説明

セル間資源スケジューリング方法、基地局、ユーザ設備及び移動通信システム

【課題】システムのスループットを高める、セル間資源スケジューリング方法、基地局、ユーザ設備及び移動通信システムを提供する。
【解決手段】ユーザ設備は、資源ブロックにおいて第1セルを選択するステップと、第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、資源ブロックにおけるユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するステップと、第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断し、N倍以上である場合、ユーザ設備は資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように第1セルが所属する基地局に指示し、N倍以上であると示されない場合、資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように第1セルが所属する基地局に指示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3GPPのLTE‐AにおけるCoMP(Coordinated Multi-Point)送受信技術に関し、特に、セル間資源スケジューリング方法、基地局、ユーザ設備及び移動通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
CoMP送受信技術は、LTE‐Aシステムにおいてセル間干渉を制御するためのキーポイントとなる技術であり、マルチセル間のジョイント送受信を実現することで、隣接セル間の干渉を効果的に制御又は除去することができ、特にセルエッジユーザ性能の向上にとってキーポイントとなる技術である。具体的に、伝送技術複雑度とフィードバックオーバーヘッドにより、上記技術は、協調スケジューリング、協調ビームフォーミング、ジョイント処理技術に分けることができる。ジョイント処理技術は、更にジョイント送信技術とセル動的選択技術に分けることができる。
【0003】
セル動的選択技術において、信号は、選択された基地局のみから送信され、ユーザは、選択された基地局のチャネル情報のみをフィードバックすればよい。従って、セル動的選択技術は、低い送信技術複雑度と低いユーザ上りチャネルフィードバックオーバーヘッドにより、一定のセル間干渉協調を実現する技術であり、伝送技術の複雑度、フィードバックオーバーヘッドとセル間干渉協調の効果との間にバランスを取り、比較的に柔軟な技術である。
【0004】
伝統的なセル動的選択技術において、ユーザ設備は、各資源ブロックRB(Resource Block)について、下り測定値に基づいて、アクティブセット(Active Set)における各基地局の該資源ブロック上の下りSNRを計算する。それから、各資源ブロックについて、SNRが最大の基地局を、該資源ブロックにおいて下り信号の送信を行う基地局として選択し、選択した基地局のID及び該基地局の下りチャネル情報をサービス基地局にフィードバックし、次の信号送信時刻において、選択された基地局により、該資源ブロックにおいて下りデータをユーザに送信する。伝統的なセル動的選択技術において、各資源ブロックについて、ユーザは、随時にチャネル品質が最も優れた基地局を選択してサービスを受けることができる。従って、システムの性能、特にセルエッジユーザの性能を大きく高めることができる。
【0005】
LTE‐Aのディスカッションでは、セル動的選択にミューティング(Muting)を組み合わせた技術も提案されている。セル動的選択にミューティングを組み合わせた技術は、下記のステップで通信処理を行う。
【0006】
まず、ユーザ設備が測定したサービス基地局と信号が最も強い隣接基地局の下り参考信号電力値に基づいて、セルエッジユーザ設備を判定する。サービス基地局と信号が最も強い隣接基地局の下り参考信号電力値との差が所定閾値(例えば3dB)以内の場合、該ユーザ設備がセルエッジユーザ設備であると判定する。
【0007】
それから、セルエッジユーザ設備は、測定値に基づいて、瞬時電力が二番目に強いセル(即ち隣接セルのうちの一つのセル)が現在資源ブロックにおいて信号送信しない(Muting)ときのSNRを計算し、測定値をサービス基地局にフィードバックする。
【0008】
最後に、ユーザからフィードバックされたチャネル情報及びセル選択情況に基づいて、中心基地局は、いずれのセル内の総電力の割当てが終了するまで、すべてのセル内のユーザに対して、ジョイントスケジューリングアルゴリズムで資源ブロックを割り当てる。
【0009】
資源の割当てを行う場合、第1セルのセルエッジユーザ設備について、該第1セルと第2セルの同一資源ブロックがいずれも利用可能であるときにのみ割り当てることができる。該第2セルは、上記第1セルの隣接セルのうち、上記セルエッジユーザ設備が受信した信号が最も強いセルである。
【0010】
また、セルエッジユーザ設備について、スケジューリングされると、使用する資源ブロックにおいて、そのサービス基地局は、N倍の電力で信号を送信するが、瞬時電力が二番目に強いセルは、対応する資源ブロックにおいて信号送信を行わない。
【0011】
セル動的選択にミューティングを組み合わせた方法は、セルエッジユーザの性能を更に高めたが、少なくとも下記の欠点もある。
【0012】
その信号が最も強い隣接セルが対応する資源ブロックにおいて信号送信をしないため、セルエッジユーザの性能を高めたものの、隣接セルの資源を占用することとなり、システムのスループットの低下をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、システムのスループットを高める、セル間資源スケジューリング方法、基地局、ユーザ設備及び移動通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は、CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられるセル間資源スケジューリング方法を提供し、該セル間資源スケジューリング方法において、ユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するステップ11と、上記ユーザ設備は、上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するステップ12と、上記ユーザ設備は、上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得るステップ13と、ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記ユーザ設備は、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するステップ14と、を含む。
【0015】
上記のセル間資源スケジューリング方法において、上記ユーザ設備は、サービス基地局に対して、上記第1セルが所属する基地局との間の下りチャネルのチャネル情報をフィードバックするステップ15を更に含む。
【0016】
上記のセル間資源スケジューリング方法の上記ステップ11において、上記資源ブロックについて、上記ユーザ設備は、アクティブセットにおける各基地局の上記資源ブロックでの下りSNRを計算するステップ111と、上記ユーザ設備は、上記第1セルが含まれるSNRが最大の基地局を、上記資源ブロックを利用して下り信号を送信する基地局として選択するステップ112と、上記ユーザ設備は、選択した基地局をサービス基地局に通知するステップ113と、を含む。
【0017】
上記のセル間資源スケジューリング方法において、基地局は、上記ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行うステップ16と、基地局は、電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算するステップ17と、ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、基地局は、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信するステップ18と、を更に含む。
【0018】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は、CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられるユーザ設備を提供し、該ユーザ設備において、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、を含む。
【0019】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は、更に、CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられる基地局を提供し、該基地局において、ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算する電力平均値計算モジュールと、ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、N:ミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、を含む。
【0020】
上記目的を実現するために、本発明の実施例は、ユーザ設備と基地局とを含み、CoMP送受信に基づく移動通信システムを更に提供し、該移動通信システムにおいて、上記ユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、を含み、上記基地局は、上記ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算する電力平均値計算モジュールと、ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施例によれば、下記の有益な効果を奏することができる。
【0022】
本発明の実施例のセル間資源スケジューリング方法は、CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられるものであり、セル動的選択技術に基づいて資源ブロックにおいてセルを選択した後、上記ユーザ設備がミュートモードにおいて該資源ブロックを利用して実現可能なスループットが、ユーザ設備が通常モードにおいて該資源ブロックを利用して実現可能なスループットのN倍になるときのみにおいて、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用する。従って、本発明の実施例を利用して、ユーザへのサービス品質を最大限に保証すると共に、システムのスループットを高めた。
【0023】
また、本発明の実施例において、システムの資源ブロック総数に、N倍の電力で送信する必要のある資源ブロックの数を加算して、ミュートされた資源ブロックの数を減らした後の数でシステムの送信電力を等分し、該等分後のシステム電力で送信電力の割当てを行うため、システムの資源ブロックと送信電力が共に充分に使用されることを保証することができ、システムのスループットを高めた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例の方法の流れを示す。
【図2】本発明の実施例のユーザ設備の構造を示す。
【図3】本発明の実施例の基地局の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施例の方法は、図1に示すように、下記のステップを含む。
【0026】
ステップ11において、ユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択する。
【0027】
ステップ12において、上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記ユーザ設備は、測定の結果に基づいて、上記資源ブロックにおける第1スループットと第2スループットを計算する。
【0028】
上記第1スループットと第2スループットは、それぞれ、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能なスループットである。
【0029】
ミュートモードにおいて、瞬時受信電力の最も強いセルが資源ブロックを該ユーザ設備に割り当て、且つ該ユーザ設備がサービスセルのセルエッジユーザ設備である場合、瞬時受信電力が二番目に強いセルは、該資源ブロックをユーザに割り当てることがなく、且つ、上記第1セルが所属する基地局の上記資源ブロックにおける送信電力が、通常送信電力の2倍となる。
【0030】
ステップ13において、上記ユーザ設備は、上記第1スループットが第2スループットの2倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る。
【0031】
ステップ14において、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示される場合、上記ユーザ設備は、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示する。
【0032】
本発明の具体的な実施例において、下記のように、第1スループットは、C(s)であり、第2スループットは、C(s,n)である。
(式)

上記の式において、P:単位送信電力、g(s):上記第1セルが所属する基地局sからユーザ設備までのチャネル減衰、N:システムのセル総数、N0:ノイズ、g(n):上記第1セルの信号が最も強い隣接セルが所属する基地局nからユーザ設備までのチャネル減衰。
【0033】
上記の記載から分かるように、ミュートモードを使用しない場合、第1セルのエッジユーザAが資源ブロックにおいて取得可能なスループットをA1とすると、第2のセルにおいて該資源ブロックが他のユーザにも割り当てられるため、第1セルと第2セルにおいてミュートモードを使用しない場合に、該資源ブロックで実現可能なスループットが2A1となる。
【0034】
ミュートモードにおいて、第1セルのエッジユーザAが資源ブロックにおいて取得可能なスループットをB1とすると、第2のセルにおいて該資源ブロックがミュートされたため、スループットを実現できないので、第1セルと第2セルにミュートモードにおいて、該資源ブロックで実現可能なスループットの和がB1となる。
【0035】
総合的に考慮すると、ミュートモードを使用する場合、セルエッジユーザ設備に対して性能上の向上をもたらすが、システムの全体性能を考慮すると、本発明の実施例において、B1>2A1のときのみ、ミュートモードを使用して伝送を行う。従って、直接ミュートモードを使用する場合と比較して、システムのスループットを向上することができる。
【0036】
もちろん、基地局側のスケジューリングのため、本発明の実施例において、上記ユーザ設備は、サービス基地局に対して、上記第1セルが所属する基地局との間の下りチャネルのチャネル情報をフィードバックするステップ15を更に含む。
【0037】
本発明の具体的な実施例において、ステップ11に具体的に下記ステップを含む。
【0038】
ステップ111おいて、上記資源ブロックについて、ユーザ設備は、下り測定値に基づいて、アクティブセットにおける各基地局の上記資源ブロックでの下りSNRを計算する。
【0039】
ステップ112において、上記ユーザ設備は、SNRが最大の基地局を、上記資源ブロックを利用して下り信号を送信する基地局として選択する。上記第1セルは、上記がSNRが最大の基地局に属する。
【0040】
ステップ113において、上記ユーザ設備は、選択した基地局をサービス基地局に通知する。
【0041】
本発明の具体的な実施例において、上記ユーザ設備が受信した第1下り参考信号と第2下り参考信号との間の電力差が予め設定された閾値より小さいとき、上記ユーザ設備は、セルエッジユーザ設備である。上記第1下り参考信号は、サービス基地局から送信された下り参考信号であり、上記第2下り参考信号は、サービス基地局の隣接基地局のうち、上記ユーザの受信した信号が最も強い基地局から送信された下り参考信号である。
【0042】
本発明の実施例のセル間資源スケジューリング方法において、更に下記ステップを含む。
【0043】
ステップ15において、基地局は、ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う。
【0044】
資源ブロックと電力の割当て方法として、比例公平アルゴリズムやその他の資源スケジューリングアルゴリズムが挙げられる。例えば、比例公平アルゴリズムの場合、すべてのセル内のすべてのユーザのすべての資源ブロックにおける優先値を、大きい順から割り当てる。
【0045】
資源のジョイントスケジューリングが従来技術の範疇に属するため、ここでは詳細な記載をしない。
【0046】
ステップ16において、基地局は、下記のように電力平均値を計算する。
A/[B+C−D]
上記式において、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数。
【0047】
ステップ17において、基地局は、通常のユーザ設備について、第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、第2電力で下り信号を送信する。上記第1電力は、上記電力平均値であり、上記第2電力は、上記電力平均値の2倍である。
【0048】
上記の方法を利用する場合、すべての資源ブロックとすべての送信電力が共に充分に使用されることとなり、システムのスループットが向上した。次のように例示する。
【0049】
基地局の送信総電力を仮定し、基地局には計10個の資源ブロックのうち、4個の資源ブロックが2倍の電力で送信する必要があり、2個の資源ブロックがミュートされたと仮定すると、基地局が現在実際に使用可能な資源ブロックが8個となる。従来技術を使用する場合、基地局は、6個の資源ブロックしか利用できない。その理由として、2倍の電力で送信する必要のある4個の資源ブロックが80%の送信電力を使用し、残りの20%の送信電力が2個の資源ブロックにしか割り当てられないため、利用できない資源ブロックは、他に2個ある。これにより、必ずシステムのスループットを低下させる。
【0050】
一方、本発明の実施例の方法を利用する場合、まず、電力を(B+C−D)=12部分に分け、2倍の電力で送信する必要のある4個の資源ブロックのそれぞれに12部分の電力のうち2部分の電力を割当て、残りの4部分の電力は、残りの4個の資源ブロックに等分することができる。従って、すべての資源ブロックは、利用可能であるので、システムのスループットを高めることができる。
【0051】
基地局の送信総電力を仮定し、基地局には計10個の資源ブロックを有し、電力を10部分に分ける。2個の資源ブロックが2倍の電力で送信する必要があり、4個の資源ブロックがミュートされたと仮定すると、基地局が現在実際に使用可能な資源ブロックが6個となる。従来技術を使用する場合、2倍の電力で送信する必要のある2個の資源ブロックが40%の送信電力を使用し、1倍の送信電力で送信する4個の資源ブロックが40%の送信電力を使用するため、残りの20%の送信電力が利用されない。これにより、必ずシステムのスループットを低下させる。
【0052】
一方、本発明の実施例の方法を利用する場合、まず、電力を(B+C−D)=8部分に分け、2倍の電力で送信する必要のある2個の資源ブロックのそれぞれに2部分の電力を割当て、残りの4部分の電力は、残りの4個の資源ブロックに割り当てることができる。従って、すべての送信電力は、利用されており、システムのスループットを高めることができる。
【0053】
図2に示すように、本発明の実施例のユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、上記第1スループットが第2スループットの2倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、を含む。
【0054】
図3に示すように、本発明の実施例の基地局は、ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、電力平均値A/[B+C−D](A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数)を計算する電力平均値計算モジュールと、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値の2倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、を含む。
【0055】
本発明の実施例の移動通信システムは、ユーザ設備と基地局とを含む。
【0056】
上記ユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、上記第1スループットが第2スループットの2倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットの2倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、を含む。
【0057】
上記基地局は、上記ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、電力平均値A/[B+C−D](A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数)を計算する電力平均値計算モジュールと、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値の2倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、を含む。
【0058】
上記実施例は、ミュートモードにおいて上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数が2であることを例として説明したものである。ミュートモードにおいて上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数がNである場合、上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断する必要がある。判断結果を取得して、判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示する。
【0059】
基地局がエネルギーの割当てを行うとき、電力平均値は、A/[B+(N−1)C−D]となる。Aは、基地局の送信総電力、Bは、基地局の資源ブロック総数、Cは、ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、Dは、ミュートされた資源ブロックの数である。ミュートモードのユーザ設備の送信電力は、上記電力平均値のN倍となる。
【0060】
下記のように例示する。セルAにはセルB、セルC、セルDの三つの隣接セルを有し、ユーザ設備がセルAにある場合、セルBとセルCから見れば、ユーザ設備は、セルAのエッジユーザ設備であるが、セルDから見れば、ユーザ設備は、セルAのエッジユーザ設備ではない。この場合、Nが3であり、即ち、ミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供するセル/基地局は、A、B、Cであり、その数が3である。
【0061】
ユーザ設備がセルAにおいて資源ブロックA1に割り当てられるとすると、セルBとセルCの資源ブロックA1は、いずれもミュートされ、セルAの資源ブロックA1において3倍の送信電力で送信を行う。
【0062】
本発明の実施例の効果を検証するために、ここではシミュレーション評価結果を示す。シミュレーションのパラメータは、下記のとおりである。
キャリア周波数 2000MHz
セルの配置 六角形格子、19セル、3セクタ/セル
アンテナタイプ(ゲイン) 70度ファンビームアンテナ(14dBi)、前後比20dB
ISD 500m
システムの帯域幅 10MHz
サブフレームの長さ 1ミリ秒
資源ブロックの帯域幅 180KHZ(12個のサブキャリア)
距離相関経路損失 128.1+37.6log10(r)
侵入損失 20dB
チャネルモデル TU6rays
スケジューリングアルゴリズム フェアネスアルゴリズム
移動速度(最大ドップラー周波数) 3km/h(5.55Hz)
【0063】
本発明の実施例のシミュレーション結果は、下記のテーブルに示すとおりである。

【0064】
上のテーブルから分かるように、本発明の実施例の方法を利用する場合、電力の新たな割当てを行うか否かにかかわらず、従来方法と比較してスループットのある程度での向上が見られるが、電力の新たな割当てを行うと、システムのスループットを更に高めることができる。
【0065】
以上は、本発明の好ましい実施方式に過ぎない。なお、当該分野の一般技術者にとって、本発明の原理を背離しない前提で、若干の改進や修飾が考えられる。ただし、これらの改進や修飾も本発明の保護範囲にあることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられるセル間資源スケジューリング方法において、
ユーザ設備は、セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するステップ11と、
上記ユーザ設備は、上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するステップ12と、
上記ユーザ設備は、上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得るステップ13と、
ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、
上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記ユーザ設備は、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するステップ14と、
を含むことを特徴とするセル間資源スケジューリング方法。
【請求項2】
上記ユーザ設備は、サービス基地局に対して、上記第1セルが所属する基地局との間の下りチャネルのチャネル情報をフィードバックするステップ15を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のセル間資源スケジューリング方法。
【請求項3】
上記ステップ11において、
上記資源ブロックについて、上記ユーザ設備は、アクティブセットにおける各基地局の上記資源ブロックでの下りSNRを計算するステップ111と、
上記ユーザ設備は、上記第1セルが含まれるSNRが最大の基地局を、上記資源ブロックを利用して下り信号を送信する基地局として選択するステップ112と、
上記ユーザ設備は、選択した基地局をサービス基地局に通知するステップ113と、
を含むことを特徴とする請求項2に記載のセル間資源スケジューリング方法。
【請求項4】
基地局は、上記ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行うステップ16と、
基地局は、電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算するステップ17と、
ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、
基地局は、ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信するステップ18と、
を更に含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセル間資源スケジューリング方法。
【請求項5】
CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられるユーザ設備において、
セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、
上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、
上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、
ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、
上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、
を含むことを特徴とするユーザ設備。
【請求項6】
CoMP送受信に基づく移動通信システムに用いられる基地局において、
ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、
電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算する電力平均値計算モジュールと、
ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、N:ミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数、
ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、
を含むことを特徴とする基地局。
【請求項7】
ユーザ設備と基地局とを含み、CoMP送受信に基づく移動通信システムにおいて、
上記ユーザ設備は、
セル動的選択技術に基づいて、資源ブロックにおいて第1セルを選択するセル選択モジュールと、
上記ユーザ設備が上記第1セルのセルエッジユーザ設備である場合、上記資源ブロックにおける、上記ユーザ設備がミュートモードと通常モードにおいて上記資源ブロックを利用して実現可能な第1スループットと第2スループットを計算するスループット計算モジュールと、
上記第1スループットが第2スループットのN倍より大きいか否かを判断して判断結果を得る判断モジュールと、
ただし、Nがミュートモードにおいて、上記ユーザ設備に無線通信サービスを提供する基地局の数であり、
上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示される場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用するように、上記第1セルが所属する基地局に指示し、上記判断結果により上記第1スループットが第2スループットのN倍以上であると示されない場合、上記資源ブロックにおいてミュートモードを使用しないように、上記第1セルが所属する基地局に指示するフィードバックモジュールと、
を含み、
上記基地局は、
上記ユーザ設備からのフィードバックに基づいて資源のジョイントスケジューリングを行う資源ジョイントスケジューリングモジュールと、
電力平均値A/[B+(N−1)C−D]を計算する電力平均値計算モジュールと、
ただし、A:基地局の送信総電力、B:基地局の資源ブロック総数、C:ミュートモードのユーザ設備に割り当てた資源ブロックの数、D:ミュートされた資源ブロックの数、
ミュートモードではないユーザ設備について、上記電力平均値である第1電力で下り信号を送信し、ミュートモードのユーザ設備について、上記電力平均値のN倍である第2電力で下り信号を送信する送信モジュールと、
を含むことを特徴とする移動通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−71993(P2011−71993A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−213598(P2010−213598)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】