説明

ソーラールーフィングアセンブリ

ソーラールーフィングアセンブリ(1)は、正面構造(30)と背面構造(31)を有する少なくとも一つの光起電力デバイス(3)と、正面構造(40)と背面構造(41)を有し温水を供給できる少なくとも一つのソーラーコレクター(4)を備える。光起電力デバイス(3)と温水ソーラーコレクター(4)のそれぞれの正面構造(30,40)はカバーを形成するガラス基板(20,22)から成り、カバーは外側環境に向き合うための上面(10)とその反対側で内面(11)を有し、光起電力デバイス(3)と温水ソーラーコレクター(4)のそれぞれの背面構造(31,41)はカバーの下に配置され、内面(11)に面する。ガラス基板(20,22)は金属枠を有せずに接合されるが、任意的に一様で統一的なガラスカバーを形成するように他のガラス基板(21)によって隔てられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽エネルギーを集めて電気エネルギーや熱エネルギーを供給できる装置を含むソーラールーフィングアセンブリ、例えば電気を生成する光起電力システムや温水を作るのに用いるソーラーコレクターなどを含むソーラールーフィングアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
何年も前から、家庭や商業施設で必要な電力及び/又は熱の消費量の一部を満たすための太陽エネルギーの利用に対する関心が経済的な理由によって高まっている。
【0003】
電力の必要を満たすために光電池を互いに直列に結合して光にさらされるとDC電流を発生する光起電力モジュールを屋根に設置することは公知である。
【0004】
一般に、光起電力モジュールは、光電池を組み込んだ光起電力パネルと、そのパネルを囲んでそれを支持する金属フレームから形成され、このフレームにはさらに配電ケーブルが組み込まれている。光起電力パネルは少なくともその正面、すなわち外側環境に向いている面にガラス基板が設けられる設計になっている。一例をあげると、パネルはその正面を構成するガラス基板と、その背面を構成するプラスチック膜又はガラス基板を含む。正面と背面の基板の間には、一つ以上のポリマー中間層と光起電力エレメントが挿入され、この光起電力エレメントは二つの金属電極の間にはさまれた半導体物質の層から成る。半導体物質は、例えば結晶シリコンに基づくもの、又は薄膜に基づくものである。
【0005】
温水という特定の要求、特に衛生用途、及び場合によって床又は壁暖房用途での温水の必要を満たすために、ソーラーコレクター(太陽熱集熱器)を屋根に設置することも公知である。具体的には、そのようなコレクターは、透明なカバー、例えばガラス基板、と吸熱体を含むモジュールという形をとる。吸熱体は、加熱される伝熱流体(単なる水など)がその中を流れるエレメントである。透明カバーは太陽放射を吸熱体へ透過させ、その中を流れる流体を加熱させ、好ましくは赤外放射を閉じこめて吸熱体の冷却を最小にする。さらに、吸熱体からの熱損失を防ぐために、モジュールの背後及びそのまわりに断熱材が配置されている。
【0006】
しかし、日照やいくつかの温度条件によっては、例えば冬季の条件では、これらのソーラーコレクターは十分な温水を供給することができない。したがって、水の産生をガス又は電気によって水を加熱する補助設備と組み合わせることが必要になる。しかし、それは結局、コレクターの購入費用と設置費用を考えると必ずしも経済的でない生産コストになる。
【0007】
さらに、太陽エネルギー資源を用いる他のシステム、例えば熱空気を供給するサーマルモジュール、が知られている。このために、米国特許出願US 2006/0118163は、屋根に光起電力モジュールだけでなく、熱空気モジュールも設置することを提案している。これらの熱空気モジュール又はコレクターは、太陽エネルギーを通過させる基板と、そのエネルギーによって加熱するように空気を閉じこめる領域を含む。これらのモジュールには熱空気を捕捉し、空気を閉じこめる領域に送り込んで加熱するための配管が結合されている。
【0008】
しかし、このようなサーマルモジュールを用いて熱空気を生産することはできるが、空気/水の熱交換器はかなり大きな熱交換面積を必要とし、家庭用の温水、特に衛生のための温水、に必要な温度を達成できないので、温水の生産という要求を満たすことはできない。
【0009】
これらの光起電力モジュールと熱空気及び/又は温水用ソーラーコレクターを屋根で組み合わせることも考えられる。しかし、現在の構成ではそれは住宅用としては相当大きな設備投資になる。実際には、持ち家居住者はその代わりに自分の家に高性能の断熱を施すことを選択し、オプションとしてそれを上述した熱エネルギー又は電気エネルギー供給方法の一方又は他方と組み合わせるが、それらの供給方法を組み合わせることはめったにない。
【0010】
さらに、これらの光起電力モジュールやソーラーコレクターは、ルーフィングと合体させてルーフィングから突出しないように取り付けることができるが、屋根の全面にわたって審美的に魅力あるユニットにはならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、温水を作るために少なくとも一つの光起電力装置と少なくとも一つのソーラーコレクターを組み込んだソーラールーフィングアセンブリを提供することであって、このルーフィングアセンブリは次のような利点を有する。
設備コストが低く、きわめて効率的なアセンブリ、ソーラーコレクターと他に類のないルーフィング形態によって、補助的な独立の加熱システムを必要とせずに、衛生用途に直接使用できる非常に高温の温水を供給でき、熱損失が最小で、魅力的な外観が保証される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明の一つの様態は、ソーラールーフィングアセンブリであって、正面構造と背面構造を有する少なくとも一つの光起電力デバイスと、正面構造と背面構造を有し温水を供給できる少なくとも一つの温水ソーラーコレクターと呼ばれるサーマルソーラーコレクターを備え、光起電力デバイスと温水ソーラーコレクターのそれぞれの正面構造は外側環境に向き合うための上面とその反対側の内面を有しカバーを形成するガラス基板から成り、光起電力デバイスと温水ソーラーコレクターのそれぞれの背面構造はカバーの下に位置して前記内面と向き合い、前記ガラス基板には金属フレームはなく、一緒に接合されて、任意的に移行基板と呼ばれる他のガラス基板によって隔てられて、一様で統一的なガラスカバーを形成していることを特徴とする。
【0013】
すなわち、このルーフィングアセンブリは電気と温水を産生できるいくつかのエネルギー回収システムを組み合わせたものである。
【0014】
さらに、光起電力デバイスとソーラーコレクターの正面構造は、形と外観が同様なガラス基板のおかげで、少なくとも光起電力デバイスとソーラーコレクターが合体する領域で、好ましくはルーフィングアセンブリの全面積にわたって、外観に何の差もない一様な表面の連続性を有するカバリング又はカバーとなる。
【0015】
このルーフィングアセンブリは、それらのエネルギー回収システムが統合される箇所で現在そうであるような高さや外観の不一致をもはや示さない。
【0016】
さらに、本発明によれば、ソーラールーフィングアセンブリの光起電力デバイスと温水ソーラーコレクターには金属フレームがなく、それによってソーラールーフィングアセンブリのエネルギー効率が改善される。これは、光起電力デバイスとソーラーコレクターを囲む金属フレームがソーラールーフィングアセンブリ内の空気の流れに対して、それが自然対流によるものであれ強制対流によるものであれ、停滞点(stoppage point)になるからである。金属フレームがないことによって、熱橋(サーマルブリッジ)を著しく減らすことができ、ルーフィングアセンブリ内の一様な熱交換が促進される。その結果、光起電力デバイスとソーラーコレクターの間の結合に何も不連続性がなくなる。
【0017】
最後に、ガラス基板から成るこのカバーはタイル又はスレートタイプの通常のカバーと同様で簡単に設置できる。ソーラーコレクターを固定することができるエキスパートが背面構造を取り付けるだけで良く、屋根職人が全体のカバーを別に構成する。
【0018】
好ましくは、屋根は棟を形成する斜面を有し、棟に近い上部と棟から遠い下部を含み、光起電力デバイスは下部に配置され、温水ソーラーコレクターは上部に配置される。
【0019】
光起電力デバイスと温水ソーラーコレクターが配置される領域のこの配分はアセンブリの効率を高めることを可能にする。
【0020】
効率を最適にするために、ルーフィングアセンブリはカバーの内面の下に表面と直角方向に二つの断熱バリアを含み、温水ソーラーコレクターの両側、例えば5cmのところにそれを配置して、光起電力デバイス(単数又は複数)の方へ延びている領域は開かれた形に残すようにすることが有利である。
【0021】
実際、ルーフィングアセンブリの下の空気が熱いことが有利であり、その熱は特にガラスのカバーを通過する太陽放射と光起電力デバイスの加熱によって供給される。したがって断熱バリアはその形態と光起電力デバイスがある領域から来る空気に対して障害にならないような配置によって、温水ソーラーコレクターのまわりの熱空気を閉じこめることを可能にして、熱損失を減らして非常に熱い温水を確保する。
【0022】
このバリアは温水ソーラーコレクターを超えて、特に10から50cmの間の距離まで延びていることが好ましい。温水ソーラーコレクターのこの前面領域は、この領域に入る空気とコレクターの縁の間に温度勾配ができるようにする。それがないと乱流が生じてこの領域の空気が冷却されることになる。
【0023】
有利な形では、ルーフィングアセンブリは、ルーフィングアセンブリの下を循環する気流に強制対流を生ずる強制対流手段を含む。この強制対流手段は、具体的には一つ以上の排気装置(air extractor)から成り、ルーフィングアセンブリの下を循環する気流を調節して、一方では光起電力デバイスの通気を確保して過熱されることを防ぎ、他方では温水ソーラーコレクターに熱空気を強制的に供給することができる。排気装置は、それが配置される領域及び/又は環境条件に応じて流量を選択的に調整できる。特に、排気装置のモータの回転速度を変えることによって調整することができ、速度制御装置でこの回転速度を自動的に制御することが可能である。
【0024】
特に、3つの排気装置がルーフィングアセンブリの下に配置され、好ましくは、二つの断熱バリアが温水ソーラーコレクターの近くに設けられている場合、それぞれ中心領域と呼ばれる温水ソーラーコレクターが配置されている領域、及び蒸気バリアの両側で隣接する領域に配置される。
【0025】
この場合、排気流量は、温水ソーラーコレクターの中心領域における空気の速度v2と、隣接する領域における空気の速度v1が異なる値をとり、比v2/v1が環境条件、季節又は時刻に応じて調整できると有利である。
【0026】
一日の始め、又は冷たい気候では、光起電力デバイスの下で0.1 m/sというオーダーの低い空気速度でそれを低い温度に維持するのに十分であり、システムは熱を温水ソーラーコレクターの領域に導くように構成される。具体的には次のような値が考えられる。
1は0から0.1 m/sの範囲内、v2は0.1から0.3 m/sの範囲内。
【0027】
日中又は夏季には、光起電力デバイスの下で空気速度を0.3 m/sより大きくすることが必要であり、v1>0.3 m/sという速度により、速度v2を調整して温水ソーラーコレクターの温度を制御できる。この温度が80℃より低い場合v1以下の速度v2を用いることができる。しかし、この温度が80℃を超える場合、v1より大きな速度v2を用いてそれが過熱されることを防ぐ。そうしないと装置が過熱によって損傷するおそれがある。
【0028】
このようないろいろな状況は温度センサを適当な場所に配置して調節制御装置によって制御される。
【0029】
上述のように、光起電力デバイスは移行領域によって温水ソーラーコレクターから隔てることができ、ルーフィングアセンブリはガラス基板を有し、それはこの領域では移行基板と呼ばれる。
【0030】
既存の光起電力デバイスの場合、一つのきわめて重大な欠点は温度上昇でその効率が著しく低下することである。移行領域は光起電力デバイス(単数又は複数)に通気して過熱しないようにするという利点があり、移行領域がない場合、温水ソーラーコレクター(単数又は複数)に近すぎると過熱されるであろう。
【0031】
この移行領域の機能は、速度v1とv2が非常に異なっているときでも、光起電力デバイス又はモジュールの下の空気の速度が一様にとどまるようにするということである。移行領域は、屋根の構造形態:傾斜、ルーフィングアセンブリの下の空気層の厚さ、取り付けシステム、によるが、最小の長さが10から50 cmの範囲内である。この値が大きく領域が広い方が、一方においてv1とv2の間の速度と、他方において光起電力デバイスの下の空気の速度を無関係にするために好ましい。実際には、この領域の寸法はルーフィングアセンブリのうち光起電力デバイスの基板と温水ソーラーコレクターの基板で覆われていない部分に対応する。
【0032】
ルーフィングアセンブリで気流を強制対流させている場合、この移行領域を用いて補助的なエネルギー回収システム、すなわち熱空気を生成する熱空気サーマルコレクターを含めると有利である。この熱空気サーマルコレクターの正面構造はガラス基板で構成され、カバーの下の背面構造は光エネルギーを反射するエレメントを含む。
【0033】
有利な形では、光起電力デバイス(単数又は複数)、温水ソーラーコレクター(単数又は複数)、及び熱空気サーマルコレクター(単数又は複数)、がそれぞれルーフィングアセンブリの3分の1にわたって広がっている。
【0034】
別の特徴では、各光起電力デバイスの背面構造は、正面構造と接合された少なくとも一つの支持基板を含み、光電池が正面構造とこの背面構造の支持基板(単数又は複数)の間に配置される。
【0035】
さらに別の特徴では、各温水ソーラーコレクターの背面構造は、上記コレクターの正面構造から距離h2に配置された吸熱体と、吸熱体の下に、カバーと反対側に、並置された形又は吸熱体から距離h1に配置された断熱材を含み、h1はh2より小さく、h1とh2は量h1+h2が10と100 mmの範囲内、特に30と50 mmの範囲内であるようなものである。
【0036】
各光起電力デバイス及び各温水ソーラーコレクターのガラス基板は、焼き戻された一枚板から、又は積層されたガラスから形成される。変形として、光起電力デバイスの場合を除き、複層ガラス(double glazing)基板であってもよい。
【0037】
各光起電力デバイス及び各温水ソーラーコレクターのガラス基板、及びガラス基板は、フックなどの固定手段によって一緒に固定される。
【0038】
各光起電力デバイス及び各温水ソーラーコレクターのガラス基板、及び任意のガラス基板は、反射防止タイプ及び/又は低放射率タイプの機能性コーティングを含む。
【0039】
ルーフィングアセンブリが枠に載せられ、それに温水ソーラーコレクターの背面構造、及びオプションとして熱空気サーマルコレクターの背面構造(その正面構造は移行基板から成る)が接合される。
【0040】
有利な形では、枠は断熱手段を含み、それはカバー内面に向けて配置された熱反射フィルムを含む。この熱反射フィルムは温水及び熱空気コレクターの吸熱体の断熱となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
次に本発明を純粋に説明のための例を用いて添付図面と併せて説明するが、これはいかなる意味でも本発明の範囲を制限するものではない、
【図1】は、本発明に係わるルーフィングアセンブリを枠に接合した形で示す斜視図である。
【図2a】図1の部分断面図であり、ルーフィングアセンブリのカバーを組み立てる一つの実施形態を示す。
【図2b】図1の部分断面図であり、ルーフィングアセンブリのカバーを組み立てる他の一つの実施形態を示す。
【図3】図1のルーフィングアセンブリの概略上面図である。
【図4】図3の線C−Cに沿った断面での側面図である。
【図5】図1の断面上面図である。
【図6】図3の線B−Bに沿った断面での部分側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明に係わるソーラールーフィングアセンブリ(ルーフィングアセンブリ)1を住宅(図示せず)の枠1Aに取り付けて示す。“枠”という用語は、ルーフィングアセンブリを支持して固定するのを助ける何らかの手段を意味するものと理解される。ルーフィングアセンブリ1は、たいていのルーフィングアセンブリのように、棟を定める斜面を有する。
【0043】
ルーフィングアセンブリ1は、複数の平坦なガラス基板20,21,22を一緒に接合して統一的な連続した表面という外観を与えるように形成されたカバー2を有する。カバー2は外側環境に面して光エネルギーを受け入れるための上面10と、その反対側で枠1Aに面する内面11を有する。
【0044】
一つの変形では、ガラス基板20から22まではカバーの一部に過ぎず、残りは多分通常の被覆手段、例えばタイル又はスレートから成る。しかし、ガラス基板は他の被覆手段と同一平面になるように統合されて、実質的に平坦表面のカバリングが構成されることになる。
【0045】
熱橋(thermal bridge)を避けるためにガラス基板20から22までは金属のフレームを有しない。
【0046】
ガラス基板は、焼き戻された一枚板のガラス、又は例えばガラスシート、ポリマー中間層、そしてもう一つのガラスシートから成る積層ガラス、から作られる。光起電力デバイスの場合は別として、断熱グレージング積層体を考えることもできる。ガラス基板の構成は、具体的にその基板の用途に応じて、光起電力デバイスのため(基板20)、温水コレクターのため(基板21)及び単なる移行カバー又は熱空気コレクターのため(基板22)という用途に応じて選ばれる。
【0047】
図2aは、好ましい実施形態を示し、ガラス基板がタイルやスレートのような形で互いに重なるように配置されている。それらは、図2aに示されているフックなどの固定手段23によって一緒に接合されている。例えばSolarwood社によって販売されている光起電力デバイス用ガラスタイルを固定する方法などがあげられる。
【0048】
本発明によれば、ルーフィングアセンブリは空気の供給を、特に光起電力デバイスを冷却するために必要とする。このような基板のアセンブリが封止されていないときは、重なっている領域のタイルの間に入る空気が直接利用される。
【0049】
図2bに示された実施形態では、基板はフック以外の固定手段(図示せず)によって接合され、その接合箇所に気密なシール24を有する。空気の供給を送達するために、空気の取り込み口を設けることが必要になるが、それは棟の反対側の自由端にある樋に設けることが好ましい。
【0050】
また、別の固定方式の組み合わせを考えて、基板を封止手段なしで又は封止手段と共に接合することも可能である。いずれの場合も、一つ以上の外部からの空気取り込み口を、封止手段がない場合は基板の間に、及び/又は、好ましくはルーフィングアセンブリの底部に配置される一つ以上の特定の空気取り込み口を設けることが必要である。
【0051】
ガラス基板20から22までは、機能的な層、例えば反射損失を最小にするため及び/又は太陽放射の貫通を最大にするための反射防止コーティングを含むことが有利である。熱空気コレクターに関連した用途では、反射防止コーティングを基板(移行基板、移行ガラス基板)21の二つの対向する面に配置することが好ましい。
【0052】
同様に、基板を通過した赤外線を反射させることによって熱損失を防ぎ、この赤外線をルーフィングアセンブリの下に閉じこめるために低放射率コーティングを施すこともできる。低放射率コーティングは、外側環境に向いている面と反対側の面に施され、反射防止コーティングを置き換えることができる。
【0053】
最後に、ガラス基板20から22までは、外側環境に向いている面と反対側の面に、カバー2全体の統一的な外観をより魅力的にし、場合によってはカバーの内面11の下に置かれたいくつかのエレメントをマスクするために黒いフレームをスクリーン印刷することができる。
【0054】
図3に斜線領域によって概略的に示されているように、ソーラールーフィングアセンブリ1は少なくとも一つの光起電力デバイス3と、少なくとも一つの温水を供給できる温水ソーラーコレクター(サーマルソーラーコレクター)4を含む。
【0055】
有利な形として、ルーフィングアセンブリが斜面を有する場合、本発明は、温水ソーラーコレクター(単数又は複数)を温度が高いルーフィングアセンブリの棟12に近い上部1Bに配置し、光起電力デバイス3を下部1Cに配置してその効率を低下させることになる過熱を最小にするように定めている。
【0056】
光起電力デバイス(単数又は複数)3と温水ソーラーコレクター(単数又は複数)4は、隣接してもよく、又は、好ましくは図3に示されているように移行領域1Dで隔てられてもよい。
【0057】
各温水ソーラーコレクター4はできるだけ棟12に近く配置されるが、しかしコレクターが棟と接触するような場合は、熱伝導損失をなくすためにルーフィングアセンブリの縁からはある距離だけ離して配置される――このためには数センチの距離で十分である。
【0058】
図4に示されているように、各光起電力デバイス3は正面構造30と背面構造31を有する。
【0059】
光起電力デバイスを製造する方法によっていくつかの形態が考えられる。
【0060】
正面構造30はガラスカバー基板20を含み、背面構造31は公知のタイプの光電池から成り、それはガラスやその他の材料で作られる支持基板に製造時にデポジットされた半導体物質をベースとしている。光電池がガラスにカプセル封入されていることもある。背面構造31は、その後現場でガラス基板20に取り付けられる。
【0061】
ある変形では、正面構造30はガラス基板20と薄膜光電池から成り、透明な背面構造31は、好ましくはガラスで作られ、正面構造に押しつけて、特にルーフィングアセンブリの設置のさい、配置される。
【0062】
さらに別の変形では、正面構造30と背面構造31は、製造時に、光電池を含む一体のアセンブリを成す。
【0063】
いくつかの基板20が構造30を構成し、背面構造31はそのいくつかの基板20の下に延びてそれらと接合された単一の面から成り、光電池が正面構造と背面構造の間に統合され、好ましくは製造時には背面構造に固定されることも考えられる。
【0064】
各温水ソーラーコレクター4は、図4に示されるように、一つ以上のカバーガラス基板22によって構成される正面構造40,及び吸熱体42と断熱材43を含む背面構造41、を備える。いくつかの吸熱体を用いる場合はいくつかの温水ソーラーコレクターがあり得る。
【0065】
吸熱体42は伝熱流体が流れるエレメントを含む。このエレメントは、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・モノマー)、又はXHDPE(架橋高密度ポリエチレン)などのプラスチックを吸着層でコーティングして作られ、好ましくは黒い色である。ある変形では、このエレメントは銅を、太陽放射を吸収するホイル、それ自身銅又はアルミニウムで作られるホイル、にはんだ付けし、吸収層をコーティングして作られ、色は黒である。
【0066】
吸熱体42は、吸熱体の上に空気層44を創りだすようにガラス正面構造40から距離h2に配置される。
【0067】
吸熱体は、枠からつり下げるか又は枠に載置される形で枠によって支持される。
【0068】
熱損失を制限するための断熱材43は、吸熱体の正面構造(図示せず)に向いている側と反対側で吸熱体に接触させて配置してもよい。しかし、断熱材43は、好ましくは図4に示されているように吸熱体42から距離h1のところに配置して、吸熱体の下で気流が循環するための領域45を作りだし、熱空気と吸熱体の間の熱交換のための面積を二倍にする。
【0069】
吸熱体はガラスの正面構造40にきわめて近くなければならない。流体の加熱は主に太陽放射を吸収してホイルがヒートアップされることで起こるからである。しかし、高さh2の空気層44の存在により、太陽光が少ないときでも、この領域を循環する熱空気との熱交換によって吸熱体を加熱することが可能である。
【0070】
吸熱体の下の、熱空気が循環する領域45の存在によって、吸熱体がその下面でも加熱されることが可能になる。好ましくは、高さh1は高さh2以下であり、距離h1+h2は10から100 mmの範囲内、特に30から50 mmの範囲内である。
【0071】
一方において熱空気を領域44と45に閉じこめて各温水ソーラーコレクター4の機能を最大化し、他方において各光起電力デバイス3のまわりの効果的な通気を確保してそれが過熱されないようにするために、図3で透明にして示している流れ絶縁(flow insulation)バリア46と47を配置することが好ましい。これはガラスカバー2の内面(下面)11からコレクター4の各側方に、ルーフィングアセンブリに直角に棟から光起電力デバイスの方へ延びる。このバリアを配置することによって、光起電力デバイスの領域1Cへの開口が確保される。
【0072】
これらのサーマル絶縁バリアは枠のたるきに固定され、例えばEPDM断熱発泡材で作られる。好ましくは、その色は黒で、ルーフィングアセンブリの美観のために吸熱体42など他のエレメントの色と同じにする。
【0073】
図5は、ルーフィングアセンブリの背面構造の、又はそれに接合されたいろいろなエレメントの概略上面図である。この図には、バリア46と47が屋根の斜面に横方向に温水ソーラーコレクター4からある距離bのところに、好ましくはそれから5 cmより大きな距離に配置されて示されている。好ましくは、これらは屋根の斜面方向に約10から50 cmという距離cだけコレクター4を超えて延び、移行領域1Dと温水ソーラーコレクター4の底部の間に温度勾配領域を生ずる。移行領域1Dが設けられている場合、それは断熱バリア46と47の端と光起電力デバイスの間に10から50 cmまでの最小距離dにわたって延びる。
【0074】
もちろん、本発明のルーフィングアセンブリが設けられた住宅の屋根は、ルーフィングアセンブリからある距離で枠に配置された断熱手段を含む。図4は、これらの断熱手段13を示しており、それは、公知のように、住宅内部を外の熱空気又は冷たい空気から絶縁し、住宅内部の熱損失を減らすことを可能にする。
【0075】
断熱手段13は、ルーフィングアセンブリの反対側からそちらの方へ順次、鉱物又は植物バースの繊維又は動物ベースの繊維、又はポリエチレンをベースの断熱ファイバーをベースとする断熱ブランケット13a、及びルーフィングアセンブリの方に水を通さない面を向けた蒸気バリアフィルム13bの積層を含む。
【0076】
本発明によれば、遠赤外放射を反射させるフィルム13cが、蒸気バリアフィルム上に配置される。この反射フィルムはルーフィングアセンブリ1から断熱手段13を隔てているスペースに熱を送り返すという利点があり、領域45における空気加熱に役立ち、その熱は吸熱体42によって取り込まれる。有利な形として、エレメント13bと13cを合体させたDuPont社から出されている材料Tyvek Reflex(登録商標)を使用できる。
【0077】
反射フィルム13cの上に、又はその代わりに、EPDM又はフェルトで作られる多孔質の黒色材料13dを配置して、ガラスカバー2を通して見たときに屋根全体が一様に黒く見える用にすることが可能である。この材料は太陽放射を吸収する性能があり、熱空気コレクターがない場合に各温水ソーラーコレクター4の熱効率を高めることができる。
【0078】
光起電力デバイス3を囲む領域が過熱しないようにして、その効率を低下させないことが重要である。したがって、デバイスを効果的に冷却するために、本発明は気流を強制対流させるようにする。
【0079】
このため、排気装置を含む対流手段を棟12の近くに、図6に示すように、ルーフィングアセンブリの下に配置することが有利である。
【0080】
図6は、特に、屋根のサイズに応じた二つの側方排気装置50と51,及び中央排気装置52を示している。中央排気装置52は、温水ソーラーコレクター4が配置された領域に配置され、側方排気装置50と51はそれぞれ断熱バリア46と47のそれぞれの側方に配置される。
【0081】
これにより、理想的にはルーフィングアセンブリの下から熱空気が排出され、外からの冷たい空気の流入が、特にガラス基板の間の封止されていない領域への流入が生じて光起電力デバイスのまわりの通気が達成される。さらに、回収された熱空気はフィード・ヒートポンプ・システム及び/又は空気/水熱交換器によって循環させ、好ましくは地中に埋めた季節貯熱システムを含めた家屋暖房用の温水を産生することが可能になる。
【0082】
すでに上で述べたように、図3と4に示された移行領域1Dは、光起電力デバイス3が温水ソーラーコレクター(単数又は複数)4にあまり近くなりすぎないように設けることができる。
【0083】
この移行領域に、知られているタイプの熱空気コレクターを追加することができる。図4に見られるこのコレクターは、太陽放射を吸収して熱をまわりの空気渡航率的に交換することを可能にする。この領域のガラス基板21は熱空気コレクター6の正面構造60を構成する。
【0084】
熱空気コレクター6の吸熱体(背面構造)61は、カバー2の内面11から、及び断熱手段13からある距離に配置される、又は断熱手段によって直接支持されることもある。温水ソーラーコレクター4の吸熱体42に関連して定めたものと同じ距離h1とh2を定めることができる。
【0085】
ある変形では、この熱空気コレクターの吸熱体は、それを設ける場合、黒色の材料13dによって形成される。
【0086】
ルーフィングアセンブリの下に産生されて領域1Bに入り込む熱空気の量はきわめて大きく、各温水ソーラーコレクター4に非常に熱い湯を保証し、従来の温水ソーラーコレクターと異なりそれを衛生の必要に応じて直接使用することができる。
【0087】
さらに、湯が熱すぎる場合、熱空気を排出する装置、本質的には中央の排気装置52,の存在は、空気の排出を制御することによって温水ソーラーコレクター4の適当な冷却を可能にする。排気装置の流量を、それが配置された領域によって制御することによるこの調整で、空気の速度をルーフィングアセンブリの領域によって変えることが可能である。
【0088】
このように、本発明によれば光起電力デバイスと温水ソーラーコレクターの正面構造は一様なガラスカバー2である。この正面構造は容易に取り付けることができる。それは単に屋根をガラス基板で覆うだけでよい。この作業は、特別な専門会社が立ち入って関与する必要もなく、屋根工事者が行うことができる。
【0089】
さらに、ルーフィングアセンブリの形態と光起電力デバイス(単数又は複数)と温水ソーラーコレクター(単数又は複数)配置は、住宅に必要な電気と熱という要求を満たす電気と温水、非常に熱い温水を供給することを可能にする。
【0090】
最後に、空気の排気装置はルーフィングアセンブリのエネルギー性能を補う効果的な手段を構成する。排気装置の流量は、日照量の多少に関わる住宅の地理的場所と気候に応じて調節される。流量は気流の速度に作用し、それはさらに排気領域によって異なる。有利な形としては、流量は適当な領域に配置された速度コントローラと温度センサなどの自動化された制御手段で調節される。
【符号の説明】
【0091】
1 ソーラールーフィングアセンブリ
1D 移行領域
3 光起電力デバイス
4 温水ソーラーコレクタ
6 熱空気コレクター
10 上面
11 内面
12 棟
13 断熱手段
13c 反射フィルム
20,21,22 ガラス基板
23 固定手段
30,40 正面構造
31,41,61 背面構造
42,61 吸熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面構造(30)と背面構造(31)を有する少なくとも一つの光起電力デバイス(3)と、正面構造(40)と背面構造(41)を有する少なくとも一つの温水ソーラーコレクター(4)を備えるソーラールーフィングアセンブリ(1)であって、光起電力デバイス(3)と温水ソーラーコレクター(4)のそれぞれの正面構造(30,40)はカバー(2)を形成するそれぞれのガラス基板(20,22)から成り、カバーは外側環境に向き合うための上面(10)とその反対側の内面(11)を有し、光起電力デバイス(3)と温水ソーラーコレクター(4)のそれぞれの背面構造(31,41)はカバー(2)の下に配置されて内面(11)に向き合い、ガラス基板(20,22)は何も金属枠を有せず、直接に又は移行基板と呼ばれる他のガラス基板(21)によって隔てられる形で接合されて一緒になり一様で統一的なガラスカバー(2)を形成する、ことを特徴とするルーフィングアセンブリ。
【請求項2】
棟(12)を規定する斜面を有し、斜面は棟に近い上部(1B)と棟から離れている下部(1C)とを含み、各光起電力デバイス(3)は下部に配置され、各温水ソーラーコレクター(4)は上部に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項3】
カバー(2)の内面(11)の下で、カバー(2)の表面に直角に二つの断熱バリア(46,47)を含み、二つの断熱バリア(46,47)が温水ソーラーコレクター(4)の両側で側方に配置されて、光起電力デバイス(3)の方へ延びる領域を開かれた形で残すようになっている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項4】
ルーフィングアセンブリの下を循環する気流の強制対流のための強制対流手段、特に、排気装置を含み、排気装置の流量が、排気装置が位置している領域及び/又は環境条件に応じて選択的に調整可能である、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項5】
光起電力デバイス(3)が、温水ソーラーコレクター(4)から熱空気を発生できる熱空気サーマルコレクター(6)を有する移行領域(1D)によって隔てられ、熱空気コレクターの正面構造(60)がガラス基板(21)によって構成される、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項6】
光起電力デバイスの背面構造(31)が正面構造(30)に接合された少なくとも一つの支持基板を含み、正面構造と背面構造の支持基板の間に光電池が配置されている、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項7】
温水ソーラーコレクター(4)の背面構造(41)が、温水ソーラーコレクターの正面構造(40)から距離h2に配置された吸熱体(42)と、吸熱体(42)の下に配置され、カバー(2)と反対側で、並置される形で又は吸熱体(42)から距離h1のところに配置された断熱材(43)を含み、h1+h2の和が10〜100 mmの範囲内、特に、30〜50 mmまでの範囲内にあるようにh1とh2が規定される、ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項8】
光起電力デバイス(3)、温水ソーラーコレクター(4)及び一つ以上の熱空気コレクター(6)が、それぞれルーフィングアセンブリの3分の1にわたって配分されている、ことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項9】
ガラス基板(20,22)とガラス基板(21)が焼き戻された一枚板のガラスから、又は積層されたガラスから、又は光起電力デバイスの場合を除き復層ガラスから形成されている、ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項10】
ガラス基板(20,22)とガラス基板(21)がフックなどの固定手段(23)によって一緒に固定されている、ことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項11】
ガラス基板(20,22)及び任意的なガラス基板(21)が反射防止及び/又は低放射率タイプの機能的コーティングを含む、ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項12】
ルーフィングアセンブリは枠(1A)に配置され、温水ソーラーコレクター(4)の背面構造(41)、任意の熱空気サーマルコレクター(6)の背面構造(61)及びガラス基板(21)である熱空気サーマルコレクター(6)の正面構造(60)が、枠(1A)に対して接合されている、ことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載のルーフィングアセンブリ。
【請求項13】
枠(1A)が断熱手段(13)を含み、断熱手段(13)がカバー(2)の内面(11)に向いて配置された熱反射フィルム(13c)を含み、熱反射フィルム(13c)が各温水ソーラーコレクター(4)及び熱空気コレクター(6)の吸熱体に対する断熱材を構成できる、ことを特徴とする請求項12に記載のルーフィングアセンブリ。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−510604(P2012−510604A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539077(P2011−539077)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/FR2009/052360
【国際公開番号】WO2010/063944
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】