説明

セル内のモバイル(携帯電話)装置の存在を確認する方法

本発明は、セルラ基地局、およびセルラ基地局において、以前にセルにキャンプ・オンしたモバイル装置が当該セル内に存在するかどうかを確認する方法に関する。この方法は、モバイル装置から接続要求を得るためのメッセージをモバイル装置に送信する(S2)ステップと、接続要求を受信した(S3)場合に、モバイル装置に接続拒絶メッセージを送信する(S4)ステップとを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、セル内の装置の検出に関し、詳細には、フェムトセル内でモバイル装置を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本項は、以下で述べ、且つ/または主張する本発明の様々な特徴に関係する可能性がある様々な技術的特徴を、読者に紹介するための項である。この記述は、本発明の様々な特徴をより理解しやすくする背景情報を読者に与えるのに有効であると考えられる。従って、これらの記述は、この点に照らして読まれるべきものであり、従来技術を承認するものとして読まれるべきものではないことを理解されたい。
【0003】
マクロセルは、1つのセルラ基地局によってカバーされる無線有効範囲を与えるモバイル(携帯)電話ネットワーク内のセル、すなわちユニバーサル・モバイル通信システム(UMTS)ネットワークにおけるノードBである。マクロセルは、ユーザー装置またはUEとも呼ばれるセルラ・ハンドセットをモバイル・ネットワークに接続するようになされている。基地局によってカバーされるエリアを、セルと呼ぶ。UEは、セル内に位置しているときに、その基地局に接続することができる。
【0004】
アクセス・ポイント基地局またはホーム・ノードBとも呼ばれるフェムトセルは、セルラ基地局である。フェムトセルは、モバイル・ハンドセットから見れば、機能的にはマクロセルのセルラ基地局と同様である。フェムトセルは、マクロセルよりはるかに狭いセル範囲をカバーするようになされている。フェムトセルがカバーするセル・サイズを、以下ではフェムトセルと呼ぶ。フェムトセルは、通常は、建物の中で、マクロセルの届かないエリアをカバーするために使用される。セルラ・サービスの運営業者は、複数のマクロセルおよびフェムトセルを提供する。
【0005】
UEは、あるセルにキャンプ・オン(camp on)しようとするときには、以下に示す23.012規格の4.1節に指定されるように位置更新手続きを実行する。これは、基地局に、当該UEの存在を知らせるものである。しかし、この時点以降、基地局は、当該UEがセル内に存在し続けているかどうか分からない。UEは、場合によっては、基地局への信号接続を開始することがある。すなわち、UEが、定期的な位置更新を実行したり、あるいはコア・ネットワークへの接続の確立に関わったりした場合である。UEがセルを出て新たなセルにキャンプ・オンする場合には、現在の基地局は、当該UEがもはやその制御下にないことに気づかない。
【0006】
通常の状況下では、コア・ネットワークがUEを追跡しているので、あるUEが所与のセル内に存在していることは、重要ではない。しかし、セルが、UEの存在を関知していることに基づくサービスを提供しようとする状況では、この情報は有用である。
【0007】
本発明は、セル内のUEの存在を確認する方法を提供することによって、従来技術に関わる懸念の少なくとも一部を解消しようとするものである。
【0008】
本発明は、セルラ基地局において、以前にセルにキャンプ・オンした任意のモバイル装置が前記セル内に存在するかどうかを確認する方法に関する。
【0009】
この目的のために、本発明は、モバイル装置から接続要求を得るためのメッセージをモバイル装置に送信するステップと、接続要求を受信した場合に、モバイル装置に接続拒絶メッセージを送信するステップとを含む方法に関する。
【0010】
本発明の方法は、UEに対していかなる修正も加える必要がないので有利である。本発明の方法では、規格に準拠した任意のUEの存在を確認することができる。
【0011】
本発明の実施例によれば、前記接続は、RRC接続である。
【0012】
本発明の実施例によれば、前記メッセージは、ページング・タイプ1メッセージである。
【0013】
本発明の実施例によれば、前記接続拒絶メッセージは、パラメータ「拒絶理由=未指定」および「待機時間=0」を有するRRC接続拒絶メッセージである。
【0014】
本発明の実施例によれば、セルラ基地局は、以前にキャンプ・オンしていた装置のデータベースのリストを記憶するメモリを含み、この方法は、接続要求を受信しない場合に、以前にキャンプ・オンしていた装置のデータベースのリストから当該モバイル装置を除去するステップを含む。
【0015】
本発明の実施例によれば、この方法は、モバイル装置にメッセージを送信する前に、UEの存在を検証することを求める要求をアプリケーションから受信するステップと、接続要求を受信した後で、または受信しなかった後で、UEの存在についてアプリケーションに通知するステップとを含む。
【0016】
本発明の別の目的は、以前にセルにキャンプ・オンしていたモバイル装置を登録するメモリと、モバイル装置から接続要求を得るためのメッセージをモバイル装置に送信し、接続要求を受信した場合に、モバイル装置に接続拒絶メッセージを送信することによって、セル内のモバイル装置の存在を確認する存在確認手段とを含む、セルラ基地局である。
【0017】
本発明の実施例によれば、存在確認手段は、存在を確認することを求める要求をアプリケーションから受信し、アプリケーションに応答を送信して当該存在について通知するようになされている。
【0018】
開示の実施例と範囲が同じであるいくつかの特徴について、以下に述べる。なお、これらの特徴は、本発明が取り得るいくつかの形態の簡単な概要を読者に与えるために示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際には、本発明は、以下では述べていない場合がある様々な特徴も包含することができる。
【0019】
本発明は、添付の図を参照して読まれる、いかなる意味でも限定的ではない以下の実施例および実行例によって、よりよく例示され、理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例によるシステムを示す図である。
【図2】実施例によるフェムトセル装置を示す図である。
【図3】実施例による方法の流れ図である。
【0021】
図2に示す各ブロックは、純粋に機能的な実体であり、必ずしも物理的に別個の実体に対応しているわけではない。すなわち、これらのブロックは、ハードウェアまたはソフトウェアの形態で展開することができ、あるいは、1つまたは複数の集積回路内に実装することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の図および説明は、本発明を明快に理解するために関わりのある要素を例示するために簡略化してあり、分かりやすくするために、通常のディジタル・マルチメディア・コンテンツを配信する方法およびシステムで見られるその他の多くの要素が省略されていることを理解されたい。しかし、これらの要素は当技術分野では周知であるので、これらの要素の詳細な説明は、本明細書では与えていない。本明細書の開示は、当業者に既知のこれら全ての変形形態および修正形態も対象とする。
【0023】
例示的な実施例は、フェムトセル装置の枠内に含まれるが、本発明は、この特定の環境に限定されず、マクロセルの基地局内に適用することができる。
【0024】
無線資源制御構成は、第3世代パートナーシップ・プロジェクト;技術仕様グループ無線アクセス・ネットワーク;無線資源制御(RRC);プロトコル仕様書(リリース8)の3GPP 25.331規格、バージョン8.7.0(2009年06月)に指定されている。これを、以下では25.331と記載する。
【0025】
位置更新手続きは、第3世代パートナーシップ・プロジェクト;技術仕様グループ・コア・ネットワークおよび端末;位置管理手続き(リリース8)の3GPP 23.012規格、バージョン8.1.0(2008年12月)に指定されている。これを、以下では23.012と記載する。
【0026】
遊休モード手続きは、第3世代パートナーシップ・プロジェクト;技術仕様グループ無線アクセス・ネットワーク;遊休モードにおけるユーザー装置(UE)手続きおよび接続モードにおけるセル再選択手続き(リリース8)の3GPP 25.304規格、バージョン8.6.0(2009年06月)に指定されている。これを、以下では25.304と記載する。
【0027】
本実施例は、図1に示すように、システム内のフェムトセルに関する。フェムトセル1は、ブロードバンド接続によって、モバイル・ネットワーク・オペレータ・ネットワーク5とも呼ばれるサービス・プロバイダ・ネットワークに接続される。本実施例では、ブロードバンド接続は、インターネット2への接続を提供するディジタル加入者回線接続である。ホーム環境に位置するフェムトセル1は、図示していないディジタル加入者回線ゲートウェイを介してインターネット2に接続される。フェムトセル装置は、独立型装置である。もちろん、フェムトセルは、このゲートウェイに一体化することもできる。フェムトセルは、以下ではUEと記載するUMTS互換性ユーザー装置3の接続を可能にする。UEは、フェムトセルに接続されているときに、インターネットを介してMNOネットワークにアクセスする。UE3は、それ自体は周知の方法でマクロセル4を介してMNOネットワークに接続することもできる。
【0028】
本実施例によるフェムトセル装置を、図2に示す。このフェムトセル装置は、UMTSネットワークにおいて発信および受信を行う第1の通信モジュール23を含む。具体的には、第1の通信モジュールは、3G無線発信受信器である。より一般的には、これは、モバイル・ネットワーキング・インタフェースである。第1の通信管理モジュール24は、第1の通信モジュールの管理および制御機能を実行するようになされている。フェムトセル装置は、ブロードバンド・ネットワークにおいて発信および受信を行う第2の通信モジュール25も含む。第2の通信管理モジュール26は、第2の通信モジュールの管理および制御機能を実行するようになされている。本実施例では、ブロードバンド・ネットワークは、ディジタル加入者回線技術のネットワークである。もちろん、このブロードバンド・ネットワークは、ケーブル、光ファイバ、または衛星など、その他の任意のタイプのブロードバンド接続とすることもできる。フェムトセル装置は、メモリなど、特に以下に示すUE識別子のリストを記憶する記憶モジュール22も含む。フェムトセル装置は、本実施例のアルゴリズムを実行するようになされたプロセッサ21も含む。
【0029】
本実施例によるフェムトセル装置は、セル内のUEの存在を検証する存在確認モジュール27を含む。UEがセルにキャンプ・オンしたときに、その識別子がメモリ22に記憶される。25.304の4節および5節では、「キャンプ・オン」について述べ、5.2.2節では「遊休モード」という表現でUEの挙動の概要を与えている。フェムトセル装置は、以前に当該セルにキャンプ・オンしたUEがまだ存在しているかどうかを判定する。フェムトセル装置は、以下の図3に示すように、信号通信を使用する。
【0030】
存在確認モジュール27は、フェムトセル装置内に位置するアプリケーション28によってトリガされる。アプリケーション28は、UEへのサービスを開始するためには、当該UEがセル内に存在するかどうかを知る必要がある。アプリケーションが当該UEの存在について存在確認モジュール27に尋ねると、存在確認モジュールは、以下に示すようにUEの存在を検証し、アプリケーションに対してその結果に応じた通知を行う。UEが存在する場合には、アプリケーションは、UEに対するサービスを実行することができる。
【0031】
本実施例による例示的なアプリケーションは、ホーム・オートメーション・アプリケーションである。このアプリケーションは、エンド・ユーザーが家にいるかいないかに応じて家庭用暖房を設定する。エンド・ユーザーは、そのUEに基づいて検出される。フェムトセルがUEを検出した場合には、エンド・ユーザーが家にいることを意味する。エンド・ユーザーが家にいることに基づく任意のホーム・オートメーション・アプリケーションが、存在確認モジュールをトリガすることができる。
【0032】
さらに一般的には、任意の遠隔アプリケーション6も、存在確認モジュールをトリガして、家にいるエンド・ユーザーの存在を暗黙の内に検証することができる。遠隔アプリケーション6は、遠隔装置内に位置していてもよいし、家の中またはインターネット2などの遠隔ネットワーク上に位置していてもよい。遠隔アプリケーションは、UEの存在を確認または検証するために、存在確認モジュール27に要求を送信する。
【0033】
遠隔アプリケーション6の要求に応じたセル内のUEの存在を確認するための信号通信手続きを、図3に示す。遠隔アプリケーション6は、UEの存在を確認することを求める要求をフェムトセルに送信する(S1)ことによって、この手続きをトリガする。フェムトセル装置は、以前にセルに「キャンプ・オン」しているUEに、ページング・タイプ1メッセージを送信する(S2)。このメッセージは、無線資源制御接続要求、RRC接続要求をUEから引き出すように構成されている。25.331の8.1.2節、8.1.3節および8.1.4節に、ページング手続きおよびその後のRRC接続手続きが記載されている。
【0034】
ページング・タイプ1メッセージを受信すると、UEは、RRC接続要求で応答する(S3)。このメッセージをフェムトセル装置が受信すれば、UEが当該セル内にまだ存在していることをフェムトセル装置に対して十分に示すことができる。RRC接続要求を受信すると、フェムトセル装置は、パラメータ「拒絶理由=未指定」および「待機時間=0」を有するRRC接続拒絶メッセージで応答する(S4)。
【0035】
ページング・メッセージに対してUEが応答しない場合には、フェムトセル装置は、当該UEがもう存在していないものと仮定する。その後、フェムトセル装置は、当該UE識別子をメモリ22から除去することができる。
【0036】
あるいは、UEは、最大反復回数までこの手続きを繰り返すこともできる。
【0037】
あるいは、UEは、メモリにUEのリストを2つ含む。第1のリストは、以前にセルにキャンプ・オンしたUEの識別子を含む。第2のリストは、セル内に存在するものとして識別されているUEの識別子を含む。あるUEがページング・メッセージに応答しないときに、その識別子を第2のリストからは除去するが、第1のリストからは除去しない。その後、フェムトセルは、以前にキャンプ・オンしていた全てのUEを追跡する。
【0038】
その後、フェムトセルは、遠隔アプリケーション6に応答を送信して(S5)、当該UEが当該セル内に存在するかどうかを示す。
【0039】
本明細書、特許請求の範囲および図面に開示されている内容は、独立して実施することもできるし、任意の適当な組合せで実施することもできる。様々な特徴は、適宜、ハードウェア、ソフトウェア、またはその両者の組合せで実施することができる。
【0040】
本明細書において「一実施例」または「実施例」と述べている場合、それは、当該実施例に関連して述べられている特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施態様に含まれる可能性があるということである。本明細書中では、「一実施例では」という文言が様々な箇所に見られるが、これらは、必ずしも全てが同じ実施例を指しているわけではなく、また、別々または代替の実施例とされている実施例どうしも、必ずしも他の実施例と両立しないわけではない。
【0041】
特許請求の範囲に記載される参照番号は、単に例示を目的としたものに過ぎず、特許請求の範囲を限定する効果はないものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以前にキャンプ・オンしていたモバイル装置のリストを記憶するメモリを含むセルラ基地局で、以前にセルにキャンプ・オンしたモバイル装置が前記セル内に存在するかどうかを確認する方法であって、
前記モバイル装置から接続要求を得るためのメッセージを前記モバイル装置に送信する(S2)ステップと、
前記モバイル装置から接続要求を受信した(S3)場合に、前記モバイル装置に接続拒絶メッセージを送信する(S4)ステップと、
前記モバイル装置から接続要求を受信しない場合に、以前にキャンプ・オンしていたモバイル装置の前記リストから前記モバイル装置を除去するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記接続が、RRC接続である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記メッセージが、ページング・タイプ1メッセージである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記接続拒絶メッセージが、パラメータ「拒絶理由=未指定」および「待機時間=0」を有するRRC接続拒絶メッセージである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記モバイル装置に前記メッセージを送信する前に、UEの存在を検証することを求める要求をアプリケーションから受信する(S1)ステップと、
接続要求を受信した後で、または受信しなかった後で、前記UEの存在について前記アプリケーションに通知する(S5)ステップと、
を含む、前記請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
以前にキャンプ・オンしていたモバイル装置のリストを登録するメモリ(22)と、
前記モバイル装置から接続要求を得るためのメッセージを前記モバイル装置に送信し(S2)、前記モバイル装置から接続要求を受信した(S3)場合に、前記モバイル装置に接続拒絶メッセージを送信し(S4)、前記モバイル装置から接続要求を受信しない場合に、以前にキャンプ・オンしていたモバイル装置の前記リストから前記モバイル装置を除去することによって、セル内の前記モバイル装置の存在を確認する存在確認手段(27)と、
を含む、セルラ基地局。
【請求項7】
前記存在確認手段(27)が、存在を確認することを求める要求をアプリケーションから受信し、前記アプリケーションに応答を送信して前記存在について通知するようになされている、請求項6に記載のセルラ基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−516087(P2013−516087A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532539(P2012−532539)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064507
【国際公開番号】WO2011/042347
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(501263810)トムソン ライセンシング (2,848)
【氏名又は名称原語表記】Thomson Licensing 
【住所又は居所原語表記】1−5, rue Jeanne d’Arc, 92130 ISSY LES MOULINEAUX, France
【Fターム(参考)】