説明

ソレノイド

【課題】コンタミの影響を抑えるソレノイドを提供する。
【解決手段】母機を駆動するソレノイド1であって、シャフト5を貫通させるベース2と、このベース2に対してシャフト5を摺動可能に支持する軸受7と、この軸受7より母機側に画成される軸受前室73と、ベース2を貫通して母機側と軸受前室73とを連通するベース貫通路62とを備え、シャフト5の移動に伴って作動油がベース貫通路62を通って母機側と軸受前室73との間を移動する構成とし、シャフト5はベース貫通路62を貫通するシャフトベース貫通部51を軸受7によって支持されるシャフト支持部53より細く形成する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに発生する磁界によってシャフトを軸方向に移動させるソレノイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば油圧機器等の母機に取り付けられるソレノイドの場合、母機からソレノイドに導かれる作動油は、母機内に発生する摩耗粉等からなるコンタミが含まれる。このコンタミがソレノイドの強磁界部に堆積すると、ソレノイド推力が弱まったり、シャフト移動時の摺動抵抗が増え、ソレノイドの作動不良を来す可能性がある。
【0003】
特許文献1、2に開示されたソレノイドは、いずれも、磁気回路を構成するベースとスリーブとの間にプランジャを摺動可能に設け、コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動し、プランジャに結合されたシャフトを軸方向に移動させ、弁体を駆動するものである。
【0004】
特許文献1に開示されたソレノイドは、シャフトを摺動可能に嵌合させる環状の部材(コンタミブロック71)を設け、母機から流入する作動油を環状の部材(コンタミブロック71)によってせき止めて外部に逃がし、プランジャ収容室にコンタミを含む作動油が流入しないように構成されている。
【0005】
特許文献2に開示されたソレノイドは、シャフトを摺動可能に嵌合させる環状のフィルタ(リングフィルタ11)を設けるとともに、このフィルタの近傍にコンタミを溜める室(コンタミ溜まり12)を設け、母機から流入する作動油のコンタミがプランジャ収容室に侵入しないように構成されている。
【特許文献1】特開2006−64076号公報
【特許文献2】特開平11−31617号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のソレノイドにあっては、ソレノイド推力によってシャフトが往復動するのに伴って、シャフトが移動する体積分の作動油が母機側とソレノイドの間を移動するため、ソレノイド内に侵入するコンタミを十分に抑えることが難しいという問題点があった。
【0007】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、コンタミの影響を抑えるソレノイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動し、このプランジャに結合されたシャフトを軸方向に移動させ、母機を駆動するソレノイドであって、シャフトを貫通させるベースと、このベースに対してシャフトを摺動可能に支持する軸受と、この軸受より母機側に画成される軸受前室と、ベースを貫通して母機側と軸受前室とを連通するベース貫通路とを備え、シャフトの移動に伴って作動油がベース貫通路を通って母機側と軸受前室との間を移動する構成とし、シャフトはベース貫通路を貫通するシャフトベース貫通部を軸受によって支持されるシャフト支持部より細く形成する構成とした。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、ベースに対するシャフトの移動体積が削減されることによって、シャフトが往復動する際にベース貫通路を通って母機側と軸受前室の間で移動する作動油の流量が低減される。これにより、作動油のコンタミがソレノイド内に侵入することを抑えられ、コンタミに起因するソレノイドの作動不良を防止し、ソレノイドが安定作動する可動時間を延長できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。図1はソレノイド1の正面図であり、図2は図1のA−O−A線に沿う断面図である。
【0011】
ソレノイド1は、コイル12に発生する磁界によってプランジャ4を駆動し、このプランジャ4に結合されたシャフト5を軸方向に移動させる電磁アクチュエータである。
【0012】
ソレノイド1は、図示しない油圧機器の母機に取り付けられる。シャフト5の前端部59は、母機に備えられる油圧バルブに連携し、この油圧バルブを開閉駆動する。
【0013】
なお、これに限らず、ソレノイド1は、空圧機器や他の機械、設備に設けられ、空圧バルブや他の可動部を駆動してもよい。
【0014】
ソレノイド1は、その構成部品として、ケース9、ベース2、スリーブ3、プランジャ4、シャフト5、ギャップ埋設体6、第一、第二軸受7,8、対のOリング19、コイルアッシ10等を備える。
【0015】
コイルアッシ10は、両端に鍔部を有する円筒状のボビン11と、このボビン11にマグネットワイヤが巻回して形成されるコイル12と、このコイル12のマグネットワイヤの両端部に結合される対のターミナル13と、コイル12を包囲するモールド樹脂14とを備える。
【0016】
モールド樹脂14は、ボビン11及びコイル12が収まる円筒状の抱囲部16と、この抱囲部16の一端から突出しターミナル13が臨むコネクタ部15を有する。このコネクタ部15に図示しない相手コネクタが差し込まれる。この相手コネクタを介してコイル12が通電されると、コイル12のまわりに磁界が発生する。これに限らず、リード線を介してコイル12が通電される構成としてもよい。
【0017】
コイル12の磁束を導く磁路構成部材として、ケース9、ベース2、プランジャ4、スリーブ3を備え、これらがそれぞれ磁性材によって形成される。
【0018】
ケース9は、有底円筒状に形成され、その開口端部から突出する対のフランジ部91を有する。各フランジ部91にはボルト穴98が開口し、各ボルト穴98を挿通する図示しない2本のボルトによって母機の取付座に締結される。
【0019】
ケース9の内側にコイルアッシ10が収容される。ケース9の側面に開口する切り欠き部97が形成され、この切り欠き部97からコネクタ部15が突出する。
【0020】
図1、2において、Oはシャフト5の中心線である。図1において、各フランジ部91は中心線Oに直交するように左右方向に突出し、コネクタ部15は中心線Oに直交するように上方向に突出している。
【0021】
これに限らず、フランジ部91、コネクタ部15が突出する方向は、ソレノイド1が取り付けられる相手側の形状に対応して任意に配置される。例えば、コネクタ部15を中心線O方向に突出させ、相手コネクタが中心線O方向に挿抜されるようにしてもよい。
【0022】
円筒状のベース2及びスリーブ3は、ケース9の内側に並んで中心線Oと同軸上に配置され、それぞれの内側にシャフト5及びプランジャ4が挿通される。ベース2はケース9の開口端側に配置され、スリーブ3はケース9の奥側に配置される。
【0023】
スリーブ3は、その外周面31がボビン11の内周面に嵌合し、その端面32がケース9の底面93に当接し、シャフト5の中心線Oと同軸上に配置される。
【0024】
ベース2は、その外周面30がボビン11の内周面に嵌合し、シャフト5の中心線Oと同軸上に配置される。
【0025】
ベース2の一端に円盤状のベース鍔部21が形成され、このベース鍔部21がケース9の開口端部に結合される。これによっても、ケース9は、シャフト5の中心線Oと同軸上に配置される。
【0026】
ケース9の開口端部には環状段部92が形成される。この環状段部92は、中心線Oに直交する平面状に形成され、ベース2に対する座面を構成する。ベース鍔部21の端面22がケース9の環状段部92に当接し、ベース鍔部21の外周面23がケース9の内周面94に嵌合する。
【0027】
ベース鍔部21の外周面には環状段部24が形成される。ケース9の開口端部にカシメ部95が形成され、このカシメ部95が環状段部24に係合することによって、ベース2の抜け止めが行われる。
【0028】
ケース9がボルトによって母機の取付座に締結されることにより、ケース9の端面96は、図示しない相手側母機の取付座に当接する。
【0029】
シャフト5は、非磁性材からなり、スリーブ3及びベース2を貫通する。
【0030】
円柱状のシャフト5は、小径の前端側のシャフトベース貫通部51と、大径の後端側のシャフト支持部53とを有する。
【0031】
シャフト支持部53は、第一、第二軸受7,8を介して中心線O方向に摺動可能に支持される。円筒状のプランジャ4は、第一、第二軸受7,8の間に配置される。プランジャ4は、シャフト支持部53の外周面54に嵌合し、溶接またはカシメ等によって結合される。スリーブ3は、その内周に小径のスリーブ内周面33と大径のスリーブ内周面34とを有する。
【0032】
小径のスリーブ内周面33に軸受8の外周面81が嵌合して取り付けられる。
【0033】
大径のスリーブ内周面34とプランジャ外周面41と間に環状の間隙55が形成される。
【0034】
ベース2は、シャフト5の中心線Oに対して傾斜する環状テーパ端面45を有する。一方、スリーブ3は、シャフト5の中心線Oに対して直交する環状端面35を有する。ベース2の環状テーパ端面45とシャフト5の環状端面35との間に環状の磁気ギャップが形成される。なお、環状端面35は中心線Oに対して直交させず、傾斜させてもよい。
【0035】
磁気ギャップに非磁性材からなるギャップ埋設体6が介装される。ベース2の環状テーパ端面45とスリーブ3の環状端面35との間にギャップ埋設体6を介装せず、空隙としてもよい。
【0036】
コイル12の内側に生じる磁束は、ケース9、ベース2、プランジャ4、スリーブ3によって導かれる。ベース2とスリーブ3との間を通る磁束は、磁気ギャップによって遮られるため、プランジャ4を経由して導かれ、ベース2からプランジャ4に向かう磁束が確保される。
【0037】
磁気ギャップの形状、位置は、任意に設定され、プランジャ4が中心線O方向に移動するストロークに応じたソレノイド推力が得られるように構成される。
【0038】
コイルアッシ10はそのボビン11の両端鍔部にOリング19がそれぞれ介装される。一方のOリング19がベース鍔部21に当接し、他方のOリング19がケース9の底面93に当接する。ベース2、コイルアッシ10(ボビン11)、ケース9は、プランジャ4及びシャフト5を収容する圧力容器を構成している。これによっても、母機からソレノイド1内に流入する作動油がソレノイド1の外部に洩れ出すことを防止する。
【0039】
ソレノイド1は、シャフト5、プランジャ4のまわりに、軸受前室73、プランジャ前室74、プランジャ背後室75、軸受背後室76が設けられ、これらに母機からの作動油が導かれる。
【0040】
プランジャ前室74とプランジャ背後室75との間にプランジャ4が介在する。スリーブ3とプランジャ4の磁気吸着を防止するため、プランジャ外周面41のまわりに環状の間隙55を画成する。この環状の間隙55が、プランジャ前室74とプランジャ背後室75とを連通するプランジャ外周路63を構成する。
【0041】
プランジャ外周路63として、プランジャ外周面41には複数の溝42が形成される。作動油は、これらの溝42を通ってプランジャ前室74とプランジャ背後室75との間を流れるように構成される。
【0042】
複数の溝42によってプランジャ外周路63を画成することにより、間隙55のクリアランスを小さくすることが可能になる。間隙55のクリアランスを小さくすることによって、プランジャ4を駆動する磁気効率を高めれられる。
【0043】
プランジャ外周路63の流路断面積が十分に確保されることにより、プランジャ4が移動する際にプランジャ4まわりにおける作動油の流動を促進し、プランジャ4に付与される作動油の粘性抵抗を小さくし、ソレノイド1の作動応答性を高められる。プランジャ4が高速で移動することにより、プランジャ外周面41に堆積したコンタミが払い落とされる。
【0044】
軸受背後室76は、軸受8の背後に設けられ、軸受8とケース9の底面93との間に画成される。
【0045】
プランジャ背後室75は、プランジャ4の端面48と軸受8との間に画成される。プランジャ背後室75と軸受背後室76との間に軸受8が介在する。軸受8の外周面81には複数の溝82が形成される。これらの溝82によっては、プランジャ背後室75と軸受背後室76とを連通する軸受貫通路64を構成する。
【0046】
プランジャ前室74は、軸受7とプランジャ前端面47の間に画成される。軸受前室73とプランジャ前室74との間に軸受7が介在する。軸受7の外周面71には複数の溝72が形成される。これらの溝72によって軸受前室73とプランジャ前室74とを連通する軸受貫通路68が構成される。
【0047】
軸受前室73は、軸受7の手前に設けられ、ベース2と軸受7との間に画成される。軸受前室73は、シャフト5とベース2の間に画成される間隙56と環状凹部35を介して母機側に連通し、母機からの作動油が導かれる。この間隙56が母機側と軸受前室73とを連通するベース貫通路62を構成する。
【0048】
ベース2は、その内周に径の異なる第一〜第五ベース内周面25〜29を有する。
【0049】
径が最も大きい第五ベース内周面29とプランジャ外周面41と間に環状の間隙55が形成される。
【0050】
第四ベース内周面28は、第五ベース内周面29より前端側に位置する。ベース2には第四ベース内周面28と第五ベース内周面29の間に環状段部46が形成される。この環状段部46はシャフト5の中心線Oと直交する平面状に形成され、プランジャ前端面47に平行に対峙する。
【0051】
第三ベース内周面27は、第四ベース内周面28より前端側に位置する。第三ベース内周面27に軸受7の外周面71が嵌合して取り付けられる。
【0052】
第二ベース内周面26は、第三ベース内周面27より前端側に位置する。径が最も小さい第二ベース内周面26は、シャフト5の外周面52との間に間隙56を画成する。
【0053】
第一ベース内周面25は、第二ベース内周面26より前端側に位置する。第一ベース内周面25は、シャフト5の外周面52との間に環状の環状凹部35を画成し、この環状凹部35がベース2の前端面49に開口する。環状凹部35は、母機側に連通し、母機からの作動油が導かれる。
【0054】
環状凹部35には濾過材からなるフィルタ36が介装される。このフィルタ36は、その中心部に内周穴37を有する円筒状に形成され、この内周穴37にシャフト5のシャフトベース貫通部51を摺動可能に挿通させる。
【0055】
こうして軸受貫通路68に介装されるフィルタ36は、母機から導かれる作動油を濾過し、作動油中に含まれるコンタミをソレノイド1内に侵入させないようにする。
【0056】
フィルタ36の内周穴37にはダストシール38が介装される。このダストシール38にシャフトベース貫通部51を摺動可能に挿通させる。このダストシール38は、内周穴37のベース2の前端面49に対する開口端に結合される。
【0057】
ダストシール38は、シャフトベース貫通部51の外周面52に摺接するリップ部(図示せず)を有し、このリップ部がシャフトベース貫通部51の外周面52に付着したコンタミを掻き落とし、コンタミをソレノイド1内に侵入させないようにする。
【0058】
円柱状のシャフト5は、小径のシャフトベース貫通部51と大径のシャフト支持部53との間に段部58を有する。この段部58が軸受7より前方に位置するように形成され、シャフト支持部53が軸受7と軸受8に摺動可能に支持される。
【0059】
シャフト支持部53の直径D53は、プランジャ4を支持する剛性が十分に確保されるように設定される。
【0060】
一方、シャフトベース貫通部51は、ベース貫通路62を貫通し、その前端部59がベース2の前端面49に突出している。シャフトベース貫通部51の前端部59が母機に備えられる油圧バルブに連携し、シャフト5がソレノイド推力によって往復動することによって母機の油圧バルブを開閉駆動する。
【0061】
シャフトベース貫通部51の直径D51は、母機の油圧バルブを開閉駆動する剛性が十分に確保される範囲内で最小限に設定される。これにより、シャフト5がソレノイド推力によって往復動する際に、母機側とソレノイド1内の軸受前室73と間で移動する作動油の流量が最小限に抑えられる。
【0062】
以上のように構成される本発明の実施の形態につき、次に作用を説明する。
【0063】
ソレノイド1が母機に組み付けられ、母機の油圧回路(図示せず)に作動油が充填されると、母機からの作動油が以下の経路を通ってソレノイド1内に充填される。
【0064】
・母機からの作動油は、フィルタ36によって濾過され、ベース貫通路62(間隙56)を通って軸受前室73に充填される。
【0065】
・軸受前室73の作動油は、軸受貫通路68(溝72)を通ってプランジャ前室74に充填される。
【0066】
・プランジャ前室74の作動油は、(間隙55、溝42)を通ってプランジャ背後室75に充填される。
【0067】
・プランジャ背後室75の作動油は、軸受貫通路64(溝82)を通って軸受背後室76に充填される。
【0068】
コイル12に通電されてシャフト5が前方(図2の左方向)に移動するとき、シャフトベース貫通部51が前方に移動することにより、シャフトベース貫通部51が軸受前室73から退出する体積分の作動油が、母機→フィルタ36→ベース貫通路62→軸受前室73に流入する。
【0069】
このとき、シャフト支持部53が前方に移動することにより、シャフト支持部53が軸受背後室76から退出する体積分の作動油が、軸受前室73→軸受貫通路68→プランジャ前室74→プランジャ外周路63→プランジャ背後室75→軸受貫通路64を通って軸受背後室76に流入する。
【0070】
さらに、プランジャ4が前方に移動することにより、プランジャ4の移動体積分の作動油が、収縮するプランジャ前室74からプランジャ外周路63を通って拡張するプランジャ背後室75に流入する。
【0071】
コイル12の通電が止められると、シャフト5は、母機の油圧バルブから受ける反力によって後方(図2の右方向)に移動し、母機の油圧バルブを開閉駆動する。
【0072】
シャフト5が後方に移動するとき、シャフトベース貫通部51が後方に移動することにより、シャフトベース貫通部51が軸受前室73に進入する体積分の作動油が、軸受前室73→ベース貫通路62→フィルタ36→母機へと流出する。
【0073】
このとき、シャフト支持部53が後方に移動することにより、シャフト支持部53が軸受背後室76に進入する体積分の作動油が、軸受背後室76→軸受貫通路64→プランジャ背後室75→プランジャ外周路63→プランジャ前室74→軸受貫通路68を通って軸受前室73に流入する。
【0074】
さらに、プランジャ4が後方に移動することにより、プランジャ4の移動体積分の作動油が、収縮するプランジャ背後室75からプランジャ外周路63を通って拡張するプランジャ前室74に流入する。
【0075】
ところで、母機からソレノイド1に導かれる作動油は、母機内に発生する摩耗粉等からなるコンタミが含まれる。このコンタミのうち磁性を有する鉄粉等は、ソレノイド1のプランジャ前室74、プランジャ背後室75に入ると、ベース2とプランジャ4の端部との間にて磁束が集中する強磁界部Bに集まる。多くのコンタミが強磁界部Bを構成する磁性材(ベース2、プランジャ4)の表面に付着し、堆積すると、以下の不具合が生じる。
【0076】
・磁束が集中する強磁界部Bの磁束密度が変化して、ソレノイド1の特性が変化する。
【0077】
・プランジャ4の摺動抵抗が増えたり、プランジャ4が摺動するストローク範囲が狭まる。
【0078】
これに対処して、シャフト5がベース貫通路62を貫通するシャフトベース貫通部51を、軸受7によって支持されるシャフト支持部53より細く形成したため、シャフト5の移動体積が削減されることによってベース貫通路62を通って母機側と軸受前室73の間で移動する作動油の流量が低減される。これにより、作動油のコンタミがソレノイド1内に侵入することを抑えられ、作動油のコンタミに起因するソレノイド1の作動不良を防止し、ソレノイド1が安定作動する可動時間を延長できる。
【0079】
一方、シャフトベース貫通部51は、ベース貫通路62を貫通し、その前端部59がベース2の前端面49に突出している。シャフトベース貫通部51の前端部59が母機に備えられる油圧バルブに連携し、シャフト5がソレノイド推力によって往復動することによって母機の油圧バルブを開閉駆動する。
【0080】
シャフトベース貫通部51の直径D51は、母機の油圧バルブを開閉駆動する剛性が十分に確保される範囲内で最小限に設定される。これにより、シャフト5がソレノイド推力によって往復動する際に、母機側とソレノイド1内の軸受前室73と間で移動する作動油の流量が最小限に抑えられる。
【0081】
軸受貫通路68に介装されるフィルタ36は、母機から導かれる作動油を濾過し、作動油中に含まれるコンタミをソレノイド1内に侵入させないようにする。
【0082】
フィルタ36の内周穴37に介装されるダストシール38は、シャフトベース貫通部51の外周面52に摺接し、シャフトベース貫通部51の外周面52に付着したコンタミを掻き落とし、コンタミをソレノイド1内に侵入させないようにする。
【0083】
以上のとおり、本実施の形態では、コイル12に発生する磁界によってプランジャ4を駆動し、このプランジャ4に結合されたシャフト5を軸方向に移動させ、母機を駆動するソレノイド1であって、シャフト5を貫通させるベース2と、このベース2に対してシャフト5を摺動可能に支持する軸受7と、この軸受7より母機側に画成される軸受前室73と、ベース2を貫通して母機側と軸受前室73とを連通するベース貫通路62とを備え、シャフト5の移動に伴って作動油がベース貫通路62を通って母機側と軸受前室73との間を移動する構成とし、シャフト5はベース貫通路62を貫通するシャフトベース貫通部51を軸受7によって支持されるシャフト支持部53より細く形成する構成とした。
【0084】
上記構成に基づき、ベース2に対するシャフト5の移動体積が削減されることによって、シャフト5が往復動する際にベース貫通路62を通って母機側と軸受前室73の間で移動する作動油の流量が低減される。これにより、作動油のコンタミがソレノイド1内に侵入することを抑えられ、コンタミに起因するソレノイド1の作動不良を防止し、ソレノイド1が安定作動する可動時間を延長できる。
【0085】
本実施の形態では、軸受貫通路68に作動油を濾過するフィルタ36を介装する構成とした。
【0086】
上記構成に基づき、母機からソレノイド1内に流入する作動油がフィルタ36によって濾過されることにより、作動油のコンタミがソレノイド1内に侵入することを抑えられ、コンタミに起因するソレノイド1の作動不良を防止し、ソレノイド1が安定作動する可動時間を延長できる。
【0087】
本実施の形態では、フィルタ36の内側にシャフト5に摺接するダストシール38を介装する構成とした。
【0088】
上記構成に基づき、フィルタ36の内側にてシャフト5の外周面52に付着したコンタミがダストシール38によって掻き落とされることにより、コンタミがフィルタ36の内側を通ってソレノイド1内に侵入することを抑えられ、コンタミに起因するソレノイド1の作動不良を防止し、ソレノイド1が安定作動する可動時間を延長できる。
【0089】
次に図3に示す他の実施の形態を説明する。これは基本的には図1〜3の実施の形態と同じ構成を有し、相違する部分のみ説明する。なお、前記実施の形態と同一構成部には同一符号を付す。
【0090】
シャフト5は、シャフトベース貫通部51とシャフト支持部53が別体で形成された後に結合される構成とする。
【0091】
シャフトベース貫通部51とシャフト支持部53とは、ネジによる締結によって結合される。なお、これに限らず、両者を圧入等によって結合してもよい。
【0092】
この場合、シャフト支持部53に結合されるシャフトベース貫通部51の寸法、形状を変更することにより、ソレノイド1の基本構造を変更することなく、母機側に設けられる油圧バルブ等の仕様に対応することができる。
【0093】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のソレノイドは、油圧機器、空圧機器、他の機械、設備に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の実施の形態を示すソレノイドの正面図。
【図2】同じく図1のA−O−A線に沿うソレノイドの断面図。
【図3】他の実施の形態を示すソレノイドの断面図。
【符号の説明】
【0096】
1 ソレノイド
2 ベース
3 スリーブ
4 プランジャ
5 シャフト
7 軸受
8 軸受
9 ケース
12 コイル
36 フィルタ
38 ダストシール
51 シャフトベース貫通部
52 外周面
53 シャフト支持部
62 ベース貫通路
73 軸受前室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルに発生する磁界によってプランジャを駆動し、
このプランジャに結合されたシャフトを軸方向に移動させ、
母機を駆動するソレノイドであって、
前記シャフトを貫通させるベースと、
このベースに対して前記シャフトを摺動可能に支持する軸受と、
この軸受より前記母機側に画成される軸受前室と、
前記ベースを貫通して前記母機側と前記軸受前室とを連通するベース貫通路とを備え、
前記シャフトの移動に伴って作動油が前記ベース貫通路を通って前記母機側と前記軸受前室との間を移動する構成とし、
前記シャフトは前記ベース貫通路を貫通するシャフトベース貫通部を前記軸受によって支持されるシャフト支持部より細く形成したことを特徴とするソレノイド。
【請求項2】
前記軸受貫通路に作動油を濾過するフィルタを介装したことを特徴とする請求項1に記載のソレノイド。
【請求項3】
前記フィルタの内側に前記シャフトに摺接するダストシールを介装したことを特徴とする請求項2に記載のソレノイド。
【請求項4】
前記シャフトは、前記シャフトベース貫通部と前記シャフト支持部が互いに別体で形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載のソレノイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−135469(P2010−135469A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308337(P2008−308337)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】