説明

セリウムとロジウム及びパラジウムから選択した元素との有機コロイド分散体、及びその内燃ジーゼル燃料用添加剤としての使用

セリウム化合物の粒子と酸と有機相からなり、さらにロジウムとパラジウムから選択された少なくとも1種の元素の化合物を含有することを特徴とするコロイド分散体により、煤の燃焼温度を低下し、同時にジーゼルエンジンの排気中のNOx含有量を減じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセリウムと、ロジウム及びパラジウムから選択した元素との有機コロイド分散体、その内燃ジーゼル燃料用添加剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ジーゼルエンジンのジーゼル燃料の燃焼中に、炭素質生成物が環境及び健康に有害と考えれている煤を形成することが知られている。これらの炭素質生成物の排出を減少する技術が長年にわたって研究されている。
【0003】
量産されているエンジンに現に使用されている一つの満足な解決策として、フィルタ上に粒子を捕集し、その閉塞を防止するために定期的に再生する方法がある。フィルタの再生は自己着火温度が低ければ容易であり、これは、燃焼期間中に触媒を煤の塊に導入することにより得ることができる。この技術は燃料担持触媒(FBC)として知られており広く使用されている。したがって、添加物を含む煤はエンジンの正常運転中又は特別な再生サイクル中に繰返して達することができる充分に低い自己着火温度を有する。
【0004】
燃料添加剤として使用される希土類成分の分散体は煤の自己着火温度を下げることができることが知られている。
【0005】
さらに、ジーゼルエンジンによる窒素酸化物(NOx)の排気を抑制することも重要である。
【0006】
従って、煤の燃焼温度を低下し、同時にジーゼルエンジンの排気中のNOx含有量を減じるのに効果的な触媒に対する必要性がいまだ存在している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は内燃機関、特にジーゼルエンジン、の排気中の煤の燃焼温度を低下することを課題とし、他の課題は同時に内燃機関のジーゼルエンジンの排気中のNOx含有量を減じることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的で、本発明はセリウム化合物の粒子と酸と有機相からなり、さらにロジウムとパラジウムから選択された少なくとも1種の元素の化合物を含有することを特徴とするコロイド分散体を提供する。
【0009】
本発明の第一の変形実施形態によると、コロイド分散体は、セリウムと他の希土類元素の化合物の粒子を含有していることを特徴とする。
【0010】
本発明の第二の変形実施形態によると、コロイド分散体はセリウムと、他の希土類と、鉄の化合物の粒子を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点は以下の説明並びに発明を限定するものではない具体的な実施例を参照することにより明らかとなろう。
【0012】
本書において、希土類とはイットリウムと周期律表の原子番号57〜71の元素を意味する。
本書において、コロイド分散体とは、セリウム化合物の、又はそれとさらに上記の変形実施形態に従ってセリウム以外の希土類及び/又は鉄の、コロイド寸法の微粒子を、液相懸濁物の形で含有する任意の系を示し、場合により前記の粒子はさらに残量の結合又は吸着されたイオン(例えば硝酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩、及びアンモニウム塩)を含んでいてもよい。コロイド寸法とは約1nm〜約500nmの平均粒子径を指す。粒子は特には約250nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは20nm以下、もっと好ましくは15nm以下の平均粒子径を有する。かかる分散体では、セリウム、その他の希土類及び/又は鉄は、完全なコロイド形態で、又はコロイド形態と部分的なイオン形態で存在することができる。
【0013】
より具体的には、本発明の分散体の粒子が複数の元素すなわちセリウム、他の希土類及び/又は鉄の化合物から形成され、これらの元素が各粒子内で混合状態にあり、一般には混合酸化物及び/又は水和混合酸化物(オキシ水酸化物)の形態を有する。
【0014】
セリウムは主としてセリウムIVの形態を有する。例えばセリウムIVに対するセリウムIIIの含有率(原子比Ce III/Ce全量)は一般に40%以下である。この含有率は使用する分散体の実施形態にしたがって変動することができ、より具体的には20%以下、特に10%以下、さらには1%以下である。
【0015】
上記の第一の変形実施形態の場合、セリウム以外の希土類は具体的にはランタン又はプラセイオジウムである。明らかにこの実施形態では、粒子はセリウム化合物と複数の他の希土類とを組み合わせた場合を含む。
【0016】
セリウム以外の希土類の割合は、セリウムと希土類を酸化物の総モル量に対するモル比で表して10%以上、好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上である。
【0017】
上記の第二の変形実施形態の場合、セリウムの割合は、セリウム酸化物(CeO2)と鉄酸化物(Fe23)の総モル数に対するセリウム酸化物(CeO2)のモル比で表して50%以下、好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。
これらの二種の変形実施形態は組み合わることができる。すなわちセリウム、一種以上の他の希土類、及び鉄の化合物の組み合わせであり得る。
【0018】
本発明の主たる特徴によると、コロイド分散体はさらにロジウム及びパラジウムより選択した一種以上の化合物を含有する。本発明は好ましくはロジウムとパラジウムを組み合わせで含む。パラジウムは排気中のCOの酸化及び未燃焼炭化水素の酸化を有利に行う追加の効果を有する。
【0019】
一般にロジウム及び/又はパラジウムの含有量は粒子中のセリウム、その他の希土類及び鉄の組み合わせに対して5%以下であり、より具体的には1%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。この含有率はセリウム、希土類及び鉄の総量に対するロジウム及び/又はパラジウムの百分率で表した。ロジウム及び/又はパラジウムの上限は臨界的でないがコスト面から規制され、それらの元素が過剰であると技術的な利点がなくて分散体のコストが高くなる。一方下限はそれ以下ではロジウム及び/又はパラジウムによる窒素酸化物の減少の効果が認められなくなるような値である。この下限は一般に約100ppmである。
【0020】
以下で説明する製造法により得られる分散体の場合には、ロジウム及び/又はパラジウムが主として酸化物又は水和酸化物の形で存在すると思われる。同じ場合に、ロジウム及び/又はパラジウムはさらにセリウム化合物の粒子に結合した形で分散体中に存在しうる。このロジウム及び/又はパラジウムと粒子の結合は化学結合であってもよいし、あるいはロジウム及び/又はパラジウムを粒子表面に吸着させてもよい。
【0021】
本発明によるコロイド分散体は一種以上の酸、有利には両親媒性の酸を含有する。酸は少なくとも6個、より好ましくは10〜60個、さらに好ましくは15〜25個の炭素原子を有する有機酸から選択される。
【0022】
これらの酸は直鎖又は分岐鎖状のものでありうる。これらにはアリール酸、脂肪酸、又はアリール脂肪酸があり、場合により本発明の分散体に使用される媒質中で安定ならば他の官能基を含んでよい。従って、例えば約10〜約40個の炭素原子を含む、天然又は合成の、脂肪族カルボン酸、脂肪族スルホン酸、脂肪族ホスホン酸、アルキルアリールスルホン酸、及びアルキルアリールホスホン酸が挙げられる。明らかに酸の混合物を使用することも可能である。
【0023】
炭素鎖がα位置でケトン官能基で置換されているピルビン酸ケトン基のようなケトン官能基を有するカルボン酸を使用することもできる。これらは又α−ハロカルボン酸又はα−ヒドロキシカルボン酸でもよい。カルボン酸基に結合された鎖は不飽和基を有してよい。しかし一般にセリウムが二重結合の架橋を触媒するので余り多くの二重結合を有することは避けた方がよい。鎖は、エーテル又はセステル官能基の介在がカルボキシル基を有する鎖の親油性を過度に変化させない限り、これらの官能基を有してもよい。
【0024】
例えば、トール油、大豆油、亜麻仁油、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、およびそれの異性体である脂肪酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、ヘキサン酸、トルエンスルホン酸、トルエンホスホン酸、ラウリルスルホン酸、ラウリルホスホン酸、パルミチルスルホン酸、及びパルミチルホスホン酸を挙げることができる。
【0025】
本発明では、「両親媒性の酸」は他の両親媒性の薬剤、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩であってもよい。これらの次式のリン酸塩は、次式
【化1】

又は次式のポリオキシエチレンジアルキルリン酸塩
【化2】

であり、ここに各記号は次の通りである。
・R1、R2、R3は同一又は異なった線状又は分岐アルキル基で特に炭素数2〜20個のもの、フェニル基、アルキルアリール基例えばアルキルフェニル基で特に炭素数8〜12個のもの、アリールアルキル基、特にフェニルアリール基であり、
・nはエチレンオキサイドの数であり、例えば0〜12個のものであり、そして
・Mは水素、ナトリウム又はカリウム原子である。
【0026】
基R1は特にヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、オレイル、又はノニルフェニル基であり得る。
【0027】
この型の両親媒性化合物としては、ロディア社より市販のLubrophos及びRhodafac(商品名)を挙げることができ、特に下記製品が含まれる。
・ポリオキシエチレンアルキル(C8〜C10)エーテルリン酸塩であるRhodafac RA600
・ポリオキシエチレントリデシルエーテルリン酸塩であるRhodafac RS710又はRS410
・ポリオキシエチレンオレオセチルエーテルリン酸塩であるRhodafac PA35
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸塩であるRhodafac PA17
・ポリオキシエチレンノニル(分岐)エーテルリン酸塩であるRhodafac RE610
【0028】
本発明の分散体はさらに粒子が分散している有機相である液相を含む。
【0029】
有機相の例としては、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン等の不活性環状脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、液状ナフタレン等の芳香族炭化水素が挙げられる。IsoparまたはSolvesso(Exxon社の商品名)、特にメチルエチルベンゼンとトリメチルベンゼン等のアルキルベンゼンの混合物を含むSolvesso100、アルキルベンゼン特にジメチルベンゼンとテトラメチルベンゼンの混合物を含むSolvesso150、及びC−11とC−12イソパラフィン及びシクロパラフィン炭化水素を含むIsopar等の石油留分も適当である。他の石油留分としてはPetrolink(商品名、Petrolink社より市販)及びIsane(商品名、Total社より市販)も使用できる。
【0030】
クロロベンゼン又はジクロロベンゼン及びクロロトルエン等の塩素化炭化水素も有機相に使用できる。ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、メシチルオキシド等の、エーテル、脂肪族ケトン、又は脂環式ケトンも使用できる。
【0031】
エステルの使用も考えられるが、欠点は加水分解の危険があることである。使用に適したエステルはC1−C8のアルコールと酸の反応物であり、特にイソプロパノールのような2級アルコールのパルミチン酸塩である。酢酸ブチルも使用できる。
【0032】
明らかに、有機相は2種以上の炭化水素又は上記の種類の化合物の混合物であり得る。
【0033】
本発明による分散体は、セリウム化合物、ロジウム及び/又はパラジウム元素、任意に他の希土類元素及び鉄を、分散体の全重量に対するこれらの元素の酸化物を基準として40重量%までの濃度で含むことができる。40%を超えると、分散体の粘度が特に低温度で高くなりすぎる。しかし、この濃度は少なくとも5%であることが好ましい。より低い濃度では液相の体積が大きくなりすぎるので不経済になる。
【0034】
有機相と酸の比率は重要ではない。有機相と酸の重量比は好ましくは0.3対1から2.0対1にする。
【0035】
本発明の分散体は特殊な実施形態を有しうる。この実施形態によれば、分散体は少なくとも90%の粒子が単結晶粒子である。ここに単結晶粒子はTEM(高分解能透過電子顕微鏡)で検査したときに個別化された単結晶子よりなっている粒子を意味する。
【0036】
低温TEM技術も一次粒子の凝集状態を決定するのに使用できる。この方法ではTEMが、水、Solvesso及びIsoparのような芳香族又は脂肪族、又はエタノールのようなアルコール、等の希釈剤である天然媒質中で凍結状態に維持された試料を観察するために使用される。
凍結された試料は、水性試料では液体エタン中で、他の試料では液体窒素中で凍結された約50〜100nmの厚さの薄膜である。
低温TEMでは粒子の分散状態がよく保存され、実際の媒質中に存在する状態をよく表す。
【0037】
この実施形態では、粒子は微細で狭い粒子径分布を有する。実際それらはd50が1〜5nm、好ましくは2〜4nmの範囲にある。
【0038】
本書では粒子径分布特性は記号dnが使用される。ここにnは1〜99である。この記号は粒子数でn%以下の粒子がその粒子径以下の寸法を有するような粒子径を表す。例えばd50=3nmは50%以下の数の粒子が3nm以下の粒子径を有することを表す。
【0039】
粒子径分布は、銅の格子上に支持された炭素膜上に予め試料を載せて乾燥しておき、それを通常の透過顕微鏡(TEM)により観察して決定する。
【0040】
この調製技術は粒子寸法の測定精度が良いので好ましい。測定のために選択される領域は低温TEMにより観察される分散状態と類似の分散状態を示す領域である。
【0041】
上記の実施形態での分散体は次の工程を含む方法により調製できる。
a)少なくとも一種のセリウム塩(場合によりさらにセリウム以外の希土類元素の塩)、鉄塩、及びロジウム及びパラジウムから選択した少なくとも一種の元素の塩を含む水性混合物を調製する。
b)工程(a)の水性混合物を塩基性媒質と接触させてpHが塩基性pHに維持される反応混合物を形成することにより沈殿を生成する。
c)こうして得られる沈殿を酸と有機相に接触させて有機コロイド分散体を得る。
【0042】
この方法の第1段階(工程(a))は生成すべき粒子の組成中に存在する元素の通常は溶液又は分散体の形態の水性混合物を調製することである。この混合物はセリウム、ロジウム及び/又はパラジウムの塩、好ましくは可溶性の塩、より好ましくは酢酸塩又は硝酸塩を含む。上記の異なった実施形態による分散体の製造の場合には、この混合物はさらに他の必要な元素の塩、すなわち、セリウム以外の希土類元素の塩及び/又は鉄塩を含むことができる。
【0043】
次の段階(工程(b))は上記の水性混合物を塩基性媒質に接触させることである。塩基性媒質とはpH7以上の任意の媒質を意味する。塩基性媒質は通常は塩基の水溶液である。水酸化物の形の物質が特に塩基として使用できる。例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が挙げられる。さらに2級、3級、又は4級アミンも使用できる。しかし、アミン及びアンモニアはアルカリ金属又はアルカリ土類金属イオンによる汚染の危険を減じるので好ましい。さらに尿素も使用できる。
【0044】
上記の混合物は反応混合物のpHが塩基性に維持される条件下に塩基性媒質と接触される。従って、反抗混合物のpHは少なくとも7、好ましくは7.5以上、さらに好ましくは7.5〜11である。
【0045】
水性混合物は、上記の混合物を塩基性媒質に導入することにより接触させることができる。接触はpHが混合物及び塩基性媒質のそれぞれの流量を調節することにより調製できるならば連続的でも良い。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、接触は、混合物が塩基媒質に接触されたときに反応媒質のpHが一定に保たれる条件下に行われることが可能である。一定のpHはpHの変動が設定値の±0.2pH以内に維持されることを意味する。かかる条件は、塩基媒質中に混合物を導入する工程で、反応混合物に追加量の塩基を導入することにより得ることができる。
接触は通常室温で行われる。この接触は空気、窒素又は窒素−空気混合物の雰囲気下で行うと有利である。
【0047】
沈殿は反応の完了時に回収される。
この沈殿は任意に母液から濾過、遠心分離その他の公知の方法により分離することができる。分離された生成物は洗浄される。
好ましくは沈殿は湿潤状態に維持され、乾燥や凍結乾燥その他の類似の工程には掛けない。
【0048】
残りの工程では、沈殿はそのままで、又は場合により再び水性分散体にしてから使用される。
【0049】
沈殿は次に上記工程(c)で少なくとも一種の酸と一種の有機相に接触させる。
【0050】
工程(c)では、沈殿が湿潤状態で使用され、沈殿中のセリウム、ロジウム及び/又はパラジウム、場合により他の希土類及び/又は鉄の各酸化物の割合は湿った沈殿物の10〜50重量%の範囲で変動しうる。全体の酸化物の割合は例えば1000℃での焼成による灼熱減量により決定できる。
【0051】
工程(c)で有機コロイド分散体を得るために、場合により再分散した沈殿を上記したと同様に少なくとも一種の酸及び一種の有機相に接触させる。添加すべき酸の量はモル比r=酸のモル数/セリウムのモル数(場合によりさらに他の希土類及び/又は鉄)で規定できる。
【0052】
このモル比は0.2〜0.8、好ましくは0.3〜0.6である。
【0053】
添加すべき有機相の量は上記のように酸化物全濃度を得るように調製される。
【0054】
この段階で促進剤を有機相に添加すると有利である。促進剤は化合物の粒子を水性相から有機相へ移行させることを促進し、得られる有機コロイド分散体の安定性を向上する機能を有する。
【0055】
適当な促進剤には、特に炭素数6〜12の直鎖又は分岐鎖脂肪族アルコールのようなアルコール官能基を有するものが含まれる。例えば、2−エチルヘキサノール、デカノール、ドデカノール、それらの混合物が挙げられる。
【0056】
促進剤の割合は重要ではなく、広い範囲で変動しうる。しかし、適当な範囲は2〜15重量%の割合である。
【0057】
各種の反応体を導入する順序は重要でない。沈殿又はその水性分散体、酸、有機相、および場合により促進剤は、同時に混合されても良い。酸、有機相及び場合により促進剤は予め混合することができる。
【0058】
水性コロイド分散体は空気、窒素、または窒素−空気混合物の雰囲気を有する反応器中で有機相に導入できる。
【0059】
水性コロイド分散体は周囲温度約20℃で有機相に接触することができるが、好ましくは60〜150℃、より有利には80〜140℃の温度で接触する。
【0060】
或る場合には有機相が揮発するためその上記を沸点以下に冷却することにより蒸気を凝縮する必要がある。
【0061】
得られる反応混合物(水性コロイド分散体、酸、有機相、及び場合により促進剤)は変動することがある加熱期間を通じて撹拌状態に維持される。
【0062】
加熱を停止したとき、コロイド分散体を含む有機相と残りの水性相が観察される。第三のエマルジョン相が観察される場合もある。
【0063】
有機相及び水性相は次に通常の分離技術例えば沈降、遠心分離法により分離される。
【0064】
上に説明したように、上記の方法は、上記の具体的な実施形態による分散体の調製に適用される。工程(b)と(c)の間に噴霧乾燥又は凍結乾燥のような沈殿物の乾燥工程を介在させることにより、上に説明した方法とは異なった方法を実施することもできる。この方法では本発明による分散体を得ることができるが、ある特定実施例の粒子は単結晶の特徴を有しない。
【0065】
上記の有機コロイド分散体は、内燃機関特にジーゼルエンジン用の燃料添加物として使用できる。
【0066】
最後に、本発明は上記のコロイド分散体を含有する内燃機関用燃料に関する。この燃料は標準燃料特にジーゼル型の燃料を、本発明の分散体と、Ce元素+Rh及び又はPd金属元素+(随意に)希土類元素及び鉄元素の総量が5〜200ppmになる割合で、混合することにより得られる。
【0067】
燃料中に本発明の分散体が存在すると、煤の自己着火温度が低下し、エンジン排気中の窒素酸化物が減少する効果が得られ、そして一酸化炭素及び未燃焼炭化水素の酸化への寄与が得られる。次に実施例を説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1
この実施例はセリウム、鉄、及びロジウムに基づいて、本発明の分散体を調整する方法を示す。この調製は、水性相中に固体沈殿を形成する第一工程、及びこの沈殿を有機相に移行させる第二工程よりなる。
【0069】
1)水性相中での固体沈殿の合成
a)酢酸鉄溶液の調製
206.1gの9水和硝酸鉄(III)(Prolabo社製の純度98%のFe(NO33・9H2O)を1Lの純水に溶解して0.5モル/Lの鉄を含有する溶液を調製する。270mLの10容積%アンモニア溶液を、せん動ポンプを使用し、流量10mL/分で、この硝酸鉄溶液に添加する。
得られた自然のpHを有する分散体を4500rpmで12分間遠心分離する。回収された沈殿は純水で置換して初期体積の分散体にする。この分散体を15分間撹拌し、沈殿を同じ条件で再分離し、同等の最終体積を有する分散体に再置換する。
こうしてpH6.5の分散体を得る。この分散体に100mLの酢酸(Prorabo社製CHCOOH 100%)を添加して、pH2.7で2.8%のFe23の酸化物濃度(灼熱減量で決定)を有する酢酸鉄溶液を生成する。
【0070】
b)Ce酢酸塩溶液の調製
139.7gの結晶化した酢酸セリウム(III)(Rhodia Electronics and Catalysis社製の49.29%の酸化物CeO2を含む)を0.8Lの純水に溶解する。この溶液に、6.7gの酢酸(Prorabo社製のCH3COOH100%)、3gの硝酸ロジウム(III)溶液(Aldrich社製の10%Rhまで濃縮された(Rh(NO33)、及び1124.6gの調製済みの前記酢酸鉄溶液を添加する。得られた混合物に2.5Lの純水を補充する。
【0071】
c)Ce酢酸塩溶液からの沈殿
沈殿は次の連続した装置組立体で実施される。
・400rpmにセットされた撹拌羽根を備え、0.5Lの塩基性溶液(pH10.5のNH4OH)を収容し、設定pHが10.5のpH制御ポンプによりサーボ制御された電極を備えた、1Lの第1反応容器、
・前記の調製済みのCe酢酸塩溶液を収容したボトルと、6Nのアンモニア溶液を収容したボトルの2つの供給ボトル。Ce酢酸塩溶液の流量は500mL/時間に調製され、アンモニア溶液の流量はpH制御器によりサーボ制御される、
・反応器の体積を0.5Lに調製するため、上記の第1反応器に直列に接続された下記第2反応器に接続されている引き取り系、及び
・形成された沈殿を回収するための第2反応器。
沈殿は3000rpmで12分間遠心分離し、次いで純水で置換して全酸化物が50g/Lの懸濁物の形態にする。
【0072】
2)有機相への移行
340mLの上記の水性懸濁液を、制御された温度浴を備えた2Lの二重ジャケット反応器に装入する。129.9gのIsoparl(Exxon社製のパラフィン溶媒)と、23.1g/Lのイソステアリン酸(Uniquema社製のPrisorine3501溶液)を予め溶解している有機相を周囲温度で添加する。
【0073】
次いで、この二相混合物を撹拌速度220rpmで95℃まで1.5時間かけて加熱する。混合物の温度を95℃で4時間維持し、次いで室温まで空冷する。撹拌が停止したときに得られる凝集物は透明な水性相の上に黒色の有機相を現す。この水性相の酸化物濃度は灼熱減量で測定して殆ど零であり、定量的は移行が生じたことを示す。
【0074】
3)セリウム、鉄及びロジウムに基づく有機コロイド分散体の測定
Isopar Lの蒸発及び1000℃での焼成後に測定された有機コロイド相の濃度は全酸化物の9.9%に等しい。電位差計法(Ce)及びポーラログラフ法(Fe)により測定された有機相中に分散された酸化物の組成は、Ce/Feが等モル比であり、ICP/OES法で測定したロジウムが0.26%(ロジウム金属/セリウム及び鉄元素比)を含有する。低温透過電子顕微鏡(TEM)による有機コロイド相の分析によると、コロイド粒子は直径3〜5nmの完全に個別化された粒子であることが分かる。
【0075】
実施例2
この例は実施例1で得られた製品のエンジン試験台での評価に関する。
評価はダイナモメータ試験台に載せたプジョー2.2Lの容量のジーゼルエンジン、参照番号DW12TED4/L4、を使用して行う。排気系にはIbiden社製の炭化ケイ素粒子フィルタ(5.66×6200cpsi)を備える。
本発明の分散体を添加剤として硫黄を7ppmを含有するジーゼル燃料に添加して、添加物を含有するジーゼル燃料に対する割合を10ppm(Ce+Fe+Rh)にする。
【0076】
この粒子フィルタを次の条件下に負荷した。
・エンジン速度:3000rpm
・トルク:30Nm
・負荷時間:10時間。
この負荷段階で、窒素酸化物NO及びNO2の排出をEcophysic CLD700分析器を使用して連続測定した。
【0077】
得られた結果を次表に示す。比較試験は添加剤としてロジウムを使用しない他は実施例1の方法に従って得た添加剤を使用した。
実施例2:100ppm
比較例: 125ppm
本発明の分散体を使用するとき、窒素酸化物排量が約20%減少することが観測される。
10時間の間にフィルタに蓄積する全ての煤は次に500℃で320秒間燃焼される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリウム化合物の粒子と酸と有機相からなり、さらにロジウムとパラジウムから選択された少なくとも1種の元素の化合物を含有することを特徴とするコロイド分散体。
【請求項2】
セリウムと他の希土類の化合物の粒子を含有している請求項1の分散体。
【請求項3】
セリウムと任意に他の希土類と鉄の化合物の粒子を含有する請求項1又は2の分散体。
【請求項4】
前記元素は、前記粒子のセリウムとその他の希土類と鉄との総量に対する重量で5%以下の割合で含有される請求項1〜3のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項5】
前記元素は、前記粒子のセリウムとその他の希土類と鉄の総量に対する重量で0.5%以下の割合で含有される請求項1〜4のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項6】
前記元素の化合物は前記粒子に結合されている請求項1〜5のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項7】
セリウム酸化物及び鉄酸化物(Fe23)の総モル数に対するセリウム酸化物(CeO2)のモル数で表して、セリウムを50%以下、特に20%以下の割合で含有する請求項3〜6のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項8】
前記他の希土類はランタン及びプラセオジウムより選択される請求項2〜7のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項9】
前記酸は両親媒性である請求項1〜8のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項10】
前記粒子の90%以上は単結晶粒子である請求項1〜9のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項11】
前記粒子のd50が1〜5nm、好ましくは2〜4nmである請求項1〜10のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項12】
(a)一種以上のセリウム塩、場合によりセリウム以外の希土類の塩、及びロジウム及びパラジウムから選択した元素の塩よりなる水性混合物を調製し、
(b)前記工程(a)からの水性混合物を塩基性媒質に接触させて塩基性pHに維持された反応混合物を形成することにより沈殿を生成し、次いで
(c)得られた沈殿を酸と有機相と接触させて有機コロイド分散体を形成する分散体の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコロイド分散体よりなる内燃機関用の燃料添加剤。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のコロイド分散体を標準燃料に添加して得た内燃機関用燃料。

【公表番号】特表2007−509193(P2007−509193A)
【公表日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530413(P2006−530413)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002491
【国際公開番号】WO2005/032705
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(503124252)ロディア エレクトロニクス アンド カタリシス (13)
【Fターム(参考)】