セリンプロテアーゼ活性阻害因子、ならびに細菌感染の治療法および組成物におけるその使用方法
細菌感染を治療および予防するための新規な方法が提供される。特に、本発明は、一般的に、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および抗酸菌、ならびに特に、結核菌(TB)、トリ型結核複合菌(mycobacterium avium complex)(MAC)、および炭疽菌の阻害のための組成物および方法に関する。従って、本発明は、マクロファージ活性などを含む細胞活性の調節に関する。より詳細には、本発明は、セリンプロテアーゼの天然に存在する阻害因子、および人工の阻害因子を含む阻害化合物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および抗酸菌、具体的に、結核菌(TB)、トリ型結核複合菌(mycobacterium avium complex)(MAC)、および炭疽菌の阻害のための組成物および方法、ならびにマクロファージの感染を含む疾患または障害の治療的処置に関する。従って、本発明は、マクロファージ活性、毒素の阻害などを含む細胞活性の調節に関する。より詳細には、本発明は、天然に存在するセリンプロテアーゼ阻害因子およびアンタゴニスト、ならびに人工のセリンプロテアーゼ阻害因子およびアンタゴニストを含む阻害化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
セリンプロテアーゼ
セリンプロテアーゼは、ウイルス機能の活性化を媒介することによってヒトの生理学において重要な役割を果たす。それらの通常の生理学的機能に加えて、セリンプロテアーゼは、ヒトにおける多数の生理学的機能に関わる。セリンプロテアーゼは、活性部位におけるアスパラギン酸、ヒスチジン、およびセリンからなる触媒3成分によって特徴付けられる。
【0003】
天然に存在するセリンプロテアーゼ阻害因子は、必ずではないにしろ、通常、主としてジスルフィド結合パターンおよび反応性部位の配列相同性に基づいてファミリーに分類されたポリペプチドおよびタンパク質である。セルピンとして公知のグループを含むセリンプロテアーゼ阻害因子は、微生物中、植物、動物、昆虫および他の生物の組織および体液中において見い出されてきた。プロテアーゼ阻害因子の活性は、FermiおよびPemossiによって1894年に最初に発見された。少なくとも9種の別個の、十分に特徴付けされたタンパク質が現在同定されており、これらは種々のプロテアーゼの活性を阻害する能力を共有する。いくつかの阻害因子は共にグループ分けされ、すなわち、α1-抗トリプシンプロテイナーゼ阻害因子、抗トロンビンIII、抗キモトリプシン、C1阻害因子、およびα2-抗プラスミンであり、これらは、種々のセリンプロテアーゼ、すなわち、白血球エラスターゼ、トロンビン、カテプシンG、キモトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、およびプラスミンに対して方向づけられる。これらの阻害因子は、α1-抗トリプシンプロテイナーゼ阻害因子のクラスのメンバーである。タンパク質α2-マクログロブリンは、4つすべての触媒クラス:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼのメンバーを阻害する。しかし、他の型のプロテアーゼ阻害因子はクラス特異的である。例えば、α1-抗トリプシン-プロテイナーゼ阻害因子(α1-抗トリプシンまたはAATとしても公知)かつインターα-トリプシン阻害因子はセリンプロテアーゼのみを阻害し、α1-システインプロテアーゼ阻害因子はシステインプロテアーゼを阻害し、かつα1-抗コラゲナーゼはメタロ酵素のクラスのコラーゲン分解酵素を阻害する。
【0004】
ヒト好中球エラスターゼ(NE)は、種々の炎症性刺激に応答して多形核白血球によって分泌されるタンパク質分解酵素である。NEの分解能力は、通常の状況下では、比較的高い血漿濃度のα1-抗トリプシンによって調節される。しかし、刺激された好中球は、活性酸素代謝産物のバーストを産生し、これらのいくつか(例えば次亜塩素酸)は、α1-抗トリプシン中の決定的なメチオニン残基を酸化することが可能である。酸化されたα1-抗トリプシンは、NE阻害因子として制限された能力を有することが示されており、かつこのプロテアーゼ/抗プロテアーゼのバランスの変化が、局在化され、かつ制御された環境においてNEが分解機能を実行することを可能にすることが提案されている。
【0005】
α1-抗トリプシンは、417アミノ酸および3個のオリゴサッカライド側鎖を有する分子量51,000の糖タンパク質である。ヒトα1-抗トリプシンは、最初に発見された、膵臓トリプシンを不活性化する能力ゆえに抗トリプシンと命名された。ヒトα1-抗トリプシンは、内部ジスルフィド結合を有さず、かつ通常はシステインまたはグルタチオンのいずれかに分子間ジスルフィド結合した単一のシステインのみを有する単一のポリペプチド鎖である。α1-抗トリプシンの反応部位はメチオニン残基を含み、これは、タバコの煙または他の酸化汚染物質への曝露の際に酸化に対して不安定である。このような酸化は、α1-抗トリプシンの生物学的活性を減少させ;それゆえに、その位置における別のアミノ酸:すなわち、アラニン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、アルギニン、またはリジンへの置換は、より安定なα1-抗トリプシンの型を産生する。α1-抗トリプシンは以下の式によって表され得る:
Ciliberto, et al. in Cell 1985,41, 531-540。α1-抗トリプシンのカルボキシ末端の近傍の重要なアミノ酸配列は太字でかつ下線を付して示され、かつ本発明に直接関連がある(配列の詳細は、例えば、参照として組み入れられる米国特許第5,470,970号において見い出され得る)。
【0006】
ATTの通常の血漿濃度は、1.3〜3.5mg/mlの範囲であるが、これは、急性期反応物質として挙動することができ、炎症および/または組織損傷(例えば、妊娠、急性感染、および腫瘍などによる)に対する宿主応答の間に3〜4倍増大する。これは容易に組織間隙に拡散し、標的プロテアーゼ、主として好中球エラスターゼと1:1複合体を形成する。トリプシン、キモトリプシン、カテプシンG、プラスミン、トロンビン、組織カリクレイン、およびXa因子など他の酵素もまた、基質として働く。次いで、酵素/阻害因子複合体は、セルピン-酵素複合体(SEC)受容体に結合することによって循環から除去され、肝臓および脾臓によって異化される。通常の15%未満のα1-抗トリプシンの循環レベルを有するヒトは、若い年齢において、肺疾患、例えば、家族性肺気腫の発症に対して感受性である。家族性肺気腫は、セリンプロテアーゼ、特にエラスターゼに対するα1-抗トリプシンの低い割合と関連する。それゆえに、この阻害因子は、セリンプロテアーゼによる攻撃に対する防御メカニズムの重要な部分を担っていると考えられる。
【0007】
α1-抗トリプシンは、プロテアーゼ不均衡の臨床的治療のために現在認可されている、天然に存在する少数の哺乳動物セリンプロテアーゼ阻害因子の1つである。治療用α1-抗トリプシンは80年代の中頃以来市販されており、かつ種々の精製方法によって調製されている(例えば、Bollen et al. 米国特許第4,629,567号;Thompson et al., 米国特許第4,760,130号;同第5,616,693号;国際公開公報第98/56821号を参照されたい)。プロラスチンは、α1-抗トリプシンの精製変種の商標であり、現在Bayer社によって販売されている(米国特許第5,610,285号, Lebing et al., 1997年3月11日)。遺伝子組換え方法によって産生されたα1-抗トリプシンの組換え未改変変種または変異体変種もまた公知である(米国特許第4,711,848号);使用の方法(例えば、α1-抗トリプシン遺伝子治療/送達(French Anderson et al.への米国特許第5,399,346号))もまた公知である。
【0008】
セリンプロテアーゼの作用の2つの公知の細胞メカニズムは、直接的分解効果によるもの、およびGタンパク質共役プロテイナーゼ活性化受容体(PAR)によるものである。PARは、プロテアーゼの結合、続く特定のペプチド結合の加水分解によって活性化され、新たなN末端配列が受容体を活性化するという結果を伴う。PAR活性化の結果は、刺激されるPAR型および影響を受ける細胞または組織に依存し、かつホスホリパーゼCβの活性化、プロテインキナーゼCの活性化、およびアデニル酸キナーゼの阻害を含む可能性がある(Dery,O. and Bunnett, N. W. Biochem Soc Trans 1999,27, 246-254; Altieri, D. C. J.Leukoc Biol 1995,58, 120-127; Dery,O. et al. Am J. Physiol 1998, 274,C1429-C1452)。
【0009】
TBおよびMAC
ミコバクテリアは、好気性であり、大部分は増殖が遅く、わずかに屈曲しているかまたは直線状の桿状であり、ときおり分枝状または繊維状であり、かつ酸性塩染色によって区別される細菌の属である。典型的には、ミコバクテリアは、グラム陽性偏性好気性菌である。ミコバクテリア属は、結核(ヒト型結核菌(M. tuberculosis)およびときおりウシ型結核菌(M. bovis))およびハンセン病(らい菌(M. leprae))を引き起こす高度に病原性の生物を含む。しかし、他の多くの種のミコバクテリア、例えば、M.アビウム-イントラセルラーレ(M. avium-intracellulare)、M.ケロネイ(M. chelonei)(ボルステレンセ(borstelense)およびアブセッサス(abscessus)としても知られる)、M.アフリカヌム(M. africanum)、M.マリニウム(M. marinium)(バルネイ(balnei)およびプラチポエシルス(platypoecilus)としても知られる)、M.ブルーリ(M. buruli)(ウルセランス(ulcerans)としても知られる)、M.フォーツイタム(M. fortuitum)(ギエ(giae)、ミネッティ(minetti)、およびラーネ(ranae)としても知られる)、M.ヘモフィルム(M. haemophilum)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサシ(M. kansasii)(ルシフラブム(luciflavum)としても知られる)、M.リットラーレ(M. littorale)(ゼノピ(xenopi)としても知られる)、M.マルモエンセ(M. malmoense)、M.マリアヌム(M. marianum)(スクロフラセウム(scrofulaceum)およびパラフィニクム(paraffinicum)としても知られる)、M.シミエ(M. simiae)、M.シュルガイ(M. szulgai)、およびM.ウルセランス(M. ulcerans)が存在する。
【0010】
動物に対して病原性であるがヒトに対しては病原性ではないと考えられているミコバクテリアには以下が含まれる:M.アビウム-イントラセルラーレ(ブルネンセ(brunense)としても知られる)、M.フラバセンス(M. flavascens)、ネズミらい菌(M. lepraemurium)、M.ミクロティ(M. microti)、およびパラ結核菌(M. paratuberculosis)(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)。以下のミコバクテリアの種は、非病原性と考えられている: M.ゴルドネ(M. gordonae) (アクエ(aquae)としても知られる)、M.ガストリ(M. gastri)、M.フレイ(M. phlei) (モエレーリ(moelleri)およびチモテ-バシラス(timothy bacillus)としても知られる)、M.ノンクロモゲニクム(M. nonchromogenicum)、M.スメグマティス(M. smegmatis)、M.テレ(M. terrae)、M.トリビアーレ(M. triviale)、およびM.バッカエ(M. vaccae)。
【0011】
さらに、ヒト型結核菌および時折ウシ型結核菌以外のあるミコバクテリアは、代わって非結核性ミコバクテリアとしても公知である。これらは、色素沈着および増殖速度に基づいて、ラニヨン群としても知られる4つの群に分けられる。各群はいくつかの種を含む。I群とは増殖遅延型光発色菌を指し;II群とは増殖遅延型暗発色菌を指し;III群とは増殖遅延型非光発色菌を指し;グループIV群とは迅速増殖型ミコバクテリアを指す。非結核性ミコバクテリアはまた、非定型または無名性ミコバクテリアとも呼ばれる。
【0012】
結核は、ヒト型結核菌の感染によって引き起こされる急性または慢性の感染性疾患である。結核は、発展途上国において主要な疾患であり、かつ世界の先進国の領域においても増加しつつある問題であり、毎年およそ800万例の新たな症例と300万例の死亡例がある(Styblo et al., Bull. Int. Union Tuberc. 56: 118-125 (1981)を参照されたい)。感染は、かなりの期間の間は無症候性である可能性があるが、この疾患は、肺の急性炎症として最も通例的には顕在化し、熱および非生産的な咳を生じる。未治療のまま放置した場合、典型的には、深刻な合併症および死を引き起こす。
【0013】
結核は期間の長い抗生物質治療を使用して一般的には制御され得ることが公知であるが、このような治療は、この疾患の蔓延を予防するためには十分ではない。感染した個体は無症候性であるかもしれないが、ある期間は伝染性である。さらに、特定の治療の処方計画を伴うコンプライアンスが決定的であるが、患者の挙動は、しばしばモニターすることが困難である。治療の処方計画は、しばしば、中断されない6〜12ヶ月の治療を必要とする。結果として、ある患者は治療の過程を完了せず、従って、効果のない治療および抗生物質耐性の発生をもたらす。効果的なワクチン接種および正確で早期な疾患の診断が、結核の蔓延を阻害するために必要とされる。生細菌によるワクチン接種は、防御免疫を誘導するための最も効果的な方法のままである。生ワクチンとして採用される最も通例的なものは、ウシ型結核菌の無毒性株であるカルメット-ゲラン(Calmette-Guerin)桿菌(BCG)である。しかし、米国などのいくつかの国では、BCGの安全性および効力に関する懸念によって、一般大衆にワクチン接種を行っていない。
【0014】
ヒト型結核菌は、マクロファージに感染する細胞内病原体であり、マクロファージ中のファゴリソソームの厳しい環境中で生存することが可能である。大部分の吸入された桿菌は、活性化された肺胞マクロファージによって破壊される。しかし、生存している桿菌はマクロファージ中で増殖し、細胞死に際して放出され、これは、その部位に対するリンパ球、単球、およびマクロファージの侵入のシグナルとなる。T細胞の抗原性刺激は、MHC分子による提示を必要とする。桿菌が付加されたマクロファージは、遅延型過敏症(DTH)細胞媒介性免疫応答によって媒介され、感染細胞の領域を取り囲む固形の乾酪性結節の発生を生じる。結核桿菌は多くの潜在的なT細胞抗原を保有し、現在いくつかが同定されている[Andersen 1994, Dan. Med. Bull. 41,205]。これらの抗原のいくつかは細菌によって分泌される。継続するDTHは結核結節を液化し、それによって、捕捉された結核桿菌を放出する。大量の細胞外結核桿菌はさらなるDTHを誘発し、気管支に対する損傷、ならびにリンパ性、造血性、および気管支の経路による拡散を引き起こし、最終的には、感染性桿菌が呼吸によって蔓延することを可能にする。
【0015】
結核に対する細胞媒介性免疫は、いくつかの型の免疫エフェクター細胞に関わる。サイトカイン、例えば、インターフェロンγなどによるマクロファージの活性化は、マクロファージに基づく細胞内ミコバクテリア増殖を最小化する効果的な手段を表す。しかし、これは、桿菌の完全な根絶をもたらすものではない。結核に対する防御の獲得はTリンパ球をも必要とする。これらの間で、CD8+およびCD4+双方の系統のT細胞は特に重要であると考えられる[Orme et al, 1993, J. Infect. Dis. 167, 1481]。これらのT細胞は、ミコバクテリアに応答してインターフェロンγを分泌し、Th1免疫応答を示し、かつミコバクテリアでパルスされた標的細胞に対して細胞毒性活性を有する。β-2ミクログロブリン欠損マウスおよびCD8欠損マウスを使用する最近の研究において、細胞毒性Tリンパ球(CTL)は、ヒト型結核菌に対する防御を提供する際に決定的であることが示されている[Flynn et al, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 12013 ; Flynn et al, 1993, J. Exp. Med. 178,2249 ; Cooper et al, 1993, J. Exp. Med. 178, 2243]。対照的に、Bリンパ球は関与していないと考えられ、かつ抗ミコバクテリア抗体の受動的輸送はいかなる防御免疫も提供しない。従って、結核に対する効果的なワクチン処方計画は、細胞媒介性免疫応答を誘発する必要がある。
【0016】
肺感染としてのみの通例的な見解であるが、TBは、身体の多くの部分に罹患することが周知である。肺のTBに加えて、結核感染の他の病巣の例には、粟粒結核(全身化した造血性TBまたはリンパ造血性TB)、中枢神経系TB、胸膜TB、TB心膜炎、尿生殖器TB、胃腸管のTB、TB腹膜炎、副腎のTB、肝臓のTB、骨および関節のTB(例えば、TB脊椎炎またはポット病)、TBリンパ節炎、ならびに口、中耳、喉頭、および気管支樹のTBが含まれる。
【0017】
従来のTB治療には、ピラジナミド、イソニアジド、エタンブトール、ストレプトマイシン、リファンピン、リファブチン(rifabutin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、シプロキサシン、クロファザミン(clofazamine)、アジスロマイシン(azithromycin)、エチオナミド、アミカシン、およびレゾルシノマイシンA(resorcinomycin A)を含む処方計画による治療が含まれる。潜伏性の(不活性な)TB感染を治療するために、イソニアジドが単独で使用されてもよい。しかし、肺結核のための通常の初期治療は、少なくとも1種の他の薬物、例えば、エタンブトール、ストレプトマイシン、リファンピン、またはエチオナミドなどと組み合わせたイソナミドが含まれる。肺結核の再治療は、典型的には、リファンピンおよび上記に記述した他の薬物を含む薬物の組合せに関わる。抗TB薬物、特に、イソニアジドに対する病原因子の耐性の発生が周知である。肺外結核もまた、リファンピン、および言及した他の3種の薬物の少なくとも1つを含む組合せで通常治療される。
【0018】
トリ型結核複合菌(MAC)
トリ型結核菌およびM.イントラセルラーレは、トリ型結核複合菌のメンバーである。パラ結核菌は、トリ型結核菌の亜種であり、かつこれもまた一般的にはMACに含まれる。AIDS患者において伝播するMAC感染の高い有病率ゆえに、これらの種は近年重要性が増している。トリ型結核複合菌は、28種の血清型亜型から構成され、それらの生化学的特性および血清凝集特性に基づいて区別される(Inderlied, et al. 1993. Clin. Microbial. Rev. 6,266-310による総説を参照されたい)。分類の方法に依存して、28種の血清型亜型のうちの10〜12種は、トリ型結核菌種に、10〜12種がM.イントラセルラーレに属する。MAC血清型亜型のうちの6種はまだ決定的に分類されてはいない。MAC感染は、現在、ミコバクテリア学研究室によって同定された病原性単離物の約50%に達し、AIDSおよび他の免疫欠損患者の間で最も通例的である。MAC感染の初期の診断および治療は、感染した個体の生存を改善および延長することができる。
【0019】
炭疽および炭疽毒素
グラム陽性、杆状、好気性で、胞子を形成する細菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)によって産生される炭疽毒素は、この生物によって分泌される毒性の病原性因子である。炭疽菌(B. anthraxis)は、しばしば、分泌された外毒素の効力、および過酷な環境条件に抵抗性である休眠胞子を形成するという細菌の能力に起因して、生物兵器としての使用が考慮される。胞子形成は、迅速な輸送および大量の毒素産生細菌の分布を可能にする。毒素は、実際には、細菌由来の3つの個別の分泌タンパク質からなる複合物である。3つのタンパク質は、防御抗原(PA)、致死因子(LF)、および水腫因子(EF)である。LFおよびEFが直接的に細胞に損傷を与えかつ疾患を引き起こすのに対して、PAは本開示の焦点である。PA分子は、細胞の膜の内部にLFとEFの双方を輸送するように設計されているので、PAが炭疽毒素の病原性にとって決定的である。PA誘導性の細胞内輸送の非存在下では、LFおよびEFが細胞内から機能するのみであるので、炭疽毒素が組織破壊をもたらすことは不可能である。炭疽毒素の機能におけるPAの重要性は、炭疽ワクチンにおける免疫原としてのPAの効果的な使用によって強調されている。PAに対する免疫応答を産生することによって、このワクチンは、完全な(3成分の)炭疽毒素に対する防御を付与する。
【0020】
PAと、炭疽毒素によって攻撃された宿主細胞との間の相互作用のより精密な試験は有益である。PAは、最初に83kDaのモノマー性ポリペプチドとして、大きくかつ機能的に不活性な型で炭疽菌から分泌される。この不活性型PAは、宿主細胞の表面上の哺乳動物受容体に結合する。このPA受容体は、最近単離および配列決定され、フォンビルブランド(Von Willebrand)因子様領域を有することが見い出された。宿主細胞の表面上へのドッキング後、PAは、細胞表面上に存在するプロテアーゼと相互作用する。プロテアーゼは、大きくかつ不活性型のPA分子を、より小さくかつ活性型の63kDa断片にプロセシングする。C末端63kDa断片(PA63)は細胞に結合したままであり、N末端の20kDa(PA20)はPA63から解離する。このプロテアーゼの同一性は、不十分な研究の労力の焦点となっており、かつ特徴付けが乏しい。しかし、以前の研究は、このプロテアーゼが宿主由来セリンプロテアーゼであることを示唆する特徴を有することを示している。文献に記述された、候補となりうるセリンプロテアーゼは、フューリン(それ自体セリンプロテアーゼである)に関連するが、他のセリンプロテアーゼ、例えば、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、クロストリパイン(clostripain)、またはトリプシンなどは可能性のある代替物である(Molloy, S. S. et al. J Biol Chem 267, 16396-16402 (1992))。このタンパク質分解性切断およびPA20の引き続く解離は、PA63上の2つの新規な特性を付与する:(1)環状形状でヘプタマー性のSDS解離可能な構造(プレ細孔(prepore)と呼ばれる)にオリゴマー化する能力、ならびに(2)EFおよびLFに結合する能力。PA63-EF、PA63-LF、またはPA63-EFの組合せおよびPA63-LFを含むオリゴマーは、エンドサイトーシスされかつ酸性区画に輸送され、そこでPA63プレ細孔は膜に挿入され、細孔を形成する。細孔形成の間、またはその後、EFおよびLFは、エンドソーム膜を横切って細胞質に移行する。EFはカルモジュリン依存性アデニル酸シクラーゼであり、これは食細胞による破壊から細菌を保護することができる。LFは、マクロファージを殺傷することができるメタプロテアーゼであり、またはより低い濃度で、マクロファージがサイトカインを過剰生成するように誘導し、おそらく宿主の死を生じる。これらのヘプタマーは、LFおよびEFを細胞の内側に送達するための輸送ビヒクルとして機能する。一旦細胞の内部に入ると、LFおよびEFは細胞機能の異常化を開始する。
【0021】
結核、他のミコバクテリア感染、および炭疽に対する従来の治療のいくつかの困難さおよび不適切さゆえに、新たな治療様式が望まれる。
【0022】
本発明者は、結核菌(TB)およびトリ型結核複合菌(MAC)によって引き起こされた感染を治療するための治療薬剤としてのセリンプロテアーゼ阻害因子の使用の新規な方法を開示する。これらは、ヒトマクロファージ中での感染および生存によって、感染および長い潜伏期間を確立するヒト病原体である。従って、マクロファージ中でのTBまたはMACの内部移行をブロックすることが、これらの感染性因子に対する治療の新規なアプローチである。感染性アッセイにおいて、本発明者らは、α1-抗トリプシンが、ヒト単球由来マクロファージ(MDM)のTBおよびMAC双方の感染を有意に阻害することを示している。
【0023】
炭疽毒素の作用を無効にする新規なアプローチは、細胞表面上に存在する宿主由来のセリンプロテアーゼの作用に干渉することによって、細胞の内部への毒素の接近をブロックすることである。
【0024】
従って、本発明は、結核、他のミコバクテリア感染、他のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の感染、および炭疽の治療の安全かつ効果的な方法のために長期間考えられてきた必要性に取り組む。
【発明の開示】
【0025】
発明の概要
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、哺乳動物における細菌感染を治療するための方法を提供する。
【0026】
1つの態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含むグラム陰性細菌生物によって引き起こされる感染である:淋菌(N. gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)、M.カタラーリス(M. catarrhalis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、 大腸菌(E. coli)、 クレブシエラ属(Klebsiela)全種、エンテロバクター属全種、セラチア属全種、サルモネラ属全種、赤痢菌属全種、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、 尋常変形菌(Proteus vulgaris)、プロビデンシア属全種、モルガネラ属全種、シトロバクター属全種、アエロモナス属全種、アシネトバクター属全種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、パスツレラ属全種、シュードモナス-セパシア(Pseudomonas cepacia)、ステノトロホモナス-マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、Y.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)および他のエルシノイオシス(Yersinoiiosis)、レジオネラ属(Legionella)全種、P.ムルトシダ(P. multocida)、H.デュクレイ(H. ducreyeii)、クラミジア属全種、マイコプラズマ-ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、マイコプラズマ-ホミニス(Mycoplasma hominis)、バクテロイデス-フラジリス(Bacteroides fragilis)、P.メラニノジェニカ(P. melaninogenica)、モラクセラ属全種、ボルデテラ属全種、またはそれらの任意の組合せ。
【0027】
別の態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含むグラム陽性細菌生物によって引き起こされる感染である:破傷風菌(C. tetani)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、C.ディフィシレ(C. difficile)、A群、B群、C群、およびG群連鎖球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス-ミレリ(Streptococcus milleri)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Viridans streptococcus)、リステリア属全種、ブドウ球菌属全種、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MSSA)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、エンテロコッカス-フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス-フェシウム(Enterococcus faecium)、クロストリジウム属全種(C. diptheriea、 C. jeikiumを含む)、ロドコッカス属(Rhodococcus)全種、レウコノストク属(Leukonostoc)全種、またはそれらの任意の組合せ。
【0028】
さらに別の態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含む抗酸菌によって引き起こされる感染である:ヒト型結核菌、および非定型ミコバクテリア(トリ型結核菌、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ、M.ケロネイ、M.フォーツイタム、M.スクロフラセウム(M. scrofulaceum)、M.ウルセラニス(M. ulceranis)、らい菌、M.ゼノピ(M. xenopi)、ウシ型結核菌、M.ゴルドネ、M.ヘモフィルム、M.マリヌム(M. marinum)、M.ゲナベンセ(M. genavense)、M.アビウムおよびイントラセルラーレ、およびM.シミエ)、またはそれらの任意の組合せ。
【0029】
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、哺乳動物におけるミコバクテリア感染を治療するための方法を提供する。
【0030】
1つの態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含み、これは以下を含む:ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、らい菌、M.アビウム-イントラセルラーレ、M.ケロネイ(ボルステレンセおよびアブセッサスとしても知られる)、M.アフリカヌム、M.マリニウム(バルネイおよびプラチポエシルスとしても知られる)、M.ブルーリ(ウルセランスとしても知られる)、M.フォーツイタム(ギエ、ミネッティ、およびラーネとしても知られる)、M.ヘモフィルム、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ(ルシフラブムとしても知られる)、M.リットラーレ(ゼノピとしても知られる)、M.マルモエンセ、M.マリアヌム(スクロフラセウムおよびパラフィニクムとしても知られる)、M.シミエ、M.シュルガイ、およびM.ウルセランス、トリ型結核菌(ブルネンセとしても知られる)、M.フラバセンス、ネズミらい菌、M.ミクロティ、およびパラ結核菌(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)、M.ゴルドネ (アクエとしても知られる)、M.ガストリ、M.フレイ (モエレーリおよびチモテ-バシラスとしても知られる)、M.ノンクロモゲニクム、M.スメグマティス、M.テレ、M.トリビアーレ、およびM.バッカエ、またはその任意の組合せ。
【0031】
別の態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、IV群(迅速増殖型ミコバクテリア)、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択されるラニヨン群を含む4つの群に分けられる非結核性ミコバクテリアを含む、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む。
【0032】
それゆえに、1つの局面において、本発明は、マクロファージの感染に依存するミコバクテリア疾患を治療する方法を提供する。
【0033】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を、マクロファージのミコバクテリア感染に感受性である哺乳動物に投与する段階を含む、マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する方法もまた提供される。この物質はα1-抗トリプシンに限定されることなく、プロテイナーゼ3、カテプシンG、エラスターゼ、または任意の他のセリンプロテアーゼを阻害する化合物であってもよい。
【0034】
好ましい態様において、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する薬剤はα1-抗トリプシンを含む。さらに、関心対象のペプチドは、相同または類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。アナログの典型的な例はTLCKまたはTPCKである。α1-抗トリプシンおよびα1-抗トリプシンのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、CE-2072、UT-77、およびトリアゾールペプトイドのような化合物が好ましい。
【0035】
ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する薬剤はまた、セリンプロテアーゼ活性阻害因子、エラスターゼ阻害因子、またはプロテイナーゼ3阻害因子でもあり得る。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は以下を含み得るがこれらに限定されない:有機低分子(天然の、合成の、および生合成の分子を含む)、無機低分子(天然の、合成の、および生合成の分子を含む)、天然物(植物および真菌によって生産されるものを含む)、ペプチド、α1-抗トリプシンの変種、化学修飾ペプチド、およびタンパク質。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、および/または他のセリンプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害する能力を有する。
【0036】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を含む薬学的に許容される担体中の薬学的組成物により治療することによって、内因性宿主セリンプロテアーゼまたはセリンプロテアーゼ様活性によって媒介されるマクロファージのミコバクテリア感染に対して感受性である患者における、機能的内因性α1-抗トリプシンレベルの欠乏を予防する方法もまた、本発明の範囲内で企図される。この薬学的組成物は、ペプチドまたは低分子であり得、これは、α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す。
【0037】
さらに別の局面において、本発明は、炭疽菌への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合には、該曝露の症状が予防される。
【0038】
別の局面において、本発明は、炭疽菌に曝露された疑いのある対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合には、該曝露の症状が予防される。
【0039】
別の局面において、本発明は、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害する。
【0040】
上記に列挙された方法において、阻害または予防される炭疽の症状は、皮膚潰瘍、水腫、および瘢痕形成からなる群より選択される。
【0041】
1つの態様において、本発明の方法は、皮膚、胃腸、および/または吸入炭疽の症状を予防または改善するために使用される。1つの態様において、倦怠感、発熱、空咳、筋肉痛および胸痛、換気機能障害、発汗、放射線撮影検査における縦隔の拡張、頸部および胸部の水腫、壊死性縦隔リンパ節炎、非圧痕水腫、瘢痕、悪心、嘔吐、発熱、腹痛、出血性下痢、粘膜潰瘍、出血性腸間膜リンパ節炎、またはこの任意の組合せからなる群より選択される炭疽の症状を予防または改善するために、本発明の方法が使用される。
【0042】
さらに別の局面において、本発明は、上記に同定された細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染のいずれか1つまたはそれ以上に罹患している哺乳動物において、上記に同定された細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染のいずれか1つまたはそれ以上と関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法に方向付けられ、この方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を、単独、または1種またはそれ以上の抗炎症性化合物または免疫調節物質との組合せのいずれかで含み;かつ薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を減少させるための治療有効量を投与する段階を含み、ここで該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、宿主の細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染を阻害または改善するために十分である。
【0043】
1つの態様において、上記に列挙されたミコバクテリアの徴候、細菌感染、または炭疽感染の各々の1つまたはそれ以上と関連する痛みおよび/または症状の軽減または阻害は、約10〜20%の軽減または阻害のオーダーである。別の態様において、痛みの軽減または阻害は、30〜40%のオーダーである。別の態様において、痛みの軽減または阻害は、50〜60%のオーダーである。さらに別の態様において、列挙された徴候の各々に関連する痛みの軽減または阻害は、約75〜100%のオーダーである。列挙された範囲はまた、列挙された範囲間のすべての特定のパーセンテージをも含むことが、本明細書において意図される。例えば、約75〜100%の範囲はまた、各々の特定の範囲を実際に加えて列挙することなく、76〜99%、77〜98%なども含む。
【0044】
従って、本発明の全体の局面は、セリンプロテアーゼに対する阻害活性を示す化合物を提供する。従って、本発明は、医学、生物学、農学、および微生物発酵を含むが必ずしもそれらに限定されない任意の適切な状況における、セリンプロテアーゼの触媒活性の制御に適用可能であることが認識されるべきである。
【0045】
本発明の1つの局面は、認識された有用性を有し、かつ比較的低い濃度で比較的高い活性を示す、臨床的に許容されるセリンプロテアーゼ阻害因子を提供する。
【0046】
1つの態様において、本発明の方法および組成物において使用されるα1-抗トリプシンは、 Aralast(登録商標)(Baxter)、Zemaira(登録商標)(Aventis Behring)、Prolastin(登録商標)(Bayer)、Aprotonin(登録商標)またはTrasylol(登録商標)(Bayer Pharmaceutical Corporation) およびUlinistatin(登録商標)(Ono Pharmaceuticals, Inc.)、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0047】
本発明は、対象において細菌感染を治療的または予防的に処置するための方法を提供する。
【0048】
細菌またはミコバクテリアの感染を治療的に処置するための方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその誘導体を示す物質の薬学的有効量を、細菌またはミコバクテリアの疾患の発症後の対象に投与する段階を含む。
【0049】
細菌またはミコバクテリア感染を予防的に処置するための方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその誘導体を示す物質の薬学的有効量を、細菌またはミコバクテリアの疾患の発症前に対象に投与する段階を含む。
【0050】
いずれの方法論も、マクロファージの細菌感染またはミコバクテリア感染を阻害する。
【0051】
上記に列挙される本発明の方法の各々について、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す1種またはそれ以上の物質、またはその機能的誘導体の治療有効量は、1種またはそれ以上の抗ミコバクテリア薬物および/または抗炎症性化合物の治療有効量、および/または1種またはそれ以上の免疫調節薬剤の治療有効量と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与されてもよい。
【0052】
本発明の方法のある態様において、抗炎症性化合物または免疫調節薬物は以下を単独または組合せで含む:インターフェロン;ベータセロン、β-インターフェロンを含むインターフェロン誘導体;イロプロスト(iloprost)、シカプロスト(cicaprost)を含むプロスタン誘導体;コルチゾル、プレドニゾロン、メチル−プレドニゾロン、デキサメタゾンを含むグルココルチコイド;シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン(methoxsalene)、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートを含む免疫抑制剤;ジレウトン(zileutone)、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含むリポキシゲナーゼ阻害因子;ロイコトリエンアンタゴニスト;ACTHおよびそのアナログを含むペプチド誘導体;可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体;ならびにカルシポトリオール(calcipotriol)、ならびにそれらのアナログ。
【0053】
本発明はまた、上述の細菌またはミコバクテリアの疾患のいずれか、またはその任意の組合せを治療するために、1種またはそれ以上の抗菌または抗ウイルス組成物またはその任意の組合せと組み合わせた、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す薬学的組成物の組合せの使用に関する。
【0054】
上記に列挙された方法の各々において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、融合ポリペプチドの一部であってもよく、ここで該融合ポリペプチドは、α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を伴う物質、および該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質に相同なアミノ酸配列を含む。
【0055】
ある態様において、本発明の方法における使用のために企図される融合ポリペプチドは、ヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG1定常領域(改変されたヒトIgG1定常領域を含む)などが含まれ、ここで、IgG1定常領域は、Fc受容体に結合せず、かつ/または抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)反応を開始しない。
【0056】
さらに他の態様において、本発明の方法における使用のために企図される融合ポリペプチドは、その融合ポリペプチドを同定、輸送、または精製するために有用であるアミノ酸配列をさらに含んでもよく、例えば、融合ポリペプチドはFLAGまたはHISタグ配列をさらに含み得る。融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を伴う物質由来の相同アミノ酸配列を取り出すために使用され得るタンパク質分解切断部位をさらに追加的に含み得る。上記に列挙した本発明の組成物および方法の各々において、細菌感染、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染、または炭疽を阻害する薬剤は、α1-抗トリプシンを含む。さらに、関心対象のペプチドは、相同ペプチドおよび類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。アナログの典型的な例はTLCKまたはTPCKである。α1-抗トリプシンおよびα1-抗トリプシンのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、CE-2072、UT-77、およびトリアゾールペプトイドのような化合物が好ましい。
【0057】
他の態様において、細菌感染、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染、および/または炭疽を阻害する薬剤はまた、セリンプロテアーゼ活性阻害因子、エラスターゼ阻害因子、またはプロテイナーゼ3阻害因子であり得る。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は以下を含み得るがこれらに限定されない:有機低分子(天然の、合成のおよび生合成の分子を含む)、無機低分子(天然および合成の分子を含む)、天然物(植物および真菌によって生成されるものを含む)、ペプチド、α1-抗トリプシンの変種、化学修飾ペプチド、およびタンパク質。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、および/または他のセリンプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害する能力を有する。
【0058】
本発明の1つの態様において、ペプチドは、種々の方法、例えば、N末端アシル化、C末端アミド化、環状化などで保護または誘導体化され得る。特定の態様において、ペプチドのN末端はアセチル化される。
【0059】
関心対象のペプチドは、相同または類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。AATおよびAATのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、およびトリアゾールペプトイドのような化合物、および特定のフェニルエチレンジアルカノエートエステルを含む物質が好ましい。
【0060】
上記に列挙した方法の各々において、本発明の方法における使用のために企図される、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、AATに対応するカルボキシ末端アミノ酸ペプチドを含む一連のペプチドをさらに含む。これらのペンタペプチドは、一般式(I):I-A-B-C-D-E-G-H-IIによって表すことができ、ここでIはCysまたは存在せず;AはAla、Gly、Valまたは存在せず;BはAla、Gly、Val、Ser、または存在せず;CはSer、Thr、または存在せず;DはSer、Thr、Ans、Glu、Arg、Ile、Leu、または存在せず;EはSer、Thr、Asp、または存在せず;FはThr、Ser、Asn、Gln、Lys、Trp、または存在せず;GはTyrまたは存在せず;HはThr、Gly、Met、Met(O)、Cys、Thr、またはGlyであり;かつIIはCys、アミド基、置換アミド基、エステル基、または存在せず、ここでこのペプチドは少なくとも4個のアミノ酸およびその生理学的に許容される塩を含む。この一連のペプチドの中で、いくつかが等しく許容され、これには以下およびその任意の組合せが含まれる。
【0061】
さらに別の態様において、これらのペプチドは、一般式(II):NT-X1-X2-X3-X4-X5-CTまたはその生理学的に許容される塩によって表すことができ、ここで、NTはペプチドのN末端に配置されたアミノ酸残基(Cを含む)、アセチル基、またはスクシニル基を含み、またNTが存在しないことも可能であるという条件であり、X1はFまたはAを含むアミノ酸残基を含み;X2はC、V、L、M、I、A、C、またはSを含むアミノ酸残基を含み;X3はF、A、V、M、L、I、Y、またはCを含むアミノ酸残基を含み;X4はL、A、F、I、V、M、C、G、またはSを含むアミノ酸残基を含み;X5はM、A、I、L、V、F、またはGを含むアミノ酸残基を含み;かつCTは、ペプチドのC末端に配置されたアミノ酸残基(Cを含む)、アミド基、置換アミド基、またはエステル基を含み、またCTが存在しないことも可能であるという条件であり、かつここでアミノ酸残基はL-またはD-立体異性体配置のいずれかであり得る。これらのペプチドは少なくとも5個のアミノ酸およびその生理学的に許容される塩を含む。この化学式におけるアミノ酸は、1文字で略され、かつ対応する3文字コードは以下の通りである:アラニンはAまたはAla;アルギニンはRまたはArg、アスパラギンはNまたはAsn;アスパラギン酸はDまたはAsp;システインはCまたはCys;グルタミンはQまたはGln;グルタミン酸はEまたはGlu;グリシンはGまたはGly;ヒスチジンはHまたはHis;イソロイシンはIまたはIle;ロイシンはLまたはLeu;リジンはKまたはLys;メチオニンはMまたはMet;フェニルアラニンはFまたはPhe;プロリンはPまたはPro;セリンはSまたはSer;スレオニンはTまたはThr;トリプトファンはWまたはTrp;チロシンはYまたはTyr;およびバリンはVまたはVal。
【0062】
上記に列挙された方法の各々において、本発明の方法における使用のために企図される、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、AATの一部または断片に対応するアミノ酸ペプチドを含む一連のペプチドをさらに含む。例えば、限定目的ではなく、AATの10アミノ酸断片に対応するアミノ酸ペプチドが、本発明の組成物および方法における使用のために特に企図される。特に、以下のアミノ酸ペプチドまたはその任意の組合せである。
本発明の組成物および方法における使用のために企図される列挙されたAATペプチドが、上述のSEQ ID NO:1の10アミノ酸AATペプチド以外の任意の、およびすべての特異的AATペプチドを含むと企図されることが、特に意図される。例えば、SEQ ID NO:1のAATペプチドのアミノ酸1位〜10位、アミノ酸11位〜20位、アミノ酸21位〜30位などが本明細書に列挙されているのに対して、本発明の使用の組成物および方法の範囲は、SEQ ID NO:1の各々の特異的なAATペプチドを実際に列挙することなく、すべての可能なAATペプチドの組合せ、例えばSEQ ID NO:1のアミノ酸2位〜12位、アミノ酸3位〜13位、4位〜14位など、ならびにSEQ ID NO:1のアミノ酸を選択して対応する任意の、およびすべてのAATペプチド断片を特異的に含むことが意図される。従って、例示目的のために、かつ限定目的のためではなく、出願人は、SEQ ID NO:1に記述されるアミノ酸配列に基づく任意のおよびすべてのAATペプチド変種に基づく組成物、および本発明の方法におけるこのような組成物の使用を保有する権利を本明細書において有する。
【0063】
本発明の組成物および方法における使用のために企図されるAATおよび類似活性化合物は、一連のアッセイによって同定することができ、ここで、化合物(AAT)は、1つのアッセイにおいて、対照に対する阻害活性を示す。これらのアッセイの1つは、本開示の詳細な説明の実施例1において詳述されるような感染のインビトロモデルにおいて、ヒト単球由来マクロファージの感染をブロックする段階を含む。
【0064】
1つの態様において、炭疽菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の使用に関して、元来(native)のα1-抗トリプシン分子のアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するα1-抗トリプシン変種を含むフューリンエンドプロテアーゼ阻害因子は、米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるような元来のα1-抗トリプシンのアミノ酸配列の355位〜358位において、元来のタンパク質の355位〜358位(-Ala-Ile-Pro-Met-)が新規な配列-Arg-X-X-Arg-(ここで、Xは任意のアミノ酸である)に変化している以外は、本発明の範囲から特に除外される。
【0065】
米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるように、α1-抗トリプシンのアミノ酸Portland配列の355位〜358位におけるアミノ酸配列が、-Ala-Ile-Pro-Arg-であるα1-抗トリプシンPortland変種もまた、炭疽菌、ジフテリア菌、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の範囲から特に除外される。
【0066】
米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるように、アミノ酸配列-Arg-Xaa-Xaa-Arg-(ここで、各Xaaは任意のアミノ酸である)を含む約4アミノ酸〜約100アミノ酸の長さのアミノ酸配列を有するペプチドもまた、炭疽菌、ジフテリア菌、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の範囲から特に除外される。
【0067】
さらに別の態様において、炭疽の症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の使用に関して、Miroslav S. Sarac et al. (Infection and Immunity, January 2004, p. 602-605, Vol. 72, No. 1 Protection against Anthrax Toxemia by Hexa-D-Arginine In Vitro and In Vivo)において開示されるようなHexArgを含むフューリンエンドプロテアーゼ阻害因子は、本発明の範囲から特に除外される。
【0068】
本発明は、このような薬剤を含む薬学的組成物をさらに含む。
【0069】
投与のための好ましい用量は、製剤のmlまたはmgあたり約10ng〜約10mgの間の範囲のいずれかであり得る。AATペプチドまたはAATもしくはペプチド薬物と同様の活性を有する薬物の治療有効量は、モル濃度で測定することもでき、これは約1nM〜約10mMの間の範囲であり得る。製剤はまた、薬学的にまたは化粧品的に許容される担体と組み合わせて企図される。正確な用量は、過度の実験を伴うことなく、周知の慣行的な試験によって確立され得る。
【0070】
本発明の1つの局面において、本発明の薬学的組成物は、経口的に、全身的に、移植物を通して、静脈内へ、局所的に、くも膜下腔内へ、頭蓋内へ、脳室内へ、吸入により、または経鼻的に投与される。
【0071】
本発明の方法の特定の態様において、対象または哺乳動物はヒトである。
【0072】
本発明の方法の他の態様において、対象または哺乳動物は、獣医学的な動物および/または家畜化された哺乳動物である。
【0073】
本発明の重要な特徴は、以下に続く詳細な説明がより良好に理解できるように、かつ本発明の寄与がより良好に評価されるように、このように、むしろ広範に概説されてきた。本明細書中以下に記載される、本発明のさらなる特徴が存在する。
【0074】
この点に関して、本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、その応用において、以下の説明および図面に示されるような詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は他の態様が可能であり、種々の方法で実施および実行することが可能である。さらに、本明細書で採用される命名法および用語は、説明目的のためのものであり、限定と見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0075】
このように、当業者は、本開示が基づき、本発明のいくつかの特徴および利点を実行する目的で他の方法を設計するための基礎として容易に使用され得る概念を認識する。したがって、このような等価な構成が、それらが本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、特許請求の範囲に含まれると見なされることは重要である。
【0076】
発明の詳細な説明
標準的方法
本発明に従って、当技術分野内にある従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が採用され得る。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.; Animal Cell Culture, R.I. Freshney, ed., 1986)を参照されたい。
【0077】
治療方法
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその機能的誘導体を示す物質の有効量;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、ミコバクテリア感染を治療するための方法を提供する。
【0078】
本発明の方法に従って、マクロファージのミコバクテリア感染が阻害されて、重要な治療的利点を得る。
【0079】
したがって、本発明の組成物、すなわち、α1-抗トリプシン、またはその断片、誘導体、またはアナログの用量の投与は、ミコバクテリアの疾患または障害の治療のために有益であり得る。好ましい局面において、この薬剤は、血液脳関門を通過することができるα1-抗トリプシンのアナログであり、これは、静脈内へのまたは経口での投与を可能にする。血液脳関門を通過するために多くの戦略が利用可能であり、これらには、分子の疎水性性質を増大させること;血液脳関門における受容体に標的化されるトランスフェリンのような担体に、結合体として分子を導入することなどが含まれるが、それらに限定されない。別の態様において、薬剤は、頭蓋内に、またはより直接的には、脳室内に投与され得る。さらに別の態様において、薬剤は、吸入によって、または経鼻的に投与され得る。
【0080】
さらなる態様において、本発明の方法および組成物は、免疫系のミコバクテリア疾患または障害の治療的処置において有用である。またさらなる態様において、予防剤として本発明の薬剤の適時の投与によって、症状もしくは兆候の発生の前に、またはミコバクテリア疾患の重篤な症状もしくは兆候の発生の前に、疾患が予防され得る。従って、特定のミコバクテリア疾患についてのリスクを有する患者は、予防措置として、セリンプロテアーゼ阻害因子、例えば、(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミドにより治療され得る。
【0081】
本発明の薬剤の有効な用量、および適切な治療の処方計画は、徴候および患者の状態、および分子それ自体の性質、例えば、インビボ半減期および活性のレベルに伴って変化し得る。これらのパラメーターは、当業者によって容易に扱われ、かつ慣行的な実験によって決定され得る。
【0082】
投与のための好ましい用量は、治療される患者の生物学的液体のmlあたり、約0.01mg〜約20mgの間の範囲のいずれかであり得る。α1-抗トリプシン、ペプチド、またはα1-抗トリプシンもしくはペプチドと同様の活性を有する薬物の治療有効量はまた、モル濃度で測定することもでき、これは約1nM〜約2mMの間の範囲であり得る。
【0083】
セリンプロテアーゼ阻害因子
本発明は、本明細書に記載される実施例に限定されず、かつ当該分野において公知である他のセリンプロテアーゼが本発明の制限内で使用され得ることが理解される。例えば、当業者は、国際公開公報第98/24806号(これは、セリンプロテアーゼ阻害因子として、置換オキサジアゾール、チアジアゾール、およびトリアゾールを開示する)において記載されているような阻害因子を容易に採用することが可能である。米国特許第5,874,585号は、セリンプロテアーゼ阻害因子として有用な置換複素環化合物を開示しており、これには以下が含まれる:(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミドベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(2-フェニルエチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(2-メトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(メチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(ジフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(ベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-メトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(2,6-ジフルオロベンジル)-l,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-スチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-4-トリフルオロメチルスチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-4-メトキシスチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-チエニルメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(フェニル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;および(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェニルプロピル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド。米国特許第5,216,022号は、本発明の実施のために有用である他の低分子を開示し、それには以下が特に含まれる:ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[1-(2-[5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド(CE-2072としても知られる);ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[1-(2-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[-(2-(5-(メチル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(4-ジメチルアミノベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(1-ナフチルエニル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-[1-(3-(5-(3,4-メチレンジオキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジメトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジトリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-メチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(ビフェニルメチン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(4-フェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェノキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(シクロヘキシルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルジメチルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(1-ナフチルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(3-ピリジルメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジフェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(4-ジメチルアミノベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;2-(5-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(S)-2-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-アミノ-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(S)-2-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-アミノ-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-メチルプロピル]アセトアミド;(ピロール-2-カルボニル)-N-(ベンジル)グリシル-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(ピロール-2-カルボニル)-N-(ベンジル)グリシル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)]-1,2,4-オキサジアゾリル)-(S)-メチルプロピル]アミド;(2S,5S)-5-アミノ-1,2,4,5,6,7-ヘキサヒドロアゼピノ-[3,2,1]-インドール-4-オン-カルボニル-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(R,S)-2-メチルプロピル]アミド;BTD-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(R,S)-3-アミノ-2-オキソ-5-フェニル-1,4,-ベンゾジアゼピン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;アセチル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;3-(S)-(ベンジルオキシカルボニル)アミノ)-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(S)-(アミノ)-ε-ラクタム-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミドトリフルオロ酢酸塩;3-(S)-[(4-モルフォリノカルボニル-ブタノイル)アミノ]-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(R,S)-メチルプロピル]アセトアミド;6-[4-フルオロフェニル]-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-フェニル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-フェニル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]ヒドロキシメチル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-ベンジル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-アセトアミド;2-(2-(R,S)-ベンジル-4-オキソチアゾリジン-3-イルオキシド]-N-[l-(3-(5-(3トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(R,S,)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-ベンゾイル-3,8-キナゾリンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-ベンゾイル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-フェニル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;[(1-フェニル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)]-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-l,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-7-ピペリジニル-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(カルボメトキシ-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(アミノ-キノリン-2-オン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル)]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(4-モルフォリノ)アセト]アミノ-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3,4-ジヒドロ-キノリン-2-オン-
N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-フルオロベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-カルボメトキシベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-[(4-ピリジル)メチレン]ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(R)-ベンジル-ピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(2-[5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3(R)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(3-(5-(2-ジメチルアミノエチル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-メチル-3-(R,S)-フェニルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[[-メチル-3-(R,S)-フェニルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-(4-モルフォリノエチル)3-(R)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R,S)-フェニル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(S)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(S)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-ベンジル-4-(R)-ベンジル-2,5-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;および1-ベンジル-4-(R)-ベンジル-2,5-イミダゾリジンジオン-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド。
【0084】
同様に、米国特許第5,869,455号はN置換誘導体を開示し;米国特許第5,861,380号はプロテアーゼ阻害因子のケトおよびジケト含有環系を開示し;米国特許第5,807,829号はセリンプロテアーゼ阻害因子のトリペプトイドアナログを開示し;米国特許第5,801,148号はセリンプロテアーゼ阻害因子のプロリンアナログを開示し;米国特許第5,618,792号はセリンプロテアーゼ阻害因子として有用である置換複素環化合物を開示する。これらの特許およびPCT刊行物および下記に列挙するような他のものは、それらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。α1-抗トリプシンの代わりに使用されうるか、またはα1-抗トリプシンと組み合わせて使用されうる、他の等しく有利な分子は、例えば、ノミ由来のセリンプロテアーゼ阻害因子を開示する国際公開公報第98/20034号において企図される。この単一の参考文献に限定されることなく、当業者は、例えば、以下の化合物を、容易に、かつ過度の実験を伴うことなく採用し得る:セリンプロテアーゼを阻害するために有用であるアミノグアニジンおよびアルコキシグアニジン化合物を開示する国際公開公報第98/23565号;システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼの障害を治療するために有用であるビス-アミノメチルカルボニル化合物を開示する国際公開公報第98/50342号;トロンビン関連疾患のために有用である環状およびその他のアミノ酸誘導体を開示する国際公開公報第98/50420号;D-アミノ酸含有誘導体を開示する国際公開公報第97/21690号;セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼのケトメチレン基含有阻害因子を開示する国際公開公報第97/10231号;セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼのリン含有阻害因子を開示する国際公開公報第97/03679号;セリンプロテアーゼのベンゾチオおよび関連複素環阻害因子を開示する国際公開公報第98/21186号;二価カチオンのキレート部位を有するセリンプロテアーゼのP部位に結合する阻害因子の組み合わせを開示する国際公開公報第98/22619号;カスパーゼ3(CPP32/Yama/Apopain)を含むプロ酵素CPP32サブファミリーの転換を阻害する組成物を開示する国際公開公報第98/22098号;ピローロ-ピラジン-ジオンを開示する国際公開公報第97/48706号;セリンプロテアーゼ阻害因子としてのヒト胎盤ビクニン(組換え)を開示する国際公開公報第97/33996号;本明細書上記に開示されるウイルス感染および状態を治療するための複合体アミノ酸含有分子を開示する国際公開公報第98/46597号。
【0085】
セリンプロテアーゼ阻害活性を有する他の化合物は、本発明の方法における使用のために等しく適切かつ効果的であり、以下が特に含まれるが、これらに限定されない:国際公開公報第97/24339号において開示されるテトラゾール誘導体;国際公開公報第97/37969号ならびに米国特許第4,283,418号;第4,843,094号;第4,310,533号;第4,283,418号;第4,224,342号;第4,021,472号;第5,376,655号;第5,247,084号;および第5,077,428号において開示されるグアニジノ安息香酸誘導体;国際公開公報第97/45402号において一般式によって表されるフェニルスルホニルアミド誘導体;国際公開公報第97/49679号において一般式によって表される新規なスルフィド、スルホキシド、およびスルホン誘導体;国際公開公報第99/41231号において一般式によって表される新規アミジノ誘導体;米国特許第5,432,178号;第5,622,984号;第5,614,555号;第5,514,713号;第5,110,602号;第5,004,612号;および第4,889,723号において開示される他のアミジノフェノール誘導体。
【0086】
本発明によって扱われるミコバクテリア疾患
本発明のマクロファージのミコバクテリア感染を阻害する治療方法が有益である特定のミコバクテリア疾患または障害は、以下を含むミコバクテリア属からのミコバクテリアによって引き起こされるミコバクテリア疾患または障害を含むがこれらに限定されない:ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、らい菌、M.アビウム-イントラセルラーレ、M.ケロネイ(ボルステレンセおよびアブセッサスとしても知られる)、M.アフリカヌム、M.マリニウム(バルネイおよびプラチポエシルスとしても知られる)、M.ブルーリ(ウルセランスとしても知られる)、M.フォーツイタム(ギエ、ミネッティ、およびラーネとしても知られる)、M.ヘモフィルム、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ(ルシフラブムとしても知られる)、M.リットラーレ(ゼノピとしても知られる)、M.マルモエンセ、M.マリアヌム(スクロフラセウムおよびパラフィニクムとしても知られる)、M.シミエ、M.シュルガイ、およびM.ウルセランス、トリ型結核菌(ブルネンセとしても知られる)、M.フラバセンス、ネズミらい菌、M.ミクロティ、およびパラ結核菌(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)、M.ゴルドネ (アクエとしても知られる)、M.ガストリ、M.フレイ (モエレーリおよびチモテ-バシラスとしても知られる)、M.ノンクロモゲニクム、M.スメグマティス、M.テレ、M.トリビアーレ、およびM.バッカエ。
【0087】
別の態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、およびグループIV群(迅速増殖型ミコバクテリア)からなる群より選択されるラニヨン群を含む4つの群に分けられる非結核性ミコバクテリアを含む、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む。
【0088】
炭疽菌および炭疽毒素
グラム陽性、杆型形状、好気性、胞子形成の細菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)によって産生される炭疽毒素は、この生物によって分泌される毒性の病原性因子である。炭疽菌は、しばしば、分泌された外毒素の効力、および過酷な環境条件に抵抗性である休眠胞子を形成する細菌の能力に起因して、生物兵器としての使用が考慮される。胞子形成は、容易な輸送および大量の毒素産生細菌の散布を可能にする。この毒素は、実際には、細菌からの3つの別々の分泌タンパク質からなる複合物である。3つのタンパク質は、防御抗原(PA)、致死因子(LF)、および水腫因子(EF)である。LFおよびEFが直接的に細胞に損傷を与えかつ疾患を引き起こすのに対して、PAは本開示の焦点である。PA分子は、細胞の膜の内部にLFとEFの両方を輸送するように設計されているので、PAが炭疽毒素の病原性に決定的である。PA誘導性の細胞内輸送の非存在下では、LFおよびEFのみが細胞内で機能するので、炭疽毒素が組織破壊をもたらすことは不可能である。炭疽毒素の機能におけるPAの重要性は、炭疽ワクチンにおける免疫原としてのPAの効果的な使用によって強調されている。PAに対する免疫応答を産生することによって、このワクチンは、完全な(3成分)炭疽毒素に対する防御を付与する。
【0089】
PAと、炭疽毒素によって攻撃された宿主細胞との間の相互作用のより密接な試験は有益である。PAは、最初に、大きくかつ機能的に不活性型の状態で炭疽菌から分泌される。この不活性型PAは、宿主細胞の表面上の受容体に結合する。このPA受容体は、最近単離および配列決定され、フォンビルブランド因子様領域を有することが見い出された。宿主細胞の表面上へのドッキング後、PAは、細胞表面上に存在するプロテアーゼと相互作用する。プロテアーゼは、大きくかつ不活性型のPA分子を、より小さくかつ活性型の残余物に切断(プロセシング)する。このプロテアーゼの同一性は、不十分な研究の労力の焦点であり、かつこれは特徴付けが乏しい。しかし、以前の研究は、このプロテアーゼが、これが宿主由来セリンプロテアーゼであることを示唆する特徴を有することを示している。文献に記述されている可能性のあるセリンプロテアーゼの候補は、フューリン(それ自体セリンプロテアーゼである)であるが、他のセリンプロテアーゼ、例えば、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、またはトリプシンなどは可能性のある代替物である。細胞表面セリンプロテアーゼの作用によって一旦プロセシングされると、活性化されたPA分子は、細胞表面上で7個の群(ヘプタマー)に自己集合化する。これらのヘプタマーは、LFおよびEFを細胞の内側に送達するための輸送ビヒクルとして機能する。一旦細胞の内部に入ると、LFおよびEFは細胞機能の異常化を開始する。
【0090】
炭疽毒素の作用を無効にする新規なアプローチは、細胞の内部への毒素の接近をブロックすることである。本発明者は、以前の広範囲な実験室研究において(Leland Shapiro et al. Facet 2000 vol. 15: 115-122、およびDr. Leland Shapiroの未公開データ)、細胞表面上に存在するセリンプロテアーゼが、セリンプロテアーゼ機能を阻害するいくつかの型の分子の作用によって中和され得ることを示した。セリンプロテアーゼの最も重要な天然の内因性阻害因子はα1-抗トリプシン(AAT)である。AATレベルがリンパ管で減少していること、ならびに炭疽毒素および疾患の出現がリンパ管中で生じることは注目に値する。AAT量の減少がセリンプロテアーゼ機能の増強に導く微小環境を提供するので、毒素産生がリンパ管組織において起こることが可能である。このような状態は、活性化炭疽毒素の産生を増大することが予測される。それゆえに、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与することは、細胞表面上に存在する宿主由来のセリンプロテアーゼの活性をブロックすることによって、炭疽毒素の活性を減弱または無効にするために役立つ。これは、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA残余物への細胞表面プロセシングを打ち消す。このように、宿主由来のセリンプロテアーゼ活性に干渉することによって、プレ細孔および最終的には細孔を形成するヘプタマーPA63の能力を破壊する。この新規なアプローチを使用して炭疽毒素を解除することによって(図4A〜4Hを参照されたい)、代替的なアプローチに対していくつかの利点が得られ、これは、限定目的ではないが以下の通りである。
【0091】
1.炭疽感染を治療するための戦略としてのセリンプロテアーゼ阻害は、選択圧に起因して、細菌変異に影響されない可能性が高い。宿主細胞起源のセリンプロテアーゼを標的化または阻害するために選択することによって、標的分子は変異されない。
【0092】
2.合成セリンプロテアーゼ阻害因子(AAT様模倣物)が開発可能であり、開発された(下記を参照されたい、CE-2072)。このような薬学的薬剤は、当技術分野における口腔消費のための丸薬に製剤化されてもよく、または吸入炭疽を治療するための吸入剤として製剤化されてもよい。
【0093】
3.ヒトにおける代替的使用のためにすでに認可されている市販の薬剤は、炭疽のための治療として使われている。これらの薬剤は、炭疽毒性以外の徴候のために現在使用されており、注射用AAT、血漿調製物、アプロチニン、およびその他を含む(American J.Of Resp Critical Care Med 1998, Vll 158: 49-59)。本発明の1つの可能な具体化は、即座の実用的応用であってもよい。セリンプロテアーゼ阻害因子は、吸入によって患者に送達されてきた。炭疽感染の多くの致死型は肺侵襲であるので、吸入剤(天然のAATまたは合成のAAT様模倣物/または他のセリンプロテアーゼ阻害因子)が、局所的濃度の上昇、薬物送達の容易さ、および副作用の欠如(なぜなら投与が全身的でないため)に起因して、とりわけ有用であり得る。薬物送達に焦点を当てているこの様式は、炭疽が劇症性疾患を開始すると考えられている主要な部位である肺および縦隔のリンパ管中のセリンプロテアーゼ阻害因子活性を増強し得る。
【0094】
4.炭疽毒素を中和することによって、疾患の直接的原因が感染した個体において破壊される。他方、抗生物質は、毒素活性を標的とせず、細菌の破壊の前に産生される毒素には影響を与えることができない。本発明は、1種またはそれ以上の抗菌性抗生物質の投与と組み合わせて宿主細胞セリンプロテアーゼを阻害することを特に意図する。抗生物質は、細菌の増殖および/または毒素の細菌供給源を殺傷することによって、毒素産生をさらに停止する。
【0095】
5.炭疽治療に対するこのアプローチは安全である可能性が高い。遺伝的AAT欠損を有する患者を治療するために注射用AATを使用する広範囲の臨床的症例が存在する。長期間の有害な効果は今日まで検出されていない(American J. Of Resp Critical Care Med 1998, Vll 158: 49-59; Wencker et al. Chest 2001 119: 737-744)。さらに、宿主セリンプロテアーゼの低分子阻害因子は、優秀な安全性および耐容性の記録を伴って、川崎病を有する患者に投与されてきた(ウリニスタチン(Ulinistatin)、Ono pharmaceuticals)。さらに、炭疽感染を治療するための宿主セリンプロテアーゼの阻害は、短い治療期間のみを必要とするので、従って、AATまたはAAT様模倣物/またはセリンプロテアーゼの他の阻害因子への長期的曝露に伴ういかなる懸念をも最小限にする。
【0096】
6.可溶性炭疽受容体(Bradley et al. Nature 2001 vol. 414)、炭疽生物のバクテリオファージ溶解(Schuch et al. Nature 2002 vol. 418 884-889)、ドミナントネガティブ変異体炭疽毒素成分(Sellman et al. Science 2001 Vl. 292: 695-697)および多価阻害因子(Mourez et al Nature Biotech 2001 Vol. 19,:958-961)もまた、本発明の炭疽に基づく方法と組み合わせて使用され得る。
【0097】
従って、上記の観点において、本発明は、炭疽菌に曝露されたことが疑われるか、または炭疽菌への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む。本発明はまた、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む。
【0098】
上記に列挙した方法の各々において、炭疽の臨床的症状は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の投与によって、阻害または予防され得る。
【0099】
炭疽の臨床的症状
炭疽は、3つの一般的な臨床的実体:i)吸入型、ii)皮膚型、およびiii)胃腸型として起こる。
【0100】
i)吸入炭疽はこの疾患の致死型であり、これは、生物兵器の議論または事故において含まれることが最も可能性が高いものである。通常、感染したヒトは、炭疽胞子を、偶然にまたは生物兵器攻撃の間に吸入する。1〜6日間のインキュベーション期間後、二相性の疾病が続いて起こる。最初に、非特異的な倦怠感/発熱/空咳/筋肉痛、および胸痛が存在する。第2の相は、最初の相の2〜3日後に起こり、換気機能障害、発汗、放射線撮影検査における縦隔の拡張、ならびに頸部および胸部の水腫に加えて、上記に列挙した構成的に非特異的な所見の進行からなる。疾病のこの病期は、壊死性縦隔リンパ節炎によって特徴付けられる。疾患のこの第2の病期は、2日以内にショックまたは死亡まで急速に進行することがあり、80%までの死亡率が報告されている。動物モデルにおける死亡のメカニズムは、炎症誘発性サイトカイン、とりわけIL-1の産生の増加であるようである。他の組織と比較して、リンパ管はセリンプロテアーゼ阻害因子の活性が欠失していることは注目すべきであり、本発明の開示を参照可能である。この意味は、炭疽毒素が身体の領域(リンパ管)において選択的に活性化されることであり、ここでは、セリンプロテアーゼ活性が優勢である、セリンプロテアーゼ/抗セリンプロテアーゼ機能の不均衡が存在する。吸入炭疽を治療するための本発明を使用するために好ましい態様は、吸入によって大量のセリンプロテアーゼ阻害因子(天然または合成)を送達することである。これは、肺および縦隔リンパ管組織において、セリンプロテアーゼ/セリンプロテアーゼ阻害因子の不均衡の、抗プロテアーゼ活性に向けてのシフトを生じる。これは、炭疽毒素の活性のために必要とされる細胞表面プロセシング事象のブロックをもたらす。
【0101】
ii)皮膚炭疽は、ヒトにおける炭疽感染の最も一般的な(>95%)型である。炭疽胞子への曝露に際して、剥皮された皮膚(切り傷、擦過傷など)は、炭疽生物が胞子状態から出現し、増殖および複製し、そして炭疽毒素を産生することを可能にする環境を提供する。1週間以内に、炭疽接種の領域は痛みのない丘疹を発生する。次いで、次の1〜2日間にわたって丘疹の上またはその近傍に小胞が形成し、続いてすぐに熱および倦怠感、ならびに毒素活性に起因する皮膚病巣を取り囲む非圧痕水腫の発生が起こる。もともとの病巣(しばしば、もう小胞になっている)は破裂して、壊死性潰瘍および膨張を形成し、これは、皮膚炭疽感染を特徴付ける瘢痕の形成を生じる。治療の非存在下において、この疾患は、20%の死亡率を有する。回復する者については、瘢痕は1〜2週間で脱落する。皮膚炭疽の治療のための本発明の好ましい態様は、局所的/クリーム調製物においてセリンプロテアーゼ阻害因子(天然または合成)を投与することである。非経口セリンプロテアーゼ阻害因子治療はまた、全身性症状が現れる事象において同時投与してもよく、またはこのような非経口治療は、臨床的に皮膚に局在化しそうな炭疽のために予防的に投与してもよい。
【0102】
iii)胃腸炭疽は炭疽胞子の摂取後に現れる。2〜5日後、悪心/嘔吐/熱、および腹痛を発症する。出血性下痢がすぐに続き、「急性腹症」が現れる。この腹症における病理は、粘膜潰瘍を含む。また、出血性腸間膜リンパ節炎が発生し、そしてこれは、再度、セリンプロテアーゼ阻害因子欠損微環境における炭疽毒素の選択的活性化と一致する。この疾患は、50%の死亡率を有する。
【0103】
本発明の組成物および方法における使用のための単離されたタンパク質
本発明の1つの局面は、単離されたタンパク質、およびその生物学的に活性な部分、ならびに本発明のポリペプチドに対して指向される抗体を惹起するための免疫原としての使用のために適切であるポリペプチド断片に関する。1つの態様において、元来のポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切なタンパク質精製スキームによって、細胞または組織供給源から単離され得る。別の態様において、本発明のポリペプチドは、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現に対する代替として、本発明のポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
【0104】
遺伝子操作方法によって産生されるα1-抗トリプシンの組換え未改変変種または変異体変種もまた知られている(米国特許第4,711,848号)。ヒトα1-抗トリプシンおよび他のヒトα1-抗トリプシン変種のヌクレオチド配列は、国際出願の国際公開公報第86/00,337号(その内容全体が参照として本明細書に組み入れられる)において開示されている。このヌクレオチド配列は、DNA技術および当業者に公知である方法を使用して、組換え本発明に示されるすべてのAATアミノ酸変種およびアミノ酸断片を生成するための出発物質として使用され得る。
【0105】
「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、そのタンパク質が由来する細胞もしくは組織供給源からの細胞物質、もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「実質的に細胞物質を含まない」という語句は、タンパク質がそこから単離され、またはそこから組換え的に産生される細胞の細胞成分から、そのタンパク質が分離されているタンパク質の調製物を含む。従って、細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、または5%(乾燥重量で)未満の異種タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)を有するタンパク質の調製物を含む。タンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え的に産生される場合、これはまた、培養培地を実質的に含まず、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%、10%、または5%未満ということである。タンパク質が化学合成によって産生される場合、好ましくは、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、すなわち、これは、そのタンパク質の合成に関与している化学前駆体または他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質のこのような調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量で)未満の化学前駆体または関心対象のポリペプチド以外の化合物を有する。
【0106】
本発明のポリペプチドの生物学的に活性な部分には、タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60のいずれかに示されるアミノ酸配列)に対して十分に同一であるか、またはその配列に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、これは、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、および対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性は部分は、対応するタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本発明のタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100またはそれ以上の長さのアミノ酸であるポリペプチドであり得る。さらに、タンパク質の他の領域が欠失している他の生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製でき、および元来型の本発明のポリペプチドの1つまたはそれ以上の機能的活性について評価できる。
【0107】
好ましいポリペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のいずれかに対して実質的に同一であり(例えば、少なくとも約45%、好ましくは55%、65%、75%、85%、95%、または99%)、かつ対応する天然に存在するタンパク質のタンパク質機能活性を保持しているが、天然の対立遺伝子のバリエーションまたは変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なっている。
【0108】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適比較の目的のために整列化される(例えば、ギャップは、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列中に導入され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているならば、これらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。1つの態様において、2つの配列は同じ長さである。
【0109】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. 90: 5873-5877によって変更された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み入れられている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行され、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、 XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行され、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップを有するアラインメントを得るために、ギャップ付きBLASTが、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されるように利用され得る。代替として、PSI-Blastが、分子間の距離の離れた関連性を検出する反復検索を実行するために使用され得る(同上)。BLAST、ギャップ付きBLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用され得る。http://www. ncbi. nlm. nih. govを参照されたい。
【0110】
別の好ましい、配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、CGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーが使用され得る。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは当技術分野において公知であり、これにはTorellis and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10: 3-5において記載されているADVANCEおよびADAM; Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 2444-8において記載されるFASTAが含まれる。FASTAでは、ktupは検索の感度および速度を設定する制御オプションである。ktup=2のとき、比較される2つの配列中の類似の領域は整列化された残基の対を見ることによって見い出される;ktup=1のとき、単一の整列化されたアミノ酸が調べられる。ktupは、タンパク質配列については2もしくは1、またはDNA配列については1〜6に設定され得る。デフォルトは、ktupが特定されていない場合には、タンパク質について2、DNAについて6である。FASTAパラメーターについてのさらなる説明は、http://bioweb.pasteur.fr/docs/Man/man/fasta.1.html#sect2(この内容は参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0111】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容することを伴って、または伴わずに、上記のいずれかに類似の技術を使用して決定され得る。同一性パーセントを計算する際に、正確な一致のみが計数される。
【0112】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの変種に関する。このような変種は、アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能し得る変化したアミノ酸配列を有する。変種は、変異誘発、例えば、別々の点変異または短縮化によって生成され得る。アゴニストは、タンパク質の天然に存在する型と実質的に同じ生物学的活性、またはそのサブセットを保持し得る。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、関心対象のタンパク質を含む細胞のシグナル伝達カスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することによって、タンパク質の天然に存在する型の活性の1つまたはそれ以上を阻害し得る。従って、特定の生物学的効果は、限られた機能の変種を用いる処理によって誘発され得る。タンパク質の天然に存在する型の生物学的活性のサブセットを有する変種を用いる対象の処理は、タンパク質の天然に存在する型を用いる処理と比較して、対象中でより少ない副作用を有し得る。
【0113】
アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能する本発明のタンパク質の変種は、本発明のタンパク質の変異体、例えば、短縮変異体のコンビナトリアルライブラリーを、アゴニストまたはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって同定され得る。1つの態様において、変種の多彩なライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって生成され、多彩な遺伝子ライブラリーによってコードされる。変種の多彩なライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることによって産生することができ、その結果、潜在的なタンパク質配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または代替的に、より大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、フェーズディスプレイのために)発現可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドの潜在的な変種のライブラリーを産生するために使用され得る種々の方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該分野において公知である(例えば、Narang (1983) Tetrahedron 39: 3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53: 323; Itakura et al. (1984) Science 198: 1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11: 477を参照されたい)。
【0114】
さらに、本発明のポリペプチドのコード配列の断片のライブラリーは、スクリーニングおよび変種の引き続く選択のために、ポリペプチドの多彩な集団を生成するために使用され得る。例えば、コード配列断片のライブラリーは、関心対象のコード配列の二本鎖PCR断片を、分子あたり約1回のみのニック形成が起こる条件下で、ヌクレアーゼを用いて処理すること、DNAを変性させて、異なるニックを有する生成物からセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成すること、S1ヌクレアーゼを用いる処理によって再形成した二重鎖から一本鎖部分を除去すること、および得られる断片ライブラリーを発現ベクターにライゲートすることによって、生成され得る。この方法によって、関心対象のタンパク質の種々のサイズのN末端断片および内部断片をコードする発現ライブラリーが誘導され得る。
【0115】
点変異または短縮化によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーをスクリーニングするための、いくつかの技術が当技術分野において公知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために、ハイスループット分析に感受性である最も広範に使用されている技術は、典型的には、複製可能な発現ベクターに遺伝子ライブラリーをクローニングすること、得られるライブラリーのベクターで適切な細胞を形質転換すること、および、所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを含む。再帰的アンサンブル変異誘発(REM)は、ライブラリー中の機能的変異の頻度を増強する技術であり、本発明のタンパク質の変種を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Yourvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6 (3): 327-331)。
【0116】
本発明の単離されたポリペプチド、またはその断片は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を使用して、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。全長のポリペプチドまたはタンパク質が使用され、または代替的には、本発明は、免疫原としての使用のための抗原性ペプチド断片を提供する。本発明のタンパク質の抗原性ペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のアミノ酸配列の少なくとも8個(好ましくは、10個、15個、20個、または30個)のアミノ酸残基を含み、およびタンパク質のエピトープを包含し、その結果、ペプチドに対して惹起された抗体は、タンパク質との特異的免疫複合体を形成する。
【0117】
本発明の組成物および方法における使用のための融合タンパク質
本発明の上述の局面および態様の各々において、融合ポリペプチドもまた、本発明で特に企図される。
【0118】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現に対する代替として、本発明の融合ポリペプチドが、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。本発明はまた、本発明の融合ポリペプチドおよび薬学的許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0119】
上記に列挙された方法の各々において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は融合ポリペプチドであってもよく、ここで、この融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質、ならびに哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質に対して相同であるアミノ酸配列を含む。
【0120】
本発明の特定の融合ポリペプチドの中には、例えば、SEQ ID NO:1において以下に示されるα1-抗トリプシンのアミノ酸配列を含む融合タンパク質がある。
【0121】
本発明の融合タンパク質は、異種アミノ酸配列がヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG1定常領域(改変ヒトIgG1定常領域を含む)などを含むようなものであり、ここで、IgG定常領域はFc受容体に結合せず、および/または抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)反応を開始しない。
【0122】
特に、1つの態様において、融合タンパク質は、免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列である異種配列、例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG定常領域を含む。融合タンパク質は、例えば、米国特許第5,714,147号、米国特許第5,116,964号、米国特許第5,514,582号、および米国特許第5,455,165号において開示されるように、例えば、免疫グロブリン定常領域のアミノ末端またはカルボキシ末端と融合された、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの部分を含み得る。本発明のポリペプチドのすべてまたは一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列と融合される態様において、免疫グロブリンのFcR領域は、野生型であってもよいか、または変異してもよいかのいずれかである。特定の態様において、Fc受容体と相互作用せず、およびADCC反応を開始しない免疫グロブリン融合タンパク質を利用することが所望される。このような場合において、融合タンパク質の免疫グロブリン異種配列は、このような反応を阻害するように変異され得る。例えば、米国特許第5,985,279号および国際公開公報第98/06248号を参照されたい。
【0123】
本発明の一部として利用される融合タンパク質の異種アミノ酸配列はまた、融合タンパク質を同定、輸送、または精製するために有用なアミノ酸配列を含んでもよく、例えば、FLAGまたはHisタグ配列を含み得る。融合ポリペプチドは、例えば、融合ポリペプチドのα1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子の誘導体または模倣配列から異種アミノ酸配列を除去するために有用であり得る、タンパク質分解切断部位を含むアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0124】
特に、本発明の融合ポリペプチドの異種アミノ酸配列はまた、融合タンパク質を同定、輸送、または精製するために有用なアミノ酸配列を含んでもよく、例えば、FLAG(例えばHoop, T. P. et al., Bio/Technology 6, 1204-1210 (1988); Prickett, K. S. et al., BioTechniques 7, 580-589 (1989)を参照)またはHisタグ(Van Reeth, T. et al., BioTechniques 25, 898-904 (1998))配列を含み得る。融合タンパク質はさらに、例えば、融合ポリペプチドの哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド配列から異種アミノ酸配列を除去するために有用であり得る、タンパク質分解切断部位を含むアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0125】
なお別の態様において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ様活性阻害因子のポリペプチド融合タンパク質はGST融合タンパク質を含み、ここで、本発明の哺乳動物α1-抗トリプシンおよびセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド、GST配列のC末端に融合される。このような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易にし得る。GST、FLAG、またはHisTag融合構築物が、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド融合タンパク質の構築において利用される態様において、タンパク質分解切断部位は、融合部分および哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの接合部に任意で導入され、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの精製に続いて、融合部分からの哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族の(cognate)認識配列には、例えば、非制限的に、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc.; Smith and Johnson (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, Mass.)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, N. J.)が含まれ、これらは、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAと融合され、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドタンパク質を標的とする。
【0126】
発現ベクターは、原核生物細胞(例えば、大腸菌)または真核生物細胞(例えば、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母細胞、または哺乳動物細胞)において本発明の融合ポリペプチドの発現のために慣行的に設計され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel、前出においてさらに議論されている。代替的には、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写および翻訳され得る。
【0127】
原核生物におけるタンパク質の発現は、最も頻繁には、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターを用いて大腸菌中で実行される。融合ベクターは、そこにコードされたタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に、多数のアミノ酸を加える。このような融合ベクターは、代表的には3つの目的に役立つ:1)組換えタンパク質の発現を増加させる;2)組換えタンパク質の溶解性を増加させる;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製において補助する。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性切断部位は、融合部分および組換えタンパク質の接合部分に導入され、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族の認識配列には、例えば、非制限的に、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。代表的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)が含まれ、これらは、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAと融合され、組換えタンパク質を標的とする。
【0128】
適切な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc (Amann et al., (1988) Gene 69:301-315) およびpET 11d (Studier et al., Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89)が含まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下でT7 gn1遺伝子を有するレジデントプロファージから、宿主株BL21 (DE3)またはHMS174(DE3)によって供給される。
【0129】
大腸菌における組換えタンパク質発現を最大化するための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌中でタンパク質を発現することである(Gottesman, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 119-128)。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌において優先的に利用されるものであるように、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を変化させることである(Wada et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118)。本発明の核酸配列のこのような変化は、標準的なDNA合成技術によって実行され得る。
【0130】
別の態様において、発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSecl (Baldari et al. (1987) EMBO J. 6: 229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al. (1987) Gene 54: 113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)、およびpPicZ (Invitrogen Corp, San Diego, CA)が含まれる。
【0131】
代替として、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。バキュロウイルスベクターは、培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中でのタンパク質の発現のために利用可能であり、これには、pAcシリーズ (Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165) およびpVLシリーズ (Lucklow and Summers (1989) Virology 170: 31-39) が含まれる。
【0132】
なお別の態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8 (Seed (1987) Nature 329: 840) および pMT2PC (Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195) が含まれる。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしば、ウイルス調節エレメントによって供給される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40から誘導される。原核細胞と真核細胞の両方の他の適切な発現系については、Sambrookら(前出)の16章および17章を参照されたい。
【0133】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指向することが可能である(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節エレメントは当技術分野において公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例には以下が含まれる:アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al. (1987) Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton (1988) Adv. Immunol. 43: 235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto and Baltimore (1989) EMBO J. 8: 729-733)および免疫グロブリンのプロモーター(Banerji et al. (1983) Cell 33:729-740; Queen and Baltimore (1983) Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al. (1985) Science 230: 912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、ミルクホエイプロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)。発生的に調節されるプロモーターにはまた、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss (1990) Science 249: 374-379)およびαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman (1989) Genes Dev. 3: 537-546)が含まれる。
【0134】
宿主細胞は任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞)であり得る。
【0135】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を通して原核細胞または真核細胞に導入され得る。本明細書で使用される場合、「形質転換」または「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞に外来性核酸を導入するための当技術分野で認識されている種々の技術を指すことを企図し、これには、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(前出)および他の実験室マニュアルにおいて見い出すことができる。
【0136】
本発明の方法を使用するミコバクテリア疾患および炭疽を治療するための組合せ療法
本発明の上述の局面および態様の各々において、上記に列挙した以外の組合せ療法もまた、本発明において特に企図される。特に、本発明の組成物は、1種またはそれ以上の、マクロライド系または非マクロライド系抗生物質、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および駆虫剤、抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤とともに投与されてもよい。
【0137】
本発明の組成物と組み合わせて使用されうるマクロライド系抗生物質の例には、とりわけ、以下の合成、半合成、または天然のマクロライド系抗生物質化合物が含まれる:メチマイシン(methymycin)、ネオメチマイシン(neomethymycin)、YC-17、リトリン、エリスロマイシンA〜F、オレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシン(dirithromycin)、フルリスロマイシン(flurithromycin)、クラリスロマイシン、ダベルシン(davercin)、アジスロマイシン、ジョサマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロキタマイシン、ミオカマイシン、ランカシジン(lankacidin)、およびこれらの化合物の誘導体。エリスロマイシンおよびエリスロマイシンから誘導された化合物は、「マクロライド」として知られる抗生物質の一般的クラスに属する。好ましいエリスロマイシンおよびエリスロマイシン様化合物の例には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびトロレアンドマイシンが含まれる。
【0138】
本発明の方法における使用のために適切である、上記のマクロライド系抗生物質以外のさらなる抗生物質には、例えば、生物を予防、阻害、または破壊する傾向がある任意の分子が含まれ、そしてこのようなものとして、本明細書で使用される場合、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および駆虫剤が含まれる。これらの薬剤は、その薬剤を産生する生物から単離することができ、商業的な供給源(例えば、Eli Lilly, Indianapolis, Ind.; Sigma, St. Louis, Mo.などの製薬会社)から入手することができる。
【0139】
例えば、抗TB抗生物質イソニアジド(イソニコチン酸ヒドラジド)はしばしば有効であるが、重篤な、時折致死的な肝炎を引き起こすことがある。肝炎のリスクは、患者の年齢とともに増加する。さらに、イソニアジドは、あるレシピエントにおいては、用量依存的な様式で、末梢性ニューロパシーを引き起こす。リファンピンは、TBを治療するために使用される別の抗生物質であり、イソニアジドなどの別の薬物と組み合わせて使用する必要がある。リファンピンに伴うこの組合せ療法の必要性は、肺TBの初期治療ならびに再治療に当てはまる。
【0140】
通常、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、およびエチオナミドは経口的に与えられる。ストレプトマイシンは、典型的には筋肉内に与えられる。アミカシンは筋肉内または静脈内に与えられる。ハンセン病を治療するためにもまた使用されるクロファジミンは、経口的に与えられる。
【0141】
アミカシンは、カナマイシンAから誘導された半合成アミノグリコシド抗生物質である。その調製のためには、米国特許第3,781,268号を参照されたい。総説については、Kerridge, Pharmacological and Biochemical Properties of Drug Substances 1: 125-153, M. E. Goldberg, ed. (1977) を参照されたい。アミカシンは、通常、筋肉内または静脈内に投与される。臨床薬理、適応症、副作用、および投薬量を含むさらなる情報については、Physicians Desk Reference, 42 ed. (1988) の744-746頁(本明細書中以下、PDR)を参照されたい。
【0142】
クロファジミンは、LAMPRENE(登録商標)としてもまた知られる抗菌剤である。その調製については、Barry, et al., Nature 179: 1013 (1957)を参照されたい。総説については、Karat, et al., Brit. Med. J. 3: 175 (1971)を参照されたい。クロファジミンは、一般的に経口的に与えられる。臨床薬理、注意点、および投薬量を含むさらなる情報については、PDRの982頁を参照されたい。
【0143】
エチオナミドは、AMIDAZINE(登録商標)およびTRECATOR(登録商標)としてもまた知られる抗菌剤である。英国特許第800,250号を参照されたい。この薬物は、典型的には経口的に与えられる。注意点および投薬量を含むさらなる情報については、PDRの2310頁を参照されたい。
【0144】
シプロフロキサシンは、経口使用のための広範なスペクトルの抗菌剤である。これはまた、CIPRO(登録商標)としてもまた知られる。これは、典型的には、通常、24時間以内に2回の等しい用量で与えられ、1日の総用量としては500〜1,000ミリグラムで与えられる。さらなる情報については、PDR(1989)1441〜1443頁を参照されたい。このフルオロキノロンのクラスに属する抗生物質の他のメンバーには、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロベオフロキサシン(troveofloxacin)、ペフロキサシン(pefloxacin)、ガチフロキサシン、およびモキシフロキサシン(moxifloxacin)が含まれる。
【0145】
抗微生物抗生物質薬剤の他の例には、ペニシリン、セファロスポリン、カルバセフェム、セファマイシン、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、グリコペプチド、キノロン、テトラサイクリン、マクロライド、オキサゾリジノンおよびフルオロキノロンが含まれるがこれらに限定されない。抗生物質薬剤の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:ペニシリンG (CAS登録番号:61-33-6);メチシリン (CAS登録番号:61-32-5);ナフシリン (CAS登録番号:147-52-4);オキサシリン (CAS登録番号:66-79-5);クロキサシリン (CAS登録番号:61-72-3);ジクロキサシリン (CAS登録番号:3116-76-5);アンピシリン (CAS登録番号:69-53-4);アモキシシリン (CAS登録番号:26787-78-0);チカルシリン (CAS登録番号:34787-01-4);カルベニシリン (CAS登録番号:4697-36-3);メズロシリン (CAS登録番号:51481-65-3);アゾシリン(Azlocillin) (CAS登録番号:37091-66-0);ピペラシリン (CAS登録番号:61477-96-1);イミペネム (CAS登録番号:74431-23-5);アズトレオナム (CAS登録番号:78110-38-0);セファロチン (CAS登録番号:153-61-7);セファゾリン (CAS登録番号;25953-19-9);セファクロル (CAS登録番号:70356-03-5);セファマンドールホルメートナトリウム (CAS登録番号:42540-40-9);セフォキシチン (CAS登録番号:35607-66-0);セフロキシム (CAS登録番号:55268-75-2);セフォニシド (CAS登録番号:61270-58-4);セフメタゾール (CAS登録番号:56796-20-4);セフォテタン (CAS登録番号:69712-56-7);セフプロジル (CAS 登録番号:92665-29-7);ロラカブベフ (CAS登録番号:121961-22-6);セフェタメット(Cefetamet) (CAS登録番号:65052-63-3);セフォペラゾン (CAS登録番号:62893-19-0);セフォタキシム (CAS 登録番号.:63527-52-6);セフチゾキシム (CAS登録番号:68401-81-0);セフトリアキソン (CA 登録番号:73384-59-5);セフタジジム (CAS登録番号:72558-82-8);セフェピム (CAS 登録番号:88040-23-7);セフィキシム (CAS登録番号:79350-37-1);セフポドキシム (CAS登録番号:80210-62-4);セフスロジン (CAS登録番号:62587-73-9);フレロキサシン (CAS登録番号:79660-72-3);ナリジクス酸 (CAS登録番号:389-08-2);ノルフロキサシン (CAS登録番号:70458-96-7);シプロフロキサシン (CAS登録番号:85721-33-1);オフロキサシン (CAS 登録番号:82419-36-1);エノキサシン (CAS登録番号:74011-58-8);ロメフロキサシン (CAS登録番号:98079-51-7);シノキサシン (CAS登録番号:28657-80-9);ドキシサイクリン (CAS登録番号:564-25-0);ミノサイクリン (CAS登録番号:10118-90-8);テトラサイクリン (CAS登録番号:60-54-8);アミカシン (CAS登録番号:37517-28-5);ゲンタマイシン (CAS登録番号:1403-66-3);カナマイシン (CAS登録番号:8063-07-8);ネチルマイシン (CAS登録番号:56391-56-1);トブラマイシン (CAS登録番号:32986-56-4);ストレプトマイシン (CAS登録番号:57-92-1);アジスロマイシン (CAS登録番号:83905-01-5);クラリスロマイシン (CAS登録番号:81103-11-9);エリスロマイシン (CAS登録番号:114-07-8);エリスロマイシンエストレート (CAS登録番号:3521-62-8);エリスロマイシンエチルスクシネート (CAS登録番号:41342-53-4);エリスロマイシングルコヘプトネート (CAS登録番号:23067-13-2);エリスロマイシンラクトビオネート (CAS登録番号:3847-29-8);エリスロマイシンステアレート (CAS登録番号:643-22-1);バンコマイシン (CAS登録番号:1404-90-6);テイコプラニン (CAS登録番号:61036-64-4);クロラムフェニコール (CAS登録番号:56-75-7);クリンダマイシン (CAS登録番号:18323-44-9);トリメトプリム (CAS登録番号:738-70-5);スルファメトキサゾール (CAS登録番号:723-46-6);ニトロフラントイン (CAS登録番号:67-20-9);リファンピン (CAS登録番号:13292-46-1);ムピロシン (CAS登録番号:12650-69-0);メトロニダゾール (CAS登録番号:443-48-1);セファレキシン (CAS登録番号:15686-71-2);ロキシスロマイシン (CAS登録番号:80214-83-1);コ-アモキシクラブアネート(Co-amoxiclavuanate);ピペラシリンとタゾバクタム(Tazobactam)の組合せ;およびそれらの種々の塩、酸、塩基、および他の誘導体。
【0146】
抗真菌剤には、カスポファンギン、テルビナフィン塩酸塩、ナイスタチン、アムホテリシンB、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール、安息香酸、サリチル酸、および硫化セレンが含まれるがこれらに限定されない。
【0147】
抗ウイルス剤には、バルガンシクロビル、アマンタジン塩酸塩、リマンタジン、アシクロビル、ファムシクロビル、フォスカーネット、ガンシクロビルナトリウム、イドクスウリジン、リバビリン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、インターフェロンα、およびエドクスジン(edoxudine)が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
駆虫剤には、ピレトリン/ピペロニルブトキシド、ペルメトリン、ヨードキノール、メトロニダゾール、ジエチルカルバマジンシトレート、ピペラジン、ピランテルパモエート、メベンダゾール、チアベンダゾール、プラジカンテル、アルベンダゾール、プログアニル、キニジングルコン酸注射、硫酸キニーネ、リン酸クロロキン、塩酸メフロキン、リン酸プリマキン、アトバクオン、コ-トリモキサゾール(スルファメトキサゾール/トリメトプリム)、およびペンタミジンイセチオネートが含まれるがこれらに限定されない。
【0149】
別の局面では、本発明の方法において、例えば、治療有効量の1種またはそれ以上の抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤の投与によって、本発明の組成物を補充してもよい。「免疫調節用の薬物または薬剤」によって、これは、例えば、免疫系における細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、もしくは抗原提示細胞(APC))の細胞活性を刺激もしくは抑制することによって、または免疫系の外側の成分に作用することによって、例えば、直接的または間接的に、免疫系に作用する薬剤を意味する。これは、次には、免疫系を刺激、抑制、または調節する、例えば、ホルモン、受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、および神経伝達物質である;免疫調節剤は、例えば、免疫抑制剤または免疫刺激剤であり得る。「抗炎症性薬物」によって、例えば、炎症性応答、すなわち、損傷に対する組織応答を処置する薬剤、例えば、免疫系、血管系、またはリンパ系を処置する薬剤を意味する。
【0150】
本発明における使用のための適切な抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤には、以下が含まれるがこれらに限定されない:インターフェロン誘導体(例えば、ベータセロン、β-インターフェロン);プロスタン誘導体(例えば、PCT/DE93/0013に開示されている化合物、例えば、イロプロスト、シカプロスト);グルココルチコイド(例えば、コルチゾル、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン);免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート);リポキシゲナーゼ阻害因子(例えば、ジレウトン、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、DE 40091171、ドイツ国特許出願第P 42 42 390.2号;国際公開公報第9201675号;SC-41930; SC-50605; SC-51146; LY 255283 (D. K. Herron et al., FASEB J. 2: Abstr. 4729, 1988);LY 223982 (D. M. Gapinski et al. J. Med. Chem. 33: 2798-2813, 1990)に開示される化合物);U-75302およびその誘導体(例えば、 J. Morris et al., Tetrahedron Lett. 29: 143-146, 1988, C. E. Burgos et al., Tetrahedron Lett. 30: 5081-5084, 1989;B. M. Taylor et al., Prostaglandins 42: 211-224, 1991に記載されているもの);米国特許第5,019,573号に開示される化合物;ONO-LB-457およびアナログ(例えば、K. Kishikawa et al., Adv. Prostagl. Thombox. Leukotriene Res. 21: 407-410, 1990;M. Konno et al., Adv. Prostagl. Thrombox.Leukotriene Res. 21: 411-414, 1990に記載されるもの); WF-11605およびアナログ(例えば、米国特許第4,963,583号に開示されるもの); 国際公開公報第9118601号、国際公開公報第9118879号; 国際公開公報第9118880号、国際公開公報第9118883号に開示される化合物、抗炎症性物質(例えば、L. Noronha-Blab. et al., Gastroenterology 102 (Suppl.):A 672, 1992によって記載されたNPC 16570、NPC 17923;R. M. Burch et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88: 355-359, 1991;S. Pou et al., Biochem. Pharmacol. 45: 2123-2127, 1993によって記載されたNPC 15669およびアナログ);ペプチド誘導体(例えば、ACTHおよびそのアナログ);可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体。
【0151】
本発明の治療剤は、動物の対象または患者、およびより詳細には、ヒトを含む哺乳動物、ならびに、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット、および齧歯類などの哺乳動物の処置のために使用することができる。
【0152】
投与の様式
本発明において使用される種々の治療剤の投与の様式は以下に例示される。しかし、その薬剤は、種々の経路のいずれかによって送達することができ、これには、注射(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内)、連続的静脈内注入、皮膚性(cutaneously)、経皮(dermally)、経皮(transdermally)、経口(例えば、錠剤、丸薬、液剤)、移植した浸透圧ポンプ(例えば、Alza Corp.)、坐剤、またはエアロゾルスプレーによるものを含む。
【0153】
ペプチドベースのセリンプロテアーゼ阻害因子は、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85, p 2149 (1963)によってもともと記載されたような任意の適切な合成方法によって調製されてもよい。セリンプロテアーゼに対して阻害活性を示す合成ペプチドおよびこれを調製および使用するための方法は、例えば、Gloverへの米国特許第4,829,052号、第5,157,019号;Millerへの米国特許第5,420,110号;Katunumaへの米国特許4,963,654号(参照として本明細書に組み入れられる)において開示されている。
【0154】
生化学的合成の分野における当業者は、商業的スケールの量のペプチドのためには、このようなペプチドが、組換えDNA技術、合成技術、または生物学的もしくは化学的に合成されたペプチドの化学的誘導体化を使用して好ましく調製されることを認識するものと思われる。
【0155】
本発明の化合物は、過度のセリンプロテアーゼ活性によって、全体的または部分的に引き起こされる生理学的な(とりわけ病理学的な)状態の治療において治療薬剤として使用される。本発明のペプチドは、遊離のペプチドとして、または薬学的に許容されるその塩として投与されてもよい。本明細書において使用される用語は、Budavari, Susan (編),「The Merck Index」An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals; Merck & Co., Inc.において見い出されるものに従っている。「薬学的に許容される塩」という用語は、ペプチドの治療特性(例えば、効力、毒性など)に有意なまたは有害な影響を与えないペプチドの酸付加塩または金属錯体を指す。本発明のペプチドは、薬学的組成物として個体に投与されるべきであり、これは、多くの場合において、薬学的に許容される担体とともに、ペプチドおよび/または薬学的な塩を含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、固体および液体の担体を指し、これは、治療特性に有意なまたは有害な影響を与えない。
【0156】
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、個体、特にヒトに対して、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻的、経口的、局所的、経皮的、非経口的、胃腸に、経気管的、および経肺胞的のいずれかで投与されうる。局所的投与は、セリンプロテアーゼ阻害因子の治療有効量を含む、局所的に投与されるクリーム、ゲル、リンスなどを通して達成される。経皮投与は、セリンプロテアーゼ阻害因子が皮膚を透過し、かつ血流に入ることを可能にするクリーム、リンス、ゲルなどの適用によって達成される。投与の非経口的経路には、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下への注射などの直接注射が含まれるがこれらに限定されない。投与の胃腸経路には、摂取および直腸が含まれるがこれらに限定されない。経気管的および経肺胞的な投与の経路には、口を通してまたは経鼻的にのいずれかでの吸入、および気道への直接注射、例えば、気管切開術、気管開口術、気管内チューブ、または定量吸入器もしくは連続吸入器が含まれるがこれらに限定されない。さらに、浸透圧ポンプが投与のために使用されてもよい。必要な投薬量は、治療される特定の状態、投与の方法、および身体からの分子のクリアランスの速度によって変化する。
【0157】
本明細書に記載される化合物および/またはそれらの誘導体は純粋な化学物質として投与してもよいが、薬学的組成物として活性成分を提示することが好ましい。従って、本発明は、1種またはそれ以上の化合物および/またはその薬学的に許容される塩を、1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体、および従って、任意に、他の治療的および/または予防的な成分と一緒に含む薬学的組成物をさらに提供する。担体は、組成物の他の成分と適合可能であり、かつそのレシピエントに対して有害ではないという意味において許容されなければならない。
【0158】
薬学的組成物は、経口的または非経口的な(筋肉内、皮下、皮膚、吸入、および静脈内を含む)投与のために適切なものを含む。組成物は、適切な場合、別々の単位投薬形態で都合よく提示してもよく、薬学の分野において周知である方法のいずれかによって調製してもよい。このような方法は、活性化合物を、液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微細に分割した固体担体、またはこれらの組合せと接触させる段階を含み、次いで、必要であれば、所望の送達系にその生成物を成形する段階を含む。
【0159】
経口投与のために適切な薬学的組成物は、硬質または軟質のゼラチンカプセル、カシェ剤、または錠剤などの別々の単位投薬形態として提示してもよく、各々が、粉末または顆粒または溶液または懸濁物または乳化物としての所定量の活性成分を含む。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提示してもよい。経口投与のための錠剤およびカプセルは、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤などの従来の賦形剤を含んでもよい。錠剤は、当技術分野において周知である方法に従って、例えば、腸溶コーティングでコートしてもよい。
【0160】
経口液体調製物は、例えば、水性または油性の懸濁物、溶液、乳化物、シロップ、またはエリキシルの形態であってもよく、または使用前の水もしくは別の適切なビヒクルを用いる再構成のための乾燥生成物として提示してもよい。このような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(これは可食性オイルを含んでもよい)、または保存剤などの従来の付加物を含んでもよい。本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入による)のために製剤化してもよく、アンプル、前充填シリンジ、小さなボーラス注射注入容器、または保存剤が加えられた複数用量容器中に単位用量形態で提示されてもよい。本発明の組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁物、溶液、または乳化物のような形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方製剤を含んでもよい。代替として、活性成分は、適切なビヒクル、例えば、滅菌した発熱物質含有水との再構成のために、滅菌固体の無菌的単離による、または溶液からの凍結乾燥による、粉末形態であってもよい。
【0161】
表皮への局所的投与のために、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、もしくはローションとして、または経皮パッチの活性成分として製剤化してもよい。適切な経皮送達系は、例えば、Fisherら(米国特許第4,788,603号) または Bawasら(米国特許第4,931,279号、第4,668,504号および第4,713,224号)に記載されている。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性の基剤を用いて、適切な増粘剤および/またはゲル化剤の添加を伴って、製剤化してもよい。ローションは、水性または油性の基剤を用いて製剤化してもよく、一般的には、1種またはそれ以上の、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色料を含む。活性成分はまた、例えば、米国特許第4,140,122号、第4,383,529号、または第4,051,842号において開示されるように、イオン導入を介して送達してもよい。少なくとも2つの放出の型が、これらの系において可能である。マトリックスが多孔性でない場合には、分散による放出が起こる。薬学的に効果的な化合物は、マトリックスそれ自体に溶解し、そこを通して拡散する。薬学的に効果的な化合物がマトリックスの細孔中の液相を通して輸送される場合には、微小細孔の流れによる放出が起こる。
【0162】
口中での局所的投与のために適切な組成物は、芳香を有する基剤(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含むトローチ;粘膜付着ゲル、および適切な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュなどの単位投薬形態を含む。
【0163】
所望の場合、上記の組成物は、例えば、特定の親水性ポリマーマトリックス(例えば、天然のゲル、合成ポリマーゲル、またはその混合物を含む)とのその組合せによって、利用される活性成分の持続性放出を提供するように適合させてもよい。
【0164】
本発明に従う薬学的組成物はまた、香料、着色料、抗微生物剤、または保存料などの他のアジュバントを含んでもよい。
【0165】
治療における使用のために必要である化合物、または活性塩またはその誘導体の量は、選択された特定の塩によってのみならず、投与の経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、かつ担当医の方針で最終的に選択されることがさらに理解される。
【0166】
本発明の薬学的組成物は、上に定義されたような適切な薬学的に許容される担体を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、持続放出製剤などの形態を取り得る。適切な薬学的担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1990, pp. 1519-1675, Gennaro, A. R., ed., Mack Publishing Company, Easton, Paに記載されている。本発明のセリンプロテアーゼ阻害因子の分子は、リポソームまたはポリマー中に投与してもよい(Langer, R. Nature 1998, 392, 5を参照されたい)。このような組成物は、対象への正確な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と一緒に、治療有効量の活性化合物を含む。
【0167】
一般的に、本発明の化合物は、例えば、単位投薬形態あたり5〜2000mg、都合よくは10〜1000mg、最も都合よくは50〜500mgの活性成分を含む単位投薬形態で都合よく投与される。
【0168】
所望される血液レベルは、約0.01〜5.0mg/kg/hrを提供する連続的注入によって、または約0.4〜20mg/kgの活性成分を含む断続的注入によって維持され得る。緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などが必要に応じて組み込まれ得る。
【0169】
所望される用量は、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量で、例えば、1日あたり2回、3回、4回、またはそれ以上のサブ用量(sub-dose)で便利に提示することができる。サブ用量それ自体を、例えば、別々の厳密でない間隔の投与、例えば、吸入器からの複数回の吸入、または眼への複数回の点眼の適用に、さらに分割してもよい。
【0170】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、および投与の様式に対する所望の治療的応答を達成するために有効である、活性化合物の量を得るために変化させてもよい。選択される投薬量レベルは、本発明の特定の薬学的化合物またはそのアナログの活性、投与の経路、治療される状態の重篤度、ならびに治療される患者の状態および以前の病歴に依存する。しかし、所望の治療効果を達成するために必要であるよりも低いレベルの薬学的化合物の用量で開始すること、および所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、当業者の範囲内である。
【0171】
本発明の薬学的組成物は、獣医薬とヒト治療の両方において使用され得る。上記に言及した疾患または徴候に関連する痛みの短期的または長期的な管理における本発明の薬学的組成物の予防または治療用量の規模は、治療される状態の重篤度および投与の経路によって変化する。用量、およびおそらく用量の頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、および応答に従って変化する。一般的に、本発明の薬学的組成物の1日の総用量範囲は、一般的に約1〜約100mg、好ましくは約1〜約20mg、より好ましくは、約1〜約10mgの活性化合物/体重kg/日の間であり、哺乳動物患者に投与される。所望の場合、効果的な1日の用量を、投与の目的のために複数の用量、例えば、1日あたり2〜4回の別々の用量に分割してもよい。
【0172】
代替として、本発明の活性成分の1日の総用量は、プロテアーゼ阻害因子の血清濃度を10〜100μM増加させるために十分であるべきである。
【0173】
このような特定の範囲の列挙によって、言及した範囲は、列挙した範囲の間のすべての用量範囲の量を含むことが本明細書で意図される。例えば、約1から100の間での範囲では、これは、各々の特定の範囲を実際に列挙することなく、2〜99、3〜98などを含むことを意図する。活性成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびに投与の方法に従って、各場合によって異なる。
【0174】
これらの範囲内の用量は、明確には言及しないが、例えば、30mg、50mg、75mgなどが、言及した範囲の境界のわずかに外側の量であるときに、言及した範囲に含まれることもまた理解される。
【0175】
活性成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびに投与の方法に従って、各場合によって異なる。
【0176】
一般的に、本発明の薬学的組成物は、治療される特定の疾患の症状を改善するために必要である個々の患者に定期的に投与される。組成物が投与される時間の長さ、および全体の投薬量は、必然的に、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびにこのような治療を受ける対象または患者の身体の状態に従って、各場合によって変化する。
【0177】
小児、65歳以上の患者、および腎臓または肝臓の機能が損なわれている患者には、最初に低用量を与えること、そして彼らには、次に個々の応答または血液レベルに基づいて力価測定を行うことがさらに推奨される。ある場合においては、当業者には明らかであるように、これらの範囲の外側の投薬量を使用することが必要であるかもしれない。さらに、臨床医または治療を行う内科医は、慣行的な実験のみを用い、個々の患者の応答と関連して、治療を、どのように、および、いつ、中断、調節、または終了するかを知るであろう。
【0178】
本発明の化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性、および動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウスおよび他の動物における有効な投薬量のヒトへの外挿のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0179】
実施例
本発明を実施する種々の局面において読み手を良好に補助するために以下の特定の実施例を提供する。これらの特定の実施例は単に例示であるため、以下の記載中の何ものも、いかなる場合において本発明を限定するものと見なすべきではない。そのような限定は、当然、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0180】
実施例1
ヒト単球由来マクロファージのトリ型結核複合菌(Mac)感染に対するα1-抗トリプシンの効果
1.TBまたはMAC生物を、1 Mcfarland標準の濃度に懸濁した。1 McFarlandは、標準的アリコートの濁度と一致する、液体中に懸濁した生物の濁度として定義される。1 McFarland標準の濁度と等価である試料の濁度は107桿菌/mlを表す。試験培養の最適期間は、Middlebrook 7H9ブロス(=ミコバクテリア培地)中で増殖した桿菌について約10〜12日間である。
【0181】
2.細胞の感染。感染させた細胞は、ヒト単球由来マクロファージ(MDM)であった。MDMは、フィコール-ハイパーククッション上のヘパリン添加血液を遠心分離することによって健常ボランティアから得たヒト末梢血単球細胞(PBMC)から単離した。単離されたPBMCを、ポリスチレン組織培養プレートにアリコートとし、かつ単球を2時間接着させた(0.5×106PBMCを各ウェルに加え、その約10〜20%が単球である)。実験を、ウェルの底の滅菌円形ガラスカバースリップを伴う、または伴わないプレート中で実行した(下記a.を参照されたい)。PBMC中の単球集団のみがこれらの条件下でプレートに接着する。次いで、ウェルを洗浄し(非接着リンパ球を除去するため)、かつ新鮮な培地中で10〜12日間インキュベートした(培地=RPMI+10%ウシ胎仔血清+100単位/mlペニシリンG)。これは、単球のマクロファージへの成熟を可能にする。各ウェル中の培地の体積は1.0mlであった。次いで、培地をMDMの各ウェルから除去し、ウェルに、培地のみ(対照)、AAT、またはala-ala-pro-val-クロロメチルケトン(AAT様合成セリンプロテアーゼ阻害因子)(Bachm, Inc.)のいずれかを補充し、かつウェルを3.0時間インキュベートした。次いで、各ウェル中のMDMをMAC(トリ型結核菌9141株)またはTB(H37RV株)で、ミコバクテリア桿菌/細胞比を1×106として感染させた。1.0時間のインキュベート(MDM表面にミコバクテリアが結合することを可能にするため)の後、上清を除去し、サイトカインアッセイのために保存した。次いで、ウェルをRPMIおよび生理食塩水の1:1溶液により2回洗浄した。[0001]次いで、2種類の独立したアッセイを、ヒト単球由来マクロファージへのミコバクテリアの感染を定量するために使用した。
【0182】
a.直接的観察および各ウェルにおける感染細胞の数の計数
これらの実験のために、ミコバクテリア感染MDMを、ウェルの底部に挿入された滅菌円形ガラスカバースリップを有するポリスチレン組織培養プレートのウェル中で培養した。MDMは、元々これらのカバースリップ上で播種されたので、MDMはカバースリップ表面に接着する。MACまたはTBとのインキュベーション後、ウェルを2回洗浄し(上記と同様)、次いで、グルタルアルデヒドを使用して1時間固定した。次いで、ミコバクテリアを、ミコバクテリア染色(Zeihl-Nielsson)を使用して、細胞を損傷することなく染色した。感染した細胞の数を視覚的に定量し、データを各ウェル中のMDMの総数のパーセントとして表現した。
【0183】
b.コロニー計数
感染細胞を2回洗浄した後(上記を参照されたい)、カバースリップを含まない並列したウェル中の細胞を、ウェルあたり1.0mlの溶解緩衝液を使用して、5.0分間溶解した(0.25% sDKF溶解緩衝液)。
【0184】
感染MDMを溶解した後(上記を参照されたい)、溶解物を1.0mlの7H9培地で1:1に希釈した。ミコバクテリア懸濁物を、1%(体積/体積)7H9培地および滅菌水に1:10ずつ段階的に希釈した。希釈したミコバクテリア懸濁物をボルテックスし、次いで、各アリコートからの0.5mlの懸濁物をミコバクテリア培地(固形7H9培地)にプレーティングした。次いで、このミコバクテリア含有液を培養した。このプレートを、MACについては10〜12日間、および結核菌については21〜24日間インキュベートし、ミコバクテリアコロニーの数を計数した。
【0185】
結果:
結核菌
直接観察データ
aヒト型結核菌に感染した細胞のパーセント
【0186】
コロニー計数データ
別の実験において、本発明者らは、細胞結合TBを培養し、阻害性AAT効果を独立して確認した。mlあたりのTB計数は、対照MDM培養においては1.6×105/mlであり、AAT曝露培養においては0.57×105/mlであり、かつAATの存在に起因して64%の阻害効果であった。
【0187】
トリ型結核複合菌
本発明者らは、トリ型結核複合菌(MAC)として公知の関連するミコバクテリア生物を使用した。MACは、AIDS患者において感染疾患の主要な原因であるので重要である。これはまた、この感染に罹患する通常のヒトにおいても困難な問題である;これは、治療が非常に困難であり、かつ現在の抗微生物薬物を用いる治療が不可能であることもある。AATまたはAAT様分子を使用することは、これらの感染における治療の新規な手段を表し得る。
【0188】
直接観察データ
aヒト型結核菌に感染した細胞のパーセント
【0189】
コロニー計数データ
図1は、AATがMACによるMDMの感染を有意にブロックすることを実証した4回の別々の実験の結果を示し、平均の効果は約55%阻害である。これらの実験は、上記と同様に行った。AAT模倣物とは、ala-ala-pro-val-クロロメチルケトン(AAT様合成セリンプロテアーゼ阻害因子)(供給業者:Bachem)を指す。このAAT模倣物の結果は、独立した種を使用するAATデータを確認し、かつミコバクテリア感染を治療するためのセリンプロテアーゼ阻害の概念が、魅力的な薬物候補を作製する低分子阻害因子にまで拡張される証拠を提供する。
【0190】
上述と同一の培養物において、本発明者らは、炎症誘発性サイトカインTNFαの濃度を測定した。図2および図3に示されるように、AATおよびAAT模倣物は双方とも、MDM培養物中のTNFαの産生を100%まで有意に阻害した。炎症誘発性サイトカイン産生のブロックは、セリンプロテアーゼ阻害因子がTBおよびMACによる感染をブロックするさらなるメカニズムを表す可能性がある。
【0191】
実施例2
MAC感染における臨床研究
MACを使用する上記のインビトロのデータは、臨床研究により補充されている。この臨床的検査において、AAT表現型(AATタンパク質の代替型)を、MACでの肺感染が記録された患者、および肺疾患を有する患者において評価した。これらの患者は、肺疾患である気管支拡張症を有する対照群と比較した(肺疾患単独の存在がMAC感染の存在を説明しないことを示すため)。
この表において、対照(気管支拡張症)群については、異常なAAT分子を有する患者の割合が5.3%であることに注意されたい。これは、その割合が27.7%であるMAC感染群における症例と顕著な対比をなし、5.2倍の増加である。MAC感染患者は、対照群と比べ、異常型AATを含有する可能性が5.2倍である可能性を有する。このことは、異常なAAT分子とMACでの感染との間の臨床的連関を確立する。従って、本発明者らが発見した正常なAATの阻害的役割は患者において裏付けられる。
【0192】
実施例3
ヒト全血における刺激されたインターロイキン1β産生に対するα1-抗トリプシンの効果
設計:
21ゲージ針を使用して3名の健常ボランティアにおいて静脈穿刺を実行し、静脈血をヘパリン添加チューブに吸引した。次いで、血液を6ミリリットルポリプロピレンチューブにアリコートとし、かつ滅菌RPMI組織培養培地単独で1:4希釈し(対照)、刺激(ブドウ球菌)として1:1000の最終濃度の熱不活化表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を含む培地中で1:4希釈し、または表皮ブドウ球菌およびα1-抗トリプシン(AAT、Aralast(登録商標)、Baxterより)を含むチューブに入れた。次いで、すべての培養物を、37℃/5% CO2で24時間インキュベートした。インキュベーション後、試料を1,500gで遠心分離し、上清を収集した。サイトカインタンパク質を定量するのに有効な電気化学発光装置を使用して、上清をインターロイキン1β濃度についてアッセイした。
【0193】
結果:
データは、平均±SEMインターロイキン1β産生として提示され、その値を縦軸上に示す。示されるように、AATは、ブドウ球菌で刺激されたインターロイキン1β産生を用量依存的に有意に阻害し、その阻害は、試験されたすべての濃度で観察された(図5を参照されたい)。
【0194】
考察:
本明細書において、本発明者らは、AATが炎症誘発性サイトカイン産生の例としてIL-1β産生をブロックすることを初めて示した。IL-1βは、炭疽疾患の症状および/または顕在化の発生のために重要である。本実施例において提示された結果は、活性毒素の産生をブロックすることによって炭疽を治癒するための治療薬剤としてAATが使用され得る、すでに提案されたメカニズムを支持する。
【0195】
実施例4
外来患者の肺炎においてはグラム陽性生物が優勢であり、一方で集中治療室(ICU)ではグラム陰性肺炎が偏って発生することが知られている。
【0196】
肺炎の病因は、コロニー形成、それに続く微小な吸引に関わる。ICUにおけるヒトは、グラム陰性桿菌をコロニー形成する。したがって、ICUにおいて患者のみがグラム陰性桿菌をコロニー形成することが医師には明らかである。プロセシングされたフィブロネクチンは、グラム陰性桿菌のインビボにおける重要な受容体である。
【0197】
グラム陰性肺炎を有する患者を治療する1つの手段は、グラム陰性桿菌のコロニー形成をブロックすることである。例えば、健常者では、プロセシングされていないフィブロネクチンはグラム陰性細菌の受容体ではない。病気の間、セリンプロテアーゼの分泌が豊富になる。セリンプロテアーゼはフィブロネクチンをプロセシング(タンパク質分解)する。プロセシングされたフィブロネクチンは、グラム陰性細菌の受容体である。このことがコロニー形成を生じる。α1-抗トリプシンまたは本願において開示されるような任意のその機能的誘導体のようなセリンプロテアーゼ阻害因子の使用は、グラム陰性桿菌のコロニー形成をブロックし、したがってグラム陰性肺炎を治療するために当業者によって使用可能である。従って、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、グラム陰性桿菌による上皮のコロニー形成をブロックするために、局所的製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。本発明の組成物を使用して治療できるグラム陰性桿菌の非限定的な例を提供する刊行物の代表的な例は、Charlotte L. Barey-Morel et al. The Journal of Infectious Diseases Vl 155, No. 4 (1987); W. G. Johanson et al. Annals of Internal Medicine 77: 701-706 (1972); W. G. Johanson et al. The New England Journal of Medicine Vol 281 No. 21 (1969); James J. Rahal et al. JAMA Vol. 214 No. 4 (1970)において見い出すことができ、これらの各々のテキスト全体は参照として本明細書に組み入れられる。
【0198】
類似の様式で、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、グラム陽性生物によって引き起こされる細菌感染を治療するために、局所用製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。
【0199】
同様に、類似の様式で、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、ミコバクテリアによって引き起こされる細菌感染を治療するために、局所用製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。非定型ミコバクテリアに対する作用の提案されたメカニズムについては、上記の実施例1および2を参照されたい。
【0200】
本願を通して、種々の刊行物および特許が引用される。本発明が属する技術分野の状況をより十分に記載するために、これらの刊行物および特許の開示全体は参照として本明細書に組み入れられる。
【0201】
本発明は、その特定の態様と関連して記載されているが、さらなる変更が可能であることが理解され、かつ本願が、一般的に本発明の原理に従い、かつ本発明が属する当技術分野の公知または通例の実施の範囲内にあり、かつ本明細書上記に記載した本質的な特徴に適用することができ、かつ添付の特許請求の範囲にあるような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適合を網羅することを意図することが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】ヒト単球由来マクロファージのトリ型結核複合菌(mac)感染に対するα1-抗トリプシン(AAT)およびAAT模倣物の効果を図示する(n=4)。
【図2】ヒト単球由来マクロファージにおけるトリ型結核複合菌(mac)誘導性TNFαに対するα1-抗トリプシン(AAT)およびAAT模倣物の効果を図示する。
【図3】ヒト単球由来マクロファージにおけるトリ型結核複合菌(mac)誘導性TNFαに対するα1-抗トリプシン(AAT)およびaat模倣物の効果:時間経過実験を図示する(n=1)。
【図4】図4A〜4Hは、炭疽桿菌の毒素のメカニズムおよびセリンプロテアーゼ阻害因子が毒素を中和する方法を図示する。
【図5】ヒト全血における刺激されたインターロイキン1β産生に対するα1-抗トリプシンの効果を図示する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、および抗酸菌、具体的に、結核菌(TB)、トリ型結核複合菌(mycobacterium avium complex)(MAC)、および炭疽菌の阻害のための組成物および方法、ならびにマクロファージの感染を含む疾患または障害の治療的処置に関する。従って、本発明は、マクロファージ活性、毒素の阻害などを含む細胞活性の調節に関する。より詳細には、本発明は、天然に存在するセリンプロテアーゼ阻害因子およびアンタゴニスト、ならびに人工のセリンプロテアーゼ阻害因子およびアンタゴニストを含む阻害化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
セリンプロテアーゼ
セリンプロテアーゼは、ウイルス機能の活性化を媒介することによってヒトの生理学において重要な役割を果たす。それらの通常の生理学的機能に加えて、セリンプロテアーゼは、ヒトにおける多数の生理学的機能に関わる。セリンプロテアーゼは、活性部位におけるアスパラギン酸、ヒスチジン、およびセリンからなる触媒3成分によって特徴付けられる。
【0003】
天然に存在するセリンプロテアーゼ阻害因子は、必ずではないにしろ、通常、主としてジスルフィド結合パターンおよび反応性部位の配列相同性に基づいてファミリーに分類されたポリペプチドおよびタンパク質である。セルピンとして公知のグループを含むセリンプロテアーゼ阻害因子は、微生物中、植物、動物、昆虫および他の生物の組織および体液中において見い出されてきた。プロテアーゼ阻害因子の活性は、FermiおよびPemossiによって1894年に最初に発見された。少なくとも9種の別個の、十分に特徴付けされたタンパク質が現在同定されており、これらは種々のプロテアーゼの活性を阻害する能力を共有する。いくつかの阻害因子は共にグループ分けされ、すなわち、α1-抗トリプシンプロテイナーゼ阻害因子、抗トロンビンIII、抗キモトリプシン、C1阻害因子、およびα2-抗プラスミンであり、これらは、種々のセリンプロテアーゼ、すなわち、白血球エラスターゼ、トロンビン、カテプシンG、キモトリプシン、プラスミノーゲン活性化因子、およびプラスミンに対して方向づけられる。これらの阻害因子は、α1-抗トリプシンプロテイナーゼ阻害因子のクラスのメンバーである。タンパク質α2-マクログロブリンは、4つすべての触媒クラス:セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、およびメタロプロテアーゼのメンバーを阻害する。しかし、他の型のプロテアーゼ阻害因子はクラス特異的である。例えば、α1-抗トリプシン-プロテイナーゼ阻害因子(α1-抗トリプシンまたはAATとしても公知)かつインターα-トリプシン阻害因子はセリンプロテアーゼのみを阻害し、α1-システインプロテアーゼ阻害因子はシステインプロテアーゼを阻害し、かつα1-抗コラゲナーゼはメタロ酵素のクラスのコラーゲン分解酵素を阻害する。
【0004】
ヒト好中球エラスターゼ(NE)は、種々の炎症性刺激に応答して多形核白血球によって分泌されるタンパク質分解酵素である。NEの分解能力は、通常の状況下では、比較的高い血漿濃度のα1-抗トリプシンによって調節される。しかし、刺激された好中球は、活性酸素代謝産物のバーストを産生し、これらのいくつか(例えば次亜塩素酸)は、α1-抗トリプシン中の決定的なメチオニン残基を酸化することが可能である。酸化されたα1-抗トリプシンは、NE阻害因子として制限された能力を有することが示されており、かつこのプロテアーゼ/抗プロテアーゼのバランスの変化が、局在化され、かつ制御された環境においてNEが分解機能を実行することを可能にすることが提案されている。
【0005】
α1-抗トリプシンは、417アミノ酸および3個のオリゴサッカライド側鎖を有する分子量51,000の糖タンパク質である。ヒトα1-抗トリプシンは、最初に発見された、膵臓トリプシンを不活性化する能力ゆえに抗トリプシンと命名された。ヒトα1-抗トリプシンは、内部ジスルフィド結合を有さず、かつ通常はシステインまたはグルタチオンのいずれかに分子間ジスルフィド結合した単一のシステインのみを有する単一のポリペプチド鎖である。α1-抗トリプシンの反応部位はメチオニン残基を含み、これは、タバコの煙または他の酸化汚染物質への曝露の際に酸化に対して不安定である。このような酸化は、α1-抗トリプシンの生物学的活性を減少させ;それゆえに、その位置における別のアミノ酸:すなわち、アラニン、バリン、グリシン、フェニルアラニン、アルギニン、またはリジンへの置換は、より安定なα1-抗トリプシンの型を産生する。α1-抗トリプシンは以下の式によって表され得る:
Ciliberto, et al. in Cell 1985,41, 531-540。α1-抗トリプシンのカルボキシ末端の近傍の重要なアミノ酸配列は太字でかつ下線を付して示され、かつ本発明に直接関連がある(配列の詳細は、例えば、参照として組み入れられる米国特許第5,470,970号において見い出され得る)。
【0006】
ATTの通常の血漿濃度は、1.3〜3.5mg/mlの範囲であるが、これは、急性期反応物質として挙動することができ、炎症および/または組織損傷(例えば、妊娠、急性感染、および腫瘍などによる)に対する宿主応答の間に3〜4倍増大する。これは容易に組織間隙に拡散し、標的プロテアーゼ、主として好中球エラスターゼと1:1複合体を形成する。トリプシン、キモトリプシン、カテプシンG、プラスミン、トロンビン、組織カリクレイン、およびXa因子など他の酵素もまた、基質として働く。次いで、酵素/阻害因子複合体は、セルピン-酵素複合体(SEC)受容体に結合することによって循環から除去され、肝臓および脾臓によって異化される。通常の15%未満のα1-抗トリプシンの循環レベルを有するヒトは、若い年齢において、肺疾患、例えば、家族性肺気腫の発症に対して感受性である。家族性肺気腫は、セリンプロテアーゼ、特にエラスターゼに対するα1-抗トリプシンの低い割合と関連する。それゆえに、この阻害因子は、セリンプロテアーゼによる攻撃に対する防御メカニズムの重要な部分を担っていると考えられる。
【0007】
α1-抗トリプシンは、プロテアーゼ不均衡の臨床的治療のために現在認可されている、天然に存在する少数の哺乳動物セリンプロテアーゼ阻害因子の1つである。治療用α1-抗トリプシンは80年代の中頃以来市販されており、かつ種々の精製方法によって調製されている(例えば、Bollen et al. 米国特許第4,629,567号;Thompson et al., 米国特許第4,760,130号;同第5,616,693号;国際公開公報第98/56821号を参照されたい)。プロラスチンは、α1-抗トリプシンの精製変種の商標であり、現在Bayer社によって販売されている(米国特許第5,610,285号, Lebing et al., 1997年3月11日)。遺伝子組換え方法によって産生されたα1-抗トリプシンの組換え未改変変種または変異体変種もまた公知である(米国特許第4,711,848号);使用の方法(例えば、α1-抗トリプシン遺伝子治療/送達(French Anderson et al.への米国特許第5,399,346号))もまた公知である。
【0008】
セリンプロテアーゼの作用の2つの公知の細胞メカニズムは、直接的分解効果によるもの、およびGタンパク質共役プロテイナーゼ活性化受容体(PAR)によるものである。PARは、プロテアーゼの結合、続く特定のペプチド結合の加水分解によって活性化され、新たなN末端配列が受容体を活性化するという結果を伴う。PAR活性化の結果は、刺激されるPAR型および影響を受ける細胞または組織に依存し、かつホスホリパーゼCβの活性化、プロテインキナーゼCの活性化、およびアデニル酸キナーゼの阻害を含む可能性がある(Dery,O. and Bunnett, N. W. Biochem Soc Trans 1999,27, 246-254; Altieri, D. C. J.Leukoc Biol 1995,58, 120-127; Dery,O. et al. Am J. Physiol 1998, 274,C1429-C1452)。
【0009】
TBおよびMAC
ミコバクテリアは、好気性であり、大部分は増殖が遅く、わずかに屈曲しているかまたは直線状の桿状であり、ときおり分枝状または繊維状であり、かつ酸性塩染色によって区別される細菌の属である。典型的には、ミコバクテリアは、グラム陽性偏性好気性菌である。ミコバクテリア属は、結核(ヒト型結核菌(M. tuberculosis)およびときおりウシ型結核菌(M. bovis))およびハンセン病(らい菌(M. leprae))を引き起こす高度に病原性の生物を含む。しかし、他の多くの種のミコバクテリア、例えば、M.アビウム-イントラセルラーレ(M. avium-intracellulare)、M.ケロネイ(M. chelonei)(ボルステレンセ(borstelense)およびアブセッサス(abscessus)としても知られる)、M.アフリカヌム(M. africanum)、M.マリニウム(M. marinium)(バルネイ(balnei)およびプラチポエシルス(platypoecilus)としても知られる)、M.ブルーリ(M. buruli)(ウルセランス(ulcerans)としても知られる)、M.フォーツイタム(M. fortuitum)(ギエ(giae)、ミネッティ(minetti)、およびラーネ(ranae)としても知られる)、M.ヘモフィルム(M. haemophilum)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサシ(M. kansasii)(ルシフラブム(luciflavum)としても知られる)、M.リットラーレ(M. littorale)(ゼノピ(xenopi)としても知られる)、M.マルモエンセ(M. malmoense)、M.マリアヌム(M. marianum)(スクロフラセウム(scrofulaceum)およびパラフィニクム(paraffinicum)としても知られる)、M.シミエ(M. simiae)、M.シュルガイ(M. szulgai)、およびM.ウルセランス(M. ulcerans)が存在する。
【0010】
動物に対して病原性であるがヒトに対しては病原性ではないと考えられているミコバクテリアには以下が含まれる:M.アビウム-イントラセルラーレ(ブルネンセ(brunense)としても知られる)、M.フラバセンス(M. flavascens)、ネズミらい菌(M. lepraemurium)、M.ミクロティ(M. microti)、およびパラ結核菌(M. paratuberculosis)(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)。以下のミコバクテリアの種は、非病原性と考えられている: M.ゴルドネ(M. gordonae) (アクエ(aquae)としても知られる)、M.ガストリ(M. gastri)、M.フレイ(M. phlei) (モエレーリ(moelleri)およびチモテ-バシラス(timothy bacillus)としても知られる)、M.ノンクロモゲニクム(M. nonchromogenicum)、M.スメグマティス(M. smegmatis)、M.テレ(M. terrae)、M.トリビアーレ(M. triviale)、およびM.バッカエ(M. vaccae)。
【0011】
さらに、ヒト型結核菌および時折ウシ型結核菌以外のあるミコバクテリアは、代わって非結核性ミコバクテリアとしても公知である。これらは、色素沈着および増殖速度に基づいて、ラニヨン群としても知られる4つの群に分けられる。各群はいくつかの種を含む。I群とは増殖遅延型光発色菌を指し;II群とは増殖遅延型暗発色菌を指し;III群とは増殖遅延型非光発色菌を指し;グループIV群とは迅速増殖型ミコバクテリアを指す。非結核性ミコバクテリアはまた、非定型または無名性ミコバクテリアとも呼ばれる。
【0012】
結核は、ヒト型結核菌の感染によって引き起こされる急性または慢性の感染性疾患である。結核は、発展途上国において主要な疾患であり、かつ世界の先進国の領域においても増加しつつある問題であり、毎年およそ800万例の新たな症例と300万例の死亡例がある(Styblo et al., Bull. Int. Union Tuberc. 56: 118-125 (1981)を参照されたい)。感染は、かなりの期間の間は無症候性である可能性があるが、この疾患は、肺の急性炎症として最も通例的には顕在化し、熱および非生産的な咳を生じる。未治療のまま放置した場合、典型的には、深刻な合併症および死を引き起こす。
【0013】
結核は期間の長い抗生物質治療を使用して一般的には制御され得ることが公知であるが、このような治療は、この疾患の蔓延を予防するためには十分ではない。感染した個体は無症候性であるかもしれないが、ある期間は伝染性である。さらに、特定の治療の処方計画を伴うコンプライアンスが決定的であるが、患者の挙動は、しばしばモニターすることが困難である。治療の処方計画は、しばしば、中断されない6〜12ヶ月の治療を必要とする。結果として、ある患者は治療の過程を完了せず、従って、効果のない治療および抗生物質耐性の発生をもたらす。効果的なワクチン接種および正確で早期な疾患の診断が、結核の蔓延を阻害するために必要とされる。生細菌によるワクチン接種は、防御免疫を誘導するための最も効果的な方法のままである。生ワクチンとして採用される最も通例的なものは、ウシ型結核菌の無毒性株であるカルメット-ゲラン(Calmette-Guerin)桿菌(BCG)である。しかし、米国などのいくつかの国では、BCGの安全性および効力に関する懸念によって、一般大衆にワクチン接種を行っていない。
【0014】
ヒト型結核菌は、マクロファージに感染する細胞内病原体であり、マクロファージ中のファゴリソソームの厳しい環境中で生存することが可能である。大部分の吸入された桿菌は、活性化された肺胞マクロファージによって破壊される。しかし、生存している桿菌はマクロファージ中で増殖し、細胞死に際して放出され、これは、その部位に対するリンパ球、単球、およびマクロファージの侵入のシグナルとなる。T細胞の抗原性刺激は、MHC分子による提示を必要とする。桿菌が付加されたマクロファージは、遅延型過敏症(DTH)細胞媒介性免疫応答によって媒介され、感染細胞の領域を取り囲む固形の乾酪性結節の発生を生じる。結核桿菌は多くの潜在的なT細胞抗原を保有し、現在いくつかが同定されている[Andersen 1994, Dan. Med. Bull. 41,205]。これらの抗原のいくつかは細菌によって分泌される。継続するDTHは結核結節を液化し、それによって、捕捉された結核桿菌を放出する。大量の細胞外結核桿菌はさらなるDTHを誘発し、気管支に対する損傷、ならびにリンパ性、造血性、および気管支の経路による拡散を引き起こし、最終的には、感染性桿菌が呼吸によって蔓延することを可能にする。
【0015】
結核に対する細胞媒介性免疫は、いくつかの型の免疫エフェクター細胞に関わる。サイトカイン、例えば、インターフェロンγなどによるマクロファージの活性化は、マクロファージに基づく細胞内ミコバクテリア増殖を最小化する効果的な手段を表す。しかし、これは、桿菌の完全な根絶をもたらすものではない。結核に対する防御の獲得はTリンパ球をも必要とする。これらの間で、CD8+およびCD4+双方の系統のT細胞は特に重要であると考えられる[Orme et al, 1993, J. Infect. Dis. 167, 1481]。これらのT細胞は、ミコバクテリアに応答してインターフェロンγを分泌し、Th1免疫応答を示し、かつミコバクテリアでパルスされた標的細胞に対して細胞毒性活性を有する。β-2ミクログロブリン欠損マウスおよびCD8欠損マウスを使用する最近の研究において、細胞毒性Tリンパ球(CTL)は、ヒト型結核菌に対する防御を提供する際に決定的であることが示されている[Flynn et al, 1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89, 12013 ; Flynn et al, 1993, J. Exp. Med. 178,2249 ; Cooper et al, 1993, J. Exp. Med. 178, 2243]。対照的に、Bリンパ球は関与していないと考えられ、かつ抗ミコバクテリア抗体の受動的輸送はいかなる防御免疫も提供しない。従って、結核に対する効果的なワクチン処方計画は、細胞媒介性免疫応答を誘発する必要がある。
【0016】
肺感染としてのみの通例的な見解であるが、TBは、身体の多くの部分に罹患することが周知である。肺のTBに加えて、結核感染の他の病巣の例には、粟粒結核(全身化した造血性TBまたはリンパ造血性TB)、中枢神経系TB、胸膜TB、TB心膜炎、尿生殖器TB、胃腸管のTB、TB腹膜炎、副腎のTB、肝臓のTB、骨および関節のTB(例えば、TB脊椎炎またはポット病)、TBリンパ節炎、ならびに口、中耳、喉頭、および気管支樹のTBが含まれる。
【0017】
従来のTB治療には、ピラジナミド、イソニアジド、エタンブトール、ストレプトマイシン、リファンピン、リファブチン(rifabutin)、クラリスロマイシン(clarithromycin)、シプロキサシン、クロファザミン(clofazamine)、アジスロマイシン(azithromycin)、エチオナミド、アミカシン、およびレゾルシノマイシンA(resorcinomycin A)を含む処方計画による治療が含まれる。潜伏性の(不活性な)TB感染を治療するために、イソニアジドが単独で使用されてもよい。しかし、肺結核のための通常の初期治療は、少なくとも1種の他の薬物、例えば、エタンブトール、ストレプトマイシン、リファンピン、またはエチオナミドなどと組み合わせたイソナミドが含まれる。肺結核の再治療は、典型的には、リファンピンおよび上記に記述した他の薬物を含む薬物の組合せに関わる。抗TB薬物、特に、イソニアジドに対する病原因子の耐性の発生が周知である。肺外結核もまた、リファンピン、および言及した他の3種の薬物の少なくとも1つを含む組合せで通常治療される。
【0018】
トリ型結核複合菌(MAC)
トリ型結核菌およびM.イントラセルラーレは、トリ型結核複合菌のメンバーである。パラ結核菌は、トリ型結核菌の亜種であり、かつこれもまた一般的にはMACに含まれる。AIDS患者において伝播するMAC感染の高い有病率ゆえに、これらの種は近年重要性が増している。トリ型結核複合菌は、28種の血清型亜型から構成され、それらの生化学的特性および血清凝集特性に基づいて区別される(Inderlied, et al. 1993. Clin. Microbial. Rev. 6,266-310による総説を参照されたい)。分類の方法に依存して、28種の血清型亜型のうちの10〜12種は、トリ型結核菌種に、10〜12種がM.イントラセルラーレに属する。MAC血清型亜型のうちの6種はまだ決定的に分類されてはいない。MAC感染は、現在、ミコバクテリア学研究室によって同定された病原性単離物の約50%に達し、AIDSおよび他の免疫欠損患者の間で最も通例的である。MAC感染の初期の診断および治療は、感染した個体の生存を改善および延長することができる。
【0019】
炭疽および炭疽毒素
グラム陽性、杆状、好気性で、胞子を形成する細菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)によって産生される炭疽毒素は、この生物によって分泌される毒性の病原性因子である。炭疽菌(B. anthraxis)は、しばしば、分泌された外毒素の効力、および過酷な環境条件に抵抗性である休眠胞子を形成するという細菌の能力に起因して、生物兵器としての使用が考慮される。胞子形成は、迅速な輸送および大量の毒素産生細菌の分布を可能にする。毒素は、実際には、細菌由来の3つの個別の分泌タンパク質からなる複合物である。3つのタンパク質は、防御抗原(PA)、致死因子(LF)、および水腫因子(EF)である。LFおよびEFが直接的に細胞に損傷を与えかつ疾患を引き起こすのに対して、PAは本開示の焦点である。PA分子は、細胞の膜の内部にLFとEFの双方を輸送するように設計されているので、PAが炭疽毒素の病原性にとって決定的である。PA誘導性の細胞内輸送の非存在下では、LFおよびEFが細胞内から機能するのみであるので、炭疽毒素が組織破壊をもたらすことは不可能である。炭疽毒素の機能におけるPAの重要性は、炭疽ワクチンにおける免疫原としてのPAの効果的な使用によって強調されている。PAに対する免疫応答を産生することによって、このワクチンは、完全な(3成分の)炭疽毒素に対する防御を付与する。
【0020】
PAと、炭疽毒素によって攻撃された宿主細胞との間の相互作用のより精密な試験は有益である。PAは、最初に83kDaのモノマー性ポリペプチドとして、大きくかつ機能的に不活性な型で炭疽菌から分泌される。この不活性型PAは、宿主細胞の表面上の哺乳動物受容体に結合する。このPA受容体は、最近単離および配列決定され、フォンビルブランド(Von Willebrand)因子様領域を有することが見い出された。宿主細胞の表面上へのドッキング後、PAは、細胞表面上に存在するプロテアーゼと相互作用する。プロテアーゼは、大きくかつ不活性型のPA分子を、より小さくかつ活性型の63kDa断片にプロセシングする。C末端63kDa断片(PA63)は細胞に結合したままであり、N末端の20kDa(PA20)はPA63から解離する。このプロテアーゼの同一性は、不十分な研究の労力の焦点となっており、かつ特徴付けが乏しい。しかし、以前の研究は、このプロテアーゼが宿主由来セリンプロテアーゼであることを示唆する特徴を有することを示している。文献に記述された、候補となりうるセリンプロテアーゼは、フューリン(それ自体セリンプロテアーゼである)に関連するが、他のセリンプロテアーゼ、例えば、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、クロストリパイン(clostripain)、またはトリプシンなどは可能性のある代替物である(Molloy, S. S. et al. J Biol Chem 267, 16396-16402 (1992))。このタンパク質分解性切断およびPA20の引き続く解離は、PA63上の2つの新規な特性を付与する:(1)環状形状でヘプタマー性のSDS解離可能な構造(プレ細孔(prepore)と呼ばれる)にオリゴマー化する能力、ならびに(2)EFおよびLFに結合する能力。PA63-EF、PA63-LF、またはPA63-EFの組合せおよびPA63-LFを含むオリゴマーは、エンドサイトーシスされかつ酸性区画に輸送され、そこでPA63プレ細孔は膜に挿入され、細孔を形成する。細孔形成の間、またはその後、EFおよびLFは、エンドソーム膜を横切って細胞質に移行する。EFはカルモジュリン依存性アデニル酸シクラーゼであり、これは食細胞による破壊から細菌を保護することができる。LFは、マクロファージを殺傷することができるメタプロテアーゼであり、またはより低い濃度で、マクロファージがサイトカインを過剰生成するように誘導し、おそらく宿主の死を生じる。これらのヘプタマーは、LFおよびEFを細胞の内側に送達するための輸送ビヒクルとして機能する。一旦細胞の内部に入ると、LFおよびEFは細胞機能の異常化を開始する。
【0021】
結核、他のミコバクテリア感染、および炭疽に対する従来の治療のいくつかの困難さおよび不適切さゆえに、新たな治療様式が望まれる。
【0022】
本発明者は、結核菌(TB)およびトリ型結核複合菌(MAC)によって引き起こされた感染を治療するための治療薬剤としてのセリンプロテアーゼ阻害因子の使用の新規な方法を開示する。これらは、ヒトマクロファージ中での感染および生存によって、感染および長い潜伏期間を確立するヒト病原体である。従って、マクロファージ中でのTBまたはMACの内部移行をブロックすることが、これらの感染性因子に対する治療の新規なアプローチである。感染性アッセイにおいて、本発明者らは、α1-抗トリプシンが、ヒト単球由来マクロファージ(MDM)のTBおよびMAC双方の感染を有意に阻害することを示している。
【0023】
炭疽毒素の作用を無効にする新規なアプローチは、細胞表面上に存在する宿主由来のセリンプロテアーゼの作用に干渉することによって、細胞の内部への毒素の接近をブロックすることである。
【0024】
従って、本発明は、結核、他のミコバクテリア感染、他のグラム陰性細菌およびグラム陽性細菌の感染、および炭疽の治療の安全かつ効果的な方法のために長期間考えられてきた必要性に取り組む。
【発明の開示】
【0025】
発明の概要
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、哺乳動物における細菌感染を治療するための方法を提供する。
【0026】
1つの態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含むグラム陰性細菌生物によって引き起こされる感染である:淋菌(N. gonorrhoeae)、髄膜炎菌(N. meningitidis)、M.カタラーリス(M. catarrhalis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、 大腸菌(E. coli)、 クレブシエラ属(Klebsiela)全種、エンテロバクター属全種、セラチア属全種、サルモネラ属全種、赤痢菌属全種、ミラビリス変形菌(Proteus mirabilis)、 尋常変形菌(Proteus vulgaris)、プロビデンシア属全種、モルガネラ属全種、シトロバクター属全種、アエロモナス属全種、アシネトバクター属全種、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、パスツレラ属全種、シュードモナス-セパシア(Pseudomonas cepacia)、ステノトロホモナス-マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、Y.エンテロコリチカ(Y. enterocolitica)および他のエルシノイオシス(Yersinoiiosis)、レジオネラ属(Legionella)全種、P.ムルトシダ(P. multocida)、H.デュクレイ(H. ducreyeii)、クラミジア属全種、マイコプラズマ-ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)、マイコプラズマ-ホミニス(Mycoplasma hominis)、バクテロイデス-フラジリス(Bacteroides fragilis)、P.メラニノジェニカ(P. melaninogenica)、モラクセラ属全種、ボルデテラ属全種、またはそれらの任意の組合せ。
【0027】
別の態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含むグラム陽性細菌生物によって引き起こされる感染である:破傷風菌(C. tetani)、ボツリヌス菌(C. botulinum)、C.ディフィシレ(C. difficile)、A群、B群、C群、およびG群連鎖球菌、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ストレプトコッカス-ミレリ(Streptococcus milleri)、ヴィリダンス型連鎖球菌(Viridans streptococcus)、リステリア属全種、ブドウ球菌属全種、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MSSA)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)(MRSA)、表皮ブドウ球菌(S. epidermidis)、エンテロコッカス-フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス-フェシウム(Enterococcus faecium)、クロストリジウム属全種(C. diptheriea、 C. jeikiumを含む)、ロドコッカス属(Rhodococcus)全種、レウコノストク属(Leukonostoc)全種、またはそれらの任意の組合せ。
【0028】
さらに別の態様において、本発明の組成物および方法を使用して治療または改善され得る細菌感染は、以下を含む抗酸菌によって引き起こされる感染である:ヒト型結核菌、および非定型ミコバクテリア(トリ型結核菌、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ、M.ケロネイ、M.フォーツイタム、M.スクロフラセウム(M. scrofulaceum)、M.ウルセラニス(M. ulceranis)、らい菌、M.ゼノピ(M. xenopi)、ウシ型結核菌、M.ゴルドネ、M.ヘモフィルム、M.マリヌム(M. marinum)、M.ゲナベンセ(M. genavense)、M.アビウムおよびイントラセルラーレ、およびM.シミエ)、またはそれらの任意の組合せ。
【0029】
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、哺乳動物におけるミコバクテリア感染を治療するための方法を提供する。
【0030】
1つの態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含み、これは以下を含む:ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、らい菌、M.アビウム-イントラセルラーレ、M.ケロネイ(ボルステレンセおよびアブセッサスとしても知られる)、M.アフリカヌム、M.マリニウム(バルネイおよびプラチポエシルスとしても知られる)、M.ブルーリ(ウルセランスとしても知られる)、M.フォーツイタム(ギエ、ミネッティ、およびラーネとしても知られる)、M.ヘモフィルム、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ(ルシフラブムとしても知られる)、M.リットラーレ(ゼノピとしても知られる)、M.マルモエンセ、M.マリアヌム(スクロフラセウムおよびパラフィニクムとしても知られる)、M.シミエ、M.シュルガイ、およびM.ウルセランス、トリ型結核菌(ブルネンセとしても知られる)、M.フラバセンス、ネズミらい菌、M.ミクロティ、およびパラ結核菌(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)、M.ゴルドネ (アクエとしても知られる)、M.ガストリ、M.フレイ (モエレーリおよびチモテ-バシラスとしても知られる)、M.ノンクロモゲニクム、M.スメグマティス、M.テレ、M.トリビアーレ、およびM.バッカエ、またはその任意の組合せ。
【0031】
別の態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、IV群(迅速増殖型ミコバクテリア)、またはそれらの任意の組合せからなる群より選択されるラニヨン群を含む4つの群に分けられる非結核性ミコバクテリアを含む、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む。
【0032】
それゆえに、1つの局面において、本発明は、マクロファージの感染に依存するミコバクテリア疾患を治療する方法を提供する。
【0033】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を、マクロファージのミコバクテリア感染に感受性である哺乳動物に投与する段階を含む、マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する方法もまた提供される。この物質はα1-抗トリプシンに限定されることなく、プロテイナーゼ3、カテプシンG、エラスターゼ、または任意の他のセリンプロテアーゼを阻害する化合物であってもよい。
【0034】
好ましい態様において、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する薬剤はα1-抗トリプシンを含む。さらに、関心対象のペプチドは、相同または類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。アナログの典型的な例はTLCKまたはTPCKである。α1-抗トリプシンおよびα1-抗トリプシンのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、CE-2072、UT-77、およびトリアゾールペプトイドのような化合物が好ましい。
【0035】
ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染を阻害する薬剤はまた、セリンプロテアーゼ活性阻害因子、エラスターゼ阻害因子、またはプロテイナーゼ3阻害因子でもあり得る。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は以下を含み得るがこれらに限定されない:有機低分子(天然の、合成の、および生合成の分子を含む)、無機低分子(天然の、合成の、および生合成の分子を含む)、天然物(植物および真菌によって生産されるものを含む)、ペプチド、α1-抗トリプシンの変種、化学修飾ペプチド、およびタンパク質。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、および/または他のセリンプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害する能力を有する。
【0036】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を含む薬学的に許容される担体中の薬学的組成物により治療することによって、内因性宿主セリンプロテアーゼまたはセリンプロテアーゼ様活性によって媒介されるマクロファージのミコバクテリア感染に対して感受性である患者における、機能的内因性α1-抗トリプシンレベルの欠乏を予防する方法もまた、本発明の範囲内で企図される。この薬学的組成物は、ペプチドまたは低分子であり得、これは、α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す。
【0037】
さらに別の局面において、本発明は、炭疽菌への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合には、該曝露の症状が予防される。
【0038】
別の局面において、本発明は、炭疽菌に曝露された疑いのある対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合には、該曝露の症状が予防される。
【0039】
別の局面において、本発明は、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含み、ここで、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質が、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害する。
【0040】
上記に列挙された方法において、阻害または予防される炭疽の症状は、皮膚潰瘍、水腫、および瘢痕形成からなる群より選択される。
【0041】
1つの態様において、本発明の方法は、皮膚、胃腸、および/または吸入炭疽の症状を予防または改善するために使用される。1つの態様において、倦怠感、発熱、空咳、筋肉痛および胸痛、換気機能障害、発汗、放射線撮影検査における縦隔の拡張、頸部および胸部の水腫、壊死性縦隔リンパ節炎、非圧痕水腫、瘢痕、悪心、嘔吐、発熱、腹痛、出血性下痢、粘膜潰瘍、出血性腸間膜リンパ節炎、またはこの任意の組合せからなる群より選択される炭疽の症状を予防または改善するために、本発明の方法が使用される。
【0042】
さらに別の局面において、本発明は、上記に同定された細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染のいずれか1つまたはそれ以上に罹患している哺乳動物において、上記に同定された細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染のいずれか1つまたはそれ以上と関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法に方向付けられ、この方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を、単独、または1種またはそれ以上の抗炎症性化合物または免疫調節物質との組合せのいずれかで含み;かつ薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を減少させるための治療有効量を投与する段階を含み、ここで該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、宿主の細菌疾患もしくは徴候、ミコバクテリア疾患もしくは徴候、または炭疽感染を阻害または改善するために十分である。
【0043】
1つの態様において、上記に列挙されたミコバクテリアの徴候、細菌感染、または炭疽感染の各々の1つまたはそれ以上と関連する痛みおよび/または症状の軽減または阻害は、約10〜20%の軽減または阻害のオーダーである。別の態様において、痛みの軽減または阻害は、30〜40%のオーダーである。別の態様において、痛みの軽減または阻害は、50〜60%のオーダーである。さらに別の態様において、列挙された徴候の各々に関連する痛みの軽減または阻害は、約75〜100%のオーダーである。列挙された範囲はまた、列挙された範囲間のすべての特定のパーセンテージをも含むことが、本明細書において意図される。例えば、約75〜100%の範囲はまた、各々の特定の範囲を実際に加えて列挙することなく、76〜99%、77〜98%なども含む。
【0044】
従って、本発明の全体の局面は、セリンプロテアーゼに対する阻害活性を示す化合物を提供する。従って、本発明は、医学、生物学、農学、および微生物発酵を含むが必ずしもそれらに限定されない任意の適切な状況における、セリンプロテアーゼの触媒活性の制御に適用可能であることが認識されるべきである。
【0045】
本発明の1つの局面は、認識された有用性を有し、かつ比較的低い濃度で比較的高い活性を示す、臨床的に許容されるセリンプロテアーゼ阻害因子を提供する。
【0046】
1つの態様において、本発明の方法および組成物において使用されるα1-抗トリプシンは、 Aralast(登録商標)(Baxter)、Zemaira(登録商標)(Aventis Behring)、Prolastin(登録商標)(Bayer)、Aprotonin(登録商標)またはTrasylol(登録商標)(Bayer Pharmaceutical Corporation) およびUlinistatin(登録商標)(Ono Pharmaceuticals, Inc.)、またはそれらの任意の組合せを含む。
【0047】
本発明は、対象において細菌感染を治療的または予防的に処置するための方法を提供する。
【0048】
細菌またはミコバクテリアの感染を治療的に処置するための方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその誘導体を示す物質の薬学的有効量を、細菌またはミコバクテリアの疾患の発症後の対象に投与する段階を含む。
【0049】
細菌またはミコバクテリア感染を予防的に処置するための方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその誘導体を示す物質の薬学的有効量を、細菌またはミコバクテリアの疾患の発症前に対象に投与する段階を含む。
【0050】
いずれの方法論も、マクロファージの細菌感染またはミコバクテリア感染を阻害する。
【0051】
上記に列挙される本発明の方法の各々について、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す1種またはそれ以上の物質、またはその機能的誘導体の治療有効量は、1種またはそれ以上の抗ミコバクテリア薬物および/または抗炎症性化合物の治療有効量、および/または1種またはそれ以上の免疫調節薬剤の治療有効量と組み合わせて、治療を必要とする対象に投与されてもよい。
【0052】
本発明の方法のある態様において、抗炎症性化合物または免疫調節薬物は以下を単独または組合せで含む:インターフェロン;ベータセロン、β-インターフェロンを含むインターフェロン誘導体;イロプロスト(iloprost)、シカプロスト(cicaprost)を含むプロスタン誘導体;コルチゾル、プレドニゾロン、メチル−プレドニゾロン、デキサメタゾンを含むグルココルチコイド;シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン(methoxsalene)、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートを含む免疫抑制剤;ジレウトン(zileutone)、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含むリポキシゲナーゼ阻害因子;ロイコトリエンアンタゴニスト;ACTHおよびそのアナログを含むペプチド誘導体;可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体;ならびにカルシポトリオール(calcipotriol)、ならびにそれらのアナログ。
【0053】
本発明はまた、上述の細菌またはミコバクテリアの疾患のいずれか、またはその任意の組合せを治療するために、1種またはそれ以上の抗菌または抗ウイルス組成物またはその任意の組合せと組み合わせた、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す薬学的組成物の組合せの使用に関する。
【0054】
上記に列挙された方法の各々において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、融合ポリペプチドの一部であってもよく、ここで該融合ポリペプチドは、α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を伴う物質、および該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質に相同なアミノ酸配列を含む。
【0055】
ある態様において、本発明の方法における使用のために企図される融合ポリペプチドは、ヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG1定常領域(改変されたヒトIgG1定常領域を含む)などが含まれ、ここで、IgG1定常領域は、Fc受容体に結合せず、かつ/または抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)反応を開始しない。
【0056】
さらに他の態様において、本発明の方法における使用のために企図される融合ポリペプチドは、その融合ポリペプチドを同定、輸送、または精製するために有用であるアミノ酸配列をさらに含んでもよく、例えば、融合ポリペプチドはFLAGまたはHISタグ配列をさらに含み得る。融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を伴う物質由来の相同アミノ酸配列を取り出すために使用され得るタンパク質分解切断部位をさらに追加的に含み得る。上記に列挙した本発明の組成物および方法の各々において、細菌感染、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染、または炭疽を阻害する薬剤は、α1-抗トリプシンを含む。さらに、関心対象のペプチドは、相同ペプチドおよび類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。アナログの典型的な例はTLCKまたはTPCKである。α1-抗トリプシンおよびα1-抗トリプシンのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、CE-2072、UT-77、およびトリアゾールペプトイドのような化合物が好ましい。
【0057】
他の態様において、細菌感染、ヒト単球由来マクロファージのミコバクテリア感染、および/または炭疽を阻害する薬剤はまた、セリンプロテアーゼ活性阻害因子、エラスターゼ阻害因子、またはプロテイナーゼ3阻害因子であり得る。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は以下を含み得るがこれらに限定されない:有機低分子(天然の、合成のおよび生合成の分子を含む)、無機低分子(天然および合成の分子を含む)、天然物(植物および真菌によって生成されるものを含む)、ペプチド、α1-抗トリプシンの変種、化学修飾ペプチド、およびタンパク質。セリンプロテアーゼ活性阻害因子は、トリプシン、エラスターゼ、カリクレイン、および/または他のセリンプロテアーゼのタンパク質分解活性を阻害する能力を有する。
【0058】
本発明の1つの態様において、ペプチドは、種々の方法、例えば、N末端アシル化、C末端アミド化、環状化などで保護または誘導体化され得る。特定の態様において、ペプチドのN末端はアセチル化される。
【0059】
関心対象のペプチドは、相同または類似のペプチドである。ホモログは配列相同性を有する天然のペプチドであるのに対して、アナログはこのようなペプチドのペプチジル誘導体、例えば、アルデヒドまたはケトン誘導体である。AATおよびAATのペプチド誘導体に限定されることなく、オキサジアゾール、チアジアゾール、およびトリアゾールペプトイドのような化合物、および特定のフェニルエチレンジアルカノエートエステルを含む物質が好ましい。
【0060】
上記に列挙した方法の各々において、本発明の方法における使用のために企図される、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、AATに対応するカルボキシ末端アミノ酸ペプチドを含む一連のペプチドをさらに含む。これらのペンタペプチドは、一般式(I):I-A-B-C-D-E-G-H-IIによって表すことができ、ここでIはCysまたは存在せず;AはAla、Gly、Valまたは存在せず;BはAla、Gly、Val、Ser、または存在せず;CはSer、Thr、または存在せず;DはSer、Thr、Ans、Glu、Arg、Ile、Leu、または存在せず;EはSer、Thr、Asp、または存在せず;FはThr、Ser、Asn、Gln、Lys、Trp、または存在せず;GはTyrまたは存在せず;HはThr、Gly、Met、Met(O)、Cys、Thr、またはGlyであり;かつIIはCys、アミド基、置換アミド基、エステル基、または存在せず、ここでこのペプチドは少なくとも4個のアミノ酸およびその生理学的に許容される塩を含む。この一連のペプチドの中で、いくつかが等しく許容され、これには以下およびその任意の組合せが含まれる。
【0061】
さらに別の態様において、これらのペプチドは、一般式(II):NT-X1-X2-X3-X4-X5-CTまたはその生理学的に許容される塩によって表すことができ、ここで、NTはペプチドのN末端に配置されたアミノ酸残基(Cを含む)、アセチル基、またはスクシニル基を含み、またNTが存在しないことも可能であるという条件であり、X1はFまたはAを含むアミノ酸残基を含み;X2はC、V、L、M、I、A、C、またはSを含むアミノ酸残基を含み;X3はF、A、V、M、L、I、Y、またはCを含むアミノ酸残基を含み;X4はL、A、F、I、V、M、C、G、またはSを含むアミノ酸残基を含み;X5はM、A、I、L、V、F、またはGを含むアミノ酸残基を含み;かつCTは、ペプチドのC末端に配置されたアミノ酸残基(Cを含む)、アミド基、置換アミド基、またはエステル基を含み、またCTが存在しないことも可能であるという条件であり、かつここでアミノ酸残基はL-またはD-立体異性体配置のいずれかであり得る。これらのペプチドは少なくとも5個のアミノ酸およびその生理学的に許容される塩を含む。この化学式におけるアミノ酸は、1文字で略され、かつ対応する3文字コードは以下の通りである:アラニンはAまたはAla;アルギニンはRまたはArg、アスパラギンはNまたはAsn;アスパラギン酸はDまたはAsp;システインはCまたはCys;グルタミンはQまたはGln;グルタミン酸はEまたはGlu;グリシンはGまたはGly;ヒスチジンはHまたはHis;イソロイシンはIまたはIle;ロイシンはLまたはLeu;リジンはKまたはLys;メチオニンはMまたはMet;フェニルアラニンはFまたはPhe;プロリンはPまたはPro;セリンはSまたはSer;スレオニンはTまたはThr;トリプトファンはWまたはTrp;チロシンはYまたはTyr;およびバリンはVまたはVal。
【0062】
上記に列挙された方法の各々において、本発明の方法における使用のために企図される、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、AATの一部または断片に対応するアミノ酸ペプチドを含む一連のペプチドをさらに含む。例えば、限定目的ではなく、AATの10アミノ酸断片に対応するアミノ酸ペプチドが、本発明の組成物および方法における使用のために特に企図される。特に、以下のアミノ酸ペプチドまたはその任意の組合せである。
本発明の組成物および方法における使用のために企図される列挙されたAATペプチドが、上述のSEQ ID NO:1の10アミノ酸AATペプチド以外の任意の、およびすべての特異的AATペプチドを含むと企図されることが、特に意図される。例えば、SEQ ID NO:1のAATペプチドのアミノ酸1位〜10位、アミノ酸11位〜20位、アミノ酸21位〜30位などが本明細書に列挙されているのに対して、本発明の使用の組成物および方法の範囲は、SEQ ID NO:1の各々の特異的なAATペプチドを実際に列挙することなく、すべての可能なAATペプチドの組合せ、例えばSEQ ID NO:1のアミノ酸2位〜12位、アミノ酸3位〜13位、4位〜14位など、ならびにSEQ ID NO:1のアミノ酸を選択して対応する任意の、およびすべてのAATペプチド断片を特異的に含むことが意図される。従って、例示目的のために、かつ限定目的のためではなく、出願人は、SEQ ID NO:1に記述されるアミノ酸配列に基づく任意のおよびすべてのAATペプチド変種に基づく組成物、および本発明の方法におけるこのような組成物の使用を保有する権利を本明細書において有する。
【0063】
本発明の組成物および方法における使用のために企図されるAATおよび類似活性化合物は、一連のアッセイによって同定することができ、ここで、化合物(AAT)は、1つのアッセイにおいて、対照に対する阻害活性を示す。これらのアッセイの1つは、本開示の詳細な説明の実施例1において詳述されるような感染のインビトロモデルにおいて、ヒト単球由来マクロファージの感染をブロックする段階を含む。
【0064】
1つの態様において、炭疽菌、ジフテリア菌(Corynebacterium diptheriae)、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の使用に関して、元来(native)のα1-抗トリプシン分子のアミノ酸を含むアミノ酸配列を有するα1-抗トリプシン変種を含むフューリンエンドプロテアーゼ阻害因子は、米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるような元来のα1-抗トリプシンのアミノ酸配列の355位〜358位において、元来のタンパク質の355位〜358位(-Ala-Ile-Pro-Met-)が新規な配列-Arg-X-X-Arg-(ここで、Xは任意のアミノ酸である)に変化している以外は、本発明の範囲から特に除外される。
【0065】
米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるように、α1-抗トリプシンのアミノ酸Portland配列の355位〜358位におけるアミノ酸配列が、-Ala-Ile-Pro-Arg-であるα1-抗トリプシンPortland変種もまた、炭疽菌、ジフテリア菌、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の範囲から特に除外される。
【0066】
米国特許第5,604,201号および第6,022,855号において開示されるように、アミノ酸配列-Arg-Xaa-Xaa-Arg-(ここで、各Xaaは任意のアミノ酸である)を含む約4アミノ酸〜約100アミノ酸の長さのアミノ酸配列を有するペプチドもまた、炭疽菌、ジフテリア菌、または緑膿菌のいずれかによって引き起こされる症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の範囲から特に除外される。
【0067】
さらに別の態様において、炭疽の症状を予防または改善するための本発明の組成物および方法の使用に関して、Miroslav S. Sarac et al. (Infection and Immunity, January 2004, p. 602-605, Vol. 72, No. 1 Protection against Anthrax Toxemia by Hexa-D-Arginine In Vitro and In Vivo)において開示されるようなHexArgを含むフューリンエンドプロテアーゼ阻害因子は、本発明の範囲から特に除外される。
【0068】
本発明は、このような薬剤を含む薬学的組成物をさらに含む。
【0069】
投与のための好ましい用量は、製剤のmlまたはmgあたり約10ng〜約10mgの間の範囲のいずれかであり得る。AATペプチドまたはAATもしくはペプチド薬物と同様の活性を有する薬物の治療有効量は、モル濃度で測定することもでき、これは約1nM〜約10mMの間の範囲であり得る。製剤はまた、薬学的にまたは化粧品的に許容される担体と組み合わせて企図される。正確な用量は、過度の実験を伴うことなく、周知の慣行的な試験によって確立され得る。
【0070】
本発明の1つの局面において、本発明の薬学的組成物は、経口的に、全身的に、移植物を通して、静脈内へ、局所的に、くも膜下腔内へ、頭蓋内へ、脳室内へ、吸入により、または経鼻的に投与される。
【0071】
本発明の方法の特定の態様において、対象または哺乳動物はヒトである。
【0072】
本発明の方法の他の態様において、対象または哺乳動物は、獣医学的な動物および/または家畜化された哺乳動物である。
【0073】
本発明の重要な特徴は、以下に続く詳細な説明がより良好に理解できるように、かつ本発明の寄与がより良好に評価されるように、このように、むしろ広範に概説されてきた。本明細書中以下に記載される、本発明のさらなる特徴が存在する。
【0074】
この点に関して、本発明の少なくとも1つの態様を詳細に説明する前に、本発明は、その応用において、以下の説明および図面に示されるような詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は他の態様が可能であり、種々の方法で実施および実行することが可能である。さらに、本明細書で採用される命名法および用語は、説明目的のためのものであり、限定と見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0075】
このように、当業者は、本開示が基づき、本発明のいくつかの特徴および利点を実行する目的で他の方法を設計するための基礎として容易に使用され得る概念を認識する。したがって、このような等価な構成が、それらが本発明の精神および範囲から逸脱しない限りにおいて、特許請求の範囲に含まれると見なされることは重要である。
【0076】
発明の詳細な説明
標準的方法
本発明に従って、当技術分野内にある従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術が採用され得る。このような技術は、文献に十分に説明されている。例えば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N. Y.; Animal Cell Culture, R.I. Freshney, ed., 1986)を参照されたい。
【0077】
治療方法
本発明は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその機能的誘導体を示す物質の有効量;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を、治療を必要とする対象に投与する段階を含む、ミコバクテリア感染を治療するための方法を提供する。
【0078】
本発明の方法に従って、マクロファージのミコバクテリア感染が阻害されて、重要な治療的利点を得る。
【0079】
したがって、本発明の組成物、すなわち、α1-抗トリプシン、またはその断片、誘導体、またはアナログの用量の投与は、ミコバクテリアの疾患または障害の治療のために有益であり得る。好ましい局面において、この薬剤は、血液脳関門を通過することができるα1-抗トリプシンのアナログであり、これは、静脈内へのまたは経口での投与を可能にする。血液脳関門を通過するために多くの戦略が利用可能であり、これらには、分子の疎水性性質を増大させること;血液脳関門における受容体に標的化されるトランスフェリンのような担体に、結合体として分子を導入することなどが含まれるが、それらに限定されない。別の態様において、薬剤は、頭蓋内に、またはより直接的には、脳室内に投与され得る。さらに別の態様において、薬剤は、吸入によって、または経鼻的に投与され得る。
【0080】
さらなる態様において、本発明の方法および組成物は、免疫系のミコバクテリア疾患または障害の治療的処置において有用である。またさらなる態様において、予防剤として本発明の薬剤の適時の投与によって、症状もしくは兆候の発生の前に、またはミコバクテリア疾患の重篤な症状もしくは兆候の発生の前に、疾患が予防され得る。従って、特定のミコバクテリア疾患についてのリスクを有する患者は、予防措置として、セリンプロテアーゼ阻害因子、例えば、(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミドにより治療され得る。
【0081】
本発明の薬剤の有効な用量、および適切な治療の処方計画は、徴候および患者の状態、および分子それ自体の性質、例えば、インビボ半減期および活性のレベルに伴って変化し得る。これらのパラメーターは、当業者によって容易に扱われ、かつ慣行的な実験によって決定され得る。
【0082】
投与のための好ましい用量は、治療される患者の生物学的液体のmlあたり、約0.01mg〜約20mgの間の範囲のいずれかであり得る。α1-抗トリプシン、ペプチド、またはα1-抗トリプシンもしくはペプチドと同様の活性を有する薬物の治療有効量はまた、モル濃度で測定することもでき、これは約1nM〜約2mMの間の範囲であり得る。
【0083】
セリンプロテアーゼ阻害因子
本発明は、本明細書に記載される実施例に限定されず、かつ当該分野において公知である他のセリンプロテアーゼが本発明の制限内で使用され得ることが理解される。例えば、当業者は、国際公開公報第98/24806号(これは、セリンプロテアーゼ阻害因子として、置換オキサジアゾール、チアジアゾール、およびトリアゾールを開示する)において記載されているような阻害因子を容易に採用することが可能である。米国特許第5,874,585号は、セリンプロテアーゼ阻害因子として有用な置換複素環化合物を開示しており、これには以下が含まれる:(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミドベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(2-フェニルエチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(2-メトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トリフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(メチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(ジフルオロメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(ベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-メトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(2,6-ジフルオロベンジル)-l,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-スチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-4-トリフルオロメチルスチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(トランス-4-メトキシスチリル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-チエニルメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(フェニル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;および(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェニルプロピル)-1,2,4-オキサジアゾリル)カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド。米国特許第5,216,022号は、本発明の実施のために有用である他の低分子を開示し、それには以下が特に含まれる:ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[1-(2-[5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド(CE-2072としても知られる);ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[1-(2-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;ベンジルオキシカルボニル-L-バリル-N-[-(2-(5-(メチル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(4-ジメチルアミノベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(2-(5-(1-ナフチルエニル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-[1-(3-(5-(3,4-メチレンジオキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジメトキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジトリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-メチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(ビフェニルメチン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(4-フェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-フェノキシベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(シクロヘキシルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルジメチルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(1-ナフチルメチレン)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(3-ピリジルメチル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[1-(3-(5-(3,5-ジフェニルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-N-[l-(3-(5-(4-ジメチルアミノベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-L-プロリナミド;2-(5-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(S)-2-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-アミノ-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(S)-2-メチルプロピル]アセトアミド;2-(5-アミノ-6-オキソ-2-(4-フルオロフェニル)-1,6-ジヒドロ-1-ピリミジニル]-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-メチルプロピル]アセトアミド;(ピロール-2-カルボニル)-N-(ベンジル)グリシル-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(ピロール-2-カルボニル)-N-(ベンジル)グリシル-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)]-1,2,4-オキサジアゾリル)-(S)-メチルプロピル]アミド;(2S,5S)-5-アミノ-1,2,4,5,6,7-ヘキサヒドロアゼピノ-[3,2,1]-インドール-4-オン-カルボニル-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-(R,S)-2-メチルプロピル]アミド;BTD-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(R,S)-3-アミノ-2-オキソ-5-フェニル-1,4,-ベンゾジアゼピン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;(ベンジルオキシカルボニル)-L-バリル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;アセチル-2-L-(2,3-ジヒドロ-1H-インドール)-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アミド;3-(S)-(ベンジルオキシカルボニル)アミノ)-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(S)-(アミノ)-ε-ラクタム-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミドトリフルオロ酢酸塩;3-(S)-[(4-モルフォリノカルボニル-ブタノイル)アミノ]-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(R,S)-メチルプロピル]アセトアミド;6-[4-フルオロフェニル]-ε-ラクタム-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-フェニル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-フェニル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]ヒドロキシメチル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;2-(2-(R,S)-ベンジル-4-オキソチアゾリジン-3-イル]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]-アセトアミド;2-(2-(R,S)-ベンジル-4-オキソチアゾリジン-3-イルオキシド]-N-[l-(3-(5-(3トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(R,S,)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-ベンゾイル-3,8-キナゾリンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-ベンゾイル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;(1-フェニル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;[(1-フェニル-3,6-ピペラジンジオン)-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)]-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-l,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(ベンジルオキシカルボニル)アミノ]-7-ピペリジニル-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(カルボメトキシ-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-(アミノ-キノリン-2-オン)-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル)]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3-[(4-モルフォリノ)アセト]アミノ-キノリン-2-オン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;3,4-ジヒドロ-キノリン-2-オン-
N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-フルオロベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-ジメチルアミノベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-(4-カルボメトキシベンジリデン)ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-アセチル-3-[(4-ピリジル)メチレン]ピペラジン-2,5-ジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(R)-ベンジル-ピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(2-[5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3(R)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-ベンジル-3-(S)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(3-(5-(2-ジメチルアミノエチル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-メチル-3-(R,S)-フェニルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[[-メチル-3-(R,S)-フェニルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;4-[1-(4-モルフォリノエチル)3-(R)-ベンジルピペラジン-2,5,-ジオン]-N-[l-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R,S)-フェニル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(S)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(S)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;5-(R)-ベンジル-2,4-イミダゾリジンジオン-N-[1-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;1-ベンジル-4-(R)-ベンジル-2,5-イミダゾリジンジオン-N-[1-(2-(5-(3-メチルベンジル)-1,3,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド;および1-ベンジル-4-(R)-ベンジル-2,5-イミダゾリジンジオン-N-[l-(3-(5-(3-トリフルオロメチルベンジル)-1,2,4-オキサジアゾリル]カルボニル)-2-(S)-メチルプロピル]アセトアミド。
【0084】
同様に、米国特許第5,869,455号はN置換誘導体を開示し;米国特許第5,861,380号はプロテアーゼ阻害因子のケトおよびジケト含有環系を開示し;米国特許第5,807,829号はセリンプロテアーゼ阻害因子のトリペプトイドアナログを開示し;米国特許第5,801,148号はセリンプロテアーゼ阻害因子のプロリンアナログを開示し;米国特許第5,618,792号はセリンプロテアーゼ阻害因子として有用である置換複素環化合物を開示する。これらの特許およびPCT刊行物および下記に列挙するような他のものは、それらの全体が参照として本明細書に組み入れられる。α1-抗トリプシンの代わりに使用されうるか、またはα1-抗トリプシンと組み合わせて使用されうる、他の等しく有利な分子は、例えば、ノミ由来のセリンプロテアーゼ阻害因子を開示する国際公開公報第98/20034号において企図される。この単一の参考文献に限定されることなく、当業者は、例えば、以下の化合物を、容易に、かつ過度の実験を伴うことなく採用し得る:セリンプロテアーゼを阻害するために有用であるアミノグアニジンおよびアルコキシグアニジン化合物を開示する国際公開公報第98/23565号;システインプロテアーゼおよびセリンプロテアーゼの障害を治療するために有用であるビス-アミノメチルカルボニル化合物を開示する国際公開公報第98/50342号;トロンビン関連疾患のために有用である環状およびその他のアミノ酸誘導体を開示する国際公開公報第98/50420号;D-アミノ酸含有誘導体を開示する国際公開公報第97/21690号;セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼのケトメチレン基含有阻害因子を開示する国際公開公報第97/10231号;セリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼのリン含有阻害因子を開示する国際公開公報第97/03679号;セリンプロテアーゼのベンゾチオおよび関連複素環阻害因子を開示する国際公開公報第98/21186号;二価カチオンのキレート部位を有するセリンプロテアーゼのP部位に結合する阻害因子の組み合わせを開示する国際公開公報第98/22619号;カスパーゼ3(CPP32/Yama/Apopain)を含むプロ酵素CPP32サブファミリーの転換を阻害する組成物を開示する国際公開公報第98/22098号;ピローロ-ピラジン-ジオンを開示する国際公開公報第97/48706号;セリンプロテアーゼ阻害因子としてのヒト胎盤ビクニン(組換え)を開示する国際公開公報第97/33996号;本明細書上記に開示されるウイルス感染および状態を治療するための複合体アミノ酸含有分子を開示する国際公開公報第98/46597号。
【0085】
セリンプロテアーゼ阻害活性を有する他の化合物は、本発明の方法における使用のために等しく適切かつ効果的であり、以下が特に含まれるが、これらに限定されない:国際公開公報第97/24339号において開示されるテトラゾール誘導体;国際公開公報第97/37969号ならびに米国特許第4,283,418号;第4,843,094号;第4,310,533号;第4,283,418号;第4,224,342号;第4,021,472号;第5,376,655号;第5,247,084号;および第5,077,428号において開示されるグアニジノ安息香酸誘導体;国際公開公報第97/45402号において一般式によって表されるフェニルスルホニルアミド誘導体;国際公開公報第97/49679号において一般式によって表される新規なスルフィド、スルホキシド、およびスルホン誘導体;国際公開公報第99/41231号において一般式によって表される新規アミジノ誘導体;米国特許第5,432,178号;第5,622,984号;第5,614,555号;第5,514,713号;第5,110,602号;第5,004,612号;および第4,889,723号において開示される他のアミジノフェノール誘導体。
【0086】
本発明によって扱われるミコバクテリア疾患
本発明のマクロファージのミコバクテリア感染を阻害する治療方法が有益である特定のミコバクテリア疾患または障害は、以下を含むミコバクテリア属からのミコバクテリアによって引き起こされるミコバクテリア疾患または障害を含むがこれらに限定されない:ヒト型結核菌、ウシ型結核菌、らい菌、M.アビウム-イントラセルラーレ、M.ケロネイ(ボルステレンセおよびアブセッサスとしても知られる)、M.アフリカヌム、M.マリニウム(バルネイおよびプラチポエシルスとしても知られる)、M.ブルーリ(ウルセランスとしても知られる)、M.フォーツイタム(ギエ、ミネッティ、およびラーネとしても知られる)、M.ヘモフィルム、M.イントラセルラーレ、M.カンサシ(ルシフラブムとしても知られる)、M.リットラーレ(ゼノピとしても知られる)、M.マルモエンセ、M.マリアヌム(スクロフラセウムおよびパラフィニクムとしても知られる)、M.シミエ、M.シュルガイ、およびM.ウルセランス、トリ型結核菌(ブルネンセとしても知られる)、M.フラバセンス、ネズミらい菌、M.ミクロティ、およびパラ結核菌(これは、ヨーネ病およびおそらくクローン病の原因因子である)、M.ゴルドネ (アクエとしても知られる)、M.ガストリ、M.フレイ (モエレーリおよびチモテ-バシラスとしても知られる)、M.ノンクロモゲニクム、M.スメグマティス、M.テレ、M.トリビアーレ、およびM.バッカエ。
【0087】
別の態様において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアは、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、およびグループIV群(迅速増殖型ミコバクテリア)からなる群より選択されるラニヨン群を含む4つの群に分けられる非結核性ミコバクテリアを含む、ミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む。
【0088】
炭疽菌および炭疽毒素
グラム陽性、杆型形状、好気性、胞子形成の細菌である炭疽菌(Bacillus anthracis)によって産生される炭疽毒素は、この生物によって分泌される毒性の病原性因子である。炭疽菌は、しばしば、分泌された外毒素の効力、および過酷な環境条件に抵抗性である休眠胞子を形成する細菌の能力に起因して、生物兵器としての使用が考慮される。胞子形成は、容易な輸送および大量の毒素産生細菌の散布を可能にする。この毒素は、実際には、細菌からの3つの別々の分泌タンパク質からなる複合物である。3つのタンパク質は、防御抗原(PA)、致死因子(LF)、および水腫因子(EF)である。LFおよびEFが直接的に細胞に損傷を与えかつ疾患を引き起こすのに対して、PAは本開示の焦点である。PA分子は、細胞の膜の内部にLFとEFの両方を輸送するように設計されているので、PAが炭疽毒素の病原性に決定的である。PA誘導性の細胞内輸送の非存在下では、LFおよびEFのみが細胞内で機能するので、炭疽毒素が組織破壊をもたらすことは不可能である。炭疽毒素の機能におけるPAの重要性は、炭疽ワクチンにおける免疫原としてのPAの効果的な使用によって強調されている。PAに対する免疫応答を産生することによって、このワクチンは、完全な(3成分)炭疽毒素に対する防御を付与する。
【0089】
PAと、炭疽毒素によって攻撃された宿主細胞との間の相互作用のより密接な試験は有益である。PAは、最初に、大きくかつ機能的に不活性型の状態で炭疽菌から分泌される。この不活性型PAは、宿主細胞の表面上の受容体に結合する。このPA受容体は、最近単離および配列決定され、フォンビルブランド因子様領域を有することが見い出された。宿主細胞の表面上へのドッキング後、PAは、細胞表面上に存在するプロテアーゼと相互作用する。プロテアーゼは、大きくかつ不活性型のPA分子を、より小さくかつ活性型の残余物に切断(プロセシング)する。このプロテアーゼの同一性は、不十分な研究の労力の焦点であり、かつこれは特徴付けが乏しい。しかし、以前の研究は、このプロテアーゼが、これが宿主由来セリンプロテアーゼであることを示唆する特徴を有することを示している。文献に記述されている可能性のあるセリンプロテアーゼの候補は、フューリン(それ自体セリンプロテアーゼである)であるが、他のセリンプロテアーゼ、例えば、エラスターゼ、プロテイナーゼ3、またはトリプシンなどは可能性のある代替物である。細胞表面セリンプロテアーゼの作用によって一旦プロセシングされると、活性化されたPA分子は、細胞表面上で7個の群(ヘプタマー)に自己集合化する。これらのヘプタマーは、LFおよびEFを細胞の内側に送達するための輸送ビヒクルとして機能する。一旦細胞の内部に入ると、LFおよびEFは細胞機能の異常化を開始する。
【0090】
炭疽毒素の作用を無効にする新規なアプローチは、細胞の内部への毒素の接近をブロックすることである。本発明者は、以前の広範囲な実験室研究において(Leland Shapiro et al. Facet 2000 vol. 15: 115-122、およびDr. Leland Shapiroの未公開データ)、細胞表面上に存在するセリンプロテアーゼが、セリンプロテアーゼ機能を阻害するいくつかの型の分子の作用によって中和され得ることを示した。セリンプロテアーゼの最も重要な天然の内因性阻害因子はα1-抗トリプシン(AAT)である。AATレベルがリンパ管で減少していること、ならびに炭疽毒素および疾患の出現がリンパ管中で生じることは注目に値する。AAT量の減少がセリンプロテアーゼ機能の増強に導く微小環境を提供するので、毒素産生がリンパ管組織において起こることが可能である。このような状態は、活性化炭疽毒素の産生を増大することが予測される。それゆえに、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与することは、細胞表面上に存在する宿主由来のセリンプロテアーゼの活性をブロックすることによって、炭疽毒素の活性を減弱または無効にするために役立つ。これは、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA残余物への細胞表面プロセシングを打ち消す。このように、宿主由来のセリンプロテアーゼ活性に干渉することによって、プレ細孔および最終的には細孔を形成するヘプタマーPA63の能力を破壊する。この新規なアプローチを使用して炭疽毒素を解除することによって(図4A〜4Hを参照されたい)、代替的なアプローチに対していくつかの利点が得られ、これは、限定目的ではないが以下の通りである。
【0091】
1.炭疽感染を治療するための戦略としてのセリンプロテアーゼ阻害は、選択圧に起因して、細菌変異に影響されない可能性が高い。宿主細胞起源のセリンプロテアーゼを標的化または阻害するために選択することによって、標的分子は変異されない。
【0092】
2.合成セリンプロテアーゼ阻害因子(AAT様模倣物)が開発可能であり、開発された(下記を参照されたい、CE-2072)。このような薬学的薬剤は、当技術分野における口腔消費のための丸薬に製剤化されてもよく、または吸入炭疽を治療するための吸入剤として製剤化されてもよい。
【0093】
3.ヒトにおける代替的使用のためにすでに認可されている市販の薬剤は、炭疽のための治療として使われている。これらの薬剤は、炭疽毒性以外の徴候のために現在使用されており、注射用AAT、血漿調製物、アプロチニン、およびその他を含む(American J.Of Resp Critical Care Med 1998, Vll 158: 49-59)。本発明の1つの可能な具体化は、即座の実用的応用であってもよい。セリンプロテアーゼ阻害因子は、吸入によって患者に送達されてきた。炭疽感染の多くの致死型は肺侵襲であるので、吸入剤(天然のAATまたは合成のAAT様模倣物/または他のセリンプロテアーゼ阻害因子)が、局所的濃度の上昇、薬物送達の容易さ、および副作用の欠如(なぜなら投与が全身的でないため)に起因して、とりわけ有用であり得る。薬物送達に焦点を当てているこの様式は、炭疽が劇症性疾患を開始すると考えられている主要な部位である肺および縦隔のリンパ管中のセリンプロテアーゼ阻害因子活性を増強し得る。
【0094】
4.炭疽毒素を中和することによって、疾患の直接的原因が感染した個体において破壊される。他方、抗生物質は、毒素活性を標的とせず、細菌の破壊の前に産生される毒素には影響を与えることができない。本発明は、1種またはそれ以上の抗菌性抗生物質の投与と組み合わせて宿主細胞セリンプロテアーゼを阻害することを特に意図する。抗生物質は、細菌の増殖および/または毒素の細菌供給源を殺傷することによって、毒素産生をさらに停止する。
【0095】
5.炭疽治療に対するこのアプローチは安全である可能性が高い。遺伝的AAT欠損を有する患者を治療するために注射用AATを使用する広範囲の臨床的症例が存在する。長期間の有害な効果は今日まで検出されていない(American J. Of Resp Critical Care Med 1998, Vll 158: 49-59; Wencker et al. Chest 2001 119: 737-744)。さらに、宿主セリンプロテアーゼの低分子阻害因子は、優秀な安全性および耐容性の記録を伴って、川崎病を有する患者に投与されてきた(ウリニスタチン(Ulinistatin)、Ono pharmaceuticals)。さらに、炭疽感染を治療するための宿主セリンプロテアーゼの阻害は、短い治療期間のみを必要とするので、従って、AATまたはAAT様模倣物/またはセリンプロテアーゼの他の阻害因子への長期的曝露に伴ういかなる懸念をも最小限にする。
【0096】
6.可溶性炭疽受容体(Bradley et al. Nature 2001 vol. 414)、炭疽生物のバクテリオファージ溶解(Schuch et al. Nature 2002 vol. 418 884-889)、ドミナントネガティブ変異体炭疽毒素成分(Sellman et al. Science 2001 Vl. 292: 695-697)および多価阻害因子(Mourez et al Nature Biotech 2001 Vol. 19,:958-961)もまた、本発明の炭疽に基づく方法と組み合わせて使用され得る。
【0097】
従って、上記の観点において、本発明は、炭疽菌に曝露されたことが疑われるか、または炭疽菌への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む。本発明はまた、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法を提供し、この方法は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む。
【0098】
上記に列挙した方法の各々において、炭疽の臨床的症状は、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の投与によって、阻害または予防され得る。
【0099】
炭疽の臨床的症状
炭疽は、3つの一般的な臨床的実体:i)吸入型、ii)皮膚型、およびiii)胃腸型として起こる。
【0100】
i)吸入炭疽はこの疾患の致死型であり、これは、生物兵器の議論または事故において含まれることが最も可能性が高いものである。通常、感染したヒトは、炭疽胞子を、偶然にまたは生物兵器攻撃の間に吸入する。1〜6日間のインキュベーション期間後、二相性の疾病が続いて起こる。最初に、非特異的な倦怠感/発熱/空咳/筋肉痛、および胸痛が存在する。第2の相は、最初の相の2〜3日後に起こり、換気機能障害、発汗、放射線撮影検査における縦隔の拡張、ならびに頸部および胸部の水腫に加えて、上記に列挙した構成的に非特異的な所見の進行からなる。疾病のこの病期は、壊死性縦隔リンパ節炎によって特徴付けられる。疾患のこの第2の病期は、2日以内にショックまたは死亡まで急速に進行することがあり、80%までの死亡率が報告されている。動物モデルにおける死亡のメカニズムは、炎症誘発性サイトカイン、とりわけIL-1の産生の増加であるようである。他の組織と比較して、リンパ管はセリンプロテアーゼ阻害因子の活性が欠失していることは注目すべきであり、本発明の開示を参照可能である。この意味は、炭疽毒素が身体の領域(リンパ管)において選択的に活性化されることであり、ここでは、セリンプロテアーゼ活性が優勢である、セリンプロテアーゼ/抗セリンプロテアーゼ機能の不均衡が存在する。吸入炭疽を治療するための本発明を使用するために好ましい態様は、吸入によって大量のセリンプロテアーゼ阻害因子(天然または合成)を送達することである。これは、肺および縦隔リンパ管組織において、セリンプロテアーゼ/セリンプロテアーゼ阻害因子の不均衡の、抗プロテアーゼ活性に向けてのシフトを生じる。これは、炭疽毒素の活性のために必要とされる細胞表面プロセシング事象のブロックをもたらす。
【0101】
ii)皮膚炭疽は、ヒトにおける炭疽感染の最も一般的な(>95%)型である。炭疽胞子への曝露に際して、剥皮された皮膚(切り傷、擦過傷など)は、炭疽生物が胞子状態から出現し、増殖および複製し、そして炭疽毒素を産生することを可能にする環境を提供する。1週間以内に、炭疽接種の領域は痛みのない丘疹を発生する。次いで、次の1〜2日間にわたって丘疹の上またはその近傍に小胞が形成し、続いてすぐに熱および倦怠感、ならびに毒素活性に起因する皮膚病巣を取り囲む非圧痕水腫の発生が起こる。もともとの病巣(しばしば、もう小胞になっている)は破裂して、壊死性潰瘍および膨張を形成し、これは、皮膚炭疽感染を特徴付ける瘢痕の形成を生じる。治療の非存在下において、この疾患は、20%の死亡率を有する。回復する者については、瘢痕は1〜2週間で脱落する。皮膚炭疽の治療のための本発明の好ましい態様は、局所的/クリーム調製物においてセリンプロテアーゼ阻害因子(天然または合成)を投与することである。非経口セリンプロテアーゼ阻害因子治療はまた、全身性症状が現れる事象において同時投与してもよく、またはこのような非経口治療は、臨床的に皮膚に局在化しそうな炭疽のために予防的に投与してもよい。
【0102】
iii)胃腸炭疽は炭疽胞子の摂取後に現れる。2〜5日後、悪心/嘔吐/熱、および腹痛を発症する。出血性下痢がすぐに続き、「急性腹症」が現れる。この腹症における病理は、粘膜潰瘍を含む。また、出血性腸間膜リンパ節炎が発生し、そしてこれは、再度、セリンプロテアーゼ阻害因子欠損微環境における炭疽毒素の選択的活性化と一致する。この疾患は、50%の死亡率を有する。
【0103】
本発明の組成物および方法における使用のための単離されたタンパク質
本発明の1つの局面は、単離されたタンパク質、およびその生物学的に活性な部分、ならびに本発明のポリペプチドに対して指向される抗体を惹起するための免疫原としての使用のために適切であるポリペプチド断片に関する。1つの態様において、元来のポリペプチドは、標準的なタンパク質精製技術を使用する適切なタンパク質精製スキームによって、細胞または組織供給源から単離され得る。別の態様において、本発明のポリペプチドは、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現に対する代替として、本発明のポリペプチドは、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。
【0104】
遺伝子操作方法によって産生されるα1-抗トリプシンの組換え未改変変種または変異体変種もまた知られている(米国特許第4,711,848号)。ヒトα1-抗トリプシンおよび他のヒトα1-抗トリプシン変種のヌクレオチド配列は、国際出願の国際公開公報第86/00,337号(その内容全体が参照として本明細書に組み入れられる)において開示されている。このヌクレオチド配列は、DNA技術および当業者に公知である方法を使用して、組換え本発明に示されるすべてのAATアミノ酸変種およびアミノ酸断片を生成するための出発物質として使用され得る。
【0105】
「単離された」または「精製された」タンパク質またはその生物学的に活性な部分は、そのタンパク質が由来する細胞もしくは組織供給源からの細胞物質、もしくは他の夾雑タンパク質を実質的に含まないか、または化学合成された場合には化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含まない。「実質的に細胞物質を含まない」という語句は、タンパク質がそこから単離され、またはそこから組換え的に産生される細胞の細胞成分から、そのタンパク質が分離されているタンパク質の調製物を含む。従って、細胞物質を実質的に含まないタンパク質は、約30%、20%、10%、または5%(乾燥重量で)未満の異種タンパク質(本明細書では「夾雑タンパク質」とも呼ばれる)を有するタンパク質の調製物を含む。タンパク質またはその生物学的に活性な部分が組換え的に産生される場合、これはまた、培養培地を実質的に含まず、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%、10%、または5%未満ということである。タンパク質が化学合成によって産生される場合、好ましくは、化学前駆体または他の化学物質を実質的に含まず、すなわち、これは、そのタンパク質の合成に関与している化学前駆体または他の化学物質から分離されている。従って、タンパク質のこのような調製物は、約30%、20%、10%、5%(乾燥重量で)未満の化学前駆体または関心対象のポリペプチド以外の化合物を有する。
【0106】
本発明のポリペプチドの生物学的に活性な部分には、タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60のいずれかに示されるアミノ酸配列)に対して十分に同一であるか、またはその配列に由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、これは、全長タンパク質よりも少ないアミノ酸を含み、および対応する全長タンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性は部分は、対応するタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。本発明のタンパク質の生物学的に活性な部分は、例えば、10、25、50、100またはそれ以上の長さのアミノ酸であるポリペプチドであり得る。さらに、タンパク質の他の領域が欠失している他の生物学的に活性な部分は、組換え技術によって調製でき、および元来型の本発明のポリペプチドの1つまたはそれ以上の機能的活性について評価できる。
【0107】
好ましいポリペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のアミノ酸配列を有する。他の有用なタンパク質は、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のいずれかに対して実質的に同一であり(例えば、少なくとも約45%、好ましくは55%、65%、75%、85%、95%、または99%)、かつ対応する天然に存在するタンパク質のタンパク質機能活性を保持しているが、天然の対立遺伝子のバリエーションまたは変異誘発に起因してアミノ酸配列が異なっている。
【0108】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸の同一性パーセントを決定するために、配列は、最適比較の目的のために整列化される(例えば、ギャップは、第2のアミノ酸配列または核酸配列との最適なアラインメントのために、第1のアミノ酸配列または核酸配列の配列中に導入され得る)。次いで、対応するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置におけるアミノ酸残基またはヌクレオチドが比較される。第1の配列中の位置が、第2の配列中の対応する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドによって占められているならば、これらの分子はその位置で同一である。2つの配列間の同一性パーセントは、配列によって共有される同一位置の数の関数である(すなわち、同一性%=同一位置の数/位置の総数(例えば、重複する位置)×100)。1つの態様において、2つの配列は同じ長さである。
【0109】
2つの配列間の同一性パーセントの決定は、数学的アルゴリズムを使用して達成され得る。2つの配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin and Altschul (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. 90: 5873-5877によって変更された、Karlin and Altschul (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 2264-2268のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、Altschul, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410のNBLASTおよびXBLASTプログラムに組み入れられている。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワード長=12を用いて実行され、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索は、 XBLASTプログラム、スコア=50、ワード長=3を用いて実行され、本発明のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のためにギャップを有するアラインメントを得るために、ギャップ付きBLASTが、Altschul et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されるように利用され得る。代替として、PSI-Blastが、分子間の距離の離れた関連性を検出する反復検索を実行するために使用され得る(同上)。BLAST、ギャップ付きBLAST、およびPSI-Blastプログラムを利用する場合、それぞれのプログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターが使用され得る。http://www. ncbi. nlm. nih. govを参照されたい。
【0110】
別の好ましい、配列の比較のために利用される数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Myers and Miller, CABIOS (1989)のアルゴリズムである。このようなアルゴリズムは、CGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。アミノ酸配列を比較するためにALIGNプログラムを利用する場合、PAM120重み残基表、12のギャップ長ペナルティー、および4のギャップペナルティーが使用され得る。配列分析のためのさらなるアルゴリズムは当技術分野において公知であり、これにはTorellis and Robotti (1994) Comput. Appl. Biosci., 10: 3-5において記載されているADVANCEおよびADAM; Pearson and Lipman (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. 85: 2444-8において記載されるFASTAが含まれる。FASTAでは、ktupは検索の感度および速度を設定する制御オプションである。ktup=2のとき、比較される2つの配列中の類似の領域は整列化された残基の対を見ることによって見い出される;ktup=1のとき、単一の整列化されたアミノ酸が調べられる。ktupは、タンパク質配列については2もしくは1、またはDNA配列については1〜6に設定され得る。デフォルトは、ktupが特定されていない場合には、タンパク質について2、DNAについて6である。FASTAパラメーターについてのさらなる説明は、http://bioweb.pasteur.fr/docs/Man/man/fasta.1.html#sect2(この内容は参照として本明細書に組み入れられる)を参照されたい。
【0111】
2つの配列間の同一性パーセントは、ギャップを許容することを伴って、または伴わずに、上記のいずれかに類似の技術を使用して決定され得る。同一性パーセントを計算する際に、正確な一致のみが計数される。
【0112】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの変種に関する。このような変種は、アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能し得る変化したアミノ酸配列を有する。変種は、変異誘発、例えば、別々の点変異または短縮化によって生成され得る。アゴニストは、タンパク質の天然に存在する型と実質的に同じ生物学的活性、またはそのサブセットを保持し得る。タンパク質のアンタゴニストは、例えば、関心対象のタンパク質を含む細胞のシグナル伝達カスケードの下流または上流のメンバーに競合的に結合することによって、タンパク質の天然に存在する型の活性の1つまたはそれ以上を阻害し得る。従って、特定の生物学的効果は、限られた機能の変種を用いる処理によって誘発され得る。タンパク質の天然に存在する型の生物学的活性のサブセットを有する変種を用いる対象の処理は、タンパク質の天然に存在する型を用いる処理と比較して、対象中でより少ない副作用を有し得る。
【0113】
アゴニスト(模倣物)またはアンタゴニストのいずれかとして機能する本発明のタンパク質の変種は、本発明のタンパク質の変異体、例えば、短縮変異体のコンビナトリアルライブラリーを、アゴニストまたはアンタゴニスト活性についてスクリーニングすることによって同定され得る。1つの態様において、変種の多彩なライブラリーは、核酸レベルでのコンビナトリアル変異誘発によって生成され、多彩な遺伝子ライブラリーによってコードされる。変種の多彩なライブラリーは、例えば、合成オリゴヌクレオチドの混合物を遺伝子配列に酵素的にライゲートすることによって産生することができ、その結果、潜在的なタンパク質配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして、または代替的に、より大きな融合タンパク質のセットとして(例えば、フェーズディスプレイのために)発現可能である。縮重オリゴヌクレオチド配列から本発明のポリペプチドの潜在的な変種のライブラリーを産生するために使用され得る種々の方法が存在する。縮重オリゴヌクレオチドを合成するための方法は当該分野において公知である(例えば、Narang (1983) Tetrahedron 39: 3; Itakura et al. (1984) Annu. Rev. Biochem. 53: 323; Itakura et al. (1984) Science 198: 1056; Ike et al. (1983) Nucleic Acid Res. 11: 477を参照されたい)。
【0114】
さらに、本発明のポリペプチドのコード配列の断片のライブラリーは、スクリーニングおよび変種の引き続く選択のために、ポリペプチドの多彩な集団を生成するために使用され得る。例えば、コード配列断片のライブラリーは、関心対象のコード配列の二本鎖PCR断片を、分子あたり約1回のみのニック形成が起こる条件下で、ヌクレアーゼを用いて処理すること、DNAを変性させて、異なるニックを有する生成物からセンス/アンチセンス対を含み得る二本鎖DNAを形成すること、S1ヌクレアーゼを用いる処理によって再形成した二重鎖から一本鎖部分を除去すること、および得られる断片ライブラリーを発現ベクターにライゲートすることによって、生成され得る。この方法によって、関心対象のタンパク質の種々のサイズのN末端断片および内部断片をコードする発現ライブラリーが誘導され得る。
【0115】
点変異または短縮化によって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、および選択された特性を有する遺伝子産物についてのcDNAライブラリーをスクリーニングするための、いくつかの技術が当技術分野において公知である。大きな遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために、ハイスループット分析に感受性である最も広範に使用されている技術は、典型的には、複製可能な発現ベクターに遺伝子ライブラリーをクローニングすること、得られるライブラリーのベクターで適切な細胞を形質転換すること、および、所望の活性の検出が、その産物が検出された遺伝子をコードするベクターの単離を容易にする条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現することを含む。再帰的アンサンブル変異誘発(REM)は、ライブラリー中の機能的変異の頻度を増強する技術であり、本発明のタンパク質の変種を同定するためのスクリーニングアッセイと組み合わせて使用され得る(Arkin and Yourvan (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 7811-7815; Delgrave et al. (1993) Protein Engineering 6 (3): 327-331)。
【0116】
本発明の単離されたポリペプチド、またはその断片は、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の調製のための標準的な技術を使用して、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。全長のポリペプチドまたはタンパク質が使用され、または代替的には、本発明は、免疫原としての使用のための抗原性ペプチド断片を提供する。本発明のタンパク質の抗原性ペプチドは、SEQ ID NO:1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、および60のアミノ酸配列の少なくとも8個(好ましくは、10個、15個、20個、または30個)のアミノ酸残基を含み、およびタンパク質のエピトープを包含し、その結果、ペプチドに対して惹起された抗体は、タンパク質との特異的免疫複合体を形成する。
【0117】
本発明の組成物および方法における使用のための融合タンパク質
本発明の上述の局面および態様の各々において、融合ポリペプチドもまた、本発明で特に企図される。
【0118】
1つの態様において、本発明の融合タンパク質は、組換えDNA技術によって産生される。組換え発現に対する代替として、本発明の融合ポリペプチドが、標準的なペプチド合成技術を使用して化学的に合成され得る。本発明はまた、本発明の融合ポリペプチドおよび薬学的許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む組成物を提供する。
【0119】
上記に列挙された方法の各々において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は融合ポリペプチドであってもよく、ここで、この融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質、ならびに哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質に対して相同であるアミノ酸配列を含む。
【0120】
本発明の特定の融合ポリペプチドの中には、例えば、SEQ ID NO:1において以下に示されるα1-抗トリプシンのアミノ酸配列を含む融合タンパク質がある。
【0121】
本発明の融合タンパク質は、異種アミノ酸配列がヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG1定常領域(改変ヒトIgG1定常領域を含む)などを含むようなものであり、ここで、IgG定常領域はFc受容体に結合せず、および/または抗体依存性細胞性細胞毒性(ADCC)反応を開始しない。
【0122】
特に、1つの態様において、融合タンパク質は、免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列である異種配列、例えば、ヒト免疫グロブリン定常領域、例えば、ヒトIgG定常領域を含む。融合タンパク質は、例えば、米国特許第5,714,147号、米国特許第5,116,964号、米国特許第5,514,582号、および米国特許第5,455,165号において開示されるように、例えば、免疫グロブリン定常領域のアミノ末端またはカルボキシ末端と融合された、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの部分を含み得る。本発明のポリペプチドのすべてまたは一部が免疫グロブリンタンパク質ファミリーのメンバーに由来する配列と融合される態様において、免疫グロブリンのFcR領域は、野生型であってもよいか、または変異してもよいかのいずれかである。特定の態様において、Fc受容体と相互作用せず、およびADCC反応を開始しない免疫グロブリン融合タンパク質を利用することが所望される。このような場合において、融合タンパク質の免疫グロブリン異種配列は、このような反応を阻害するように変異され得る。例えば、米国特許第5,985,279号および国際公開公報第98/06248号を参照されたい。
【0123】
本発明の一部として利用される融合タンパク質の異種アミノ酸配列はまた、融合タンパク質を同定、輸送、または精製するために有用なアミノ酸配列を含んでもよく、例えば、FLAGまたはHisタグ配列を含み得る。融合ポリペプチドは、例えば、融合ポリペプチドのα1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子の誘導体または模倣配列から異種アミノ酸配列を除去するために有用であり得る、タンパク質分解切断部位を含むアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0124】
特に、本発明の融合ポリペプチドの異種アミノ酸配列はまた、融合タンパク質を同定、輸送、または精製するために有用なアミノ酸配列を含んでもよく、例えば、FLAG(例えばHoop, T. P. et al., Bio/Technology 6, 1204-1210 (1988); Prickett, K. S. et al., BioTechniques 7, 580-589 (1989)を参照)またはHisタグ(Van Reeth, T. et al., BioTechniques 25, 898-904 (1998))配列を含み得る。融合タンパク質はさらに、例えば、融合ポリペプチドの哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド配列から異種アミノ酸配列を除去するために有用であり得る、タンパク質分解切断部位を含むアミノ酸配列をさらに含み得る。
【0125】
なお別の態様において、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ様活性阻害因子のポリペプチド融合タンパク質はGST融合タンパク質を含み、ここで、本発明の哺乳動物α1-抗トリプシンおよびセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド、GST配列のC末端に融合される。このような融合タンパク質は、本発明の組換えポリペプチドの精製を容易にし得る。GST、FLAG、またはHisTag融合構築物が、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチド融合タンパク質の構築において利用される態様において、タンパク質分解切断部位は、融合部分および哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの接合部に任意で導入され、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの精製に続いて、融合部分からの哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドの分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族の(cognate)認識配列には、例えば、非制限的に、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。典型的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc.; Smith and Johnson (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, Mass.)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, N. J.)が含まれ、これらは、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAと融合され、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子のポリペプチドタンパク質を標的とする。
【0126】
発現ベクターは、原核生物細胞(例えば、大腸菌)または真核生物細胞(例えば、昆虫細胞(バキュロウイルス発現ベクターを使用する)、酵母細胞、または哺乳動物細胞)において本発明の融合ポリペプチドの発現のために慣行的に設計され得る。適切な宿主細胞は、Goeddel、前出においてさらに議論されている。代替的には、組換え発現ベクターは、例えば、T7プロモーター調節配列およびT7ポリメラーゼを使用して、インビトロで転写および翻訳され得る。
【0127】
原核生物におけるタンパク質の発現は、最も頻繁には、融合タンパク質または非融合タンパク質のいずれかの発現を指向する構成的または誘導性プロモーターを含むベクターを用いて大腸菌中で実行される。融合ベクターは、そこにコードされたタンパク質に、通常は組換えタンパク質のアミノ末端に、多数のアミノ酸を加える。このような融合ベクターは、代表的には3つの目的に役立つ:1)組換えタンパク質の発現を増加させる;2)組換えタンパク質の溶解性を増加させる;および3)アフィニティー精製におけるリガンドとして作用することにより、組換えタンパク質の精製において補助する。しばしば、融合発現ベクターにおいて、タンパク質分解性切断部位は、融合部分および組換えタンパク質の接合部分に導入され、融合タンパク質の精製に続いて、融合部分からの組換えタンパク質の分離を可能にする。このような酵素、およびそれらの同族の認識配列には、例えば、非制限的に、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼが含まれる。代表的な融合発現ベクターには、pGEX(Pharmacia Biotech Inc; Smith and Johnson (1988) Gene 67: 31-40)、pMAL (New England Biolabs, Beverly, MA)およびpRIT5 (Pharmacia, Piscataway, NJ)が含まれ、これらは、それぞれ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAと融合され、組換えタンパク質を標的とする。
【0128】
適切な誘導性非融合大腸菌発現ベクターの例には、pTrc (Amann et al., (1988) Gene 69:301-315) およびpET 11d (Studier et al., Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 60-89)が含まれる。pTrcベクターからの標的遺伝子発現は、ハイブリッドtrp-lac融合プロモーターからの宿主RNAポリメラーゼ転写に依存する。pET 11dベクターからの標的遺伝子発現は、同時発現されたウイルスRNAポリメラーゼ(T7 gn1)によって媒介されるT7 gn10-lac融合プロモーターからの転写に依存する。このウイルスポリメラーゼは、lacUV 5プロモーターの転写制御下でT7 gn1遺伝子を有するレジデントプロファージから、宿主株BL21 (DE3)またはHMS174(DE3)によって供給される。
【0129】
大腸菌における組換えタンパク質発現を最大化するための1つの戦略は、組換えタンパク質をタンパク質分解的に切断する能力が損なわれている宿主細菌中でタンパク質を発現することである(Gottesman, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, California (1990) 119-128)。別の戦略は、各アミノ酸の個々のコドンが大腸菌において優先的に利用されるものであるように、発現ベクターに挿入される核酸の核酸配列を変化させることである(Wada et al. (1992) Nucleic Acids Res. 20: 2111-2118)。本発明の核酸配列のこのような変化は、標準的なDNA合成技術によって実行され得る。
【0130】
別の態様において、発現ベクターは、酵母発現ベクターである。酵母S.セレビシエにおける発現のためのベクターの例には、pYepSecl (Baldari et al. (1987) EMBO J. 6: 229-234)、pMFa(Kurjan and Herskowitz, (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88 (Schultz et al. (1987) Gene 54: 113-123)、pYES2 (Invitrogen Corporation, San Diego, CA)、およびpPicZ (Invitrogen Corp, San Diego, CA)が含まれる。
【0131】
代替として、発現ベクターはバキュロウイルス発現ベクターである。バキュロウイルスベクターは、培養昆虫細胞(例えば、Sf9細胞)中でのタンパク質の発現のために利用可能であり、これには、pAcシリーズ (Smith et al. (1983) Mol. Cell Biol. 3: 2156-2165) およびpVLシリーズ (Lucklow and Summers (1989) Virology 170: 31-39) が含まれる。
【0132】
なお別の態様において、本発明の核酸は、哺乳動物発現ベクターを使用して哺乳動物細胞中で発現される。哺乳動物発現ベクターの例には、pCDM8 (Seed (1987) Nature 329: 840) および pMT2PC (Kaufman et al. (1987) EMBO J. 6:187-195) が含まれる。哺乳動物細胞中で使用される場合、発現ベクターの制御機能は、しばしば、ウイルス調節エレメントによって供給される。例えば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、サイトメガロウイルス、およびシミアンウイルス40から誘導される。原核細胞と真核細胞の両方の他の適切な発現系については、Sambrookら(前出)の16章および17章を参照されたい。
【0133】
別の態様において、組換え哺乳動物発現ベクターは、特定の細胞型において優先的に核酸の発現を指向することが可能である(例えば、組織特異的調節エレメントが核酸を発現するために使用される)。組織特異的調節エレメントは当技術分野において公知である。適切な組織特異的プロモーターの非限定的な例には以下が含まれる:アルブミンプロモーター(肝臓特異的;Pinkert et al. (1987) Genes Dev. 1: 268-277)、リンパ特異的プロモーター(Calame and Eaton (1988) Adv. Immunol. 43: 235-275)、特にT細胞受容体のプロモーター(Winoto and Baltimore (1989) EMBO J. 8: 729-733)および免疫グロブリンのプロモーター(Banerji et al. (1983) Cell 33:729-740; Queen and Baltimore (1983) Cell 33:741-748)、ニューロン特異的プロモーター(例えば、神経フィラメントプロモーター;Byrne and Ruddle (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 5473-5477)、膵臓特異的プロモーター(Edlund et al. (1985) Science 230: 912-916)、および乳腺特異的プロモーター(例えば、ミルクホエイプロモーター;米国特許第4,873,316号および欧州出願公開番号264,166)。発生的に調節されるプロモーターにはまた、例えば、マウスhoxプロモーター(Kessel and Gruss (1990) Science 249: 374-379)およびαフェトプロテインプロモーター(Campes and Tilghman (1989) Genes Dev. 3: 537-546)が含まれる。
【0134】
宿主細胞は任意の原核細胞(例えば、大腸菌)または真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母または哺乳動物細胞)であり得る。
【0135】
ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を通して原核細胞または真核細胞に導入され得る。本明細書で使用される場合、「形質転換」または「トランスフェクション」という用語は、宿主細胞に外来性核酸を導入するための当技術分野で認識されている種々の技術を指すことを企図し、これには、リン酸カルシウムまたは塩化カルシウム共沈殿、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、またはエレクトロポレーションが含まれる。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための適切な方法は、Sambrookら(前出)および他の実験室マニュアルにおいて見い出すことができる。
【0136】
本発明の方法を使用するミコバクテリア疾患および炭疽を治療するための組合せ療法
本発明の上述の局面および態様の各々において、上記に列挙した以外の組合せ療法もまた、本発明において特に企図される。特に、本発明の組成物は、1種またはそれ以上の、マクロライド系または非マクロライド系抗生物質、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および駆虫剤、抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤とともに投与されてもよい。
【0137】
本発明の組成物と組み合わせて使用されうるマクロライド系抗生物質の例には、とりわけ、以下の合成、半合成、または天然のマクロライド系抗生物質化合物が含まれる:メチマイシン(methymycin)、ネオメチマイシン(neomethymycin)、YC-17、リトリン、エリスロマイシンA〜F、オレアンドマイシン、ロキシスロマイシン、ジリスロマイシン(dirithromycin)、フルリスロマイシン(flurithromycin)、クラリスロマイシン、ダベルシン(davercin)、アジスロマイシン、ジョサマイシン、キタサマイシン、スピラマイシン、ミデカマイシン、ロキタマイシン、ミオカマイシン、ランカシジン(lankacidin)、およびこれらの化合物の誘導体。エリスロマイシンおよびエリスロマイシンから誘導された化合物は、「マクロライド」として知られる抗生物質の一般的クラスに属する。好ましいエリスロマイシンおよびエリスロマイシン様化合物の例には、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、およびトロレアンドマイシンが含まれる。
【0138】
本発明の方法における使用のために適切である、上記のマクロライド系抗生物質以外のさらなる抗生物質には、例えば、生物を予防、阻害、または破壊する傾向がある任意の分子が含まれ、そしてこのようなものとして、本明細書で使用される場合、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、および駆虫剤が含まれる。これらの薬剤は、その薬剤を産生する生物から単離することができ、商業的な供給源(例えば、Eli Lilly, Indianapolis, Ind.; Sigma, St. Louis, Mo.などの製薬会社)から入手することができる。
【0139】
例えば、抗TB抗生物質イソニアジド(イソニコチン酸ヒドラジド)はしばしば有効であるが、重篤な、時折致死的な肝炎を引き起こすことがある。肝炎のリスクは、患者の年齢とともに増加する。さらに、イソニアジドは、あるレシピエントにおいては、用量依存的な様式で、末梢性ニューロパシーを引き起こす。リファンピンは、TBを治療するために使用される別の抗生物質であり、イソニアジドなどの別の薬物と組み合わせて使用する必要がある。リファンピンに伴うこの組合せ療法の必要性は、肺TBの初期治療ならびに再治療に当てはまる。
【0140】
通常、イソニアジド、リファンピン、エタンブトール、およびエチオナミドは経口的に与えられる。ストレプトマイシンは、典型的には筋肉内に与えられる。アミカシンは筋肉内または静脈内に与えられる。ハンセン病を治療するためにもまた使用されるクロファジミンは、経口的に与えられる。
【0141】
アミカシンは、カナマイシンAから誘導された半合成アミノグリコシド抗生物質である。その調製のためには、米国特許第3,781,268号を参照されたい。総説については、Kerridge, Pharmacological and Biochemical Properties of Drug Substances 1: 125-153, M. E. Goldberg, ed. (1977) を参照されたい。アミカシンは、通常、筋肉内または静脈内に投与される。臨床薬理、適応症、副作用、および投薬量を含むさらなる情報については、Physicians Desk Reference, 42 ed. (1988) の744-746頁(本明細書中以下、PDR)を参照されたい。
【0142】
クロファジミンは、LAMPRENE(登録商標)としてもまた知られる抗菌剤である。その調製については、Barry, et al., Nature 179: 1013 (1957)を参照されたい。総説については、Karat, et al., Brit. Med. J. 3: 175 (1971)を参照されたい。クロファジミンは、一般的に経口的に与えられる。臨床薬理、注意点、および投薬量を含むさらなる情報については、PDRの982頁を参照されたい。
【0143】
エチオナミドは、AMIDAZINE(登録商標)およびTRECATOR(登録商標)としてもまた知られる抗菌剤である。英国特許第800,250号を参照されたい。この薬物は、典型的には経口的に与えられる。注意点および投薬量を含むさらなる情報については、PDRの2310頁を参照されたい。
【0144】
シプロフロキサシンは、経口使用のための広範なスペクトルの抗菌剤である。これはまた、CIPRO(登録商標)としてもまた知られる。これは、典型的には、通常、24時間以内に2回の等しい用量で与えられ、1日の総用量としては500〜1,000ミリグラムで与えられる。さらなる情報については、PDR(1989)1441〜1443頁を参照されたい。このフルオロキノロンのクラスに属する抗生物質の他のメンバーには、オフロキサシン、レボフロキサシン、トロベオフロキサシン(troveofloxacin)、ペフロキサシン(pefloxacin)、ガチフロキサシン、およびモキシフロキサシン(moxifloxacin)が含まれる。
【0145】
抗微生物抗生物質薬剤の他の例には、ペニシリン、セファロスポリン、カルバセフェム、セファマイシン、カルバペネム、モノバクタム、アミノグリコシド、グリコペプチド、キノロン、テトラサイクリン、マクロライド、オキサゾリジノンおよびフルオロキノロンが含まれるがこれらに限定されない。抗生物質薬剤の例には以下が含まれるがこれらに限定されない:ペニシリンG (CAS登録番号:61-33-6);メチシリン (CAS登録番号:61-32-5);ナフシリン (CAS登録番号:147-52-4);オキサシリン (CAS登録番号:66-79-5);クロキサシリン (CAS登録番号:61-72-3);ジクロキサシリン (CAS登録番号:3116-76-5);アンピシリン (CAS登録番号:69-53-4);アモキシシリン (CAS登録番号:26787-78-0);チカルシリン (CAS登録番号:34787-01-4);カルベニシリン (CAS登録番号:4697-36-3);メズロシリン (CAS登録番号:51481-65-3);アゾシリン(Azlocillin) (CAS登録番号:37091-66-0);ピペラシリン (CAS登録番号:61477-96-1);イミペネム (CAS登録番号:74431-23-5);アズトレオナム (CAS登録番号:78110-38-0);セファロチン (CAS登録番号:153-61-7);セファゾリン (CAS登録番号;25953-19-9);セファクロル (CAS登録番号:70356-03-5);セファマンドールホルメートナトリウム (CAS登録番号:42540-40-9);セフォキシチン (CAS登録番号:35607-66-0);セフロキシム (CAS登録番号:55268-75-2);セフォニシド (CAS登録番号:61270-58-4);セフメタゾール (CAS登録番号:56796-20-4);セフォテタン (CAS登録番号:69712-56-7);セフプロジル (CAS 登録番号:92665-29-7);ロラカブベフ (CAS登録番号:121961-22-6);セフェタメット(Cefetamet) (CAS登録番号:65052-63-3);セフォペラゾン (CAS登録番号:62893-19-0);セフォタキシム (CAS 登録番号.:63527-52-6);セフチゾキシム (CAS登録番号:68401-81-0);セフトリアキソン (CA 登録番号:73384-59-5);セフタジジム (CAS登録番号:72558-82-8);セフェピム (CAS 登録番号:88040-23-7);セフィキシム (CAS登録番号:79350-37-1);セフポドキシム (CAS登録番号:80210-62-4);セフスロジン (CAS登録番号:62587-73-9);フレロキサシン (CAS登録番号:79660-72-3);ナリジクス酸 (CAS登録番号:389-08-2);ノルフロキサシン (CAS登録番号:70458-96-7);シプロフロキサシン (CAS登録番号:85721-33-1);オフロキサシン (CAS 登録番号:82419-36-1);エノキサシン (CAS登録番号:74011-58-8);ロメフロキサシン (CAS登録番号:98079-51-7);シノキサシン (CAS登録番号:28657-80-9);ドキシサイクリン (CAS登録番号:564-25-0);ミノサイクリン (CAS登録番号:10118-90-8);テトラサイクリン (CAS登録番号:60-54-8);アミカシン (CAS登録番号:37517-28-5);ゲンタマイシン (CAS登録番号:1403-66-3);カナマイシン (CAS登録番号:8063-07-8);ネチルマイシン (CAS登録番号:56391-56-1);トブラマイシン (CAS登録番号:32986-56-4);ストレプトマイシン (CAS登録番号:57-92-1);アジスロマイシン (CAS登録番号:83905-01-5);クラリスロマイシン (CAS登録番号:81103-11-9);エリスロマイシン (CAS登録番号:114-07-8);エリスロマイシンエストレート (CAS登録番号:3521-62-8);エリスロマイシンエチルスクシネート (CAS登録番号:41342-53-4);エリスロマイシングルコヘプトネート (CAS登録番号:23067-13-2);エリスロマイシンラクトビオネート (CAS登録番号:3847-29-8);エリスロマイシンステアレート (CAS登録番号:643-22-1);バンコマイシン (CAS登録番号:1404-90-6);テイコプラニン (CAS登録番号:61036-64-4);クロラムフェニコール (CAS登録番号:56-75-7);クリンダマイシン (CAS登録番号:18323-44-9);トリメトプリム (CAS登録番号:738-70-5);スルファメトキサゾール (CAS登録番号:723-46-6);ニトロフラントイン (CAS登録番号:67-20-9);リファンピン (CAS登録番号:13292-46-1);ムピロシン (CAS登録番号:12650-69-0);メトロニダゾール (CAS登録番号:443-48-1);セファレキシン (CAS登録番号:15686-71-2);ロキシスロマイシン (CAS登録番号:80214-83-1);コ-アモキシクラブアネート(Co-amoxiclavuanate);ピペラシリンとタゾバクタム(Tazobactam)の組合せ;およびそれらの種々の塩、酸、塩基、および他の誘導体。
【0146】
抗真菌剤には、カスポファンギン、テルビナフィン塩酸塩、ナイスタチン、アムホテリシンB、グリセオフルビン、ケトコナゾール、ミコナゾール硝酸塩、フルシトシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、クロトリマゾール、安息香酸、サリチル酸、および硫化セレンが含まれるがこれらに限定されない。
【0147】
抗ウイルス剤には、バルガンシクロビル、アマンタジン塩酸塩、リマンタジン、アシクロビル、ファムシクロビル、フォスカーネット、ガンシクロビルナトリウム、イドクスウリジン、リバビリン、ソリブジン、トリフルリジン、バラシクロビル、ビダラビン、ジダノシン、スタブジン、ザルシタビン、ジドブジン、インターフェロンα、およびエドクスジン(edoxudine)が含まれるがこれらに限定されない。
【0148】
駆虫剤には、ピレトリン/ピペロニルブトキシド、ペルメトリン、ヨードキノール、メトロニダゾール、ジエチルカルバマジンシトレート、ピペラジン、ピランテルパモエート、メベンダゾール、チアベンダゾール、プラジカンテル、アルベンダゾール、プログアニル、キニジングルコン酸注射、硫酸キニーネ、リン酸クロロキン、塩酸メフロキン、リン酸プリマキン、アトバクオン、コ-トリモキサゾール(スルファメトキサゾール/トリメトプリム)、およびペンタミジンイセチオネートが含まれるがこれらに限定されない。
【0149】
別の局面では、本発明の方法において、例えば、治療有効量の1種またはそれ以上の抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤の投与によって、本発明の組成物を補充してもよい。「免疫調節用の薬物または薬剤」によって、これは、例えば、免疫系における細胞(例えば、T細胞、B細胞、マクロファージ、もしくは抗原提示細胞(APC))の細胞活性を刺激もしくは抑制することによって、または免疫系の外側の成分に作用することによって、例えば、直接的または間接的に、免疫系に作用する薬剤を意味する。これは、次には、免疫系を刺激、抑制、または調節する、例えば、ホルモン、受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、および神経伝達物質である;免疫調節剤は、例えば、免疫抑制剤または免疫刺激剤であり得る。「抗炎症性薬物」によって、例えば、炎症性応答、すなわち、損傷に対する組織応答を処置する薬剤、例えば、免疫系、血管系、またはリンパ系を処置する薬剤を意味する。
【0150】
本発明における使用のための適切な抗炎症用または免疫調節用の薬物または薬剤には、以下が含まれるがこれらに限定されない:インターフェロン誘導体(例えば、ベータセロン、β-インターフェロン);プロスタン誘導体(例えば、PCT/DE93/0013に開示されている化合物、例えば、イロプロスト、シカプロスト);グルココルチコイド(例えば、コルチゾル、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン);免疫抑制剤(例えば、シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート);リポキシゲナーゼ阻害因子(例えば、ジレウトン、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357);ロイコトリエンアンタゴニスト(例えば、DE 40091171、ドイツ国特許出願第P 42 42 390.2号;国際公開公報第9201675号;SC-41930; SC-50605; SC-51146; LY 255283 (D. K. Herron et al., FASEB J. 2: Abstr. 4729, 1988);LY 223982 (D. M. Gapinski et al. J. Med. Chem. 33: 2798-2813, 1990)に開示される化合物);U-75302およびその誘導体(例えば、 J. Morris et al., Tetrahedron Lett. 29: 143-146, 1988, C. E. Burgos et al., Tetrahedron Lett. 30: 5081-5084, 1989;B. M. Taylor et al., Prostaglandins 42: 211-224, 1991に記載されているもの);米国特許第5,019,573号に開示される化合物;ONO-LB-457およびアナログ(例えば、K. Kishikawa et al., Adv. Prostagl. Thombox. Leukotriene Res. 21: 407-410, 1990;M. Konno et al., Adv. Prostagl. Thrombox.Leukotriene Res. 21: 411-414, 1990に記載されるもの); WF-11605およびアナログ(例えば、米国特許第4,963,583号に開示されるもの); 国際公開公報第9118601号、国際公開公報第9118879号; 国際公開公報第9118880号、国際公開公報第9118883号に開示される化合物、抗炎症性物質(例えば、L. Noronha-Blab. et al., Gastroenterology 102 (Suppl.):A 672, 1992によって記載されたNPC 16570、NPC 17923;R. M. Burch et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 88: 355-359, 1991;S. Pou et al., Biochem. Pharmacol. 45: 2123-2127, 1993によって記載されたNPC 15669およびアナログ);ペプチド誘導体(例えば、ACTHおよびそのアナログ);可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体。
【0151】
本発明の治療剤は、動物の対象または患者、およびより詳細には、ヒトを含む哺乳動物、ならびに、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、モルモット、および齧歯類などの哺乳動物の処置のために使用することができる。
【0152】
投与の様式
本発明において使用される種々の治療剤の投与の様式は以下に例示される。しかし、その薬剤は、種々の経路のいずれかによって送達することができ、これには、注射(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内)、連続的静脈内注入、皮膚性(cutaneously)、経皮(dermally)、経皮(transdermally)、経口(例えば、錠剤、丸薬、液剤)、移植した浸透圧ポンプ(例えば、Alza Corp.)、坐剤、またはエアロゾルスプレーによるものを含む。
【0153】
ペプチドベースのセリンプロテアーゼ阻害因子は、Merrifield, J. Am. Chem. Soc., 85, p 2149 (1963)によってもともと記載されたような任意の適切な合成方法によって調製されてもよい。セリンプロテアーゼに対して阻害活性を示す合成ペプチドおよびこれを調製および使用するための方法は、例えば、Gloverへの米国特許第4,829,052号、第5,157,019号;Millerへの米国特許第5,420,110号;Katunumaへの米国特許4,963,654号(参照として本明細書に組み入れられる)において開示されている。
【0154】
生化学的合成の分野における当業者は、商業的スケールの量のペプチドのためには、このようなペプチドが、組換えDNA技術、合成技術、または生物学的もしくは化学的に合成されたペプチドの化学的誘導体化を使用して好ましく調製されることを認識するものと思われる。
【0155】
本発明の化合物は、過度のセリンプロテアーゼ活性によって、全体的または部分的に引き起こされる生理学的な(とりわけ病理学的な)状態の治療において治療薬剤として使用される。本発明のペプチドは、遊離のペプチドとして、または薬学的に許容されるその塩として投与されてもよい。本明細書において使用される用語は、Budavari, Susan (編),「The Merck Index」An Encyclopedia of Chemicals, Drugs, and Biologicals; Merck & Co., Inc.において見い出されるものに従っている。「薬学的に許容される塩」という用語は、ペプチドの治療特性(例えば、効力、毒性など)に有意なまたは有害な影響を与えないペプチドの酸付加塩または金属錯体を指す。本発明のペプチドは、薬学的組成物として個体に投与されるべきであり、これは、多くの場合において、薬学的に許容される担体とともに、ペプチドおよび/または薬学的な塩を含む。「薬学的に許容される担体」という用語は、固体および液体の担体を指し、これは、治療特性に有意なまたは有害な影響を与えない。
【0156】
本発明のペプチドを含む薬学的組成物は、個体、特にヒトに対して、静脈内、皮下、筋肉内、経鼻的、経口的、局所的、経皮的、非経口的、胃腸に、経気管的、および経肺胞的のいずれかで投与されうる。局所的投与は、セリンプロテアーゼ阻害因子の治療有効量を含む、局所的に投与されるクリーム、ゲル、リンスなどを通して達成される。経皮投与は、セリンプロテアーゼ阻害因子が皮膚を透過し、かつ血流に入ることを可能にするクリーム、リンス、ゲルなどの適用によって達成される。投与の非経口的経路には、静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下への注射などの直接注射が含まれるがこれらに限定されない。投与の胃腸経路には、摂取および直腸が含まれるがこれらに限定されない。経気管的および経肺胞的な投与の経路には、口を通してまたは経鼻的にのいずれかでの吸入、および気道への直接注射、例えば、気管切開術、気管開口術、気管内チューブ、または定量吸入器もしくは連続吸入器が含まれるがこれらに限定されない。さらに、浸透圧ポンプが投与のために使用されてもよい。必要な投薬量は、治療される特定の状態、投与の方法、および身体からの分子のクリアランスの速度によって変化する。
【0157】
本明細書に記載される化合物および/またはそれらの誘導体は純粋な化学物質として投与してもよいが、薬学的組成物として活性成分を提示することが好ましい。従って、本発明は、1種またはそれ以上の化合物および/またはその薬学的に許容される塩を、1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体、および従って、任意に、他の治療的および/または予防的な成分と一緒に含む薬学的組成物をさらに提供する。担体は、組成物の他の成分と適合可能であり、かつそのレシピエントに対して有害ではないという意味において許容されなければならない。
【0158】
薬学的組成物は、経口的または非経口的な(筋肉内、皮下、皮膚、吸入、および静脈内を含む)投与のために適切なものを含む。組成物は、適切な場合、別々の単位投薬形態で都合よく提示してもよく、薬学の分野において周知である方法のいずれかによって調製してもよい。このような方法は、活性化合物を、液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微細に分割した固体担体、またはこれらの組合せと接触させる段階を含み、次いで、必要であれば、所望の送達系にその生成物を成形する段階を含む。
【0159】
経口投与のために適切な薬学的組成物は、硬質または軟質のゼラチンカプセル、カシェ剤、または錠剤などの別々の単位投薬形態として提示してもよく、各々が、粉末または顆粒または溶液または懸濁物または乳化物としての所定量の活性成分を含む。活性成分はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして提示してもよい。経口投与のための錠剤およびカプセルは、結合剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、または湿潤剤などの従来の賦形剤を含んでもよい。錠剤は、当技術分野において周知である方法に従って、例えば、腸溶コーティングでコートしてもよい。
【0160】
経口液体調製物は、例えば、水性または油性の懸濁物、溶液、乳化物、シロップ、またはエリキシルの形態であってもよく、または使用前の水もしくは別の適切なビヒクルを用いる再構成のための乾燥生成物として提示してもよい。このような液体調製物は、懸濁剤、乳化剤、非水性ビヒクル(これは可食性オイルを含んでもよい)、または保存剤などの従来の付加物を含んでもよい。本発明の化合物は、非経口投与(例えば、注射、例えば、ボーラス注射または連続注入による)のために製剤化してもよく、アンプル、前充填シリンジ、小さなボーラス注射注入容器、または保存剤が加えられた複数用量容器中に単位用量形態で提示されてもよい。本発明の組成物は、油性または水性のビヒクル中の懸濁物、溶液、または乳化物のような形態をとってもよく、懸濁剤、安定剤、および/または分散剤などの処方製剤を含んでもよい。代替として、活性成分は、適切なビヒクル、例えば、滅菌した発熱物質含有水との再構成のために、滅菌固体の無菌的単離による、または溶液からの凍結乾燥による、粉末形態であってもよい。
【0161】
表皮への局所的投与のために、本発明の化合物は、軟膏、クリーム、もしくはローションとして、または経皮パッチの活性成分として製剤化してもよい。適切な経皮送達系は、例えば、Fisherら(米国特許第4,788,603号) または Bawasら(米国特許第4,931,279号、第4,668,504号および第4,713,224号)に記載されている。軟膏およびクリームは、例えば、水性または油性の基剤を用いて、適切な増粘剤および/またはゲル化剤の添加を伴って、製剤化してもよい。ローションは、水性または油性の基剤を用いて製剤化してもよく、一般的には、1種またはそれ以上の、乳化剤、安定化剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、または着色料を含む。活性成分はまた、例えば、米国特許第4,140,122号、第4,383,529号、または第4,051,842号において開示されるように、イオン導入を介して送達してもよい。少なくとも2つの放出の型が、これらの系において可能である。マトリックスが多孔性でない場合には、分散による放出が起こる。薬学的に効果的な化合物は、マトリックスそれ自体に溶解し、そこを通して拡散する。薬学的に効果的な化合物がマトリックスの細孔中の液相を通して輸送される場合には、微小細孔の流れによる放出が起こる。
【0162】
口中での局所的投与のために適切な組成物は、芳香を有する基剤(通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガカント)中に活性成分を含むロゼンジ;不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシア)中に活性成分を含むトローチ;粘膜付着ゲル、および適切な液体担体中に活性成分を含むマウスウォッシュなどの単位投薬形態を含む。
【0163】
所望の場合、上記の組成物は、例えば、特定の親水性ポリマーマトリックス(例えば、天然のゲル、合成ポリマーゲル、またはその混合物を含む)とのその組合せによって、利用される活性成分の持続性放出を提供するように適合させてもよい。
【0164】
本発明に従う薬学的組成物はまた、香料、着色料、抗微生物剤、または保存料などの他のアジュバントを含んでもよい。
【0165】
治療における使用のために必要である化合物、または活性塩またはその誘導体の量は、選択された特定の塩によってのみならず、投与の経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても変動し、かつ担当医の方針で最終的に選択されることがさらに理解される。
【0166】
本発明の薬学的組成物は、上に定義されたような適切な薬学的に許容される担体を含む。これらの組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、丸薬、カプセル、散剤、持続放出製剤などの形態を取り得る。適切な薬学的担体は、Remington's Pharmaceutical Sciences 1990, pp. 1519-1675, Gennaro, A. R., ed., Mack Publishing Company, Easton, Paに記載されている。本発明のセリンプロテアーゼ阻害因子の分子は、リポソームまたはポリマー中に投与してもよい(Langer, R. Nature 1998, 392, 5を参照されたい)。このような組成物は、対象への正確な投与のための形態を提供するために、適切な量の担体と一緒に、治療有効量の活性化合物を含む。
【0167】
一般的に、本発明の化合物は、例えば、単位投薬形態あたり5〜2000mg、都合よくは10〜1000mg、最も都合よくは50〜500mgの活性成分を含む単位投薬形態で都合よく投与される。
【0168】
所望される血液レベルは、約0.01〜5.0mg/kg/hrを提供する連続的注入によって、または約0.4〜20mg/kgの活性成分を含む断続的注入によって維持され得る。緩衝剤、保存剤、抗酸化剤などが必要に応じて組み込まれ得る。
【0169】
所望される用量は、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量で、例えば、1日あたり2回、3回、4回、またはそれ以上のサブ用量(sub-dose)で便利に提示することができる。サブ用量それ自体を、例えば、別々の厳密でない間隔の投与、例えば、吸入器からの複数回の吸入、または眼への複数回の点眼の適用に、さらに分割してもよい。
【0170】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投薬量レベルは、特定の患者、組成物、および投与の様式に対する所望の治療的応答を達成するために有効である、活性化合物の量を得るために変化させてもよい。選択される投薬量レベルは、本発明の特定の薬学的化合物またはそのアナログの活性、投与の経路、治療される状態の重篤度、ならびに治療される患者の状態および以前の病歴に依存する。しかし、所望の治療効果を達成するために必要であるよりも低いレベルの薬学的化合物の用量で開始すること、および所望の効果が達成されるまで投薬量を徐々に増加させることは、当業者の範囲内である。
【0171】
本発明の薬学的組成物は、獣医薬とヒト治療の両方において使用され得る。上記に言及した疾患または徴候に関連する痛みの短期的または長期的な管理における本発明の薬学的組成物の予防または治療用量の規模は、治療される状態の重篤度および投与の経路によって変化する。用量、およびおそらく用量の頻度もまた、個々の患者の年齢、体重、および応答に従って変化する。一般的に、本発明の薬学的組成物の1日の総用量範囲は、一般的に約1〜約100mg、好ましくは約1〜約20mg、より好ましくは、約1〜約10mgの活性化合物/体重kg/日の間であり、哺乳動物患者に投与される。所望の場合、効果的な1日の用量を、投与の目的のために複数の用量、例えば、1日あたり2〜4回の別々の用量に分割してもよい。
【0172】
代替として、本発明の活性成分の1日の総用量は、プロテアーゼ阻害因子の血清濃度を10〜100μM増加させるために十分であるべきである。
【0173】
このような特定の範囲の列挙によって、言及した範囲は、列挙した範囲の間のすべての用量範囲の量を含むことが本明細書で意図される。例えば、約1から100の間での範囲では、これは、各々の特定の範囲を実際に列挙することなく、2〜99、3〜98などを含むことを意図する。活性成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびに投与の方法に従って、各場合によって異なる。
【0174】
これらの範囲内の用量は、明確には言及しないが、例えば、30mg、50mg、75mgなどが、言及した範囲の境界のわずかに外側の量であるときに、言及した範囲に含まれることもまた理解される。
【0175】
活性成分の実際の好ましい量は、哺乳動物の種、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびに投与の方法に従って、各場合によって異なる。
【0176】
一般的に、本発明の薬学的組成物は、治療される特定の疾患の症状を改善するために必要である個々の患者に定期的に投与される。組成物が投与される時間の長さ、および全体の投薬量は、必然的に、治療される特定の苦痛の性質および重篤度、ならびにこのような治療を受ける対象または患者の身体の状態に従って、各場合によって変化する。
【0177】
小児、65歳以上の患者、および腎臓または肝臓の機能が損なわれている患者には、最初に低用量を与えること、そして彼らには、次に個々の応答または血液レベルに基づいて力価測定を行うことがさらに推奨される。ある場合においては、当業者には明らかであるように、これらの範囲の外側の投薬量を使用することが必要であるかもしれない。さらに、臨床医または治療を行う内科医は、慣行的な実験のみを用い、個々の患者の応答と関連して、治療を、どのように、および、いつ、中断、調節、または終了するかを知るであろう。
【0178】
本発明の化合物の有用な投薬量は、それらのインビトロ活性、および動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウスおよび他の動物における有効な投薬量のヒトへの外挿のための方法は、当技術分野において公知であり、例えば、米国特許第4,938,949号を参照されたい。
【0179】
実施例
本発明を実施する種々の局面において読み手を良好に補助するために以下の特定の実施例を提供する。これらの特定の実施例は単に例示であるため、以下の記載中の何ものも、いかなる場合において本発明を限定するものと見なすべきではない。そのような限定は、当然、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0180】
実施例1
ヒト単球由来マクロファージのトリ型結核複合菌(Mac)感染に対するα1-抗トリプシンの効果
1.TBまたはMAC生物を、1 Mcfarland標準の濃度に懸濁した。1 McFarlandは、標準的アリコートの濁度と一致する、液体中に懸濁した生物の濁度として定義される。1 McFarland標準の濁度と等価である試料の濁度は107桿菌/mlを表す。試験培養の最適期間は、Middlebrook 7H9ブロス(=ミコバクテリア培地)中で増殖した桿菌について約10〜12日間である。
【0181】
2.細胞の感染。感染させた細胞は、ヒト単球由来マクロファージ(MDM)であった。MDMは、フィコール-ハイパーククッション上のヘパリン添加血液を遠心分離することによって健常ボランティアから得たヒト末梢血単球細胞(PBMC)から単離した。単離されたPBMCを、ポリスチレン組織培養プレートにアリコートとし、かつ単球を2時間接着させた(0.5×106PBMCを各ウェルに加え、その約10〜20%が単球である)。実験を、ウェルの底の滅菌円形ガラスカバースリップを伴う、または伴わないプレート中で実行した(下記a.を参照されたい)。PBMC中の単球集団のみがこれらの条件下でプレートに接着する。次いで、ウェルを洗浄し(非接着リンパ球を除去するため)、かつ新鮮な培地中で10〜12日間インキュベートした(培地=RPMI+10%ウシ胎仔血清+100単位/mlペニシリンG)。これは、単球のマクロファージへの成熟を可能にする。各ウェル中の培地の体積は1.0mlであった。次いで、培地をMDMの各ウェルから除去し、ウェルに、培地のみ(対照)、AAT、またはala-ala-pro-val-クロロメチルケトン(AAT様合成セリンプロテアーゼ阻害因子)(Bachm, Inc.)のいずれかを補充し、かつウェルを3.0時間インキュベートした。次いで、各ウェル中のMDMをMAC(トリ型結核菌9141株)またはTB(H37RV株)で、ミコバクテリア桿菌/細胞比を1×106として感染させた。1.0時間のインキュベート(MDM表面にミコバクテリアが結合することを可能にするため)の後、上清を除去し、サイトカインアッセイのために保存した。次いで、ウェルをRPMIおよび生理食塩水の1:1溶液により2回洗浄した。[0001]次いで、2種類の独立したアッセイを、ヒト単球由来マクロファージへのミコバクテリアの感染を定量するために使用した。
【0182】
a.直接的観察および各ウェルにおける感染細胞の数の計数
これらの実験のために、ミコバクテリア感染MDMを、ウェルの底部に挿入された滅菌円形ガラスカバースリップを有するポリスチレン組織培養プレートのウェル中で培養した。MDMは、元々これらのカバースリップ上で播種されたので、MDMはカバースリップ表面に接着する。MACまたはTBとのインキュベーション後、ウェルを2回洗浄し(上記と同様)、次いで、グルタルアルデヒドを使用して1時間固定した。次いで、ミコバクテリアを、ミコバクテリア染色(Zeihl-Nielsson)を使用して、細胞を損傷することなく染色した。感染した細胞の数を視覚的に定量し、データを各ウェル中のMDMの総数のパーセントとして表現した。
【0183】
b.コロニー計数
感染細胞を2回洗浄した後(上記を参照されたい)、カバースリップを含まない並列したウェル中の細胞を、ウェルあたり1.0mlの溶解緩衝液を使用して、5.0分間溶解した(0.25% sDKF溶解緩衝液)。
【0184】
感染MDMを溶解した後(上記を参照されたい)、溶解物を1.0mlの7H9培地で1:1に希釈した。ミコバクテリア懸濁物を、1%(体積/体積)7H9培地および滅菌水に1:10ずつ段階的に希釈した。希釈したミコバクテリア懸濁物をボルテックスし、次いで、各アリコートからの0.5mlの懸濁物をミコバクテリア培地(固形7H9培地)にプレーティングした。次いで、このミコバクテリア含有液を培養した。このプレートを、MACについては10〜12日間、および結核菌については21〜24日間インキュベートし、ミコバクテリアコロニーの数を計数した。
【0185】
結果:
結核菌
直接観察データ
aヒト型結核菌に感染した細胞のパーセント
【0186】
コロニー計数データ
別の実験において、本発明者らは、細胞結合TBを培養し、阻害性AAT効果を独立して確認した。mlあたりのTB計数は、対照MDM培養においては1.6×105/mlであり、AAT曝露培養においては0.57×105/mlであり、かつAATの存在に起因して64%の阻害効果であった。
【0187】
トリ型結核複合菌
本発明者らは、トリ型結核複合菌(MAC)として公知の関連するミコバクテリア生物を使用した。MACは、AIDS患者において感染疾患の主要な原因であるので重要である。これはまた、この感染に罹患する通常のヒトにおいても困難な問題である;これは、治療が非常に困難であり、かつ現在の抗微生物薬物を用いる治療が不可能であることもある。AATまたはAAT様分子を使用することは、これらの感染における治療の新規な手段を表し得る。
【0188】
直接観察データ
aヒト型結核菌に感染した細胞のパーセント
【0189】
コロニー計数データ
図1は、AATがMACによるMDMの感染を有意にブロックすることを実証した4回の別々の実験の結果を示し、平均の効果は約55%阻害である。これらの実験は、上記と同様に行った。AAT模倣物とは、ala-ala-pro-val-クロロメチルケトン(AAT様合成セリンプロテアーゼ阻害因子)(供給業者:Bachem)を指す。このAAT模倣物の結果は、独立した種を使用するAATデータを確認し、かつミコバクテリア感染を治療するためのセリンプロテアーゼ阻害の概念が、魅力的な薬物候補を作製する低分子阻害因子にまで拡張される証拠を提供する。
【0190】
上述と同一の培養物において、本発明者らは、炎症誘発性サイトカインTNFαの濃度を測定した。図2および図3に示されるように、AATおよびAAT模倣物は双方とも、MDM培養物中のTNFαの産生を100%まで有意に阻害した。炎症誘発性サイトカイン産生のブロックは、セリンプロテアーゼ阻害因子がTBおよびMACによる感染をブロックするさらなるメカニズムを表す可能性がある。
【0191】
実施例2
MAC感染における臨床研究
MACを使用する上記のインビトロのデータは、臨床研究により補充されている。この臨床的検査において、AAT表現型(AATタンパク質の代替型)を、MACでの肺感染が記録された患者、および肺疾患を有する患者において評価した。これらの患者は、肺疾患である気管支拡張症を有する対照群と比較した(肺疾患単独の存在がMAC感染の存在を説明しないことを示すため)。
この表において、対照(気管支拡張症)群については、異常なAAT分子を有する患者の割合が5.3%であることに注意されたい。これは、その割合が27.7%であるMAC感染群における症例と顕著な対比をなし、5.2倍の増加である。MAC感染患者は、対照群と比べ、異常型AATを含有する可能性が5.2倍である可能性を有する。このことは、異常なAAT分子とMACでの感染との間の臨床的連関を確立する。従って、本発明者らが発見した正常なAATの阻害的役割は患者において裏付けられる。
【0192】
実施例3
ヒト全血における刺激されたインターロイキン1β産生に対するα1-抗トリプシンの効果
設計:
21ゲージ針を使用して3名の健常ボランティアにおいて静脈穿刺を実行し、静脈血をヘパリン添加チューブに吸引した。次いで、血液を6ミリリットルポリプロピレンチューブにアリコートとし、かつ滅菌RPMI組織培養培地単独で1:4希釈し(対照)、刺激(ブドウ球菌)として1:1000の最終濃度の熱不活化表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)を含む培地中で1:4希釈し、または表皮ブドウ球菌およびα1-抗トリプシン(AAT、Aralast(登録商標)、Baxterより)を含むチューブに入れた。次いで、すべての培養物を、37℃/5% CO2で24時間インキュベートした。インキュベーション後、試料を1,500gで遠心分離し、上清を収集した。サイトカインタンパク質を定量するのに有効な電気化学発光装置を使用して、上清をインターロイキン1β濃度についてアッセイした。
【0193】
結果:
データは、平均±SEMインターロイキン1β産生として提示され、その値を縦軸上に示す。示されるように、AATは、ブドウ球菌で刺激されたインターロイキン1β産生を用量依存的に有意に阻害し、その阻害は、試験されたすべての濃度で観察された(図5を参照されたい)。
【0194】
考察:
本明細書において、本発明者らは、AATが炎症誘発性サイトカイン産生の例としてIL-1β産生をブロックすることを初めて示した。IL-1βは、炭疽疾患の症状および/または顕在化の発生のために重要である。本実施例において提示された結果は、活性毒素の産生をブロックすることによって炭疽を治癒するための治療薬剤としてAATが使用され得る、すでに提案されたメカニズムを支持する。
【0195】
実施例4
外来患者の肺炎においてはグラム陽性生物が優勢であり、一方で集中治療室(ICU)ではグラム陰性肺炎が偏って発生することが知られている。
【0196】
肺炎の病因は、コロニー形成、それに続く微小な吸引に関わる。ICUにおけるヒトは、グラム陰性桿菌をコロニー形成する。したがって、ICUにおいて患者のみがグラム陰性桿菌をコロニー形成することが医師には明らかである。プロセシングされたフィブロネクチンは、グラム陰性桿菌のインビボにおける重要な受容体である。
【0197】
グラム陰性肺炎を有する患者を治療する1つの手段は、グラム陰性桿菌のコロニー形成をブロックすることである。例えば、健常者では、プロセシングされていないフィブロネクチンはグラム陰性細菌の受容体ではない。病気の間、セリンプロテアーゼの分泌が豊富になる。セリンプロテアーゼはフィブロネクチンをプロセシング(タンパク質分解)する。プロセシングされたフィブロネクチンは、グラム陰性細菌の受容体である。このことがコロニー形成を生じる。α1-抗トリプシンまたは本願において開示されるような任意のその機能的誘導体のようなセリンプロテアーゼ阻害因子の使用は、グラム陰性桿菌のコロニー形成をブロックし、したがってグラム陰性肺炎を治療するために当業者によって使用可能である。従って、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、グラム陰性桿菌による上皮のコロニー形成をブロックするために、局所的製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。本発明の組成物を使用して治療できるグラム陰性桿菌の非限定的な例を提供する刊行物の代表的な例は、Charlotte L. Barey-Morel et al. The Journal of Infectious Diseases Vl 155, No. 4 (1987); W. G. Johanson et al. Annals of Internal Medicine 77: 701-706 (1972); W. G. Johanson et al. The New England Journal of Medicine Vol 281 No. 21 (1969); James J. Rahal et al. JAMA Vol. 214 No. 4 (1970)において見い出すことができ、これらの各々のテキスト全体は参照として本明細書に組み入れられる。
【0198】
類似の様式で、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、グラム陽性生物によって引き起こされる細菌感染を治療するために、局所用製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。
【0199】
同様に、類似の様式で、AATのようなセリンプロテアーゼ阻害因子は、ミコバクテリアによって引き起こされる細菌感染を治療するために、局所用製剤(例えば、液体、クリーム、エアロゾルなどを含むがこれらに限定されない)を使用して、局所的に投与され得る。非定型ミコバクテリアに対する作用の提案されたメカニズムについては、上記の実施例1および2を参照されたい。
【0200】
本願を通して、種々の刊行物および特許が引用される。本発明が属する技術分野の状況をより十分に記載するために、これらの刊行物および特許の開示全体は参照として本明細書に組み入れられる。
【0201】
本発明は、その特定の態様と関連して記載されているが、さらなる変更が可能であることが理解され、かつ本願が、一般的に本発明の原理に従い、かつ本発明が属する当技術分野の公知または通例の実施の範囲内にあり、かつ本明細書上記に記載した本質的な特徴に適用することができ、かつ添付の特許請求の範囲にあるような本開示からの逸脱を含む、本発明の任意の変形、使用、または適合を網羅することを意図することが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】ヒト単球由来マクロファージのトリ型結核複合菌(mac)感染に対するα1-抗トリプシン(AAT)およびAAT模倣物の効果を図示する(n=4)。
【図2】ヒト単球由来マクロファージにおけるトリ型結核複合菌(mac)誘導性TNFαに対するα1-抗トリプシン(AAT)およびAAT模倣物の効果を図示する。
【図3】ヒト単球由来マクロファージにおけるトリ型結核複合菌(mac)誘導性TNFαに対するα1-抗トリプシン(AAT)およびaat模倣物の効果:時間経過実験を図示する(n=1)。
【図4】図4A〜4Hは、炭疽桿菌の毒素のメカニズムおよびセリンプロテアーゼ阻害因子が毒素を中和する方法を図示する。
【図5】ヒト全血における刺激されたインターロイキン1β産生に対するα1-抗トリプシンの効果を図示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物における細菌感染を治療するための方法。
【請求項2】
1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に罹患している哺乳動物における、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法であって、該方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量;および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を軽減させる治療有効量を投与する段階を含み、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善するために十分である、方法。
【請求項3】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはその機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物におけるミコバクテリア感染を治療するための方法。
【請求項4】
1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に罹患している哺乳動物における、1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法であって、該方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量;および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を軽減させる治療有効量を投与する段階を含み、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善するために十分である、方法。
【請求項5】
マクロファージへのミコバクテリアのコロニー形成に対して感受性である哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を投与する段階を含む、哺乳動物におけるマクロファージのミコバクテリア感染を阻害する方法であって、治療有効量はマクロファージのミコバクテリア感染を阻害するために十分である、方法。
【請求項6】
内因性の宿主のセリンプロテアーゼ活性またはセリンプロテアーゼ様活性によって媒介されるミコバクテリア感染に感受性である哺乳動物における機能的な内因性α1-抗トリプシンレベルの欠損を予防する方法であって、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を含む薬学的に許容される担体中の薬学的組成物によって該哺乳動物を治療する段階を含む方法。
【請求項7】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す1種またはそれ以上の物質、またはその機能的誘導体の治療有効量が、治療有効量の1種またはそれ以上の抗炎症性化合物、および/または治療有効量の1種またはそれ以上の免疫調節薬剤と併せて投与されうる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
抗炎症性化合物または免疫調節薬物が、インターフェロン;ベータセロン、β-インターフェロンを含むインターフェロン誘導体;イロプロスト(iloprost)、シカプロスト(cicaprost)を含むプロスタン誘導体;コルチゾル、プレドニゾロン、メチル−プレドニゾロン、デキサメタゾンを含むグルココルチコイド;シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン(methoxsalene)、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートを含む免疫抑制剤;ジレウトン(zileutone)、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含むリポキシゲナーゼ阻害因子;ロイコトリエンアンタゴニスト;ACTHおよびそのアナログを含むペプチド誘導体;可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体;ならびにカルシポトリオール(calcipotriol)、ならびにそれらのアナログを、単独または組合せのいずれかで含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその機能的誘導体を示す1種またはそれ以上の物質の治療有効量が、1種またはそれ以上の抗ミコバクテリア組成物または抗ウイルス組成物、またはその組合せと併せて投与されうる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
治療を必要とする哺乳動物において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアが、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)、ウシ型結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、M.アビウム-イントラセルラーレ(M. avium-intracellulare)、M. ケロネイ(M. chelonei)、M.アフリカヌム(M. africanum)、M.マリニウム(M. marinium)、M.ブルーリ(M. buruli)、M.フォーツイタム(M. fortuitum)、M.ヘモフィルム(M. haemophilum)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサシ(M. kansasii)、M.リットラーレ(M. littorale)、M.マルモエンセ(M. malmoense)、M.マリアヌム(M. marianum)、M.シミエ(M. simiae)、M.シュルガイ(M. szulgai)、M.ウルセランス(M. ulcerans)、トリ型結核菌(M. avium)、M.フラバセンス(M. flavascens)、ネズミらい菌(M. lepraemurium)、M.ミクロティ(M. microti)、およびパラ結核菌(M. paratuberculosis)、M.ゴルドネ(M. gordonae)、M.ガストリ(M. gastri)、M.フレイ(M. phlei)、M.ノンクロモゲニクム(M. nonchromogenicum)、M.スメグマティス(M. smegmatis)、M.テレ(M. terrae)、M.トリビアーレ(M. triviale)、およびM.バッカエ(M. vaccae)を含むミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む、請求項3記載の方法。
【請求項11】
治療を必要とする哺乳動物において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアが、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、グループIV群(迅速増殖型ミコバクテリア)を含む4つのラニヨン群からの非結核菌ミコバクテリアを含むミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む、請求項3記載の方法。
【請求項12】
1つまたはそれ以上の細菌徴候と関連する痛みおよび/または症状の軽減または阻害が、約10〜20%、30〜40%、50〜60%、または75〜100%の軽減または阻害のオーダーである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
物質が任意のセリンプロテアーゼを阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、炭疽菌(Bacillus anthracis)への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法であって、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングをブロックし、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合に該曝露の症状が予防される、方法。
【請求項15】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、炭疽菌に曝露されたことが疑われる対象における炭疽の症状を予防するための方法であって、該物質は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合に該曝露の症状が予防される、方法。
【請求項16】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法であって、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害する、方法。
【請求項17】
阻害または予防される炭疽の症状が、皮膚潰瘍、水腫、および瘢痕形成からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
予防または改善される症状が吸入炭疽の症状であり、該症状が、肺水腫、壊死性縦隔リンパ節疾患、胸水、換気機能障害、咳、発汗および悪寒、敗血症および敗血症ショックを含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
薬学的組成物が、経口的に、全身的に、移植物を通して、静脈内に、局所的に、くも膜下腔内に、吸入により、または経鼻的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ阻害因子の物質が融合ポリペプチドの一部であってもよく、該融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはα1-抗トリプシン様活性物質および該哺乳動物α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質と相同なアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ阻害因子を使用して、ミコバクテリア疾患または炭疽疾患を治療または予防するための方法。
【請求項22】
治療または予防を必要とする患者における炎症誘発性サイトカイン産生を、該患者にα1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ活性阻害因子を投与することで阻害することにより、炭疽疾患または炭疽関連疾患を治療または予防するための方法。
【請求項23】
サイトカインが、IL-1、TNFα、IL-18、または一酸化窒素、またはその任意の組合せである、請求項22記載の方法。
【請求項1】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはそれらの機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物における細菌感染を治療するための方法。
【請求項2】
1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に罹患している哺乳動物における、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法であって、該方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量;および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を軽減させる治療有効量を投与する段階を含み、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善するために十分である、方法。
【請求項3】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質またはその機能的誘導体;および薬学的に許容される賦形剤を含む組成物の治療有効量を投与する段階を含む、哺乳動物におけるミコバクテリア感染を治療するための方法。
【請求項4】
1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に罹患している哺乳動物における、1つまたはそれ以上のミコバクテリアの疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善する方法であって、該方法は、緩和または改善を必要とする哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量;および薬学的に許容される担体または賦形剤を含む薬学的組成物の、痛みまたは症状を軽減させる治療有効量を投与する段階を含み、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質は、1つまたはそれ以上の細菌の疾患または徴候に関連する痛みまたは症状を緩和または改善するために十分である、方法。
【請求項5】
マクロファージへのミコバクテリアのコロニー形成に対して感受性である哺乳動物に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を投与する段階を含む、哺乳動物におけるマクロファージのミコバクテリア感染を阻害する方法であって、治療有効量はマクロファージのミコバクテリア感染を阻害するために十分である、方法。
【請求項6】
内因性の宿主のセリンプロテアーゼ活性またはセリンプロテアーゼ様活性によって媒介されるミコバクテリア感染に感受性である哺乳動物における機能的な内因性α1-抗トリプシンレベルの欠損を予防する方法であって、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の有効量を含む薬学的に許容される担体中の薬学的組成物によって該哺乳動物を治療する段階を含む方法。
【請求項7】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す1種またはそれ以上の物質、またはその機能的誘導体の治療有効量が、治療有効量の1種またはそれ以上の抗炎症性化合物、および/または治療有効量の1種またはそれ以上の免疫調節薬剤と併せて投与されうる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
抗炎症性化合物または免疫調節薬物が、インターフェロン;ベータセロン、β-インターフェロンを含むインターフェロン誘導体;イロプロスト(iloprost)、シカプロスト(cicaprost)を含むプロスタン誘導体;コルチゾル、プレドニゾロン、メチル−プレドニゾロン、デキサメタゾンを含むグルココルチコイド;シクロスポリンA、FK-506、メトキサレン(methoxsalene)、サリドマイド、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートを含む免疫抑制剤;ジレウトン(zileutone)、MK-886、WY-50295、SC-45662、SC-41661A、BI-L-357を含むリポキシゲナーゼ阻害因子;ロイコトリエンアンタゴニスト;ACTHおよびそのアナログを含むペプチド誘導体;可溶性TNF受容体;TNF抗体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の可溶性受容体;インターロイキン、他のサイトカイン、T細胞タンパク質の受容体に対する抗体;ならびにカルシポトリオール(calcipotriol)、ならびにそれらのアナログを、単独または組合せのいずれかで含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
治療を必要とする対象に、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子またはその機能的誘導体を示す1種またはそれ以上の物質の治療有効量が、1種またはそれ以上の抗ミコバクテリア組成物または抗ウイルス組成物、またはその組合せと併せて投与されうる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
治療を必要とする哺乳動物において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアが、ヒト型結核菌(M. tuberculosis)、ウシ型結核菌(M. bovis)、らい菌(M. leprae)、M.アビウム-イントラセルラーレ(M. avium-intracellulare)、M. ケロネイ(M. chelonei)、M.アフリカヌム(M. africanum)、M.マリニウム(M. marinium)、M.ブルーリ(M. buruli)、M.フォーツイタム(M. fortuitum)、M.ヘモフィルム(M. haemophilum)、M.イントラセルラーレ(M. intracellulare)、M.カンサシ(M. kansasii)、M.リットラーレ(M. littorale)、M.マルモエンセ(M. malmoense)、M.マリアヌム(M. marianum)、M.シミエ(M. simiae)、M.シュルガイ(M. szulgai)、M.ウルセランス(M. ulcerans)、トリ型結核菌(M. avium)、M.フラバセンス(M. flavascens)、ネズミらい菌(M. lepraemurium)、M.ミクロティ(M. microti)、およびパラ結核菌(M. paratuberculosis)、M.ゴルドネ(M. gordonae)、M.ガストリ(M. gastri)、M.フレイ(M. phlei)、M.ノンクロモゲニクム(M. nonchromogenicum)、M.スメグマティス(M. smegmatis)、M.テレ(M. terrae)、M.トリビアーレ(M. triviale)、およびM.バッカエ(M. vaccae)を含むミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む、請求項3記載の方法。
【請求項11】
治療を必要とする哺乳動物において、マクロファージへの感染が阻害されるミコバクテリアが、I群(増殖遅延型光発色菌)、II群(増殖遅延型暗発色菌)、III群(増殖遅延型非光発色菌)、グループIV群(迅速増殖型ミコバクテリア)を含む4つのラニヨン群からの非結核菌ミコバクテリアを含むミコバクテリア属からのミコバクテリアを含む、請求項3記載の方法。
【請求項12】
1つまたはそれ以上の細菌徴候と関連する痛みおよび/または症状の軽減または阻害が、約10〜20%、30〜40%、50〜60%、または75〜100%の軽減または阻害のオーダーである、請求項1記載の方法。
【請求項13】
物質が任意のセリンプロテアーゼを阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、炭疽菌(Bacillus anthracis)への曝露のリスクがあると考えられる対象における炭疽の症状を予防するための方法であって、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングをブロックし、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合に該曝露の症状が予防される、方法。
【請求項15】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、炭疽菌に曝露されたことが疑われる対象における炭疽の症状を予防するための方法であって、該物質は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害し、かつ対象が炭疽菌に曝露される場合に該曝露の症状が予防される、方法。
【請求項16】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ活性阻害因子を示す物質の薬学的有効量を対象に投与する段階を含む、改善を必要とする対象における炭疽の症状を改善するための方法であって、該哺乳動物α1-抗トリプシンまたはセリンプロテアーゼ阻害因子は、不活性型の大きなPAから活性型のより小さなPA分子への内因性宿主プロテアーゼの細胞表面プロセシングを阻害する、方法。
【請求項17】
阻害または予防される炭疽の症状が、皮膚潰瘍、水腫、および瘢痕形成からなる群より選択される、請求項12記載の方法。
【請求項18】
予防または改善される症状が吸入炭疽の症状であり、該症状が、肺水腫、壊死性縦隔リンパ節疾患、胸水、換気機能障害、咳、発汗および悪寒、敗血症および敗血症ショックを含む、請求項12記載の方法。
【請求項19】
薬学的組成物が、経口的に、全身的に、移植物を通して、静脈内に、局所的に、くも膜下腔内に、吸入により、または経鼻的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
哺乳動物α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ阻害因子の物質が融合ポリペプチドの一部であってもよく、該融合ポリペプチドは、哺乳動物α1-抗トリプシンまたはα1-抗トリプシン様活性物質および該哺乳動物α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ活性阻害因子の物質と相同なアミノ酸配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
α1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ阻害因子を使用して、ミコバクテリア疾患または炭疽疾患を治療または予防するための方法。
【請求項22】
治療または予防を必要とする患者における炎症誘発性サイトカイン産生を、該患者にα1-抗トリプシンまたは他のセリンプロテアーゼ活性阻害因子を投与することで阻害することにより、炭疽疾患または炭疽関連疾患を治療または予防するための方法。
【請求項23】
サイトカインが、IL-1、TNFα、IL-18、または一酸化窒素、またはその任意の組合せである、請求項22記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図4F】
【図4G】
【図4H】
【図5】
【公表番号】特表2007−504144(P2007−504144A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524842(P2006−524842)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027711
【国際公開番号】WO2005/019434
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506067822)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ コロラド ア ボディー コーポレイト (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027711
【国際公開番号】WO2005/019434
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(506067822)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティー オブ コロラド ア ボディー コーポレイト (1)
【Fターム(参考)】
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