説明

セグメントの連結装置及びトンネルの構築方法

【課題】 地中構造物同士の位置ズレを吸収して確実に地中構造物同士を連結することができるセグメントの連結装置及びトンネルの構築方法を提供する。
【解決手段】 セグメント8を組み立てて構築される地中構造物9に、これに隣接して同じくセグメント15を組み立てて構築される他の地中構造物11を連結すべく、両構造物9、11のセグメント8、15同士をボルト26・ナット27で連結するための連結装置22において、連結するセグメント8、15に、それぞれ球面受座23を形成し、その各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、その球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付けたことを特徴とするセグメント8、15の連結装置22。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントを組み立てて構築される地中構造物同士を一体に連結するセグメントの連結装置及びこの連結装置を用いたトンネルの構築方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路トンネルにおいては、所定距離毎に車両の非常駐車帯を設ける必要がある。この非常駐車帯は、道路本線の脇に駐車スペースを形成するものであり、トンネルの長手方向の一部に沿って構築された拡幅トンネル内に形成されている。
【0003】
従来、トンネルの長手方向の一部に沿って拡幅トンネルを構築する場合、まず、シールド掘進機により道路本線を形成する主トンネルを掘削・構築し、次に、拡幅用のシールド掘削機により主トンネルから径方向外側に掘削して拡幅トンネルを構築していた。例えば、特許文献1にもそのような拡幅掘削装置が開示されている。しかしながら、この工法はトンネルを構築するのに2つの工程を必要とするため、コストが高く、かつ工期が長期化するという欠点があった。
【0004】
【特許文献1】特公昭62−1073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者らは、図10に示すように、主トンネル60と拡幅トンネル61とを並行に構築できるシールド掘進機62を新規開発し、このシールド掘進機62を用いて構築した主トンネル60と拡幅トンネル61とを一体に接合して連通させる技術を開発中である。
【0006】
ところで、このトンネル構築方法にあっては、主トンネル60と拡幅トンネル61を接合する前に、予めトンネル60、61同士を連結して固定しておく必要があるが、地質は場所によって異なり、主トンネル60の周囲と拡幅トンネル61の周囲とで地質が異なる場合もあるため、主トンネル60と拡幅トンネル61とが必ずしも一定の位置関係にあるとは限らない。このため、多少の位置ズレを吸収しつつトンネル60、61同士を連結できる連結装置が必要となるが、既存のボルト・ナットではトンネル60、61同士の位置ズレを吸収できず、適当な連結装置が存在しないという課題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、トンネル等のセグメントを組み立てて構築される地中構造物同士の位置ズレを吸収して確実に地中構造物同士を連結できるセグメントの連結装置と、この連結装置を用いたトンネルの構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明は、セグメントを組み立てて構築される地中構造物に、これに隣接して同じくセグメントを組み立てて構築される他の地中構造物を連結すべく、両構造物のセグメント同士をボルト・ナットで連結するためのセグメントの連結装置において、連結するセグメントに、それぞれ球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付けたものである。
【0009】
また、シールド掘進機により、主トンネル孔を掘削すると共にその主トンネル孔の任意の位置に拡幅トンネル孔を掘削し、これら主トンネル孔と拡幅トンネル孔にセグメントを張設して主トンネルと拡幅トンネルとを構築したのち、これらトンネル同士のセグメントを互いに連結するためのセグメントの連結装置において、主トンネルのセグメントと拡幅トンネルのセグメントに、それぞれ球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付けたものである。
【0010】
上記ボルトが取り付けられた球状部材には、ボルトをトンネル外に送り出す送出手段が設けられるとよい。
【0011】
また、シールド掘進機により、主トンネル孔を掘削すると共にその主トンネル孔の任意の位置に拡幅トンネル孔を掘削し、これら主トンネル孔と拡幅トンネル孔にセグメントを張設して主トンネルと拡幅トンネルとを構築したのち、これらトンネル同士のセグメントを互いに連結して固定し、主トンネルと拡幅トンネルを連通させるトンネルの構築方法にあっては、主トンネルと拡幅トンネルを連結する前に、予め双方のセグメントに球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付け、上記ボルト・ナットがそれぞれシールド掘進機の後方に至ったとき、ボルトとナットを締結して主トンネルと拡幅トンネルを連結するとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、地中構造物同士の位置ズレを吸収して確実に地中構造物同士を連結することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図4は、主トンネルと拡幅トンネルを構築するシールド掘進機の平面図であり、図5は図4のA−A線矢視断面図であり、図6は図4のB−B線矢視断面図であり、図7は図4のC−C線矢視断面図である。
【0014】
図4に示すように、シールド掘進機1は、掘進方向前方部に主カッタ2を有するシールド本体3と、シールド本体3の側部に径方向外方に出没自在に設けられた拡幅カッタ4と、シールド本体3の側部に設けられ拡幅カッタ4で掘削された拡幅トンネル孔5内に出没する拡幅シールド部6とを備えて構成されている。シールド本体3は、主カッタ2で掘削した主トンネル孔7内に主セグメント8を張設して主トンネル9を構築するための主セグメント用エレクタ10を後部に有する。図4及び図6に示すように、シールド本体3の側部には、後述する拡幅トンネル11をガイドするためのガイド装置12が径方向外方に出没自在に設けられており、拡幅トンネル11に予め設けられた溝42及び拡幅トンネル11の上下端に係合することで、主トンネル9に対する拡幅トンネル11の位置を一定に保つようになっている。拡幅カッタ4は、略円盤状に形成されたカッタ面部13と、カッタ面部13を前後傾動自在に枢支し掘削面の向きを変えるための回動機構14とを備えて構成されており、カッタ面部13を径方向外方に突出させてその掘削面を前方へ向けることで主トンネル孔7の側部に沿って拡幅トンネル孔5を掘削できるように構成されている。
【0015】
図4及び図5に示すように、拡幅シールド部6は、拡幅カッタ4で掘削した拡幅トンネル孔5内に拡幅セグメント15を張設して拡幅トンネル11を構築するための拡幅セグメント用エレクタ16を有すると共に、拡幅トンネル11を後方に押し出すためのジャッキ17を有する。拡幅シールド部6の外周部後端には組み立てた拡幅セグメント15を送り出すための開口18が形成されている。開口18は、拡幅シールド部6を拡幅トンネル孔5に出没させる際、蓋状の妻セグメント19で塞がれるようになっており、開口18から機内に浸水しないようになっている。図4及び図8に示すように、妻セグメント19には、径方向外方に延出して周辺地山を押さえる周辺押し当て装置20が複数設けられると共に、掘進方向後方に延出して妻側の地山を押さえる妻側押し当て装置21が複数設けられている。そして、妻セグメント19は、拡幅トンネル孔5内で周辺押し当て装置20と妻側押し当て装置21をそれぞれ延出させることで地山から反力を得て、拡幅トンネル孔5内における位置を固定されるようになっている。
【0016】
また、図7に示すように、主トンネル9の拡幅トンネル11側の主セグメント8と、拡幅トンネル11の主トンネル9側の拡幅セグメント15とには、主トンネル9と拡幅トンネル11を連結するための連結装置22が予め組み立てる前に設けられており、シールド掘進機1の後方で主トンネル9と拡幅トンネル11とを連結するようになっている。連結装置22は、それぞれのトンネル9、11のセグメント8、15に、周方向に複数かつ軸方向に複数設けられており、主トンネル9と拡幅トンネル11を三次元的に連結して強固に固定するようになっている。より具体的には、図4に示すように、主セグメント8の軸方向の長さは、拡幅セグメント15の整数倍となっており、連結装置22が設けられた拡幅セグメント15を所定間隔おきに組み立てることにより、主セグメント8側の連結装置22の設置間隔と拡幅セグメント15側の連結装置22の設置間隔とを合わせ、それぞれ対応する位置に配置できるようになっている。
【0017】
図1に示すように、連結装置22は、双方のセグメント8、15に、それぞれ球面受座23を形成し、その各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、その球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付けて構成されている。球面受座23は、略リング状に形成された受座本体28の内周に球面を受ける凹面を形成してなるものであり、凹面には球状部材24、25との間をシールするためのシール29が設けられている。また、受座本体28は分割可能に形成されており、球状部材24、25の周囲を囲むように組み立てることで、球状部材と分離しないように構成されている。そしてこれにより球状部材24、25は、球面受座23に任意の方向に回動自在に保持されるようになっている。
【0018】
ボルト26は、両端にねじ部30、31を有する連結ロッド32と、連結ロッド32の一端側にナット33を螺合させて構成された頭部34とを備えて構成されている。ボルト26は、主セグメント8側の球状部材25に軸方向摺動自在かつ周方向回転自在に挿通されており、頭部34を主トンネル9の内側に位置させている。球状部材25には、ボルト26との間をシールするためのシール35が設けられると共に、ボルト26をトンネル外に送り出すための送出手段36が設けられている。送出手段36は、球状部材25に設けられ主トンネル9の内側に向けて延びる送りねじ37と、送りねじ37に挿通されると共に連結ロッド32の一端側に挿通され頭部34を主トンネル9側に没入させないように押さえるための押え部材38と、送りねじ37に螺合され押え部材38を頭部34側へ送るための送りナット39とを備えて構成されている。押え部材38は、ねじ部31にガイドされ、確実に頭部34に当たるようになっている。
【0019】
ナット27は、拡幅セグメント15側の球状部材24に設けられている。ナット27のねじ孔40は、所定深さに形成されており、球状部材24を貫通しないことで拡幅トンネル11に地中の水等が浸入するのを防ぐようになっている。ねじ孔40の深さは、ボルト26に螺合する長さに土砂等を収容する長さを加味して決定されており、ねじ孔40内に土砂等が残っても十分な強度でボルト26とナット27を連結できるようになっている。また、ナット27の開口端側には、開口をテーパ状に拡げてなる導入部41が形成されており、ナット27に接近したボルト26をナット27に案内するようになっている。球状部材24には、ボルト26にナット27を位置合わせするとき球状部材24を回動させるためのハンドル24aが設けられている。
【0020】
次にトンネルの構築方法について述べる。
【0021】
図4に示すように、主トンネル9に沿って拡幅トンネル11を構築する場合、まず、主トンネル孔7を掘削すると共にその主トンネル孔7の任意の位置に拡幅トンネル孔5を掘削し、これら主トンネル孔7と拡幅トンネル孔5にセグメント8、15を張設して主トンネル9と拡幅トンネル11とを構築する。
【0022】
主トンネル孔7の掘削は主カッタ2にて行い、主セグメント用エレクタ10で主トンネル孔7内に主セグメント8を張設することで主トンネル9を構築する。拡幅トンネル孔5の掘削は拡幅カッタ4にて行う。具体的には、拡幅カッタ4を駆動させながらシールド本体3から突出させ、前方へ傾けることで拡幅トンネル孔5を掘削し始める。このとき、拡幅トンネル孔5内に拡幅シールド部6を徐々に突出させ、拡幅セグメント15を組み立てる準備をしておく。また同時に、シールド本体3からガイド装置12を突出させ、拡幅シールド部6で組み立てられる拡幅セグメント15をガイドする準備をしておく。
【0023】
このようにして、拡幅シールド部6がシールド本体3から完全に突出されたら、拡幅シールド部6の開口18に配置された妻セグメント19に拡幅セグメント15を組み付けつつ、妻側押し当て装置21を後方に延出させる。妻側押し当て装置21は地山に当たって地山を押さえることで妻セグメント19を後押しし、拡幅トンネル孔5に対する妻セグメント19の位置を固定する。妻セグメント19に拡幅セグメント15を組み付けたらジャッキ17で拡幅セグメント15を後方へ押す。妻セグメント19と妻セグメント19に組み付けられた拡幅セグメント15は、シールド掘進機1の前進に応じて相対的に後方に押し出されることとなる。妻セグメント19が拡幅シールド部6から完全に出たら、周辺押し当て装置20をそれぞれ径方向外方に延出させ、妻セグメント19の径方向の位置を固定する。妻セグメント19に続いて拡幅セグメント15が拡幅シールド部6から出たら、拡幅セグメント15から地山にグラウンドアンカー43を打ち込み、拡幅トンネル11の後端部をさらに固定する。以降、拡幅セグメント15を順次組み立てて拡幅シールド部6から押し出すことで拡幅トンネル11を構築してゆく。
【0024】
図6に示すように、シールド掘進機1が所定距離進むと、拡幅トンネル11はシールド本体3から突出されたガイド装置12に係合され、上下方向の位置をガイドされることとなる。このとき図2に示すように、ボルト26を取り付けられた球状部材25は、セグメント組立時にボルト26が邪魔となるのを防ぐと共に、ボルト26周辺からの浸水を確実に防ぐため、ボルト26の先端を球面受座23に向けて配置されている。ナット27を取り付けられた球状部材24、25は、ナット27の開口を任意の方向へ向けて配置されている。ナット27内には、予めゲル状の潤滑油が封入されており、土砂などが詰まらないようになっている。また、球面受座23と球状部材24、25との間はそれぞれシールされているため、トンネル9、11内に連結装置22から浸水することはない。
【0025】
図1に示すように、構築した主トンネル9と拡幅トンネル11とがシールド掘進機1の後方まで延び、互いに隣接されたら、隣接されたセグメント8、15同士を互いに連結装置22で連結して固定する。このとき、図3に示すように、主トンネル9に対して拡幅トンネル11の位置がずれていることもあるが、球状部材24、25を適宜回動させることでシール性を失うことなくそれぞれの連結装置22のボルト26とナット27を向かい合わせることができ、ボルト26とナット27の軸心をおおよそ合わせることができる。球状部材24、25の回動は、セグメント8、15の内側に延びるボルト26及びハンドル24aを操作することで容易にできる。この後、ボルト26とナット27を締結する。具体的には、送りナット39を締めて押え部材38をナット27側へ押し込み、押え部材38を介してボルト26の頭部34を押す。送りねじ37と送りナット39でボルト26を押すため、トンネル9外の水圧が高くとも確実にボルト26を押し出すことができる。ボルト26は、導入部41に入ることで先端を案内され、導入部41から受ける力でそれぞれの球状部材24、25を回動させて自動的にナット27と調心される。この後、ボルト26を回転させてナット27に螺合させる。ナット27内には潤滑油が封入されているため、あまり土砂は入らないが、たとえ入ったとしてもナット27の長さは土砂等を収容するための長さを加味して決定されているため、ナット27とボルト26を十分な強度で締結することができる。
【0026】
拡幅セグメント15を所定の距離組み立てたら、拡幅セグメント15に妻セグメント19を組み付けて拡幅トンネル11の前端を塞ぐと共に、拡幅シールド部6の開口18を妻セグメント19で塞ぎ、拡幅カッタ4と拡幅シールド部6をシールド本体3内に没入させて拡幅トンネル11の構築作業を終える。この後、セグメント8、15の周辺部の止水用地盤改良を行う。
【0027】
このようにして、拡幅トンネル11を全長に渡って主トンネル9に連結し、止水作業が完了したら、主トンネル9と拡幅トンネル11とが重なり合う部分を切り開き、主トンネル9と拡幅トンネル11とを溶接等により接合して連通させる。
【0028】
このように、主セグメント8と拡幅セグメント15に、それぞれ球面受座23を形成し、各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付けて連結装置22を構成したため、主トンネル9と拡幅トンネル11の位置ズレを吸収して確実に主トンネル9と拡幅トンネル11を連結することができ、かつ、容易に止水できる。
【0029】
ボルト26が取り付けられた球状部材25には、ボルト26をトンネル9外に送り出す送出手段36が設けられるものとしたため、トンネル9外の水圧が高くとも確実にボルト26をトンネル9外に出すことができ、ボルト26をナット27に到達させることができる。
【0030】
また、双方のセグメント8、15に球面受座23を形成し、各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、その球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付け、ボルト26・ナット27がそれぞれシールド掘進機1の後方に至ったとき、球状部材24、25をそれぞれ回動させてボルト26とナット27の軸心を合わせ、ボルト26とナット27を締結して主トンネル9と拡幅トンネル11を連結するようにしたため、シールド掘進機1後方で主トンネル9と拡幅トンネル11の位置がずれていても確実に主トンネル9と拡幅トンネル11を連結することができる。
【0031】
なお、主セグメント8の長さは拡幅セグメント15の整数倍に形成するものとしたが、これに限るものではなく、主セグメント8の長さと拡幅セグメント15の長さに一定の関係があり、ボルト26とナット27の位置を容易に合わせられるようになっていればよい。
【0032】
また、ボルト26を主トンネル9側の球状部材25に設け、ナット27を拡幅トンネル11側の球状部材24に設けるものとしたが、逆にボルト26を拡幅トンネル11側に設け、ナット27を主トンネル9側に設けてもよい。
【0033】
またさらに、シールド掘進機1で主トンネル9と拡幅トンネル11を構築しながら地中構造物たる主トンネル9と拡幅トンネル11とを連結する実施の形態について述べたが、連結装置22の用途はこれに限るものではなく、他の地中構造物同士を連結する装置として用いることができるのは勿論である。
【0034】
連結装置22で他の地中構造物同士を連結する他の実施の形態について述べる。なお、上述と同様の構成については同符号を付し、説明を省く。
【0035】
図9に示すように、地中構造物50は、一般にMMST(Multi-Micro Shield Tunneling)工法と呼ばれるトンネル施工法で用いられる鋼殻51からなる。鋼殻51は、小型のシールド掘進機(図示せず)内で複数のセグメント52を組み立てて構築される。鋼殻51は、地中に枠状に複数並べて構築され、それぞれ隣接するもの同士を結合することで大断面トンネルのトンネル壁を構成するようになっている。
【0036】
鋼殻51を構成するセグメント52のうち、他の鋼殻51と隣接するセグメント52には、それぞれ組み立てる前に上述の連結装置22が設けられている。すなわち、連結する鋼殻51同士のセグメント52に、それぞれ球面受座23を形成し、その各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、その球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付けている。セグメント52は、掘進方向の長さをそれぞれ同じに形成されており、鋼殻51同士が隣接したときそれぞれの鋼殻51のセグメント52同士も一対一に向き合うようになっている。また、球面受座23はそれぞれセグメント52の所定の位置に形成されており、連結すべきボルト26とナット27が略向き合って位置されるようになっている。
【0037】
本実施の形態の作用を述べる。
【0038】
複数の鋼殻51を隣接して構築する場合、シールド掘進機を掘進させて所定区間に渡って鋼殻51を構築したのち、この鋼殻51に隣接してシールド掘進機を掘進させ、他の鋼殻51を構築する。以降、既設の鋼殻51に沿って順次シールド掘進機を掘進させ、複数の鋼殻51を枠状に並べて構築する。既設の鋼殻51に沿ってシールド掘進機を掘進させるとき、シールド掘進機で組み立てたセグメント52がシールド掘進機から出たところで既設の鋼殻51と連結する。セグメント52同士の連結は、球状部材24、25を適宜回動させてボルト26とナット27の軸心を合わせたのち、ボルト26をナット27側に突出させ、ボルト26を回転させてナット27に螺合させることで行う。セグメント52は、シールド掘進機から出た直後に既設の鋼殻51に連結されるため、不安定な地質であっても隣接する鋼殻51同士が大きく位置ズレを起こす前に鋼殻51同士を連結することができる。
【0039】
このようにして、鋼殻51を枠状に並べて構築したら、隣接する鋼殻51同士を鉄筋等で一体に接続し、鋼殻51で囲まれる部分を通常の掘削機械で掘削して大断面トンネルを構築する。
【0040】
このように、セグメント52を組み立てて構築される地中構造物50同士を連結する場合、連結するセグメント52に、それぞれ球面受座23を形成し、その各球面受座23に球状部材24、25を回転自在に取り付け、その球状部材24、25の一方にボルト26を取り付け、他方にナット27を取り付けることで、地中構造物50同士の位置ズレを吸収して確実に地中構造物50同士を連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の好適実施の形態を示す連結装置の背面断面図である。
【図2】離脱された状態の連結装置の背面断面図である。
【図3】相対位置がずれたセグメント同士を連結する連結装置の背面断面図である。
【図4】主トンネルと拡幅トンネルを構築するシールド掘進機の平面図である。
【図5】図4のA−A線矢視断面図である。
【図6】図4のB−B線矢視断面図である。
【図7】図4のC−C線矢視断面図である。
【図8】拡幅トンネルの後端を塞ぐ妻セグメントの背面断面図である。
【図9】他の実施の形態を示す構築中のトンネルの正面断面図である。
【図10】開発中のシールド掘進機の概略説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 シールド掘進機
5 拡幅トンネル孔
7 主トンネル孔
8 主セグメント(セグメント)
9 主トンネル(地中構造物)
11 拡幅トンネル(地中構造物)
15 拡幅セグメント(セグメント)
22 連結装置
23 球面受座
24 球状部材
25 球状部材
26 ボルト
27 ナット
36 送出手段
50 地中構造物
52 セグメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントを組み立てて構築される地中構造物に、これに隣接して同じくセグメントを組み立てて構築される他の地中構造物を連結すべく、両構造物のセグメント同士をボルト・ナットで連結するためのセグメントの連結装置において、連結するセグメントに、それぞれ球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付けたことを特徴とするセグメントの連結装置。
【請求項2】
シールド掘進機により、主トンネル孔を掘削すると共にその主トンネル孔の任意の位置に拡幅トンネル孔を掘削し、これら主トンネル孔と拡幅トンネル孔にセグメントを張設して主トンネルと拡幅トンネルとを構築したのち、これらトンネル同士のセグメントを互いに連結するためのセグメントの連結装置において、主トンネルのセグメントと拡幅トンネルのセグメントに、それぞれ球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付けたことを特徴とするセグメントの連結装置。
【請求項3】
上記ボルトが取り付けられた球状部材には、ボルトをトンネル外に送り出す送出手段が設けられた請求項1又は2記載のセグメントの連結装置。
【請求項4】
シールド掘進機により、主トンネル孔を掘削すると共にその主トンネル孔の任意の位置に拡幅トンネル孔を掘削し、これら主トンネル孔と拡幅トンネル孔にセグメントを張設して主トンネルと拡幅トンネルとを構築したのち、これらトンネル同士のセグメントを互いに連結して固定し、主トンネルと拡幅トンネルを連通させるトンネルの構築方法であって、主トンネルと拡幅トンネルを連結する前に、予め双方のセグメントに球面受座を形成し、その各球面受座に球状部材を回転自在に取り付け、その球状部材の一方にボルトを取り付け、他方にナットを取り付け、上記ボルト・ナットがそれぞれシールド掘進機の後方に至ったとき、ボルトとナットを締結して主トンネルと拡幅トンネルを連結することを特徴とするトンネルの構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−57382(P2006−57382A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242246(P2004−242246)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】