説明

セラミック回路基板の製造方法

【課題】本発明は、セラミック基板上に高精細(L/S=50μm/50μm)な電極パターンを備え、且つ端子電極/セラミック基板間の接合強度に優れたセラミック回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、セラミック基板の上面に第一のガラスセラミック粉末と第一の有機ビヒクルとを含む受容層ペーストを塗布する工程と、前記受容層ペーストを乾燥させて受容層を形成する工程と、前記受容層の上面に、導電性粉末と第二のガラスセラミック粉末と第二の有機ビヒクルとを含む導電性ペーストを所定の形状に印刷する工程と、前記導電性ペーストを焼付けて端子電極とする工程とを有したセラミック回路基板の製造方法とすることにより、吸液性に乏しいセラミック基板上であっても、にじみや変形などの不具合がない電極パターンの印刷が可能で、且つ焼成後に収縮率が小さく接合強度に優れた高精細な電極パターンが形成可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック回路基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子、発光ダイオード、積層型チップ部品などを搭載するアルミナ基板などのセラミック基板上へ電気的接合を行うための端子電極や回路配線を形成する場合、Agなどの導電性ペーストを用いて、スクリーン印刷などの方法により、セラミック基板上に製膜、焼成することにより導体配線を形成している。
【0003】
特許文献1ではセラミック基板上面に導電パターンを形成する回路基板の製造方法において、セラミック基板またはその前駆体基板と導電粒子と分散媒とを含有してなるインクとの間に、樹脂層を設けることでインクのダレやにじみの少ない高精細度な導電パターンを形成する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−84387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の製造方法では、基板表面ににじみのない図形の形成は可能であるが、Ag粉末などの導電性ペーストを用いて焼付を行い高精細な図形を形成する場合、樹脂層は脱バインダー工程時に熱分解して消失してしまうため、焼成中に導電性ペーストが著しく収縮してしまうため高精細な図形の形成が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、セラミック基板の主面に、少なくともガラス成分を含む第一のセラミック粉末と、第一の有機ビヒクルとからなるセラミックペーストを印刷する工程と、前記有機ビヒクルに含まれる有機成分を乾燥させ、前記ガラス成分を主成分とする下地層を形成する工程と、前記下地層の上面に、導電性粉末と、少なくともガラス成分を含む第二のセラミック粉末と、第二の有機ビヒクルとからなる導電ペーストを所定形状に印刷する工程と、前記導電性ペーストを焼付けて端子電極とする工程とを有した回路基板の製造方法とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の製造方法により、セラミック基板の上面に導電性ペーストを印刷した際に下地の樹脂成分が水分を吸水して、ダレやにじみを抑制することができ、焼付け工程時にはセラミックペーストに含まれるガラス成分と導電ペーストに含まれるガラス成分とが、結着することで、高精細な図形の端子電極を保持することが可能となる。さらにはガラス成分の結着により、セラミック基板と端子電極間の固着強度に優れた回路基板を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施の形態における回路基板の製造工程図
【図2】本発明の一実施の形態における回路基板の電極焼付け前の断面模式図
【図3】本発明の一実施の形態における回路基板の電極焼付け後の断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のセラミック回路基板の製造方法を説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態における回路基板の製造工程図を示しており、図2は回路基板の電極焼付け前の断面模式図、図3は電極焼付け後の断面模式図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の回路基板の製造方法は、はじめに第一のガラスセラミック粉末と第一の有機ビヒクルとからなる受容層ペーストをセラミック基板3上に印刷、乾燥して、受容層2の乾燥膜を形成する。
【0012】
なお、受容層2に用いる第一のガラスセラミック粉末および第一の有機ビヒクルは導電性ペーストのダレおよび端子電極焼成時の収縮を抑制できるものであれば特に限定されない。
【0013】
次に、乾燥後の受容層2の上面に、導電性粉末と第二のガラスセラミック粉末と第二の有機ビヒクルとからなる導電性ペースト1をセラミック基板3に所定形状で印刷し乾燥を行う。
【0014】
その後セラミック基板3上に形成した受容層2および導電性ペースト1に含まれるバインダー成分を揮発させる脱バインダー工程を施し、焼成工程を経ることで実装用端子電極や回路配線などの電極4とガラス層5を形成する。
【0015】
このような製造工程を経ることにより、乾燥後の受容層2は樹脂とガラス成分を含んでいるため上面に導電性ペースト1を印刷してもにじみやダレが発生することなく高精細な電極パターンを形成することができるが、受容層2を形成せずセラミック基板3上に導電性ペースト1を形成すると一般的にセラミック基板は吸水性に乏しいため、にじみやダレが発生してしまう。ここで、受容層ペーストおよび導電性ペーストの形成方法は、スクリーン印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷などの製膜方法を用いることができる。
【0016】
電極形成に用いる導電性粉末としては、銀、パラジウム、白金、金、銅のうち少なくとも1種類を含有する金属を用いることができる。
【0017】
また、第一のガラスセラミック粉末を所定の軟化点を有するガラス材料とすることによりセラミック基板3と電極4との界面における接着強度を向上させることができる。
【実施例1】
【0018】
以下、実施例に基づいて本発明の回路基板の製造方法について詳細に説明する。
【0019】
(表1)の試料番号1に用いた受容層ペーストとしては、エチルセルロースと、α−テルピネオールとからなる樹脂濃度が10重量部の第一の有機ビヒクルと、第一のガラスセラミック粉末としては導電性ペーストを形成する導電性粉末をAg−Pd合金とし、このAg−Pd合金の焼結収縮開始温度よりも、軟化点が90℃低いB−Si−アルカリ土類系ガラスとした。この第一のガラスセラミック粉末を40重量部と、有機ビヒクル60重量部の比率で配合して受容層ペーストを作製した。次いでこの第一のガラスセラミック粉末と第一の有機ビヒクルを混合、分散を行うことにより受容層ペーストを作製した。上記受容層ペーストを、アルミナ基板上に乾燥後の厚さが5μmとなるように、スクリーン印刷法により印刷し、その後120℃で10分間乾燥して、受容層を形成した。
【0020】
次に電極の導電性ペーストとしては、Ag−Pd合金粉末を主成分とし、Ag−Pdを100重量部に対し12重量部の第二のガラスセラミック粉末を含有した。なおこの第二のガラスセラミック粉末は上記第一のガラスセラミック粉末と同様にB−Si−アルカリ土類系ガラスとしたが特に限定されるものではなく、後述するように導電性粉末の収縮開始温度とガラスの軟化点との兼ね合いにより適宜選択することができる。
【0021】
上記乾燥後の受容層上に乾燥後の導電性ペーストの厚みが20μmとなるようにパターン印刷し、120℃で10分間乾燥して、導電性ペーストを形成した。導電性ペーストの焼付けは、アルミナ基板とこの受容層と導電性ペーストを950℃の大気中で一体焼成することにより電極を形成した。
【0022】
同様に試料番号2の第二のガラスセラミック粉末は電極に用いるAg−Pd合金の焼結収縮開始温度よりも、50℃低い軟化点を有するB−Si−アルカリ土類系ガラスに変更したこと以外は、試料番号1と同様とした。試料番号3は導電性ペースト中のAg−Pd合金粉末に対する第二のガラスセラミック粉末の比率を16重量部に変更すること以外は、試料番号1と同様とした。試料番号4は導電性ペースト中のAg−Pd合金粉末に対する第二のガラスセラミック粉末の比率を20重量部に変更すること以外は、試料番号1と同様とした。
【0023】
次に比較例である試料番号5は受容層を形成しないこと以外は、試料番号1と同様とした。試料番号6の第一のガラスセラミック粉末は電極に用いるAg−Pd合金粉末の焼結収縮開始温度よりも110℃低い軟化点を有するB−Si−アルカリ土類系ガラスを用いたこと以外は、試料番号1と同様とした。試料番号7の第一のガラスセラミック粉末は電極に用いるAg−Pd合金粉末の焼結収縮開始温度よりも50℃高い軟化点を有するB−Si−アルカリ土類系ガラスを用いたこと以外は、試料番号1と同様とした。試料番号8の第二のガラスセラミック粉末の含有率を8%に変更したこと以外は、試料番号1と同様とした。試料番号9は導電性ペースト中の第二のガラスセラミック粉末の含有率を23%に変更したこと以外は、試料番号1と同様とした。
【0024】
以上の試料を用いて導電性ペーストのにじみ評価、電極上に形成するめっきの析出評価、セラミック基板と電極間の固着強度について評価を行った。各評価方法について説明する。
【0025】
導電性ペーストのにじみ評価は、湾曲部を含むL/S=50/50μmの図形パターンを有する線形形状で18μm、500メッシュのスクリーン版を用いた。回路パターンににじみが認められなかったものを良好として「○」、0.01mm以上のにじみが認められたものを「×」で示した。
【0026】
また、固着強度試験用として2mm□の図形パターン評価サンプルの作製を行った。上記受容層および電極の形成方法に即した方法にて製膜および焼成を行い、焼成後にニッケルおよび金メッキ膜を形成した。引張試験のためのワイヤーを半田付けすることにより評価用のサンプルを作製した。引張試験機(今田製作所製、引張圧縮試験機 SV−5)を用いて、引上速度1.5cm/minの条件にて、基板面に対して垂直方向に引張応力を負荷することにより、セラミック基板と電極間の固着強度を測定した。
【0027】
電極上に形成するめっきの析出評価については、金めっきが電極表面に析出した場合は「○」、めっき未析出の場合は「×」で示した。
【0028】
なお、実施例に示す電極に含まれるAg−Pd合金粉末の比率は80:20とし、このAg−Pd合金粉末を用いてTMA測定を行った結果、焼結収縮開始温度は850℃であった。
【0029】
以下に評価結果を(表1)、(表2)および(表3)に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
(表1)に示すように、受容層を設けていない比較例の試料番号5のみ、0.01mm以上のにじみが生じ、受容層を設けたその他の試料は、0.01mm以上のにじみは生じない結果となった。これは受容層を用いることにより、導電性ペーストに含まれる溶剤成分を受容層が吸収することによりにじみやダレの発生を抑制しているためである。
【0032】
【表2】

【0033】
(表2)では第一のセラミック粉末の軟化点の異なるものを用いてセラミック基板と電極間の固着強度の評価を行った。
【0034】
第一のガラスセラミック粉末の軟化点と、第一のガラスセラミック粉末の軟化点と電極収縮開始温度との温度差が異なる試料番号1、2と、比較例の試料番号6、7を比較すると、ガラスの軟化点が電極の焼結収縮開始温度以下で、かつ電極の焼結収縮開始温度と第一のガラスの軟化点との温度差が90℃以内の場合は26N以上の高い固着強度が得られているのに対し、温度差が90℃を超えた場合やガラスの軟化点が電極の焼結開始温度以上の場合は、19N、3Nと低い結果となった。
【0035】
電極の焼結収縮開始温度と第一のガラスセラミック粉末の軟化点との温度差が90℃を越えた場合、焼結過程における電極とガラスの焼結時の収縮率が大きく異なるため、どちらか一方が優先的に焼結が進行し、過焼結をおこしてしまうために電極形状の維持が困難になり、その結果、基板との拘束が低下してしまい接合強度が低下してしまうものと考えられる。また、第一のガラスセラミック粉末の軟化点が電極の焼結開始温度以上の場合、セラミック基板上において電極中の導電性粒子の焼結過程の拡散に先立ち、ガラスの流動が著しく起こるために、セラミック基板と導電性粒子の拘束が低下してしまい、その結果、セラミック基板と電極間の接合強度が低下してしまうものと考えられる。
【0036】
試料番号1、3、4では、電極中の第二のガラスセラミック粉末の含有比率が12、16、20重量部と増加するにつれ、固着強度も26、31、35Nと増加した。一方、比較例4のガラス含有率8重量部の場合、13Nと固着強度が低い結果となった。
【0037】
【表3】

【0038】
(表3)の、試料番号9の電極中の第二のガラスセラミック粉末の含有比率が23%の場合、電極焼成膜上へのメッキが未析出となった。試料番号9の電極表面を電子顕微鏡を用いて観察したところ、多量のガラスが電極表面に析出していることが判明した。Ag−Pd合金電極膜表面に絶縁体であるガラスが多量に析出したことにより、メッキが形成しなかったことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明にかかる回路基板の製造方法は、小型かつ高性能化が要求されるICやLEDチップ実装のためのセラミック基板において、にじみなく高精細な導電性電極パターンを形成する上で効果を有するものである。
【符号の説明】
【0040】
1 導電性ペースト
2 受容層
3 セラミック基板
4 電極
5 ガラス層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板の上面に第一のガラスセラミック粉末と第一の有機ビヒクルとを含む受容層ペーストを塗布する工程と、
前記受容層ペーストを乾燥させて受容層を形成する工程と、前記受容層の上面に、導電性粉末と第二のガラスセラミック粉末と第二の有機ビヒクルとを含む導電性ペーストを所定の形状に印刷する工程と、
前記導電性ペーストを焼付けて電極とする工程とを有したセラミック回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第一のガラスセラミック粉末に含まれるガラス成分の軟化点は前記導電性粉末の焼結開始温度よりも低く、前記ガラス成分と前記導電性粉末の焼結開始温度との温度差を90℃以内とする請求項1に記載のセラミック回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記導電性ペーストは前記第二のガラスセラミック粉末を12〜20重量部含有している請求項1に記載のセラミック回路基板の製造方法。
【請求項4】
前記導電性粉末は銀、パラジウム、金、白金、銅のうち少なくとも1種を含有している請求項3に記載のセラミック回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記第一のガラスセラミック粉末と前記第二のガラスセラミック粉末は同一成分である請求項4に記載のセラミック回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−26303(P2013−26303A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157453(P2011−157453)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】