説明

セラミックグリーンシートの仮積層装置

【課題】セラミックグリーンシートを複数積層する際に、ガイドピンやそれを挿通させるための貫通孔を設けることなく高精度にセラミックグリーンシートを積層することができるセラミックグリーンシートの仮積層装置を提供する。
【解決手段】複数のセラミックグリーンシート5を積層する積層仮接着設備8と、セラミックグリーンシート5から枠体3を分離する切断設備9と、この切断設備9から積層仮接着設備8にセラミックグリーンシート5を搬送する搬送設備10とを有し、積層仮接着設備8は、仮接着加圧テーブル11と、撮像装置14a,14bと、第1の加熱装置15とを備え、切断設備9は、切断テーブル20と、切断刃23とを備え、搬送設備10は、吸着板16と、吸引装置と、第1の貫通孔17a,17bと、第2の貫通孔18a,18bとを備えるセラミックグリーンシートの仮積層装置1による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置として機能させるために半導体素子や水晶振動子等の電子部品を収納するセラミックスパッケージ等を作成する目的で用いられるセラミックグリーンシートの仮積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のセラミックグリーンシートを位置ずれさせることなく積層しようとする場合、ロール状のセラミックグリーンシートを所望の矩形状に切断し、その外周辺部にダミー部を設け、それぞれのセラミックグリーンシートのダミー部に位置合わせを行うための基準用の貫通孔を予め設ける手法が多く用いられている。
このような貫通孔は、焼成後に配線パターンとなる導電性ペースト等をセラミックグリーンシートにスクリーン印刷する際に、印刷台上の所定の位置にセラミックグリーンシートをセッティングするために利用することができる。
すなわち、スクリーン印刷用の印刷台上にガイドピンを立設しておき、セラミックグリーンシートに形成される貫通孔にこのガイドピンを挿通させることで印刷位置決めの基準とすることができる。
さらに、このようにスクリーン印刷が完了したセラミックグリーンシートを位置あわせしながら積層する際には、積層装置のラミネート治具板上に位置あわせ用のガイドピンを立設し、セラミックグリーンシートの貫通孔にこのガイドピンを挿通させることでセラミックグリーンシート同士の位置ズレを防止しながら積層していた。
【0003】
しかしながらロール状のセラミックグリーンシートを所望の大きさの矩形状に切断して用いる場合、スクリーン印刷時に加熱乾燥を繰り返したり、印刷面の平滑化を目的として加圧したりすることで、セラミックグリーンシートに熱や圧力が繰り返し作用した際に、セラミックグリーンシート自体が膨張したり収縮したりしてセラミックグリーンシートの寸法バラツキが大きくなる。
この結果、セラミックス焼結体の貫通孔に積層装置のラミネート治具板上に立設されるガイドピンを挿通することができない場合があった。
【0004】
そこで、このような不具合に対処する目的で、矩形状に切断されたセラミックグリーンシートを、金属製の窓枠形状の枠体の内側に配置し、このセラミックグリーンシートの縁部と枠体の内側面を対向させた状態で、例えば、接着テープ等を用いてセラミックグリーンシートの外縁を枠体に固定し、セラミックグリーンシートの外縁近傍に形成されるダミー部には貫通孔を形成しておき、この貫通孔をスクリーン印刷機に設けられる画像認識装置で認識させて印刷時の位置決めを行っていた。
さらに、セラミックグリーンシートを積層する際には、上述のような枠体に拘束されたセラミックグリーンシートをそのままの状態で積層する方法が採用されていた。このとき、セラミックグリーンシート同士の位置決めは治具板上に立設されるガイドピンをセラミックグリーンシートのダミー部に形成される貫通孔に挿入することで行っていた。
【0005】
また、特許文献1には「積層装置」という名称で、シート積層法による多層セラミック基板を製造する際にセラミックグリーンシートを積層するための積層装置に関する発明が開示されている。
特許文献1に係る「積層装置」は、セラミックグリーンシートを吸着して外形打ち抜き加工を行って枠体を分離した後に、撮像装置により基準用の貫通孔を確認して、この貫通孔に正確に治具板上に立設される位置合わせ用のガイドピンを挿通することで複数枚のセラミックグリーンシートを積層させるものである。
特許文献1に係る「積層装置」によれば、セラミックグリーンシートを積層する際の位置決め精度を高めることができるという効果を有する。
【0006】
また、特許文献2には「グリーンシートの積層方法」という名称で、セラミックグリーンシートの積層時に、ガイド孔を形成したり、ガイドピンを使用することなくセラミックグリーンシートを精度よく積層することができるグリーンシートの積層方法に関する発明が開示されている。
特許文献1に係る「グリーンシートの積層方法」は、少なくとも2ヶ所以上の基準穴を有するグリーンシートの外周部にスリット状の切欠きを入れて予め内部残留応力を除去し、この内部残留応力が除去されたグリーンシートを位置決めテーブルに載置し、該載置されたグリーンシートの前記基準穴を認識し、該認識結果に基づいて少なくともX、Y軸の水平方向の位置補正を行い、該位置補正終了後のグリーンシートの外周部の所定位置を切断し、該切断されたグリーンシートの切断端面を基準として順次積層する方法である。
特許文献2に係る「グリーンシートの積層方法」によれば、セラミックグリーンシートを積層する際の位置決め精度を高めることができると同時に、従来ガイド孔を設けていた領域にも配線パターンを印刷することが可能となり、製品であるセラミック基板の歩留まりを向上させることができるという効果を有する。
また、グリーンシートの積層体を加圧接着した後にガイド孔が形成された位置を切断する工程を設ける必要がないので、セラミック基板の生産効率を高めることができるという効果を有する。
【0007】
【特許文献1】特開昭62−124947号公報
【特許文献2】特開平7−308911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のような従来技術のように、セラミックグリーンシートを枠体に拘束したまま治具板上に立設される位置合わせ用のガイドピンに順次相通させて重ね合わせる手法を採用した場合、ガイドピンとセラミックグリーンシートのクリアランスを小さくすることで積層時の位置ずれを小さくすることができるものの、特にガイドピンとセラミックグリーンシートのクリアランスを小さくした際には、ホットプレス時にセラミックグリーンシートと、ガイドピンとの熱膨張係数差に起因する積層ズレが生じる可能性が高かった。
【0009】
また、特許文献1に記載の発明の場合、セラミックグリーンシートと位置合わせ用のガイドピンの熱膨張係数が異なるため、やはりこの場合も上述の従来技術の場合と同様に、ホットプレス時にセラミックグリーンシートと、ガイドピンとの熱膨張係数差に起因する積層ズレが生じる可能性が高かった。
【0010】
また、特許文献2記載の発明の場合、セラミックグリーンシートの積層時にガイド孔や、ガイドピンを用いる必要がないものの、セラミックグリーンシートを積層する際にその切断面を基準としているので、装置のクリアランスがセラミックグリーンシート同士のズレを大きくしてしまう可能性があり、積層ズレの少ない積層体を製造し難いという課題を有していた。
【0011】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、セラミックグリーンシートを複数積層する際に、ガイドピンやそれを挿通させるための貫通孔を設けることなく個々のセラミックグリーンシートを高精度に積層することができると同時に、積層されたセラミックグリーンシートを積層ずれさせることなく仮接着することができるセラミックグリーンシートの仮積層装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明であるセラミックグリーンシートの仮積層装置は、複数のセラミックスグリーンシートを重ね合わせて温度と圧力をかけて接合して積層体を形成する際に用いるセラミックグリーンシートの仮積層装置であって、このセラミックグリーンシートの仮積層装置は、複数のセラミックグリーンシートを積層し、かつ、新たに積層されたセラミックグリーンシートをその下層に配置される他のセラミックグリーンシートに仮接着する積層仮接着設備と、枠体の内側に保持されるセラミックグリーンシートを環状に切断してセラミックグリーンシートから枠体を分離する切断設備と、この切断設備から積層仮接着設備にセラミックグリーンシートを搬送する搬送設備とを有し、積層仮接着設備は、上面に平坦面を具備する仮接着加圧テーブルと、この仮接着加圧テーブル上に配置されセラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーを撮像する撮像装置と、仮接着加圧テーブルの上に配置される第1の加熱装置とを備え、切断設備は、上面に平坦面を具備する切断テーブルと、切断テーブルの上面から出没可能に収容される切断刃とを備え、搬送設備は、多孔体から成り切断テーブルの平坦面と略水平な吸着面を具備する吸着板と、吸着板の吸着面の裏面側に負圧を生じさせる吸引装置と、吸着板に穿設され、吸着面にセラミックグリーンシートを吸着保持した際にこのセラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーの撮像を可能にする第1の貫通孔と、吸着板に穿設され、第1の加熱装置の挿通を可能にする第2の貫通孔とを備えることを特徴とするものである。
上記構成の発明において、積層仮接着設備は、切断設備から搬送設備により搬送されるセラミックグリーンシートを受け入れてその表面上に積層ズレを低減しながら積層させると同時に、第1の加熱装置により新たに積層されたセラミックグリーンシートをその下層に配置される他のセラミックグリーンシートに仮接着するという作用を有する。
また、切断設備は、その上面に載置されるセラミックグリーンシートを必要に応じて環状に切断し、セラミックグリーンシートとそれを保持する枠体とを分離するという作用を有する。
さらに、搬送設備は、切断設備において枠体に保持されるセラミックグリーンシート、又は、切断設備において枠体が分離されたセラミックグリーンシートを積層仮圧着設備上に搬送し、その上面側に枠体に保持されるセラミックグリーンシート、又は、枠体から分離されたセラミックグリーンシートを載置して積層するという作用を有する。
そして、積層仮接着設備における仮接着加圧テーブルは、搬送設備により搬送される、枠体に保持されるセラミックグリーンシート、又は、枠体から分離されたセラミックグリーンシートをその平坦面上に保持するという作用を有する。また、仮接着加圧テーブル上に配置される撮像装置は、セラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーの映像を撮像するという作用を有する。加えて、第1の加熱装置は、新たに積層されたセラミックグリーンシートの上面に接触してその接触部分を加熱し、仮接着加圧テーブル上に新たに積層されたセラミックグリーンシートとその下層に配置される他のセラミックグリーンシートとを融着させて仮接着するという作用を有する。
また、切断設備における切断テーブルは、その上面に形成される平坦面において、枠体に保持されるセラミックグリーンシートを支持すると同時に、その厚み部分にセラミックグリーンシートを環状に切断するための切断刃を出没可能に収容するという作用を有する。
さらに、搬送設備における吸引装置は、吸着板の吸着面の裏面側に負圧を生じさせるという作用を有する。また、吸着板は、多孔体により形成されることで吸着面の裏面側に吸引力(負圧)を発生させた場合に、吸着面に略一様な吸着力を発生させるという作用を有する。そして、この吸着力により吸着板の吸着面に枠体とセラミックグリーンシートの両方を、又は、セラミックグリーンシートのみを吸着保持するという作用を有する。
加えて、吸着板に形成される第1の貫通孔は、吸着板の一方の面から対向する面への透視を可能にするという作用を有する。この結果、撮像装置により、吸着面に吸着保持されるセラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーの撮像を可能にするという作用を有する。
また、吸着板に形成される第2の貫通孔は、搬送設備にセラミックグリーンシートを吸着保持したままの状態で、このセラミックグリーンシートの上面に第1の加熱装置を接触させるという作用を有する。
従って、請求項1記載の発明は、切断設備に運ばれるセラミックグリーンシートを枠体ごと、あるいは、セラミックグリーンシートから枠体が分離されたものを、搬送設備により積層仮圧着設備の仮接着加圧テーブル上に搬送して積層すると同時に、新たに積層されたセラミックグリーンシートとその下層に配置される他のセラミックグリーンシートとを溶着して、セラミックグリーンシートの仮積層体を形成させるという作用を有する。
また、このとき、セラミックグリーンシートとその熱膨張係数と異なる熱膨張係数を有する部品が接触するのを妨げるという作用を有する。
【0013】
請求項2に記載の発明であるセラミックグリーンシートの仮積層装置は、請求項1に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置であって、吸着板は、その厚み部分でかつ吸着面近傍に発熱部を具備することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1に記載の発明と同様の作用に加え、吸着板はその厚み部分でかつ吸着面近傍に発熱部を具備することでセラミックグリーンシートを吸着保持した状態で切断刃による切断を行う際に、セラミックグリーンシートの切断部分を発熱部から発せられる熱により加熱するという作用を有する。
この結果、発熱部から発せられる熱でセラミックグリーンシートに含有される成形助剤を軟化させるという作用を有する。
よって、切断刃によるセラミックグリーンシートの切断を容易にするという作用を有する。
【0014】
請求項3に記載の発明であるセラミックグリーンシートの仮積層装置は、請求項1又は請求項2に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置であって、切断テーブル又は切断刃は、切断刃を加熱するための第2の加熱装置を具備することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同様の作用に加え、切断テーブル又は切断刃に設けられる第2の加熱装置は、切断刃を加熱するという作用を有する。
従って、切断刃が接触する部分のセラミックグリーンシートが切断刃により加熱されることで、切断刃に接触する部分のセラミックグリーンシートに含有される成形助剤を軟化させるという作用を有する。
この結果、切断刃によるセラミックグリーンシートの切断を一層容易にするという作用を有する。
【0015】
請求項4に記載の発明であるセラミックグリーンシートの仮積層装置は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置であって、吸着板は、その吸着面において切断刃が当接する位置から吸着板の中央に向うエリアの吸引力と、吸着面において切断刃が当接する位置から吸着板の外縁に向うエリアの吸引力とが独立に制御されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項3のそれぞれの発明と同様の作用に加え、仮接着加圧テーブル上に積層するためのセラミックグリーンシートが存在するエリアにのみ吸着力を発生させるという作用を有する。
また、請求項4に記載の発明においては、吸着面において枠体が配置されるエリアの吸着力の発生を停止させるという作用を有する。
この結果、セラミックグリーンシートから枠体を分離させるという作用を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1記載の発明によれば、枠体に保持されたセラミックグリーンシートを最下層とし、その上面にセラミックグリーンシートを保持する枠体を分離したセラミックグリーンシートを、積層ズレを最小限度にしながら積層することができるという効果を有する。
さらに、枠体を分離したセラミックグリーンシートを新たに1枚積層するごとに、第1の加熱装置により、最上層に配置されるセラミックグリーンシートとその下層に配置されるセラミックグリーンシートを接着することができるという効果を有する。
この結果、請求項1記載の発明によれば、少なくとも2枚以上セラミックグリーンシートが積層ズレを最小限度にしながら積層することができるとともに、これらが互いに位置ずれしないように接着されたセラミックグリーンシートの仮積層体を製造することができるという効果を有する。
そして、上述のようなセラミックグリーンシートの仮積層体は、搬送・移動した場合にも、それぞれのセラミックグリーンシートが位置ズレを起す心配がないので、上述のようなセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧及び加熱による接着に適した場所に移動してから、加圧及び加熱処理してセラミック積層体とすることができる。
このことはすなわち、本発明の請求項1記載の発明により形成されたセラミックグリーンシートの仮積層体を、このセラミックグリーンシートの熱膨張係数と近似する熱膨張係数を有する材質からなる治具で挟持してから加圧及び加熱処理を行うことができることを意味しており、しかもこの時、セラミックグリーンシートの仮積層体にはセラミックグリーンシートと異なる熱膨張係数を有する部品との接触部分が存在しないので、加圧及び加熱処理時に、セラミックグリーンシートの仮積層体同士の間に膨張差あるいは収縮差が生じ難く、従って、積層ズレの少ないセラミック積層体を製造することができるという効果を有する。
【0017】
本発明の請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明と同様の効果に加え、セラミックグリーンシートから枠体を切断分離する際に、セラミックグリーンシートの切断部分を局所的に加熱することで、セラミックグリーンシートに含有される成形助剤を軟化させることができ、これにより切断刃をセラミックグリーンシートの内部へとスムースに侵入させることができるという効果を有する。
また、セラミックグリーンシートの切断時に切断屑が発生するのを防止することができるので、切断屑がセラミックグリーンシートの仮積層体に混入して製品が不良品化するのを防止することができるという効果を有する。
この結果、高い品質を有するセラミック積層体を製造することができるという効果を有する。
【0018】
本発明の請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明と同様の効果に加え、第2の加熱装置により切断刃を加熱することで、切断刃と直接接触する部分のセラミックグリーンシートを切断刃により加熱することができるという効果を有する。
この結果、切断刃が接触する部分のセラミックグリーンシートに含有される成形助剤を軟化させることができ、これにより切断刃をセラミックグリーンシートの内部へとスムースに侵入させることができると同時に、セラミックグリーンシートの切断時に切断屑が発生するのを防止することができるので、切断屑がセラミックグリーンシートの仮積層体に混入して製品が不良品化するのを防止することができるという効果を有する。
この結果、高い品質を有するセラミック積層体を製造することができるという効果を有する。
【0019】
本発明の請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3に記載のそれぞれの発明と同様の効果に加え、枠体に保持されるセラミックグリーンシートを切断刃により環状に切断した際に、吸着面において切断刃が当接する位置から吸着板の外縁に向うエリアにおける吸引力の発生を停止することで、このエリアにおける吸着力の発生を停止することができるという効果を有する。
この結果、枠体に保持されるセラミックグリーンシートを切断刃により環状に切断した後、吸着面において切断刃が当接する位置から吸着板の中央に向うエリアに吸着されるセラミックグリーンシートのみを仮接着加圧テーブルへと搬送することができるという効果を有する。
従って、請求項4記載の発明に係る搬送設備1台で、枠体に保持されたままのセラミックグリーンシートと、枠体が除去された状態のセラミックグリーンシートの両方を搬送することが可能となり、搬送設備の汎用性を高めることができるという効果を有する。この結果、セラミックグリーンシートの仮積層体を作成する際の作業効率を向上することができるという効果を有する。
よって、セラミック積層体の製造コストを削減することができるので、高品質のセラミック積層体を迅速にかつ安価に提供することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の最良の実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置について図1乃至図13を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置に使用するセラミックグリーンシートについて図1を参照しながら詳細に説明する。
図1(a)は枠体に保持された状態のセラミックグリーンシートの外観を示す平面図であり、(b)は図1(a)中のA−A線矢視断面図である。
図1(a)に示すように、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置において用いられる被積層対象2は、略矩形状で、例えば、金属製から成る枠体3の内側に、セラミックグリーンシート5がクリアランス(隙間)Nを設けながら枠体3の内側面3aとセラミックグリーンシート5の外縁27を対向させながら配置され、このクリアランスを跨ぐように、枠体3の上面とセラミックグリーンシート5の上面に接着シート6が貼設されて、枠体3にセラミックグリーンシート5が固定されている。
また、図1(b)は、被積層対象2を載置台7上に載置した状態における断面を示しているのであるが、図示するような平坦な場所に被積層対象2を静置した場合、接着シート6がセラミックグリーンシート5の重さで伸びて、セラミックグリーンシート5は、載置台7の平坦面上に支持された状態で枠体3に保持される。
さらに、枠体3の対向する2辺には少なくとも1対の貫通孔4,4が形成されており、この貫通孔4,4にガイドピンを挿通することでセラミックグリーンシート5を枠体3ごと着脱可能に固定することができるので、セラミックグリーンシート5の表面又は裏面に、例えば、図示しない導電性ペーストをスクリーン印刷等して塗布する際の位置決め用として使用することができる。
なお、クリアランスNの大きさは、1mm未満であることが望ましい。この理由の詳細については後述する。
【0022】
次に、図2を参照しながら本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置の構成について詳細に説明する。
図2は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置の概要を示す断面図である。なお、図1に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図2に示すように、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1は、主に、複数のセラミックグリーンシート5を積層し、かつ、新たに積層されたセラミックグリーンシート5を、その下層に配置される他のセラミックグリーンシート5に仮接着するための積層仮接着設備8と、枠体3に保持されるセラミックグリーンシート5を環状に切断して、上記図1に示すような被積層対象2から枠体3を分離してセラミックグリーンシート5のみとする切断設備9と、切断設備9から被積層対象2(枠体3に保持されたセラミックグリーンシート5)、又は、枠体3を分離したセラミックグリーンシート5を積層仮接着設備8に搬送する搬送設備10により構成されている。
【0023】
また、積層仮接着設備8は、上面に平坦面を備える仮接着加圧テーブル11と、仮接着加圧テーブル11の上方に配置され、セラミックグリーンシート5の上面に形成されるマーカーを撮像するための撮像装置14a,14bと、仮接着加圧テーブル11の上方に配置され、仮接着加圧テーブル11上に新たなセラミックグリーンシート5が積層された際に、最上層に位置するセラミックグリーンシート5の上面からセラミックグリーンシート5を加熱して最上層に位置するセラミックグリーンシート5と、その下層に位置するセラミックグリーンシート5を局所的に溶着させるためのホットバー15,15(第1の加熱装置)により構成されている。
さらに、仮接着加圧テーブル11は、セラミックグリーンシート5の積層を行う積層位置Qと、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1により製造されたセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧・加熱処理するための加圧・加熱処理位置Pとの間を移動可能に構成されている。
また、図2に示すように、仮接着加圧テーブル11上に、セラミックグリーンシートの熱膨張係数と近似する熱膨張係数を有する材質から成るラミネート治具13をクランプ12で固定しながら予め設けておいても良い。
この場合、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1により製造されたセラミックグリーンシートの仮積層体を仮接着加圧テーブル11に載置したまま加圧・加熱処理位置Pに移動するだけで、これを加圧・加熱処理することができるという効果を有する。
この場合、ラミネート治具13の材質は、セラミックグリーンシート5の熱膨張係数と近似するので、加圧・加熱処理した際に、セラミックグリーンシート5同士の膨張・収縮による積層ズレの発生を抑制することができるという効果を有する。
この結果、高品質なセラミック積層体を製造することができるという効果を有する。
なお、セラミックグリーンシートの仮積層体を別の施設に移動してから加圧・加熱処理してもよく、この場合、加圧・加熱処理位置Pはセラミックグリーンシートの仮積層体の搬出位置となる。
加えて、仮接着加圧テーブル11上にラミネート治具13を設けておくことで、新たに積層したセラミックグリーンシート5とその下層に配置されるセラミックグリーンシート5を仮接着するためにセラミックグリーンシート5を加熱した場合でも、最下層に配置されるセラミックグリーンシート5とラミネート治具13の熱膨張係数は近似するので、これらの膨張・収縮によるセラミックグリーンシート5の変形や積層ズレを防止することができるという効果を有する。
【0024】
さらに、切断設備9は、上面に平坦面を具備する切断テーブル20の厚み部分には収容孔22,22が形成されており、この収容孔22,22内に切断テーブル20の上面側に出没可能に切断刃23,23が設けられている。
また、切断刃23、又は、切断刃23を収容する切断テーブル20には、切断刃23を加熱するための第2の加熱装置(図示せず)が設けられている。この第2の加熱装置の加熱方法は特に限定するものではないが、例えば導電性の加熱コイルによるものがある。
さらに、切断テーブル20の上面には、図1に示す被積層対象2の枠体3に穿設される貫通孔4に挿通させるためのガイドピン21,21が立設されており、切断テーブル20上に枠体3に保持されるセラミックグリーンシート5を着脱可能に固定している。
【0025】
そして、切断設備9から積層仮接着設備8に、枠体3に保持されたセラミックグリーンシート5、又は、セラミックグリーンシート5のみを搬送する搬送設備10は、多孔体から成り上記切断テーブル20の平坦面と略水平な吸着面16aを有する吸着板16と、この吸着板16の吸着面16aの裏面側に負圧を生じさせる図示しない吸引装置と、吸着板16及び吸引装置をX−Y−θ方向に高精度に移動させることのできる図示しない駆動機構を有している。
また、上述のような搬送設備10における吸着板16は、その吸着面16aにセラミックグリーンシート5を吸着保持した際にセラミックグリーンシート5の上面(吸着面16aに接触する側の面)に形成される図示しないマーカーを、吸着面16aの裏面側から透視可能にし、撮像装置14a,14bによるマーカーの撮像を可能にするための撮像用孔17a,17bが設けられている。
さらに、吸着板16には、ホットバー15,15を挿通可能にするための挿通孔18,18、及び、セラミックグリーンシート5を切断する際にセラミックグリーンシート5の切断部分を加熱するための発熱部19,19が設けられている。
【0026】
続いて、図2乃至図13を参照しながら本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する手順を詳細に説明する。
図3〜図13はいずれも本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、セラミックグリーンシートの仮積層装置1のそれぞれの構成の作用が理解され易いよう、図3乃至図13においては必要に応じて説明に必要な設備のみを拡大して表示した。
【0027】
本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1を用いて、セラミックグリーンシートの仮積層体を製造するには、まず、図2に示すように切断設備9の切断テーブル20上に被積層対象2aを、すなわち、枠体3に保持されたセラミックグリーンシート5aを、貫通孔4,4にガイドピン21,21を挿通させた状態で載置する。
【0028】
次に、図3に示すように、被積層対象2a上に吸着板16を図示しない駆動機構により移動させ、被積層対象2aの上面に吸着板16の吸着面16aを接近させてから、吸着板16に吸引力を発生させて被積層対象2aを吸着保持する。
先にも述べたように、被積層対象2a(2)における枠体3とセラミックグリーンシート5a(5)の間に形成されるクリアランスを、例えば、1mm未満とし、かつ、枠体3に形成される貫通孔4の直径を、ガイドピン21,21の挿通を妨げない程度とした場合には、搬送設備10に被積層対象2を吸着保持した際に、吸着面16aの中心と、被積層対象2の平面方向における中心との位置ズレを約3mm未満にすることができるという効果を有する。
この結果、被積層対象2を吸着板16に吸着保持した際に、撮像用孔17a,17bからセラミックグリーンシート5上に形成される図示しないマーカーを覗かせることができるという効果を有する。
つまり、切断テーブル20上に予め枠体3を仮固定しておくことで、搬送設備10で被積層対象2を吸着保持して搬送する場合に、画像処理手段等を用いることなく吸着面16aに被積層対象2を、位置ズレを少なくしながら吸着保持することができるという効果を有する。
【0029】
この工程の後、搬送設備10を図示しない駆動機構により積層仮接着設備8の仮接着加圧テーブル11上へと移動させる。すなわち、被積層対象2aを吸着保持した搬送設備10を、図3中の符号Dで示す方向へ移動させ、図4に示すように、ラミネート治具13上に搬送設備10を停止させてから、撮像装置14a,14bを用いて、撮像用孔17a,17bから覗くセラミックグリーンシート5aの上面に形成されるマーカー24,24の画像を撮像する。
そして、この画像データを図示しない画像処理部へと伝送し、この画像データに基づいてラミネート治具13上の被積層対象2aの載置目標位置と、現時点における被積層対象2aの位置とX−Y−θ方向におけるズレを演算により求め、この演算結果を図示しない搬送設備10の駆動機構に伝送し、被積層対象2aのX−Y−θ方向におけるズレを修正した後、図4に示すように、被積層対象2aを吸着保持した搬送設備10を図中の符号Eで示す方向に降下させて被積層対象2aをラミネート治具13の上面に接触させ、搬送設備10の吸引装置を停止して被積層対象2aをラミネート治具13上に載置する。(図5を参照。)
【0030】
このように、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1においては、積層仮接着設備8が撮像装置14a,14bを備えることで、搬送設備10に吸着保持される被積層対象2aのX−Y−θ方向の位置ズレを高精度に検出することができるという効果を有する。
特に、セラミックグリーンシート5a(5)上の少なくとも2箇所にマーカー24を形成しておき、これらの画像を撮像装置14a,14bにより撮像して画像処理することで、被積層対象2のθ方向のズレ(回転ズレ)を高精度に検出することができるという効果を有する。
従って、画像データに基づいて算出された被積層対象2aの位置ズレ情報を搬送設備10に設けられる駆動機構により高精度に修正することができるという効果を有する。
すなわち、被積層対象2aが位置ずれした状態のままラミネート治具13上に載置されるのを防止することができるのである。
【0031】
本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1においては、まず、仮接着加圧テーブル11上に設置されるラミネート治具13上に枠体3に保持された被積層対象2を載置し、その後、この被積層対象2上に他の被積層対象2から枠体3を分離したセラミックグリーンシート5を順次積層してセラミックグリーンシートの仮積層体を作製している。
【0032】
続いて、被積層対象2a上に枠体3を分離したセラミックグリーンシート5を積層する工程について図6乃至図13を参照しながら詳細に説明する。
ここでは、特に被積層対象2b(2)から枠体3を分離する手順について図6乃至図9を参照しながら詳細に説明する。
ラミネート治具13上へ被積層対象2aを載置した後、図6に示すように、切断設備9の切断テーブル20上に、ラミネート治具13上のセラミックグリーンシート5a上に積層するための新たな被積層対象2bを供給してから、搬送設備10を切断設備9上へと移動させる。すなわち、搬送設備10を図6中の符号Bで示す方向に移動させる。
そして、吸着板16の吸着面16aを被積層対象2bの上面に近接させ、すなわち、搬送設備10を図7中の符号Cで示す方向に降下させて、搬送設備10の図示しない吸引装置を作動させて吸着面16aに吸着力を発生させて被積層対象2bを吸着保持する。
このとき、切断テーブル20の上面に支持されていたセラミックグリーンシート5bは吸着面16aに吸着保持されて切断テーブル20から浮き上がった状態となる。
そして、この動作と同時に吸着板16の内部に収容される発熱部19の温度を上昇させ、セラミックグリーンシート5bの切断部分を加熱しておく。
また、このとき、切断テーブル20の収容孔22に収容される23,23を、切断テーブル20に、又は、切断刃23に設けられる図示しない第2の加熱装置を作動させて加熱しておく。
そして、図7及び図8に示すように、吸着板16の吸着面16aと切断テーブル20の上面との間に被積層対象2bを挟持した状態で、切断テーブル20の収容孔22,22に収容される切断刃23,23を上昇させて吸着面16aに当接させて、すなわち、切断刃23,23を図7中の符号Fで示す方向に上昇させて、切断刃23,23でセラミックグリーンシート5bを略環状に切断する。
【0033】
このとき、セラミックグリーンシート5bの切断部分を発熱部19により予め加熱しておくことで、セラミックグリーンシート5b(5)に含有される合成樹脂製の成形助剤が軟化し、切断刃23のセラミックグリーンシート5b(5)への侵入をスムースにすることができるという効果を有する。
また、切断刃23を図示しない第2の加熱装置により加熱した場合、切断刃23の接触部分が切断刃23により間接的に加熱され、セラミックグリーンシート5b(5)に含有される合成樹脂製の成形助剤が軟化して、やはり、切断刃23の侵入をスムースにすることができるという効果を有する。
加えて、切断刃23でセラミックグリーンシート5b(5)を切断する際に、被積層対象2b(2)を吸着保持して固定することで、切断時にセラミックグリーンシート5b(5)が位置ズレを起こしたり、あるいは、セラミックグリーンシート5b(5)が枠体3から分離されることで、引張力や内部残留応力から開放されて不規則に収縮したり変形したりするのを防止することができるという効果を有する。
【0034】
なお、セラミックグリーンシート5b(5)の切断部分は、約90℃程度まで温度上昇させておくことが望ましい。
これは、セラミックグリーンシート5b(5)を90℃よりも低い温度条件下において切断した場合、切断時にセラミックグリーンシート5b(5)の切断屑が発生してしまい、この切断屑が万一積層されるセラミックグリーンシート5に付着した場合には、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1により作製されるセラミックグリーンシートの仮積層体が不良品化してしまうという不具合が生じる恐れがあるためである。
逆に、切断部分の温度が90℃を超えると、セラミックグリーンシート5b(5)の加熱部分が熱膨張を起こして盛り上がってしまう。そして、このように部分的に盛り上がったセラミックグリーンシート5b(5)を、平坦なセラミックグリーンシート5a(5)上に重ね合わると、セラミックグリーンシート5a(5),5b(5)の間に積層ズレが生じてしまう。
よって、セラミックグリーンシート5b(5)の切断部分は、約90℃程度まで温度上昇させておくことが望ましい。
さらに、吸着板16の内部に設けられる発熱部19,19が発熱するとその熱により、吸着板16が熱膨張を起こして、吸着板16に吸着保持されるセラミックグリーンシート5b(5)を変形させてしまう。
このため、発熱部19,19から発せられる熱が切断部以外の吸着板16に伝達するのを防止するために、切断部以外の吸着板16と発熱部19,19との間に断熱構造を設けておくことが望ましい。
同様の理由により、切断刃23を加熱する際には切断テーブル20と切断刃23を加熱する第2の加熱装置との間にも断熱構造を設けることが望ましい。
【0035】
また、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1では、図9に示すように、吸着面16aにおいて切断刃23が当接する位置から吸着板16の中央に向うエリア(エリアG2)の吸引力と、吸着面16aにおいて切断刃23が当接する位置から吸着板16の外縁に向うエリア(エリアG1)の吸引力とを独立に制御することが望ましい。
この場合、上述のような手順セラミックグリーンシート5b(5)の切断が完了した後、図示しない吸引装置において、エリアG2に吸引力を発生させたまま、エリアG1の吸引力の発生を停止することで、搬送設備10を切断テーブル20を上昇させた際に、すなわち、図9中の符号Hで示す方向に搬送設備10を上昇させた際に、セラミックグリーンシート5b(5)と枠体3とを分離することができるという効果を有する。
【0036】
さらに、枠体3が分離されたセラミックグリーンシート5b(5)をラミネート治具13上に載置されるセラミックグリーンシート5a(5)上に積層して仮接着する手順について図10乃至図12を参照しながら詳細に説明する。
セラミックグリーンシート5b(5)から枠体3を分離した後、図10に示すように、吸着面16aにセラミックグリーンシート5b(5)のみを吸着保持した搬送設備10を積層仮接着設備8へと移動させる。すなわち、搬送設備10を図10中の符号Dで示す方向へ移動させてセラミックグリーンシート5b(5)を積層仮接着設備8に移動させる。
そして、この後、先に説明した被積層対象2a(2)をラミネート治具13上に載置する場合の手順と同じの手順に従って画像処理を行うことでセラミックグリーンシート5b(5)の現在位置を修正し、この位置を保ったまま搬送設備10をセラミックグリーンシート5aに向って降下させ、図11に示すように、セラミックグリーンシート5a(5)上にセラミックグリーンシート5b(5)を重ね合わせる。
【0037】
この後、搬送設備10に吸着保持されるセラミックグリーンシート5b(5)の下面と、セラミックグリーンシート5a(5)の上面とを面接触させた状態で搬送設備10の駆動機構を一旦停止しておき、図11に示すように、仮接着加圧テーブル11の上方に設けられるホットバー15,15を図中の符号Iで示す方向に、すなわち、仮接着加圧テーブル11に向って降下させ、さらに、図12に示すように、ホットバー15,15を吸着板16に形成される挿通孔18,18内を挿通させて、その先端をセラミックグリーンシート5b(5)の上面に接触させる。
そして、ホットバー15,15とセラミックグリーンシート5b(5)接触部分を瞬間的に加熱することで、セラミックグリーンシート5a,5bに含有される成形助剤を溶融して、これらの重なり部分を局所的に融着させて接着部25を形成させることができる。
このように、セラミックグリーンシート5を1枚積層する毎に、新たに積層されたセラミックグリーンシート5をその下層に配置されるセラミックグリーンシート5に仮接着しておくことで、セラミックグリーンシート5同士の積層ズレの発生を大幅に低減することができるという効果を有する。
また、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1によれば、位置ズレの修正が完了したセラミックグリーンシート5の載置と、その仮接着をほぼ同時に行うことができるので、この点からもセラミックグリーンシート5同士の積層ズレの発生を大幅に低減することができるという効果を有する。
最後に、図12及び図13に示すように、ホットバー15,15及び吸着板16を上昇させて、セラミックグリーンシート5bからこれらを離間させると、セラミックグリーンシートの仮積層体が完成する。
なお、この状態で仮接着加圧テーブル11を加圧・加熱処理位置に移動させることでセラミックグリーンシートの仮積層体26を加圧・加熱処理することができる。
【0038】
よって、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1によれば、枠体3にセラミックグリーンシート5a(5)が保持された被積層対象2a上に、少なくとも1枚のセラミックグリーンシート5(5b)が積層され、積層されるセラミックグリーンシート5同士が局所的に仮接着されたセラミックグリーンシートの仮積層体26を製造することができ、しかも、このセラミックグリーンシートの仮積層体26は、セラミックグリーンシート5同士の積層ズレを最小限度にしながら積層されているので、これを加圧・加熱処理してなるセラミック積層体に積層ズレが発生する恐れを大幅に低減することができるという効果を有する。
しかも、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1により製造されるセラミックグリーンシートの仮積層体26は、セラミックグリーンシートの積層部分には、例えば、ガイドピン等のようなセラミックグリーンシート5の熱膨張係数と異なる熱膨張係数を有する部品との接触部分が存在しないため、このセラミックグリーンシートの仮積層体26を加圧・加熱処理した際に、膨張差、収縮差に起因するセラミック積層体の変形を抑制することができるという効果を有する。
この結果、積層ズレの極めて少ない高品質なセラミック積層体を製造することができるという効果を有する。
【0039】
最後に、セラミックグリーンシートの仮積層装置1を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体26を製造する際の製造工程について図14を参照しながら説明する。
図14は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する際の製造工程を示すフローチャートである。なお、図1乃至図13に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1によりセラミックグリーンシートの仮積層体26を製造するには、図14に示すように、まず、セラミックグリーンシートの仮積層体26において第1層目を構成する被積層対象2を、すなわち、枠体3に固定されたセラミックグリーンシート5を切断設備9に供給しおき搬送設備10の吸着板16に吸着保持する(ステップS1)。
そして、この状態のまま搬送設備10を積層仮接着設備8へと移動させ、吸着板16を仮接着加圧テーブル11上に予め設けられるラミネート治具13上に配置して、画像処理により被積層対象2の位置ズレを修正する。すなわち、ラミネート治具13上の被積層対象2の載置目標位置の真上に被積層対象2を配置してから(ステップS2)、ラミネート治具13上に被積層対象2を載置する(ステップS3)。
【0040】
この工程の後、搬送設備10を切断設備9上へと移動させ、切断テーブル20上に新たに供給される被積層対象2を吸着保持する(ステップS4)。
そして、この状態で切断テーブル20に設けられる切断刃23を作動させて吸着板16に吸着保持されるセラミックグリーンシート5を環状に切断し、セラミックグリーンシート5から枠体3を分離する(ステップS5)。
続いて、吸着板16に、枠体3が分離されたセラミックグリーンシート5を吸着保持した搬送設備10を、再度ラミネート治具13上に移動させて、画像処理により吸着板16に吸着されるセラミックグリーンシート5の位置ズレを修正する。
すなわち、ラミネート治具13上に載置される被積層対象2上の載置目標位置の真上に、吸着板16に吸着保持されるセラミックグリーンシート5を配置してから(ステップS6)、被積層対象2上にセラミックグリーンシート5を載置する(ステップS7)。
最後に、ラミネート治具13上に載置されるセラミックグリーンシート5の、最上層に配置されるセラミックグリーンシート5の上面の局所に、第1の加熱装置である、例えばホットバー15を接触させてこの部分を加熱し、最上層に配置されるセラミックグリーンシート5とその下層に配置されるセラミックグリーンシート5を部分的に融着させてこれらを仮接着する(ステップ8)。
なお、さらにセラミックグリーンシート5を積層するには、上述のステップS4からステップS5までの工程を所望の回数繰り返せばよい。
従って、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1を用いて、図14に示す工程に従ってセラミックグリーンシート5を積層することによれば、積層ズレの少ない高品質なセラミックグリーンシートの仮積層体26を製造することができるという効果を有する。
【0041】
図15(a)は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いて製造したセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧・加熱処理している様子を示す概念図であり、(b)は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧・加熱処理してなるセラミック積層体の概念図である。なお、図1乃至図14に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図15(a)に示すように、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層体26をその上面及び下面側から加圧しながら加熱処理すると、図15(b)に示すようなセラミック積層体28が形成される。
なお、図15には特に示さないが、セラミック積層体28には、これを分割して、例えば個変体のセラミックパッケージを多数個形成させるためのV字状あるいはU字状等の分割溝が形成されている。
また、セラミック積層体28を形成した場合のセラミックの主成分が特にアルミナである場合、セラミックグリーンシートの仮積層体26を構成するそれぞれのセラミックグリーンシート5の表面及び裏面には、還元雰囲気中において約1600℃の高温条件下で加圧処理を行うことで同時焼成して導体配線パターンとなる導体金属を含有するペースト体が予め塗布されており、このようなセラミックグリーンシートの仮積層体26を上記温度条件下において加圧処理することで、複数個のセラミックパッケージの集合体を製造することができる。
さらに、このようなセラミック積層体28は、必要に応じてその導体金属上に、Niめっき被膜を形成した後、KV(Fe−Ni−Co系合金、商品名「Kovar(コバール)」)や、42アロイ(Fe−Ni系合金)等から成る金属リング等がAg−Cuろう等の高温ろう材により接合可能に構成されており、加えて、セラミック積層体28において外部に露出する金属表面にはNiめっき被膜及びCuめっき被膜が形成可能に構成されている。
従って、本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置1を用いて製造されたセラミックグリーンシートの仮積層体26によれば、積層ズレの少ないセラミック積層体からなる高品質なセラミックパッケージを製造することができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、セラミックグリーンシートを複数積層する際に、ガイドピンやそれを挿通させるための貫通孔を設けることなく高精度にセラミックグリーンシートを積層することができると同時に、セラミックグリーンシートを1枚積層する毎に、最上層に配置されるセラミックグリーンシートをその下層に配置されるセラミックグリーンシートに仮接着することができるセラミックグリーンシートの仮積層装置であり、電子装置として機能させるために半導体素子や水晶振動子等の電子部品を収納するセラミックスパッケージ等の製造に関する分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)は枠体に保持された状態のセラミックグリーンシートの外観を示す平面図であり、(b)は図1(a)中のA−A線矢視断面図である。
【図2】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置の概要を示す断面図である。
【図3】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図4】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図5】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図6】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図7】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図8】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図9】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図10】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図11】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図12】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図13】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する工程を示す概念図である。
【図14】本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いてセラミックグリーンシートの仮積層体を製造する際の製造工程を示すフローチャートである。
【図15】(a)は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層装置を用いて製造したセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧・加熱処理している様子を示す概念図であり、(b)は本実施の形態に係るセラミックグリーンシートの仮積層体を加圧・加熱処理してなるセラミック積層体の概念図である。
【符号の説明】
【0044】
1…セラミックグリーンシートの仮積層装置 2,2a,2b…被積層対象 3…枠体 3a…内側面 4…貫通孔 5,5a,5b…セラミックグリーンシート 6…接着シート 7…載置台 8…積層仮接着設備 9…切断設備 10…搬送設備 11…仮接着加圧テーブル 12…クランプ 13…ラミネート治具 14a,14b…撮像装置 15…ホットバー 16…吸着板 16a…吸着面 17a,17b…撮像用孔 18…挿通孔 19…発熱部 20…切断テーブル 21…ガイドピン 22…収容孔 23…切断刃 24…マーカー 25…接着部 26…セラミックグリーンシートの仮積層体 27…外縁 28…セラミック積層体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミックスグリーンシートを重ね合わせて温度と圧力をかけて接合して積層体を形成する際に用いるセラミックグリーンシートの仮積層装置であって、
前記セラミックグリーンシートの仮積層装置は、複数のセラミックグリーンシートを積層し、かつ、新たに積層されたセラミックグリーンシートをその下層に配置される他のセラミックグリーンシートに仮接着する積層仮接着設備と、枠体の内側に保持されるセラミックグリーンシートを環状に切断してセラミックグリーンシートから枠体を分離する切断設備と、前記切断設備から前記積層仮接着設備にセラミックグリーンシートを搬送する搬送設備とを有し、
前記積層仮接着設備は、上面に平坦面を具備する仮接着加圧テーブルと、この仮接着加圧テーブル上に配置されセラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーを撮像する撮像装置と、前記仮接着加圧テーブルの上に配置される第1の加熱装置とを備え、
前記切断設備は、上面に平坦面を具備する切断テーブルと、前記切断テーブルの上面から出没可能に収容される切断刃とを備え、
前記搬送設備は、多孔体から成り前記切断テーブルの平坦面と略水平な吸着面を具備する吸着板と、前記吸着板の吸着面の裏面側に負圧を生じさせる吸引装置と、前記吸着板に穿設され、前記吸着面にセラミックグリーンシートを吸着保持した際にこのセラミックグリーンシートの上面に形成されるマーカーの撮像を可能にする第1の貫通孔と、前記吸着板に穿設され、前記第1の加熱装置の挿通を可能にする第2の貫通孔とを備えることを特徴とするセラミックグリーンシートの仮積層装置。
【請求項2】
前記吸着板は、その厚み部分でかつ吸着面近傍に発熱部を具備することを特徴とする請求項1に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置。
【請求項3】
前記切断テーブル又は前記切断刃は、前記切断刃を加熱するための第2の加熱装置を具備することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置。
【請求項4】
前記吸着板は、前記吸着面において前記切断刃が当接する位置から前記吸着板の中央に向うエリアの吸引力と、前記吸着面において前記切断刃が当接する位置から前記吸着板の外縁に向うエリアの吸引力とが独立に制御されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のセラミックグリーンシートの仮積層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−18555(P2009−18555A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185091(P2007−185091)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(391039896)株式会社住友金属エレクトロデバイス (276)
【Fターム(参考)】