説明

センサ装置

【課題】衝撃や振動を検出するためのセンサ装置において、実用性を犠牲にすることなく、衝撃や振動によるセンサの破損および感度低下を未然に防ぐ。
【解決手段】このセンサ装置1では、加速度センサ5および角速度センサ6の少なくとも一方を実装したプリント配線板3が筐体2に取り付けられている。この筐体2は、液晶ポリエステルから構成されている。振動減衰性能に優れる液晶ポリエステルを筐体2の材料として採用したので、筐体2そのものによって衝撃や振動を減衰しうることから、衝撃や振動による加速度センサ5や角速度センサ6の破損および感度低下を未然に防ぐことができる。しかも、筐体2に弾性部材を介してプリント配線板3を取り付ける手法と異なり、部品点数や組付工数の増大を回避することができるため、実用性を犠牲にすることもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、自動車の横滑り防止制御やエアバッグの展開制御など各種の制御を行うことを目的として、車体に搭載して衝撃や振動を検出するためのセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサ装置は、加速度センサや角速度センサなどのセンサがプリント配線板(プリント基板、プリント回路基板)に実装され、このプリント配線板が筐体に取り付けられた構造を一般に有している。そして、この筐体の材料としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、ナイロンなどの合成樹脂を採用することが提案されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−294419号公報(段落〔0026〕の欄)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PBTやナイロンからなる筐体においては、その振動減衰性能が低いため、自動車の走行中に車体が衝撃や振動を受けたときに、その衝撃や振動をほとんどそのままプリント配線板に伝えてしまう。その結果、センサが破損したり、センサの感度が低下したりするという不都合があった。
【0005】
なお、こうした不都合を解消するため、筐体に弾性部材を介してプリント配線板を支持することにより、衝撃や振動を弾性部材で吸収して低減する手法も考えられるが、これでは、弾性部材の分だけ部品点数および組付工数が増える欠点を伴うため、実用性に乏しい。
【0006】
そこで、本発明は、このような事情に鑑み、実用性を犠牲にすることなく、衝撃や振動によるセンサの破損および感度低下を未然に防ぐことが可能なセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、加速度センサおよび角速度センサの少なくとも一方を実装したプリント配線板が筐体に取り付けられたセンサ装置であって、前記筐体が液晶ポリエステルから構成されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位を有することを特徴としている。
(1)−O−Ar1 −CO−
(Ar1 は、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。Ar1 で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の構成に加え、前記液晶ポリエステルが、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有することを特徴としている。
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(Ar2 およびAr3 は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または下記式(4)で表される基を表す。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(−NH−)を表す。Ar2 またはAr3 で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4 −Z−Ar5
(Ar4 およびAr5 は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。)
【0010】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成に加え、前記筐体の厚さが、0.6〜10mmであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、振動減衰性能に優れる液晶ポリエステルを筐体の材料として採用したので、筐体そのものによって衝撃や振動を減衰しうることから、衝撃や振動によるセンサの破損および感度低下を未然に防ぐことが可能となる。
【0012】
しかも、筐体に弾性部材を介してプリント配線板を取り付ける手法と異なり、部品点数や組付工数の増大を回避することができるため、実用性を犠牲にするようなこともない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1に係るセンサ装置の分解斜視図である。
【図2】実施例における対数減衰率の測定方法を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
[発明の実施の形態1]
【0015】
図1には、本発明の実施の形態1を示す。
【0016】
この実施の形態1に係るセンサ装置1は、図1に示すように、筐体2を有しており、この筐体2は底部21およびカバー部22から構成されている。底部21は長方形平板状の底部本体21aを有しており、底部本体21aの周縁部には複数のボルト挿通孔21bが形成されている。一方、カバー部22はコの字断面状のカバー部本体22aを有しており、カバー部本体22aには複数のボルト挿通孔22bが形成されている。
【0017】
また、センサ装置1は、図1に示すように、プリント配線板3を有しており、プリント配線板3上には、ICチップ4が実装されているとともに、加速度センサ5および角速度センサ6が、はんだごてによる手はんだ付けやリフロー炉を使用するリフローはんだ付けなどによって実装されている。さらに、プリント配線板3には複数のボルト挿通孔3aが形成されている。
【0018】
プリント配線板3としては、無機系回路基板および有機系回路基板を例示することができる。無機系回路基板の例としては、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、炭化ケイ素基板などのセラミック基板、アルミニウムベース基板、鉄ベース基板などの金属系基板が挙げられる。また、有機系回路基板の例としては、ガラス布・エポキシ銅張積層板などのガラス基材銅張積層板、ガラス不織布・エポキシ銅張積層板などのコンポジット銅張積層板その他が挙げられる。
【0019】
加速度センサ5の例としては、加速度を検出する微細な検出素子部と検出素子から信号を増幅して出力する信号処理回路とから構成される半導体方式のMEMS型センサ(静電容量検出方式、ピエゾ抵抗方式、熱検知方式などの検出方式の如何を問わない。)の他、コイルばねや板ばねを使用する機械方式のセンサが挙げられる。
【0020】
角速度センサ6の例としては、こまのような回転の代わりに棒を用いた方式(音叉型)やリングの振動を用いた方式(リング型)などのMEMS型センサその他が挙げられる。
【0021】
そして、カバー部22の各ボルト挿通孔22b、プリント配線板3の各ボルト挿通孔3aおよび底部21の各ボルト挿通孔21bに順にボルト(図示せず)が挿通されてナット(図示せず)が締結されることにより、プリント配線板3が筐体2にボルト接合によって固定された状態となっている。
【0022】
ここで、筐体2を構成する底部21およびカバー部22は、いずれも液晶ポリエステルから構成されている。この液晶ポリエステルは、溶融状態で液晶性を示すポリエステルであり、振動減衰性能に優れるという特性を有している。この筐体2の厚さとしては、0.6〜10mmが好ましく、さらに好ましくは0.9〜5mmである。筐体2の厚さが薄すぎると、振動減衰効果が薄くなるとともに、強度も弱くなる。逆に、筐体2の厚さが厚すぎると、部品重量が重くなるばかりか、材料の使用量が増える点で不経済である。
【0023】
この液晶ポリエステルとしては、450℃以下の温度で溶融するものであることが好ましい。なお、液晶ポリエステルは、液晶ポリエステルアミドであってもよく、液晶ポリエステルエーテルであってもよく、液晶ポリエステルカーボネートであってもよく、液晶ポリエステルイミドであってもよい。液晶ポリエステルは、原料モノマーとして芳香族化合物のみを用いてなる全芳香族液晶ポリエステルであることが好ましい。
【0024】
液晶ポリエステルの典型的な例としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合(重縮合)させてなるもの、複数種の芳香族ヒドロキシカルボン酸を重合させてなるもの、芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物とを重合させてなるもの、およびポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルと芳香族ヒドロキシカルボン酸とを重合させてなるものが挙げられる。ここで、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンは、それぞれ独立に、その一部または全部に代えて、その重合可能な誘導体を用いてもよい。
【0025】
芳香族ヒドロキシカルボン酸および芳香族ジカルボン酸のようなカルボキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、カルボキシル基をアルコキシカルボニル基またはアリールオキシカルボニル基に変換してなるもの(エステル)、カルボキシル基をハロホルミル基に変換してなるもの(酸ハロゲン化物)、およびカルボキシル基をアシルオキシカルボニル基に変換してなるもの(酸無水物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ジオールおよび芳香族ヒドロキシアミンのようなヒドロキシル基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、ヒドロキシル基をアシル化してアシルオキシル基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。芳香族ヒドロキシアミンおよび芳香族ジアミンのようなアミノ基を有する化合物の重合可能な誘導体の例としては、アミノ基をアシル化してアシルアミノ基に変換してなるもの(アシル化物)が挙げられる。
【0026】
液晶ポリエステルは、下記式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」という。)を有することが好ましく、繰返し単位(1)と、下記式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」という。)と、下記式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」という。)とを有することがより好ましい。
(1)−O−Ar1 −CO−
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(Ar1 は、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。Ar2 およびAr3 は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または下記式(4)で表される基を表す。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(−NH−)を表す。Ar1 、Ar2 またはAr3 で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4 −Z−Ar5
(Ar4 およびAr5 は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。)
【0027】
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。前記アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基およびn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、通常1〜10である。前記アリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基および2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、通常6〜20である。前記水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、Ar1 、Ar2 またはAr3 で表される前記基毎に、それぞれ独立に、通常2個以下であり、好ましくは1個以下である。
【0028】
前記アルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、n−ブチリデン基および2−エチルヘキシリデン基が挙げられ、その炭素数は通常1〜10である。
【0029】
繰返し単位(1)は、所定の芳香族ヒドロキシカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(1)としては、Ar1 がp−フェニレン基であるもの(p−ヒドロキシ安息香酸に由来する繰返し単位)、およびAr1 が2,6−ナフチレン基であるもの(6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0030】
繰返し単位(2)は、所定の芳香族ジカルボン酸に由来する繰返し単位である。繰返し単位(2)としては、Ar2 がp−フェニレン基であるもの(テレフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2 がm−フェニレン基であるもの(イソフタル酸に由来する繰返し単位)、Ar2 が2,6−ナフチレン基であるもの(2,6−ナフタレンジカルボン酸に由来する繰返し単位)、およびAr2 がジフェニルエーテル−4,4’−ジイル基であるもの(ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸に由来する繰返し単位)が好ましい。
【0031】
繰返し単位(3)は、所定の芳香族ジオール、芳香族ヒドロキシルアミンまたは芳香族ジアミンに由来する繰返し単位である。繰返し単位(3)としては、Ar3 がp−フェニレン基であるもの(ヒドロキノン、p−アミノフェノールまたはp−フェニレンジアミンに由来する繰返し単位)、およびAr3 が4,4’−ビフェニリレン基であるもの(4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4−アミノ−4’−ヒドロキシビフェニルまたは4,4’−ジアミノビフェニルに由来する繰返し単位)が好ましい。
【0032】
繰返し単位(1)の含有量は、全繰返し単位の合計含有量(液晶ポリエステルを構成する各繰返し単位の質量をその各繰返し単位の式量で割ることにより、各繰返し単位の物質量相当量(モル)を求め、それらを合計した値)に対して、通常30モル%以上、好ましくは30〜80モル%、より好ましくは40〜70モル%、さらに好ましくは45〜65モル%である。繰返し単位(2)の含有量は、全繰返し単位の合計含有量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(3)の含有量は、全繰返し単位の合計含有量に対して、通常35モル%以下、好ましくは10〜35モル%、より好ましくは15〜30モル%、さらに好ましくは17.5〜27.5モル%である。繰返し単位(1)の含有量が多いほど、溶融流動性や耐熱性や強度・剛性が向上しやすいが、あまり多いと、溶融温度や溶融粘度が高くなりやすく、成形に必要な温度が高くなりやすい。
【0033】
繰返し単位(2)の含有量と繰返し単位(3)の含有量との割合は、[繰返し単位(2)の含有量]/[繰返し単位(3)の含有量](モル/モル)で表して、通常0.9/1〜1/0.9、好ましくは0.95/1〜1/0.95、より好ましくは0.98/1〜1/0.98である。
【0034】
なお、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。また、液晶ポリエステルは、繰返し単位(1)〜(3)以外の繰返し単位を有してもよいが、その含有量は、全繰返し単位の合計含有量に対して、通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下である。
【0035】
液晶ポリエステルは、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるものを有すること、すなわち、所定の芳香族ジオールに由来する繰返し単位を有することが、溶融粘度が低くなりやすいので、好ましく、繰返し単位(3)として、XおよびYがそれぞれ酸素原子であるもののみを有することが、より好ましい。
【0036】
液晶ポリエステルは、それを構成する繰返し単位に対応する原料モノマーを溶融重合させ、得られた重合物を固相重合させることにより、製造することが好ましい。これにより、耐熱性や強度・剛性が高い高分子量の液晶ポリエステルを操作性良く製造することができる。溶融重合は、触媒の存在下に行ってもよく、この触媒の例としては、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、三酸化アンチモンなどの金属化合物や、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、1−メチルイミダゾールなどの含窒素複素環式化合物が挙げられ、含窒素複素環式化合物が好ましく用いられる。
【0037】
液晶ポリエステルは、その流動開始温度が、通常270℃以上、好ましくは270〜400℃、より好ましくは280〜380℃である。流動開始温度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上しやすいが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなりやすく、その成形に必要な温度が高くなりやすい。
【0038】
なお、流動開始温度は、フロー温度または流動温度とも呼ばれ、毛細管レオメーターを用いて、9.8MPa(100kgf/cm2 )の荷重下、4℃/分の速度で昇温しながら、液晶ポリエステルを溶融させ、内径1mmおよび長さ10mmのノズルから押し出すときに、4800Pa・s(48000ポアズ)の粘度を示す温度であり、液晶ポリエステルの分子量の目安となるものである(例えば、小出直之編「液晶ポリマー−合成・成形・応用−」第95〜105頁、(株)シーエムシー出版、1987年6月5日発行を参照)。
【0039】
液晶ポリエステルは、これに充填材、添加剤、液晶ポリエステル以外の樹脂などの他の成分を1種以上配合して、液晶ポリエステル樹脂組成物として用いてもよい。
【0040】
充填材は、繊維状充填材であってもよく、板状充填材であってもよく、繊維状および板状以外で、球状その他の粒状充填材であってもよい。また、充填材は、無機充填材であってもよく、有機充填材であってもよい。繊維状無機充填材の例としては、ガラス繊維;パン系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカアルミナ繊維などのセラミック繊維;およびステンレス繊維などの金属繊維が挙げられる。また、チタン酸カリウムウイスカー、チタン酸バリウムウイスカー、ウォラストナイトウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー、炭化ケイ素ウイスカーなどのウイスカーも挙げられる。繊維状有機充填材の例としては、ポリエステル繊維およびアラミド繊維が挙げられる。板状無機充填材の例としては、タルク、マイカ、グラファイト、ウォラストナイト、ガラスフレーク、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウムが挙げられる。マイカは、白雲母であってもよく、金雲母であってもよく、フッ素金雲母であってもよく、四ケイ素雲母であってもよい。粒状無機充填材の例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、ガラスビーズ、ガラスバルーン、窒化ホウ素、炭化ケイ素および炭酸カルシウムが挙げられる。充填材の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜100質量部である。
【0041】
添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤および着色剤が挙げられる。添加剤の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜5質量部である。
【0042】
液晶ポリエステル以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、液晶ポリエステル以外のポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミドなどの液晶ポリエステル以外の熱可塑性樹脂;およびフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。液晶ポリエステル以外の樹脂の配合量は、液晶ポリエステル100質量部に対して、通常0〜20質量部である。
【0043】
液晶ポリエステル樹脂組成物は、液晶ポリエステルおよび必要に応じて用いられる他の成分を押出機で溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。この押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに設けられた1箇所以上のベント部を有するものが、より好ましく用いられる。
【0044】
液晶ポリエステルまたは液晶ポリエステル樹脂組成物を成形することにより、センサ装置1の筐体2を得ることができる。このときの成形法としては、溶融成形法が好ましい。溶融成形法としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法などの押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法およびプレス成形を例示することができるが、これらの中でも射出成形法が好ましい。
【0045】
センサ装置1は以上のような構成を有するので、自動車の横滑り防止制御やエアバッグの展開制御などの制御を行うために、車体の衝撃や振動を検出する際には、この車体にセンサ装置1を搭載する。
【0046】
そして、自動車の走行中に車体が衝撃や振動を受けると、この衝撃や振動は、センサ装置1の筐体2およびプリント配線板3を介して加速度センサ5および角速度センサ6に伝わる。このとき、筐体2は、上述したとおり、振動減衰性能に優れる液晶ポリエステルから構成されているので、車体からの衝撃や振動を減衰することができる。その結果、加速度センサ5や角速度センサ6が衝撃や振動によって破損したり感度低下したりする事態を未然に防ぐことが可能となる。
【0047】
しかも、筐体2に弾性部材を介してプリント配線板3を取り付ける手法と異なり、部品点数や組付工数の増大を回避することができるため、実用性を犠牲にするようなこともない。
【0048】
また、液晶ポリエステルからなる筐体2は、PBTやナイロンなどからなる従来の筐体に比べて比強度が大きいので、筐体2としての強度を確保するために厚くする必要がなく、筐体2、ひいてはセンサ装置1の小型・軽量化を実現することができる。
【0049】
さらに、液晶ポリエステルからなる筐体2は、PBTやナイロンなどからなる従来の筐体に比べて耐熱性に優れるため、特に、センサ装置1を自動車のエンジンルーム内に設置する場合においても、センサ装置1を長期にわたって安定して作動させることができる。
[発明のその他の実施の形態]
【0050】
なお、上述した実施の形態1では、底部21とカバー部22の双方が液晶ポリエステルから構成されている筐体2について説明したが、底部21とカバー部22のいずれか一方のみを液晶ポリエステルから構成するようにしても構わない。
【0051】
また、上述した実施の形態1では、加速度センサ5と角速度センサ6の双方がプリント配線板3上に実装されたセンサ装置1について説明した。しかし、加速度センサ5と角速度センサ6のいずれか一方のみがプリント配線板3上に実装されたセンサ装置1に対して、本発明を同様に適用することも可能である。
【0052】
また、上述した実施の形態1では、プリント配線板3が筐体2にボルト接合によって固定されたセンサ装置1について説明した。しかし、筐体2に対するプリント配線板3の固定方法としては、ボルト接合以外の方法(例えば、接着、超音波溶着、レーザー溶着、フック止めなど)を代用または併用することもできる。
【0053】
さらに、上述した実施の形態1では、底部21およびカバー部22の2部品からなる筐体2について説明した。しかし、底部21とカバー部22とが一体化された1部品の筐体2に対して、本発明を同様に適用することも可能である。
【実施例】
【0054】
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0055】
図2には、実施例における対数減衰率の測定方法を示す。
<液晶ポリエステルの製造>
【0056】
攪拌装置、トルクメータ、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却器を備えた反応器に、p−ヒドロキシ安息香酸994.5g(7.2モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル446.9g(2.4モル)、テレフタル酸299.0g(1.8モル)、イソフタル酸99.7g(0.6モル)および無水酢酸1347.6g(13.2モル)を仕込んだ。反応器内を十分に窒素ガスで置換した後、1−メチルイミダゾール0.18gを添加し、窒素ガス気流下で30分かけて150℃まで昇温し、温度を保持して30分間還流させた。その後、1−メチルイミダゾール2.4gを添加した後、留出する副生酢酸、未反応の無水酢酸を留去しながら2時間50分かけて320℃まで昇温し、トルクの上昇が認められる時点を反応終了とみなし、内容物を取り出した。得られた固形分は室温まで冷却し、粗粉砕機で粉砕した後、窒素雰囲気下、室温から250℃まで1時間かけて昇温し、250℃から295℃まで5時間かけて昇温し、さらに295℃で3時間保持し、固相重合を進めた。固相重合の後、これを冷却し、得られた液晶ポリエステルをLCP1とする。LCP1の流動開始温度は330℃であった。
【0057】
なお、この流動開始温度は、フローテスター((株)島津製作所製の「CFT−500型」)により、試料(液晶ポリエステル)約2gを用いて測定した値である。すなわち、このフローテスターを用いて、内径1mm、長さ10mmのノズルを有するダイを取り付けたシリンダーに試料約2gを充填し、9.8MPa(100kgf/cm2 )の荷重下において、昇温速度4℃/分で溶融させながら押し出し、溶融粘度が4800Pa・s(48000ポアズ)を示す温度を測定し、この温度を流動開始温度とした。
<実施例1>
【0058】
LCP1およびガラス繊維(セントラルガラス(株)製EFH75−01(数平均繊維径11μm、数平均繊維長75μm))を6:4の質量比で配合した後、2軸押出機(池貝鉄工(株)PCM−30)を用いて、シリンダー温度を340℃で造粒して、ペレット状の液晶ポリエステル樹脂組成物を得た。こうして得られた液晶ポリエステル樹脂組成物を用いて、射出成形により、縦64mm、横64mm、厚さ0.5mmの正方形平板状の成形品を作製した。
<実施例2>
【0059】
実施例1と同様の手順により、縦64mm、横64mm、厚さ1.0mmの正方形平板状の成形品を作製した。
<実施例3>
【0060】
実施例1と同様の手順により、縦64mm、横64mm、厚さ2.0mmの正方形平板状の成形品を作製した。
<対数減衰率の測定>
【0061】
実施例1、実施例2および実施例3の成形品について、以下の手順により、その対数減衰率を測定した。
【0062】
まず、図2に示すように、各成形品7の四隅に丸穴7aをそれぞれ開けるとともに、縦64mm、横64mm、厚さ0.8mmのFR4基板8の四隅に丸穴8aをそれぞれ開ける。ここで、成形品7は、実施の形態1における筐体2に相当するものとして用いた。一方、FR4基板8は、ガラス布・エポキシ板に銅箔が積層一体化されたガラス布・エポキシ銅張積層板であり、実施の形態1におけるプリント配線板3に相当するものとして用いた。
【0063】
次に、成形品7とFR4基板8との間に高さ5mmの円筒状の金属製のワッシャー9を4本介在させ、成形品7の丸穴7a、ワッシャー9、FR4基板8の丸穴8aに順にボルト10を挿通してナット11を螺着することにより、成形品7とFR4基板8とを5mmの間隔を置いて互いに平行になるように固定した。なお、図2においては、ボルト10およびナット11について、4組のうち1組のみ図示し、残り3組の図示を省いている。
【0064】
この状態で、FR4基板8の減衰振動を調べるため、FR4基板8の中央部に加速度ピックアップ((株)小野測器製の「NP−3211」)を取り付け、成形品7の中央部付近をインパルスハンマ((株)小野測器製の「GK−3100」)で打撃した。そして、FR4基板8の振動を加速度ピックアップで検出し、その検出信号を情報処理装置でデータ解析することにより、減衰振動曲線を得た。こうして得られた減衰振動曲線から、ある時刻の振幅をI0とし、そこから固有周期ごとに振幅I1、I2、I3、……を順に求めた後、横軸を固有周期としてI0/I0、I1/I0、I2/I0、I3/I0、……の値を自然対数に変換してグラフにプロットし、その傾きから対数減衰率を算出した。その結果をまとめて表1に示す。
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、対数減衰率は、実施例1の成形品(厚さ0.5mm)では0.23、実施例2の成形品(厚さ1.0mm)では0.36、実施例3の成形品(厚さ2.0mm)では0.39であった。したがって、成形品の厚さが増す程、対数減衰率が増大し、振動減衰性能が向上する傾向が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、使用中に衝撃や振動を受けやすい装置・機器、具体的には、自動車、電車、船舶、飛行機、ロケットなどの乗り物のほか、ハードディスク駆動装置などのディスク駆動装置その他に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1……センサ装置
2……筐体
3……プリント配線板
3a……ボルト挿通孔
4……ICチップ
5……加速度センサ
6……角速度センサ
7……成形品
7a……丸穴
8……FR4基板
8a……丸穴
9……ワッシャー
10……ボルト
11……ナット
21……底部
21a……底部本体
21b……ボルト挿通孔
22……カバー部
22a……カバー部本体
22b……ボルト挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサおよび角速度センサの少なくとも一方を実装したプリント配線板が筐体に取り付けられたセンサ装置であって、
前記筐体が液晶ポリエステルから構成されていることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記液晶ポリエステルが、下記式(1)で表される繰返し単位を有することを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
(1)−O−Ar1 −CO−
(Ar1 は、フェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基を表す。Ar1 で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記液晶ポリエステルが、下記式(2)で表される繰返し単位と、下記式(3)で表される繰返し単位とを有することを特徴とする請求項1または2に記載のセンサ装置。
(2)−CO−Ar2 −CO−
(3)−X−Ar3 −Y−
(Ar2 およびAr3 は、それぞれ独立に、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニリレン基または下記式(4)で表される基を表す。XおよびYは、それぞれ独立に、酸素原子またはイミノ基(−NH−)を表す。Ar2 またはAr3 で表される前記基にある水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基またはアリール基で置換されていてもよい。)
(4)−Ar4 −Z−Ar5
(Ar4 およびAr5 は、それぞれ独立に、フェニレン基またはナフチレン基を表す。Zは、酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、スルホニル基またはアルキリデン基を表す。)
【請求項4】
前記筐体の厚さが、0.6〜10mmであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−173074(P2012−173074A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34108(P2011−34108)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】