説明

センサユニット及びガス検出装置

【課題】流量センサによる流量検出を正確に行うことができ、精度良く濃度を検出することができるセンサユニット及びガス検出装置を提供する。
【解決手段】ガスセンサ5がセンサ素子8から構成されている。流量センサ6が、Ptヒータ14、上流側感温抵抗体14及び下流側感温抵抗体15から構成されている。ガスセンサ5及び流量センサ6の両者が一つの支持基台3上に搭載されて設けられている。そして、流量センサ6がガスセンサ5よりも雰囲気の流れ方向Y1の上流側に配置されるように、流量センサ6及びガスセンサ5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサユニット及びガス検出装置に係り、特に、吸引式のガス検出装置に用いられるセンサユニット及び吸引式のガス検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス漏れ警報器などに汎用で使用されるガス検出装置として、吸引式のものが知られている。この吸引式のガス検出装置は、装置内部に雰囲気(気体)を吸引する吸引部と、該吸引部により吸引された雰囲気が流れる流路と、この流路内に設けられた雰囲気中の可燃ガス(検知対象ガス)の濃度を検出するガスセンサと、を備えている。このような吸引式のガス検出装置においては、流路を流れる雰囲気の流量変動があると、ガスセンサに接触するガスの分子数が変化して、濃度の検出精度に問題が生じるケースがある。
【0003】
上記雰囲気の流量変動の原因としては、吸引部の目詰まりや流路等の気密の劣化などが挙げられる。そのため、吸引部の目詰まりや流路等の気密の劣化などによって流量異常が生じているか否かを判断したり、雰囲気の流量変動による誤差を補正する流量補正を行うために、ガスセンサとは別に流量センサを設けたものが提案されている(例えば特許文献1)。しかしながら、この場合、ガスセンサとは別に流量センサを設けているためコスト的に問題があった。
【0004】
上記問題点を解決するために、例えば、一つの支持基台上にガスセンサ及び流量センサを設けてハイブリッド化したものが提案されている(例えば特許文献2)。しかしながら、上記ガスセンサとして接触燃焼式のものを用い、流量センサとして熱式のものを用いると、流量センサによる流量検出が正確に行えない。この結果、流量異常の判断や流量補正がうまくいかずに濃度の検出精度が悪化する、という問題があった。
【特許文献1】特開2003−302365号公報
【特許文献2】特開平7−270357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、流量センサによる流量検出を正確に行うことができ、精度良く濃度を検出することができるセンサユニット及びガス検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、接触燃焼式のガスセンサ及び熱式の流量センサの両者が一つの支持基台上に搭載されて設けられたセンサユニットにおいて流量センサによる流量検出が正確に行えない原因を鋭意探求したところ、ガスセンサの接触燃焼により発生する熱が流量センサの温度センサに影響しているため、正確に流量検出ができなくなってしまう、ということを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、請求項1記載の発明は、気体に含まれる検出対象ガスと接触燃焼して温度が変化する前記気体の流路内に設けられた接触燃焼式のセンサ素子から構成されたガスセンサと、前記気体を加熱するヒータ素子、及び、前記ヒータ素子に対して前記気体の流れ方向の上流側又は/及び下流側に配置された温度センサ、から構成された流量センサと、の両者が一つの支持基台上に搭載されて設けられたセンサユニットにおいて、前記流量センサが前記ガスセンサよりも前記気体の流れ方向の上流側に配置されるように、前記ガスセンサ及び前記流量センサが設けられていることを特徴とするセンサユニットに存する。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のセンサユニットと、前記ガスセンサを用いて検出対象ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、前記流量センサを用いて気体の流量を検出する流量検出手段と、前記流量検出手段により検出された気体の流量に基づいて前記濃度検出手段により検出されたガス濃度の流量補正を行う補正手段と、を備えたことを特徴とするガス検出装置に存する。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように請求項1及び2記載の発明によれば、流量センサがガスセンサよりも気体の流れ方向の上流側に配置されるので、ガスセンサの接触燃焼による発生する熱は流体の流れ方向下流側に運ばれるためガスセンサよりも上流側に配置された流量センサに影響することがない。このため、流量センサによる流量検出を正確に行うことができ、精度良く濃度を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。ガス検出装置は、図示しない吸引部と、図示しない流路と、図1に示すセンサユニット1と、図2に示す検出回路2と、を備えている。上記吸引部は、例えばファンなどから構成されていて、ガス検出装置内部に雰囲気(気体)を吸引する。流路は、吸引部により吸引された雰囲気が流れる。センサユニット1は、上記流路内に配置されている。
【0011】
センサユニット1は、図1に示すように、支持基台3と、ガスセンサ5と、流量センサ6と、感温抵抗体7と、を備えている。支持基台3は、例えば箱型のシリコン(Si)ウエハと、このSiウエハの上面に成膜された絶縁薄膜と、から構成されている。この支持基台3には、後述するガスセンサ5、流量センサ6及び感温抵抗体7が搭載される。
【0012】
ガスセンサ5は、可燃ガスと接触燃焼する接触燃焼式のセンサ素子8及び比較素子9を備えている。センサ素子8は、支持基台3上に形成された白金から成るPtヒータ10と、このPtヒータ10上に積層された、可燃ガスの接触燃焼を促進する触媒層11と、で構成されている。比較素子9は、支持基台3上に形成された白金から成るPtヒータ12と、このPtヒータ12上に積層された、可燃ガスと接触燃焼を起こさないアルミナ(Al23)層13と、で構成されている。センサ素子8及び比較素子9は、雰囲気の流れ方向Y1と直交する方向に並んで配置されている。
【0013】
上記支持基台3のセンサ素子8及び比較素子9が形成されている部分は、Siウエハを異方性エッチングしてそれぞれ薄膜ダイヤフラムDs及びDrを形成することにより熱容量を小さくしている。即ち、センサ素子8は、支持基台3に形成した薄膜ダイヤフラムDs上に搭載されている。比較素子9は、支持基台3に形成した薄膜ダイヤフラムDr上に搭載されている。
【0014】
流量センサ6は、支持基台3上に形成された白金から成るPtヒータ14(ヒータ素子)と、このPtヒータ14を挟んで流れ方向Y1の上流側及び下流側にそれぞれ配置された上流側感温抵抗体15(温度センサ)及び下流側感温抵抗体16(温度センサ)と、を備えている。この上流側感温抵抗体15及び下流側感温抵抗体16は、雰囲気温度に応じてその抵抗値が変動する抵抗体である。
【0015】
上記支持基台3のPtヒータ14、上流側感温抵抗体15及び下流側感温抵抗体16が形成されている部分は、Siウエハを異方性エッチングして薄膜ダイヤフラムDfを形成することにより熱容量を小さくしている。即ち、Ptヒータ14、上流側感温抵抗体15及び下流側感温抵抗体16は、支持基台3に形成した薄膜ダイヤフラムDf上に搭載されている。また、上述した流量センサ6は、ガスセンサ5よりも雰囲気の流れ方向Y1の上流側に配置されている。即ち、流れ方向Y1の上流側に流量センサ6が配置され、流れ方向Y1の下流側にガスセンサ5が配置されている。
【0016】
上記感温抵抗体7は、支持基台3上に形成されていて、雰囲気温度に応じてその抵抗値が変動する抵抗体である。感温抵抗体7は、上記流量センサ6よりも雰囲気の流れ方向Y1の上流側に配置されている。
【0017】
次に、検出回路2の構成について図2を参照して説明する。図2に示すように検出回路2は、濃度検出回路17と、流量検出回路18と、雰囲気温度検出回路19と、マイクロコンピュータ(μCOM)20と、を備えている。
【0018】
濃度検出回路17は、ブリッジ回路21と、ヒータ駆動回路22と、差動増幅器23と、を備えている。ブリッジ回路21は、上述したセンサ素子8、比較素子9、固定抵抗R11及びR12で構成されている。ヒータ駆動回路22は、上記ブリッジ回路21の端子a1−端子b1間にパルス状のセンサ駆動電圧を供給する回路である。差動増幅器23は、上記ブリッジ回路21の端子c1−端子d1間の電位差を増幅して濃度信号S1として後述するμCOM20に対して出力する。
【0019】
以上の構成によれば、可燃ガスのない雰囲気中においては、理想的にはブリッジ回路21は平衡状態となり、端子c1−端子d1間に電位差が生じない。但し、実際には可燃ガスがない雰囲気においてもセンサ素子8と比較素子9との間に若干の温度差が生じることが多く、これに伴って端子c1−端子d1間に電位差が生じることが多い。そこで、端子d1に可変抵抗(図示せず)を設けて可燃ガスのない雰囲気中において端子c1−端子d1間に電位差が生じないように可変抵抗を調整することが多い。これに対して、可燃ガスを含む雰囲気中においては、可燃ガスとの接触熱によりセンサ素子8のPtヒータ10の抵抗値が可燃ガスと接触燃焼しない比較素子9のPtヒータ12の抵抗値よりも増加して、ブリッジ回路21は不平衡状態となり、端子c1−端子d1間に電位差が生じる。この電位差は可燃ガスの濃度に比例した値である。そして、ブリッジ回路21の端子c1−端子d1間に接続された差動増幅器23が、上記電位差を増幅して可燃ガス濃度に応じた濃度信号S1として出力する。
【0020】
流量検出回路18は、ブリッジ回路24と、定電圧回路25と、差動増幅器26と、ヒータ駆動回路27と、を備えている。ブリッジ回路24は、上述した上流側感温抵抗体15、下流側感温抵抗体16、固定抵抗R21及びR22で構成されている。定電圧回路25は、上記ブリッジ回路24の端子a2−端子b2間に定電圧を供給する回路である。差動増幅器26は、上記ブリッジ回路24の端子c2−端子d2間の電位差を増幅して流量信号S2として後述するμCOM20に対して出力する。ヒータ駆動回路27は、Ptヒータ14にパルス状のセンサ駆動電圧を供給する回路であり、後述するμCOM20によりその動作が制御されている。
【0021】
以上の構成によれば、ヒータ駆動回路27によってPtヒータ14にパルス状のセンサ駆動電圧が供給されるとPtヒータ14が発熱して雰囲気を加熱する。このときPtヒータ14の上流側に配置された上流側感温抵抗体15は、雰囲気の流量が大きいほど熱が奪われて温度が下がり抵抗値が減少する。一方、Ptヒータ14の下流側に配置された下流側感温抵抗体16は、雰囲気の流量が大きいほど熱が運ばれて温度が上がり抵抗値が増加する。このため、端子c2−端子d2間に雰囲気の流量に応じた電位差が生じる。そして、ブリッジ回路24の端子c2−端子d2間に接続された差動増幅器26が、上記電位差を増幅して雰囲気の流量に応じた流量信号S2として出力する。雰囲気温度検出回路19は、定電圧Vを上記感温抵抗体7及び固定抵抗R3で分圧した電圧を雰囲気の温度に応じた温度信号S3として出力する。
【0022】
μCOM20は、処理プログラムに従って各種の処理を行う中央演算処理ユニット(以下CPU)20Aと、CPU20Aが行う処理のプラグラムなどを格納した読出専用のメモリであるROM20B、及び、CPU20Aでの各種の処理過程で利用するワークエリア、各種データを格納するデータ記憶エリアなどを有する読み出し書き込み自在のメモリであるRAM20C、を有し、これらがバスラインによって接続されている。
【0023】
上述した構成のガス検出装置の動作について図3を参照して以下説明する。まず、電源のオンなどに応じてCPU20Aは処理を開始する。その最初のステップS1において、CPU20Aは、流量検出手段として働き、ヒータ駆動回路27を駆動させてPtヒータ14を加熱して雰囲気の流量に応じた流量信号S2を取り込む。その後、CPU20Aは、雰囲気の温度に応じた温度信号S3を取り込む(ステップS2)。次に、CPU20Aは、温度信号S3に基づいて雰囲気温度の変化により流量信号S2に生じる変動分をキャンセルする流量信号S2の温度補正を行う(ステップS3)。
【0024】
そして、CPU20Aは、ステップS3で温度補正された流量信号S2に基づいて吸引部の目詰まりや流路等の気密の劣化などに起因して流量異常が生じているか否かの判断を行う(ステップS4)。CPU20Aは、例えば流量信号S2の大きさが予め定めた許容範囲外であれば流量異常が生じていると判断して(ステップS4でY)、図示しない表示器やスピーカを用いて流量異常が生じている旨を報知した後(ステップS9)、処理を終了する。これに対して、CPU20Aは、例えば流量信号S2の大きさが予め定めた許容範囲内であれば流量異常が生じていないと判断して(ステップS4でN)、次のステップS5に進む。
【0025】
次のステップS5においてCPU20Aは、濃度検出手段として働き、雰囲気中に含まれる可燃ガスの濃度に応じた濃度信号S1を取り込む。その後、CPU20Aは、補正手段として働き、ステップS3で温度補正された流量信号S2に基づいて雰囲気温度の流量変化により濃度信号S1に生じる変動分をキャンセルする濃度信号S1の流量補正を行う(ステップS6)。そして、CPU20Aは、濃度信号S1に基づいて警報レベルの可燃ガス濃度が発生している濃度異常が生じているか否かの判断を行う(ステップS7)。CPU20Aは、例えば流量補正後の濃度信号S1の大きさが予め定めた閾値以上であれば濃度異常が生じていると判断して(ステップS7でY)、図示しない表示器やスピーカを用いて濃度異常が生じている旨を報知した後(ステップS8)、処理を終了する。これに対して、CPU20Aは、例えば流量補正後の濃度信号S1の大きさが予め定めた閾値未満であれば濃度異常が生じていないと判断して(ステップS7でN)、再びステップS1に戻る。
【0026】
上述したガス検出装置によれば、流量センサ6がガスセンサ5よりも雰囲気の流れ方向Y1の上流側に配置されるので、ガスセンサ5の接触燃焼により発生する熱は雰囲気の流れ方向Y1下流側に運ばれるためガスセンサ5よりも上流側に配置された流量センサ6に影響することがない。このため、流量センサ6による流量検出を正確に行うことができ、精度良く濃度を検出することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態では、流量センサ6はPtヒータ14の上流側及び下流側の両側に上流側感温抵抗体15及び下流側感温抵抗体16を設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、Ptヒータ14の上流側及び下流側の何れか一方側に一つの感温抵抗体を設ける構成としてもよい。
【0028】
また、上述した実施形態では、温度センサとして上流側感温抵抗体15及び下流側感温抵抗体16を用いていたが、本発明はこれに限ったものではない。上記温度センサとしては周囲温度を検出できるようなものであればよく、例えばサーモパイルを用いても良い。
【0029】
また、上述した図2に示す検出回路2は一例であり、検出回路2としては、ガスセンサ5を用いて濃度に応じた濃度信号S1を出力したり、流量センサ6を用いて流量に応じた流量信号S2を出力するような回路であればよく、図2に示す構成に限定されるものではない。
【0030】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のガス検出装置を構成するセンサユニットの上面図である。
【図2】本発明のガス検出装置の一実施形態を示す回路図である。
【図3】図2に示すCPUの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0032】
1 センサユニット
3 支持基台
5 ガスセンサ
6 流量センサ
8 センサ素子
14 Ptヒータ(ヒータ素子)
15 上流側感温抵抗体(温度センサ)
16 下流側感温抵抗体(温度センサ)
20A CPU(濃度検出手段、流量検出手段、補正手段)
Y1 流れ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体に含まれる検出対象ガスと接触燃焼して温度が変化する前記気体の流路内に設けられた接触燃焼式のセンサ素子から構成されたガスセンサと、前記気体を加熱するヒータ素子、及び、前記ヒータ素子に対して前記気体の流れ方向の上流側又は/及び下流側に配置された温度センサ、から構成された流量センサと、の両者が一つの支持基台上に搭載されて設けられたセンサユニットにおいて、
前記流量センサが前記ガスセンサよりも前記気体の流れ方向の上流側に配置されるように、前記ガスセンサ及び前記流量センサが設けられている
ことを特徴とするセンサユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサユニットと、
前記ガスセンサを用いて検出対象ガスの濃度を検出する濃度検出手段と、
前記流量センサを用いて気体の流量を検出する流量検出手段と、
前記流量検出手段により検出された気体の流量に基づいて前記濃度検出手段により検出されたガス濃度の流量補正を行う補正手段と、
を備えたことを特徴とするガス検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−222647(P2009−222647A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69354(P2008−69354)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】