説明

セメントキルン排ガス抽気処理装置及びその運転方法

【課題】冷却用空気流導入口の上流側及び下流側でのコーティング発生を防止することのできるセメントキルン排ガス抽気処理装置を提供する。
【解決手段】a)冷却用空気を導入するための導入口を側面に有する円筒状の胴体部と、該胴体部の上流側に同心軸状に連結され、該導入口から導入された冷却用空気を旋回させながら上流側に向かって流すためのテーパー部とを有するサイクロン、ここで、サイクロンのテーパー部の先端はセメントキルン排ガス流路と連通している;b)サイクロンの胴体部に下流側から上流側に向かって同心軸状に一部挿入された抽気管;及びc)サイクロンのテーパー部の上流側の先端に同心軸状に連結され、上流側に向かって内径の大きくなる逆テーパー状のセメントキルン排ガス導入壁、ここで、セメントキルン排ガス導入壁はセメントキルン排ガス流路内に形成される;を備えたセメントキルン排ガス抽気処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSP(サスペンションプレヒーター)付セメントキルン設備やNSP(ニューサスペンションプレヒーター)付セメントキルン設備などのセメントキルン設備でセメントクリンカーを焼成する場合にプレヒーター等の内部壁面に発生し、コーティングの原因となる揮発性成分(アルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩など)をセメントキルン設備から除去する為に、セメントキルン排ガスの一部を抽気して処理する装置及びその運転方法に関する。ここでプレヒーター等の内部壁面とは仮焼炉、SPまたはNSPの最下段サイクロン、及びキルンの原料入り口部及びそれに接続されるキルン排ガスの通過するダクト類を指す。
【背景技術】
【0002】
セメントキルン設備の排ガス中にはアルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩などの揮発性成分が含まれている。これらの揮発性成分はプレヒーターとキルンの間を循環しながら次第に濃縮され、クリンカ中に取り込まれてセメントの品質に悪影響を及ぼすほか、プレヒーター等の内部壁面にコーティングとして付着して、プレヒーター等の内部壁面を閉塞させる原因になる。そのため、セメントキルン設備内の揮発性成分を低減するために、いわゆる塩素バイパス法やアルカリバイパス法と言われる排ガス抽気処理が行われてきた。この方法は、セメントキルン排ガスの一部を抽気管で抽気することで、排ガス中の揮発性成分濃度を低減するという方法である。
【0003】
抽気されるセメントキルン排ガスは1000℃以上の高温であり、この温度状態であれば揮発性成分が液化又は固化して抽気処理装置内でコーティングを生じさせることはないが、排ガスが冷却されていき、融点または昇華点以下の揮発性成分が抽気処理装置の内壁に接触すると、揮発性成分が内壁にコーティングとして付着してしまう。そのため、塩素バイパス法を実施する上では、排ガス中の揮発性成分が抽気処理装置内でコーティングを生じないように冷却することが望まれるため、これを目的とした各種の技術が提案されている。
【0004】
例えば、特開平9−175847号公報(特許文献1)には、抽気管で抽気したセメントキルン排ガスを冷却室に導き、該冷却室内壁および該抽気管の窯尻側先端部に至るまでの内壁面に沿って冷却用空気の旋回流が生じるように、チャンバ出口における該排ガス温度を350℃以下まで冷却するのに十分な冷却用空気を該冷却室内の外周から吹き込み、該冷却室に接続した冷却室出口ダクトで該旋回流を維持させることで徐々に該排ガスと該冷却用空気を混合し、次いでチャンバに導いて、該旋回流を乱すことで該排ガスと該冷却用空気を混合して350℃以下まで冷却すると共に塊状物を除去した後、集塵機に導いて粉状物を除去することを特徴とする、抽気セメントキルン排ガスの処理方法が開示されている(請求項1)。
特許文献1の段落0008には以下の(1)〜(5)が開示されている。
(1)冷却室の外周から内壁面に沿って冷却用空気を吹き込んで、冷却用空気の旋回流で冷却室および冷却室出口ダクトの内壁を保護することにより、冷却室内におけるコーティングの発生が抑制できること。
(2)冷却室内における旋回流を強くすると、抽気管内におけるコーティング発生も抑制されること。
(3)冷却室出口ダクトの長さ、形状を適当なものにすることにより、冷却室で発生した旋回流が冷却室出口ダクト内においても維持され、該ダクト内でのコーティング発生も抑制されること。
(4)冷却室および冷却室出口ダクト内で旋回流を維持しながら徐々に混合して所定温度以下まで冷却してチャンバに導き、チャンバ内では旋回流を乱して排ガスと冷却用空気を混合すると、チャンバ及びそれ以降におけるコーティング発生が抑制されること。
(5)混合後のガスの温度は350℃以下となり、この温度では排ガスに含まれていた除去対象とする揮発性成分の固化は完全であり、ヒュームとして集塵機で取り除くことが可能であること。
特許文献1の段落0011には、抽気管部の内壁を、ファンから冷却室に吹き込まれる冷却用空気の旋回流の逆流によるエアカーテンで保護して、該個所におけるコーティングの発生を抑制したことが記載されている。
特許文献1の段落0019には、冷却用空気吹込口を複数個設け、冷却用空気を複数個所から吹き込むと、冷却室内の旋回流が均一になり、低い風速で抽気管部における逆流を均一に起こすことが可能になり、抽気管や冷却室におけるコーティング発生を抑制するのに有効であるとも記載されている。
【0005】
特開平11−35355号公報(特許文献2)には、効率良くキルンバイパスにおける排ガスを急冷できるようにすることを目的として、二重管構造のプローブをキルン排ガス流路に連通させ、該プローブの内管を介してキルン排ガスの一部を抽気するとともに、該プローブの内管と外管との間の流体通路に冷却気体を供給するキルンバイパスにおける排ガス冷却方法において、前記冷却気体を内管の先端部内方に案内して該プローブの先端部に混合急冷域を形成することを特徴とするキルンバイパスにおける排ガス冷却方法が開示されている(請求項1)。特許文献2には、当該方法において、この冷却気体の流速を内管側の流速より遅くすること(請求項2)、冷却気体のプローブ長手方向の吐出流速を内管内の抽気ガスの流速の1/3〜2/3とすること(請求項3)、冷却気体を旋回流れとすること(請求項4)も開示されている。
また、特許文献2には、キルン排ガス流路に連通する二重管構造のプローブを備え、該プローブがキルン排ガスの一部を抽気する内管と、該内管の先端部より突出する外管と、内管と外管との間に形成され、冷却気体が供給される流体通路とを有する排ガス冷却装置において、前記冷却気体を内管の先端部内方に導くための案内手段を設け、該プローブの先端部に混合急冷域を形成したことを特徴とするキルンバイパスにおける排ガス冷却装置が開示されている(請求項5)。特許文献2には、当該排ガス冷却装置において、前記案内手段を、先端に向かって次第に小径となる外管の先端部とすること(請求項6)、案内手段を、内管の先端部と外管の先端部との間に設けられた傾斜板と、内管の先端部に設けられた冷却空気孔とで構成すること(請求項7)、傾斜板に、プローブ先端保護用空気孔を備えること(請求項8)、外管の先端部に、プローブ先端保護用冷却手段を備えること(請求項9)、プローブ先端保護用冷却手段を、リング状の水冷管とすること(請求項10)も開示されている。
この発明により、抽気ガスはプローブ先端部の混合急冷域で急冷却されるため、抽気ガス中のアルカリや塩素分等を効率よく凝固させ、抽気ガス中のダストの微粉部分に濃縮させることができるとされており、また、冷却空気は内管の先端部内方に案内されるので、ロータリーキルン内への吹き抜けを防止することができるとされる(段落0039)。また、混合急冷域において、抽気ガスが塩素化合物の融点部600〜700℃まで急冷却されることも記載されている(段落0026)。
【0006】
特許文献1や特許文献2に記載の発明では、冷却空気を抽気系へ吹き込むためのファンと抽気のためのファンがそれぞれ必要であったり、抽気管を特別な二重構造にする必要があったりする。そこで、特開2001−335348号公報(特許文献3)では、抽気系の構造を簡略化し、運転時の調整を容易にすることを目的として、セメントキルン排ガスをキルン入口フッドから抽気管で抽気すると共に、抽気した排ガスを冷却用空気と混合して排ガス温度を下げて処理するセメントキルン排ガス抽気処理装置において、先端に向かって徐々に広がる拡径部を有する吸引ダクトの先端部内に、抽気管の出口側端部が周囲に隙間を持って差し込まれており、しかも、吸引ダクト内を負圧にして、抽気管から吸引ダクトに排ガスを抽気すると共に上記隙間から外気を冷却用空気として吸引して吸引ダクトに流入させる抽気吸引装置が吸引ダクトに接続されていることを特徴とするセメントキルン排ガス抽気処理装置が提案されている(請求項1)。
この発明によれば、吸引ダクト内に冷却用空気を送り込むためのファンを用いることなく抽気管と吸気ダクトの隙間から外気を冷却用空気として取り入れることができ、簡単な構造にて外気による排ガスの冷却を行うことができるとされる(段落0040)。
【0007】
特許第4435273号公報(特許文献4)には、セメントキルン排ガスの一部を抽気するための円筒状の第一の抽気管と、第一の抽気管の管壁において円筒状に開いた一つの、又は円周方向に均等間隔で配列された複数の冷却用旋回空気流導入口と、冷却用旋回空気流導入口が設置された箇所において第一の抽気管の周囲を同心円状に囲み、円周方向に均等間隔で配列された複数の旋回羽根を収容した旋回強化ユニットと(ここで、各旋回羽根は、冷却用空気が冷却用旋回空気流導入口から第一の抽気管内に入って第一の抽気管の内壁に沿った旋回流を生じさせることができるように、第一の抽気管の内壁の接線方向又はそれよりも外側を向いている。)、旋回強化ユニットの外壁の略接線方向に流体連通した一本、又は円周方向に均等間隔で配列された複数本の冷却用空気搬送ダクトと(ここで、旋回羽根の数は冷却用空気搬送ダクトの数よりも多い。)を備えるセメントキルン排ガス抽気処理装置が提案されている(請求項1)。
この発明によれば、セメントキルン排ガス中に含まれるアルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩などの揮発性成分を除去するためにセメントキルン排ガスの一部を抽気管で抽気する塩素バイパス法を実施するに当たり、簡便に均一な旋回流を発生させることができる。また、旋回空気流に加えて直進空気流を流すことによって、冷却用空気が抽気管内を逆流するのを防止することも記載されている(段落0046)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−175847号公報
【特許文献2】特開平11−35355号公報
【特許文献3】特開2001−335348号公報
【特許文献4】特許第4435273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の発明では、冷却用空気を冷却室の内壁に沿った旋回流とすることによって、内壁に沿って旋回する冷却空気によるエアカーテンを形成させ、高温の排ガスは、中心部を旋回しながら冷却空気と徐々に混合されて冷却することを狙ったものであり、冷却室内でのコーティングの防止に一定の効果はある。また、冷却用空気吹込口を複数個設け、冷却用空気を複数箇所から吹き込むと、冷却室内の旋回流が均一になることも記載されている。
しかしながら特許文献1に記載の冷却室の構造では、空気吹込口の数を増やすとそれだけ冷却用空気の配管レイアウトが複雑化してコスト高となり、スペース上の制約からも吹込口を多数設けることは現実的ではない。また、旋回流を冷却室から抽気管先端へ向けて逆流させることで、抽気管の内壁におけるコーティングの発生を抑制することを狙っているが、特許文献1に記載の冷却室の構造では、冷却用空気が逆流するとセメントキルン排ガスとの混合によって、抽気管の内壁に接触するガスの温度がコーティングの生成しやすい400〜900℃の範囲に入りやすい。
【0010】
特許文献2には、二重管構造のプローブをキルン排ガス流路に連通させ、該プローブの内管を介してキルン排ガスの一部を抽気するとともに、該プローブの内管と外管との間の流体通路に冷却気体を供給するキルンバイパスにおける排ガス冷却方法において、前記冷却気体を内管の先端部内方に案内するために、先端に向かって次第に小径となる外管の先端部とすることが記載されている。
しかしながら、特許文献2ではプローブ先端部で抽気ガスを混合させて瞬時に融点部600〜700℃まで急冷却することを意図しており、このような温度状態ではプローブの内壁にコーティングが発生する可能性が大である。すなわち、特許文献2に記載の方法ではプローブ先端で冷却気体と抽気ガスを一気に混合させる手法を採用しているため、内管を流れる混合ガスは旋回流が乱れた状態となっており、内管の内壁へのコーティング付着を防止するのに十分なエアカーテンが形成されにくい。
【0011】
特許文献3に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置の構造では、吸引ダクトの先端部よりも上流側にある抽気管内の排気ガスに対する手当がなされていないため、抽気管内でコーティングが発生する危険性が高い。また、吸引ダクト内においても旋回流によるエアカーテンが生成しないため、コーティングの抑制効果は十分でない。
【0012】
特許文献4に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置では、冷却用空気の抽気管内壁に沿った旋回流が均一に形成され、抽気管内壁を高温のセメントキルン排ガスから保護するエアカーテンが抽気管の軸方向に長く持続することで、冷却用空気流導入口から下流側でのコーティングは抑制されるが、冷却用空気流導入口から上流側では、冷却用空気の抽気管内壁に沿った旋回流が形成されない為、コーティグ生成の懸念は残る。
【0013】
そこで、本発明は、冷却用空気流導入口の上流側及び下流側でのコーティング発生を効果的に防止することのできるセメントキルン排ガス抽気処理装置及びその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は一側面において、セメントキルン排ガスが上方に流れるセメントキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部を抽気し、抽気した排ガスを冷却用空気と混合して排ガス温度を下げて処理するセメントキルン排ガス抽気処理装置であって、
a)冷却用空気を導入するための導入口を側面に有する円筒状の胴体部と、該胴体部の上流側に同心軸状に連結され、該導入口から導入された冷却用空気を旋回させながら上流側に向かって流すためのテーパー部とを有するサイクロン、ここで、サイクロンのテーパー部の先端はセメントキルン排ガス流路と連通している;
b)サイクロンの胴体部に下流側から上流側に向かって同心軸状に一部挿入された抽気管;及び
c)サイクロンのテーパー部の上流側の先端に同心軸状に連結され、上流側に向かって内径の大きくなる逆テーパー状のセメントキルン排ガス導入壁、ここで、セメントキルン排ガス導入壁はセメントキルン排ガス流路内に形成される;
を備えたセメントキルン排ガス抽気処理装置である。
【0015】
本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の一実施形態においては、セメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸の水平面に対する角度をθ°とすると、20°≦θ°≦70°である。
【0016】
本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の別の一実施形態においては、セメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸に対するセメントキルン排ガス導入壁の拡開角α°が5°≦α°≦90−θ°である。
【0017】
本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の更に別の一実施形態においては、α°=90−θ°である。
【0018】
本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の更に別の一実施形態においては、セメントキルン排ガス導入壁の母線の長さHが、サイクロンのテーパー部の先端の内径D1の1/2よりも大きい。
【0019】
本発明は別の一側面において、上記記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置の運転方法であって、サイクロンの胴体部の冷却用空気導入口から冷却用空気がサイクロン内に流入する工程と、サイクロン内に流入した冷却用空気がサイクロンの内壁を旋回しながら上流側に進んでいき、テーパー部の先端で方向転換した後、更に、抽気管の内壁を旋回しながら下流に進行していく工程と、セメントキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部がセメントキルン排ガス導入壁を通ってサイクロンに流入する工程と、サイクロンに流入したセメントキルン排ガスがその周囲を旋回する冷却用空気と混合することにより冷却される工程とを含む運転方法である。
【0020】
本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の運転方法の一実施形態においては、サイクロンの内壁及び抽気管の内壁に接触する冷却用空気とセメントキルン排ガスの混合ガスの温度を350℃以下に保持する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、セメントキルン排ガス中に含まれるアルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩などの揮発性成分を除去するためにセメントキルン排ガスの一部を抽気管で抽気する塩素バイパス法を実施するに当たり、冷却用空気流導入口の上流側及び下流側でのコーティング発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置を備えたセメントキルン設備の一構成例である。
【図2】本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の一実施形態について、中心軸を通る垂直断面から見たときの模式図である。
【図3】本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の一実施形態について、中心軸に直角な断面からサイクロンの胴体部に設置された冷却用空気導入口を見たときの模式図である。
【図4】例1(比較例)におけるセメントキルン排ガス抽気処理装置について、中心軸を通る垂直断面から見たときの模式図である。
【図5】例1(比較例)におけるセメントキルン排ガス抽気処理装置について、350℃の等温線を示す模式図である。
【図6】例2(発明例)におけるセメントキルン排ガス抽気処理装置について、350℃の等温線を示す模式図である。
【図7】例3〜6(発明例)におけるセメントキルン排ガス抽気処理装置について、中心軸を通る垂直断面から見たときの模式図である。
【図8】例7(発明例)におけるセメントキルン排ガス抽気処理装置について、350℃の等温線を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
<1.セメントキルン設備>
図1は、本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置101を備えたセメントキルン設備の一構成例を示す。ロータリーキルン102から排出された揮発性成分を含有する排ガスは、主として、プレヒーター103とロータリーキルン102を連結するダクトの屈曲部であるキルン入口フッド104、キルン入口フッド104から直上に延びたライジングダクト105、予熱されたセメント原料を仮焼する仮焼炉106、及びサイクロン107を図中の点線に沿って順に通過していき、キルンIDFファンなどの排気吸引装置108へと向かう。排気吸引装置108を出た後は、ドライヤー109、スタビライザー110、電気集塵機111を経て、煙突から排気される。
【0025】
キルン入口フッド104、ライジングダクト105、及び仮焼炉106などセメントキルン排ガスが上方に流れるセメントキルン排ガス流路の何れかの壁面にセメントキルン排ガス抽出口112を設けることができる。コーティング生成の原因となる揮発性成分がキルン排ガス中濃縮しやすい温度域にあるので、キルン入口フッド104又はライジングダクト105の壁面から抽気するのが好ましい。また、セメントキルン排ガス処理抽気装置101はセメントキルン側の壁面(図1中、右側の壁面)に取り付けるのが、キルン排ガスの流速が主流に比べ相対的に遅くなっている理由により好ましい。
【0026】
セメントキルン排ガス処理抽気装置101の取り付け方向は特に制限はないが、排ガスは上に向かって流れることから、上斜め方向に排ガスが抽気されるように取り付けるのが好ましい。ただし、水平方向に排ガスが抽気されるように取り付けることも可能である。上斜め方向に排ガスが抽気されるように取り付ける場合、セメントキルン排ガス流路内へ挿入されたセメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸の水平面に対する角度をθ°とすると、0<θ°<90とすることができるが、θが小さすぎるとセメントキルン排ガスが上方向に流れているので抽気しにくい一方でθが大きすぎると抽出装置の設置スペースの観点から装置構造が複雑化するので、20°≦θ°≦70°とするのが好ましく、30°≦θ°≦60°とするのがより好ましい。
【0027】
<2.セメントキルン排ガス抽気処理装置>
次に、図2及び図3を参照しながら本発明に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置の一実施形態を説明していく。図2は、ライジングダクト105に連結された本実施形態に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置101の中心軸を通る垂直断面から見たときの模式図である。図3は、本実施形態に係るセメントキルン排ガス抽気処理装置101の中心軸に直角な断面からサイクロンの胴体部に設置された冷却用空気導入口を見たときの模式図である。なお、本明細書においては、抽気されたセメントキルン排ガスがセメントキルン排ガス抽気処理装置を通って流れていく方が下流であり、その逆が上流である。
【0028】
セメントキルン排ガス抽気処理装置101は、冷却用空気130を導入するための導入口121を側面に有する円筒状の胴体部122と、該胴体部122の上流側に同心軸状に連結され、該導入口121から導入された冷却用空気130を旋回させながら上流側に向かって流すための円錐台状のテーパー部124とを有するサイクロン120を備える。ライジングダクト105内にテーパー部124の先端123が斜め上方から一部挿入されていることにより、セメントキルン排ガス抽気処理装置101はライジングダクト105と連通している。また、セメントキルン排ガス抽気処理装置101は、前記サイクロン120の胴体部122に下流側から上流側に向かって同心軸状に一部挿入された抽気管128を備える。
【0029】
このような構成を有するセメントキルン排ガス抽気処理装置101の動作について説明する。冷却用空気130の導入口121から流入した冷却用空気130は、サイクロン120内で旋回しながら上流側に進んでいき、テーパー部124の先端123で、下流側に方向転換する。下流側に向かう冷却用空気130はテーパー部124の先端123の内径D1に応じた直径を有する旋回流となって、上流側に向かう冷却用空気130よりも中心軸に近い領域を旋回しながらサイクロン120を通って抽気管128内へと進む。すなわち、冷却用空気130はサイクロン120の内壁を旋回しながら上流側に進んでいき、先端123で方向転換した後、更に、抽気管128の内壁を旋回しながら下流に進行していく為、サイクロン120、抽気管128の内壁に高温のセメントキルン排ガスが接触する事を防ぐエアカーテンが形成される。
【0030】
一方、ライジングダクト105内を流れるセメントキルン排ガス131は、テーパー部124の開口した先端123の中心軸部分に吸い込まれるようにしてサイクロン120内に流入する。サイクロン120に流入したセメントキルン排ガス131は冷却用空気130と混合することにより冷却されるが、冷却用空気130は方向転換した後も旋回流が維持されていることで、セメントキルン排ガス131は、冷却用空気130と一気に混ざり合うことはなく、サイクロン120の中心軸付近を下流側に流れながらその周囲を旋回する冷却用空気130と徐々に混合される。
【0031】
更に、セメントキルン排ガス抽気処理装置101は、ライジングダクト105内に挿入されたテーパー部124の先端123に同心軸状に連結され、上流側に向かって内径の大きくなる逆テーパー状のセメントキルン排ガス導入壁125を有する。本実施形態においては、セメントキルン排ガス導入壁125によって形成される空間は、テーパー部124の先端123が形成する開口面を底面とする円錐台状である。図2から分かるように、セメントキルン排ガス導入壁125は、セメントキルン排ガス流路内に形成されている。
【0032】
ライジングダクト105内を上昇するセメントキルン排ガス131は、導入壁125によって与えられる流体抵抗によって速度が遅くなる。これにより、サイクロン120に流入したセメントキルン排ガス131が蛇行せずに直進的に流れやすくなるので、サイクロン120や抽気管128の内壁に高温のガスが接触しにくくなる。
【0033】
すなわち、セメントキルン排ガス導入壁125が存在しない状態では、セメントキルン排ガス131は上方向への流速が高い状態でテーパー部124の先端123の開口に流入することになるが、この場合、流入したセメントキルン排ガス131が蛇行することによって冷却用空気130によるエアカーテンが乱れやすくなり、サイクロン120や抽気管128の内壁に高温のガスが接触しやすくなる。一方、セメントキルン排ガス導入壁125が存在することで、テーパー部124の先端123の開口に流入するセメントキルン排ガス131の上方向への流速が軽減されることによって、流入した排ガス131の直進性が向上する。これによって、冷却用空気の旋回流の乱れが減少し、エアカーテンを長く維持することが可能となる。その結果、コーティング発生のリスクが軽減される。
【0034】
また、導入壁125が存在することによって、テーパー部124の先端123の開口から冷却用空気が漏れ出にくくなり、導入した冷却用空気を効率的にサイクロン120及び抽気管128の内壁保護のためのエアカーテンの形成に利用することができる。
【0035】
セメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸に対するセメントキルン排ガス導入壁125の拡開角をα°とすると、αが過度に大きいと排ガス流路への冷却用空気の吹き出しが多くなり冷却効率が低下することからαは小さい方が好ましいが、αが過度に小さくなると導入壁の厚みを一定とすればセメントキルン排ガス導入壁125の母線の長さHが長くなってセメントキルン排ガスの上昇流や異物の衝突によって導入壁125が損傷しやすくなる。そこで、5°≦α°≦90−θ°(ただし、θ°≦85°)とするのが好ましく、10°≦α°≦90−θ°(ただし、θ°≦80°)とするのがより好ましく、20°≦α°≦90−θ°(ただし、θ°≦70°)とするのが更により好ましい。従って、典型的には5°≦α°≦70°であり、より典型的には10°≦α≦60°である。
【0036】
また、セメントキルン排ガス導入壁125の母線の長さHは適宜調節すればよいが、母線が短すぎるとセメントキルン排ガスの上方への流れを妨害してサイクロン120内に引き込む効果が少なくなり、エアカーテンの持続性向上効果が小さくなる一方で、母線が長すぎるとセメントキルン排ガスの上昇流や異物の衝突によって導入壁125が損傷したり、セメントキルン排ガス流路を流れる排ガスの上方向への流れの邪魔となったりすることが懸念される。母線Hはテーパー部124の先端の内径D1と、0.5×D1≦Hの関係にあることが好ましく、0.8×D1≦H≦5×D1の関係にあることがより好ましく、D1≦H≦3×D1の関係にあることが更により好ましく、D1≦H≦2×D1の関係にあることが更により好ましい。
【0037】
また、図2に示すように、セメントキルン排ガス導入壁125の最下部の母線がライジングダクト105等のセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化していることが好ましい。この場合、α=90−θとなる。このような構成とすることで、ライジングダクト105の内壁近傍を流れる排ガス131がスムーズにセメントキルン排ガス抽気処理装置101内に流入される。ただし、図7に示すように、セメントキルン排ガス導入壁125の最下部の母線がライジングダクト105などのセメントキルン排ガス流路の内側に突出する形態とすることも可能である。
【0038】
サイクロン120の胴体部122の側面に設置される冷却用空気流導入口121は、円筒状に開いているか、又は円周方向に均等間隔で配列されていることが均一な旋回流を形成する上で好ましい。更に、図3を参照すると、均一な旋回流を形成するために、導入口121が設置された箇所において胴体部122の周囲を同心円状に囲み、円周方向に均等間隔で配列された複数の旋回羽根126を収容した旋回強化ユニット127を備えることができる。更には旋回羽根126をすべて同じ形状と大きさで作ることが好ましい。
【0039】
各旋回羽根126は、冷却用空気130が導入口121から胴体部122に入って胴体部122及びテーパー部124の内壁に沿った旋回流を生じさせることができるように、前記胴体部の内壁の接線方向又はそれよりも外側を向いているようにすることが好ましい。好ましい実施形態において、各旋回羽根126は胴体部122を中心軸方向から観察して、胴体部122の内壁の接線方向に対して10〜40°の角度βだけ外側を向いている。
【0040】
旋回強化ユニット127の円筒状の外壁の略接線方向に一本、又は円周方向に均等間隔で配列された複数本の冷却用空気搬送ダクト129を流体連通することができる。サイクロン120内で安定な旋回流を生じさせるために、複数の冷却用空気搬送ダクト129が旋回強化ユニット127の円周方向に均等間隔に配列されていることが好ましい。冷却用空気搬送ダクト129の本数が多ければ、それだけ生成する旋回流も安定化し、必要な冷却用空気流量も全体として減らすことができるが、スペース上の制約やダクトのレイアウトが複雑化するという問題から、冷却用空気搬送ダクト129は2、3、又は4本程度とするのが好ましい。
【0041】
サイクロン120の形状は、サイクロンとして機能する限り特に制限はないが、以下に例示する。本発明に係るサイクロン120の一実施形態においては、テーパー部124の先端123の内径D1と、胴体部122の内径D2は、D1/D2=0.4〜0.9の関係を満たしている。D1/D2は小さい方が抽気管128内でエアカーテンを長く維持するのには適しているが、D1/D2が小さいと圧損が大きくなって抽気に必要なエネルギーも大きくなり、また、サイクロン120のテーパー部先端123で冷却用空気が方向転換する場所が下流側に移動するため、テーパー部の先端123における温度が高くなりやすい。そこで、エアカーテンの持続効果、サイクロン120内での冷却効果、及び経済性のバランスからみれば、D1/D2=0.7〜0.8の関係を満たしているのが好ましい。
【0042】
また、抽気管128の挿入長さL2は、短すぎると抽気管128の内壁に十分な旋回流が生じにくくなる一方で、長すぎると抽気管128の上流側先端に高温ガスが接触してコーティングが発生しやすくなる。従って、本発明に係るサイクロン120の一実施形態においては、胴体部122の長さL1、抽気管128の挿入長さL2、及びテーパー部124の軸長さL3は、L1<L2<L1+L3を満たしており、好ましい実施形態においてはL1<L2<L1+0.5×L3を満たしている。
【0043】
また、本発明に係るサイクロン120の典型的な一実施形態においては、抽気管128の内径D3と、テーパー部124の先端123の内径D1は、D1/D3=0.5〜1.5を満たしており、より典型的な実施形態においてはD1/D3=0.6〜1.3を満たしている。
【0044】
セメントキルン排ガス抽気処理装置101は装置内部、とりわけサイクロン120及び抽気管128の内壁でのコーティングの発生が効果的に抑制できる条件で運転することが望まれる。そのためにはまず、サイクロン120及び抽気管128の内壁に接触する冷却用空気130とセメントキルン排ガス131の混合ガスの温度を350℃以下に保持するのに十分な流量の冷却用空気を導入することが望まれる。サイクロン120及び抽気管128の内壁に接触する該混合ガスの温度が350℃以下であれば、アルカリ塩化物やアルカリ硫酸塩などの揮発性成分は完全に固化して粉体となっているので、内壁への付着が実質的に防止できる。十分な流量の冷却用空気130をサイクロン内に送り込んだ結果として、サイクロン120のテーパー部124の開口先端123から冷却用空気130が部分的にライジングダクト105等のセメントキルン排ガス流路内に吹き出しても構わない。
【0045】
前述したように、サイクロン120に流入したセメントキルン排ガス131は冷却用空気130と混合することにより冷却されるが、冷却用空気130が方向転換した後も旋回流によるエアカーテンを長く維持するためには、セメントキルン排ガス131によって容易に破壊されることのない強い旋回流が形成されていることが望ましい。そのため、セメントキルン排ガス131の流量に対して冷却用空気130の流量は質量比で5倍以上であることが好ましく、8倍以上であることがより好ましい。ただし、必要以上に冷却用空気を送り込むのは経済性を悪化させることから、典型的には20倍以下であり、10倍以下とすることもできる。
【実施例】
【0046】
以下、クレイドル社の熱流体解析ソフトSCRYU/Tetraを用いたシミュレーションにより、本発明の効果を検証する。
【0047】
<例1(比較)>
図4に示されるような、導入壁のないセメントキルン排ガス抽気処理装置を用いたときの、装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションにより調べた。セメントキルン排ガス抽気処理装置の構造及び運転条件は表1に示した通りである。
シミュレーションの結果を図5に模式的に示す。図5から分かるように、350℃の等温線が抽気管内で大きく蛇行し、350℃以上の高温ガスが抽気管に接触していることが分かる。このような状況では抽気管128内でコーティグが生成する危険性が高い。
【0048】
<例2(発明例)>
図2に示されるような、例1に対して導入壁を取り付けたセメントキルン排ガス抽気処理装置を用いたときの、装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションにより調べた。セメントキルン排ガス抽気処理装置の構造及び運転条件は表1に示した通りである。ここでは、導入壁の拡開角α°を50°とし、母線の長さHを400mmとした。また、セメントキルン排ガス導入壁の最下部はセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化している(すなわち、α°=90°−θ°)。
シミュレーションの結果を図6に模式的に示す。図6から分かるように、350℃の等温線が抽気管内で中心軸に対してほぼ対称に存在し、サイクロン120及び抽気管128の内壁に接触するガスの温度が350℃以下となっていることが分かる。
【0049】
<例3(発明例)>
導入壁の拡開角α°を40°とし、母線の長さHを509mmとした他は例2と同様の条件で装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションした例である。ここでは、図7に示すように、セメントキルン排ガス導入壁の最下部はセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化しておらず、導入壁は全体的にセメントキルン排ガス流路の内壁から突出している(すなわち、α°<90°−θ°)。
結果は例2とほぼ同様であったが、例2に比べて、350℃の等温線の下流側先端がやや上流側に移動した。また、抽気管の内壁に接触するガスの温度も例2に比べて全体的に低下した。結果は図示せず。
【0050】
<例4(発明例)>
導入壁の拡開角α°を30°とし、母線の長さHを533mmとした他は例2と同様の条件で装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションした例である。ここでは、図7に示すように、セメントキルン排ガス導入壁の最下部はセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化しておらず、導入壁は全体的にセメントキルン排ガス流路の内壁から突出している。
結果は例3とほぼ同様であったが、例3に比べて、350℃の等温線の下流側先端が更に上流側に移動した。また、抽気管の内壁に接触するガスの温度も例3に比べて全体的に低下した。結果は図示せず。
【0051】
<例5(発明例)>
導入壁の拡開角α°を20°とし、母線の長さHを691mmとした他は例2と同様の条件で装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションした例である。ここでは、図7に示すように、セメントキルン排ガス導入壁の最下部はセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化しておらず、導入壁は全体的にセメントキルン排ガス流路の内壁から突出している。
結果は例4とほぼ同様であったが、例4に比べて、350℃の等温線の下流側先端が更に上流側に移動した。また、抽気管の内壁に接触するガスの温度も例4に比べて全体的に低下した。結果は図示せず。
【0052】
<例6(発明例)>
導入壁の拡開角α°を10°とし、母線の長さHを1,143mmとした他は例2と同様の条件で装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションした例である。ここでは、図7に示すように、セメントキルン排ガス導入壁の最下部はセメントキルン排ガス流路の内壁と一体化しておらず、導入壁は全体的にセメントキルン排ガス流路の内壁から突出している。
結果は例5とほぼ同様であったが、例5に比べて、350℃の等温線の下流側先端が更に上流側に移動した。また、抽気管の内壁に接触するガスの温度も例5に比べて全体的に低下した。結果は図示せず。
【0053】
(考察)
例2〜例6より、拡開角α°に関わらず、サイクロン及び抽気管内において、コーティングの生成を抑制できる350℃以下を達成できることが分かる。また、拡開角α°を小さくし、導入壁の母線の長さHが長くなるにつれて、抽気管内を流れるガスの温度が低下していることが分かる。これは、セメントキルン排ガス流路に吹き出す冷却用空気が減少したことにより、逆にサイクロン及び抽気管内を流れる冷却用空気の流量が増加し、冷却効率が上昇した事によると考えられる。
【0054】
<例7(発明例)>
テーパー部124の先端123の内径D1を例2に比べて半分とし、母線Hの長さを533mmとした他は、例2と同様の条件で装置内を流れるガスの温度分布をシミュレーションした例である。
結果を図8に示す。例2〜6とは異なり、350℃の等温線が下流側にほぼ平行に延長していることが分かる。これは、冷却用空気によって強力なエアカーテンが形成されたことによると考えられる。但し、サイクロンのテーパー部の開口先端において350℃を超えている箇所が見られた。
【0055】
【表1】

【符号の説明】
【0056】
101 セメントキルン排ガス抽気処理装置
102 ロータリーキルン
103 プレヒーター
104 キルン入口フッド
105 ライジングダクト
106 仮焼炉
107 サイクロン
108 排気吸引装置
109 ドライヤー
110 スタビライザー
111 電気集塵機
120 サイクロン
121 冷却用空気導入口
122 胴体部
123 テーパー部の先端
124 テーパー部
125 導入壁
126 旋回羽根
127 旋回強化ユニット
128 抽気管
130 冷却用空気
131 セメントキルン排ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルン排ガスが上方に流れるセメントキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部を抽気し、抽気した排ガスを冷却用空気と混合して排ガス温度を下げて処理するセメントキルン排ガス抽気処理装置であって、
a)冷却用空気を導入するための導入口を側面に有する円筒状の胴体部と、該胴体部の上流側に同心軸状に連結され、該導入口から導入された冷却用空気を旋回させながら上流側に向かって流すためのテーパー部とを有するサイクロン、ここで、サイクロンのテーパー部の先端はセメントキルン排ガス流路と連通している;
b)サイクロンの胴体部に下流側から上流側に向かって同心軸状に一部挿入された抽気管;及び
c)サイクロンのテーパー部の上流側の先端に同心軸状に連結され、上流側に向かって内径の大きくなる逆テーパー状のセメントキルン排ガス導入壁、ここで、セメントキルン排ガス導入壁はセメントキルン排ガス流路内に形成される;
を備えたセメントキルン排ガス抽気処理装置。
【請求項2】
セメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸の水平面に対する角度をθ°とすると、20°≦θ°≦70°である請求項1に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置。
【請求項3】
セメントキルン排ガス抽気処理装置の中心軸に対するセメントキルン排ガス導入壁の拡開角α°が5°≦α°≦90−θ°である請求項2に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置。
【請求項4】
α°=90−θ°である請求項3に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置。
【請求項5】
セメントキルン排ガス導入壁の母線の長さHが、サイクロンのテーパー部の先端の内径D1の1/2よりも大きい請求項1〜4の何れか一項に記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置。
【請求項6】
請求項1〜5何れか一項記載のセメントキルン排ガス抽気処理装置の運転方法であって、サイクロンの胴体部の冷却用空気導入口から冷却用空気がサイクロン内に流入する工程と、サイクロン内に流入した冷却用空気がサイクロンの内壁を旋回しながら上流側に進んでいき、テーパー部の先端で方向転換した後、更に、抽気管の内壁を旋回しながら下流に進行していく工程と、セメントキルン排ガス流路からセメントキルン排ガスの一部がセメントキルン排ガス導入壁を通ってサイクロンに流入する工程と、サイクロンに流入したセメントキルン排ガスがその周囲を旋回する冷却用空気と混合することにより冷却される工程とを含む運転方法。
【請求項7】
サイクロンの内壁及び抽気管の内壁に接触する冷却用空気とセメントキルン排ガスの混合ガスの温度を350℃以下に保持する請求項6に記載の運転方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2013−28489(P2013−28489A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165606(P2011−165606)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】