説明

セルガイド用形鋼の熱間圧延方法および熱間圧延設備

【課題】セルガイドとして使用するにあたってコンテナ船内におけるコンテナの収容効率を向上するセルガイド用形鋼を、熱間圧延で効率良く製造することによって製造コストを削減できるセルガイド用形鋼の熱間圧延方法および熱間圧延設備を提供する。
【解決手段】所定の温度に加熱した矩形断面の鋼素材に、上下一対のカリバーロール11a,11bを複数組用いる成形設備にて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とした後、成形設備の出側に配設される左右一対の曲げロール12a,12bを少なくとも1組用いる曲げ設備にて中間素材の湾曲部に曲げ加工を施してセルガイド用形鋼を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数のコンテナを海上輸送するためのコンテナ船で使用するセルガイドに好適な形鋼(以下、セルガイド用形鋼という)の熱間圧延方法および熱間圧延設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンテナ船は多数のコンテナを海上輸送するための船舶であり、その船体内には複数の隔壁が設けられる。コンテナは船積みされる際に、クレーンによって隔壁に沿って上方から下方へ移動し、積み出される際には隔壁に沿って下方から上方へ移動する。そのため図7に示すように、コンテナの4隅を案内するための部材(以下、セルガイドという)を隔壁に配設する。
【0003】
従来からセルガイド1には形鋼が使用されており、とりわけ図9に示すような等辺山形鋼4をリブ5に溶接したものが広く使用されている。図8は、このセルガイド1の斜視図である。等辺山形鋼4は、辺の長さ130〜150mm程度,厚みが15mm程度のものが一般的である。リブ5は、厚み10〜15mm程度の鋼板をT字型に切断したものであり、等辺山形鋼4を隔壁3に固定する役割を担う。なお、等辺山形鋼4の外側面同士の間隔Lは、最近では60mm程度とすることが多い。この図9に示すセルガイドを製造する際には、鋼板を切断してリブ5を製造し、さらにそのリブ5に等辺山形鋼4を溶接する。等辺山形鋼4の2辺とリブ5とを溶接するので、狭い空間での溶接作業となるばかりでなく、溶接部が長くなり、セルガイド1の製造過程で生産性低下の問題が生じる。
【0004】
これに対して特許文献1には、図10に示す形状の形鋼を用いるセルガイドが開示されている。図11は、図10に示すセルガイド用形鋼の断面図である。この技術は、図10に示す形状のセルガイド用形鋼6を用いるので、セルガイドの強度を高めるとともに、リブ(図示せず)の形状を矩形あるいは台形にすることによって溶接箇所を減少させることができる。その結果、セルガイドの製造に要する所要時間の短縮と製造コストの削減を達成できる。なお特許文献1では、セルガイド用形鋼6を製造する過程で図12に示すような孔型を有する上下一対の圧延ロール(いわゆるカリバーロール)を順次使用する。そして、得られるセルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lは90mmである。
【0005】
脚部8の外側面同士の間隔Lが大きくなると、図7に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナの収容効率が低下する。コンテナの収容効率を高めるためには、脚部8の外側面同士の間隔Lを小さくしなければならない。
特許文献1に開示された技術を用いて図10に示すようなセルガイド用形鋼6を製造するにあたって、脚部8の外側面同士の間隔Lを60mm程度とするためには、図13に示すような孔型を有する圧延ロールを使用する必要がある。しかも、図10に開示されたセルガイド用形鋼6の底辺10は平坦であり、その底辺10を平坦に形成するためには、図13の上ロールの凸部先端の平面が底辺10に接触する必要がある。
【0006】
すなわち特許文献1に開示された技術では、セルガイド用形鋼6の脚部8の外側面同士の間隔Lを狭めるために、図13に示すように上ロールの凸部の幅を小さくする必要があり、しかも、その上ロールの凸部を下ロールの凹部の深奥まで挿入しなければならない。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で製造されるので、上ロールの凸部の温度は圧延中に著しく上昇し、変形や破損等が生じ易くなる。つまり特許文献1に開示された技術では、脚部8の外側面同士の間隔が狭いセルガイド用形鋼6を安定して大量に製造することは困難である。
【特許文献1】特開2002-274483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、セルガイドとして使用するにあたってコンテナ船内におけるコンテナの収容効率を向上するセルガイド用形鋼を、熱間圧延で効率良く製造することによって製造コストを削減できるセルガイド用形鋼の熱間圧延方法および熱間圧延設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、所定の温度に加熱した矩形断面の鋼素材に、上下一対のカリバーロールを複数組用いる成形設備にて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とした後、成形設備の出側に配設される左右一対の曲げロールを少なくとも1組用いる曲げ設備にて中間素材の湾曲部に曲げ加工を施してセルガイド用形鋼を得る熱間圧延方法である。
【0009】
また本発明は、所定の温度に加熱した矩形断面の鋼素材に、上下一対のカリバーロールを複数組用いて圧下を施し、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とする成形設備と、成形設備の出側に配設される左右一対の曲げロールを少なくとも1組用いて中間素材の湾曲部に曲げ加工を施してセルガイド用形鋼とする曲げ設備と、を有する熱間圧延設備である。
【0010】
なお本発明で得られるセルガイド用形鋼は、湾曲部が円弧状の形状を呈するが、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セルガイド用形鋼を熱間圧延で効率良く製造でき、製造コストの削減が可能である。また、セルガイドとして使用するにあたって、コンテナ船内におけるコンテナの収容効率の向上を達成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
まず、本発明のセルガイド用形鋼について説明する。
図1は、本発明を適用して得られるセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。その断面は、セルガイド用形鋼の長手方向に垂直な面である。
図1に示すように、本発明によって得られるセルガイド用形鋼6は、円弧状の湾曲部7,湾曲部7の両端から互いに平行に延伸される2枚の脚部8,脚部8の先端から垂直方向かつ外側に延伸される2枚の突出部9からなる。つまり、脚部8の一端は湾曲部7に連結され、他端は突出部9に連結される。湾曲部7は、図11に示すセルガイド用形鋼のような平坦ではなく、湾曲した円弧状の形状である。この点については、セルガイド用形鋼6の熱間圧延に関連して後述する。なお、脚部8と湾曲部7を総称してU字形部と記す。
【0013】
このセルガイド用形鋼6をリブ5に溶接してセルガイドとする。図2は、そのセルガイドの例を示す断面図である。図3は、図2に示すセルガイドの斜視図である。セルガイド用形鋼6は熱間圧延で一体的に成形されるので、十分な強度を有する。そのためセルガイドを製造するにあたってU字形部の内側にリブ5を充填する必要はなく、セルガイドの組立てが容易になる。つまり溶接する部位はセルガイド用形鋼6とリブ5との接触面のみとなり、図9に示すセルガイドに比べて溶接長さを大幅に減少できる。
【0014】
脚部8の外側面同士の間隔Lは30〜80mmの範囲内が好ましい。脚部8の外側面同士の間隔Lが30mm未満では、U字形部の内側が狭くなるので、熱間圧延でセルガイド用形鋼を製造することが困難になる。一方、間隔Lが80mmを超えると、湾曲部7の半径が大きくなるにつれて、脚部8の長さが短縮されるので、コンテナの4隅を案内する機能が低下するばかりでなく、図7に示すコンテナ2の隙間が広がるので、コンテナ2の収容効率が低下する。
【0015】
次に、本発明のセルガイド用形鋼の熱間圧延について説明する。
図4は、セルガイド用形鋼の熱間圧延で使用する圧延ロール(すなわちカリバーロール,曲げロール)を順次示す断面図である。
矩形の断面を有する鋼素材を所定の温度に加熱した後、図4の(a)〜(d)に示すように上下一対で1組をなすカリバーロールで順次圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部とその脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有するW字形状を呈する中間素材を得る。この段階で、脚部と突出部が直角をなすように圧下を加えることが好ましい。なお、図4には4組のカリバーロールを使用する例を示したが、本発明ではカリバーロールの数は4組に限定しない。カリバーロールの数は、鋼素材の寸法や材質等に応じて適宜設定する。なお、この複数組のカリバーロール(図4の例では(a)から(d)まで)を用いて中間素材を得る設備を成形設備と記す。
【0016】
成形設備の出側では、左右一対で1組をなす曲げロールを少なくとも1組用いて中間素材の湾曲部に曲げ加工を施して、セルガイド用形鋼とする。なお、図4には2組の曲げロールを使用する例を示したが、本発明では曲げロールの数は2組に限定しない。曲げロールの数は、鋼素材の寸法や材質等に応じて適宜設定する。なお、この少なくとも1組の曲げロール(図4の例では(e)から(f)まで)を用いて中間素材に曲げ加工を施す設備を曲げ設備と記す。
【0017】
曲げロールは、脚部の外側面に接触する面が平坦なロールである。図4(e),(f)には断面形状が台形(つまり円錐状)の曲げロール12a,12bを用いる例を示したが、図14(a)に示すような断面形状が矩形(つまり円筒状)の曲げロール12a,12bを用いても良い。また曲げロールとして、駆動装置に連結したロール(いわゆる駆動ロール)を使用しても良いし、あるいは駆動力が作用しないロール(いわゆる無駆動ロール)を使用しても良い。
【0018】
また曲げロール12a,12bに加えて、曲げ加工の寸法精度を向上させる目的で図14(b)に示すような補助ロール13を使用しても良い。
さらに曲げロール12a,12bは、脚部の外側面に接触する面が平坦ではなく、図14(c)に示すように湾曲部7に沿う形状に加工されたものを使用しても良い。
曲げ設備ではカリバーロールを使用しないので、U字形状部内は空洞となる。したがって、カリバーロールの凸部の変形や破損を抑制できる。また、湾曲部には圧下が加えられないので、曲げ加工によって円弧状に湾曲したU字形状となる。なお湾曲部は、必ずしも真円の円弧である必要はなく、楕円の円弧であっても良い。
【0019】
このようにして、成形設備と曲げ設備からなる本発明の熱間圧延設備を用いてセルガイド用形鋼を製造すれば、カリバーロールの変形や破損を抑制でき、かつ孔型の数を削減できる。その結果、セルガイド用形鋼の生産性が大幅に向上する。
また、曲げロールを用いて湾曲部の曲げ加工を行なうことによって、従来のカリバーロールによる加工に比べて摩擦を減少することが可能となり、セルガイド用形鋼に表面疵が発生するのを防止できる。
【実施例】
【0020】
矩形断面の鋼素材を熱間圧延して、図5に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼(長さ20m)を製造した。カリバーロールは図4(a)〜(d)に示す孔型を有するものを4組使用し、曲げロールは図4(e)〜(f)に示すように2組使用した。このセルガイド用形鋼を発明例とする。
一方、比較例として、図6(a)〜(f)に示す孔型を有するカリバーロールを6組使用して矩形断面の鋼素材を熱間圧延することによって、図5に示す寸法(単位はmm)を有するセルガイド用形鋼(長さ20m)を製造した。
【0021】
得られたセルガイド用形鋼(発明例,比較例いずれも50本ずつ)の表面を調査したところ、比較例では、多数(発生比率38%)のセルガイド用形鋼でU字形状部の内面に表面疵が発生した。発生比率は、セルガイド用形鋼の本数をNMとし、表面疵が発生したセルガイド用形鋼の本数をNDとして、100×ND/NMで算出される値である。この表面疵は図6(f)に示す下ロールの凸部の破損が原因である。U字形状部の内面に表面疵が発生すると、図6(f)に示す下ロールを交換するために操業を停止せざるを得ないので、生産効率の低下を招く。また、U字形状部内に潤滑油を供給すれば、表面疵を防止することは可能である。しかし潤滑油を使用すると、表面疵は防止できるが、セルガイド用形鋼の製造コストが上昇する。
【0022】
これに対して発明例では、表面疵が発生したセルガイド用形鋼は極めて少数(発生比率2%)であり、良好な表面性状が得られた。
このようにして、本発明によれば、優れた表面性状を有するセルガイド用形鋼を効率良く製造でき、製造コストの削減が可能であることが確かめられた。しかも脚部の外表面同士の間隔Lが60mm程度のセルガイド用形鋼を容易に得ることができるので、セルガイドとして使用した場合に、間隔Lが90mm程度の従来のセルガイド用形鋼と比べて、コンテナの収容効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のセルガイド用形鋼の例を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示すセルガイド用形鋼を用いて製造したセルガイドの例を模式的に示す断面図である。
【図3】図2に示すセルガイドの斜視図である。
【図4】本発明で用いるカリバーにロールの孔型を順次示す断面図である。
【図5】発明例のセルガイド用形鋼の寸法を示す断面図である。
【図6】比較のために用いたカリバーにロールの孔型を順次示す断面図である。
【図7】セルガイドを隔壁に配設する例を模式的に示す断面図である。
【図8】従来のセルガイドの例を示す斜視図である。
【図9】図8に示すセルガイドを拡大して示す断面図である。
【図10】従来のセルガイドの他の例を模式的に示す斜視図である。
【図11】図10に示すセルガイド用形鋼の断面図である。
【図12】図10に示すセルガイド用形鋼の製造過程で使用するカリバーロールの孔型を順次示す断面図である。
【図13】図10に示すセルガイド用形鋼の脚部の外側面同士の間隔を狭めるために使用する圧延ロールの孔型を示す断面図である。
【図14】曲げロールと補助ロールの例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 セルガイド
2 コンテナ
3 隔壁
4 等辺山形鋼
5 リブ
6 セルガイド用形鋼
7 湾曲部
8 脚部
9 突出部
10 底辺
11a カリバーロール
11b カリバーロール
12a 曲げロール
12b 曲げロール
13 補助ロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度に加熱した矩形断面の鋼素材に、上下一対のカリバーロールを複数組用いる成形設備にて圧下を施して、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ前記湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とした後、前記成形設備の出側に配設される左右一対の曲げロールを少なくとも1組用いる曲げ設備にて前記中間素材の前記湾曲部に曲げ加工を施してセルガイド用形鋼を得ることを特徴とするセルガイド用形鋼の熱間圧延方法。
【請求項2】
所定の温度に加熱した矩形断面の鋼素材に、上下一対のカリバーロールを複数組用いて圧下を施し、長手方向に垂直な断面の中央に円弧状の形状を呈する湾曲部を有しかつ前記湾曲部から斜め方向に延伸する2枚の脚部と前記脚部の先端から外側に延伸する2枚の突出部とを有する中間素材とする成形設備と、前記成形設備の出側に配設される左右一対の曲げロールを少なくとも1組用いて前記中間素材の前記湾曲部に曲げ加工を施してセルガイド用形鋼とする曲げ設備と、を有することを特徴とするセルガイド用形鋼の熱間圧延設備。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−101771(P2009−101771A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−273851(P2007−273851)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】