説明

ゼリー食品

【課題】こんにゃく入りゼリーが口の中に飛び込んでくることを防止することによって、食感を犠牲にすることなく、喉に詰まる危険性をより低減する。
【解決手段】ゼリー食品1は、フィルムから作られた包装袋10と、包装袋10内に充填封入されたこんにゃく入りゼリー20とを有する。包装袋10は、こんにゃく入りゼリー20が封入されている収容部12と、包装袋10を収容部12の狭小収容部12bにおいて幅方向に開封するために利用される切り込み13と、開封された包装袋10の下部を押し潰したときに、狭小収容部12b以外で包装袋10の下部から上部へ向かう方向へのこんにゃく入りゼリー20の移動を堰き止める張り出しシール部11aとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する包装袋内にこんにゃく入りゼリーを封入したゼリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼリー食品には様々な種類があるが、そのうちの一つとして、一口サイズのカップに封入された形態で販売されているこんにゃく入りゼリーが知られている。こんにゃく入りゼリーは、原料としてこんにゃく粉を含有しており、これによって、単位重量当たりのカロリー低減効果が期待できる。この種のこんにゃく入りゼリーは、こんにゃく入りゼリーを口でカップから吸い出したり、あるいはカップを押し潰してこんにゃく入りゼリーをカップから押し出したりすることによって、手軽に食すことができるため、ゼリー食品の主流となってきている。
【0003】
しかし、こんにゃく入りゼリーは、こんにゃくを含有していないぜリーと比較して、かたく弾力性が高いためカップから吸い出されたり押し出されたりしただけでは形が崩れなく、しかも噛み潰しにくい。その結果、口に入ったこんにゃく入りゼリーを誤ってそのまま飲み込んでしまって喉に詰まらせるという事故が発生し、社会問題にまでなっている。
【0004】
そこで、特許文献1には、開口部を横断して線状体を張設したゼリー食品用カップが記載されている。また、特許文献2には、隔壁等によって内部を複数の区画に分割したゼリー食品用カップが記載されている。これらのカップを用いることで、カップから吸い出されたり押し出されたりしたこんにゃく入りゼリーは複数の小片に分割されるので、こんにゃく入りゼリーを噛まずに誤って飲み込んだとしても、喉に詰まらせる危険性が少なくなる。
【0005】
一口サイズのこんにゃく入りゼリーには、カップではなく袋に封入されたものも知られている。袋に封入されたこんにゃく入りゼリーは、持ち易く、また、開封した袋から簡単に押し出すことができるので、こんにゃく入りゼリーを吸い込まずに食べることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−323781号公報
【特許文献2】特開平10−17068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されたようなカップに封入されたこんにゃく入りゼリーは、押し出し方または吸い込み方によってはカップから勢いよく飛び出すことがある。カップから飛び出したこんにゃく入りゼリーがそのまま喉の奥に入ってしまうと、たとえ分割されていたとしても、こんにゃく入りゼリーが喉に詰まる危険性は依然として残されたままである。
【0008】
こんにゃく入りゼリーが喉に詰まる危険性を小さくするためには、分割されるこんにゃく入りゼリーの小片のサイズを小さくすることが考えられる。しかしその場合は、口の中に入ったこんにゃく入りゼリーは予め小さく分割されているので、こんにゃく入りゼリーを噛み潰すことによって得られる食感が犠牲になってしまう。
【0009】
一方、袋に封入されたこんにゃく入りゼリーは、袋から押し出し易く、吸い込まずに食べることができるため、通常は、こんにゃく入りゼリーが袋から飛び出してくるような食べ方はされない。しかし、こんにゃく入りゼリーを袋から急激に押し出したり、誤って吸い込んだりしたりした場合は、袋内のこんにゃく入りゼリーが一気に飛び出してくることがあり、食べ方によってはこんにゃく入りゼリーが喉に詰まるおそれがあった。
【0010】
本発明は、こんにゃく入りゼリーが口の中に飛び込んでくることを防止することによって、食感を犠牲にすることなく、喉に詰まる危険性をより低減したこんにゃく入りゼリー食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明のゼリー食品は、フィルムから作られた包装袋内にこんにゃく入りゼリーが充填封入されたゼリー食品であって、
前記包装袋は、
前記こんにゃく入りゼリーが封入されている収容部と、
前記収容部の一部を通って前記包装袋の幅方向に前記フィルムが引き裂かれることによって前記包装袋の上部に開封口が形成されるように、前記フィルムの引き裂きを補助するための開封補助構造と、
前記開封補助構造を用いて前記包装袋が開封された状態で前記包装袋の下部を押し潰したとき、前記収容部の幅方向の一部で前記包装袋の下部から上部へ向かう方向への前記こんにゃく入りゼリーの移動を抑制する移動抑制構造と、
を有する。
【0012】
本発明のゼリー食品では、開封補助構造を利用して包装袋を開封することによって、包装袋の上部に開封口が形成される。この状態で包装袋の下部を押し潰すと、封入されているこんにゃく入りゼリーが開封口から押し出される。このとき、包装袋が有する移動抑制構造の作用によって、封入されているこんにゃく入りゼリーは収容部の一部において、開封口へ向かう方向への移動が抑制され、これによって、包装袋からのこんにゃく入りゼリーの飛び出しが防止される。
【0013】
本発明のゼリー食品において、収容部は、主収容部と、主収容部の上方に位置して主収容部と連通し、移動抑制構造によって主収容部よりも幅が狭くされた狭小収容部とを有することができる。この場合、移動抑制構造は、包装袋の幅方向において狭小収容部の両側に位置していることが好ましく、また、包装袋の上下方向での主収容部の高さは45mm以上であることが好ましい。
【0014】
また、本発明のゼリー食品において、包装袋は、フィルムの向き合った面同士を熱融着することで形成された、収容部を形成するための熱シール部を有し、移動抑制構造は、熱シール部の一部で形成されていてもよい。この場合、移動抑制構造は、包装袋の下部から上部へ向かう方向への前記こんにゃく入りゼリーの移動を堰き止めるように段差状に形成された張り出しシール部であってもよい。また、包装袋は、少なくとも狭小収容部が形成される部分において、包装袋の上部に向かって幅方向の寸法が小さくなる略テーパ状の外形を有しており、移動抑制構造は、テーパ形状に沿って形成された熱シール部の部分で構成されていてもよい。
【0015】
開封補助構造は、フィルムに形成された切り込みとすることができる。
【0016】
包装袋の幅方向での移動抑制構造の長さは5mm以上である好ましく、また、包装袋の幅方向での開封口の長さは18mm〜30mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、包装袋に移動抑制構造を設けることにより、こんにゃく入りゼリーが飛び出すことによって喉に詰まる事故を防止することができる。しかも、こんにゃく入りゼリーを食べるためには、包装袋から押し出されたこんにゃく入りゼリーを噛み切る必要があるため、こんにゃく入りゼリーの独特の歯ごたえを満喫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態によるゼリー食品の正面図である。
【図2】図1に示すゼリー食品において、包装袋からこんにゃく入りゼリーが押し出された状態を示す図である。
【図3】図1に示すゼリー食品の一変形例を示す正面図である。
【図4】図1に示すゼリー食品の他の変形例を示す正面図である。
【図5】図1に示すゼリー食品のさらに他の変形例を示す正面図である。
【図6】本発明の他の実施形態によるゼリー食品の正面図である。
【図7】図6に示すゼリー食品の一変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、本発明において上下の方向を規定するとき、包装袋の開封される側を「上側」、それと対向する側を「下側」とする。また、「幅方向」とは、上記のように規定された上下方向と直角な方向であって、かつ包装袋の一方の端縁から反対側の端縁へ向かう方向を意味する。また、「シール幅」は、熱シール部の長手方向に直角な方向での寸法をいい、上記の「幅方向」における「幅」とは異なる。
【0020】
図1を参照すると、樹脂製のフィルムから作られた包装袋10と、包装袋10内に充填封入されたこんにゃく入りゼリー20とを有する、本発明の一実施形態によるゼリー食品1が示されている。
【0021】
こんにゃく入りゼリー20は、通常のゼリーと同様、ゲル化剤などを含有するゼリー溶液をゲル化剤の作用によって固化させて作られるが、通常のゼリーと異なることは、ゼリー溶液がこんにゃく精粉をさらに含有していることである。本発明で用いるこんにゃく入りゼリー20は、少なくともゲル化剤およびこんにゃく精粉を含有していれば、任意の材料を含有することができる。こんにゃく精粉を含有することにより、こんにゃく入りゼリー20は弾力性の高い独特の歯ごたえがある。
【0022】
このような独特の歯ごたえを有するこんにゃく入りゼリー20の物性は、例えば「かたさ」および「弾力性」で表すことができる。こんにゃく入りゼリー20の「かたさ」および「弾力性」は、レオメーターを用いて測定することができる。具体的には、プランジャーを試料(こんにゃく入りゼリー20)に押し当てることによって試料を圧縮し、試料の表面が破断するまでにかかった力(gf)を「かたさ」とし、試料の表面が破断するまでの圧縮距離(mm)を「弾力性」とする。
【0023】
本発明では、こんにゃく入りゼリー20の「かたさ」および「弾力性」は特に制限されないが、「かたさ」は、好ましくは80〜1000gf、より好ましくは300〜400gfであり、「弾力性」は、好ましくは7〜20mm、より好ましくは7〜9mmである。ただし、上記の値は、温度24℃、湿度38%の雰囲気下で、株式会社山電製レオメーター(RE2−33005S)を用い、くさび形のプランジャー(試料と接触する先端面の寸法が、幅1mm、長さ30mm)によって試料を1mm/secの速度で圧縮した場合の値である。
【0024】
包装袋10は、折り合わせた1枚のフィルムまたは向かい合わせた2枚のフィルムをその縁部で熱融着することによって熱シール部11(図ではクロスハッチングで示している)が形成されており、熱融着されていない非シール部は、こんにゃく入りゼリー20が充填封入される収容部12を形成する。包装袋10のシール方式は特に制限されず、図示した三方シール袋の他に、例えば、ピロー包装袋および四方シール袋とすることもできる。
【0025】
熱シール部11は、包装袋10の上端部に2つの張り出しシール部11aを有して形成されている。張り出しシール部11aは、包装袋10の幅方向両端部から互いに向かう方向に延びて段差状に形成されている。これによって、収容部12は、張り出しシール部11aよりも下方に位置する主収容部12aと、主収容部12aの上方で2つの張り出しシール部11aの間に位置することによって主収容部12aよりも幅狭とされ、主収容部12aと連通する狭小収容部12bとを有する。
【0026】
包装袋10には、包装袋10を開封するための切り込み13が、収容部12の一部を通って包装袋10の幅方向にフィルムが引き裂かれることによって包装袋10の上部に開封口が形成されるように、フィルムの引き裂きを補助するための開封補助構造として形成されている。切り込み13は、その延長線である開封線BLが狭小収容部12bを包装袋10の幅方向に横断するように、張り出しシール部11aが形成された位置において包装袋10の幅方向一端部に形成されている。ここでは開封補助構造として切り込み13を示したが、開封補助構造は、その他にも、例えばV字型の切り欠き(不図示)、あるいは印刷されたマークなどとすることができる。
【0027】
本形態のゼリー食品10は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0028】
まず、通常のこんにゃく入りゼリーを作る場合と同様、ゲル化剤およびこんにゃく粉を含有させたこんにゃく入りゼリー溶液を調製する。こんにゃく入りゼリー溶液には、ゲル化剤およびこんにゃく粉の他に、糖類、果汁、香料、酸味料、着色料などを、必要に応じて加えることができる。
【0029】
次いで、調製したこんにゃく入りゼリー溶液を加熱殺菌する。加熱殺菌は、例えば、チューブ式の加熱殺菌装置を用いるなど、任意の方法で行なうことができる。殺菌条件は、例えば、120〜140℃、約3分とすることができる。
【0030】
殺菌が終了したこんにゃく入りゼリー溶液は、冷却装置により約60〜70℃まで冷却されて、適宜の充填包装機を用いて充填包装される。充填包装は、殺菌した内容物および殺菌した包装材を用いて無菌環境下で包装を行なう無菌充填包装であることが好ましい。
【0031】
充填包装の後、包装されたこんにゃく入りゼリー溶液を25℃以下まで冷却して固化させる。これによって、図1に示すような、こんにゃく入りゼリー20が包装袋10内に充填封入されたゼリー食品1が得られる。得られたゼリー食品1は、こんにゃく入りゼリー10が包装袋10内で固化されているので、こんにゃく入りゼリー10は包装袋10内で収容部12の形状とほぼ等しい形状の一つの塊となって存在している。
【0032】
以上のように構成されたゼリー食品1において、包装袋10内に封入されたこんにゃく入りゼリー20を食べるときは、ユーザは、まず、切り込み13を利用してフィルムを開封線BLに沿って引き裂く。これにより、包装袋10は狭小収容部12bで開封され、狭小収容部12bの幅方向全域にわたる開封口14が形成される。
【0033】
次いで、ユーザは、図2に示すように、包装袋10の下部を押し潰す。包装袋10の下部が押し潰されると、包装袋10内に封入されているこんにゃく入りゼリー20には包装袋10の下部から上部へ向かう力が作用し、こんにゃく入りゼリー20は開封口14から押し出される。
【0034】
このとき、開封口14は狭小収容部12bのみに形成されているため、包装袋10の幅方向において狭小収容部12a以外の部分では、包装袋10の下部から上部へ向かうこんにゃく入りゼリー20の移動は、張り出しシール部11aによって堰き止められる。つまり、本形態における張り出しシール部11aは、切り込み13を利用して開封された包装袋10の下部を押し潰したとき、収容部12の幅方向の一部で包装袋10の下部から上部へ向かう方向へのこんにゃく入りゼリー10の移動を抑制する移動抑制構造として機能する。
【0035】
一方、包装袋10の中では、こんにゃく入りゼリー20は一つの塊となって存在しており、また、こんにゃく入りゼリー20はこんにゃく由来の独特の弾力性を有している。そのことにより、こんにゃく入りゼリー20は、一部が狭小収容部12bに向かって圧縮され、他の部分が狭小収容部12bと張り出しシール部11aとの境界で引きちぎられながら包装袋10から押し出されるが、主収容部12aの中では、こんにゃく入りゼリー20は一つの塊となったままである。よって、こんにゃく入りゼリー20は、包装袋10内の部分から分離することなく、包装袋10から押し出される。
【0036】
その結果、開封された包装袋10を強く押し潰しても、張り出しシール部11aによって移動が堰き止められたこんにゃく入りゼリー20の部分がアンカーの役割を果たし、こんにゃく入りゼリー10が開封口14から飛び出すことはない。開封口14から押し出されたこんにゃく入りゼリー20を食べるためには、歯で噛み切る必要がある。従って、本形態のゼリー食品1においては、包装袋10から押し出されたこんにゃく入りゼリー20がそのまま口の中に飛び込むことによって喉に詰まることを確実に防止することができる。しかも、こんにゃく入りゼリー20を食べるためには、包装袋10から押し出されたこんにゃく入りゼリー20を噛み切る必要があるため、こんにゃく入りゼリー独特の歯ごたえを満喫することができる。
【0037】
さらに、本形態においては、張り出しシール部11aが開封口の両側にあることにより、こんにゃく入りゼリー20の飛び出しをより効果的に防止でき、また、こんにゃく入りゼリー20を開封口14からバランスよく押し出すことができる。
【0038】
張り出しシール部11aは、包装袋10の下部から上部へ向かうこんにゃく入りゼリー20の移動を堰き止めるが、それ以外の方向へのこんにゃく入りゼリー20の移動については制限しない。よって、こんにゃく入りゼリー20を包装袋10から押し出し、包装袋10内のこんにゃく入りゼリー20が残り少なくなってきた場合、張り出しシール部11aの下方において張り出しシール部11aの近傍にあるこんにゃく入りゼリー20は狭小収容部12b(開封口14)に向かって移動でき、最終的には収容部12内から全てのこんにゃく入りゼリー20を押し出すことができる。
【0039】
上述のように、本発明においては、こんにゃく入りゼリー20の移動抑制構造を包装袋10に設けることによって、こんにゃく入りゼリー20が包装袋10から飛び出すのを防止している。こんにゃく入りゼリー20の飛び出しをより効果的に防止するためには、包装袋10の幅方向における移動抑制構造の長さW1は、5mm以上であることが好ましい。この値が5mm未満であると、こんにゃく入りゼリー20の移動を十分に制限できない場合がある。こんにゃく入りゼリー20の移動をより効果的に抑制するためには、この値は大きい方がよく、上限は特に定められないが包装袋10全体の寸法から自ずと定まる。
【0040】
また、包装袋10の幅方向における、包装袋10を開封することによって形成される開封口の長さ(ここでは狭小収容部12bの長さ)W2は、18〜30mmであることが好ましく、より好ましくは18〜25mmである。この開封口の長さW2を18mm以上とすることで、こんにゃく入りゼリー20を包装袋10からスムーズに押し出すことができ、また、30mm以下とすることで、こんにゃく入りゼリー20を噛み切り易いサイズで包装袋10から押し出すことができる。よって、押し出されたこんにゃく入りゼリー20を噛み切り易くすいサイズとするという観点からは、包装袋10の幅方向における開封口の長さW2は、上記の範囲内でできるたけ小さくすることが好ましい。
【0041】
さらに、包装袋10から押し出されたこんにゃく入りゼリー10を確実に噛み切って食べるようにするためには、包装袋10の上下方向における主収容部12aの高さHは、45mm以上であることが好ましい。
【0042】
そして、包装袋10内に封入されるこんにゃく入りゼリー20の重量は、特に制限はないが、通常のカップ入りのゼリーと同様、20〜25gとすることが適当である。
【0043】
ここまで、図1に示したゼリー食品1を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は上述した形態に限られるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、上述した形態では包装袋10の主収容部12aが縦長(すなわち、上下方向の長さが幅方向の長さよりも長いこと)である例を示したが、図3に示すように、主収容部12aは横長(すなわち、上下方向の長さが幅方向の長さよりも短いこと)であってもよい。
【0045】
また、上述した形態では、こんにゃく入りゼリー20の移動抑制構造である張り出しシール部11aが包装袋10の上部の幅方向両側に形成され、それらの間に狭小収容部12bが位置している例を示したが、図4に示すように、張り出しシール部11aが包装袋10の幅方向片側のみに形成されていてもよい。
【0046】
また、上述した形態では、移動抑制構造をフィルムの向き合った2つの面同士を熱融着することによって形成された張り出しシール部11aで構成した例を示した。しかし、例えば図5に示すように、包装袋10を構成するフィルムの向き合った2つの面の間に引き裂き可能なシート部材15を接着し、このシート部材15によって移動制限構造を構成することもできる。フィルムへのシート部材15接着は、食品衛生法に適合した接着剤を用いて行なうこともできるし、シート部材15がフィルムと熱融着可能な材料であれば熱融着によって行なうこともできる。また、包装袋10の開封を良好に行なえるようにするため、シート部材15は包装袋10の幅方向に引き裂き方向性を有していることが好ましい。
【0047】
さらに、包装袋の外形は、包装袋が収容部、開封補助構造および移動抑制構造を有していれば任意の形状とすることができる。例えば、図1に示した主収容部12aおよび狭小収容部12bからなる収容部12を有する場合において、フィルムのシール幅をほぼ一定とすることによって、狭小収容部12bを形成する部分が主収容部12aを形成する部分に比べて幅狭となる外形で包装袋を形成することも可能である。この場合、包装袋の外形は、主収容部12aを形成する部分と狭小収容部12bを形成する部分との境界で段差を有する形状とされてもよいし、狭小収容部12bを形成する部分が包装袋の上部に向かって幅が狭くなっていく形状であってもよい。
【0048】
図6に、本発明の他の実施形態である、狭小収容部12bを形成する部分が下部から上部に向かうにつれて幅が狭くなっていく外形状を有する包装袋10にこんにゃく入りゼリー20を封入したゼリー食品1の一例を示す、図6に示す包装袋10は、幅方向の寸法が、包装袋10の下部から上部に向かって途中の一点鎖線で示す位置までは一定であるが、そこから上方では幅方向の寸法が次第に小さくなっていく略テーパ状の外形とされ、また、熱シール部11が包装袋10の外形に沿ってほぼ一定のシール幅で形成されている。これによって、収容部12は、一点鎖線で示す位置の下方が主収容部12aとされ、その上方が狭小収容部12bとされる。
【0049】
また、熱シール部11は、狭小収容部12bを形成する部分で包装袋10の高さ方向に対して幅方向中心に向かって傾いた角度で形成され、狭小収容部12bの形状も、包装袋10の上部に向かって幅が狭くなっていく略テーパ状とされている。ただし、本形態では、包装袋10の開封のためにフィルムを引き裂いたとき、引き裂き方向が多少ずれたとしても開封口の幅がほぼ一定となるように、狭小収容部12bの上部がほぼ一定の幅に形成されている。
【0050】
開封線BLは、狭小収容部12bの、このほぼ一定の幅に形成された部分を通る。包装袋10の幅方向において開封線BLの両側には、開封補助構造として、図1に示した例のような切り込みを形成することもできるが、本形態では切り欠き16が形成されている。切り欠き16を形成することによって、切り欠き16よりも上部で幅方向両側にタブ16aが形成される。切り欠き16は、包装袋10の幅方向片側のみに形成することもできる。この場合、タブ16aも片側のみに形成される。
【0051】
ユーザが包装袋10を開封するとき、ユーザはタブ16aを摘んでフィルムを引き裂くことができる。これによって、ユーザは包装袋10を容易に開封することができる。包装袋10の開封後、包装袋10の下部をユーザが押し潰すことによって、封入されているこんにゃく入りゼリー20が包装袋10の開封口から押し出される。
【0052】
このとき、こんにゃく入りゼリー20は、開封口から外れた部分では、熱シール部12の傾きに沿って包装袋10の上部へ向かい、圧縮されながら開封口から押し出される。つまり、狭小収容部12bにおいてそのテーパ形状に沿って形成された熱シール部12の部分は、包装袋10の下部から上部へ向かう方向へのこんにゃく入りゼリー20の移動を抑制する移動抑制構造として機能する。このような移動抑制構造によって狭小収容部12bの幅を主収容部12aより狭くすることでも、開封した包装袋10を押し潰したときにこんにゃく入りゼリー20が包装袋10から飛び出すのを防止することができる。
【0053】
図6に示した形態では、移動抑制構造は、図1に示した形態と異なり、こんにゃく入りゼリー20の移動を堰き止めるものではない。よって、図6に示した形態によれば、図1に示した形態と比べてより小さい力でこんにゃく入りゼリー20を押し出すことができる。また、図6に示した形態は、包装袋10を押し潰したときに移動抑制構造に作用する力が、図1に示した形態と比べて小さい。そのため、図6に示した形態は、移動抑制構造を熱シール部12の一部で形成した場合に、移動抑制構造に過度の力が作用して熱シール部12が剥離するのを防止できる。
【0054】
さらに、図6に示した形態では、包装袋10が、狭小収容部12bを形成する部分で包装袋10の下部から上部へ向かうにつれて幅が狭くなっていく外形とされており、これによって、開封後の包装袋10の上端(開封口が形成された端)での包装袋10の幅が、図1に示した形態と比べて小さくなっている。
【0055】
このことにより、収容部12の容量(言い換えると、こんにゃく入りゼリー20の内容量)を減少させることなく、包装袋10を開封するときのフィルムの引き裂き長さをより短くすることができる。引き裂き長さが短くなることによって、引き裂き方向が包装袋10の幅方向に対して傾いたとしても、その傾きによる影響を小さくすることができる。フィルムの引き裂き方向の傾きは、開封口の形成に影響を与える。引き裂き方向が大きく傾くと、その傾きによっては、移動抑制構造の一部または全部が除去された状態で開封口が形成されるようにフィルムが引き裂かれることがある。このように移動抑制構造の一部または全部が除去された状態でフィルムが引き裂かれると、移動抑制構造は所望の機能を果たすことができなくなり、包装袋10を押し潰したときにこんにゃく入りゼリー20が包装袋10から飛び出すおそれがある。
【0056】
そこで、包装袋10の外形を、包装袋10を開封するときのフィルムの引き裂き長さが包装袋10の全幅よりも短くなるように形成することで、フィルムの引き裂き方向が傾いた場合であっても、その影響を小さくし、移動抑制構造の機能を効果的に発揮させることができる。
【0057】
さらに、フィルムの引き裂き方向が包装袋10の幅方向に対して傾くこと自体を抑制するために、引き裂き方向性を有するフィルムを用いることがより好ましい。引き裂き方向性を有するフィルムは、例えば、フィルム製造時の縦方向と横方向での延伸倍率を変えることで得ることができ、ゼリー食品の製造時には、フィルムが包装袋10の幅方向に引き裂き方向性を有するようにフィルムを使用する。また、引き裂き方向性を有するフィルムを用いることで、図1に示したような、開封時に全幅にわたってフィルムが引き裂かれる包装袋10においても、開封時に移動抑制構造の一部または全部が除去される不具合を効果的に抑制することができる。
【0058】
また、上記のように包装袋10を形成することで、こんにゃく入りゼリー20の内容量を減少させることなく、包装袋10の開封後の、開封口近傍での包装袋10の幅を狭くすることができる。開封口近傍での包装袋10の幅は、包装袋10から押し出されたこんにゃく入りゼリー20を食べるときに包装袋10の開封口近傍の部分を口の中に含めることができる幅、例えば30mm以下、とすることが好ましい。
【0059】
開封線BLが包装袋10の全幅を横断する位置に設定されると、包装袋10を開封するためにフィルムを幅方向に引き裂くと、引き裂きによって形成された包装袋10の上辺には、包装袋10の幅方向両端に、ほぼ直角の角部が形成される。包装袋10の上辺には開封口が形成されるので、包装袋10に口を付けてこんにゃく入りゼリー20を食べる場合、この角部がユーザの頬に当たると不快感を生じさせる。
【0060】
しかしながら、包装袋10の外形を、少なくとも狭小収容部12bが形成される部分において、包装袋10の上部に向かって幅方向の寸法が小さくなる略テーパ状とすることで、開封した包装袋10の上辺の長さを、包装袋10に口を付けてこんにゃく入りゼリー20を食べる際に包装袋10の開封口近傍の部分を口の中に含めることができる長さとすることができる。しかも、包装袋10の上部が略テーパ状であるので、開封した包装袋10の上辺の両端には、ユーザの頬に当たって不快感を生じさせるような角部は存在しない。よって、ユーザは、不愉快な思いをすることなく安心して、包装袋10内のこんにゃく入りゼリー20を包装袋10に口を付けて食べることができる。この効果をより良好に発揮させることができるようにするためには、包装袋10の幅方向に対する略テーパ状の部分の傾き角度が30°〜80°の範囲にあることが好ましく、より好ましくは40°〜50°の範囲である。
【0061】
なお、図6に示した例では、移動抑制構造を、狭小収容部12bにおいて一定のシール幅で形成された熱シール部11の部分で構成した例を示したが、図7に示すように、図6に示した包装袋10の外形に、移動抑制構造として図1に示した張り出しシール部11aを組み合わせることもできる。
【0062】
以上、図3〜図7を参照して説明した形態においても、包装袋10の幅方向における移動抑制構造(図3および図4においては張り出しシール部11a、図5においてはシート部材15、図6および図7においては熱シール部12の狭小収容部12bを形成する部分)の長さW1、同じく開封口の長さW2、および包装袋10の上下方向における主収容部12aの高さHについての好ましい範囲は、前述した範囲と同様である。
【符号の説明】
【0063】
1 ゼリー食品
10 包装袋
11 熱シール部
11a 張り出しシール部
12 収容部
12a 主収容部
12b 狭小収容部
13 切り込み
14 開封口
15 シート部材
16 切り欠き
16a タブ
20 こんにゃく入りゼリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムから作られた包装袋内にこんにゃく入りゼリーが充填封入されたゼリー食品であって、
前記包装袋は、
前記こんにゃく入りゼリーが封入されている収容部と、
前記収容部の一部を通って前記包装袋の幅方向に前記フィルムが引き裂かれることによって前記包装袋の上部に開封口が形成されるように、前記フィルムの引き裂きを補助するための開封補助構造と、
前記開封補助構造を用いて前記包装袋が開封された状態で前記包装袋の下部を押し潰したとき、前記収容部の幅方向の一部で前記包装袋の下部から上部へ向かう方向への前記こんにゃく入りゼリーの移動を抑制する移動抑制構造と、
を有するゼリー食品。
【請求項2】
前記収容部は、主収容部と、前記主収容部の上方に位置して前記主収容部と連通し、前記移動抑制構造によって前記主収容部よりも幅が狭くされた狭小収容部とを有する請求項1に記載のゼリー食品。
【請求項3】
前記移動抑制構造は、前記包装袋の幅方向において前記狭小収容部の両側に位置している請求項2に記載のゼリー食品。
【請求項4】
前記包装袋の上下方向での前記主収容部の高さは45mm以上である請求項2または3に記載のゼリー食品。
【請求項5】
前記包装袋は、フィルムの向き合った面同士を熱融着することで形成された、前記収容部を形成するための熱シール部を有し、
前記移動抑制構造は、前記熱シール部の一部で形成されている請求項2から4のいずれか1項に記載のゼリー食品。
【請求項6】
前記移動抑制構造は、前記包装袋の下部から上部へ向かう方向への前記こんにゃく入りゼリーの移動を堰き止めるように段差状に形成された張り出しシール部である請求項5に記載のゼリー食品。
【請求項7】
前記包装袋は、少なくとも前記狭小収容部が形成される部分において、前記包装袋の上部に向かって幅方向の寸法が小さくなる略テーパ状の外形を有しており、
前記移動抑制構造は、前記テーパ形状に沿って形成された前記熱シール部の部分で構成される請求項5に記載のゼリー食品。
【請求項8】
前記開封補助構造は前記フィルムに形成された切り込みまたは切り欠きである請求項1から7のいずれか1項に記載のゼリー食品。
【請求項9】
前記包装袋の幅方向での前記移動抑制構造の長さは5mm以上である請求項1から8のいずれか1項に記載のゼリー食品。
【請求項10】
前記包装袋の幅方向での前記開封口の長さは18mm〜30mmである請求項1から9のいずれか1項に記載のゼリー食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−213690(P2010−213690A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33513(P2010−33513)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(506011021)オリヒロプランデュ株式会社 (4)
【Fターム(参考)】