説明

セフジニルの三半水和物、無水物および水和物形態

本発明は、7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)の三半水和物、新規な低級水和物および無水物形態、それらの調製方法、およびこれらの形態を含む薬剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)の三半水和物、無水物および新規な低級水和物の各形態、それらの調製方法、ならびにこの新規な形態を含む薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗菌剤の7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)(以降、「セフジニル(Cefdinir)」と称する)は、セファロスポリン系における半合成経口抗生物質である。セフジニルは、米国において、カプセルおよび経口懸濁液剤形において、オムニセフ(Omnicef(登録商標))として販売されている。オムニセフ(登録商標)は、黄色ブドウ球菌、肺炎レンサ球菌、化膿レンサ球菌、ヘモフィリス感染症、モラキセラカタラーリス、大腸菌、クレブシエラ属、およびプロテウスミラビリスを含めた広範囲の細菌に対して活性である。セフジニルの製剤は、米国特許第4559334号(1985年12月17日発行)において初めて開示され、セフジニルの市販形態の製剤(Crystal AまたはForm I)は、米国特許第4935507号(1990年6月19日発行)において初めて開示された(いずれも、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0003】
水和物は、化学的および熱力学的安定性が異なる医学用固体の重要なクラスである。これらの性質は、化合物の剤形を選択する時の重要な基準である。
【発明の開示】
【0004】
本発明は、セフジニルの三半水和物、無水物および新規な低級水和物形態ならびに薬剤組成物およびその使用を提供する。セフジニルのこれらの形態ならびにそれらの塩およびエステルを含む薬剤組成物は、肺炎レンサ球菌およびヘモフィリス感染症等の細菌感染症の治療において有用である。
【0005】
本発明は、セフジニルの三半水和物、無水物、およびその他の同形低級水和物形態を記載する。
【0006】
一実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、5.4±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターン(以降、PXRDパターン)における特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、10.7±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、14.2±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、15.2±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、21.4±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、29.2±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、30.6±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0013】
さらに別の実施形態において、本発明は、セフジニル1分子当たり水3.5モル(約14重量%の水)を含み、5.4±0.1°、10.7±0.1°、14.2±0.1°、15.2±0.1°、21.4±0.1°、29.2±0.1°および30.6±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、セフジニルの新規な三半水和物結晶形を記載する。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、1.7重量%〜6.1重量%の水の含有量を有するセフジニルの同形低級水和物結晶形を記載する。本発明の低級水和物は、6.0±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する。
【0015】
別の実施形態において、本発明は、8.0±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、11.9±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0017】
別の実施形態において、本発明は、15.9±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0018】
別の実施形態において、本発明は、16.4±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、22.4±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0020】
別の実施形態において、本発明は、23.0±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する低級水和物を記載する。
【0021】
別の実施形態において、本発明は、1.7重量%〜6.1重量%の水を含み、6.0±0.1°、8.0±0.1°、11.9±0.1°、15.9±0.1°、16.4±0.1°、22.4±0.1°および23.0±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する、低級水和物を記載する。
【0022】
さらに別の実施形態において、本発明は、5.5±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0023】
別の実施形態において、本発明は、10.9±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0024】
さらに別の実施形態において、本発明は、12.6±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0025】
さらに別の実施形態において、本発明は、14.7±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0026】
さらに別の実施形態において、本発明は、16.6±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0027】
別の実施形態において、本発明は、21.8±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0028】
別の実施形態において、本発明は、27.3±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0029】
さらに別の実施形態において、本発明は、5.5±0.1°、10.9±0.1°、12.6±0.1°、14.7±0.1°、16.6±0.1°、21.8±0.1°および27.3±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの新規な無水物結晶形を記載する。
【0030】
本発明の別の実施形態は、薬剤として許容される担体との組合せにおいて、本発明のセフジニルの三半水和物形態を含む薬剤組成物に関する。
【0031】
さらに別の実施形態において、本発明は、薬剤として許容される担体との組合せにおいて、本発明のセフジニルのいずれかの低級水和物形態を含む薬剤組成物に関する。
【0032】
別の実施形態において、本発明は、薬剤として許容される担体との組合せにおいて、本発明のセフジニルの無水物形態を含む薬剤組成物に関する。
【0033】
その他の実施形態は、本発明のいずれかの薬剤組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明は、三半水和物等のセフジニルの水和物形態、セフジニルの無水物形態、およびセフジニルの同形低級水和物形態に関する。
【0035】
一般に、結晶性有機物質は、それらの結晶格子内に異なる量の溶媒を含む。本明細書において使用される水和物は、溶媒が水である有機物質の結晶形として定義される。水和物および無水結晶形は、PXRDおよび単結晶X線回折により測定されるそれらのX線回折パターンにより特徴付けられる。水和物は、その他の水和物を形成するために溶媒和または脱溶媒和することができる。図1は、セフジニルの三半水和物形態に対する単結晶X線回折である。セフジニルの4分子(大構造)に対しては、セフジニル1分子当たり水3.5モルを表す、格子(個々の点)内に14分子の水が存在する。セフジニルは、また、水のモル含有量における相当な変化にもかかわらず、同じPXRDパターンを維持するいくつかの低級水和物形態において存在することが予期に反して分かった。これらの低水和物形態は、また、それらが、空間群対称および格子パラメータで定義されるように、元の結晶の三次元秩序を保持しつつ、格子において水の可変量を有するので、同形(isostructural)または同型(isomorphic)水和物といわれる。図3は、この同形低級水和物の1つの単結晶X線回折であり、セフジニルの4分子(大構造)に対して、セフジニル1分子当たり水0.8モルを表す、格子(個々の点)内に5分子の水が存在することを示す。
【0036】
PXRDは、2kW標準焦点X線管およびペルチエ冷却ゲルマニウム固相検出器(Scintag Inc.、Sunnyvale、CA)を備えたXDS−2000/X線回折計を使用して、セフジニルの試料について行った。データは、DMSNTソフトウェア(バージョン1.37)を使用して処理した。X線源は、45kVおよび40mAで操作される銅フィラメントであった。ゴニオメーターの配置は、コランダム標準を使用して毎日チェックされた。試料は、ゼロバックグラウンドプレート上の薄層内に置き、2〜40°2θの範囲にわたって毎分2°2θの速度で連続的に走査した。
【0037】
特徴的PXRDパターンピーク位置は、±0.1°の許容変動を伴う角度位置(2θ)に関して報告されている。この許容変動は、米国薬局方1843〜1884頁(1995年)で定められている。±0.1°の変動は、2つの粉末X線回折パターンを比較する時に使用することを意図している。実際には、一方のパターンからの回折パターンピークに、測定されたピーク位置±0.1°である角度位置(2θ)の範囲が割り当てられ、ピーク位置のそれらの範囲が重複する場合、この2つのピークは、同じ角度位置(2θ)を有するものとみなす。例えば、1つのパターンからの回折パターンピークが5.2°のピーク位置を有すると判定する場合、比較のためには、許容変動により、このピークに5.1°〜5.3°の範囲における位置を割り当てることが可能になる。他方の回折パターンからの比較ピークが5.3°のピーク位置を有すると判定する場合、比較のためには、許容変動により、このピークに5.2°〜5.4°の範囲における位置を割り当てることが可能になる。ピーク位置の2つの範囲(すなわち、5.1°〜5.3°および5.2°〜5.4°)の間には重複が存在するので、比較される2つのピークは、同じ角度位置(2θ)を有するものとみなされる。
【0038】
図2、4および5は、それぞれ、セフジニルの三半水和物、同形低級水和物、および無水物形態の異なるPXRDパターンを示す。図2において示される通り、セフジニルの各分子に対して水3.5モル(約14重量%の水)を含む、セフジニルの三半水和物結晶形は、5.4±0.1°、10.7±0.1°、14.2±0.1°、15.2±0.1°、21.4±0.1°、29.2±0.1°および30.6±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを示す。上側の線は、単結晶データから得られる予測パターンを表し、下側の線は実験パターンである。図4は、6.0±0.1°、8.0±0.1°、11.9±0.1°、15.9±0.1°、16.4±0.1°、22.4±0.1°および23.0±0.1°の2θ値にPXRDパターンにおける特徴ピークを有する同形低級水和物を示す。上側の線は、単結晶データから得られる予測パターンを表し、下側の線は、実験パターンであり、三半水和物の場合と同様、予測パターンは実験的に得られたパターンと良く一致する。上で述べたように、これらの同形低級水和物は、1.7重量%〜6.1重量%の異なる水の含有量を有するが、類似の粉末X線回折パターンを維持する。図6は、1つが約6%の水を有し、もう1つが約4%の水を有する(セフジニル1分子当たり1.5モルおよび0.8モル)、本発明の2つの同形低級水和物から得られるPXRDパターン間の類似性を示す。ゼロ%の水を含む、セフジニルの新規な無水物結晶形は、5.5±0.1°、10.9±0.1°、12.6±0.1°、14.7±0.1°、16.6±0.1°、21.8±0.1°および27.3±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを示す(図5)。
【0039】
動的水分収着/脱離重量分析(以降、DMSG)は、同形低級水和物に対して行った。真空水分はかり(MB 300G、VTI Corporation)を、水分収着および脱離を検討するために使用した。試料は、初めに、真空下で、50℃で乾燥して一定重量とした。相対湿度は、10%ずつ90%まで増加した。試料重量が未変化のままであった場合(すなわち、≦3mg/15分の変化)、水分含有量を記録した。はかりは、実験前に較正され、相対湿度測定の精度は、ポリビニルピロリドンK90で検証した。図7は、本発明の水和物の水分脱離等温線を示す。例えば、40%から50%への相対湿度変化に見られる急激な段差は、結晶が相変化を受ける時、すなわち、結晶構造が変化する時に起こる。相対的に平坦な領域は、1つだけの相、すなわち、結晶構造が変化せず、より物理的に安定な相を表す。10%〜ほぼ40%までの相対湿度の増加は、セフジニルの一連の低級水和物形態をもたらす。本発明の対象物である新規な低級水和物形態は、変動するが同じ結晶構造およびPXRDパターンを維持した(図6を参照)。40%〜50%までの相対湿度の増加は結晶構造変化を引き起こし、50%〜90%までの相対湿度のさらなる増加は、約14重量%の水を含む、セフジニルの三半水和物形態に相当する結晶のより安定な相の形成を引き起こした。
【0040】
表1は、相対湿度の変化に対するセフジニルの異なる水和物形態の重量変化をまとめたものである。重量変化は、水の含有量の割合および計算された水の理論モル含有量で表される。
【0041】
【表1】


【0042】
(薬剤組成物)
本発明の治療方法および薬剤組成物に従って、化合物は、単独またはその他の薬剤と組み合わせて投与することができる。化合物を使用するに当たって、任意の特定の患者に対する特定の治療的に有効な投与量水準は、治療される障害および障害の重篤度;使用される特定の化合物の活性;使用される特定の組成物;患者の年齢、体重、身体全体の健康、性別、および食事;投与の時間;投与経路;使用される化合物の排出速度;治療期間;ならびに使用される化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬剤等のファクターに依存する。化合物は、担体、補助剤、希釈剤、ビヒクル、またはそれらの組合せを含む単位剤形において、経口的に、非経口的に、鼻腔内に、直腸に、膣に、または局所に投与することができる。「非経口的」という用語は、注入ならびに皮下、静脈内、筋肉内、および胸骨内注射を含む。
【0043】
前記化合物の非経口投与の水性または油性懸濁液は、分散剤、湿潤剤、または懸濁剤を用いて製剤することができる。本発明は、本発明の固体形態、例えば、三半水和物および同形低級水和物が懸濁製品に製剤できることを認識するものである。注射用製剤は、希釈剤または溶媒における注射用溶液または懸濁液とすることができる。使用される許容される希釈剤または溶媒は、水、生理食塩水、リンガー溶液、緩衝液、モノグリセリド、ジグリセリド、オレイン酸等の脂肪酸、およびモノグリセリドまたはジグリセリド等の不揮発性油である。
【0044】
非経口的に投与される化合物の効果は、それらの放出速度を緩やかにすることにより延長することができる。特定の化合物の放出速度を緩やかにするための1つの方法は、化合物の難溶性結晶形、さもなければ非水溶性形態の懸濁液を含む注射用デポー剤形を投与することである。化合物の放出速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は、その物理的状態に依存する。特定の化合物の放出速度を緩やかにするための別法は、油性溶液または懸濁液として化合物を含む注射用デポー剤形を投与することである。特定の化合物の放出速度を緩やかにするためのさらに別の方法は、リポソーム、またはポリラクチド−ポリグリコリド、ポリオルトエステルまたはポリ酸無水物等の生分解性ポリマー内に取り込まれた化合物のマイクロカプセルマトリックスを含む注射用デポー剤形を投与することである。薬剤対ポリマーの比およびポリマーの組成により、薬剤放出速度は調節することができる。
【0045】
経皮貼布も、化合物の制御送達を実現することができる。放出速度は、速度調節膜の使用により、またはポリマーマトリックスまたはゲル内に化合物を取り込むことにより緩やかにすることができる。逆に、吸収エンハンサーは、吸収を増加させるために使用することができる。
【0046】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒が挙げられる。これらの固体剤形においては、活性化合物は、スクロース、ラクトース、澱粉、微結晶セルロース、マンニトール、タルク、二酸化珪素、ポリビニルピロリドン、ナトリウム澱粉グリコレート、ステアリン酸マグネシウム等の賦形剤を場合により含むことができる。カプセル、錠剤および丸薬は、また、緩衝剤を含むことができ、錠剤および丸薬は、腸溶コーティングまたはその他の放出調節コーティングで調製することができる。粉末およびスプレーは、また、タルク、二酸化珪素、スクロース、ラクトース、澱粉、またはそれらの混合物等の賦形剤を含むこともできる。スプレーは、クロロフルオロヒドロカーボンまたはその代替物等の通常の噴射剤をさらに含むことができる。
【0047】
経口投与のための液体剤形としては、エマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ、および水等の不活性希釈剤を含むエリキシル剤が挙げられる。これらの組成物は、また、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、芳香剤、香料剤等の補助剤を含むこともできる。液体剤形は、また、軟質弾性カプセル内に含まれてもよい。
【0048】
局所剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、および経皮貼布が挙げられる。化合物は、必要に応じて、滅菌状態下で、担体および任意の必要な防腐剤または緩衝液と混合される。これらの剤形は、また、動物性および植物性脂肪、油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカントゴム、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、タルクおよび酸化亜鉛、またはそれらの混合物等の賦形剤を含むこともできる。直腸または膣投与のための座薬は、化合物を、通常の温度では固体であるが、直腸または膣においては液体であるココアバターまたはポリエチレングリコール等の適当な非刺激性賦形剤と混合することにより調製することができる。点眼薬、眼軟膏剤、粉末および溶液を含む眼薬製剤も、本発明の範囲内にあるものと企図している。
【0049】
(セフジニルのForm I)
純粋なセフジニルは、セフジニルを含む溶液を室温で、または加温下で酸性化し、それによって溶液の結晶析出を行うことにより得ることができる。
【0050】
セフジニルを含む溶液の適当な例としては、例えば、セフジニルのアルカリ金属塩の水溶液を挙げてもよい。セフジニルを含む溶液は、活性炭、非イオン吸着樹脂、アルミナ、酸性酸化アルミニウムのカラムクロマトグラフィーにかけた後に、必要に応じて、酸性化される。酸性化方法は、塩酸等の酸を、好ましくは、室温〜40℃、より好ましくは、15℃〜40℃の温度範囲において添加することにより実施することができる。添加すべき酸の量は、好ましくは、溶液のpH値を約1〜約4とする。
【0051】
純粋なセフジニルは、また、セフジニルをアルコール(好ましくは、メタノール)に溶解し、この溶液を、加温(好ましくは、40℃より下)下で、好ましくは、前記溶液の温度と殆ど同じ温度で加温された水の添加後に、ゆっくりと攪拌し続け、次いで、この溶液を室温まで冷却し、それを放置することにより得ることもできる。
【0052】
セフジニルの結晶化中は、飽和を僅かに超える量を保持することが好ましい。前述の方法により得られるセフジニルは、濾過により回収し、通常の方法により乾燥することができる。
【0053】
7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)(29.55g)は、水(300ml)に添加することができ、混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpH6.0に調整することができる。得られた溶液は、活性炭のカラムクロマトグラフィーにかけ、20%水性アセトンで溶出することができる。画分はまとめ、500mlの容量まで濃縮する。得られた溶液のpHは、35℃で4N塩酸で1.8に調整する。得られた沈殿物は、濾過により回収し、水で洗浄、乾燥し、7−[2−(2アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)を得る。
【0054】
あるいはまた、メタノール(10ml)における7−[2−(2−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]−3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)(0.5g)の溶液に、35℃で、加温水(35℃;1.5ml)を滴状添加することができ、得られた溶液は、3分間ゆっくりと攪拌後、室温に放置する。得られた結晶は濾過により回収し、水で洗浄後、乾燥し、結晶として7−[2(2−3−アミノチアゾール−4−イル)−2−ヒドロキシイミノアセトアミド]3−ビニル−3−セフェム−4−カルボン酸(syn異性体)を得る。
【0055】
セフジニルの三半水和物形態は、1:1のエタノール:酢酸エチル溶液においてセフジニル(約0.8g)を懸濁させることにより調製した(5mlのビーカーを使用した)。この懸濁液に、約6滴の濃HSOを間欠的に超音波処理しながら添加した。溶液は最初透明になり、次いで、淡黄色の厚いゲルが形成された。このゲルに2滴の水を添加し、ゲルを漏斗に移し、ゲルを洗浄しようと試みると、白色懸濁液が形成された。この白色懸濁液を遠心分離管に移し、遠心分離にかけた。2相が分離した。水性層を捨て、さらに水を添加し、渦巻き混合し、遠心分離にかけた。この手順を水性層のpHが約3.5になるまで繰り返した。次いで固体を分析した。
【0056】
三半水和物形態を作製するための別法は、1:1のエタノール:酢酸エチル溶液においてセフジニル(約0.8g)を懸濁させることである(5mlのビーカーを使用した)。この懸濁液に約6滴の濃HSOを間欠的に超音波処理しながら添加した。溶液は、最初透明になり、次いで、淡黄色の厚いゲルが形成された。このゲルに2滴の水を添加し、このゲルを以下のように遠心分離管に移した:各14ml管に、9mlの水を添加し、次いで十分なゲルを添加して12mlとし、2mlの水を添加して14mlとした。そのような管を6個用意した。各管において白色懸濁液が形成された。この白色懸濁液を遠心分離にかけた。2相が分離した。水性層を捨て、さらに水を添加し、渦巻き混合し、遠心分離にかけた。この手順を水性層のpHが約3.5になるまで繰り返した。次いで固体を分析した。
【0057】
セフジニルの低級水和物形態は、試料量に応じて、三半水和物を75℃で30分間加熱するか、または3〜24時間風乾することにより生成した。
【0058】
以上は本発明の単なる例示であって、本発明を開示した実施形態に限定しようとするものではない。当業者にとって自明な改変および変更は、添付の特許請求の範囲において規定する本発明の範囲および性質に含まれるものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】セフジニルの三半水和物形態の単結晶X線回折パターンを示す図である。
【図2】セフジニルの三半水和物形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図3】セフジニルの低級水和物形態の単結晶X線回折パターンを示す図である。
【図4】セフジニルの低級水和物形態の粉末X線回折パターンを示す図である。
【図5】無水物セフジニルの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図6】セフジニルの2つの低級水和物形態の2つの粉末X線回折パターンを示す図である。
【図7】セフジニル水和物の脱離等温線を示すDMSG分析を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5.4±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニル(Cefdinir)の三半水和物結晶形。
【請求項2】
10.7±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項3】
14.2±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項4】
15.2±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項5】
21.4±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項6】
29.2±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項7】
30.6±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項8】
5.4±0.1°、10.7±0.1°、14.2±0.1°、15.2±0.1°、21.4±0.1°、29.2±0.1°および30.6±0.1°の2θ値に、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの三半水和物結晶形。
【請求項9】
セフジニル1分子当たり水3.5モルを含む、請求項8に記載の結晶形。
【請求項10】
水の含有量が14重量%である、請求項8に記載の結晶形。
【請求項11】
6.0±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項12】
8.0±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項13】
11.9±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項14】
15.9±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項15】
22.4±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項16】
23.0±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項17】
6.0±0.1°、8.0±0.1°、11.9±0.1°、15.9±0.1°、16.4±0.1°、22.4±0.1°および23.0±0.1°の2θ値に、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの低級水和物形態。
【請求項18】
水の含有量が6.1重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項19】
水の含有量が6.0重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項20】
水の含有量が5.8重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項21】
水の含有量が5.7重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項22】
水の含有量が5.5重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項23】
水の含有量が4.9重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項24】
水の含有量が4.4重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項25】
水の含有量が3.8重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項26】
水の含有量が1.7重量%である、請求項17に記載の低級水和物形態。
【請求項27】
5.5±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項28】
10.9±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項29】
12.6±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項30】
14.7±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項31】
16.6±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項32】
21.8±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項33】
27.3±0.1°の2θ値に粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項34】
5.5±0.1°、10.9±0.1°、12.6±0.1°、14.7±0.1°、16.6±0.1°、21.8±0.1°および27.3±0.1°の2θ値に、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有するセフジニルの無水物形態。
【請求項35】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項8または9に記載の三半水和物形態を含む薬剤組成物。
【請求項36】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項17に記載のいずれかの低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項37】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項18に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項38】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項19に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項39】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項20に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項40】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項21に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項41】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項22に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項42】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項23に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項43】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項24に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項44】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項25に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項45】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項26に記載の低級水和物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項46】
薬剤として許容される担体との組合せにおいて、請求項34に記載の無水物結晶形を含む薬剤組成物。
【請求項47】
請求項8に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項48】
請求項9に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項49】
請求項17に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項50】
請求項18に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項51】
請求項19に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項52】
請求項20に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項53】
請求項21に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項54】
請求項22に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項55】
請求項23に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項56】
請求項24に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項57】
請求項25に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項58】
請求項26に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。
【請求項59】
請求項34に記載の結晶形を含む、薬剤として許容される組成物を投与することにより、細菌感染症を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−529521(P2007−529521A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503943(P2007−503943)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2005/007359
【国際公開番号】WO2005/090361
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】