説明

セラミックヒータ及びグロープラグ

【課題】製造過程において素子成形体にクラックが発生することによる不具合を抑制することのできるセラミックヒータを提供する。
【解決手段】セラミックヒータは、1対の棒状のリード部、リード部の先端部同士を連結する略U字状の連結部、及び、各リード部から外周方向に突出する電極取出部を具備し、導電性セラミックからなる発熱素子と、発熱素子を保持する絶縁性セラミックからなる基体とを備える。上記セラミックヒータは、素子成形体31を成形しておき、そのまわりを絶縁性セラミック粉末で固めるプレス成形を施して保持体を得た後、保持体を脱脂し加圧条件下で焼成することで得られる。素子成形体31の電極取出部37,38のうち少なくとも付け根部分を、外周側ほど先細りする湾曲面51を具備する変化部52とし、変化部52のリード部長手方向の長さR2及び当該長手方向に直交する突出方向の長さR1をいずれも0.5mm以上とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性セラミックからなる発熱素子が絶縁性セラミックからなる基体にて保持されてなる棒状のセラミックヒータ及び当該セラミックヒータを備えるグロープラグに係り、特に、前記発熱素子が、1対の棒状の導電部からセラミックヒータの外周方向に突出する電極取出部を具備してなるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンの始動補助等に用いられるグロープラグは、筒状の主体金具、棒状の中軸、通電により発熱する発熱素子を内蔵するヒータ、絶縁部材、外筒、かしめ部材等を備えている。ディーゼルエンジンが要する性能やコスト面からヒータを金属製シースとするメタルグロープラグや、ヒータをセラミックヒータとするセラミックグロープラグが使用されている。
【0003】
ところで、このセラミックグロープラグは概略次の構成を備えている。すなわち、主体金具の内周側には後端側へ一端を突出させた中軸が配設され、該中軸の先端側にはセラミックヒータ(以下、単にヒータともいう)が設けられている。また、主体金具の先端部には外筒が接合され、この外筒によってヒータが保持されている。一方、主体金具の後端側においては、絶縁部材が中軸と主体金具との間隙に挿入され、絶縁部材の後端側にはかしめ部材が中軸を固定するようにして設けられている。
【0004】
上記セラミックヒータは、導電性セラミックからなる発熱素子が、絶縁性セラミックからなる基体中に埋設されて保持されることで構成されている。この場合において、発熱素子に電圧を印加するための陰極・陽極の両電極取出部が後端側に設けられ、一方の電極取出部は主体金具に電気的に接続され、他方の電極取出部は中軸に電気的に接続される(例えば、特許文献1等参照)。この電気的な接続の方法としては金属製の外筒やリング部材への圧入が考えられる。
【0005】
このようなセラミックヒータは、一般に、次のようにして製造される。まず、焼成後に導電性を有する導電性セラミック材料粉末から、例えば射出成形により素子成形体を成形しておく。素子成形体は、前記発熱素子を構成するものであって、1対の棒状の導電部と、導電部の先端部同士を連結する略U字状の連結部とを備え、連結部のうち先端部分が主に発熱を行う発熱抵抗部となっている。前記電極取出部は、基体中に埋設されたときに各導電部の後端部において、基体の外周方向に向けて導電部から突出して一体形成されている。
【0006】
一方で、焼成後に絶縁性を有する絶縁性セラミック材料粉末を用いて半割絶縁成形体を成形しておく。半割絶縁成形体には、素子成形体を収容するための収容凹部が形成される。
【0007】
次に、例えば長方形状の開口を有する外枠と、前記開口に対応した凸部を具備する下型・上型とからなる金型装置を用い、開口に下型の凸部を嵌め込んだ状態で、前記下側の半割絶縁成形体を開口内にセットし、さらに前記素子成形体を前記半割絶縁成形体の収容凹部に配置(又は載置)し、さらに前記素子成形体を埋めるようにして絶縁性セラミック材料粉末を充填し、その後、上型によって上からプレス圧縮を施す。これにより、前記素子成形体を絶縁成形体で保持した保持体が得られる。そして、当該保持体を脱脂(仮焼)し、その後加圧条件下で焼成(ホットプレス)して焼成体を得る。さらに焼成体外周を研磨して所定の整形を施すことで、導電性セラミックからなる発熱素子が、絶縁性セラミックからなる基体にて保持されてなる上記セラミックヒータが得られる。また、このようにして得られたセラミックヒータが用いられて、セラミックグロープラグが製造され、使用に供される。
【特許文献1】特開2002−364842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記素子成形体は、バインダ(樹脂成分)を含有しており、上述した脱脂(仮焼)工程において、バインダ揮発に伴い体積収縮を起こす。このとき、体積収縮にうまく追従できずに、前記素子成形体のうち、電極取出部と導電部との境界部分、つまり、電極取出部の付け根部分にクラックが生じてしまうおそれがある。そして、このように一旦クラックが発生すると、焼成後にくびれが形成されてしまったり、抵抗値が不安定となったりして、製品としての信頼性低下の要因となってしまうおそれがある。
【0009】
これに対し、脱脂工程に際しての急激な体積収縮を回避するべく、素子成形体の射出成形後において、「乾燥工程」を設け、予備的に一部のバインダを除去しておくことも考えられる。このような手法によれば、脱脂工程におけるバインダの揮発量が抑制されることから、クラックの発生をある程度抑えることができる。
【0010】
ところが、近年では、セラミックヒータの細径化、長尺化の要請が高まってきており、かかる要請に応えるためには、発熱素子の細径化が必須となってくる。この場合、素子成形体も全体として細くせざるを得ず、収縮に対する耐久性が低下してしまい、より一層クラックが発生してしまうおそれが高まる。さらには、細径の素子成形体を射出成形しようとした場合、成形時のキャビティ内での流動性を確保するためにバインダの含有量を従来よりも増大させることがある。この場合、脱脂時における体積収縮もさらに大きくなってしまい、折角事前に予備的な乾燥工程を設けたとしても、クラックが発生してしまうことが依然として起こりうる。
【0011】
このように、乾燥工程の追加は、素子成形体のクラックの発生について根本的な解決にはなっておらず、特に細径化の要望には十分には応えることができなかった。
【0012】
そこで、本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、製造過程において素子成形体にクラックが発生することによる不具合を抑制し、ひいては使用中においても不具合の生じることのないセラミックヒータを提供することにある。また、そのセラミックヒータを使用してなるグロープラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記課題等を解決するのに適した各構成を項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果等を付記する。
【0014】
構成1.本構成のセラミックヒータは、軸線方向に延びる一対の棒状の導電部と、当該導電部の先端部同士を連結する略U字状の連結部と、前記導電部から前記軸線に垂直な方向へ向けて前記導電部より突出された電極取出部とを備えた導電性を有するセラミック製の発熱素子が、前記軸線方向に延びる棒状で絶縁性を有するセラミック製の基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
前記発熱素子の前記電極取出部のうち少なくとも前記導電部寄り部位は、前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する断面積減少部となっていることを特徴とする。
【0015】
ここで、「外周方向へいくほど先細りする湾曲面又はテーパ面」とあるのは、一方の導電部及びこの導電部から軸線に垂直な方向(以下、径方向ともいう)へ突出して形成される一方の電極取出部の両軸心を通過する仮想平面での破断面をみたときに、導電部と電極取出部とのコーナー部分の破断線が、直角状となっておらず、コーナー部側に凸の曲線状又は斜線状となっていることを意味するものである。代表的な湾曲面としてはR面が挙げられ、代表的なテーパ面としてはC面が挙げられる。
【0016】
上記構成1によれば、このように湾曲面やテーパ面を形成していることによって、繰り返して加熱・冷却がこの部位に及んでも発熱素子が破断する等してヒータとして異常を来すことを防ぐことが可能となる。
【0017】
構成2.本構成のセラミックヒータは、上記構成1において、少なくとも前記断面積減少部の前記軸線に垂直な長さが、前記導電部から前記基体の外周面までの長さに対して0.9以下であることを特徴とする。
【0018】
ここで、「断面積減少部」とは、電極取出部の突出する方向に対して垂直な仮想平面でこの電極取出部の破断面をみたときの断面積が、突出する方向へいくほど減少していることを意味するものである。
【0019】
発熱素子の電極取出部がセラミックヒータの表面に露出する部位(以下単に露出部位ともいう)まで湾曲面又はテーパ面となっている場合を想定すると、電極取出部の断面積はセラミックヒータ表面の露出部位において最も小さい構成となる。すると、僅かではあったとしても電極取出部のうち露出部位が最も抵抗値が高くなるために発熱することが考えられる。上記のようにセラミックヒータが金属製のリング部材や外筒などに圧入等によって外嵌される構成であると、その当接面には大気(酸素)が入り込む可能性があるため、露出部位は酸化し、接触抵抗が増大してしまうおそれがある。
【0020】
これに対して上記構成2によれば、電極取出部の断面積減少部の導電部から基体の外周面まで長さを基体の長さ(厚み)に対して0.9以下とすることによって、露出部位を含む電極取出部の外周付近の断面積を同じとするか又は突出する方向にいくにしたがって大きくなる構成とすることができる。このため、上記おそれを解消することができる。
【0021】
また特にその断面積を同じとすることにより、次の問題をも解消することができる。
【0022】
電極取出部の径方向への突出長の僅かな相違により、例えば外周面の研磨度合いのちょっとした相違により、ヒータ1本1本ごとに電極取出部の露出位置が導電部長手方向に相違することとなる。このため、上記のように金属製のリング部材又は外筒に圧入される場合には、金属製のリング部材又は外筒の端縁から電極取出部までの距離にばらつきが生じやすく、前記距離の設定を正確に行うことが非常に困難となることが懸念される。この点、上記構成(断面積を同じとする構成)によれば、発熱素子の電極取出部のうち前記変化部よりも外周側は、導電部長手方向に直交する方向に延びる柱状の同径部となる。しかも、発熱素子の電極取出部の突出長に対する発熱素子の変化部の突出長の比が0.9以下である。このため、例えば外周面の研磨度合いに製品間で多少の差異が生じたとしても、電極取出部の導電部長手方向の露出位置を常に一定に保つことができる。その結果、金属製のリング又は筒状体が圧入される場合における、その端縁から電極取出部までの距離の製品毎のばらつきによる不具合を払拭できる。
【0023】
また、クラックの発生を抑制するという観点からは、例えば次の構成3のようにすることも可能である。
【0024】
構成3.本構成のセラミックヒータは、構成1又は2において、
前記発熱素子は、
焼成後に導電性を有する導電性セラミック材料粉末から形成されるとともに、当該導電性セラミック材料粉末が焼成されて前記導電部、前記連結部及び前記電極取出部となる部位を備える素子成形体が焼成されてなる発熱素子であって、
前記基体は、
焼成後に絶縁性を有する絶縁性セラミック材料粉末から形成される絶縁成形体が焼成されてなる基体であって、
前記セラミックヒータは、
前記素子成形体が前記絶縁成形体に埋設されるように前記素子成形体のまわりを前記絶縁性セラミック材料粉末で固めるプレス成形を施すことで、前記素子成形体を前記絶縁成形体で保持した保持体を得た後、当該保持体を脱脂し、加圧条件下で焼成することで得られるセラミックヒータであり、
前記素子成形体の前記電極取出部のうち、少なくとも前記導電部寄り部位は前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する過渡断面積減少部となっており、
前記過渡断面積減少部の前記導電部長手方向の長さ及び当該長手方向に直交する突出方向の長さが、いずれも0.5ミリメートル以上であることを特徴とする。
【0025】
上記構成3によれば、素子成形体の電極取出部のうち少なくとも導電部寄り部位が、外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する過渡断面積減少部となっており、過渡断面積減少部の前記導電部長手方向の長さ及び当該長手方向に直交する突出方向の長さが、いずれも0.5ミリメートル以上である。このため、保持体が脱脂される際に、素子成形体に収縮応力がかかることになったとしても、導電部と電極取出部とが角状に交わっていないので、前記応力の集中が回避される。すなわち、収縮応力が分散されることとなり、脱脂時におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。その結果、製造過程において素子成形体にクラックが発生することによる不具合を抑制することができる。
【0026】
また、クラックの発生を抑制するという観点からは、例えば次の構成4のようにすることも可能である。
【0027】
構成4.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至3のいずれかにおいて、
前記発熱素子は、
焼成後に導電性を有する導電性セラミック材料粉末から形成されるとともに、当該導電性セラミック材料粉末が焼成されて前記導電部、前記連結部及び前記電極取出部となる部位を備える素子成形体が焼成されてなる発熱素子であって、
前記基体は、
焼成後に絶縁性を有する絶縁性セラミック材料粉末から形成される絶縁成形体が焼成されてなる基体であって、
前記セラミックヒータは、
前記素子成形体が前記絶縁成形体に埋設されるように前記素子成形体のまわりを前記絶縁性セラミック材料粉末で固めるプレス成形を施すことで、前記素子成形体を前記絶縁成形体で保持した保持体を得た後、当該保持体を脱脂し、加圧条件下で焼成することで得られるセラミックヒータであり、
前記素子成形体の前記電極取出部のうち、少なくとも前記導電部寄り部位は前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する過渡断面積減少部となっており、
前記過渡断面積減少部の前記導電部長手方向に対する前記湾曲面又はテーパ面のなす角度が、30度以上75度以下であることを特徴とする。
【0028】
構成4によれば、基本的には、上記構成1と同様の作用効果が奏される。なお、導電部長手方向に対する前記過渡断面積減少部のなす角度が30度未満の場合には、上記構成2の作用効果の段で述べたような同径部が存在しないと、当該段において述べた不具合が生じてしまうし、同径部を設けたとしても、その径は細いものとなってしまうこととなり妥当でない。また、素子成形体を構成する素材の浪費を招いてしまうこととなり好ましくない。一方、導電部長手方向に対する前記過渡断面積減少部のなす角度が75度を超える場合には、導電部寄り部位が導電部長手方向と直角である場合と同様のクラックの発生が懸念される。
【0029】
なお、近年におけるセラミックヒータの細径化、長尺化の要請に応えるべく、次の構成5,6のような場合には、特に上記各構成が非常に有効となる。
【0030】
構成5.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至4のいずれかにおいて、前記発熱素子の前記各導電部の断面積が1.5平方ミリメートル以下であることを特徴とする。
【0031】
構成6.本構成のセラミックヒータは、上記構成1乃至5のいずれかにおいて、前記素子成形体は、前記各導電部の断面積が2.0平方ミリメートル以下であり、かつ、全長が30ミリメートル以上であることを特徴とする。
【0032】
構成5,6のように、各導電部の断面積が比較的細かったり、あるいは全長が長い場合には、脱脂時における各導電部の耐久性の低さによるクラックの発生が懸念されるところであるが、上述の各構成を採用することで、クラックの懸念を払拭したうえで、細径化の要請に応えることが可能となる。
【0033】
勿論、上記セラミックヒータを用いて、次の構成とすることも可能である。
【0034】
構成7.構成1乃至6のいずれかに記載のセラミックヒータを備えるグロープラグ。
【0035】
構成7のように、上記セラミックヒータを使用して、グロープラグを形成することによって、セラミックヒータに上記不具合の生じ得ないグロープラグを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照しつつ説明する。まず、本発明に係るセラミックヒータを備えるグロープラグの一例について、図1,2を参照しつつ説明する。図1は、グロープラグ1の縦断面図であり、図2は、セラミックヒータ4を中心に示す部分拡大断面図である。尚、図1,2においては、図の下側をグロープラグ1(セラミックヒータ4)の先端側、上側を後端側として説明する。
【0037】
図1に示すように、グロープラグ1は、主体金具2、中軸3、セラミックヒータ4、絶縁部材5,6、外筒7、かしめ部材8等を備えている。主体金具2は、略円筒状をなし、その長手方向中央部外周には、グロープラグ1をエンジンのシリンダヘッド(図示略)に取付けるための雄ねじ部11が形成されている。また、主体金具2の後端部外周には六角形状をなす鍔状の工具係合部12が形成されており、前記シリンダヘッドにグロープラグ1を螺合する際に、使用される工具が係合されるようになっている。
【0038】
主体金具2の内周側には、後端側へ一端を突出させた金属製で丸棒状の中軸3の他端が収容されている。この中軸3の外周と主体金具2の内周との間にはリング状の絶縁部材5が設けられており、中軸3の中心軸と、主体金具2の中心軸とが軸線C1上で一致するように中軸3が固定されている。さらに、主体金具2の後端側より、中軸3を挿通させた状態で、別の絶縁部材6が設けられている。当該絶縁部材6は、筒状部13及びフランジ部14を具備しており、筒状部13が前記中軸3と主体金具2との隙間に嵌合されている。また、前記絶縁部材6の上端側より、略円筒状のかしめ部材8が中軸3に嵌合されている。かしめ部材8は、その先端面が前記絶縁部材6のフランジ部14に当接した状態で、その胴部外周においてかしめられている。これにより、中軸3と主体金具2との間に嵌合された絶縁部材6が固定され、中軸3からの抜けが防止されるようになっている。
【0039】
また、主体金具2の先端部には金属製の外筒7が接合されている。より詳しくは、外筒7は後端側に厚肉部15を有しており、当該厚肉部15の後端外周には段状の係合部16が形成されている。そして、当該係合部16に前記主体金具2の先端内周が係合されている。
【0040】
前記中軸3の先端側にはセラミックヒータ4が設けられている。セラミックヒータ4は、基体21及び発熱素子22を備えている(図2参照)。すなわち、基体21は、絶縁性セラミックからなり、焼成され、かつ先端が曲面状に加工されており、その内部において、焼成された導電性セラミックからなる発熱素子22が埋設状態で保持されている。このセラミックヒータ4は、その胴部外周が、前記外筒7によって保持されている。尚、セラミックヒータ4のうち、外筒7よりも後端側の部分は、主体金具2内部に収容された格好となっているが、セラミックヒータ4が外筒7によって強固に位置決め固定されていることから、主体金具2には接触しない構造となっている。
【0041】
さらに、前記中軸3の先端は、小径部17となっており、当該小径部17は主体金具2の長手方向略中央に位置している。また、前記セラミックヒータ4の後端には電極リング18が嵌め込まれており、当該電極リング18と、前記中軸3の小径部17とがリード線19によって接続され、両者間の電気的導通が図られている。
【0042】
次に、セラミックヒータ4の詳細について図2を主として参照しつつ説明する。前述のとおり、セラミックヒータ4は、絶縁性セラミックよりなり、軸線C1方向に延びる略同径で丸棒状の基体21を有し、その内部に、導電性セラミックよりなり断面略U字状をなす発熱素子22が保持されている。発熱素子22は、導電部としての1対の棒状のリード部23,24と、前記リード部23,24の先端部同士を連結する略U字状の連結部25とを備え、連結部25のうち特に先端側の部分が発熱部26となっている。発熱部26は、いわゆる発熱抵抗体として機能する部位であり、曲面状に形成されたセラミックヒータ4の先端部分において、その曲面に合わせた略U字形状をなしている。本実施形態では、発熱部26の断面積がリード部23,24の断面積よりも小さくなるように構成されており、通電時には、主に発熱部26において積極的に発熱が行われるようになっている。
【0043】
また、リード部23,24は、前記連結部25の両端に接続されており、それぞれセラミックヒータ4の後端へ向けて互いに略平行に延設されている。本実施形態では、リード部23,24の断面積は1.5平方ミリメートル以下(例えば1.4平方ミリメートル)と比較的細めに設定されている。そして、一方のリード部23の後端寄りの位置には、電極取出部27が外周方向に突設され、セラミックヒータ4の外周面に露出状態とされている。同様に、他方のリード部24の後端寄りの位置にも、電極取出部28が外周方向に突設され、セラミックヒータ4の外周面に露出状態とされている。前記一方のリード部23の電極取出部27は、セラミックヒータ4の長手方向(軸線C1方向)において、前記他方のリード24の電極取出部28よりも後端側に位置している。
【0044】
電極取出部28の露出部分は、外筒7の内周面に対して接触しており、これにより外筒7とリード部24との電気的導通が図られている。また、電極取出部27の露出部分に対応して、前述した電極リング18が嵌められており、この電極リング18の内周面に電極取出部27が接触して、電極リング18とリード部23との電気的導通が図られている。すなわち、電極リング18にリード線19を介して電気的に接続された前記中軸3と、外筒7に係合し電気的に接続された主体金具2とが、グロープラグ1において、セラミックヒータ4の発熱部26に通電するための陽極・陰極として機能する。本実施形態における電極取出部27,28は、その付け根部分(導電部寄り部位)が、外周方向へいくほど細くなる湾曲面511を具備する変化部521となっており、変化部521よりも外周側は、柱状の同径部531となっている(図10(a)参照)。本実施形態では、変化部521が「断面積減少部」に相当する。また、電極取出部27(28)の突出長Tに対する変化部521の突出長R1′の比が0.9以下とされている。尚、当該電極取出部27,28の詳細については後述する。
【0045】
また、本実施形態では、基体21を構成する材料として、窒化珪素が用いられる。また、発熱素子22を構成する材料として、窒化珪素を主成分とし、タングステンカーバイトを20容量%混合した導電性セラミックが用いられる。勿論、上述したように、発熱部26においてより積極的に発熱が行われるよう、発熱部26に対してリード部23,24の導電性が高くなるように、両者の材質を異ならせることとしてもよい。
【0046】
以上がグロープラグ1の構成の概略であるが、かかるグロープラグ1のセラミックヒータ4を作製するにあたり、本実施形態では以下の製造方法に従ってセラミックヒータ4を作製することとしている。以下には、図3〜図10等を参照しつつ、セラミックヒータ4の製造方法上の特徴について説明する。
【0047】
図3は、セラミックヒータ4の各製造工程を示すフローチャートである。同図に示すように、セラミックヒータ4の製造工程においては、まず、素子成形体31の成形が行われる(S1)。素子成形体31は、前述した発熱素子22のいわば前駆体である。当該素子成形体31の成形についてより詳しく説明すると、上記のとおり窒化珪素とタングステンカーバイトに焼結助剤を混入させたものを水の中でスラリー状とし、スプレードライを施すことで、粉末状態とする。当該粉末とバインダとしての樹脂チップとを混練し、射出成形を行い、その後、バインダの一部を灰化させる(取り除く)べく予備的に加熱乾燥を行うことで、素子成形体31が作製される。
【0048】
作製される素子成形体31は、図4に示すように、未焼成のリード部33,34と、リード部33,34の先端側(図の左側)を連結する略U字形状の未焼成の連結部35と、を備えている。本実施形態ではリード部33,34が素子成形体31の導電部を構成する。本実施形態の素子成形体31にあっては、前記リード部33,34の断面積が2.0平方ミリメートル以下(例えば1.85平方ミリメートル)に設定されており、かつ、全長が30ミリメートル以上(例えば35ミリメートル)に設定されており、比較的細径となっている。
【0049】
また、一方のリード部33には、電極取出部37(上記電極取出部27に対応)が他方のリード部34の位置する側とは反対側である外周方向に突出形成されている。また、他方のリード部34の後端寄りの位置にも、電極取出部38(上記電極取出部28に対応)が前記一方のリード部33の位置する側とは反対側である外周方向に突出形成されている。さらに、本実施形態にあっては、リード部33,34の後端側を接続するサポート部39も一体形成されている。すなわち、焼成前のセラミックは機械的強度が弱く、また連結部35は比較的細いため、加工過程において割れや、折れといった不具合の発生が懸念される。本実施形態では、連結部35、リード部33,34及びサポート部39によって、素子成形体31を全体として環状に構成することで、リード部33,34の重量による負荷が連結部35とサポート部39とで分散され、これにより、連結部35の割れ等の不具合防止が図られている。なお、サポート部39は焼成後において切断されるものであるため、切断をより容易に行うという観点から同図よりも細いものを採用してもよい。勿論、かかるサポート部39を省略する構成を採用しても何ら差し支えない。
【0050】
本実施形態では、前記電極取出部37,38に構成上の特徴を有している。図5に示すように、電極取出部37,38は、その付け根部分(導電部寄り部位)が、外周方向へいくほど細くなる湾曲面(R面)51を具備する変化部52と、変化部52よりも外周側(図5の上側)に位置し、リード部33,34長手方向に直交する方向(図の上下方向)に延びる円柱状の同径部53とからなっている。本実施形態では、この変化部52が「過渡断面積減少部」に相当する。変化部52のリード部33,34長手方向の長さR2及び当該長手方向に直交する突出方向の長さR1は、いずれも0.5ミリメートル以上(例えば0.6ミリメートル)となっている。また、その先の同径部53の突出長Δtは、例えば0.2ミリメートルに設定されている。
【0051】
さて、セラミックヒータ4の製造過程の説明に戻り、素子成形体31の成形工程とは別に、基体21の半分を構成する半割絶縁成形体40の成形が行われる(図3のS2)。より詳しく説明すると、まず半割絶縁成形体40を構成する材料の粉末を用意する。上記のとおり窒化珪素に焼結助剤を混入させたものを水の中でスラリー状とし、そこにバインダを添加後、スプレードライを施すことで、粉末(顆粒)状態とする。そして、当該絶縁性セラミック粉末を用いたうえで半割絶縁成形体40の成形が行われる。
【0052】
半割絶縁成形体40の成形には所定の金型装置(図示せず)が使用される。金型装置としては、例えば枠形状をなす、つまり平面視長方形状をなす開口を有する外枠と、当該外枠に対し上下動可能な下型及び上型とを備えている。そして、外枠の開口に下型の凸部を挿通させた状態とし、開口内に、前述の絶縁性セラミック粉末を所定量充填し、この状態から上型を下動させ、所定圧力でプレス加圧する。これにより、図6に示すように、収容凹部48の形成された半割絶縁成形体40が得られる。尚、上記素子成形体31の成形(S1)と、半割絶縁成形体40の成形(S2)とは、どちらが先に行われてもよい。
【0053】
次に、上記素子成形体31及び半割絶縁成形体40、並びに、絶縁性セラミック粉末を用いた保持体61の成形が行われる(図3のS3)。この保持体61の成形に際しても所定の金型装置(図示せず)が使用される。金型装置としては、例えば上記同様枠形状をなす外枠と、当該外枠に対し上下動可能な下型及び上型とを備えている。そして、外枠の開口に下型の凸部を挿通させた状態とし、その上に前記半割絶縁成形体40をセットして、セットされた半割絶縁成形体40上の収容凹部48に、素子成形体31を設置する(図7参照)。次に、前記開口内に、前述の絶縁性セラミック粉末を充填し、上型の凸部を開口に挿通させて上型を下動させ、所定圧力でプレス加圧する。これにより、図8に示すように、素子成形体31が絶縁成形体60で保持された保持体61が得られる。
【0054】
次に、上記保持体61の成形後、脱脂が施される(図3のS4)。すなわち、得られる保持体61中には未だバインダが存在しているため、当該バインダを灰化する、つまり取り除くべく、窒素ガス雰囲気下800℃で1時間の仮焼(脱脂、脱バインダ処理)を行う。当該脱脂工程に際し、素子成形体31に収縮応力がかかることが起こりうる。特に、素子成形体31中のバインダの含有率が絶縁成形体60中のバインダの含有率を上回るような場合には、絶縁成形体60よりも素子成形体31の方が収縮しやすい。この場合、収容凹部48に収容されていた素子成形体31の電極取出部37,38が絶縁成形体60に引っかかるようにして応力を受けることが懸念される。しかしながらこの点、本実施形態では、電極取出部37,38の付け根部分が、外周側ほど先細りする湾曲面(R面)51を具備する変化部52となっている。このため、素子成形体31に上記のような収縮応力がかかったとしても、リード部33,34と電極取出部37,38とが角状に交わっていないので、前記応力の集中が回避される。すなわち、収縮応力が分散されることとなり、脱脂時においてクラックが生じにくいものとなる。
【0055】
その後、保持体61の外表面全体に離型剤が塗布される(図3のS5)。続いて、保持体61が焼成工程に供される(図3のS6)。この工程では、いわゆるホットプレス法による焼成が行われる。すなわち、図示しないホットプレス加工機を用い、非酸化雰囲気下で、1800℃、1時間、ホットプレス圧力300kgf/平方センチメートルで図9(a)に示す保持体61を加圧・加熱することによって、図9(b)に示す焼成体62を得る。尚、ホットプレス焼成炉では、焼成後の焼成体62が略円柱状となるように、その形状を矯正するための凹部が形成された(上述したセラミックヒータ4の外形に準じた形状が凹設された)カーボン治具が用いられてホットプレス焼成が行われる。このとき、保持体61は、図9(a)において矢印で示すように一軸加圧条件下で加圧され、焼成が施される。
【0056】
その後、焼成体62の後端側を切断する端面切断工程が行われる(図3のS7)。すなわち、焼成体62の後端側がダイヤモンドカッタ等で切断される。これにより、上述したサポート部39が切除され、その端面からリード部33,34の後端面が露出した焼成体62が得られる。この切断は、発熱素子22のリード部23とリード部24とが発熱部26を介さずに短絡することがないようにするために行うものであり、その切断位置は、前記電極取出部27よりも後端側であればよい。つまり、この切断工程を経ることで、前記射出成形工程において連結部35、リード部33,34及びサポート部39により構成されていた素子成形体31が、非環状となるように開放されることとなる。勿論、射出成形工程において、元来サポート部を有しない素子成形体を得るような場合には、当該端面切断工程は不要となる。
【0057】
その後、前記焼成体62に対し、各種研磨加工(図3のS7)を施すことで、上述したセラミックヒータ4の完成体が得られる。尚、研磨加工としては、公知のセンタレス研磨機を用いて焼成体62の外周を研磨し、電極取出部27,28を外周面から露出させるセンタレス研磨や、基体21先端部の曲面加工を施し、外側面と発熱部26との距離の均一化を図るためのR研磨などがある。
【0058】
以上詳述したように、本実施形態によれば、素子成形体31の電極取出部37,38の付け根部分が、外周側ほど先細りする湾曲面(R面)51を具備する変化部52となっている。また、変化部52のリード部33,34長手方向の長さR2及び当該長手方向に直交する突出方向の長さR1は、いずれも0.5ミリメートル以上となっている。このため、脱脂工程に際し素子成形体31に収縮応力がかかったとしても、リード部33,34と電極取出部37,38とが角状に交わっていないので、応力の集中を回避でき、クラックの発生を抑制することができる。その結果、製造過程において素子成形体31にクラックが発生することによる不具合を抑制することができる。
【0059】
また、上記セラミックヒータ4がグロープラグ1として使用に供される場合には、電極取出部27,28において電気的導通を図るべく、その外周において金属製の電極リング18や外筒7が嵌め込まれる(圧入される)。この場合、グロープラグ1の使用時において、電極リング18や外筒7の端縁とセラミックヒータ4外周との隙間から、酸素が入り込み、発熱素子22の導電成分(タングステンカーバイト)が酸化されてしまうといった事態をより確実に防止する必要がある。当該発電素子22の酸化防止をより確実に行うためには、電極リング18や外筒7の端縁から電極取出部27,28までの距離の設定を正確に行うことが非常に重要となってくる。
【0060】
ここで、図10(b)に示すように発熱素子の電極取出部の最外周部が湾曲面となっている場合を想定すると、電極取出部の突出長の僅かな相違により、例えば外周面の研磨度合いのちょっとした相違により、電極取出部の露出位置が導電部長手方向に相違することとなる。例えば同図に示すように、研磨の程度が大きくて電極取出部の突出長TZが比較的短いときには、電極リング18の端縁から電極取出部までの距離LZ1は比較的短いものになるのに対し、研磨の程度が小さくて電極取出部の突出長TZが比較的長いときには、電極リング18の端縁から電極取出部までの距離LZ1は比較的長いものになる。従って、上記のように発熱素子の電極取出部の最外周部が湾曲面となっていると、電極リング18等の端縁から電極取出部までの距離にばらつきが生じやすく、前記距離の設定を正確に行うことが非常に困難となることが懸念される。
【0061】
この点、本実施形態によれば、図10(a)に示すように、発熱素子22の電極取出部(図では一方のリード部23側の電極取出部27を示している)のうちテーパ面511を具備する変化部521よりも外周側は、リード部23長手方向に直交する方向に延びる柱状の同径部531となっている。しかも、電極取出部27(28)の突出長T(T=変化部521の突出長R1′+同径部531の突出長ΔT)に対する変化部521の突出長R1′の比が0.9以下とされる。このため、例えば外周面の研磨度合いに製品間で多少の差異が生じたり、発熱素子22の配置が基体21に対して多少ずれていたりしても、電極取出部27(28)のリード部23(24)長手方向の露出位置を常に一定に保つことができる。その結果、電極リング18等が圧入される場合における、その端縁から電極取出部27(28)までの距離LZ1,LZ2の製品毎のばらつきによる不具合を払拭できる。
【0062】
次に、上述した作用効果を確認するべく、リード部の断面積、電極取出部の変化部等を種々変更することで各種サンプルを作製し、種々の評価を試みた。その実験結果を表1に示すとともに、各サンプルについて説明する。
【0063】
【表1】

先ず、リード部の断面積が比較的大きな素子成形体(リード部断面積=3.52平方ミリメートル)を作製し、セラミックヒータを作製した(サンプル1)。この場合、変化部の各長さR1,R2は比較的小さい0.3ミリメートルではあったが、リード部の断面積が大きかったため、クラックは発生しなかった。これに対し、リード部の断面積が比較的小さな素子成形体(リード部断面積=2.82平方ミリメートル)を作製し、セラミックヒータを作製した(サンプル2)。この場合、変化部の各長さR1,R2は比較的小さい0.3ミリメートルであり、リード部の付け根部分に30個中1個のサンプルにクラックが発生してしまった。
【0064】
一方、リード部の断面積が比較的小さく、かつ、変化部の大きな素子成形体(リード部断面積=2.82平方ミリメートル)を作製し、セラミックヒータを作製した(サンプル3,4)。各サンプルにおける変化部の長さR1,R2は、本実施形態を充足する0.5ミリメートル、0.8ミリメートルであり、これらの場合においてクラックは発生しなかった。
【0065】
但し、同じリード部断面積の素子成形体を作製し、セラミックヒータを作製した場合であっても、電極取出部の突出長Tに対する変化部突出長R1′の比が0.9以上(R1′/T=1.0)の場合(サンプル5)には、クラックは発生しなかったものの、発熱素子としたときの電極露出についての評価が芳しくなかった。すなわち、電極露出面積又は露出位置にばらつきが生じてしまった。このことは、上述したように、電極リング18等が圧入される場合における、その端縁から電極取出部までの距離の製品毎のばらつきを意味するものである。
【0066】
また、リード部の断面積がより一層小さな素子成形体(リード部断面積=1.85平方ミリメートル)を作製し、セラミックヒータを作製した場合においても同様のことがいえる(サンプル6〜9)。すなわち、素子成形体の変化部の各長さR1,R2が比較的小さい0.3ミリメートルのサンプル6については、リード部の付け根部分に30個中3個のサンプルにクラックが発生してしまった。これに対し、変化部の長さR1,R2が、本実施形態を充足する0.5ミリメートル、0.8ミリメートルであるサンプル7,8については、クラックは発生しなかった。
【0067】
一方、同じリード部断面積の素子成形体を作製し、セラミックヒータを作製した場合であっても、電極取出部の突出長Tに対する変化部突出長R1′の比が0.9以上(R1′/T=1.0)の場合(サンプル9)には、クラックは発生しなかったものの、発熱素子としたときの電極露出についての評価が芳しくなかった。
【0068】
なお、上述した実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。
【0069】
(a)上記実施形態では、素子成形体31の電極取出部37,38の付け根部分が、湾曲面(R面)51を具備する変化部52となっている場合について具体化することとしている。つまり、変化部52の湾曲面(R面)が、R1=R2の断面円弧状である場合が例示されている。
【0070】
この点、必ずしもR1=R2である必要はなく、R2がR1よりも大きい構成であってもよい(但し、R1,R2ともに0.5ミリメートル以上)。従って、例えば図11(a)に示すように、断面楕円形状の湾曲面の変化部81を有するものであってもよい(但し、L1,L2ともに0.5ミリメートル以上)。但し、上記のとおり、R2>R1、L2>L1としたほうが、素子成形体の長手方向の収縮力を緩和する領域が広くなるという点で、より望ましい。
【0071】
(b)また、変化部は必ずしも湾曲面状でなくてもよく、例えば図11(b)に示すC面に代表されるようなテーパ面を有する変化部82であってもよい。但し、変化部82のリード部長手方向の長さC1及び当該長手方向に直交する突出方向の長さC2はいずれも0.5ミリメートル以上であることが望ましい。また、当該要件を満たす限り、必ずしもC1=C2である必要はなく、C2>C1であってもよい。また、リード部長手方向に対する前記テーパ面のなす角度θが、30度以上75度以下であることが望ましい。テーパ面のなす角度θが30度未満の場合には、上記実施形態のような同径部がないと、電極リング等が圧入される場合における、その端縁から電極取出部までの距離のばらつきといった不具合が生じてしまうし、同径部を設けたとしても、その径は細いものとなってしまうこととなり妥当でない。また、素子成形体を構成する素材の浪費を招いてしまうこととなり好ましくない。一方、前記テーパ面のなす角度θが75度を超える場合には、付け根部が直角である場合と同様のクラックの発生が懸念され、この場合も好ましくない。尚、上記のとおり、C2>C1としたほうが、素子成形体の長手方向の収縮力を緩和する領域が広くなるという点で、より望ましい。
【0072】
(c)上記実施形態のセラミックヒータ4は、丸棒状、すなわち、断面円形状である場合に具体化されているが、必ずしも断面円形状である必要はなく、例えば断面楕円形状でも、断面長円形状でも断面多角形状でもよい。
【0073】
(d)上記実施形態では、保持体61の断面形状が略長円形状となるようにしたが、その断面形状は、円形であっても、矩形であっても、或いは多角形であってもよい。
【0074】
(e)上記実施形態では、前記半割絶縁成形体40を成形したうえで保持体61を成形することとしているが、そのような段階を省略して、素子成形体のまわりを、絶縁性セラミックを主成分とする粉末で一気に固めるプレス成形を施すことで、保持体を得ることとしてもよい。
【0075】
(f)上記実施形態では、素子成形体31に関し予備的な乾燥を施すこととしているが、当該予備的な乾燥を省略することとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態のグロープラグの構成を示す縦断面図である。
【図2】セラミックヒータを中心に示すグロープラグの部分拡大断面図である。
【図3】セラミックヒータの製造方法を示すフローチャートである。
【図4】素子成形体の斜視図である。
【図5】素子成形体の電極取出部を示す部分拡大平面図である。
【図6】半割絶縁成形体を示す斜視図である。
【図7】半割絶縁成形体上の収容凹部に素子成形体を設置する過程を説明する斜視図である。
【図8】保持体を示す斜視図である。
【図9】(a)は保持体の焼成時におけるプレス方向を示す断面図であり、(b)は得られる焼成体を示す断面図である。
【図10】(a)は本実施形態の発熱素子の電極取出部等を示す部分拡大断面図であり、(b)は同径部がない場合の不具合を説明する部分拡大断面図である。
【図11】(a),(b)はいずれも別の実施形態を示す素子成形体の電極取出部等を示す部分拡大平面図である。
【符号の説明】
【0077】
1…グロープラグ、4…セラミックヒータ、21…基体、22…発熱素子、23,24…導電部としてのリード部、25…連結部、27,28…電極取出部、31…素子成形体、33,34…導電部としてのリード部、35…連結部、37,38…電極取出部、51…湾曲面、52…変化部、53…同径部、61…保持体、62…焼成体、81…変化部、82…変化部、511…湾曲面、521…変化部、531…同径部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びる一対の棒状の導電部と、当該導電部の先端部同士を連結する略U字状の連結部と、前記導電部から前記軸線に垂直な方向へ向けて前記導電部より突出された電極取出部とを備えた導電性を有するセラミック製の発熱素子が、前記軸線方向に延びる棒状で絶縁性を有するセラミック製の基体中に埋設されてなるセラミックヒータであって、
前記発熱素子の前記電極取出部のうち少なくとも前記導電部寄り部位は、前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する断面積減少部となっていることを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
少なくとも前記断面積減少部の前記軸線に垂直な長さが、前記導電部から前記基体の外周面までの長さに対して0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記発熱素子は、
焼成後に導電性を有する導電性セラミック材料粉末から形成されるとともに、当該導電性セラミック材料粉末が焼成されて前記導電部、前記連結部及び前記電極取出部となる部位を備える素子成形体が焼成されてなる発熱素子であって、
前記基体は、
焼成後に絶縁性を有する絶縁性セラミック材料粉末から形成される絶縁成形体が焼成されてなる基体であって、
前記セラミックヒータは、
前記素子成形体が前記絶縁成形体に埋設されるように前記素子成形体のまわりを前記絶縁性セラミック材料粉末で固めるプレス成形を施すことで、前記素子成形体を前記絶縁成形体で保持した保持体を得た後、当該保持体を脱脂し、加圧条件下で焼成することで得られるセラミックヒータであり、
前記素子成形体の前記電極取出部のうち、少なくとも前記導電部寄り部位は前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する過渡断面積減少部となっており、
前記過渡断面積減少部の前記導電部長手方向の長さ及び当該長手方向に直交する突出方向の長さが、いずれも0.5ミリメートル以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記発熱素子は、
焼成後に導電性を有する導電性セラミック材料粉末から形成されるとともに、当該導電性セラミック材料粉末が焼成されて前記導電部、前記連結部及び前記電極取出部となる部位を備える素子成形体が焼成されてなる発熱素子であって、
前記基体は、
焼成後に絶縁性を有する絶縁性セラミック材料粉末から形成される絶縁成形体が焼成されてなる基体であって、
前記セラミックヒータは、
前記素子成形体が前記絶縁成形体に埋設されるように前記素子成形体のまわりを前記絶縁性セラミック材料粉末で固めるプレス成形を施すことで、前記素子成形体を前記絶縁成形体で保持した保持体を得た後、当該保持体を脱脂し、加圧条件下で焼成することで得られるセラミックヒータであり、
前記素子成形体の前記電極取出部のうち、少なくとも前記導電部寄り部位は前記外周方向へいくほど細くなる湾曲面又はテーパ面を具備する過渡断面積減少部となっており、
前記過渡断面積減少部の前記導電部長手方向に対する前記湾曲面又はテーパ面のなす角度が、30度以上75度以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記発熱素子の前記各導電部の断面積が1.5平方ミリメートル以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項6】
前記素子成形体は、前記各導電部の断面積が2.0平方ミリメートル以下であり、かつ、全長が30ミリメートル以上であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のセラミックヒータを備えるグロープラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−240080(P2007−240080A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64164(P2006−64164)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】