説明

ソケット伝送変換方法

【課題】更新前の制御システムに悪影響を及ぼすことなく、且つ、制御システムの信頼性を低下させることなく、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネットを利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新すること。
【解決手段】情報処理装置12が、モデム4bに接続された三叉コネクタ10を介してモデム4bと旧制御用計算機3との間を接続するRS232C信号線L2を伝達するベーシック通信情報を取得し、取得したベーシック通信情報をソケット通信情報に変換して新制御用計算機6に送信する。これにより、更新前の制御システムに悪影響を及ぼすことなく、且つ、制御システムの信頼性を低下させることなく、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機3を、イーサネットを利用したソケット通信を行う新制御用計算機6に更新することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムを構成する制御用計算機のうち、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新する際に用いるのに好適な、ソケット伝送変換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、制御システムを構成する制御用計算機のうち、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新する際には、更新時に制御システムに不具合が発生することを抑制するために、以下に示すようなパラランテストが行われる(特許文献1参照)。すなわち、このパラランテストでは、始めに、作業員が、上位又は下位の計算機と旧制御用計算機との間の通信経路にソケット通信変換装置を設置する。そして、ソケット通信変換装置が、通信経路を介して上位又は下位の計算機から送信された通信情報を旧制御用計算機に送信すると共に、この通信情報をソケット通信情報に変換して他の通信経路を介してソケット通信情報を新制御用計算機に送信する。これにより、旧制御用計算機と新制御用計算機との双方が上位又は下位の計算機から送信された通信情報を取り込むことができるので、更新前に新制御用計算機の動作を検証することができ、更新時に制御システムに不具合が発生することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−16291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のパラランテストでは、上位又は下位の計算機と旧制御用計算機との間の通信経路にソケット通信変換装置を設置するために、ソケット通信変換装置のソフトウェア品質が更新前の制御システムに悪影響を及ぼす可能性がある。また、従来のパラランテストでは、制御用計算機を旧制御用計算機から新制御用計算機に更新した後も不要になったソケット通信変換装置が通信経路に存続することになるために、ソケット通信変換装置のハードウェア故障の危険性が制御システムに内包され、制御システムの信頼性が低下してしまう
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、更新前の制御システムに悪影響を及ぼすことなく、且つ、制御システムの信頼性を低下させることなく、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新可能なソケット伝送変換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るソケット伝送変換方法は、制御システムを構成する制御用計算機のうち、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新するためのソケット伝送変換方法であって、情報処理装置が、前記モデムと前記旧制御用計算機との間の通信経路に配設された三叉コネクタを介して該通信経路を伝達する通信情報を取得し、取得した通信情報をソケット通信情報に変換して前記新制御用計算機に送信するステップを含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るソケット伝送変換方法によれば、更新前の制御システムに悪影響を及ぼすことなく、且つ、制御システムの信頼性を低下させることなく、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、更新前の制御システムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態であるソケット伝送変換方法を利用したシステム更新処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は、パラランテスト時の制御システムの構成を示す図である。
【図4】図4は、プロトコルアナライザから情報処理装置に送信されるベーシック通信情報のデータ形式を示す図である。
【図5】図5は、情報処理装置から新制御用計算機に送信されるソケット通信情報のデータ形式を示す図である。
【図6】図6は、更新後の制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態であるソケット伝送変換方法を利用したシステム更新処理について説明する。なお、本実施形態のシステム更新処理は、図1に示す制御システム1における、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機3を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新(交換)することを目的とする。図1に示す制御システム1は、上位/下位計算機2と、旧制御用計算機3と、RS232C信号線L1及びRS232C回線L2を介してそれぞれ上位/下位計算機2及び旧制御用計算機3に接続されたモデム4a,4bとを備え、上位/下位計算機2と旧制御用計算機3とは、電気通信回線5を介してベーシック(BSC)手順によるベーシック通信情報を送受信する。
【0010】
図2は、本発明の一実施形態であるソケット伝送変換方法を利用したシステム更新処理の流れを示すフローチャートである。図2に示すフローチャートは、システム更新作業を開始する時点でスタートとなり、システム更新処理はステップS1の処理に進む。
【0011】
ステップS1の処理では、作業員が、システム更新処理に必要な機器を配置する。具体的には、図1に示す制御システム1のシステム更新処理を行う際には、作業員は図3に示すように必要機器を配置する。すなわち、始めに、作業員は、モデム4bに三叉コネクタ10を接続し、三叉コネクタ10の空いている残りの2つの接続端子にそれぞれRS232C信号線L2及びRS232C信号線L3の一方端を接続する。次に、作業員は、RS232C信号線L3の他方端及びイーサネット(登録商標)信号線L4の一方端をプロトコルアナライザ11に接続する。次に、作業員は、イーサネット(登録商標)信号線L4の他方端及びイーサネット(登録商標)信号線L5の一方端をパーソナルコンピュータ等の情報処理装置12に接続する。
【0012】
次に、作業員は、イーサネット(登録商標)信号線L5の他方端及びRS232C信号線L6の一方端をプロトコルコンバータ13に接続する。次に、作業員は、RS232C信号線L6の他方端及びイーサネット(登録商標)信号線L7の一方端をプロトコルコンバータ14に接続する。プロトコルコンバータ13,14は、BSC手順によるベーシック通信情報とTCP/IP手順によるソケット通信情報との間で情報変換を行うためのものである。そして最後に、作業員は、イーサネット(登録商標)信号線L7の他方端を新制御用計算機6に接続する。これにより、ステップS1の処理は完了し、システム更新処理はステップS2の処理に進む。
【0013】
ステップS2の処理では、プロトコルアナライザ11が、RS232C信号線L3を介して上位/下位計算機2から旧制御用計算機3に送信されるベーシック通信情報を取得し、イーサネット(登録商標)信号線L4を介して取得したベーシック通信情報を情報処理装置12に送信する。これにより、ステップS2の処理は完了し、システム更新処理はステップS3の処理に進む。
【0014】
ステップS3の処理では、情報処理装置12が、プロトコルアナライザ11から送信されたベーシック通信情報のデータ部分を抽出し、プロトコル変換器13,14を介して抽出されたデータを新制御用計算機6に送信する。具体的には、図4に示すように、ベーシック通信情報は、データ部の先頭を示す制御コードであるSTX(Start of TeXt)、データ部、及びデータの末尾を示す制御コードであるETX(End of TeXt)を含む。そこで、情報処理装置12は、ベーシック通信情報からSTX,ETXを削除したものをデータ部として抽出し、図5に示すように抽出されたデータ部に後述する検証処理において用いられるデータ送信時の日付のコードを付して新制御用計算機6に送信する。この処理によれば、新制御用計算機6から見れば、情報処理装置12は上位/下位計算機2のように機能することになる。これにより、ステップS3の処理は完了し、システム更新処理はステップS4の処理に進む。
【0015】
ステップS4の処理では、新制御用計算機6が、情報処理装置12から送信されたデータ部分に従って上位/下位計算機2に対する制御内容を決定し、決定した制御内容を示すデータを図5に示したデータ形式と同様のデータ形式でプロトコル変換器14,13を介して情報処理装置12に送信する。情報処理装置12は、新制御用計算機6から送信されたデータを受信する。これにより、ステップS4の処理は完了し、システム更新処理はステップS5の処理に進む。
【0016】
ステップS5の処理では、情報処理装置12が、(1)新制御計算機6から送信されたデータを上位/下位計算機2の動作をシミュレーションするシミュレータに入力し、上位/下位計算機2がステップS3の処理によって抽出されたデータの内容に応じた動作を実行するか否かを判別する方法、又は、(2)新制御計算機6から送信されたデータと旧制御用計算機3から上位/下位計算機2に送信されたデータとを比較する方法によって、新制御用計算機6の送信データを検証する。比較の対象となるデータは、データに付与されているデータ送信時に日付に基づいて選択する。検証の結果、新制御用計算機6の動作に問題がある場合、作業員は、新制御用計算機6の動作プログラム等を修正する。これにより、ステップS5の処理は完了し、システム更新処理はステップS6の処理に進む。
【0017】
ステップS6の処理では、情報処理装置12が、新制御用計算機6の送信データの検証が全ての検証条件について終了したか否かを判別する。判別の結果、全ての検証条件について検証が終了していない場合、情報処理装置12はシステム更新処理をステップS2の処理に戻す。一方、全ての検証条件について検証が終了した場合には、情報処理装置12はシステム更新処理をステップS7の処理に進める。
【0018】
ステップS7の処理では、作業員が、ステップS1の処理において配置した新制御用計算機6、プロトコル変換器14、RS232C信号線L6、及びイーサネット(登録商標)信号線L7以外の機器を撤去する。そして、作業員は、モデム4bと旧制御用計算機3とを接続するRS232信号線L6を撤去し、RS232C信号線L6をモデム4bに接続する。この作業により、図6に示すように、旧制御用計算機3が新制御用計算機6に交換され、旧制御用計算機3から新制御用計算機6への更新作業が完了する。これにより、ステップS7の処理は完了し、一連のシステム更新処理は終了する。
【0019】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態であるソケット伝送変換方法を利用したシステム更新処理では、情報処理装置12が、モデム4bに接続された三叉コネクタ10を介してモデム4bと旧制御用計算機3との間を接続するRS232C信号線L2を伝達するベーシック通信情報を取得し、取得したベーシック通信情報をソケット通信情報に変換して新制御用計算機6に送信する。このようなシステム更新処理によれば、三叉コネクタ10を設置する時以外、更新前の制御システムに影響を与えることがないので、システム更新処理の際に更新前の制御システム1に悪影響が及ぶことを抑制できる。また、更新終了後には、信頼性が高い市販のプロトコル変換器14が制御システム1内に残るだけであるので、制御システム1の信頼性を低下させることがない。従って、本発明の一実施形態であるソケット伝送変換方法を利用したシステム更新処理によれば、更新前の制御システムに悪影響を及ぼすことなく、且つ、制御システムの信頼性を低下させることなく、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機3を、イーサネット(登録商標)を利用したソケット通信を行う新制御用計算機6に更新することができる。
【0020】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明は限定されることはない。例えば、本実施形態では、モデムを使った通信がベーシック通信によって行われていたが、本発明は本実施形態に限定されることはなく、モデムを使った通信がHDLC(High-level Data Link Control)通信や無手順通信等のベーシック通信以外の通信であってもよい。また、本実施形態では、プロトコルアナライザ11と情報処理装置12とを別体によって構成したが、プロトコルアナライザ11と情報処理装置12を一体によって構成してもよい。このように、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0021】
1 制御システム
2 上位/下位計算機
3 旧制御用計算機
4a,4b モデム
5 電気通信回線
6 新制御用計算機
10 三叉コネクタ
11 プロトコルアナライザ
12 情報処理装置
13,14 プロトコルコンバータ
L1,L2,L3 RS232C信号線
L4,L5,L7 イーサネット(登録商標)信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御システムを構成する制御用計算機のうち、モデムを利用した通信を行う旧制御用計算機を、イーサネットを利用したソケット通信を行う新制御用計算機に更新するためのソケット伝送変換方法であって、
情報処理装置が、前記モデムと前記旧制御用計算機との間の通信経路に配設された三叉コネクタを介して該通信経路を伝達する通信情報を取得し、取得した通信情報をソケット通信情報に変換して前記新制御用計算機に送信するステップ
を含むことを特徴とするソケット伝送変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−175343(P2012−175343A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34653(P2011−34653)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】