説明

セルロース繊維の修飾が関与するナノセルロースの提供法

本発明はナノセルロースの製造法を提供する。この方法は、最初にセルロース材料の修飾を含み、ここでセルロース繊維は両性のセルロース誘導体の電解質含有水溶液で処理される。修飾の次に機械的処理が続く。ナノセルロースを製造するためのこの方法を使用することにより、機械的装置の詰まりが回避される。また該方法にしたがい製造されるナノセルロースおよび該セルロースの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ナノセルロース(ミクロフィブリル化セルロース)を製造するための、セルロース含有材料の処理の技術分野に関する。また該方法に従い製造されたナノセルロースおよび該セルロースの使用も開示される。
【背景技術】
【0002】
背景
特許文献1では、リグノセルロース材料の修飾に関する方法が開示される。セルロース繊維は両性セルロース誘導体(amphoteric cellulose derivative)の電解質含有水溶液で少なくとも5分間、少なくとも50℃の温度で処理される。処理中のpHは約1.5〜4.5であるか、または11より高く;あるいは電解質の濃度は、電解質が一価のカチオンを有する場合には約0.0001〜0.05Mであり、または電解質が二価のカチオンを有する場合は約0.0002〜0.1Mである。さらに該明細書は上記方法により得られる生成物および高い湿潤強度を持つ紙を製造するための該生成物の使用に関する。
【0003】
しかし上記明細書ではナノセルロースまたは類似物の製造については言及していない。
【0004】
非特許文献1では、ナノセルロースまたはミクロファイバーセルロースを作成するために、クロロ酢酸とリグノセルロース繊維との間の反応が、ホモジナイザー内の層間剥離を容易にするための前処理として記載されている。しかしカルボキシメチルセルロースポリマーのリグノセルロース繊維への結合(attachment)は記載されていない。
【0005】
特許文献2を通じて、均質化(homogenization)を使用することによるミクロフィブリル化セルロースまたはナノセルロースの製造法がさらに開示されている。しかしパルプからナノセルロースを製造する場合に、1つの問題はパルプが高圧で流動化装置/ホモジナイザーを押し出される時のホモジナイザーの詰まりである。別の問題は精製前のパルプをある種の物理化学的前処理にかけなければ均質化中のエネルギー消費が過剰となる点である。このように詰まりの問題および過剰なエネルギー消費の問題が軽減および/または回避できる方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2005080678号パンフレット
【特許文献2】米国特許第4,341,807号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Waegberg et al.“The Build−Up of Polyelectrolyte Multilayers of Microfibrillated Cellulose and Cationic Polyelectrolytes”.Langmuir(2008),24(3),784−795
【発明の概要】
【0008】
発明の要約
本発明は、第一の観点に従い、セルロース繊維の修飾が関与するナノセルロースの提供法を提供することにより上記問題を解決し、ここでこの方法は以下の工程:
i)セルロース繊維を少なくとも5分間、両性のカルボキシメチルセルロース(両性CMC)またはそれらの誘導体、好ましくは低分子両性CMCまたはそれらのCMC誘導体の電解質含有水溶液で処理し、これによる処理中の温度は少なくとも50℃であり、そして少なくとも1つの以下の条件
A)処理中の水溶液のpHが約1.5〜4.5の間、好ましくは2〜4の範囲にある;あるいは
B)処理中の水溶液のpHが約11より高い;あるいは
C)水溶液中の電解質の濃度は、電解質が一価のカチオン(NaSOのような)を有する場合、約0.0001〜0.5M、好ましくは約0.001〜0.4Mの間にあり、または電解質が二価のカチオン(CaClのような)を有する場合、約0.0001〜0.1M、好ましくは約0.0005〜0.05Mの範囲にある、
が適用され:
ii)pHを、塩基性および/または酸性液体を使用することにより約5から約13のpH範囲に調整し、好ましくはpHは約6から約12のpHに調整され、そして
iii)該材料を機械的粉砕デバイス中で処理し、これにより該ナノセルロースを提供する、
を含んでなる。
【0009】
これにより本発明は、ナノセルロースを製造する目的で、均質化前の前処理として両性CMCポリマーのリグノセルロース繊維への結合が関与する。両性CMCポリマーの結合は、以下に概略するような幾つかの利点を有することが示された。
【0010】
両性CMCポリマーの結合はエネルギー消費をかなり減少させ、そして詰まりの問題を回避することが可能である。さらにこれは繊維のアニオンの電荷密度を上げ、これが層間剥離を容易とし、そしてさらに例えば電荷が任意のカルボキシメチル化反応によりすでに導入されている場合より一層低い電荷密度で層間剥離を可能にする。さらにCMC結合工程は水性に基づくので、これは水以外の他の溶媒を必要としない点で有利である。
【0011】
両性CMCポリマーを使用することにより、結合はより容易となり、そして結合の程度はアニオン性CMCに比べて増大する。
【0012】
工程i)の条件Cは、許容され得る場合に好ましくは条件AまたはBのいずれかと組み合わされる。処理したセルロース繊維は工程i)の後、最初に酸性液体で、そしてそのうえ、本質的に中性液体、好ましくは水で洗浄され得る。
【0013】
また本発明は第二の観点に従い、第一の観点による方法により得られた修飾リグノセルロース材料(ナノセルロース)を提供する。両性CMCのリグノセルロース繊維への結合量は、5〜250ミリグラムの両性CMC/グラム(乾燥繊維)、好ましくは7〜200ミリグラムの両性CMC/グラム(乾燥繊維)、そしてより好ましくは10〜150ミリグラムの両性CMC/グラム(乾燥繊維)の間である。本明細書に記載する両性CMCの結合は、少ないエネルギー消費および詰まりのリスク無しにナノセルロースの製造のための水性前処理工程を有利に可能にする。この効果は、すでにカルボキシメチル化反応が使用されている場合より低い電荷密度を生じる比較的少量の両性CMCの結合により達成される。当然、この方法で使用される両性CMCのアニオンの電荷密度は、必要なCMCの量に影響を及ぼす。アニオンの電荷密度が高いCMCは、必要なCMC量を下げる。
【0014】
また本発明は第三の観点に従い、化粧品、製薬学的製品、食料品、紙製品、複合材料、コーティング、衛生/吸収製品、フィルム、乳化/分散剤、掘穿泥水での使用、ならびに再生セルロースもしくはセルロース誘導体の製造、または流動性モディファイヤーにおけるセルロースの反応性を増強するために、第二の観点のリグノセルロース材料(ナノセル
ロース)の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の詳細な説明
本明細書の記載を通して、「両性セルロース誘導体」という表現は、カチオンおよびアニオン部分の両方を同時に含んでなる任意のセルロース誘導体を包含することを意図する。さらに該両性セルロース誘導体は好ましくは、正味では負に荷電しているが、わずかな量のカチオン的に活性な基を含んでなる両性セルロース誘導体である。さらにより好適な該セルロース誘導体は、両性CMC(CMC=カルボキシメチルセルロース)誘導体であり、特に好適であるのは0.3から1.2の間の好適なアニオンのモル置換度、すなわちD.S=0.3〜1.2を有し、そして粘度が4%濃度で約25〜8,000mPaとなり得る両性CMC誘導体である。
【0016】
さらにCMC誘導体は当業者に周知に方法で、0.00001から1.0、好ましくは0.00001から0.4の間の置換度にすでにカチオン化されていてもよい。カチオン化は好ましくは少なくとも1つのアンモニウム官能基、最も好ましくは二級、三級または四級アンモニウム官能基(またはそれらの混合物)の誘導体への導入により行われる。
【0017】
本記載を通して、「機械的粉砕デバイス」という表現は、上に説明したようなナノセルロース(ミクロフィブリル化セルロース)を提供するために適することができる任意のデバイスを意味することを意図し、そして該デバイスは例えば精製機、流動化装置、ホモジナイザーまたはミクロ流動化装置でよい。
【0018】
本発明の第一の観点の好適態様に従い、該セルロース繊維(セルロース材料)がパルプの状態(これは化学パルプ、砕木パルプ、サーモメカニカルパルプもしくはケミ(サーモ)メカニカルパルプ(CMPもしくはCTMP)でよい)で存在する方法が提供される。該ケミカルパルプは好ましくは亜硫酸パルプまたはクラフトパルプである。
【0019】
パルプは硬木、軟材または両種類からのパルプからなることができる。パルプは例えばマツおよびハリモミの混合物、またはカバおよびハリモミの混合物を含むことができる。本発明で使用できる化学パルプは、漂白、半漂白および非漂白亜硫酸、クラフトおよびソーダパルプ、およびそれらの混合物のようなすべての種類の木材に基づく化学パルプを含む。ナノセルロース製造中のパルプの粘稠度(consistency)は、低い粘稠度から中程度の粘稠度を通って高い粘稠度まで、任意の稠度であることができる。
【0020】
両性セルロース誘導体の好適な濃度は、繊維材料の乾燥重量に基づき算出される約0.02〜4重量/重量%である。さらに好適な濃度は、0.04〜2重量/重量%、そして最も好適な添加濃度は約0.08〜1重量/重量%である。
【0021】
本発明の第一の観点の好適態様に従い、セルロース繊維が約5〜180分間処理される方法が提供され、好適な処理(吸着)期間は、約10〜120分である。
【0022】
本発明の第一の観点の好適態様に従い、処理中の温度は約50℃より高く、好ましくは少なくとも約100℃、そして最も好ましくは最高約120℃である方法が提供される。このように本発明の方法は、大気圧より高い圧で行うことができる。このために適切な装置および操作条件は、当業者には明白であろう。
【0023】
本発明の第一の観点の好適態様に従い、工程i)の条件Cが、条件Aまたは条件Bのいずれかと一緒に適用される方法が提供される。
【0024】
本発明の第一の観点の好適態様に従い、該セルロース繊維がパルプ、好ましくは亜硫酸パルプまたはクラフトパルプに含まれる方法が提供される。
【0025】
パルプの好適な濃度は約0.5〜50%、より好適な濃度間隔は約5〜50%、そして最も好適な濃度間隔は約10〜30%である。そのように高い濃度ミックスは、関連する技術分野の当業者には知られており、そして本発明と関連して使用するために適している。
【0026】
本発明の各観点の好適な特徴は、必要な変更を加えて他の各観点にあてはまる。本明細書で言及した従来技術の明細書は、法により認められるすべての範囲を包含する。さらに本発明は添付する図面と関連して以下の実施例でさらに記載され、これは本発明の範囲をどのようにも制限するものではない。本発明の態様は、実施例態様および図面の援助によりさらに詳細に記載され、それらの目的は本発明を具体的に説明することであり、その程度を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付する図面1〜7では、以下の実施例の部で説明されるような均質化後に生じる生成物が示されている。より具体的には:
【図1】MFCゲルを生じた例Cを示す。
【図2】MFCゲルを生じた例Dを示す。
【図3】MFCゲルを生じた例Eを示す。
【図4】MFCゲルを生じた例Fを示す。
【図5】MFCゲルを生じた例Hを示す。
【図6】MFCゲルを生じなかった例Kを示す。
【図7】MFCゲルを生じた例Lを示す。
【実施例】
【0028】
例A−F
パルプ:市販されている未乾燥(never dried)漂白亜硫酸パルプ(Domsjoe ECO Bright,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で1000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.64のアニオン置換度、0.048のカチオン置換度および2.0の極限粘度数を持つ両性CMCを脱イオン水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=120℃;処理時間=2時間;CaCl−濃度=0.05M;水=脱イオン水。異なる量のCMCを異なる例A−Fに加えた(例A=0mgのCMC/g繊維、例E=80mgのCMC/g繊維、例F=120gのCMC/g繊維)。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2%濃度)を、1750バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0029】
例G−H
パルプ:市販されている未乾燥漂白亜硫酸溶解パルプ(Domsjoe Dissolving plus,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で10000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.64のアニオン置換度、0.048のカチオン置換度および2.0の極限粘度数を持つ両性CMCを脱イオン水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=120℃;処理時間=2時間;CaCl−濃度=0.05M;水=脱イオン水。異なる量のCMCを異なる例G−Hに加えた(例G=0mgのCMC/g繊維、例H=80mgのCMC/g繊維)。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2%濃度)を、1750バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0030】
例I
パルプ:市販されている未乾燥漂白亜硫酸パルプ(Domsjoe ECO Bright,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で10000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.65のアニオン置換度、0.048のカチオン置換度および2.0の極限粘度数を持つ両性CMCを水道水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=室温(約20℃);処理時間=2時間;水=水道水;CMC添加=10mgのCMC/g繊維、余分な電解質は加えず。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2%濃度)を、1700バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0031】
例J
パルプ:市販されている未乾燥漂白亜硫酸パルプ(Domsjoe ECO Bright,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で10000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.57のアニオン置換度、および1.4の極限粘度数を持つアニオン性CMCを脱イオン水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=120℃;処理時間=2時間;CaCl濃度=0.05M;水=脱イオン水;CMC量=80mgのCMC/g繊維。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2%濃度)を、1750バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0032】
例K
パルプ:市販されている未乾燥漂白亜硫酸溶解パルプ(Domsjoe Dissolving plus,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で10000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水で洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.57のアニオン置換度、および1.4の極限粘度数を持つアニオン性CMCを脱イオン水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=120℃;処理時間=2時間;CaCl濃度=0.05M;水=脱イオン水;CMC量=80mgのCMC/g繊維。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2%濃度)を、1750バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0033】
例L
パルプ:市販されている未乾燥漂白亜硫酸パルプ(Domsjoe ECO Bright,Domsjoe Fabriker)
手順:
1.未乾燥パルプを、最初に脱イオン水に分散した。2リットルの脱イオン水を30グラムのパルプに加え、次いで(ISO5263−1:2004)に従い、研究室の打解機中で10000回転で分散した。
2.次いでパルプを、その水素対イオン形にイオン交換した。最初にHClをパルプに加えて10−2M(pHは2である)の濃度とした。pHを2で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
3.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。最初にNaHCOをパルプに加えて10−3Mの濃度とし、そして次にNaOHを加えて9のpHに到達させた。pHを9で30分間維持した。次いでパルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗浄した。
4.0.4のアニオン置換度、および15の極限粘度数を持つアニオン性CMCを脱イオン水に溶解した。
5.CMC結合は、Laine et al.(Laine,J.et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal
15(5),page 520−526)に従い行った。結合中の条件:パルプ濃度=20グラム/リットル;温度=120℃;処理時間=2時間;CaCl濃度=0.05
M;水=脱イオン水;CMC量=80mgのCMC/g繊維。
6.CMC結合処理後、パルプを濾液の伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水で洗浄した。
7.次いでパルプを、工程2および3で上に記載したように、そのナトリウム対イオン形にイオン交換した。
8.次いでパルプ(脱イオン水中の2.6%濃度)を、1750バールの操作圧でミクロ流動化装置M−110EH(Microfluidics Corp.)に1回通すことにより均質化した。使用したチャンバーは200μmおよび100μmの内径を有した。
【0034】
分析
電導度滴定
繊維上に結合したアニオン性CMCの量は、電導度滴定により測定した。電導度滴定はアニオン基、例えばパルプ中のカルボキシル酸基(carboxyl acid group)の総量を測定する。滴定前に、パルプを以下のような異なる対イオン形に洗浄した。
1.最初に、パルプをその水素対イオン形に設定した。2gの乾燥パルプを含有するサンプルを1000mlの脱イオン水に分散し、そして次に0.01MのHClを加え、pH2に調整した。余分なHClは、30分後に伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗い流した。
2.次いでパルプを、そのナトリウム対イオン形に設定した。パルプを脱イオン水に分散し、次いで0.001MのNaHCOを加え、NaOHを使用してpHを9に設定した。30分以上の後、余分なNaOHおよびNaHCOは、伝導率が5μS/cm未満になるまでブフナー漏斗で脱イオン水を用いて洗い流した。
3.この後、サンプルをもう一度その水素対イオン形に設定し(工程1)、そして洗浄して伝導率を5μS/cm未満とした。
4.最後にパルプの総電荷密度を、Katz et al.“亜硫酸パルプ中の強い、そして酸性の基の測定(The determination of strong and acidic groups in sulfite pulps)”,svensk papperstidning no.6/1984,page R48−R53により記載される手順に従い電導度滴定で測定した。
【0035】
結合したCMCの量は、アニオン性CMCパルプからの結果を参照パルプからの結果と比較することにより評価され、結合したCMCの量を決定することができた。
【0036】
窒素分析
結合した両性CMCの量を評価するために、パルプ中の窒素含量を測定した。これは両性CMCのカチオン基が窒素を含むので行った。使用した装置はAntek7000(Antek Instruments,Inc.)であり、そして方法はピロ−化学発光(Pyro−chemiluminescence)(燃焼温度=1050℃)であった。実際に測定する前に、1mgのCMCあたりにどれくらいの窒素が存在するかを知るために、両性CMCを用いて検量線を作成した。
【0037】
CMCの極限粘度数
CMCの極限粘度数は0.1MのNaClを含む脱イオン水中で25℃の温度で測定した。
【0038】
【表1】

【0039】
表から分かるように、CMC結合無しのパルプを均質化することは詰まりの問題から不可能であった(例AおよびG)。両性CMCの助けにより、結合レベルが23.6mg/gより高い場合に、詰まることなくパルプを均質化することが可能となり(例C−FおよびH)、そしてこれはMFCゲルを生じた。より低い結合レベルでは詰まりが生じた(例B)。CMC結合手順中の温度を室温まで下げると(例I)、CMCはパルプに結合せず、そしてその結果として詰まりにより均質化することが不可能であった。例JおよびKでは、アニオン性CMCがパルプに結合した。しかしCMCはアニオン性であるので、結合レベルが低く、そしてこれによりMFCを作成することが不可能であった。例Jでは、亜硫酸パルプが使用され、そしてこのサンプルは均質化することができたが、MFCゲルを生じなかった。例Kでの溶解パルプは、詰まりのために均質化できなかった。例Lのすべての条件は、別のアニオン性CMCを代わりに使用した点を除き、例Jと同じであった。このCMCは結合が容易で、その結果、結合レベルは61.6mg/gと高かった。CMCの量が高かったので、このサンプルを均質化することが可能であり、そしてこれによりMFCゲルを生じた。しかしこのレベルに達するためには、両性CMCを使用する場合の3倍以上のCMCが必要であった(例Cと比較して)。添付する図面1〜7では、均質化後に生じた生成物が示されている。
【0040】
本発明の様々な態様が上に記載されたが、当業者はさらに本発明の範囲に入る微細な変更を理解するだろう。本発明の幅および範囲は、上記の実施例態様により限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲およびそれらの等価物にしたがってのみ定められるべきである。例えば任意の上記方法は他の既知の方法と組み合わせることができる。本発明の範囲内にある別の観点、利点および改良は、本発明が関連する分野の当業者には明白となるだろう。
【0041】
明細書中の文献リスト
国際公開第2005080678号パンフレット
米国特許第4,341,807号明細書
Laine et al.(Laine et al.(2000)Nordic Pulp and Paper Research Journal 15(5),page
520−526)
Katz et al.“The determination of strong and acidic groups in sulfite pulps”,svensk papperstidning no.6/1984,page R48−R53
Waegberg et al.“The Build−Up of Polyelectrolyte Multilayers of Microfibrillated Cellulose and Cationic Polyelectrolytes”Langmuir(2008),24(3),784−795

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維の修飾を包含するナノセルロースの提供法であって、以下の工程:
i)セルロース繊維を少なくとも5分間、両性のカルボキシメチルセルロースまたはそれらの誘導体、好ましくは低分子両性CMCまたはそれらの誘導体の電解質含有水溶液で処理し、これによる処理中の温度は少なくとも50℃であり、そして少なくとも1つの以下の条件
A)処理中の水溶液のpHが約1.5〜4.5の間、好ましくは2〜4の範囲にある;あるいは
B)処理中の水溶液のpHが約11より高い;あるいは
C)水溶液中の電解質の濃度は、電解質が一価のカチオンを有する場合、約0.0001〜0.5M、好ましくは約0.001〜0.4Mの間にあり、または電解質が二価のカチオンを有する場合、約0.0001〜0.1M、好ましくは約0.0005〜0.05Mの範囲にある、
が適用され:
ii)pHを、塩基性および/または酸性液体を使用することにより約5から約13のpH範囲に調整し、好ましくはpHは約6から約12のpHに調整され、そして
iii)該材料を機械的粉砕デバイス中で処理し、これにより該ナノセルロースを提供する、
を含んでなる上記提供法。
【請求項2】
工程i)の条件Cが、条件Aまたは条件Bのいずれかと一緒に適用される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
両性CMC誘導体が0.3から1.2の間のアニオンのモル置換度を有する請求項1に記載の方法。
【請求項4】
CMC誘導体が0.00001から1.0、好ましくは0.00001から0.4の間の置換度にすでにカチオン化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カチオン化が少なくとも1つのアンモニウム官能基、このましくは二級、三級または四級アンモニウム官能基を誘導体へ導入することによりすでに行われている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
セルロース繊維が約5〜180分間処理される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
処理中の温度が約50℃より高く、好ましくは少なくとも約100℃、そして最も好ましくは最高約120℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記セルロース繊維がパルプ、好ましくは亜硫酸パルプまたはクラフトパルプに含まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに1項に記載の方法により得られるナノセルロース。
【請求項10】
請求項9に記載のナノセルロースの、化粧品、製薬学的製品、食料品、紙製品、複合材料、コーティング、衛生/吸収製品、フィルム、乳化/分散剤、掘穿泥水での使用、および再生セルロースもしくはセルロース誘導体の製造における、または流動性モディファイヤーにおけるセルロースの反応性を増強するための使用。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2011−522902(P2011−522902A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503940(P2011−503940)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【国際出願番号】PCT/SE2009/050371
【国際公開番号】WO2009/126106
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510267948)
【Fターム(参考)】