査対象物の重量を計測する計量装置と、前記検査対象物のX線像を撮影するX線装置とをさらに備え、前記端末システムの制御手段は、前記第1段目の判定結果が危険物有りのとき、前記計量装置およびX線装置から前記検査対象物の重量とX線像とを取り込んで前記通信手段を介して前記支援システムに送信することを特徴とする請求項1に記戦のセキュリティシステム。
【請求項7】
前記支援システムは、処置ガイダンス部をさらに有し、第2段回の判定処理結果及び前記端末システムより受信した検査対象物の重量及びX線像とに基づいて、前記検査対象物に対する対応処置のガイダンスを作成し、前記通信手段を介して前記端末システムに送信し、
前記端末システムの制御手段は前記表示手段に該受信したガイダンスを表示することを特徴とする請求項6に記載のセキュリティシステム。
【請求項8】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムにおける前記端末システムであって、
検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該サンプリングされた検査対象のガスの分析を行う分析手段と、基準データを有し該分析された分析データに基づいて危険物について判定を行う判定手段と、前記支援システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、表示手段と、端末システムの各部を制御する制御手段とを有し、前記判定手段は、基準データを有し、前記分析データと前記基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定する判定処理を行い、
該判定処理の結果、危険物有りと判定した場合には、制御手段は、前記分析手段において第2の分析処理を実行させ、該第2の分析データを前記通信手段を介して前記支援システムに送信することを特徴とするセキュリティシステムにおける前記端末システム。
【請求項9】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムにおける前記支援システムであって、
前記端末システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、危険物の判定に関するデータを少なくとも格納したデータベースと、前記端末システムから受信した分析データと前記データベースに格納された基準データとを比較して検査対象物の危険物について判定を行う判定手段と、支援システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記端末システムにおける第1段目の判定処理の結果、危険物有りと判定した場合に前記端末システムより送信されてくる分析データを受信し、
前記判定手段は基準デー夕を有し、前記端末システムから通信手段を介して受け取った分析データと前記基準データとを照合して危険物の有無及び種類について第2段目の判定処理を行うことを特徴とするセキュリティシステムにおける支援システム。
【請求項10】
危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、
前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、
前記質量分析手段の第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データと第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段を備え、
前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせるとともに、該分析処理により分析された第1段目の質量分析データについて危険物の有無を前記第1の判定手段に判定させ、
該第1の判定手段による判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせるとともに、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データの判定実行指令を支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記支援システムの第2の判定手段により前記第2段目の質量分析データと第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類についての判定結果を前記通信回線から前記通信手段を介して取り込んで、該判定結果を前記表示手段に表示させる機能を備えてなるセキュリティシステムの端末システム。
【請求項11】
危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムが接続された通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、
前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段によって実行される分析条件が異なる2段の分析処理のうち、第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物有りのとき、前記制御手段を介して第2段目の分析処理の実行指令を前記端末システムのアドレスを付して前記通信回線に出力し、
該実行指令に応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込み、該第2段目の質量分析データと危険物判定に係る第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定するセキュリティシステムの支援システム。
【請求項12】
危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、
前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、
前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせ、該第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データの判定実行指令を支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記支援システムから返信される前記第1段目の質量分析データについての危険物の有無の判定結果を前記通信手段を介して前記通信回線から取り込んで前記表示手段に表示させ、
前記第1段目に係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせ、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データの判定実行指令を前記支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第2段目の質量分析データについての危険物の有無及び種類の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させる機能を備えてなるセキュリティシステムの端末システム。
【請求項13】
危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、
前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段により分析条件が異なる2段の分析処理によって得られる第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段と、第2段目の質量分析データを第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定する第2の判定手段とを有してなり、
前記制御手段は、前記端末システムから第1段目の質量分析データを前記通信回線を介して受信したとき該第1段目の質量分析データを前記第1の判定手段に判断させ、該第1の判定手段の判定結果が危険物有りのとき、第2段目の分析処理の実行指令を前記端末システムのアドレスを付してして前記通信回線に出力し、該実行指令に応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込んで前記第2の判定手段に判断させるセキュリティシステムの支援システム。
【請求項1】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムであって、
前記端末システムは、検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該サンプリングガスの分析を行う分析手段と、第1の基準データを有し該分析された分析データに基づいて危険物について判定を行う第1の判定手段と、前記支援システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、表示手段と、端末システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記支援システムは、前記端末システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、危険物の判定に関するデータを少なくとも格納したデータベースと、前記端末システムから受信した分析データと前記データベースに格納された基準データとを比較して危険物について判定を行う第2の判定手段と、支援システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記端末システムの第1の判定手段は、第1の基準データを有し、前記分析データと前記第1の基準データとを照合して危険物の有無を判定する第1段目の判定処理を行い、
該第1段目の判定処理の結果、危険物有りと判定した場合には、前記端末システムの制御手段は、前記分析手段において第2の分析処理を実行させ、該第2の分析データを前記通信手段を介して前記支援システムに送信し、
前記支援システムの第2の判定手段は第2の基準データを有し、前記端末システムから通信手段を介して受け取った第2の分析データと前記第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類について第2段目の判定処理を行うことを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項2】
前記サンプリング手段は、検査対象物の周辺の空気を採取するものであり、前記分析手段は、前記サンプリング手段によりサンプリングされた空気中の危険物を分析する質量分析手段であることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティシステム。
【請求項3】
前記質量分析手段は、イオントラップ型の質量分析を行うものであり、サンプルガス導入部と、減圧室と、高真空室とを備え、サンプルガス導入部においては、コロナ放電による電子の放出により採取した空気中の酸素をイオン化し、該イオン化した酸素を爆発物固有の分子と反応させてイオン化することでトラップし、前記高真空室のイオン検出器で検出することによって質量スベクトルを得ることを特徴とする請求項2に記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記第1の基準データは、前記爆発物固有のイオン成分の質量に対応した基準データであり、前記第1の判定手段においては、第1段目の判定処理として、質量分析データと前記第1の基準データとを照合して該爆発物固有のイオン成分の有無を判定することを特徴とする請求項3に記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
前記第2の基準データは、前記第2の分析処理において前記爆発物固有のイオンをイオン混合物から分離したデータに、ヘリウムガスを衝突させてその運動工ネルギを内部エネルギに変換することにより生成したフラグメントイオンの質量に対応した基準データであり、前記第2の判定手段においては、第2段日の判定処理として、第2段目の質量分析データと前記第2の基準データとを照合して該爆発物の有無及び種類についてより確実性の高い判定を行うこと特徴とする請求項4に記載のセキュリティシステム。
【請求項6】
前記端末システムは、検査対象物の重量を計測する計量装置と、前記検査対象物のX線像を撮影するX線装置とをさらに備え、前記端末システムの制御手段は、前記第1段目の判定結果が危険物有りのとき、前記計量装置およびX線装置から前記検査対象物の重量とX線像とを取り込んで前記通信手段を介して前記支援システムに送信することを特徴とする請求項1に記戦のセキュリティシステム。
【請求項7】
前記支援システムは、処置ガイダンス部をさらに有し、第2段回の判定処理結果及び前記端末システムより受信した検査対象物の重量及びX線像とに基づいて、前記検査対象物に対する対応処置のガイダンスを作成し、前記通信手段を介して前記端末システムに送信し、
前記端末システムの制御手段は前記表示手段に該受信したガイダンスを表示することを特徴とする請求項6に記載のセキュリティシステム。
【請求項8】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムにおける前記端末システムであって、
検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該サンプリングされた検査対象のガスの分析を行う分析手段と、基準データを有し該分析された分析データに基づいて危険物について判定を行う判定手段と、前記支援システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、表示手段と、端末システムの各部を制御する制御手段とを有し、前記判定手段は、基準データを有し、前記分析データと前記基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定する判定処理を行い、
該判定処理の結果、危険物有りと判定した場合には、制御手段は、前記分析手段において第2の分析処理を実行させ、該第2の分析データを前記通信手段を介して前記支援システムに送信することを特徴とするセキュリティシステムにおける前記端末システム。
【請求項9】
危険物の検査場に設置される端末システムと、該端末システムと通信回線を介して接続された支援システムとからなり、危険物の有無及び危険物の種類の判定を行うセキュリティシステムにおける前記支援システムであって、
前記端末システムと通信回線を介して通信を行う通信手段と、危険物の判定に関するデータを少なくとも格納したデータベースと、前記端末システムから受信した分析データと前記データベースに格納された基準データとを比較して検査対象物の危険物について判定を行う判定手段と、支援システムの各部を制御する制御手段とを有し、
前記端末システムにおける第1段目の判定処理の結果、危険物有りと判定した場合に前記端末システムより送信されてくる分析データを受信し、
前記判定手段は基準デー夕を有し、前記端末システムから通信手段を介して受け取った分析データと前記基準データとを照合して危険物の有無及び種類について第2段目の判定処理を行うことを特徴とするセキュリティシステムにおける支援システム。
【請求項10】
危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、
前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、
前記質量分析手段の第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データと第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段を備え、
前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせるとともに、該分析処理により分析された第1段目の質量分析データについて危険物の有無を前記第1の判定手段に判定させ、
該第1の判定手段による判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせるとともに、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データの判定実行指令を支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記支援システムの第2の判定手段により前記第2段目の質量分析データと第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類についての判定結果を前記通信回線から前記通信手段を介して取り込んで、該判定結果を前記表示手段に表示させる機能を備えてなるセキュリティシステムの端末システム。
【請求項11】
危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムが接続された通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、
前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段によって実行される分析条件が異なる2段の分析処理のうち、第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物有りのとき、前記制御手段を介して第2段目の分析処理の実行指令を前記端末システムのアドレスを付して前記通信回線に出力し、
該実行指令に応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込み、該第2段目の質量分析データと危険物判定に係る第2の基準データとを照合して危険物の有無及び種類を判定するセキュリティシステムの支援システム。
【請求項12】
危険物の検査場に設置され検査対象物に係る検査対象のガスを採取するサンプリング手段と、該手段によりサンプリングされた検査対象ガスを分析する質量分析手段と、通信回線を介して情報を送受する通信手段と、情報を表示する表示手段と、前記各手段を制御する制御手段とを備えてなるセキュリティシステムの端末システムであって、
前記質量分析手段は、分析条件が異なる2段の分析処理を行う機能を有して形成され、
前記制御手段は、前記検査対象ガスに対して前記質量分析手段に第1段目の分析処理を行わせ、該第1段目の分析処理により分析された第1段目の質量分析データの判定実行指令を支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記支援システムから返信される前記第1段目の質量分析データについての危険物の有無の判定結果を前記通信手段を介して前記通信回線から取り込んで前記表示手段に表示させ、
前記第1段目に係る判定結果が危険物の有りのときは、前記質量分析手段に第2段目の分析処理を行わせ、該第2段目の分析処理により分析された第2段目の質量分析データの判定実行指令を前記支援システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力し、
前記判定実行指令に応答して前記通信回線を介して前記支援システムから返信される前記第2段目の質量分析データについての危険物の有無及び種類の判定結果を前記通信手段を介して取り込んで前記表示手段に表示させる機能を備えてなるセキュリティシステムの端末システム。
【請求項13】
危険物の検査場に設置され検査対象ガスを分析する質量分析手段を備えてなる端末システムと通信回線を介して情報を送受する通信手段と、該通信手段を介して前記端末システムから送信される前記検査対象ガスの質量分析データと危険物判定に係る基準データとを照合して危険物の有無を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果に前記端末システムのアドレスを付して前記通信手段を介して前記通信回線に出力させる制御手段とを備えてなり、
前記判定手段は、前記端末システムの質量分析手段により分析条件が異なる2段の分析処理によって得られる第1段目の質量分析データを第1の基準データと比較して危険物の有無を判定する第1の判定手段と、第2段目の質量分析データを第2の基準データと比較して危険物の有無及び種類を判定する第2の判定手段とを有してなり、
前記制御手段は、前記端末システムから第1段目の質量分析データを前記通信回線を介して受信したとき該第1段目の質量分析データを前記第1の判定手段に判断させ、該第1の判定手段の判定結果が危険物有りのとき、第2段目の分析処理の実行指令を前記端末システムのアドレスを付してして前記通信回線に出力し、該実行指令に応答して前記端末システムから前記通信回線に出力される第2段目の質量分析データを前記通信手段を介して取り込んで前記第2の判定手段に判断させるセキュリティシステムの支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−133242(P2006−133242A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35129(P2006−35129)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【分割の表示】特願2001−204668(P2001−204668)の分割
【原出願日】平成13年7月5日(2001.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【分割の表示】特願2001−204668(P2001−204668)の分割
【原出願日】平成13年7月5日(2001.7.5)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]