説明

セラミックセンサ

【課題】温度差に起因する破損を防止して長期間にわたり安定して、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム湯面の測定を行うことができるセラミックセンサを提供する。
【解決手段】 緩衝材4を介してセラミック製のセンサ本体部1をホルダ2に接続し、緩衝材4を貫通するピン6をセンサ本体部1に接続し、急激な温度変化を繰り返し受けても緩衝材4により衝撃を吸収し、センサ本体部1のホルダ2との接合部及び嵌合部の亀裂の発生をなくしたセラミックセンサ10とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、金属溶湯の湯面の検出を行うセラミックセンサに関し、使用時の温度差に起因するセラミックの破損防止を企図したものである。
【背景技術】
【0002】
溶融金属により鋳造品を製造する際に、鋳造炉内の金属湯面をできるだけ一定に保持することは鋳造品の品質向上に欠かせない要因となっている。このため、金属溶湯が収容される炉内容器には溶湯面の高さを検出する湯面検出センサが備えられ、湯面センサの検出情報に基づいて溶湯の供給・停止が制御されるようになっている。
【0003】
湯面センサとしては、2本の導電体を溶融金属に挿入し、2本の導電体の通電状況を見ることで湯面高さを検出する構成のセンサが知られている。溶融金属に挿入する導電体の材質としては金属溶湯の浸食を受けない導電性セラミックを使用することが従来から提案されており(例えば、下記特許文献1参照)、導電性セラミックを使用することにより長期間にわたり安定して金属湯面を測定することができる。
【0004】
即ち、導電性セラミックを使用した湯面センサ(セラミックセンサ)では、金属ホルダにセラミック製のセンサ本体を固定し、金属制御棒の先端に取り付けて導電体とセンサ本体を接続し、通電を確認することで溶融金属の湯面を検出することができる。
【0005】
従来のセラミックセンサでは、セラミック本体と金属ホルダの熱膨張率が顕著に異なるため、溶融金属の湯面の上下に伴う急激な温度変化を繰り返し受けることにより接合部及び嵌合部のセラミックに亀裂が生じ破損する虞があった。セラミック本体に亀裂が生じると、誤った湯面レベルの信号が検出され、操業や鋳造品の品質に影響を及ぼすことが考えられる。
【0006】
【特許文献1】特開平2−31115号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、急激な温度変化を繰り返し受けても接合部及び嵌合部に亀裂が生じることがないセラミックセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、接続ピンをセラミック製のセンサ本体部に接合して設けると共に、前記接続ピンをホルダに接合して設け、前記接続ピンを介して前記ホルダに前記センサ本体部を取り付けたことを特徴とするセラミックセンサにある。
【0009】
第1の態様では、接合部位に接続ピンを介してセンサ本体をホルダに取り付けたので、最も熱衝撃を受けやすいセンサ本体とホルダの接合部位を、センサ本体部の外周面部から遊離させることができ、即ち、熱の影響を受け難い部位でホルダとセンサ本体部を接合したので、耐熱衝撃性が向上してセンサとしての信頼性を向上させることができる。これにより、温度差に起因する破損を防止して長期間にわたり安定して、急激な温度変化を繰り返し受ける部位の測定を行うことができる。
【0010】
そして、本発明の第2の態様は、第1の態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記接続ピンはねじ棒であり、前記接続ピンは前記センサ本体部に螺合されていることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0011】
第2の態様では、ねじにより接続ピンと前記センサ本体部を取り付けることができる。
【0012】
本発明の第3の態様は、第1の態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記センサ本体部と前記ホルダの間に緩衝材を介在させ、該緩衝材に前記接続ピンを貫通させたことを特徴とするセラミックセンサにある。
【0013】
第3の態様では、緩衝材により衝撃が吸収され、熱衝撃によるセンサ本体部の破損を緩衝材により効果的に防止することができると共に、緩衝材が断熱材の役割を果たし、接合部位を熱衝撃から保護して信頼性をより向上させることができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか1つの態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記接続ピンは金属製の導電性材料で形成されていることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0015】
第4の態様では、接続ピンを介して通電が行われる。
【0016】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記センサ本体部の前記ホルダとの取り付け部位は該センサ本体部と同一軸心を有する円筒状に形成され、円筒状に形成された円筒部の軸心の中心部に前記接続ピンが嵌合する嵌合穴を設け、該嵌合穴の半径は前記センサ本体部の前記円筒部の半径の2分の1以下であることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0017】
第5の態様では、センサ本体部の中心部に円筒部を設け、円筒部に設けられた嵌合穴に接続ピンを嵌合してセンサ本体部とホルダとを固定したので、耐熱衝撃性だけでなく、搬送時や設置時の衝撃及び振動に対する衝撃、ぶつけた時の衝撃に対しても耐衝撃性が得られる。また、接続ピンの断面積が円筒部の断面積の4分の1以下になるため、接続ピンに柔軟性を持たせ、接続ピン自体で衝撃を吸収することができ、更に信頼性を向上させることができる。
【0018】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記接続ピンはねじ棒であると共に、前記嵌合穴はねじ棒が螺合するねじ穴であり、前記接続ピンは、前記センサ本体部の前記嵌合穴に螺合して溶接により前記センサ本体部に固定されていることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0019】
第6の態様では、ねじ棒によりセンサ本体部を取り付けることができる。
【0020】
本発明の第7の態様は、第5または第6の態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記接続ピンはろう付けにより前記センサ本体部に固定されていることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0021】
第7の態様では、金属ろう付け(例えば、銅ろう付け、銀ろう付け)によりセンサ本体部を取り付けることができる。
【0022】
本発明の第8の態様は、第1から第4のいずれか1つの態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記ホルダに対して前記接続ピンが同軸状態に取り付けられ、前記ホルダの反対側における前記接続ピンに前記センサ本体部が同軸状に取り付けられたことを特徴とするセラミックセンサにある。
【0023】
本発明の第9の態様は、第8の態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記接続ピンはねじ棒であり、前記接続ピンは、前記センサ本体部に螺合すると共に溶接により前記ホルダに固定されていることを特徴とするセラミックセンサにある。
【0024】
本発明の第10の態様は、第1から第9のいずれか1つの態様に記載のセラミックセンサにおいて、前記ホルダは金属溶湯を収容する炉内容器に設けられ、前記センサ本体は先端が前記炉内容器内の金属溶湯に接触または浸漬することで金属溶湯の湯面を検出することを特徴とするセラミックセンサにある。
【0025】
第10の態様では、長期間にわたり安定して、急激な温度変化を繰り返し受ける金属溶湯の湯面の測定を長期間にわたり安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のセラミックセンサは、急激な温度変化を繰り返し受けても、センサ本体部のホルダへの接合部及び嵌合部に亀裂が生じることがないセラミックセンサとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1には本発明の第1実施形態例に係るセラミックセンサの断面、図2には本発明の第2実施形態例に係るセラミックセンサの断面、図3には本発明の第3実施形態例に係るセラミックセンサの断面、図4には本発明の第4実施形態例に係るセラミックセンサの断面を示してある。図示のセラミックセンサは、アルミニウム溶湯を収容する炉内容器に設けられ、炉内容器内のアルミニウム溶湯の湯面を検出するものである。また、図5にはセラミックセンサの使用例を示してある。
【0028】
図1に基づいて第1実施形態例を説明する。
【0029】
図に示すように、セラミックセンサ10は棒状のセンサ本体部1を備え、センサ本体部1は導電性を有するセラミック製(例えば、92TiB−5TiCN−3Co、90TiB−10TiC等の導電性セラミック)で、先端が溶融アルミニウムに接触または浸漬される。センサ本体部1の表面にはNiめっき、または、Auめっき、Agめっき、Crめっきが施され、更に、金属溶湯に濡れにくくするため、BN等の離型材が塗布されている。
【0030】
これにより、大気中に晒されても酸化を抑制することができる。このため、アルミニウム溶湯に接触または浸漬して使用する場合には勿論、大気雰囲気中で使用しても長期にわたり導通を確保することができ、更に信頼性を高めることができる。
【0031】
センサ本体部1の後端はホルダ2の取付け穴3に嵌合されている。取付け穴3の内面とセンサ本体部1の後端の外面との間(接続部)には緩衝材4が介在して設けられている。つまり、センサ本体部1の後端は緩衝材4を介してホルダ2に取り付けられている。ホルダ2は耐熱合金で形成され、SUS(例えば、SUS304、SUS310S)をはじめとして種々の耐熱鋼等の材質で形成される。
【0032】
ホルダ2とセンサ本体部1の後端面とにわたり導電材としてのSUS製の棒状のピン6(接続ピン)が緩衝材4を貫通して設けられ、ピン6はろう付け(金属ろう:例えば銅ろう)によりホルダ2及びセンサ本体部1に固定されている。ピン6の周囲はろう材5を介してホルダ2及びセンサ本体部1に固定されている。また、ピン6のセンサ本体部1と反対側の端部は溶接によりホルダ2に固定されている。センサ本体部1はSUS製のピン6を介して外部と導線接続される。
【0033】
セラミックセンサ10の全体の長さ(ホルダ2に取り付けられたセンサ本体部1の長さ)は、例えば、130mmとされ、ホルダ2の長さは、例えば、30mmとされている。また、ホルダ2の直径は、例えば、20mmとされ、センサ本体部1の直径は、例えば、12mmとされている。また、ピン6の直径は、例えば、3mmにされ、長さは、例えば、15mmとされている。ホルダ2とセンサ本体部1との隙間が1mm〜2mmとされている。
【0034】
接続部を詳述すると、センサ本体部1のホルダ2との取り付け部位はセンサ本体部1と同一軸心を有する円筒状に形成され、円筒状に形成された円筒部の軸心の中心部にピン6が嵌合する嵌合穴21が設けられている。嵌合穴21の半径はセンサ本体部1の円筒部の半径の2分の1以下とされている。
【0035】
嵌合穴21及びピン6の半径は、加工精度の観点から0.5mm以上とすることが好ましく、ピン6の熱膨張に伴うセンサ本体部1の張り割れを防止するため、嵌合穴21の半径はセンサ本体部1の半径の3分の2以下とすることが好ましく、更に、2分の1以下とすることが好ましい。また、嵌合穴21があるセンサ本体部1の半径方向外側の厚みは、強度を確保する観点より1mm以上とすることが好ましく、更に、2.5mm以上とすることが好ましい。
【0036】
緩衝材4は、例えば、センサ本体部1の側部側がファイバーモルタルで、センサ本体部1の後端部側がシート状アルミナファイバーのパッキンで構成されている。ファイバーモルタルは流し込んで固化させて施工するため、緩衝機能と共にアルミニウム溶湯の隙間への浸入を防止することができる。シート状アルミナファイバーには断熱機能もあるため、ピン6との接合部を熱衝撃から保護することができる。
【0037】
前述したホルダ2は、アルミニウム溶湯に晒されるため耐熱性を有することが必要であり、同時に、センサ本体部1から伝達される電気を良好に伝える材料であることが必要である。導電性セラミック製のセンサ本体部1と、例えば、SUS304、SUS310Sからなるホルダ2とを不活性雰囲気あるいは真空雰囲気下で銅ろう付けを行い、センサ本体部1の表面にNiめっき処理を施し、アルミニウム溶湯(700℃〜720℃)中に一定期間(例えば、3箇月)浸漬し、耐食性、接合部の耐酸化性(通電性)を調べた。この結果、耐食性、通電性共良好な結果が得られることが確認された。
【0038】
上述したセラミックセンサ10は、センサ本体部1の先端がアルミニウム溶湯に接触または浸漬され、通電状況が検知されてアルミニウム湯面が検出される。センサ本体部1が導電性セラミック製であるため、アルミニウム溶湯の浸食を受けることがなく、長期間にわたり安定してアルミニウム湯面を測定することができる。
【0039】
そして、センサ本体部1は緩衝材4を介してホルダ2の取付け穴3に固定されているので、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面に接触または浸漬されていても、緩衝材4により衝撃が吸収され、センサ本体部1のホルダ2との接合部及び嵌合部に亀裂が生じることがなく、温度差に起因する破損が防止される。
【0040】
このため、セラミックセンサ10を用いることにより、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面の測定を長期間にわたり安定して行うことができ、信頼性を向上させることが可能になる。
【0041】
つまり、上述したセラミックセンサ10は、ピン6をセンサ本体1の内部に接合させホルダ2に取り付けたので、最も熱衝撃を受けやすいセンサ本体1とホルダ2の接合部位を、センサ本体部1の外周面部から遊離させることができ、即ち、熱の影響を受け難い部位でホルダ2とセンサ本体部1を接合したので、耐熱衝撃性が向上してセンサとしての信頼性を向上させることができる。これにより、温度差に起因する破損を防止して長期間にわたり安定して、急激な温度変化を繰り返し受ける部位の測定を行うことができる。
【0042】
尚、緩衝材4をセンサ本体部1の側面部位にのみに設け、センサ本体部1の後端面側はピン6でのみホルダ2につながる構成とすることも可能である。また、緩衝材4を省略することも可能であり、緩衝材4を設けない場合であっても、センサ本体1とホルダ2の接合部位を、センサ本体部1の外周面部から遊離させることができ、耐熱衝撃性を向上させることができる。
【0043】
緩衝材4を設けた場合は緩衝材4により衝撃が吸収され、熱衝撃によるセンサ本体部1の破損を緩衝材4により効果的に防止することができると共に、緩衝材4が断熱材の役割を果たし、接合部位を熱衝撃から保護して信頼性をより向上させることができる。
【0044】
また、センサ本体部1のホルダ2との取り付け部位はセンサ本体部1と同一軸心を有する円筒状に形成され、センサ本体部1の後端面に(円筒部に)同心状の嵌合穴21を設け、嵌合穴21にピン6を嵌合してセンサ本体部1とホルダ2とを固定したので、耐熱衝撃性だけでなく、搬送時や設置時の衝撃及び振動に対する衝撃、ぶつけた時の衝撃に対しても耐衝撃性が得られる。また、嵌合穴21の半径がセンサ本体部1の円筒部の半径の2分の1以下とされているため、ピン6の断面積が円筒部の断面積の4分の1以下になるため、ピン6に柔軟性を持たせることで、ピン6自体でも衝撃を吸収することができ、更に信頼性を向上させることができる。
【0045】
図2に基づいて第2実施形態例を説明する。尚、図1に示した第1実施形態例と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0046】
図に示すように、セラミックセンサ20は棒状のセンサ本体部1を備え、センサ本体部1はセラミック製(例えば、92TiB−5TiCN−3Co、90TiB−10TiC等の導電性セラミック)で、先端が溶融アルミニウムに接触または浸漬される。センサ本体部1の後端はホルダ2の取付け穴3に嵌合されている。取付け穴3の内面とセンサ本体部1の後端の外面との間には緩衝材4が介在して設けられている。つまり、センサ本体部1の後端は緩衝材4を介してホルダ2に取り付けられている。
【0047】
ホルダ2とセンサ本体部1の後端面とにわたり導電材としてのSUS製のピンとしてのねじ棒11が緩衝材4を貫通して設けられ、ねじ棒11はセンサ本体部1の後端のねじ穴22(図1に示した嵌合穴21に相当)に螺合している。ねじ棒11のホルダ2との接触部はろう付け(金属ろう:例えば銅ろう)によるろう材12が介在し、ねじ棒11はセンサ本体部1に螺合すると共にホルダ2にろう付けされることにより、センサ本体部1の後端が緩衝材4を介してホルダ2に固定されている。また、ねじ棒11のセンサ本体部1と反対側の端部は溶接によりホルダ2に固定されている。センサ本体部1はSUS製のねじ棒11を介して外部と導線接続される。
【0048】
上述したセラミックセンサは、センサ本体部1の先端がアルミニウム溶湯に接触または浸漬され、通電状況が検知されてアルミニウム湯面が検出される。センサ本体部1が導電性セラミック製であるため、アルミニウム溶湯の浸食を受けることがなく、長期間にわたり安定してアルミニウム湯面を測定することができる。
【0049】
そして、センサ本体部1は緩衝材4を介してホルダ2の取付け穴3に固定されているので、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面に接触または浸漬されていても、緩衝材4により衝撃が吸収され、センサ本体部1のホルダ2との接合部及び嵌合部に亀裂が生じることがなく、温度差に起因する破損が防止される。また、センサ本体部1の後端にねじ棒11が螺合しているので、導電材としてのねじ棒11を安定してセンサ本体部1に接続することができる。
【0050】
このため、セラミックセンサ20を用いることにより、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面の測定を長期間にわたり安定して行うことができ、信頼性を向上させることが可能になる。
【0051】
尚、図2に示したセラミックセンサ20は、センサ本体部1の側部側及び後端部側に緩衝材4が設けられているが、図3に示した第3実施形態例のように、センサ本体部1の後端部側のみに緩衝材4を設け、センサ本体部1の側部とホルダ2の取付け穴3との間に隙間を形成することも可能である。センサ本体部1の側部とホルダ2の取付け穴3との間に隙間を形成した場合、センサ本体部1に外力が加わっても隙間により変位が許容され、センサ本体部1が破損する虞を低下させることができる。
【0052】
ねじ穴22及びねじ棒11の半径は、加工精度の観点から0.5mm以上とすることが好ましく、ねじ棒11の熱膨張に伴うセンサ本体部1の張り割れを防止するため、ねじ穴22の半径はセンサ本体部1の半径の3分の2以下とすることが好ましく、更に、2分の1以下とすることが好ましい。また、ねじ穴22があるセンサ本体部1の半径方向外側の厚みは、強度を確保する観点より1mm以上とすることが好ましく、更に、2.5mm以上とすることが好ましい。
【0053】
図4に基づいて第4実施形態例を説明する。図1〜図3に示した第1〜第3実施形態例と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0054】
図に示すように、セラミックセンサ50は棒状のセンサ本体部1を備え、センサ本体部1はセラミック製(例えば、92TiB−5TiCN−3Co、90TiB−10TiC等の導電性セラミック)で、先端が溶融アルミニウムに接触または浸漬される。センサ本体部1の後端には導電材としてのSUS製のピンとしてのねじ棒52のねじ部53が螺合し、ねじ棒52に同軸状に固定された状態になっている。ねじ棒52はホルダ51に溶接部54により固定され、センサ本体部1はねじ棒52を介してホルダ51の先端に同軸状態に取り付けられている。センサ本体部1はSUS製のねじ棒11を介して外部と導線接続される。
【0055】
ねじ棒52のセンサ本体部1への取り付け、センサ部本体1のねじ穴にろう材(金属ろう:例えば銅ろう)を予め入れておき、ろう材が入れられたねじ穴にねじ棒52のねじ部53を螺合することで取り付けられる。このため、ねじ部53の螺合とろう材とのろう付けにより、ねじ棒52のセンサ本体部1への取り付けが高い信頼性で確実に行われる。
【0056】
尚、ねじ棒52に代えて円柱状のピンを適用し、嵌合もしくはろう付けによりセンサ本体1に取り付けることも可能である。これにより、ピンの加工が簡単なものとなり、容易に交換を行うことができる。
【0057】
ねじ棒52は、例えば、直径が4mm以上でねじ部53の長さが5mm、露出部の長さが10mm程度に設定されている(ねじ部53と露出部の長さの割合が、例えば、1:2)。これにより、例えば、400MPa程度以上の曲げ強度を有するセンサ本体を用いれば、センサ本体に衝撃や負荷が加わっても、露出部で吸収することができ、センサ本体が破損しない。ねじ部53は細いほど衝撃の負荷を吸収することができるが細すぎると破損しやすくなるため、例えば、直径を4mm以上に設定してある。
【0058】
ねじ穴及びねじ棒52の半径は、加工精度の観点から0.5mm以上とすることが好ましく、ねじ棒52の熱膨張に伴うセンサ本体部1の張り割れを防止するため、ねじ穴の半径はセンサ本体部1の半径の3分の2以下とすることが好ましく、更に、2分の1以下とすることが好ましい。また、ねじ穴があるセンサ本体部1の半径方向外側の厚みは、強度を確保する観点より1mm以上とすることが好ましく、更に、2.5mm以上とすることが好ましい。
【0059】
上述したセラミックセンサ50は、センサ本体部1の先端がアルミニウム溶湯に接触または浸漬され、通電状況が検知されてアルミニウム湯面が検出される。センサ本体部1が導電性セラミック製であるため、アルミニウム溶湯の浸食を受けることがなく、長期間にわたり安定してアルミニウム湯面を測定することができる。
【0060】
そして、センサ本体部1は、ねじ棒52を介してホルダ51の先端に同軸状態に取り付けられているので、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面に接触または浸漬されていても、ねじ棒52により衝撃が吸収され、センサ本体部1やホルダ51に亀裂が生じることがなく、温度差に起因する破損が防止される。また、ねじ棒52はセンサ本体部1の後端に螺合しているので、導電材としてのねじ棒52を安定してセンサ本体部1に接続することができる。
【0061】
このため、セラミックセンサ50を用いることにより、急激な温度変化を繰り返し受けるアルミニウム溶湯の湯面の測定を長期間にわたり安定して行うことができ、信頼性を向上させることが可能になる。
【0062】
図5に基づいて上述したセラミックセンサ10、20、50の使用例を説明する。
【0063】
金属溶湯であるアルミニウム溶湯31を収容する炉内容器に、例えば、3個のセラミックセンサ10(20、50)が備えられ、3個のセラミックセンサ10(20、50)は、アルミニウム溶湯31の湯面32に対してそれぞれ異なる高さに設置されている。例えば、中央のセラミックセンサ10(20、50)を挟んで、一方(図中左側)のセラミックセンサ10(20、50)は通常の湯面32よりも高い位置に設置され、他方(図中右側)のセラミックセンサ10(20、50)は通常の湯面32に対して浸漬する位置に設置され、中央のセラミックセンサ10(20、50)は通常の湯面32のときに先端が湯面32に接触する位置に設置されている。
【0064】
このように、同じセラミックセンサ10(20、50)でも、熱環境に対して異なる衝撃を受ける状態に設置されているが、セラミックセンサ10(20、50)は耐熱衝撃性に対して信頼性が高いものとなっているので、炉内容器への設置状況に拘わらず、高い信頼性で安定して長期にわたりアルミニウム溶湯31の湯面32の測定を行うことができる。
【0065】
特に、図中左側2つ(R1、R2)のセラミックセンサ10(20、50)は、アルミニウム溶湯の湯面上下限を検出するものであり、センサ本体部がアルミニウム溶湯の浸漬と脱出を繰り返すことになる。このため、熱による膨張・収縮に伴う熱衝撃を受けやすいものとなっている。本発明のセラミックセンサ10、20、50をこのようなセンサとして使用することで、割れ等がなくその効果を十分に発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば、金属溶湯の湯面の検出を行うセラミックセンサの産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1実施形態例に係るセラミックセンサの断面図である。
【図2】本発明の第2実施形態例に係るセラミックセンサの断面図である。
【図3】本発明の第3実施形態例に係るセラミックセンサの断面図である。
【図4】本発明の第4実施形態例に係るセラミックセンサの断面図である。
【図5】セラミックセンサの使用例を表す説明図である。
【符号の説明】
【0068】
1 センサ本体部
2、51 ホルダ
3 取付け穴
4 緩衝材
5、12 ろう材
6 ピン
10、20、50 セラミックセンサ
11、52 ねじ棒
21 嵌合穴
22 ねじ穴
31 アルミニウム溶湯
32 湯面
53 ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続ピンをセラミック製のセンサ本体部に接合して設けると共に、前記接続ピンをホルダに接合して設け、前記接続ピンを介して前記ホルダに前記センサ本体部を取り付けたことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックセンサにおいて、
前記接続ピンはねじ棒であり、前記接続ピンは前記センサ本体部に螺合されている
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項3】
請求項1に記載のセラミックセンサにおいて、
前記センサ本体部と前記ホルダの間に緩衝材を介在させ、該緩衝材に前記接続ピンを貫通させた
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のセラミックセンサにおいて、
前記接続ピンは金属製の導電性材料で形成されている
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミックセンサにおいて、
前記センサ本体部の前記ホルダとの取り付け部位は該センサ本体部と同一軸心を有する円筒状に形成され、円筒状に形成された円筒部の軸心の中心部に前記接続ピンが嵌合する嵌合穴を設け、該嵌合穴の半径は前記センサ本体部の前記円筒部の半径の2分の1以下である
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項6】
請求項5に記載のセラミックセンサにおいて、
前記接続ピンはねじ棒であると共に、前記嵌合穴はねじ棒が螺合するねじ穴であり、前記接続ピンは、前記センサ本体部の前記嵌合穴に螺合して溶接により前記センサ本体部に固定されている
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のセラミックセンサにおいて、
前記接続ピンはろう付けにより前記センサ本体部に固定されている
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のセラミックセンサにおいて、
前記ホルダに対して前記接続ピンが同軸状態に取り付けられ、前記ホルダの反対側における前記接続ピンに前記センサ本体部が同軸状に取り付けられた
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項9】
請求項8に記載のセラミックセンサにおいて、
前記接続ピンはねじ棒であり、前記接続ピンは、前記センサ本体部に螺合すると共に溶接により前記ホルダに固定されている
ことを特徴とするセラミックセンサ。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項に記載のセラミックセンサにおいて、
前記ホルダは金属溶湯を収容する炉内容器に設けられ、前記センサ本体部は先端が前記炉内容器内の金属溶湯に接触または浸漬することで金属溶湯の湯面を検出する
ことを特徴とするセラミックセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−96219(P2008−96219A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276880(P2006−276880)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】