説明

セキュリティシステム

【課題】読取装置の読取エリアを広くしても、端末器の正確な所在管理を行うことができるセキュリティシステムを提供する。
【解決手段】端末識別情報を有するタグ1と、読取エリア2aに存在するタグ1から、その端末識別情報を読み取るためのリーダ2と、読取エリア3aに存在するタグ1から、その端末識別情報を読み取るためのリーダ3と、リーダ2及び3が読み取った各端末識別情報に基づいて、タグ1の所在を管理する制御部4とを備える。制御部4は、リーダ2が読み取りを行うと、そのタグ1の所在情報をリーダ2の設置位置情報に合わせて更新する。また、制御部4は、リーダ3が読み取りを行うと、そのタグ1の所在情報とそのリーダ3の設置位置情報とが所定の条件で一致する場合に、上記タグ1の所在情報を上記リーダ3の設置位置情報に合わせて更新し、一致しない場合は、タグ1の所在情報の更新を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、端末器の所在を管理するセキュリティシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
端末器の所在を管理するシステムでは、例えば、建物内等の所定の空間を複数のエリアに分割して、そのエリア毎に読取装置を設置している。そして、この読取装置によって各人が所有する端末器からの情報を無線で読み取ることにより、上位装置が各読取装置からの読取結果を取り纏め、端末器の所在を管理している。
【0003】
このようなシステムの従来技術として、例えば、下記特許文献1に記載されたものがある。このシステムでは、執務室と廊下との往来部(ドア部分)に入退室管理用の専用リーダを設置することにより、上記専用リーダによって端末器(の所有者)の入室が検知されると、所定時間経過後に端末器からの発報を停止させるように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−76013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記読取装置は、例えば、端末器に対する質問信号を所定の範囲に送信することにより、この質問信号を受信した端末器に自機に対する応答を行わせて、端末器からの情報を読み取っている。即ち、各読取装置には、端末器から情報を読み取ることができるエリア(以下、単に「読取エリア」ともいう)がそれぞれ設定されている。
【0006】
端末器の所在を管理するシステムにおいては、各読取装置の読取エリアを広く設定することができれば、システムに必要な読取装置の台数を少なくすることができる。しかし、読取装置の読取エリアを広く設定すると、建物の床や天井、壁等が電波を十分に吸収しない場合に、読取エリアの一部が、例えば、上下の階床や隣の執務室等にも広がってしまうことがあった。かかる場合、他階床や隣の執務室等に存在する端末器の情報を読取装置が読み取ってしまう恐れがあり、正確な所在管理が実施できなくなってしまう。
【0007】
なお、特許文献1は、端末器の内蔵電池の長寿命化を実現するための方法を開示したものであり、その内容からは、上記課題を解決することはできなかった。
【0008】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、読取装置の読取エリアを広くしても、端末器の正確な所在管理を行うことができるセキュリティシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るセキュリティシステムは、自機を識別するための端末識別情報を有する端末器と、所定の第1読取エリアに存在する端末器から、その端末識別情報を無線で読み取るための第1読取装置と、第1読取エリアよりも広い所定の第2読取エリアに存在する端末器から、その端末識別情報を無線で読み取るための第2読取装置と、第1読取装置及び第2読取装置が読み取った各端末識別情報に基づいて、端末器の所在を管理する制御部と、を備え、制御部は、第1読取装置が端末器から端末識別情報を読み取ると、管理している端末器の所在情報を第1読取装置の設置位置情報に合わせて更新するとともに、第2読取装置が端末器から端末識別情報を読み取ると、端末器の所在情報と第2読取装置の設置位置情報とが所定の条件で一致する場合に、端末器の所在情報を第2読取装置の設置位置情報に合わせて更新し、所定の条件で一致しない場合は、端末器の所在情報の更新を行わないものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係るセキュリティシステムであれば、読取装置の読取エリアを広くしても、端末器の正確な所在管理を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムの適用例を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムを示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムの動作を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2におけるセキュリティシステムを示す構成図である。
【図5】この発明の実施の形態2におけるセキュリティシステムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明をより詳細に説明するため、添付の図面に従ってこれを説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムの適用例を示す図、図2はこの発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムを示す構成図である。本セキュリティシステムは、建物内等の所定の空間において、管理対象者(物)はどこに存在するのか、その管理対象者(物)はどのような経路で移動したのかといった情報を把握し、管理するためのものである。
【0014】
図1及び図2において、1は管理対象者が所持したり、管理対象物に付設されたりするタグ(端末器)である。タグ1には、自機(各タグ)を識別するための固有の端末識別情報が付されている。このタグ1は、例えば、RFIDタグ等によって構成される。
【0015】
2及び3は、タグ1の端末識別情報を読み取るためのリーダ(読取装置)である。リーダ2は、自機の読取エリア2aに存在するタグ1から、その端末識別情報を無線で読み取る機能を、リーダ3は、自機の読取エリア3aに存在するタグ1から、その端末識別情報を無線で読み取る機能を有している。なお、リーダ3がタグ1から端末識別情報を読み取ることができるエリア(読取エリア3a)は、リーダ2がタグ1から端末識別情報を読み取ることができるエリア(読取エリア2a)よりも広い範囲に設定されている。
【0016】
上記リーダ2及び3は、例えば、上記建物内等の所定の空間を複数に分割した際に、その分割されたエリア毎に設置される。そして、リーダ2及び3は、所定の質問信号を自機の読取エリア2a及び3aに対して発信することにより、この質問信号を受信したタグ1に自機に対する応答を行わせ、上記端末識別情報を含む応答信号をタグ1から受信する。また、各リーダ2及び3には、自機(各リーダ)を識別するための固有のリーダ識別情報が予め付されており、リーダ2及び3は、タグ1から端末識別情報を読み取ると、その読み取った端末識別情報と自機のリーダ識別情報とを制御部4に対して送信する。
【0017】
制御部4は本システムにおける上位装置からなり、各リーダ2及び3の読取結果を取り纏める機能を有している。即ち、制御部4は、各リーダ2及び3が読み取った端末識別情報に基づいて、各タグ1(即ち、管理対象者(物))の所在の管理を行う。また、制御部4は、必要に応じて、所定場所に設置された表示器5に、その管理内容を表示させる。なお、表示器5は、制御部4の一機能(表示部)として備えられていても良い。
【0018】
図1は本セキュリティシステムを5階建てのビジネスビルに適用した例を示したものである。図1に示すように、狭い読取エリア2aを有するリーダ2は、例えば、エレベーター乗場6や執務室の出入口に設置された扉7、非常階段の出入口に設置された扉(図示せず)等、上記ビル内においてある階床から他の階床に移動する際に必ず通行しなければならないような場所に設置されている。このリーダ2は、自機の読取エリア2aが他の階床に大きく広がることがないように、例えば、読取エリア2aが自機の設置階内に収まるように、その配置や設定が定められている。
【0019】
一方、広い読取エリア3aを有するリーダ3は、例えば、執務室等の広い場所に設置される。執務室等では、リーダ3の設置場所が制限されることも多く、リーダ3の全数或いは一部を、天井や床に近接して設置(天井や床に直接設置する場合も含む)しなければならないことがある。例えば、図1に示すものでは、1階の執務室内のリーダ3を天井に近接して、また、2階及び3階の執務室内のリーダ3を床に直接設置している。このため、1階乃至3階の執務室に設置されたリーダ3の読取エリア3aは、4階及び5階の執務室に設置されたリーダ3の読取エリア3aと比較して、他階床への広がりが大きくなっている。
【0020】
なお、4階及び5階の執務室に設置されたリーダ3の読取エリア3aは、リーダ2の読取エリア2aよりも、他階床へ大きく広がっている。
【0021】
また、上記制御部4は、タグ1から端末識別情報を読み取ったリーダがリーダ2の場合とリーダ3の場合とにおいて異なる処理を行うように構成されている。具体的に、制御部4は、リーダ2がタグ1から端末識別情報を読み取った場合は、管理しているそのタグ1の所在情報を、端末識別情報を読み取ったリーダ2の設置位置情報に合わせて更新する。
【0022】
一方、リーダ3がタグ1から端末識別情報を読み取ると、制御部4は、そのタグ1の所在情報と端末識別情報を読み取ったリーダ2の設置位置情報とが所定の条件で一致するか否かの判定を行う。そして、制御部4は、上記判定において一致する旨を判断すると、上記タグ1の所在情報をそのリーダ2の設置位置情報に合わせて更新する。また、制御部4は、上記判定において一致しない旨を判断した場合は、上記タグ1の所在情報の更新を行わない。
【0023】
このような機能を実現するため、制御部4には、情報受取部8、個人情報記憶部9、機器情報記憶部10、表示制御部11、動作制御部12が備えられている。
情報受取部8は、各リーダ2及び3からの情報(即ち、各リーダ2及び3が読み取ったタグ1の端末識別情報及びその端末識別情報を読み取った各リーダ2及び3のリーダ識別情報)を受信する機能を有している。
【0024】
個人情報記憶部9には、タグ1の各所有者に関する情報(個人情報)が記憶されている。下記表1は、個人情報記憶部9に記憶されている個人情報テーブルの一例を示したものである。
【0025】
【表1】

【0026】
表1に示すように、個人情報記憶部9には、個人情報として、例えば、個人番号(その個人が所有するタグ1の端末識別情報)、その個人の名前、所属、所在階が互いに関連付けて記憶されている。上記所在階は、個人(タグ1)の所在情報を構成するものであり、リーダ2及び3の読取結果に応じて適宜書き換えが行われる。なお、個人(タグ1)の所在をより詳細に管理する必要がある場合は、上記個人情報テーブルに所在場所の欄を追加しても良い。かかる場合、所在階と所在場所との双方が、個人(タグ1)の所在情報を構成し、リーダ2及び3の読取結果に応じて適宜書き換えられる。
【0027】
機器情報記憶部10には、各リーダ2及び3に関する情報(機器情報)が記憶されている。下記表2は、機器情報記憶部10に記憶されている機器情報テーブルの一例を示したものである。
【0028】
【表2】

【0029】
表2に示すように、機器情報記憶部10には、機器情報として、例えば、リーダ番号(リーダ識別情報)、リーダの名前、設置階、所在階書き換え(の可否)、連続読取回数が互いに関連付けて記憶されている。上記設置階は、各リーダ2及び3の設置位置情報を構成するものである。なお、個人(タグ1)の所在をより詳細に管理する必要がある場合は、上記機器情報テーブルに設置場所の欄を追加し、各リーダ2及び3の詳細な設置場所をその欄に記憶させても良い。かかる場合、設置階と設置場所との双方が、各リーダ2及び3の設置位置情報を構成する。
【0030】
また、個人情報記憶部9に記憶されている個人(タグ1)の所在情報の書き換えを行うか否かの情報は、上記所在階の書き換えの欄に記憶されている。即ち、この欄に「可」が記憶されているリーダによって端末識別情報が読み取られた場合は、個人情報記憶部9内の所在情報の書き換えが行われる。一方、この欄に「否」が記憶されているリーダによって端末識別情報が読み取られた場合は、所定の条件が成立しなければ、個人情報記憶部9内の所在情報の書き換えは行われない。本実施の形態においては、リーダ2の欄には「可」が、リーダ3の欄には「否」が記憶されている。
【0031】
表示制御部11は、表示器5の表示を制御する機能を有している。具体的に、表示制御部11は、個人情報記憶部9の記憶内容に基づき、必要に応じて、各個人の所在階(及び/又は、所在場所)を表示器5に表示させる。
【0032】
動作制御部12は、制御部4の各種動作を制御する機能を有している。具体的に、動作制御部12には書換判定部13が備えられており、この書換判定部13によって、個人情報記憶部9に記憶されているタグ1の所在情報の書き換えが必要か否かを判定する。なお、書換判定部13による上記判定は、制御部4がリーダ2及び3から受信した情報と、個人情報記憶部9及び機器情報記憶部10に記憶されている情報とに基づいて行われる。
【0033】
次に、図3も参照し、上記構成を有するセキュリティシステムの動作、特に上記制御部4の動作について説明する。図3はこの発明の実施の形態1におけるセキュリティシステムの動作を示すフローチャートである。
なお、以下においては、個人情報記憶部9に表1に示す個人情報テーブルが、機器情報記憶部10に表2に示す機器情報テーブルが記憶され、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者(三菱太郎)が1階から5階に移動する場合について具体的な説明を行う。
【0034】
制御部4では、リーダ2及び3によってタグ1の端末識別情報が読み取られたか否かを所定周期で判定している(S101)。
【0035】
端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が、エレベーターを利用して1階から5階に移動し、5階のエレベーター乗場6で降りると、5階のエレベーター乗場6の近傍に設置されたリーダ2(リーダ識別情報「0005」)によって端末識別情報の読み取りが自動的に行われる。そして、このリーダ2は、タグ1から端末識別情報を読み取ると、その読み取った端末識別情報「0001」と自機のリーダ識別情報「0005」とを制御部4に対して送信する。
【0036】
制御部4では、情報受取部8が上記リーダ2からの情報を受信すると(S101のYes)、動作制御部12により、個人情報テーブルと機器情報テーブルとに基づいて、受信した情報に該当する個人とリーダとの検索を行う(S102)。そして、この検索により、制御部4は、端末識別情報「0001」の個人(タグ1)を該当個人として、リーダ識別情報「0005」のリーダ2を該当リーダとして特定する。
なお、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者は、それまで1階にいたため、この時点において、個人情報テーブルには、上記該当個人の所在階の欄に、「1階」が書き込まれている。
【0037】
上記検索の後、制御部4では、機器情報テーブルを参照することにより、動作制御部12によって、上記該当リーダの所在階の書き換えが「可」に設定されているか否かを判定する(S103)。なお、リーダ識別情報「0005」のリーダ2については、所在階の書き換えが「可」に設定されている。このため、動作制御部12は、S102で特定した該当個人の所在階を、該当リーダの設置階に合わせて1階から5階に書き換える処理を行う(S104)。
【0038】
その後、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が、5階のエレベーター乗場6から執務室の入口まで移動すると、扉7の近傍に設置されたリーダ2(リーダ識別情報「0006」)によって端末識別情報の読み取りが自動的に行われる。そして、このリーダ2から制御部4に対して、読み取った端末識別情報「0001」と自機のリーダ識別情報「0006」とが送信されると、制御部4において上記S101乃至104に示す各処理が行われる。
【0039】
なお、リーダ識別情報「0005」のリーダ2が端末識別情報を読み取った後にリーダ識別情報「0006」のリーダ2が同じ端末識別情報を読み取った場合は、該当個人の所在階に変更は生じない。このため、かかる場合は、S104に示す処理は省略しても良い。或いは、実質的な内容の変更は生じないが、該当個人の所在階(5階)を、リーダ識別情報「0006」のリーダ2の設置階(5階)へと書き換える処理を行っても良い。
【0040】
S104の処理を行った後、制御部4では、動作制御部12より、該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致するか否かの判定を行う(S105)。S104の処理が行われた場合は、S105において常に一致する旨の判定がなされる。このため、制御部4では、動作制御部12によって認証OKを判断し、認証の成功時に行う所定の動作を実施させる(S106)。
【0041】
例えば、リーダ識別情報「0006」のリーダ2がタグ1の端末識別情報を読み取った場合、動作制御部12は、S106において5階の執務室への扉7を解錠させるための解錠信号を出力する。また、個人(タグ1)の所在をより詳細に管理している場合は、該当個人の所在情報の各項目を該当リーダの設置位置情報に合わせて更新し、該当個人の所在場所を該当リーダの設置場所に合わせて書き換える。
【0042】
その後、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が、5階の執務室に入ると、執務室に設置されたリーダ3(リーダ識別情報「0100」)によって端末識別情報の読み取りが自動的に行われる。
【0043】
制御部4では、上記リーダ3から、端末識別情報「0001」及びリーダ識別情報「0100」の各情報を受信すると(S101のYes)、上記S102及びS103に示す各処理を順次実施する。なお、この時の該当リーダ(リーダ識別情報「0100」のリーダ3)は、その所在階の書き換えが「否」に設定されている。このため、制御部4では、S104の処理を行うことなくS105に進み、動作制御部12により、該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致するか否かの判定を行う。
【0044】
この時の該当個人の所在階は、5階のエレベーター乗場6、或いは5階の執務室入口を通過する際に「5階」に書き換えられているため、S105においては一致する旨の判定がなされる。このため、動作制御部12は、S106において、例えば、該当個人の所在情報の各項目を該当リーダの設置位置情報に合わせて書き換える等の所定の処理を行う。
【0045】
一方、上述したように、執務室に設置されたリーダ3は、広い読取エリア3aを有しており、その読取エリア3aは、他階床にまで大きく広がっている場合がある。このため、所定の階床には、その階のリーダ3の読取エリア3aを含め、上階や下階に設置されたリーダ3の読取エリア3aも存在していることがある。例えば、4階の執務室に設置されたリーダ3のうち、その一部(図示せず)が執務室の天井に直接設置されているような場合は、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が5階の執務室を移動している際に、その4階のリーダ3によって端末識別情報が読み取られてしまうことがある。
【0046】
かかる場合、制御部4が、例えば、端末識別情報「0001」及びリーダ識別情報「0004」の各情報をリーダ3から受信すると、制御部4では、先ず、動作制御部12により、上記S102及びS103に示す各処理を順次実施する。なお、この時の該当リーダ(リーダ識別情報「0004」のリーダ3)は、その所在階の書き換えが「否」に設定されている。このため、制御部4では、S104の処理を行うことなくS105に進み、動作制御部12により、該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致するか否かの判定を行う。
【0047】
この時の該当個人の所在階は、5階の執務室を移動している際に「5階」に書き換えられているため、S105においては一致しない旨の判定がなされる。このため、動作制御部12は、該当個人の所在情報を書き換える等の所定の処理を行わずに、S101の処理に戻る。即ち、動作制御部12は、リーダ3が端末識別情報の読み取りを行った場合は、該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致すれば、該当リーダの検出を有効として該当個人の所在場所の各項目を更新する等の所定の動作を行い、一致しなければ該当リーダの検出を無効として処理を終了する。
【0048】
この発明の実施の形態1によれば、リーダ3の読取エリア3aを広く設定しても、誤検出を防止することができ、個人(タグ1)の正確な所在管理を行うことが可能となる。即ち、上記構成を有するセキュリティシステムであれば、他階に設置されたリーダ3によって端末識別情報の読み取りが行われた場合には、個人(タグ1)の所在情報の書き換えは行われない。このため、常に正確な所在を把握することが可能となる。
【0049】
また、かかる構成であれば、個人(タグ1)の誤検出を防止できるため、リーダ3を天井や床に設置する際に電波を吸収するための遮蔽工事が不要となり、工事費用を大幅に低減させることが可能となる。更に、リーダ3の読取エリア3aを更に広くして、その設置台数を低減させることもできる。
【0050】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2におけるセキュリティシステムを示す構成図である。図4において、制御部4には新たに読取情報記憶部14が、また、動作制御部12には、書換判定部13に加えてカウント部15が備えられている。
その他は、実施の形態1と同様の構成である。
【0051】
実施の形態1では、リーダ2が端末識別情報を読み取った場合、及び、リーダ3が端末識別情報を読み取り、且つ、そのタグ1の所在階とそのリーダ3の設置階とが一致する場合にのみ、タグ1の所在情報の更新を行った。リーダ2は、階間を移動する際に必ず通行しなければならないような場所に設置されているため、図2に示す構成でも、基本的に、個人(タグ1)の正確な所在を把握することは可能である。
【0052】
しかし、リーダ2の読取エリア2aは狭く設定されているため、通行の状態によっては、リーダ2によってタグ1の端末識別情報を読み取ることができないことも考えられる。また、執務室の入口の扉7に電気錠等を設置して、扉7を解錠するために所定のカード(タグ1)をリーダ2にかざすように構成しても、他人が扉7を解錠した際に、自分のカードをリーダ2にかざすことなくその他人と共に執務室に入室してしまうこと(共連れ)は日常的に起こり得る。更に、誤検出を防止するためにはリーダ2の設置台数を増やすことが有効であるが、システム全体のコストを抑えるために、読取エリア2aの狭いリーダ2の設置台数をなるべく減らしたいといった要求もある。
【0053】
そこで、このような課題を解決するため、本実施の形態においては、リーダ3が端末識別情報を読み取り、且つ、そのタグ1の所在階とそのリーダ3の設置階が一致しない場合であっても、更に他の所定の条件を満たした場合には、タグ1の所在情報をそのリーダ3の設置位置情報に合わせて更新するように構成する。
【0054】
上記カウント部15は、リーダ3が端末識別情報を読み取り、且つ、そのタグ1の所在階とそのリーダ3の設置階が一致しない場合の回数をカウントする機能を有している。なお、カウント部15によってカウントされた回数は、タグ1毎及びリーダ3毎に読取情報記憶部14に記憶される。そして、動作制御部12は、所定のタグ1及びリーダ3について、カウント部15によってカウントされた回数が所定の設定値に達した場合は、そのタグ1の所在階とそのリーダ3の設置階とが一致しない旨が判定された場合であっても、そのタグ1の所在情報をそのリーダ3の設置位置情報に合わせて更新する処理を行う。
【0055】
なお、機器情報記憶部10には、タグ1の所在情報の更新を行うか否かを判定するための上記設定値が、連続読取回数として予め設定されている。
【0056】
次に、図5も参照し、上記構成を有するセキュリティシステムの動作、特に上記制御部4の動作について具体的に説明する。図5はこの発明の実施の形態2におけるセキュリティシステムの動作を示すフローチャートである。図5のS201乃至S206に示す処理は、図3のS101乃至S106に示す処理と同様である。
【0057】
以下においては、個人情報記憶部9に表1に示す個人情報テーブルが、機器情報記憶部10に表2に示す機器情報テーブルが記憶され、且つ、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者(三菱太郎)が1階から5階に移動した際にリーダ2による検出が行われず、そのまま5階の執務室に入室してしまった場合について具体的な説明を行う。なお、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が5階に移動した際にリーダ2による検出が行われた場合の動作は実施の形態1と同様であるため、その具体的な説明は省略する。
【0058】
端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が5階の執務室に入ると、その執務室に設置されたリーダ3(リーダ識別情報「0100」)によって端末識別情報の読み取りが自動的に行われる。
【0059】
制御部4では、上記リーダ3から、端末識別情報「0001」及びリーダ識別情報「0100」の各情報を受信すると(S201のYes)、S202及びS203に示す各処理を順次実施する。なお、この時の該当リーダ(リーダ識別情報「0100」のリーダ3)は、その所在階の書き換えが「否」に設定されている。このため、制御部4では、S204の処理を行うことなくS205に進み、動作制御部12により、該当個人の所在階と該当リーダの設置階が一致するか否かの判定を行う。
【0060】
上述したように、この時の該当個人の所在階は、依然として「1階」が記憶されている。このため、S105においては、該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致しない旨の判定が動作制御部12によって行われる。かかる場合、制御部4では、該当リーダの検出を有効にすることなく、カウント部15によって読取回数が+1にされ、その読取結果が読取情報記憶部14に記憶される(S207)。即ち、この場合、読取情報記憶部14には、端末識別情報「0001」のリーダ識別情報「0100」に対する読取回数が「1回」として記憶される。
【0061】
次に、動作制御部12は、読取情報記憶部14に記憶されている読取回数が、該当リーダの設定値(即ち、機器情報記憶部10に記憶されている連続読取回数)以上であるか否かを判定する(S208)。なお、この時の該当リーダ(リーダ識別情報「0100」のリーダ3)は、その設定値が「3回」に設定されている。このため、制御部4では、S208においてNoの判定を行ってS201の処理へと移行し、リーダ2又は3から情報が再び送信されてくるのを待機する。
なお、この時点において、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者の所在階は、依然として「1階」が記憶されている。
【0062】
その後、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が5階の執務室内に居続け、リーダ識別情報「0100」のリーダ3によって端末識別情報が再び読み取られると、制御部4において上記と同様の処理が行われる。即ち、S207において読取回数が+1にされ、その読取結果が読取情報記憶部14に記憶される。この場合、読取情報記憶部14には、端末識別情報「0001」のリーダ識別情報「0100」に対する読取回数が「2回」として記憶される。
【0063】
なお、かかる場合であっても、読取情報記憶部14に記憶されている読取回数は該当リーダの設定値よりも小さい。このため、制御部4では、S208からS201の処理へと移行し、リーダ2又は3から情報が送信されてくるのを待機する。なお、この時点においても、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者の所在階は、依然として「1階」が記憶されている。
【0064】
更にその後、端末識別情報「0001」のタグ1の所有者が5階の執務室内に居続け、リーダ識別情報「0100」のリーダ3によって端末識別情報が読み取られると、S207において読取回数が+1にされ、読取情報記憶部14に記憶された読取回数が「3回」に更新される。かかる場合、動作制御部12は、S208において、読取情報記憶部14に記憶されている読取回数が、該当リーダの設定値以上である旨の判定を行う。
【0065】
S208においてYesの判定を行うと、動作制御部12は、読取情報記憶部14に記憶されている読取回数をクリアして(S209)、S204に移行する。即ち、S209の処理により、読取情報記憶部14に記憶された、端末識別情報「0001」のリーダ識別情報「0100」に対する読取回数は「0回」となる。
【0066】
S204に移行した後の処理は、実施の形態1と同様である。即ち、S204において該当個人の所在階が該当リーダの設置階に合わせて1階から5階へと書き換えられることにより、動作制御部12は、S205において該当個人の所在階と該当リーダの設置階とが一致する旨の判定を行う。そして、動作制御部12は、S206において、該当個人の所在情報の各項目を該当リーダの設置位置情報に合わせて更新する等の所定の動作を実施する。
【0067】
なお、制御部4では、読取情報記憶部14に「1回」が記憶されたものについては、「1回」が記憶されてから所定時間が経過するとその記憶内容をクリアするように構成しても良い。かかる構成により、リーダ3による読み取りが上記所定時間内に連続して行われた場合のみ、S208からS209を経てS204の処理に移行させることができる。
【0068】
以上の説明は、読取情報記憶部14に記憶された読取回数が設定値に達した際に、全てのリーダ3についてタグ1の所在情報の更新を行う場合についてである。
【0069】
しかし、上記所在情報の更新を全てのリーダ3について適用する必要はない。例えば、リーダ3のうち、その読取エリア3aが自機の設置階だけに広がっているもの(及び、読取エリア3aの他階床への広がりが僅かであるもの)についてのみ、上記所在情報の更新を適用しても良い。かかる場合、リーダ3のうち、読取エリア3aの他階床への広がりが大きいものについては、上記所在情報の更新を行わないように設定する。
【0070】
例えば、図1に示す例では、1階乃至3階の執務室に設置されたリーダ3は、その読取エリア3aが他階床にまで大きく広がっている。一方、4階及び5階の執務室に設置されたリーダ3は、読取エリア3aの他階床への広がりが僅かに抑えられている。このため、制御部4は、4階及び5階の執務室に設置されたリーダ3が端末識別情報を検出した場合のみ上述した処理を行い、読取情報記憶部14に記憶された読取回数が設定値に達していれば、タグ1の所在情報の更新を行う。一方、1階乃至3階の執務室に設置されたリーダ3が端末識別情報を読み取った場合、制御部4は、そのタグ1の所在情報の更新を行わない。
【0071】
このような機能は、例えば、1階乃至3階の執務室に設置されたリーダ3について、機器情報記憶部10内の所在階書き換えを「否」、連続読取回数を「−」に設定しておくことによって実現できる。これにより、1階乃至3階の執務室に設置されたリーダ3が端末識別情報を読み取った場合は、図5のS208において常にNoの判定がなされ、S209からS204の処理に移行することを防止できる。
これにより、リーダ3の設置場所や読取エリア3aの範囲(読み取り可能な距離)等に合わせた最適な設定を個別に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0072】
1 タグ(端末器)
2、3 リーダ(読取装置)
2a、3a 読取エリア
4 制御部
5 表示器
6 エレベーター乗場
7 扉
8 情報受取部
9 個人情報記憶部
10 機器情報記憶部
11 表示制御部
12 動作制御部
13 書換判定部
14 読取情報記憶部
15 カウント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自機を識別するための端末識別情報を有する端末器と、
所定の第1読取エリアに存在する前記端末器から、その端末識別情報を無線で読み取るための第1読取装置と、
前記第1読取エリアよりも広い所定の第2読取エリアに存在する前記端末器から、その端末識別情報を無線で読み取るための第2読取装置と、
前記第1読取装置及び前記第2読取装置が読み取った各端末識別情報に基づいて、前記端末器の所在を管理する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記第1読取装置が前記端末器から端末識別情報を読み取ると、管理している前記端末器の所在情報を前記第1読取装置の設置位置情報に合わせて更新するとともに、前記第2読取装置が前記端末器から端末識別情報を読み取ると、前記端末器の所在情報と前記第2読取装置の設置位置情報とが所定の条件で一致する場合に、前記端末器の所在情報を前記第2読取装置の設置位置情報に合わせて更新し、前記所定の条件で一致しない場合は、前記端末器の所在情報の更新を行わないことを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項2】
前記第1読取装置及び前記第2読取装置は、前記端末器から端末識別情報を読み取ると、その読み取った端末識別情報と自機を識別するためのリーダ識別情報とを前記制御部に対して送信し、
前記制御部は、
前記端末器の所在情報をその端末識別情報に関連付けて記憶する個人情報記憶部と、
前記第1読取装置及び前記第2読取装置の各設置位置情報をそのリーダ識別情報に関連付けて記憶する機器情報記憶部と、
前記第1読取装置及び前記第2読取装置から受信する情報と前記個人情報記憶部及び前記機器情報記憶部に記憶されている情報とに基づいて、前記個人情報記憶部に記憶されている前記端末器の所在情報の書き換えが必要か否かを判定する動作制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のセキュリティシステム。
【請求項3】
前記制御部は、前記第2読取装置が前記端末器から端末識別情報を読み取ると、前記端末器の所在階と前記第2読取装置の設置階とが一致する場合に、前記端末器の所在情報を前記第2読取装置の設置位置情報に合わせて更新し、一致しない場合は、前記端末器の所在情報の更新を行わないことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2読取装置が前記端末器の端末識別情報を読み取った時に前記所定の条件が一致しない場合の回数をカウントするカウント部と、
を備え、
前記カウント部によってカウントされた回数が所定値に達した場合は、前記所定の条件が一致しなくても、前記端末器の所在情報を前記第2読取装置の設置位置情報に合わせて更新することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
前記第2読取装置は、第3読取装置と第4読取装置とを備え、
前記制御部は、前記第2読取装置が前記端末器の端末識別情報を読み取った時に前記所定の条件が一致しない場合は、前記第3読取装置が端末識別情報の読み取りを行っていれば前記端末器の所在情報の更新を行わず、前記第4読取装置が端末識別情報の読み取りを行っていれば、前記カウント部によってカウントされた回数が所定値に達した際に、前記端末器の所在情報の更新を行う
ことを特徴とする請求項4に記載のセキュリティシステム。
【請求項6】
前記第3読取装置は、その読取エリアの他階床への広がりが、前記第4読取装置の読取エリアの他階床への広がりよりも大きく設定されたことを特徴とする請求項5に記載のセキュリティシステム。
【請求項7】
前記第3読取装置は、所定の階床の天井又は床に近接して配置されたことを特徴とする請求項5に記載のセキュリティシステム。
【請求項8】
前記第2読取装置は、前記第2読取エリアの他階床への広がりが、前記第1読取装置の前記第1読取エリアの他階床への広がりよりも大きく設定されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のセキュリティシステム。
【請求項9】
前記第2読取装置は、所定の階床の天井又は床に近接して配置されたことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載のセキュリティシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−182192(P2011−182192A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44429(P2010−44429)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】