説明

セラミック複合部材

【課題】セラミック被膜を形成する基材である炭素繊維強化炭素複合材が積層体である場合など剥離強度を十分に確保できない場合であっても、セラミック被膜との熱膨張差により生じる基材内部の層間剥離を防止する。
【解決手段】炭素繊維強化炭素複合材である基材15と、基材15の表面に被覆されたセラミック被膜17とからなるセラミック複合部材100であって、基材15の表面には複数の孔19を形成し、孔19の内部表面19aをセラミック被膜17によって覆う。セラミック被膜17に覆われた後の孔19の開口部の幅Wは、セラミック被膜17の被膜厚さtの2倍以下であることが好ましい。基材15は炭素繊維層と炭素マトリクス層を複数積層して構成し、孔19は少なくとも最表層の炭素繊維層を貫通することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維と、炭素繊維間に充填された炭素マトリックスとからなる基材である炭素繊維強化炭素複合材(以下、「C/C複合部材」とも言う。)の表面に、セラミック被膜を備えるセラミック複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
C/C複合材は、卓越した比強度、比弾性率を有するうえに1000℃を超える高温域において優れた耐熱性および化学的安定性を備えているため、航空宇宙用をはじめ半導体製造装置、ホットプレス装置など広く工業的に利用されている。ところで、この種の工業用途の部材において、輻射率、化学的安定性(反応性)は表面に露出した部分の特性に影響される。C/C複合材は、ガラス状炭素、熱分解炭素、黒鉛等の炭素マトリックスと炭素繊維との複合部材であるため、使用する原材料の選定によっては高純度が得られにくく、表面からの汚染物質が拡散するおそれがある。
【0003】
上記の理由から、C/C複合材では、表面にSiC被膜や、熱分解炭素などのセラミック被膜を形成することが提案されている。このような被膜を形成することにより、C/C複合材を用いた部材表面の性質が変わり、放熱、吸熱性能や、耐食性を改良することができ、また、表面に形成された高純度、気体不浸透のセラミック被膜の作用により、C/C複合材の内部に合まれる不純物の拡散を防止することが可能となる。
【0004】
高温環境下で使用されるセラミック複合材は、常温から高温まで加熱される間に、基材と、表面に形成されたセラミック被膜との熱膨張係数差のため基材との界面で層間剥離現象が起こりやすい。このため、基材と表層部が連続組織として炭化珪素層を形成して傾斜機能材質となるコンバージョン法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、炭素繊維を抄造することにより得られた抄造体に、熱分解炭素をCVI(化学気相含浸)することによって熱分解炭素被膜を形成することも提案されている(例えば特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−132384号公報
【特許文献2】特開2002−68851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したコンバージョン法のSiC被膜であっても、熱分解炭素をCVIすることによって得られた被膜であっても、層間剥離に対して有効に作用するのは、セラミック被膜と基材との界面のみである。基材がセラミック被覆と平行な2方向に配向するC/C複合材であったり、複数層の積層体であったり、不織布などのように基材を構成する繊維が厚さ方向に交錯していない場合には、C/C複合材内部の層間の剥離強度を十分に持つことができない。このためセラミック被膜とC/C複合材との熱膨張差で発生した内部応力によって、C/C複合材内部で層間剥離現象が起きることがあった。これは、C/C複合材の表層近傍の炭素繊維層ではセラミック被膜に追従して伸縮するが、表層から離れた深層(C/C複合材内部)ではセラミック被膜の被着力が作用しないことが主な要因に挙げられる。
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、セラミック被膜を形成するC/C複合材が2方向の配向体や、積層体であったり、C/C複合材を形成する炭素繊維が不織布である場合など剥離強度を十分に確保できない場合であっても、セラミック被膜との熱膨張差により生じるC/C複合材内部の層間剥離を防止できるセラミック複合部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 炭素繊維強化炭素複合材である基材と、該基材の表面に被覆されたセラミック被膜と、からなるセラミック複合部材であって、
前記基材の表面には複数の孔が形成され、
該孔の内部表面が、前記セラミック被膜によって覆われたことを特徴とするセラミック複合部材。
【0007】
このセラミック複合部材によれば、孔の内部表面を覆ったセラミックが機械的な層間結合体として作用し、基材層間の剥離の対抗力を発揮させる。つまり、剥離強度を高める。なお、剥離強度は、孔の内部表面を覆ったセラミックと孔内部の接着面における剪断強度に比例して得られる。
【0008】
(2) (1)のセラミック複合部材であって、
前記孔が、前記セラミック被膜を形成するセラミックによって充填されたことを特徴とするセラミック複合部材。
【0009】
このセラミック複合部材によれば、孔の内部表面を覆うセラミックが中空のパイプ状構造である場合に比べ、充填されたセラミックが中実の軸状となり、軸線方向の圧縮・引っ張り強度、軸線直交方向の剪断強度が高まる。
【0010】
(3) (1)のセラミック複合部材であって、
前記セラミック被膜に覆われた後の前記孔の開口部の幅が、前記セラミック被膜の被膜厚さの2倍以下であることを特徴とするセラミック複合部材。
【0011】
このセラミック複合部材によれば、セラミック被膜の被膜厚さに比べ、孔の開口部の幅が過大となることによるセラミック被膜の接着強度の実効性低下が防止できる。すなわち、孔の内部表面を覆うセラミック被膜の厚みは、被膜形成後に残る中空孔の半径より厚く確保され、セラミック被膜の機械的な層間結合体としての強度が有効に確保される。
【0012】
(4) (1)〜(3)のいずれか1つのセラミック複合部材であって、
前記基材は、炭素繊維層と炭素マトリクス層が複数層積層されてなり、
前記孔が、少なくとも最表層の前記炭素繊維層を貫通していることを特徴とするセラミック複合部材。
【0013】
このセラミック複合部材によれば、セラミック被膜と少なくとも最表層の炭素繊維層との剥離強度が高められる。また、最表層の炭素繊維層を貫通することで孔の底部で最表層から二層目の炭素繊維層にセラミック被膜が被着し、最表層と2層目の炭素繊維層間の剥離強度も高められる。
【0014】
(5) (1)〜(4)のいずれか1つのセラミック複合部材であって、
前記孔の深さが一律でないことを特徴とするセラミック複合部材。
【0015】
このセラミック複合部材によれば、孔の深さが一定である場合の特定層間で結合力が作用しなくなる脆弱部の生じることがない。
【0016】
(6) (1)〜(5)のいずれか1つのセラミック複合部材であって、
前記孔は、少なくとも開口部が円形であることを特徴とするセラミック複合部材。
【0017】
このセラミック複合部材によれば、ドリルやレーザ加工を用いた容易な穿孔が可能となる。孔の軸線から等距離の任意の放射方向で、剥離強度が等しくなる。角孔などを形成した場合に比べ、軸線から放射方向で剥離強度に違いが生じず、応力集中に起因する歪みが基材に生じにくくなる。
【0018】
(7) (1)〜(6)のいずれか1つのセラミック複合部材であって、
前記孔は、開口部から内部に向かって拡大する錐形状であることを特徴とするセラミック複合部材。
【0019】
このセラミック複合部材によれば、基材の表面に形成されたセラミック被膜に連続する錐形状のセラミックが基材中にアンカーとして埋設されることとなり、層間の剥離強度がさらに高まる。
【0020】
(8) (1)〜(7)のいずれか1つのセラミック複合部材であって、
前記孔が、前記基材を貫通することを特徴とするセラミック複合部材。
【0021】
このセラミック複合部材によれば、基材の表裏にセラミック被膜が貫通して形成され、セラミックと、孔内部の接着面における剪断強度のみならず、基材を表裏側から挟む挟持力も、剥離強度の向上に寄与する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るセラミック複合部材によれば、基材表面に複数の孔を形成し、孔の内部表面をセラミック被膜によって覆ったので、基材であるC/C複合材が、セラミック被膜と平行な2方向の配向体や、積層体であったり、不織布などのように繊維が厚さ方向に交錯していない場合など、剥離強度を十分に確保できない場合であっても、孔の内部表面を覆ったセラミックが機械的な層間結合体として作用し、基材を積層方向で結合することにより、剥離強度を高め、セラミック被膜の被覆による熱膨張歪みによって発生する基材内部の剥離を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係るセラミック複合部材の好適な実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るセラミック複合部材の断面図である。
本実施の形態によるセラミック複合部材100は、炭素繊維11と炭素繊維11,11間に充填された炭素マトリックス13とからなる基材15と、基材15の表面に被覆されたセラミック被膜17とからなる。
【0024】
炭素繊維11と炭素繊維11,11間に充填された炭素マトリックス13とからなる基材15とは、炭素繊維強化炭素複合材(C/C複合材)のことを指し、炭素繊維11は、フィラメントワインディング、抄造、織物などの状態で炭素繊維強化炭素複合材の一部を構成して強化する機能を担っている。
【0025】
織物には、平織、綾織、3軸織などの平面的な織り方のほか、厚さ方向にも緯糸(垂直糸)を持った3次元織物があるが、本実施の形態によるセラミック複合部材100は、垂直糸を持たない平織、綾織、3軸織や、抄造、不織布、フィラメントワインディングで構成された炭素繊維11を備えたC/C複合材を基材15とするセラミック複合部材100に対して特に効果を発揮する。本発明の対象となる垂直糸が無いセラミック複合部材においては、厚さ方向の剥離強度を十分に確保できないからである。
【0026】
炭素繊維11,11間に充填される炭素マトリックス13の前駆体としては、焼成により炭素質や黒鉛質のマトリックスを形成できるものであれば、どのようなものであってもかまわない。焼成することにより炭素化又は黒鉛化するマトリックス前駆体としては、コプナ樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂等の炭化収率の高い熱硬化性樹脂のほか、石油系、石炭系等から得られるピッチ等を用いることができる。また、熱分解炭素やSiC等の化学気相含浸(CVI)によってマトリックスを形成することもできる。
【0027】
基材15には複数の孔19が形成され、孔19は内部表面19aがセラミック被膜17によって覆われている。孔19の内部表面19aを覆ったセラミック17aが機械的な層間結合体として作用し、基材層間の剥離の対抗力を発揮させる。孔19の内部表面19aに形成されたセラミック被膜17がアンカーとなり、剥離を防止する作用がある。つまり、剥離強度を高める。なお、剥離強度は、内部表面19aを覆ったセラミック17aと孔内部の接着面における剪断強度に比例して得られる。
【0028】
基材15が、炭素繊維11と炭素マトリックス13を複数層積層してなる構成の場合、孔19は少なくとも最表層の炭素繊維11層を貫通している。これにより、セラミック被膜17と少なくとも最表層の炭素繊維11層との剥離強度が高められる。また、最表層の炭素繊維11層を貫通することで孔19の底部で最表層から二層目の炭素繊維11層にセラミック被膜17が被着し、最表層と2層目の炭素繊維11層間の剥離強度も高められる。
【0029】
セラミック被膜17は、耐熱性があり、C/C複合材に被覆できるものであればどのようなものでも構わない。例えば、熱分解炭素、SiC、BN、TaC、AlN等が利用できる。C/C複合材とセラミック被膜17の熱膨張係数は、同等レベルのものを使用することが望ましいが、被覆するセラミックの種類によっては、C/C複合材と同等の熱膨張係数を選択できない場合がある。
【0030】
このような場合には、基材15とセラミック被膜17の熱膨張差によってセラミック被膜17が剥離したり、基材15の積層部で剥離するおそれがある。これに対し、本実施の形態によるセラミック複合部材100では、剥離し易いセラミック被膜17と基材15との界面、基材15の積層部でセラミック被膜17がアンカーとして作用し、剥離を防止することができる。特にセラミック被膜17と、基材15との界面を傾斜機能材とし、前記界面部で剥離しにくくなった場合であっても、セラミック被膜17と基材15との熱膨張差で発生する反りによって起きる基材15の内部での剥離を、アンカー作用にて防止することができる。
【0031】
図2は孔にセラミックが充填された変形例の断面図である。
セラミック被膜17の形成後の孔19は、図2に示すように、封止されていても良いし、図1に示すように、孔19bとして残っていても良い。図2に示すように、孔19がセラミック被膜17を形成するセラミック17aによって充填された構造では、図1に示した孔19の内部表面19aを覆うセラミック17aが中空のパイプ状構造である場合に比べ、充填されたセラミック17aが中実の軸状となり、軸線方向の圧縮・引っ張り強度、軸線直交方向の剪断強度が高まる。
【0032】
一方、セラミック被膜17の形成後の孔19が、孔19bとして残る図1に示す構造では、孔19bの開口部の幅Wは、セラミック被膜17の被膜厚さtの2倍以下であることが好ましい。セラミック被膜17の被膜厚さtに比べ、孔19bの開口部の幅Wが過大となることによるセラミック被膜17の接着強度の実効性低下が防止できる。すなわち、孔19の内部表面19aを覆うセラミック被膜17の厚みtは、被膜形成後に残る中空孔19bの半径より厚く確保され、セラミック被膜17の機械的な層間結合体としての強度が有効に確保されるようになっている。
【0033】
複数の孔19は基材15の表面から垂直方向に形成されている。垂直方向であれば、例えば刃物で切削したり、C/C複合材を硬化、焼成する前に穿孔して容易に形成することができるうえ、孔19の内部表面19aへのセラミック被膜17の被覆が容易にできる。
【0034】
複数の孔19は、セラミック複合部材100の全面に形成されていても良いし、C/C複合材の積層面の露出した端部近傍のみに形成されていても良い。また、複数の孔19は、セラミック複合部材100の全面に形成され、上記端部近傍に高密度に形成されていても良い。上記の端部近傍は、セラミック被膜17の形成によって発生する熱膨張歪みが集中しやすく、特に基材15の剥がれが起きやすいからである。
【0035】
図3は深さの異なる孔の形成された変形例の断面図である。
孔19の深さdは、すべて同じであっても良いし、図3に示すように、バラバラであっても(一律でなくても)構わない。深さdが同一であると、孔19の最深部の層に応力集中が起こりやすく、孔19の最深部近傍で剥離し易くなるが、バラバラであると、応力の集中が起こりにくく、剥離が発生しにくいからである。すなわち、孔19の深さdが一律でなければ、深さdが一定である場合の特定層間で結合力が作用しなくなる脆弱部の生じることがない。
【0036】
孔19は、少なくとも開口部が円形であることが好ましい。これにより、ドリルやレーザ加工を用いた容易な穿孔が可能となる。また、孔19の軸線から等距離の任意の放射方向で、剥離強度が等しくなる。角孔などを形成した場合に比べ、軸線から放射方向で剥離強度に違いが生じず、応力集中に起因する歪みが基材15に生じにくくなる。
【0037】
図4は孔が錐形状に形成された変形例の断面図である。
さらに、孔19は、図4に示すように、開口部から内部に向かって拡大する錐形状であってもよい。本実施の形態では例えば円錐台形状に形成される。基材15の表面に形成されたセラミック被膜17に連続する錐形状のセラミック17aが基材15中に、抜脱不能なアンカーとして埋設されることとなり、層間の剥離強度がさらに高まる。
【0038】
また、図示は省略するが孔19は基材15を貫通してもよい。孔19が基材15を貫通して形成されれば、基材15の表裏にセラミック17aが貫通して形成され、セラミック17aと、孔内部の接着面における剪断強度のみならず、基材15を表裏側から挟む挟持力も、剥離強度の向上に寄与する。このような貫通構造では、基材15の表裏面にセラミック被膜17が形成され、孔19の内部表面19aに形成されるセラミック被膜17はその両端が基材表裏のセラミック被膜17に連続する。これにより、基材15を表裏から挟む強固な接合構造とすることができる。
【0039】
上記のように構成されるセラミック複合部材100は、以下のようにして製造することができる。
[基材]
基材15は、市販のC/C複合材であればどのようなものでも利用することができる。複数の孔19は市販のC/C複合材(の硬化・焼成後)に機械的に穿孔しても良いし、炭素繊維複合材を硬化・焼成する前に穿孔しても良い。硬化、焼成後であれば、どのように穿孔しても良いが機械的にドリルを用いたり、レーザ加工等が利用できる。
【0040】
また、硬化、焼成前に穿孔する場合、ドリルや、レーザ加工を用いなくても、針等で容易に穿孔することができる。硬化前に穿孔する場合では、軟化し、孔19が塞がるおそれがあるため、例えば、樹脂、木材、紙等の有機物の針を用いて穿孔し、抜かずにそのまま硬化、焼成することにより孔19を形成しても良い。有機物の針を用いた場合、例えば円錐台形状の孔19であっても、焼成工程で針が大きく収縮しながら炭化、あるいは分解し、容易に除去することができる。
【0041】
[被膜形成]
セラミック被膜17の形成は公知の方法で実施することができる。
例えば、熱分解炭素を被覆する場合には、上記工程で作製されたC/C複合材をCVD炉に入れ、1300〜2000℃に加熱する。原料となるプロパン等の炭化水素ガスと、水素等のキャリアガスを炉内に流し、表面に成膜する。なお、原料ガスは炉内で拡散するため、C/C複合材の表面に設けられた複数の孔内部まで浸入することができるので孔19の内部表面19aにセラミック被膜17を形成することができる。
【0042】
SiCの被膜を形成する場合には、上記工程で作製されたC/C複合材をCVD炉に入れ、1100〜1500℃に加熱し、トリクロロメチルシランを原料ガス、水素をキャリアガスとして炉内に流し、表面に成膜することができる。なお、原料ガスは炉内で拡散するため、C/C複合材の表面に設けられた複数の孔19の内部まで浸入することができ、孔19の内部表面19aにセラミック被膜17を容易に形成することができる。
【0043】
また、SiC被膜の場合には、CVD法ではなく、傾斜機能的な界面となるため、被膜と基材15の剥離が起こりにくいCVR法を用いて形成してもよい。CVR法によれば、炉の底部にSi粉あるいはSiC粉とSi02粉との混合物からなる発生源をおいた反応炉中に、上記のC/C複合材を入れ、1600〜2300℃で加熱することによりSiC被膜を得ることができる。
【0044】
したがって、上記構成のセラミック複合部材100によれば、基材15の表面に複数の孔19を形成し、孔19の内部表面19aをセラミック被膜17によって覆ったので、基材15であるC/C複合材が、セラミック被膜17と平行な2方向の配向体や、積層体であったり、不織布などのように繊維が厚さ方向に交錯していない場合など、剥離強度を十分に確保できない場合であっても、孔19の内部表面19aを覆ったセラミック被膜17が機械的な層間結合体として作用し、基材15を積層方向で結合することにより、剥離強度を高めることができる。この結果、セラミック被膜17の被覆による熱膨張歪みによって発生する基材内部の剥離を防止することができる。
【0045】
なお、上記の各実施形態では、基材15の一部を構成する炭素繊維11が、縦糸と横糸とを交差させた織物状態のものを図示したが、本発明に係るセラミック複合部材100は、図5に示すように、また既述したように基材15を構成する炭素繊維11が厚さ方向に交錯していない不織布などのような場合であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係るセラミック複合部材の断面図である。
【図2】孔にセラミックが充填された変形例の断面図である。
【図3】深さの異なる孔の形成された変形例の断面図である。
【図4】孔が錐形状に形成された変形例の断面図である。
【図5】本発明に係るセラミック複合部材の別の例の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
11 炭素繊維
13 炭素マトリクス層
15 基材
17 セラミック被膜
17a セラミック被膜を形成するセラミック
19 孔
19a 孔の内部表面
100 セラミック複合部材
d 孔の深さ
t セラミック被膜の被膜厚さ
W 孔の開口部の幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維強化炭素複合材である基材と、該基材の表面に被覆されたセラミック被膜と、からなるセラミック複合部材であって、
前記基材の表面には複数の孔が形成され、
該孔の内部表面が、前記セラミック被膜によって覆われたことを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項2】
請求項1記載のセラミック複合部材であって、
前記孔が、前記セラミック被膜を形成するセラミックによって充填されたことを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項3】
請求項1記載のセラミック複合部材であって、
前記セラミック被膜に覆われた後の前記孔の開口部の幅が、前記セラミック被膜の被膜厚さの2倍以下であることを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項記載のセラミック複合部材であって、
前記基材は、炭素繊維層と炭素マトリクス層が複数層積層されてなり、
前記孔が、少なくとも最表層の前記炭素繊維層を貫通していることを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項記載のセラミック複合部材であって、
前記孔の深さが一律でないことを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項記載のセラミック複合部材であって、
前記孔は、少なくとも開口部が円形であることを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項記載のセラミック複合部材であって、
前記孔は、開口部から内部に向かって拡大する錐形状であることを特徴とするセラミック複合部材。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項記載のセラミック複合部材であって、
前記孔が、前記基材を貫通することを特徴とするセラミック複合部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−30803(P2010−30803A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192440(P2008−192440)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】