説明

セコタキサンの調製方法

本発明は、10−デアセチルバッカチンIIIおよび(4S,5R)−N−Boc−2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−イソブチル−1−オキサゾリジン−5−カルボン酸から出発するセコタキサンの調製方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、10−デアセチルバッカチンおよび(4S,5R)−N−Boc−2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−イソブチル−1−オキサゾリジン−5−カルボン酸から出発するセコタキサンの調製方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
WO96/03394において、およびその後Appendino等(Tetrahedr.Lett.1995、36(18)、3233−3236)により開示されている化合物IDN5390(I)は、抗癌剤として現在臨床試験中のタキサン誘導体である。
【0003】
【化1】

【0004】
IDN5390は、内皮および卵巣の腫瘍細胞に関するin vitro試験およびin vivo試験の両方で証明された、その抗血管新生特性から選択された。該化合物は、卵巣、結腸、乳房の腫瘍組織型等の様々な腫瘍組織型(histotype)に対する経口投与後に活性であることが証明された。IDN5390は、パクリタキセルでの治療に対する感受性が低い転移モデルおよび腫瘍において活性であることも証明された。その作用機構の特異性は、クラスIIIβチューブリンの発現状態から独立して活性であることであり、パクリタキセルに対する耐性機構が臨床レベルでも重要であることが最近判明した(Ferlini等、Cancer Res.65、(6)、2397、2005)。低用量で投与されたIDN5390は、抗血管新生特性を示した(Taraboletti等、Anti−Cancer Drugs 14、255、2003)。
【0005】
US5756776において、およびAppendino等(Tetrahedr.Lett.1995、36(18)、3233−3236;Tetrahedr.Lett.1997、38(24)、4273−4276)により開示されている先行技術によるこの化合物への合成経路は、シリルエーテルとして7位および9位で保護されたセコバッカチン(secobaccatin)を、式(II)のオキサゾリジンとして保護されたノルスタチン残基でエステル化することを通常伴う。
【0006】
【化2】

【0007】
保護されたセコバッカチンは、メタノール中で酢酸銅を用いて酸化し、次いで、水素化物でフラグメントに還元(fragmentative reduction)し、通常はトリエチルシリルクロリドで7位および9位を保護することにより、10−デアセチルバッカチンIIIから得られる。得られた生成物は、カルボジイミドの存在下で、WO01/02407に開示されているように調製した(4S,5R)−N−Boc−2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−イソブチル−1−オキサゾリジン−5−カルボン酸でエステル化する。
【0008】
該方法により、平均全収率が30〜40%になるが、いくつかの欠点により工業規模でのその適用が困難である。まず、10−デアセチルバッカチンIIIを酢酸銅で酸化することにより、過酸化のために13−オキソ誘導体の形成が容易に起こり、それにより転換収率が有意に低下する。さらにまた、13位が反応し、無用な7,9,13−トリ−保護セコバッカチンが生成されるため、シリルエーテルまたはシリルエステルとして保護することは難しい。
【0009】
最後に、当業者に公知であるように、式IIのノルスタチンで保護されたセコバッカチンの縮合は、C環全体を有するバッカチンで行うよりも難しく、したがって、より高い反応温度とより長い反応時間とが必要である。
【0010】
酸化および保護の位置選択性の欠点、並びに式IIの鎖と縮合を行うことの難しさにより、出願人は、本発明の目的である新規の半合成方式を開発することにした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO96/03394
【特許文献2】US5756776
【特許文献3】WO01/02407
【特許文献4】WO2006/037653
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Tetrahedr.Lett.1995、36(18)、3233−3236
【非特許文献2】Cancer Res.65、(6)、2397、2005
【非特許文献3】Anti−Cancer Drugs 14、255、2003
【非特許文献4】Tetrahedr.Lett.1997、38(24)、4273−4276
【発明の概要】
【0013】
発明の開示
上記した合成の問題が、以下の合成スキームによって解決でき、上記の式(I)の化合物だけでなく、一般的に式(III)のテキサン化合物類にも有利に適用できることが現在判明している。
【0014】
【化3】

【0015】
式中、
R1は、水素、または直鎖もしくは分枝のC1〜C4アルキル、直鎖もしくは分枝のC1〜C4アルコキシ、F、Cl、Br、lであり、
R2は、水素であるか、またはR3と共にカルボネート、カルバメートもしくはカルボメチレンの架橋を形成し、
R3は、水素であるか、またはR2と共にカルボネート、カルバメートもしくはカルボメチレンの架橋を形成し、
R4は、直鎖、分枝もしくは環状のC1〜C6脂肪族、C6〜C12アリール、またはヘテロアリールの残基であり、
R5は、直鎖もしくは分枝のC1〜C6アルコキシカルボニル、直鎖もしくは分枝のC1〜C6アシル、またはアリールオキシカルボニルである。
【0016】
式IIIの化合物は、以下の工程、
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護、
b)式IIの誘導体またはその活性類似体との縮合、
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去、
d)酢酸銅での酸化、
e)フラグメントへの還元、
f)オキサゾリジンの除去、
を含む方法で本発明に従って調製される。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、式IVの化合物の調製方法も提供する。
【0018】
【化4】

【0019】
式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、上記に定義した意味を有し、
該方法は、以下の工程
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護、
b)式IIの誘導体またはその活性類似体との縮合、
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去、
d)酢酸銅での酸化、
e)オキサゾリジンの除去、
を含む。
【0020】
式IVの化合物は、式Vの化合物から得ることができる。
【0021】
【化5】

【0022】
式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、上記に定義した意味を有し、
R6は、アリール、1個もしくは複数の直鎖もしくは分枝のC1〜C4のアルキル基またはアルコキシ基で置換されたアリールであり、
R7は、以下の工程、
a)7位および10位での保護基の除去、
b)酢酸銅および酸素での酸化、
c)オキサゾリジンの除去、
によって非酸性条件下で切断できるアルコール保護基である。
【0023】
以下の中間体は、新規のものであり、本発明のさらなる目的である。
【0024】
【化6】

【0025】
【化7】

【0026】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、上記に報告した意味を有する。]
【0027】
【化8】

【0028】
発明の詳細な説明
10−デアセチルバッカチンIIIを7位および10位で保護し、WO01/02407に開示されているようにして得られた化合物IIと縮合する。得られたカップリング生成物を7位および10位で脱保護し、続いて酸素の存在下において、触媒量から化学量論量でメタノール中で酢酸銅を用いて酸化すると、10位で酸化した生成物が得られる。前記生成物は、動的条件下で7αエピマーおよび7βエピマーの混合物として、または熱力学的条件下で7αエピマー単独として単離することができる。それにより、13位でのヒドロキシル基がアシル化されるため、アリル過酸化の問題が解決される。
【0029】
7、10でのカップリング反応および脱保護反応は中間体を回収せずに、単一の反応器中で行うことができる。
【0030】
得られた生成物のノルスタチン鎖の脱保護により、これもまた腫瘍の治療に有望なタキサンである、化合物IDN5910が得られる。あるいは、フラグメントに還元し、ノルスタチンフラグメントを脱保護することにより、高収率でIDN5390が得られる。
【0031】
10−デアセチルバッカチンIIIは、WO2006/037653に記載されている7,10−ビス−トリクロロアセテートとして保護されることが好ましい。非酸性条件下で切断できるトリクロロアセチル基に相当する基、例えば、トリクロロエトキシカーボネート等のカーボネートも、この保護に有用であり、好ましい。
【0032】
縮合は、N,N−4−ジメチルアミノピリジンの存在下で、極性非プロトン性溶媒中で行うことができる。
【0033】
フラグメントへの還元は、水素化物を用いて容易に行うことができ、中でもL−Selectride(登録商標)が特に好ましい。
【0034】
トリクロロアセチル基は、以下に示す条件下で、アセトニトリルまたはN−メチルピロリドン等の極性非プロトン性溶媒中で水酸化アンモニウムを用いて切断されるのに対し、オキサゾリジンは、以下にさらに指定する条件下で、触媒量または化学量論量で、メタノール中で塩酸等の酸を用いて除去される。
【0035】
さらに詳細には、化合物IDN5910の調製方法は、以下のように図式化することができる。
【0036】
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護
【0037】
【化9】

【0038】
b)式IIの誘導体またはそれらの活性類似体との縮合
【0039】
【化10】

【0040】
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去
【0041】
【化11】

【0042】
d)酢酸銅での酸化
【0043】
【化12】

【0044】
e)オキサゾリジンの除去
【0045】
【化13】

【0046】
IDN5390の調製方法は、以下のように図式化することができる。
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護
【0047】
【化14】

【0048】
b)式IIの誘導体またはそれらの活性類似体との縮合
【0049】
【化15】

【0050】
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去
d)酢酸銅での酸化
【0051】
【化16】

【0052】
e)フラグメントへの還元
【0053】
【化17】

【0054】
f)オキサゾリジンの除去
【0055】
【化18】

【0056】
上記の方法は、反応機構および反応順序が、分子上に存在する任意の置換基または他の官能基に依存しないという点で一般的妥当性を有する。
【0057】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に例示している。
【0058】
実施例1−7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの調製
10−デアセチルバッカチンIII15gを撹拌しながら乾燥状態でピリジン60mL中に溶解する。該溶液を0〜5℃まで冷却し、トリクロロアセチルクロリド6.3mLをその中に滴下する。反応混合物を出発物質が消失するまで(約1時間)0℃で撹拌する。次いで、温度を10℃以下で保ちながら、ジクロロメタン(100mL)および4N塩酸(100mL)を加える。次いで、2相を分離し、有機相を4NのHCl(100mL)で再び抽出する。有機相を塩水(50mL)で洗浄し、真空下で濃縮する。残渣をトルエン(100mL)中に溶解する。懸濁液を2時間撹拌し、沈殿物をフィルター上に集め、トルエン15mLで洗浄する。湿潤生成物24gが得られる(それ自体はHPLC力価83%、HPLC純度93.3%)。該生成物は、次の反応に直接使用してもよく、またはカラムクロマトグラフィーによってさらに精製してもよい。
【0059】
1H NMR(300MHz,CDCl3,Hz単位のJ,30(C)8.16(m,Bz)、7.67(m,Bz)、7.54(m,Bz)、6.54(s,10)、5.77(dd,10.5;7.4,H−7)、5.74(d,6.9,H−2)、5.03(dd,9.6;1.6,H−5)、4.96(td,8.5;1.2,H−13)、4.40(d,8.4,H−20a)、4.22(dd,8.3,0.6,H−20b)、4.06(d,6.9,H−3)、2.75(ddd,14.5;9.6;7.4,H−6a)、2.07(ddd,14.4;10.4;1.8,H−6b)、2.38(d,8.4,H−14)、2.36(s,4−OAc)、2.26(d,1.4,H−18)、1.95(s,H−19)、1.23(s,H−17)、1.15(s,H−16)。
【0060】
13C NMR(75MHz,CDCl3,30(C)199.9(s,9)、171.1(s,4−OCOMe)、167.2(s,2−OCOPh)、162.2(s,7−OCOCCl3)、161.0(s,10−OCOCCl3)、147.7(s,C−12)、134.1(d,Bz)、130.7(d,Bz)、130.4(s,C−11)、129.4(s,Bz)、129.0(d,Bz)、83.7(d,C−5)、80.4(s,C−4)、79.5(d,C−10)、79.4(s,C−1)、76.5(d,C−7)、74.4(d,C−2)、76.8(t,C−20)、68.0(d,C−13)、56.8(s,C−8)、47.3(d,C−3)、42.9(s,C−15)、38.7(t,C−14)、32.7(t,C−6)、26.7(q,C−16)、22.7(q,4−OCOCH3)、20.3(q,C−17)、15.7(q,C−18)、10.9(q,C−19)。
【0061】
実施例2−(4S,5R)−N−BOC−2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−イソブチル−1,3−オキサゾリジン−5−カルボン酸との7,10−ビス−トリクロロアセチル10−デアセチルバッカチンIIIの縮合、および次のトリクロロアセチル基の切断
WO01/02407に記載されているように調製したIDN5401(7.2mmol、1.45等量)2.9gを1:1のトルエン:水混合物40mL中に溶解する。水中の10%NaHSO4溶液5mLをそこに加え、pHが約2.5であるかを監視する。層を分離し、有機層を塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥して、蒸発させる。残渣を乾燥トルエン10mL中に溶解し、0℃で冷却し、トルエン20mL中の実施例1からの中間体(4.4mmol)3.70g、固形DMAP(5.4mmol、1.17等量)660mg、およびジシクロヘキシルカルボジイミド(8.2mmol、1.77等量)751mgの溶液中に滴下する。反応物を0℃で30分間、次いで室温で1時間撹拌し、TLC(シリカ、石油エーテル:AcOEt7:3、開始基準:0.25、終了基準:0.45)により進行を監視する。2時間後、反応を完了する。懸濁液を焼結漏斗を介して濾過する。中間体は、溶媒の蒸発および残渣のカラムクロマトグラフィー(溶離液として、石油エーテル:酢酸エチル7:3)によって得ることができる。
【0062】
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 8.05(2H,d,J=7.4Hz,or−Bz)、7.61(1H,t,J=7.4Hz,p−Bz)、7.46(2H,t,J=7.4Hz,m−Bz)、7.22(1H,d,J=8.5Hz,Ar−6)、6.59(1H,s,Ar−C(N)(OR)H)、6.50(2H,br s,Ar−3+Ar−5)、6.48(1H,s,H−10)、6.24(1H,t,J=8.5Hz,H−13)、5.76(2H,m,H−7+H−2)、4.94(1H,d,J=9.8Hz,H−5)、4.51(2H,m,H−2’+H−3’)、4.34(1H,d,J=8.3Hz,H−20a)、4.16(1H,d,J=8.3Hz,H−20b)、4.00(1H,d,J=8.8Hz,H−3)、3.88(3H,s,OMe)、3.86(3H,s,OMe)、2.29(3H,br s,H−18)、1.90(3H,s,H−19)、1.19、1.17(2×3H,s,H−16+H−17)、1.07(6H,m,H−6’+H−7’)。
【0063】
好ましくは、中間体を単離するのではなく、得られた懸濁液を焼結漏斗を介して濾過し、約20mLの量まで濃縮し、次いでメタノール10mLおよび25%水酸化アンモニウム2.5mLの溶液を加える。該混合物を室温で撹拌し、TLC(シリカ、石油エーテル:AcOEt6:4、開始基準:0.6、終了基準:0.3)により進行を監視する。2時間後、水30mLを加えることにより反応を完了し、2NのH2SO4で酸性化し、AcOEtで抽出する。有機相を塩水で洗浄し、乾燥(Na2SO4)し、蒸発させる。残渣を重量(gravimetric)カラムクロマトグラフィー(シリカゲル35g、溶離液として石油エーテル:AcOEt6:4)によって精製すると、生成物(65%)2.67gが得られる。
【0064】
1H NMR(300MHz,CDCl3):δ 8.03(2H,d,J=7.4Hz,or−Bz)、7.58(1H,br t,J=7.4Hz,p−Bz)、7.45(2H,d,J=8.5Hz,m−Bz)、7.21(1H,d,J=8.5Hz,Ar−6)、6.59(1H,s,Ar−C(N)(OR)H))、6.47(2H,m,Ar−3+Ar−5)、6.17(1H,t,J=8.4Hz,H−13)、5.66(1H,d,J=9.3Hz,H−2)、5.24(1H,s,H−10)、4.93(1H,d,J=9.6Hz,H−5)、4.45(2H,m,H−2’+H−7’)、4.28(1H,d,J=8.1Hz,H−20a)、ca.4.28(1H,m,H−3’)、4.16(1H,d,J=8.1Hz,H−20b)、3.95(1H,d,J=7.3Hz,H−3)、3.86(3H,OMe)、3.81(3H,s,OMe)、2.26(3H,br s,H−18)、2.12(3H,s,OAc)、1.71(3H,s,H−19)、1.23(9H,s,N−BOC)、1.20(3H,s,H−16(17))、1.10(3H,s,H−17(16))、1.06(6H,d,J=6.0Hz,H−6’+H−7’)。
【0065】
実施例3−酢酸銅および酸素での酸化
実施例2からの中間体(2.1mmol)2.0gを、1:1のメタノール:DMF混合物20mL中に溶解する。その後、Cu(OAc)2・3H2O200mgを強く撹拌しながら加える。反応物を撹拌し、5%酸素含有窒素をバブリングさせる。進行はTLC(開始基準:0.25、終了基準:0.45)により監視する。反応完了後、混合物をCeliteを介して濾過し、メタノールを真空下で蒸留除去する。残渣を水中に注入し、酢酸エチル(25mL)で抽出する。有機相を1%水酸化アンモニウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させる。粗製物は、シリカゲル(15g)上で濾過し、5:5の石油エーテル:AcOEtで洗浄することにより精製してもよく、非晶質固体として生成物(65%)2.26gが得られる。
【0066】
1H NMR(200MHz,CDCl3):δ 8.08(d,J=7.4Hz,AA’−Bz)、7.62(t,J=7.4Hz,C−Bz)、7.48(t.J=7.4Hz,BB’−Bz)、7.15(d,J=8.1Hz,H−18’)、6.59(br s,H−7’)、6.51(br d,J=8.1Hz,H−17’)、6.45(br s,H−15’)、6.17(br t,J=8.4Hz,H−13)、5.87(d,J=9.0Hz,H−2)、4.91(t,J=7.5Hz,H−7)、4.72(br d,J=10Hz,H−5)、ca.4.55(m,H−2’およびH−3’)、4.40(d,J=8.0Hz,H−20a)、4.31(d,J=8.0Hz,H−20b)、4.07(br s,H−7)、3.80(s,OMe)、2.46(dd,J=16.0および10.0Hz,H−6a)、2.36(br s,18−Me)、2.08(s,4−OAc)、1.96(s,19−Me)、1.38(s,BOC)、1.28および1.21(s,H−16およびH−17)、1.09(d,H−6’)。
【0067】
13C NMR(50MHz,CDCl3):δ 207.9、188.5、172.4、171.1、171.1、167.0、161.5、159.1、152.9、142.9、141.2、133.9、130.0、129.1、128.7、104.3、96.3、82.6、81.3、80.7、79.8、79.5、76.6、75.1、71.2、58.9、57.1、55.4、43.6、40.2、39.6、36.5、35.2、28.1、27.0.26.1、25.7、23.1、22.6、21.9、21.8、15.0、14.4。
【0068】
実施例4−IDN5910を得るためのオキサゾリジンの切断
メタノール(15mL)中の実施例3からの生成物(1g、1.07mmol)の溶液をトリフルオロ酢酸(0.060mL)に加え、該混合物を室温で8時間撹拌する。次いで、ジクロロメタン(15mL)および水(20mL)を加える。相を分離する。水相をジクロロメタン(10mL)で抽出する。合わせた有機相を水(10mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥する。溶媒を蒸発除去し、粗製物をカラムクロマトグラフィー(シリカ40g、石油エーテル:酢酸エチル70:30)により精製する。IDN5910を含有する画分を合わせて、溶媒を蒸発除去すると、白色固体として生成物(72%)680mgが得られる。
【0069】
1H NMR(300MHz,CDCl3,Hz単位のJ,25(C)8.13(d,J=8.3,Bz)、7.62(t,J=8.3,Bz)、7.54(t,J=8.3,Bz)、6.15(br t,J=9.0,H−13)、5.84(d,J=7.2,H−2)、4.90(br t,J=5.4,H−3’)、4.64(d,J=10.0,H−5)、4.45(br s,H−2’)、4.41(d,J=8.8,H−20a)、4.32(d,J=8.8,H−20b)、4.18(br s,H−7)、4.01(d,J=7.2,H−3)、2.48(s,4−Ac)、1.80(br s,H−18)、1.72(s,H−19)、1.24(s,H−15)、1.21(s,H−16)、0.97(d,J=6.8,H−6’)、0.95(d,J=6.8,H−7’)。
【0070】
IR(KBrディスク):3448、1740、1708、1601、1508、1363、1258、1169、1090、1061cm-1
【0071】
13C NMR(75MHz,CDCl3,RT)207.9(s)、188.6(s)、172.5(s)、172.0(s)、166.9(s)、155.7(s)、143.3(s)、141.0(s)、133.8(d)、130.2(d)、129.2(s)、128.7(d)、82.6(d)、81.6(s)、79.8(s)、79.1(s)、77.4(t)、77.1(d)、75.0(d)、73.0(d)、71.9(d)、57.1(s)、51.4(d)、41.0(t)、40.2(s)、39.4(d)、36.0(t)、35.2(t)、30.8(d)、28.1(q)、25.9(q)、24.7(q)、23.1(q)、22.6(q)、22.3(q)、21.9(q)、14.9(q)、14.2(q)。
【0072】
実施例5−フラグメントへの還元
無水THF(10mL)中の10−デアセチル−10−デヒドロ−13−バッカチニル(baccatinyl)(4S,5R)−N−BOC−2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4−イソブチル−1,3−オキサゾリジン−5−カルボキシレート(1.20g、1.28mmol)の冷却した溶液(−15℃、氷浴)をTHF(3.00mL、3.00mmol、2.3等量)中のL−Selectrideの1.0M溶液に一滴ずつ加える。反応は、還元剤(シリカ、石油エーテル:AcOEt6:4、開始基準:0.45、終了基準:0.30)を加えた直後からTLCにより監視する。15分後、2NのH2SO4を加えることにより、反応を完了する。有機相を分離し、さらに塩水で洗浄した後、蒸発させる。残渣を重量カラムクロマトグラフィー(シリカゲル12.5g、石油エーテル:AcOEt6:4)によって精製すると、IND5570(51%)613mgが得られる。
【0073】
1H NMR(300MHz,CDCl3,Hz単位のJ値,30(C)8.03(d,7.4,m−Bz)、7.65(t,7.4,p−Bz)、7.52(t,7.4,or−Bz)、7.22(d,8.6,H−18’)、6.62(s,H−7’)、6.56(s,H−9−OH)、6.52(dd,8.6,2.5,H−17’)6.48(d,2.3,H−15’)、6.17(td,8.4,1.4,H−13)、5.68(d,9.4,H−2)、4.67(m,H−2’)、4.56(dd,8.3,4.5,H−3’)、5.23(d,11.2,H−5)、4.35(s−広幅,H−3)、5.31(s−広幅,H−20)、4.32(d,7.8)、3.84(s,OMe)、3.84(s,OMe)、3.85(m,H−7)、3.49(m)、2.76(m,H−14)、2.62(dd,16.3,9.7)、2.08(d,1.2,H−18)、1.85(s−広幅,H−4’)、1.69(m)、1.93(s−広幅,H−19)、2.16(m,H−6)、1.86(m,H−5’)、1.86(s,OCOCH3)、1.31(s,H−17)、1.16(s,H−16)、1.10(d,6.2,H−6’)、1.10(d,6.1,H−6’)、1.36(t−But)、8.45(s,9−OH)、8.02(d,7.2,m−Bz)、7.69(t,7.2,p−Bz)、7.53(t,7.2,or−Bz)、7.15(d,8.1,H−18’)、6.58(m,H−17’)、6.58(m,H−15’)、6.45(s,H−7’)、6.06(t,8.0,H−13)、5.53(d,9.2,H−2)、5.05(OH)、4.82(s−広幅,H−5)、4.44(t 4.6,H−3’)、4.14(m,H−20)、3.80(s,16’−OMe)、3.77(s,14’−OMe)、3.64(m,H−7)、3.26(m)、2.48(dd,15.7,9.0,H−14)、1.89(s−広幅,H−18)、1.85(m,H−5’)、1.81(s−広幅,H−16)、1.69(m,H−4’)、1.27(s−広幅,t−But)、1.10(d,6.6,H−6’)、1.05(d,6.6,H−6’)、1.86(s,OCOCH3)。
【0074】
13C NMR(75MHz,CDCl3,30℃)191.4(s,10)、171.2(s,C−1’+OCOCH3)、169.3(s,C−10’)、167.7(s,COBz)、161.9(s,C−16’)、159.2(s,C−14’)、153.2(s,C−13’)、149.1(s,C−9)、142.7(s,C−11)、136.6(s,C−12)、134.1(d,p−Bz)、129.5(s,q−Bz)、129.8(d,m−Bz)、129.2(d,or−Bz)、127.8(d,C−18’)、125.0(s,C−8)、104.8(d,C−17’)、98.6(d,C−15’)、87.3(d,C−7’)、86.4(s,C−4)、86.4(d,C−5)、80.7 s,8’)、81.0(s,C−1)、80.3(d,C−2’)、74.9(d,C−2)、75.0(t,C−20)、71.0(d,C−13)、59.2(d,C−3’)、59.7(t,C−7)、55.8(q,OMe)、55.6(q,OMe)、44.9(d,C−3)、)、43.8(t,C−4’)、43.2(s,C−15)、37.1(t,C−14)、38.5(t,C−6)、28.4(q,t−But)、25.9(q,C−17)、22.4(q,OCOCH3)、25.2(d,C−5’)、23.4(q,C−6’)、22.3(q,C−6’)、21.2(q,C−16)、15.2(q,C−18)、14.7(q,C−19)。
【0075】
実施例6−IDN5390を得るためのオキサゾリジンの切断
トリフルオロ酢酸(0.2mL)をメタノール(12mL)中の実施例5からの生成物(4g、2.7mmol)の溶液に加え、混合物を室温で終夜撹拌する。次いで、ジクロロメタン(20mL)および水(14mL)を加え、相を分離する。水相をさらなるジクロロメタン(5mL)で抽出する。合わせた有機相を水(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥する。有機相をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンが充填されたシリカ60g)にかけ、まずジクロロメタンで、次いでCH2Cl2:95%EtOH=98:2で溶出する。所望の生成物を含有する画分を合わせ、溶媒を減圧下で蒸発除去し、残渣をTHF(10mL)中に溶解する。この溶液は、撹拌しながらn−ヘプタン(10mL)を加え、2時間放置する。結晶化した生成物を濾過し、60℃にて真空下で乾燥する。IDN5390の収率1.53g(1.94mmol、71%)。
【0076】
1H−NMR:(CDCl3,300MHz):8.09(d,7.4,or−Bz)、7.63(t,7.5,p−Bz)、7.50(t,7.5,m−Bz)、6.46(s,9−OH)、6.25(dt,8.8,1.2,H13)、5.65(d,9.6,2H)、5.29(d,11.6,H5)、5.18(m,20a)、4.72(d,10.0,NH)、4.39(d,9.0,H3)、4.34(d,9.0,20b)、4.27(d,2.8,H2’)、4.21(m,H3’)、3.92(m,7a)、3.75(dd,11.0,6.1,7b)、2.86(m,14a)、2.50(m,6a)、2.49(dd,15.6,9.8,14b)、2.14(s,H16)、2.12(m,H6b)、1.94(s,4−OAc)、1.92(d,1.5,H18)、1.90(s,H19)、1.73(m,H5’)、1.63(m,H4’a)、1.46(m,4’b)、1.33(s,Boc)、1.29(s,H17)、1.03(d,6.6,H6’)、1.02(d,6.6,H7’)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IIIの化合物
【化1】


[式中、
R1は、水素、または直鎖もしくは分枝のC1〜C4アルキル、直鎖もしくは分枝のC1〜C4アルコキシ、F、Cl、Br、lであり、
R2は、水素であるか、またはR3と共にカルボネート、カルバメートもしくはカルボメチレンの架橋を形成し、
R3は、水素であるか、またはR2と共にカルボネート、カルバメートもしくはカルボメチレンの架橋を形成し、
R4は、直鎖、分枝もしくは環状のC1〜C6脂肪族、C6〜C12アリール、またはヘテロアリールの残基であり、
R5は、直鎖もしくは分枝のC1〜C6アルコキシカルボニル、直鎖もしくは分枝のC1〜C6アシル、またはアリールオキシカルボニルである]
の調製方法であって、以下の工程、
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護、
b)式IIの誘導体またはその活性類似体との縮合、
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去、
d)酢酸銅での酸化、
e)フラグメントへの還元、
f)オキサゾリジンの除去
を含む方法。
【請求項2】
式IVの化合物
【化2】


[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、上記に定義した意味を有する]
の調製方法であって、以下の工程
a)7,10−ビス−トリクロロアセテートとしての10−デアセチルバッカチンIIIの保護、
b)式IIの誘導体またはその活性類似体との縮合、
c)7位および10位でのトリクロロアセチルの除去、
d)酢酸銅での酸化、
e)オキサゾリジンの除去
を含む方法。
【請求項3】
式Vの化合物からの式IVの化合物の調製方法
【化3】


[式中、
R1、R2、R3、R4およびR5は、上記に定義した意味を有し、
R6は、アリール、1個もしくは複数の直鎖もしくは分枝のC1〜C4のアルキル基またはアルコキシ基で置換されたアリールであり、
R7は、以下の工程、
a)7位および10位での保護基の除去、
b)酢酸銅および酸素での酸化、
c)オキサゾリジンの除去
によって非酸性条件下で切断できるアルコール保護基である]。
【請求項4】
【化4】


[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、上記に報告した意味を有する]、または、
【化5】


から選択される化合物。

【公表番号】特表2010−513459(P2010−513459A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542257(P2009−542257)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003951
【国際公開番号】WO2008/081247
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(591092198)インデナ エッセ ピ ア (52)
【Fターム(参考)】