説明

セラミックスシート及びその製造方法

【課題】作製時のエネルギ消費量をより低減させると共に、密度を高め、シートに含まれる結晶の配向度をより高める。
【解決手段】セラミックスシート20は、一般式ABO3で表され揮発成分を含む酸化物を主成分とする無機粒子をA/B値が1.05以上となるように配合し、シート厚さが10μm以下の自立した平板状の成形体に成形し、この成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、この成形体のまま揮発成分が揮発する温度以上において30℃/分以上の昇温速度で焼成して作製されている。このセラミックスシート20は、シート厚さが10μm以下に形成され、シート面に特定の結晶面を含んだ結晶粒子をシート厚さ方向に実質的に1個有し、全体の面積に占める結晶粒子の面積の割合を密度(%)としたときに、この密度が85%以上であり、シートのロットゲーリング法の配向度が40%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックスシート及びその製造方法に関し、詳しくは、圧電/電歪体のセラミックスシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電セラミックスとしては、板状粒子の方向を揃えることによりその特性を向上させるものが提案されている。例えば、厚さ方向の断面において観察される結晶粒子が幅方向に長い粒子径を有するものなどが提案されている(特許文献1,2)。また、結晶に含まれる特定の結晶面の配向度を高めることにより更に圧電特性を向上させたものが提案されている。例えば、板状かつ特定の結晶面が成長したテンプレート材料を1000℃〜1100℃、5時間の焼成により作製し、マトリックス材料及び添加剤を加えてテンプレート材料を所定方向に配列させるように成形し、加熱焼結してマトリックス材料を配向させるものなどが提案されている(特許文献3,4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−185940号公報
【特許文献2】特開2006−185950号公報
【特許文献3】EP1975137号公報
【特許文献4】EP1972604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この特許文献1,2に記載された圧電セラミックスでは、目的とする圧電材料を扁平にする際に、圧電材料と同じ組成の材料を共存させながら2時間の焼成を行っており、工程が煩雑であると共に焼成時間が長くエネルギをより多く要した。また、特許文献3,4では、できるだけ長時間(例えば5時間)焼成することによりテンプレート材料を作製しており、配向度を高めるために焼成エネルギをより多く要し、製造効率が悪いという問題があった。また、特許文献3,4では、テンプレート材料を長時間焼成することから気孔の成長が助長され、材料の密度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、作製時のエネルギ消費量をより低減させると共に、密度を高め、結晶の配向度をより高めることのできるセラミックスシート及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明者らは、一般式ABO3で表され揮発成分を含む酸化物を主成分とする無機粒子をA/B値が1.05以上となるように配合し、シート厚さが30μm以下の自立した平板状の成形体に成形し、この成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は、該成形体のまま揮発成分が揮発する温度以上において30℃/分以上の昇温速度で焼成したところ、作製時のエネルギ消費量をより低減させると共に、密度を高め、シートに含まれる結晶の配向度をより高めることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明のセラミックスシートは、
自立した平板状のセラミックスシートであって、
シート厚さが30μm以下に形成され、
シート面に特定の結晶面を含んだ結晶粒子をシート厚さ方向に実質的に1個有し、
全体の面積に占める前記結晶粒子の面積の割合を密度(%)としたときに、該密度が85%以上であり、
前記シートのロットゲーリング法の配向度が40%以上である。
【0008】
また、本発明のセラミックスシートの製造方法は、
自立した平板状のセラミックスシートの製造方法であって、
一般式ABO3で表される酸化物を該Aサイトと該Bサイトとの比であるA/B値が1.05以上となるように原料を配合して無機粒子を合成する原料合成工程と、
前記合成した無機粒子をシート厚さが30μm以下の自立した平板状の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は該成形体のまま、少なくとも所定温度以上の温度領域においては30℃/分以上の昇温速度で該成形体を焼成する焼成工程と、
を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のセラミックスシートの製造方法によれば、作製時のエネルギ消費量をより低減させると共に、密度を高め、結晶の配向度をより高めることができる。このような効果が得られる理由は明らかではないが、以下のように推測される。例えば、30μm以下の平板状の成形体を焼成するため、シート面方向に結晶が粒成長しやすく、配向性をより高めることができる。また、一般式ABO3で表される酸化物において、一般的に揮発しやすいAサイトの元素は粒子表面の原子の動きを活発化させるフラックスとして機能すると考えられ、このAサイトの元素を原料配合時に多く配合し、昇温速度をより大きくする(30℃/分以上)ことにより過剰なAサイト元素がより高温で揮発しつつ、急激に粒成長を促進するため、短時間で配向性をより高めるものと推察される。これにより、トータルの焼成時間をより短くできるため、作製時のエネルギ消費量をより低減させることができるし、長時間の焼成により生じる気孔の成長をより抑制可能であり、密度の低下をより抑制することができる。そしてこの製造方法で作製されたセラミックスシートでは、シート面に特定の結晶面を含んだ結晶粒子をシート厚さ方向に実質的に1個有するものとなり、全体の面積に占める結晶粒子の面積の割合を密度(%)としたときにこの密度が85%以上と高い値を示し、シートのロットゲーリング法の配向度が40%以上という高い配向度を有するものとすることができる。
【0010】
なお、一般式ABO3で表される酸化物では、過剰に配合したAサイト成分の役割は、揮発成分の補填に加え、粒成長(配向)促進効果であり、そのため急速昇温することによって短時間で緻密な配向シートが得られるものと推察される。これについて、一般式ABO3以外の材料においても、粒成長(配向)促進剤を添加し急速昇温すれば、同様の効果が期待できると考えられる。この粒成長促進剤としては、一般式ABO3へ添加したAサイト成分のように、低融点で揮発しやすいものや構成元素からなるもの、が特性への悪影響がないため、適している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態のセラミックスシート20の一例を表す説明図。
【図2】シート成形体10を複数の貫通孔を有するセッター12上で焼成する説明図。
【図3】実験例10,15,23のSEM写真。
【図4】実験例10,15,23のX線回折パターン。
【図5】焼成前のA/B値に対する配向度の関係を表す図。
【図6】焼成前のA/B値に対する密度の関係を表す図。
【図7】昇温速度に対する配向度の関係を表す図。
【図8】昇温速度に対する密度の関係を表す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態のセラミックスシート20の一例を表す説明図である。本発明のセラミックスシート20は、シート厚さが30μm以下に形成され、面積の大きい側の面であるシート面の方向に特定の結晶面を含み、結晶粒子22をシート厚さ方向に実質的に1個有するものである。このセラミックスシート20は、シート厚さが30μm以下に形成されているが、10μm以下に形成されていることが好ましく、シート厚さが5μm以下に形成されていることがより好ましく、2μm以下に形成されていることが更に好ましい。また、シート厚さが0.1μm以上に形成されていることが好ましい。シート厚さが0.1μm以上であれば、自立した平板状のシートを作成しやすいし、10μm以下や5μm以下であれば一層配向度を高めることができる。ここで、「自立したシート」とは、本明細書において、シート厚さを30μm以下に成形したシート状の成形体を焼成して得たものをいい、他のシートに積層して焼成された状態であるものや、なんらかの基板に貼り付けて焼成された状態であるもの、スパッタ、ゾルゲル、エアロゾルデポジション法、印刷法などによりなんらかの基板に成膜され支持された状態の膜を含まない趣旨である。なお、「自立したシート」は、なんらかの基板に貼り付けたり成膜したりして、焼成前、又は焼成後に、この基板から剥離したものをも含む。
【0013】
本発明のセラミックスシート20において、含まれている結晶粒子22は、シート面方向の結晶粒子の長さが結晶粒子の厚さ方向の長さ以上であることが好ましい。こうすれば、結晶粒子を配向させやすい。また、結晶粒子22のアスペクト比は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく4以上であることが更に好ましい。アスペクト比が2以上では、結晶粒子22を配向させやすい。このアスペクト比は100以下であることが好ましい。このアスペクト比は、以下のようにして求めるものとする。まず、走査型電子顕微鏡を用いてSEM写真を撮影し、このSEM写真からセラミックスシートの厚さを求める。次に、セラミックスシートのシート面を観察し、結晶粒子が20〜40個程度含まれる視野において、{(視野の面積)/(粒子の個数)}から粒子1個あたりの面積Sを算出し、更に粒子形態を円と仮定し、次式(1)によって粒径を算出し、この粒径をシートの厚さで除算した値をアスペクト比とした。
【0014】
【数1】

【0015】
本発明のセラミックスシート20において、特定の結晶面の配向度は、ロットゲーリング法で40%以上であり、75%以上であることがより好ましい。配向度が40%以上であると、例えばこのセラミックスシート20を解砕し更に2次配向させて成形し結晶配向セラミックスを得るのに十分な配向度であるといえる。これは、2次配向させる際にも結晶の配向度を更に高めることが可能であるためである。この配向度は、60%以上であることが一層好ましい。こうすれば、より高い特性を得ることができる。この特定の結晶面は、セラミックスシートのシート面内にある擬立方(100)面としてもよい。この擬立方(100)とは、等方性ペロブスカイト型の酸化物は正方晶、斜方晶及び三方晶など、立方晶からわずかに歪んだ構造をとるがその歪みがわずかであるため立方晶とみなしてミラー指数により表示することを意味する。ここで、ロットゲーリング法による配向度は、目的とするセラミックスシートのXRD回折パターンを測定し、次式(2)により求めるものとした。この数式(2)において、ΣI(HKL)がセラミックスシートで測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)がセラミックスシートと同一組成であり無配向のものについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、Σ’I(HKL)がセラミックスシートで測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(例えば(100)面)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)がセラミックスシートと同一組成であり無配向のものについて測定された特定の結晶面のX線回折強度の総和である。ここで、XRD回折パターンの測定であるが、セラミックスシートにうねりが生じている場合は、最もうねりの小さい部分を用いて面出しした状態で測定するものとする。また、セラミックスシートがロール状になっているものなど、面出しが困難なものでは、アスペクト比が3を下回らない程度に解砕して解砕物を得て、アルコールなどの溶媒に1〜10重量%の解砕物を入れ、例えば30分間の超音波などを用いて分散させ、この分散液を1000〜4000rpmの条件でスピンコートしガラスなどの基板上にコートすることにより、できるだけ重ならないように、且つ解砕物に含まれる結晶面が基板面に対して平行になるように薄層に分散させ、この状態でXRD回折パターンを測定するものとする。
【0016】
【数2】

【0017】
本発明のセラミックスシート20は、シート厚さ方向に結晶粒子22を実質的に1個有している。これは、セラミックスシートの厚さが30μm以下であるため、シート厚さ方向の全体に粒成長したためである。このセラミックスシート20は、シート厚さ方向に存在する材料が限られているため、焼成などにより粒成長すると、シート厚さ方向に結晶粒子22を実質的に1個有することになる。また、シート厚さ方向よりもシート面の方向に粒成長が促されるため、シート面の方向に、扁平な結晶粒子22が配列すると共に、特定の結晶面が配向するのである。ここで、「厚さ方向に結晶粒子が実質的に1個」とは、一部で結晶粒子が重なり合う部分があっても、他の大部分では結晶粒子が重なり合わずに、厚さ方向に結晶粒子を1個だけ含むことをいう。また、中心部分などセラミックスシートの大部分が2個以上の結晶粒子が重なり合う状態であり、端部のみ厚さ方向に1個であるようなものは含まない趣旨である。このセラミックスシート20は、粒成長時に、結晶粒子22の粒成長がセラミックスシートの厚さまで達しないものや、結晶面の向く方向が異なるものが存在することがあるため、結晶粒子22が重なり合う部分や結晶粒子22の結晶面の向いている方向が異なるものなどが局所的に存在するが、概して厚さ方向に結晶粒子22を1個だけ含むものである。このセラミックスシート20は、結晶粒子22を1個だけ含む部分が、セラミックスシートの面積割合で70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが最も好ましい。このセラミックスシートは、結晶粒子22が重なるような部分は全体の一部分(例えば面積割合で30%以下など)であり、結晶粒子同士が結合する粒界部で比較的簡単に解砕することができる。
【0018】
本発明のセラミックスシート20において、結晶粒子22は、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子により構成されていてもよいし、異方的な結晶粒子に成長する無機粒子により構成されていてもよいが、このうち等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子により構成されているのが好ましい。等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するということは、状況によっては特定の結晶面を成長させることが可能であると考えられる。ここでは、等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長する無機粒子を含んでいても、シート厚さ方向への粒成長が限られており、シート面の方向に粒成長がより促されるため、特定の結晶面がシート面内に成長することにより、アスペクト比が大きく配向度の高いものとなる。多面体形状の中でも、6面体形状が最も好ましい。6面体であれば、シート面に平行な表面を持った粒子は、その2面を除く他の4面が成長面として成形体内の全方位に含まれるからシート内で等方的に粒成長し、シート表面に存在する残りの2面が無理なく拡がるため、アスペクト比の大きな粒子が得られやすく、好ましい。また、結晶粒子は、ペロブスカイト構造を有する酸化物により構成されているのが好ましい。ペロブスカイト構造を有する酸化物は、擬立方晶のサイコロ状に粒成長するものがあり、シート面内に(100)面が成長することによりシート面の垂直方向に結晶面(100)が配向しやすく、好ましい。一方、結晶粒子が異方的な結晶粒子に成長する無機粒子によって構成されている場合であっても、シート厚さ方向への粒成長は限られており、シート面方向へ粒成長するから、アスペクト比が大きく配向度の高いものとなる。
【0019】
本発明のセラミックスシート20において、結晶粒子22は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、このAサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む粒子であるものとしてもよく、このうち(LiXNaYZ)NbMTaN3や(BiXNaYZAgN)TiO3など(X,Y,Z,M,Nは任意の数を表す)が特に好ましい。あるいは、結晶粒子22は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbを含み、BサイトがMg,Zn,Nb,Ni,Ti及びZrから選ばれる1種以上を含む粒子であるものとしてもよい。こうすれば、30μm以下の厚さ、より好ましくは10μm以下の厚さにおいて、結晶粒子として得られやすい。なお、ここに挙げた元素以外を含んでいても構わない。このとき、結晶粒子は、焼成前(後述する焼成工程前をいう)のA/B値が1.05以上であり、1.5以下であることが好ましく、1.20以上1.35以下であることがより好ましい。一般的に揮発しやすいAサイトの元素は粒子表面の原子の動きを活発化させるフラックスとして機能すると考えられるため、これを焼成前に多く入れ、さらに昇温速度をより大きくすることにより、過剰なAサイトの元素をより高温で揮発させ、短時間で急激に粒成長を進めることができ、生成する結晶粒子のアスペクト比や配向度を高めることができる。
【0020】
本発明のセラミックスシート20において、シートの密度が85%以上であるが、90%以上が好ましい。このシートの密度は、視認した範囲において、全体の面積に占める前記結晶粒子の面積の割合をいうものとする。この密度の測定は、シート面を撮影し、全体の面積や結晶粒子の結晶面の領域、空隙領域の面積を求め、(結晶面の面積)/(全体の面積)×100の式を用いて求めるものとする。シートの密度が85%以上では、製造効率を高めることができる。例えば、セラミックスシートのハンドリング性を高めることができる。また、セラミックスシートを解砕して結晶配向セラミックスのテンプレートとして利用するとき、結晶粒子が複数集まり、アスペクト比が大きく粒径の揃った板状多結晶粒子を得やすく、所定方向に並べやすい。また、板状多結晶粒子の結晶粒子間に気孔が生じてしまうのを抑制可能であり、この気孔に他の材料(マトリックスとなる原料粉末)が入りにくくなることを抑制して結晶配向セラミックスの密度を高めることができる。
【0021】
本発明のセラミックスシートの製造方法は、(1)セラミックスシートの原料である無機粒子を合成する原料合成工程、(2)無機粒子からシートへの成形工程、(3)成形したシートの焼成工程を含み、これら各工程の順に説明する。
【0022】
(1)原料合成工程
セラミックスシートに用いる無機粒子としては、所定焼成条件において異方形状の結晶粒子に成長するもの、即ち、所定焼成条件における成長形が異方形状の結晶粒子に成長するものや、所定焼成条件において等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するもの、即ち、所定焼成条件における成長形が等方的且つ多面体形状の結晶粒子であるものを用いることができる。この点について、本発明では、厚さが30μm以下のシート状の成形体を焼成させ粒成長させるので、成形体の厚さ方向への粒成長は限られており、シート面方向に、より粒成長が促進されるから、所定焼成条件において等方的且つ多面体形状の結晶粒子に成長するもの、例えば立方体に成長するものでも、これを用いて特定の結晶面が発達しアスペクト比の大きな粒子からなるセラミックスシートを作製することができるのである。ここで、「所定焼成条件における成長形」とは、与えられた熱処理条件下で無機粒子の結晶が平衡に達したときに見られるモルフォロジーと定義され、例えば、バルクを焼成し結晶化を進めた際に表面の粒子の形状を観察することにより得られるものである。また、「異方形状」とは、例えば板状、短冊状、柱状、針状及び鱗状など、長軸長さと短軸長さとの比(アスペクト比)が大きいもの(例えばアスペクト比が2以上など)をいう。また、「等方的且つ多面体形状」とは、例えば立方体形状などをいう。ここで、一般的に、粒成長によって生成する結晶粒子のモルフォロジーは、固体の融点もしくは分解温度に対し、例えば400℃以下など粒成長する温度が十分に低ければ、ほとんど球状となる。本来、原子の配列に異方性があり、結晶面によって成長速度に差があるにもかかわらず、球状に粒成長するのは、固体原子が非常に動きにくいからである。一方、固体の融点もしくは分解温度と、粒成長する温度とが近い場合、例えば両者の温度差が200℃以内となると、粒成長する際の粒子表面の原子の動きが活発となり、結晶構造に起因した表面形態が現れる。すなわち、粒成長において、結晶面による成長速度の差が出るようになり、成長の遅い結晶面は発達するが、成長の速い結晶面は、小さくなるか消滅してしまう。このように面成長速度の差で定まるモルフォロジーを成長形という。成長形として、異方形状や多面形状となるのは、先に述べたように、固体の融点、もしくは分解温度と、粒成長する温度が近い材料の他に、ガラスなどの低融点化合物をフラックスとして添加し、フラックスを介した粒成長を行わせるようにした系が好ましく選ばれる。フラックスを介することで、粒子表面での固体構成元素の動きが活発となるためである。なお、無機粒子は、多面体形状に成長するものの中で、6面体形状に成長するものを利用することができる。6面体であれば、平板形状としたときに、この平板形状のシート面に平行な表面を持った粒子は、その2面を除く他の4面が成長面として成形体内の全方位に含まれるから、成形体内で等方的に粒成長したときには、2つのシート面が無理なく拡がるため、アスペクト比の大きな粒子が得られやすく、好ましい。同様の理由で6角柱や8角柱など、柱形状を用いることもできる。なお、アスペクト比の大きな結晶粒子を得る目的で、粒成長を促進する添加剤を添加してもよい。この無機粒子は、ペロブスカイト構造を有する酸化物となるものが好ましい。
【0023】
原料である無機粒子は、所定温度以上で揮発が促進される揮発成分を含み焼成後に一般式ABO3で表される酸化物が主成分となるものを用いる。揮発成分は例えば、Aサイトの元素としてもよい。この一般式ABO3で表される酸化物としては、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含むものを用いるのが好ましい。例えば、無機粒子として、NaNbO3のAサイトの一部をLi,Kなどで置換し、Bサイトの一部をTaなどで置換したもの((LiXNaYZ)NbMTaN3:X,Y,Z,M,Nは任意の数を表す)とすると、900℃〜1300℃での成長形が立方体形状となるため、好ましい。なお、ここに挙げた元素以外を添加しても構わない。また、(Bi0.5Na0.5-xx)TiO3を主組成とするものにおいては、X>0.01とすることで成長形が立方体形状となるため、好ましい。また、AサイトとしてPbを主成分として含み、Bサイトとして、Mg、Zn、Nb、Ni、Ti、Zrから選ばれる1種以上を含むものも好ましい。さらにフラックスとして、鉛ホウ酸系ガラス、亜鉛ホウ酸系ガラス、ホウ珪酸ガラス、鉛−珪酸ガラス、亜鉛−珪酸ガラス及びビスマス−珪酸ガラスなど、融点が1000℃以下のガラスを、0.1wt%以上添加したものとすると、900℃〜1300℃での成長形がより立方体形状となりやすいため好ましい。この場合、ガラスの分散性の観点から、ガラス粉末をそのままシート状にするのではなく、一度仮焼しガラスを十分拡散したあとこの仮焼した材料を粉砕し、この粉砕した粉末を用いてセラミックスシートを作製するものとするのが好ましい。ABO3で表される酸化物となるものでは、AサイトとBサイトの比であるA/B値が1.05以上となるよう原料を配合するものとし、A/B値が1.5以下となるよう原料を混合するのが好ましく、1.20以上1.35以下となるよう原料を配合するのがより好ましい。A/B値が1.05以上1.5以下の範囲では、昇温速度をより大きくし、過剰なAサイトの元素をより高温で揮発させることにより、過剰なAサイトの元素が粒子表面の原子の動きを活発化させ、短時間で急激に粒成長を進めることができ、焼成後のセラミックスシートに含まれる結晶のアスペクト比や配向度を大きいものとすることができる。この範囲では、焼成時に揮発するアルカリ成分などを補償する点で好ましい。
【0024】
原料合成工程では、無機粒子の原料を粉砕混合し、混合した粉体を仮焼し、得られた無機粒子を更に粉砕することが好ましい。無機粒子の原料としては、目的の成分の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩及び酒石酸塩などを用いることができるが、主として酸化物、炭酸塩を用いることが好ましい。仮焼温度は、原料の分解を促進する温度とすることが好ましい。また、無機粒子の粉砕では、シートの厚さに応じた粒径とすることが好ましく、無機粒子のメディアン径(D50)をシート厚さの2%以上とすることが好ましく、5%以上とすることがより好ましい。また、無機粒子のメディアン径(D50)をシート厚さの60%以下とすることが好ましい。メディアン径がシート厚さの2%以上であれば粉砕処理が容易であり、5%以上であれば更に粉砕処理が容易であるし、60%以下であればシート厚さを調整しやすい。この粒径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置を用いて分散媒(有機溶剤や水など)に分散させて測定した値を用いるものとする。無機粒子の粉砕は、湿式粉砕することが好ましく、例えばボールミルやビーズミル、トロンメル、アトライターなどを用いてもよい。
【0025】
(2)シートの成形工程
無機粒子をシート厚さが30μm以下、より好ましくは10μm以下の自立した平板状の成形体に成形する。シートの成形方法としては、例えば、無機粒子を含むスラリーを用いたドクターブレード法や、無機粒子を含む坏土を用いた押出成形法などによって行うことができる。ドクターブレード法を用いる場合、可撓性を有する板(例えばPETフィルムなどの有機ポリマー板など)にスラリーを塗布し、塗布したスラリーを乾燥固化して成形体とし、この成形体と板とを剥がすことによりセラミックスシートの焼成前の成形体を作製してもよい。成形前にスラリーや坏土を調製するときには、無機粒子を適当な分散媒に分散させ、バインダや可塑剤などを適宜加えてもよい。また、スラリーは、粘度が500〜700cPとなるように調製するのが好ましく、減圧下で脱泡するのが好ましい。シートの厚さとしては、30μm以下とするが、10μm以下に形成することが好ましく、5μm以下に形成することがより好ましく、2μm以下とすることが最も好ましい。10μm以下では高い配向度を得ることができ、10μm以下や5μm以下であればより一層高い配向度を得ることができる。また、シート厚さは、0.1μm以上とするのが好ましい。シート厚さが0.1μm以上であれば、自立した平板状のシートを作成しやすい。その他の方法としては、エアロゾルデポジション法などの、粒子の高速吹き付け法や、スパッタ、CVD、PVDなどの気相法などにより、樹脂、ガラス、セラミックス及び金属などの基板へ膜付けし、基板から剥離することでセラミックスシートの焼成前の成形体を作製してもよい。この場合、焼成前の成形体の密度を高くすることができるため、低温での粒成長、構成元素の揮発防止、得られるセラミックスシートが高い密度である、などの利点がある。
【0026】
(3)成形体の焼成工程
成形工程で得られた成形体をこの成形体と実質的に反応しない不活性層(例えば、焼成済みのセラミック板やPt板、カーボン板、黒鉛板、モリブデン板、タングステン板など)に隣接させた状態で焼成するか、又は、この成形体のままの状態で焼成する。例えば、アルミナ、ジルコニア、スピネル、カーボン、黒鉛、モリブデン、タングステン、白金など、成形体の焼成温度では不活性な層の上にグリーンシートを交互に積層して焼成するものとしてもよい。あるいは、成形体シートと不活性シートとを重ねた状態でロール状に巻いて焼成してもよい。あるいは、不活性層の上にシート状に成形体を形成し、焼成後にこの不活性層から剥離させるものとしてもよい。あるいは、不活性層にシート状の成形体を成膜し、焼成後に不活性層を除去するものとしてもよい。例えば、不活性層に黒鉛を用いる場合などでは、非酸化性雰囲気(例えば窒素中)で焼成し、不活性層の存在下で所望のセラミックスシートを得たあと、その温度より低い酸化雰囲気(例えば大気中)で再び熱処理し、黒鉛を燃焼させることで除去するものとしてもよい。
【0027】
この焼成工程では、セラミックスシートの焼成前の成形体(シート成形体とも称する)との接触面積をより小さくした不活性層に載置(隣接)させた状態でシート成形体を焼成することが好ましい。シート成形体との接触面積を小さくして焼成するに際して、シート成形体と点接触する領域及び線接触する領域の少なくとも一方を有する不活性層上に成形体を載置するものとしてもよい。例えば、シート成形体の載置面の表面を粗くした不活性層やディンプル加工された不活性層などに載置してシート成形体を焼成してもよい。また、例えば、ハニカム状のセッターやメッシュ状など複数の貫通孔を有する不活性層に載置してシート成形体を焼成してもよい。こうすれば、不活性層とシート成形体とが溶着してしまうのをより抑制することが可能であり、例えばシート成形体を板状の不活性層に載置して焼成した場合に比して、歩留まりをより高めることができる。特に、より大きな昇温速度で焼成する際にはシート成形体と不活性層とが溶着しやすいことから、ここではシート成形体との接触面積を小さくして焼成することがより好ましい。また、セッターには貫通孔が形成されており、セッターの熱容量を低減することが可能であるため、セラミックスシートの作成時のエネルギー消費量をより低減することができる。なお、不活性層の載置面にシート成形体の焼成温度で安定である溶着防止材(アルミナ粉やジルコニア粉など)を敷き、その上にシート成形体を載置して焼成するものとしてもよい。また、シート成形体を載置したメッシュ状の不活性層を積層して焼成し、これに水流あるいは超音波等の圧力を加え焼成したセラミックシートを解砕、回収するものとしてもよい。こうすれば、メッシュの開口径と同等サイズのセラミックスシート(板状粒子)を効率よく得ることができる。この板状粒子は、1個又は2個以上の結晶粒子22を含むものとしてもよい。図2は、シート成形体10を複数の貫通孔を有するセッター12上で焼成する説明図である。不活性層としてのセッター12としては、貴金属(Ptなど)や、セラミックス(アルミナなど)、金属(例えばNiやSUS、ハステロイなど)、あるいはセラミックスコーティングした金属などを用いることができる。ここでは、Ptを部材とし、その後の工程で利用可能な板状粒子が得られるサイズの貫通孔が形成されたメッシュ状のセッター12を用いる場合について説明する。まず、このセッター12上にシート成形体10を載置し(図2上段)、詳しくは後述する焼成条件で焼成する。すると、シート成形体10に含まれる無機粒子が粒成長し、所定方向に配向した結晶粒子22を複数含むセラミックスシート20が得られる(図2中段)。このとき、貫通孔を有するセッター12とシート成形体10との接触面積が小さいため、セラミックスシート20がセッター12に溶着してしまうのをより抑制することができる。また、セラミックスシート20の一部が溶着したとしても、これを解砕して回収し、板状粒子として利用可能である(図2下段)。このように、結晶粒子22の作製における歩留まりをより高めることができる。
【0028】
この焼成工程では、所定温度以上の温度領域において、30℃/分以上の昇温速度で昇温するものとする。この「所定温度」は、原料に含まれる揮発成分の揮発が促進される温度としてもよいし、原料に含まれる有機物の除去温度(脱脂温度)としてもよい。このとき、原料合成工程では、焼成時に揮発が促進される揮発成分(例えばPbやNa、Kなど)を含む原料を配合するものとする。この昇温速度は、40℃/分以上900℃/分以下がより好ましい。この昇温速度がより大きければ、トータルの焼成時間を短くすることが可能であり、作製時のエネルギ消費量をより低減することができる。また、長時間の焼成により生じる気孔の成長をより抑制可能であり、密度の低下をより抑制することができる。この焼成工程では、少なくとも揮発が促進される所定温度以上の温度領域において30℃/分以上の昇温速度で昇温するものとすれば無機粒子の反応性が高まり配向度を向上できるものと考えられるが、揮発が促進される所定温度未満の温度領域においても30℃/分以上の昇温速度で焼成することがより好ましい。こうすれば、より一層焼成時間の短縮を図ることができ、省エネルギーや製造効率の観点から見て好ましい。この焼成工程は、赤外線加熱炉などのバッチ式焼成炉やトンネルキルンなどの連続式焼成炉などにより、このような昇温速度で焼成することができる。なお、昇温速度は、その速度の限界性から2000℃/分以下であることが好ましい。また、この焼成工程では、上記昇温速度において昇温したあと、所定の最高焼成温度で30分以下の時間保持して焼成するものとしてもよい。最高焼成温度での保持時間を30分以下とすると、焼成時間を短縮可能であり、作製時のエネルギ消費量をより低減することができる。また、長時間の焼成により生じる気孔の成長をより抑制可能であり、密度の低下をより抑制することができる。なお、この保持時間は、原料の配合組成に応じて経験的に定めることが好ましい。
【0029】
シート状の成形体の焼成条件について、焼成により平衡形の結晶が得られる焼成温度、例えばバルクを焼成することにより緻密化、粒成長する焼成温度に比べて1割以上高い温度を最高焼成温度とすることが好ましい。1割以上高い温度では、30μm以下や10μm以下の成形体の粒成長を十分進めることができる。なお、成形体の材料が分解しない程度に高い温度で焼成することが好ましい。特に、シートの厚さがより薄くなると、粒成長がしにくくなるため、焼成温度をより高くする傾向とすることが好ましい。例えば、主成分としてのNaNbO3のAサイトにLi,Kなどを添加し、BサイトにTaを添加したもの((LiXNaYZ)NbMTaN3)となる無機粒子の焼成工程では、最高焼成温度を900℃以上1200℃以下のいずれかの温度とすることが好ましく、950℃以上1150℃以下がより好ましい。最高焼成温度が900℃以上では、粒子の結晶の成長が促されるため好ましく、1200℃以下では、材料が分解してしまうのを抑制することができる。あるいは、例えば主成分としてのPb(Zr1-xTix)O3(0≦x≦1)のBサイトにMg,Nbなどを添加したものとなる無機粒子の焼成工程では、最高焼成温度を1100℃以上1400℃以下のいずれかの温度とするのが好ましく、1200℃以上1350℃以下とすることがより好ましい。最高焼成温度が1100℃以上では、粒子の結晶の成長が促されるため好ましく、1350℃以下では、材料が分解してしまうのを抑制することができる。
【0030】
この焼成工程では、揮発成分の揮発を促進させる揮発促進状態で成形体を焼成することが好ましい。揮発成分の揮発がより促進されると、粒子表面の原子の動きがより活発となり、配向した結晶粒子の粒成長が促進されると考えられ、より好ましい。このとき、原料合成工程では、焼成時に揮発が促進される揮発成分(例えばPbやNa、Kなど)を含む原料を配合し、焼成工程では、揮発成分の揮発が促進される所定温度以上の温度領域で30℃/分以上の昇温速度で昇温することが好ましい。この揮発促進状態には、例えば、密閉されていない、開放系の焼成炉により焼成する状態などが含まれる。なお、揮発成分(例えばアルカリやPbなど)の揮発を抑制する揮発抑制状態で成形体を焼成しても構わない。こうしても、昇温速度を高めることにより、セラミックスシートの密度をより高め、作製時のエネルギ消費量を低減することができる。例えば、揮発抑制状態として、成形体とは別の無機粒子を共存させた状態でこの成形体を焼成してもよいし、蓋付きの鞘などに入れ密閉状態でこの成形体を焼成するものとしてもよい。焼成雰囲気は、大気中としてもよいが、構成元素の揮発抑制、不活性層との反応性などの点で、酸素雰囲気や、窒素などの中性雰囲気、水素や炭化水素の共存下などの還元雰囲気、真空中などとしてもよい。また、面内の粒成長を促進する観点から、ホットプレスなど加重焼成してもよい。
【0031】
この焼成工程では、成形体にバインダなどの有機物が含まれる場合には、所定の脱脂温度で脱脂したあと上述した本焼成を行うものとしてもよい。この脱脂温度は、揮発成分の揮発が促進される温度以下がよく、例えば700℃や600℃とすることができる。このように、焼成することにより、シート状の成形体に含まれる無機粒子が、シート面方向の長さが厚さ方向の長さ以上であり、シート厚さ方向に結晶粒子22を1個有し、密度が85%以上であり、配向度が40%以上である結晶粒子に成長するのである。
【0032】
得られたセラミックスシートは、アスペクト比が2以下、より好ましくは3以下にならない程度に解砕して結晶粒子の粉体とし、結晶配向セラミックスの原料(テンプレート)としてもよい。この結晶配向セラミックスは、例えば厚み方向が10μmや30μmを超えるような任意の形状とすることができる。即ち、セラミックスシートは、結晶配向セラミックスの製造工程で用いられる結晶粒子を得るために作製されるものとしてもよい。この結晶配向セラミックスの製造方法の一例を以下に説明する。結晶配向セラミックスは、セラミックスシートから得られた結晶粒子を含む粉体と、その他の原料粉体(例えば配向していない無機粒子など)と、適宜バインダや可塑剤などを混合する混合工程を経て、結晶粒子が一定方向を向くような配向成形(2次配向)を行うことにより所定形状の2次成形体に成形する2次成形工程を行うものとしてもよい。なお、結晶粒子を含む粉体は、結晶粒子がばらばらであるものであってもよいし、ある程度の個数が結合したものであってもよい。配向成形は、上述したドクターブレード法や押出成型法などにより行うことができる。そして、結晶粒子粉体が配向している方向に他の原料粉体も配向させるようこの2次成形体を焼成する2次焼成工程を行い結晶配向セラミックスを得るのである。この2次焼成工程での焼成温度は、上述した所定焼成条件における平衡形の結晶が得られる焼成温度としてもよいし、この温度よりも1割以上高い温度としてもよい。なお、上述したシート状の成形体の焼成時に揮発抑制状態で焼成せず狙いとは異なる組成となった場合であっても、混合工程や2次成型工程時に揮発した成分を添加することにより、結晶配向セラミックスを目的とする組成比とすることができる。また、セラミックスシートの配向度は、より高い方が好ましいが、この2次配向後の焼成によっても高めることができるため、40%以上あればよいのである。あるいは、結晶配向セラミックスは、セラミックスシートを解砕することなく用いて作製するものとしてもよい。例えば、上述したセラミックスシートと、原料粉体を含む原料粉体シートとを積層して2次成形体を作製し、セラミックスシートに含まれる結晶粒子が配向している方向に原料粉体を配向させるよう、積層した2次成形体を焼成するものとしてもよい。
【0033】
以上詳述した本実施形態の自立した平板状のセラミックスシートによれば、シート厚さを30μm以下に形成し、シート面に特定の結晶面(擬立方(100))を含んだ結晶粒子をシート厚さ方向に1個有し、全体の面積に占める結晶粒子の面積の割合である密度が85%以上であり、シートの配向度がロットゲーリング法で40%以上であるため、圧電/電歪体としてより高い特性を得ることができる。また、このセラミックスシートの製造方法によれば、厚さを30μm以下や10μm以下に成形して焼成するだけでよいため、より簡単な処理で配向させることができる。また、粒子表面の原子の動きを活発化させるフラックスとして機能する、揮発しやすいAサイトの元素が多く配合されているため、昇温速度を大きくし、より高温でAサイトの元素を揮発させることにより、短時間で急激に粒成長を進めることができ、配向性をより高めることができる。また、昇温速度が大きいため、トータルの焼成時間をより短くすることが可能であり、作製時のエネルギ消費量をより低減させることができるし、長時間の焼成により生じる気孔の成長をより抑制可能であり、密度の低下をより抑制することができる。
【0034】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0035】
例えば、上述した実施形態では、セラミックスシートは、解砕して結晶配向セラミックスの原料として用いるものとしたが、これ以外の用途に利用するものとしてもよい。例えば、本発明のセラミックスシートは、誘電体材料、焦電体材料、圧電体材料、強誘電体材料、磁性材料、イオン伝導材料、電子伝導性材料、熱伝導材料、熱電材料、超伝導材料、耐摩耗性材料等の機能や特性が結晶方位依存性を有する物質よりなる多結晶材料へ用いることができる。具体的には、加速度センサ、焦電センサ、超音波センサ、電界センサ、温度センサ、ガスセンサ、ノッキングセンサ、ヨーレートセンサ、エアバックセンサ、圧電ジャイロセンサ等の各種センサ、圧電トランス等のエネルギ変換素子、圧電アクチュエータ、超音波モータ、レゾネータ等の低損失アクチュエータ又は低損失レゾネータ、キャパシタ、バイモルフ圧電素子、振動ピックアップ、圧電マイクロホン、圧電点火素子、ソナー、圧電ブザー、圧電スピーカ、発振子、フィルタ、誘電素子、マイクロ波誘電素子、熱電変換素子、焦電素子、磁気抵抗素子、磁性素子、超伝導素子、抵抗素子、電子伝導素子、イオン伝導素子、PTC素子、NTC素子等に応用すれば、高い性能を有する各種素子を得ることができる。このとき、結晶粒子のアスペクト比は、用途に合わせた値を適宜設定するものとする。また、このほかに、例えば、リチウム二次電池用電極材料に本発明を適用するものとしてもよい。具体的には、材料種としてはコバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn24)、3元系(Li(NixCoyMnz)O2(x、y、zは任意の数)、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)などが挙げられる。この電極材料は、揮発成分であるLiを含むことから、本発明を適用し、あらかじめLiを過剰に配合してこれを特定の昇温速度以上で揮発促進状態で焼成することにより、緻密かつ高配向のセラミックスシートを短時間で得ることができる。
【実施例】
【0036】
以下には、セラミックスシートを具体的に製造した例を、実験例として説明する。
【0037】
[実験例1]
(無機粒子の合成工程)
{Li0.07(Na0.50.50.93A/B[Nb0.9Ta0.1]O3(A/B=1.00)の組成比となるように、各粉末(Li2CO3、Na2CO3、K2CO3、Nb25、Ta25)を秤量した。ポリポットに、秤量物と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで16h湿式混合、粉砕を行った。得られたスラリーをエバポレータ及び乾燥機によって乾燥した後、850℃,5hの条件化で仮焼成した。この仮焼粉末と、ジルコニアボールと、分散媒としてエタノールを入れ、ボールミルで40h湿式粉砕し、エバポレータ及び乾燥機によって乾燥して、{Li0.07(Na0.50.50.93A/B[Nb0.9Ta0.1]O3(A/B=1.00)の無機粒子粉体を得た。この粉体をHORIBA製レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−750を用い、水を分散媒として平均粒径を測定したところ、メディアン径(D50)は、0.2μmであった。
【0038】
(自立シートの成形工程)
分散媒としてのトルエン、イソプロパノールを等量混合したものに、上記の無機粒子粉体と、バインダとしてポリビニルブチラール(BM−2、積水化学製)、可塑剤(DOP、黒金化成製)と、分散剤(SP−O30、花王製)とを混合し、スラリー状の成形原料を作製した。各原料の使用量は、無機粒子100重量部に対して、分散媒250重量部、バインダ17.5重量部、可塑剤7重量部及び分散剤2重量部とした。次に、得られたスラリーを、減圧下で撹拌して脱泡し、粘度500〜700cPとなるように調製した。スラリーの粘度は、ブルックフィールド社製LVT型粘度計で測定した。得られたスラリーをドクターブレード法によってPETフィルムの上にシート状に成形した。乾燥後の厚さを2μmとした。
【0039】
(自立シートの脱脂・焼成工程)
PETフィルムからはがしたシート状の成形体を、カッターで50mm角に切り出し、ジルコニアからなるセッター(寸法70mm角、高さ1mm)の中央に載置し、昇温速度10℃/分、仮焼温度600℃、1min保持で脱脂を行った。本焼成は、アルバック理工製の赤外線ランプ加熱装置を用い、成形体に含まれる所定温度以上で揮発が進行する揮発成分(例えばLi、Na、Kなど)の揮発が促進される揮発促進状態で行った。600℃以上の温度領域において、昇温速度は4℃/minとし、最大焼成温度を1050℃とし、1分間保持の条件で焼成し、焼成後、セッターに溶着していない部分を取り出し、得られたセラミックスシート(図1参照)を実験例1とした。なお、揮発促進状態の焼成は、シート状の成形体を載置したセッターに、ジルコニアからなるスペーサー(寸法5mm角、高さ10mm)をセッターの四隅に置き、その上に更にジルコニアの角板(寸法70mm角、高さ1mm)を載置して行った。この実験例1の作製条件及び後述するロットゲーリング法による配向度、密度などをまとめて表1に示す。なお、この表1には、後述する実験例2〜25のデータも示した。
【0040】
【表1】

【0041】
[実験例2〜8]
焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例2とした。揮発抑制状態での焼成は、シート状の成形体を載置したセッターに、シート状の成形体と同じ成形原料からなる未焼成のシート成形体(寸法5mm×40mm、厚さ100μm)をシート状の成形体の四辺の外側に載置してこれを囲い、その上に更にジルコニアの角板(寸法70mm角、高さ5mm)を載置して行った。こうして、シート状の成形体の空間をできるだけ小さくすると共に、同じ成形原料を共存させることにより、シート状の成形体周辺の雰囲気を揮発成分(アルカリ成分)の蒸気で満たした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において40℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例3とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例3と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例4とした。また、焼成工程において、120℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例5とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例5と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例6とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において900℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例7とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例7と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例8とした。
【0042】
[実験例9〜16]
原料合成工程において、A/B値が1.20となるように原料を配合した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例9とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例9と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例10とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において40℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例9と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例11とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例11と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例12とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において120℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例9と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例13とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例13と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例14とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において900℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例9と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例15とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例15と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例16とした。
【0043】
[実験例17〜24]
原料合成工程において、A/B値が1.35となるように原料を配合した以外は実験例1と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例17とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例18とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において40℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例19とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例19と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例20とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において120℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例21とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例22とした。また、焼成工程において、脱脂温度である600℃以上の温度範囲において900℃/分の昇温速度で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例23とした。また、焼成工程において、揮発成分の揮発が抑制される揮発抑制状態で成形体を焼成した以外は実験例17と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例24とした。
【0044】
[実験例25〜26]
焼成工程において、PETフィルムからはがしたシート状の成形体を、カッターで50mm角に切り出し、Ptからなるメッシュ状のセッター(寸法70mm角、線径0.1mm、80メッシュ)の中央に載置して焼成した以外は実験例21と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例25とした。また、表面を粗面化したジルコニアからなるセッター(寸法70mm角、厚さ1mm)の中央に載置して焼成した以外は実験例25と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例26とした。このセッターは、平均線から山側に突出した絶対値を合計した平均値である表面粗さRaが5μm、平均線から最も高い山頂までの長さと最も低い谷底までの深さとの和であるRmaxが30μmであり、且つ平均線から山頂までの高さが高い方から10番目までの山頂の高さの平均値と平均線から谷底までの深さが低い方から10番目までの谷底の深さの平均値とにより求めた表面粗さRzが25μmであるものを用いた(JIS−B0601:2001参照)。
【0045】
[実験例27]
自立シートの成形工程において、乾燥後の厚さを15umとした以外は実験例21と同様の工程を経て得られたセラミックスシートを実験例27とした。
【0046】
[実験例28]
(Bi0.5Na0.350.1Ag0.05A/BTiO3(A/B=1.20)の組成比となるように各粉末(Bi23、Na2CO3、K2CO3、Ag2O、TiO2)を秤量し、実験例13と同様に湿式混合、粉砕、乾燥を行ったあと、900℃、2hの条件で仮焼し、この得られた仮焼粉末を実験例13と同様に粉砕、乾燥して(Bi0.5Na0.350.1Ag0.051.2TiO3の無機粒子粉体を得た。この粉体を、実験例13と同様に、乾燥後の厚さが2μmとなるようシート状に成形し、昇温速度10℃/分、仮焼温度600℃、1min保持で脱脂を行った。本焼成は、最大焼成温度を1250℃とした以外は上述した実験例13と同様に行い、得られたセラミックスシートを実験例28とした。
【0047】
(電子顕微鏡撮影、密度の算出)
実験例1〜28のセラミックスシートについて、走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−6390)を用いてSEM写真を撮影した。この撮影結果であるSEM写真からセラミックスシートの密度(%)を求めた。セラミックスシートのシート面を観察し、結晶粒子が100〜200個程度含まれる視野において、{(粒子のある部分の面積)/(全面積)}×100を算出し、この値をその視野のセラミックスシートの密度(%)とした。この工程を任意の3つの視野において行い、得られた各視野のセラミックシートの密度の平均値を求め、得られた値をセラミックシートの密度とした。図3は、実験例10,15,23のSEM写真である。
【0048】
(配向度の算出)
実験例1〜28のセラミックスシートについて、XRD回折装置(リガク社製RAD−IB)を用い、シート面に対してX線を照射したときのXRD回折パターンを測定し、ロットゲーリング法によって擬立方(100)面の配向度を、擬立方(100),(110),(111)のピークを使用して計算した。ロットゲーリング法による配向度は、上述した式(2)を用いて行った。図4は、実験例10,15,23のX線回折パターンである。
【0049】
(熱重量(TG)測定)
セラミックスシートの主成分であるABO3に含まれる揮発成分について検討した。ニオブ酸アルカリは、{Li0.07(Na0.50.50.93A/B[Nb0.9Ta0.1]O3(A/B=1.00,1.20,1.35)の粉体について測定した。熱重量分析は、(株)リガク社製Thrmo plus TG8120を用いて、サンプル重量0.03g、昇温速度3℃/分で、ニオブ酸アルカリは1100℃まで、Pb(Zr,Ti)O3については1400℃まで測定した。
【0050】
[評価結果]
実験例1〜28の評価結果を表1及び図5〜8に示す。表1には、焼成前(原料仕込み時)のA/B値、脱脂温度である600℃以上での昇温速度(℃/分)、揮発状態、ロットゲーリング法による配向度(%)、密度(%)を示した。図5は、焼成前のA/B値に対する配向度の関係を表す図であり、図6は、焼成前のA/B値に対する密度の関係を表す図であり、図7は、昇温速度に対する配向度の関係を表す図であり、図8は、昇温速度に対する密度の関係を表す図である。本実施例の結果によると、図5〜8に示すように、本発明のセラミックスシートは、A/B値が1.05以上の範囲で且つ昇温速度が30℃/分以上の範囲では、配向度が40%以上を示すと共に、密度が85%以上を示し、好適であることがわかった。A/B値が1.50まで、この傾向を示すものと推察された。焼成時の揮発促進状態と揮発抑制状態については、昇温速度が30℃/分以上において、揮発抑制状態よりも揮発促進状態の方が配向度がより高まることが明らかとなり、揮発促進状態の方が好適であることがわかった。また、A/B値が1.20以上1.35以下では、揮発促進状態で焼成すると、配向度が75%以上を示すと共に、密度が90%以上と、極めて好適であった。このように、A/B値が1.05以上としたときには、昇温速度が30℃/分以上という、極めて焼成時間の短い条件で、より配向度が高く且つ密度の高い好適なセラミックスシートを作製可能であることがわかった。更に、焼成工程において成形体を載置するセッターとして、粗面化したものやPtメッシュなど成形体との接触面がより小さいセッターを用いても、焼成前(原料仕込み時)のA/B値、脱脂温度である600℃以上での昇温速度(℃/分)、揮発状態が同じであれば、平板のセッターを用いた場合と同等の配向度および密度が得られることがわかった。また、実験例27の結果より、シート厚さを15μmとしても同様の効果が得られることが明らかとなった。また、実験例28の結果より、基本組成をBNKT系とするものにおいても、同様の効果が得られることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、結晶が配向したセラミックス、例えば、圧電・電歪体の製造分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0052】
10 シート成形体、12 セッター、20 セラミックスシート、22 結晶粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立した平板状のセラミックスシートであって、
シート厚さが30μm以下に形成され、
シート面に特定の結晶面を含んだ結晶粒子をシート厚さ方向に実質的に1個有し、
全体の面積に占める前記結晶粒子の面積の割合を密度(%)としたときに、該密度が85%以上であり、
前記シートのロットゲーリング法の配向度が40%以上である、
セラミックスシート。
【請求項2】
前記密度が90%以上である、請求項1に記載のセラミックスシート。
【請求項3】
前記配向度が75%以上である、請求項1又は2に記載のセラミックスシート。
【請求項4】
前記結晶粒子は、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む粒子である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミックスシート。
【請求項5】
シート厚さが10μm以下に形成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミックスシート。
【請求項6】
前記結晶粒子は、焼成前の前記Aサイトと前記Bサイトとの比であるA/B値が1.05以上である、請求項4又は5に記載のセラミックスシート。
【請求項7】
自立した平板状のセラミックスシートの製造方法であって、
一般式ABO3で表される酸化物を該Aサイトと該Bサイトとの比であるA/B値が1.05以上となるように原料を配合して無機粒子を合成する原料合成工程と、
前記合成した無機粒子をシート厚さが30μm以下の自立した平板状の成形体に成形する成形工程と、
前記成形体を該成形体と実質的に反応しない不活性層に隣接させ又は該成形体のまま、少なくとも所定温度以上の温度領域においては30℃/分以上の昇温速度で該成形体を焼成する焼成工程と、
を含むセラミックスシートの製造方法。
【請求項8】
前記原料合成工程では、前記所定温度以上で揮発が促進される揮発成分を含む前記原料を配合し、
前記焼成工程では、前記揮発成分の揮発を促進させる揮発促進状態で前記成形体を焼成する、請求項7に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項9】
前記焼成工程では、前記所定温度以上の温度領域において40℃/分以上900℃/分以下の昇温速度で該成形体を焼成する、請求項7又は8に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項10】
前記焼成工程では、前記昇温速度において昇温したあと所定の最高焼成温度で30分以下の時間保持して焼成する、請求項7〜9のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項11】
前記焼成工程では、前記成形した平板状の成形体を該成形体と点接触する領域及び線接触する領域の少なくとも一方を有する不活性層上に載置して焼成する、請求項7〜10のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項12】
前記原料合成工程では、前記A/B値が1.2以上1.35以下となるように配合する、請求項7〜11のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項13】
前記原料合成工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがLi,Na,K,Bi及びAgから選ばれる1種以上を含み、BサイトがNb,Ta及びTiから選ばれる1種以上を含む結晶粒子となる無機粒子となるよう配合する、請求項7〜12のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項14】
前記原料配合工程では、一般式ABO3で表される酸化物を主成分とし、AサイトがPbを含み、BサイトがMg,Zn,Nb,Ni,Ti及びZrから選ばれる1種以上を含む結晶粒子となる無機粒子となるよう配合する、請求項7〜12のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。
【請求項15】
前記成形工程では、前記合成した無機粒子をシート厚さが10μm以下の自立した平板状の成形体に成形する、請求項7〜14のいずれか1項に記載のセラミックスシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−132528(P2010−132528A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156928(P2009−156928)
【出願日】平成21年7月1日(2009.7.1)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】