説明

タイヤの検査方法及びその装置

【課題】コードウェーブの有無を正確に判定することができ、しかも検査に要する時間の短縮を図ることのできるタイヤの検査方法及びその装置を提供する。
【解決手段】撮像された画像から各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出し、抽出された抽出画像中の各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなす場合に、その透過X線像を撮像したタイヤTにコードウェーブが生じていると判定される。このため、例えば各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが12°の角度をなするようにコードウェーブが生じており、前記所定角度が10°に設定されている場合は、各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすことになり、コードウェーブが生じていると判定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばトラック用タイヤやバス用タイヤのように金属製のカーカスコードを有するタイヤのカーカスコードの状態を非破壊で検査するためのタイヤの検査方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のタイヤの検査方法としては、タイヤの内周面側からタイヤに向かってX線を照射するとともに、タイヤを周方向に回転させながら、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過X線像を撮像するとともに、撮像した画像を表示装置に表示し、表示装置によって表示される画像中のカーカスコードの状態等を検査員が目視によって判定するようにしたものが知られている。
【0003】
また、他のタイヤの検査方法としては、前述と同様に撮像装置によって透過X線像を撮像するとともに、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平9−15172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前者の検査方法では、検査員が目視によってカーカスコードの状態等を判定していることから、判定精度を向上することが難しく、検査に要する時間の短縮を図ることも難しいという問題点があった。
【0005】
また、後者の検査方法では、予め記憶されている基準データと撮像された画像とを比較し、基準データと撮像された画像との差異に基づきベルトコードの状態等を判定するようにしているが、基準データは複数個のタイヤを撮像して各画像を加算平均することにより作成されるので、例えばカーカスコードがうねるコードウェーブの有無等の細かな判定を行うことができないという問題点があった。
【0006】
また、タイヤの品種ごとに基準データを作成して記憶しておく必要があるので、基準データを作成する分だけ検査に要する時間が長くなるという問題点があった。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コードウェーブの有無を正確に判定することができ、しかも検査に要する時間の短縮を図ることのできるタイヤの検査方法及びその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前記目的を達成するために、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにカーカスコードがうねるコードウェーブが生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、撮像装置によって撮像された画像からベルト部材を構成するベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する抽出ステップと、抽出ステップによって抽出された抽出画像中のカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすと、透過電磁波像を撮像したタイヤにコードウェーブが生じていると判定する判定ステップとを含むようにしている。
【0009】
また、本発明は、タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにカーカスコードがうねるコードウェーブが生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、撮像装置によって撮像された画像からベルト部材を構成するベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する抽出手段と、抽出手段によって抽出された抽出画像中のカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすと、透過電磁波像を撮像したタイヤにコードウェーブが生じていると判定する判定手段とを備えている。
【0010】
これにより、撮像装置によって撮像された画像からベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出し、抽出された抽出画像中の各カーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなす場合に、透過電磁波像を撮像したタイヤにコードウェーブが生じていると判定されることから、例えばベルトコードの近傍におけるカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが12°の角度をなすようにコードウェーブが生じており、前記所定角度が10°に設定されている場合は、カーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすことになり、コードウェーブが生じていると判定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、例えばベルトコードの近傍におけるカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが12°の角度をなすようにコードウェーブが生じており、前記所定角度が10°に設定されている場合は、カーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすことになり、コードウェーブが生じていると判定されるので、前記所定角度をタイヤの品種等に応じて適宜設定することにより、コードウェーブの有無を正確に判定することができる。また、コードウェーブが生ずる場合のカーカスコードの延設方向の変化は、ベルトコードの近傍において顕著に現れる傾向があるので、ベルトコードの近傍以外でコードウェーブの有無を判定する場合と比較し、コードウェーブの有無の判定が正確である。さらに、目視によらず自動で判定を行うことも可能であり、タイヤの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図14は本発明の一実施形態を示すもので、図1は照射装置及び撮像装置の概略図、図2はタイヤ検査装置のブロック図、図3は第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート、図4乃至図14は第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図である。
【0013】
本実施形態のタイヤ検査装置は、タイヤTの内周面側に配置され、X線をタイヤTに向かって照射する照射装置10と、タイヤTの外周面側に配置され、タイヤTを透過した透過電磁波像としての透過X線像を撮像する撮像装置20と、撮像装置20に接続された検査装置本体30とを備えている。また、タイヤTは図示しない支持装置によって回転自在に支持されるようになっている。タイヤTは複数の金属製のカーカスコードCCがラジアル方向に延びるように配置されたラジアルタイヤである。また、タイヤTの外周面側には複数のベルト部材が設けられ、各ベルト部材は金属製のベルトコードBCを有する。各カーカスコードCCはタイヤTの外周面側においてタイヤTの幅方向に延びるように配置されているが、図4及び図5において各ベルトコードBCに対して画像幅方向の他方に配置されている各カーカスコードCCのように、各カーカスコードCCにうねりが生ずる場合があり、このような現象がコードウェーブと称されている。
【0014】
照射装置10はX線を放射状に照射する周知のX線管から成り、前記支持装置によって支持されたタイヤTの内周面側に配置されるようになっている。尚、X線の代わりにγ線を照射するように構成することも可能である。
【0015】
撮像装置20は、支持装置に支持されたタイヤTの上側に配置された上方カメラ21と、支持装置に支持されたタイヤTの幅方向両側に配置された一対の側方カメラ22とを有する。各カメラ21,22は周知のラインセンサカメラから成り、各カメラ21,22はタイヤTを透過した透過X線像を線状に撮像するようになっている。即ち、支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像される。
【0016】
検査装置本体30は、図2に示すように、第1乃至第3制御装置31,32,33を備えている。また、各制御装置31,32,33はそれぞれ制御部31a,32a,33a、液晶表示画面等の表示部31b,32b,33b及びハードディスク等の記憶部31c,32c,33cを有する。制御部31a,32a,33aは演算装置、記憶装置、入力装置等を有する周知のマイクロコンピュータである。さらに、撮像装置20における上方カメラ21によって撮像された画像が第1制御装置31の制御部31aに送信され、各側方カメラ22のうち一方の側方カメラ22によって撮像された画像が第2制御装置32の制御部32aに送信され、各側方カメラ22のうち他方の側方カメラ22によって撮像された画像が第3制御装置33の制御部33aに送信される。
【0017】
以上のように構成されたタイヤ検査装置では、前述のように図示しない支持装置によってタイヤTを所定速度で周方向に回転させながら、各カメラ21,22によって所定時間おきに撮像を行うことにより、タイヤTの一周分の透過X線像が撮像され、各カメラ21,22によって撮像された画像がデジタル画像として各制御装置31,32,33の制御部31a,32a,33aにそれぞれ送信される。尚、各カメラ21,22で撮像された線状の撮像データを各制御装置31,32,33内で繋ぎ合わせてタイヤTの一周分の画像を作成することも可能である。
【0018】
続いて、第1制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきコードウェーブの有無を判定する。各制御装置32,33も制御部32a,33aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきタイヤTの検査を行う。この時の第1制御装置31の制御部31aの動作について図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。ここで、第1制御装置31の制御部31aに送信されるタイヤTの一周分の画像はタイヤTを径方向外側から撮像したものであり、この画像の幅方向中央側には各ベルト部材を構成する複数の金属製のベルトコードBCが撮像され、そのベルトコードBCの幅方向両側にはカーカス部材を構成する複数の金属製のカーカスコードCCが撮像されている(図4参照)。図4はタイヤTの一周分の画像の一部を示すものである。各カーカスコードCCは画像幅方向に延びるように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。各ベルトコードBCは各カーカスコードCCの延設方向と所定の角度をなすように配置されるとともに、互いに画像上下方向に間隔をおいて配置されている。ここでは、上方カメラ21から送信された画像中には各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものは撮像されていない。尚、上方カメラ21から送信された画像中に例えば背景が撮像されている場合には、送信された画像から背景単独の画像を差分処理する等により、上方カメラ21から送信された画像中から各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものを除去することが好ましい。
【0019】
先ず、上方カメラ21から第1制御装置31の制御部31aにタイヤTの一周分の画像が送信されると(SA1)、その画像のコントラストを強調する(SA2)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBC及び各カーカスコードCCが明確になる(図5参照)。尚、ステップSA2を行わずにステップSA3以降を行うことも可能である。
【0020】
続いて、コントラストが強調された画像において画像上下方向(各カーカスコードCCが延びる方向と略直行する方向)の成分を強調する(SA3)。画像上下方向の成分の強調は、例えば画像上下方向のシフト処理及び差分処理を用いる周知の方法によって行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが強調され、各カーカスコードCCが薄くなるか除去される(図6参照)。
【0021】
続いて、画像上下方向の成分が強調された画像のコントラストを強調する(SA4)。このコントラストの強調は、例えば線形変換処理、二値化処理、輝度スライシング処理等の周知の処理を用いて行われる。これにより、画像中の各ベルトコードBCが明確になる(図7参照)。
【0022】
続いて、撮像装置によって撮像された画像中の各カーカスコードCCが撮像されたカーカスコード領域(第1領域)を確定するとともに、各ベルトコードBCが撮像されたベルトコード領域を確定する(SA5)。この領域確定は、例えば画像上下方向のシフト処理及び加算処理を適宜行うことにより、ステップSA3によって強調された成分(各ベルトコードBC)が集合している領域を塗り潰した後(図8参照)、例えばPrewittフィルタやSobelフィルタを用いてエッジ強調処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域のうち最も大きな面積を有する領域以外の領域を確定する2つの第1輪郭線OL1を作成する(図9参照)。また、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域のうち最も大きな面積を有する領域を確定する1つの第2輪郭線OL2を作成する(図10参照)。ここで、各第1輪郭線OL1はカーカスコード領域(第1領域)の輪郭線であり、第2輪郭線OL2はベルトコード領域の輪郭線である。尚、前記シフト処理及び加算処理の代わりに画像上の各線を膨張させる膨張処理を行うことにより、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域を塗り潰すことも可能である。また、単位面積当たり(例えば数画素×数画素の範囲)の平均濃度に基づき前記カーカスコード領域(第1領域)及びベルトコード領域の確定を行うことも可能である。
【0023】
続いて、ステップSA2によってコントラストを強調する前の画像から各第1輪郭線OL1によって確定されたカーカスコード領域(第1領域)を抽出する(SA6)。ここで、コントラストを強調する前の画像中に各ベルトコードBC及び各カーカスコードCC以外のものが撮像されていなければ、カーカスコード領域(第1領域)を抽出した第1領域画像は各カーカスコードCCのみが撮像されている画像となる(図11参照)。尚、ステップSA2でコントラストを強調した画像やその他の画像から第1領域画像を作成することも可能である。
【0024】
続いて、ステップSA6で抽出された第1領域画像を二値化処理する(SA7)。ここで、第1領域画像をそれぞれ所定面積(例えば15画素×15画素)の複数の範囲に分けるとともに、各範囲ごとにその範囲内における画素の階調の平均値を算出し、各平均値をそれぞれ閾値に用いて各範囲ごとに二値化する動的二値化処理を行う。これにより、第1領域画像中で各カーカスコードCCが明確になる(図12参照)。例えば第1領域画像の各画素がそれぞれ256階調を有している場合に、各カーカスコードCCが0階調(黒色)になるとともに、各カーカスコードCC以外の部分が255階調(白色)となる。尚、動的二値化処理の代わりに通常の二値化処理を行うことも可能である。
【0025】
続いて、二値化処理された第1領域画像において各カーカスコードCCを細線化処理する(SA8)。この細線化処理は、例えば周知の収縮処理を用いて行われる。これにより、各カーカスコードCCはその中心線と一致する線に細線化される。尚、ステップSA8を行わずにステップSA9以降を行うことも可能である。
【0026】
続いて、ベルトコード領域を画像幅方向に所定量(例えば60mm)ずつ拡張させた拡張領域(第2領域)を確定する(SA9)。この領域確定は、例えばベルトコード領域を確定する第2輪郭線OL2の幅方向両側の線をそれぞれ前記所定量の半分(例えば30mm)ずつ移動させ、拡張領域(第2領域)を確定する第3輪郭線OL3を作成する(図13参照)。即ち、第3輪郭線OL3は拡張領域(第2領域)の輪郭線である。
【0027】
続いて、ステップSA8で細線化処理された第1領域画像からカーカスコード領域(第1領域)と拡張領域(第2領域)とが重複する重複領域を抽出する(SA10、図14参照)。即ち、ステップSA6〜SA8及びステップSA10を行うことにより、撮像装置20によって撮像された画像からカーカスコード領域(第1領域)と拡張領域(第2領域)とが重複する重複領域が抽出され、抽出された抽出画像は各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された画像となる。
【0028】
続いて、ステップSA10によって抽出された抽出画像中の各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが所定角度(例えば10°)以上の角度をなす場合に、その透過X線像を撮像したタイヤTにコードウェーブが生じていると判定する(SA11)。ここでは、延設方向と画像幅方向とのなす角度を各カーカスコードCCごとに所定角度と比較している。尚、各カーカスコードCCの延設方向の平均値と画像幅方向とのなす角度を用いて判定することも可能である。また、カーカスコードCCにおける最も傾きの大きくなる部分の延設方向を用いることも可能であり、カーカスコードCCの傾きの平均値を延設方向として用いることも可能である。
【0029】
続いて、ステップSA11においてコードウェーブが生じていると判定された場合は(SA12)、表示部31bにステップSA2でコントラストを強調する前の画像及びコードウェーブが生じていると判定されたカーカスコードCCを他のカーカスコードCCに対して目立つように表示する表示処理を行い、また、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA13)。ステップSA11においてコードウェーブが生じていると判定されない場合は(SA12)、記憶部31cに測定日時、測定したタイヤTの品種、判定結果等を記憶する記憶処理を行う(SA14)。
【0030】
このように、本実施形態によれば、撮像装置20によって撮像された画像から各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出し、抽出された抽出画像中の各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなす場合に、その透過X線像を撮像したタイヤTにコードウェーブが生じていると判定されることから、例えば各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが12°の角度をなするようにコードウェーブが生じており、前記所定角度が10°に設定されている場合は、各カーカスコードCCの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすことになり、コードウェーブが生じていると判定される。即ち、前記所定角度をタイヤTの品種等に応じて適宜設定することにより、コードウェーブの有無を正確に判定することができる。また、コードウェーブが生ずる場合の各カーカスコードCCの延設方向の変化は、各ベルトコードBCの近傍において顕著に現れる傾向があるので、各ベルトコードBCの近傍以外でコードウェーブの有無を判定する場合と比較し、コードウェーブの有無の判定が正確である。さらに、目視によらず自動で判定を行うことが可能であり、タイヤTの品種ごとに基準データを作成する必要もないことから、検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【0031】
また、撮像装置20で撮像した画像に制御装置31の制御部31aによって前述のような画像処理を行うとともに、コードウェーブの有無を自動で検査するようにしたので、撮像装置20で撮像した画像を検査員が目視で確認してコードウェーブの有無を検査する場合と比較し、検査速度を向上することができる。
【0032】
また、撮像装置20によって撮像された画像中の各カーカスコードCCが撮像されたカーカスコード領域(第1領域)を確定するとともに、撮像装置20によって撮像された画像中の各ベルトコードBCが撮像された領域を画像幅方向に所定量だけ拡張した拡張領域(第2領域)を確定し、撮像装置20によって撮像された画像からカーカスコード領域(第1領域)と拡張領域(第2領域)とが重複する重複領域を抽出することにより、撮像装置20によって撮像された画像から各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出することから、タイヤTの品種等に応じてベルト部材の幅寸法が変化する場合でも、ベルト部材の幅寸法に応じて抽出される領域も変化する。即ち、各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を確実に抽出することができ、検査精度の向上及び検査に要する時間の短縮を図る上で極めて有利である。
【0033】
また、撮像装置20によって撮像された画像のコントラストを強調するとともに(ステップSA2)、コントラストが強調された画像中の各カーカスコードCCが延びる方向と略直交する方向の成分を強調し(ステップSA3)、ステップSA3によって強調された成分が集合している領域以外の領域を確定することにより(ステップSA5)、撮像装置20によって撮像された画像中の各カーカスコードCCが撮像されたカーカスコード領域(第1領域)を確定している。このため、タイヤTの品種に応じてベルト部材の幅寸法が変化する場合でも、カーカスコード領域(第1領域)の確定を常に正確に行うことができ、コードウェーブの有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0034】
また、撮像装置20によって撮像された画像のコントラストを強調するとともに(ステップSA2)、コントラストが強調された画像中の各カーカスコードCCが延びる方向と略直交する方向の成分を強調し(ステップSA3)、ステップSA3によって強調された成分(ベルトコードBC)が集合しているベルトコード領域を確定し(ステップSA5)、ベルトコード領域を画像幅方向に所定量だけ拡張させた拡張領域を確定することにより(ステップSA9)、撮像装置20によって撮像された画像中の各ベルトコードBCが撮像された領域を画像幅方向に所定量だけ拡張した拡張領域(第2領域)を確定している。このため、タイヤTの品種に応じてベルト部材の幅寸法が変化する場合でも、拡張領域(第2領域)の確定を常に正確に行うことができ、コードウェーブの有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0035】
ステップSA10によって各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出する前に、撮像装置20によって撮像された画像に二値化処理を行うようにしたので(ステップSA6〜SA7)、画像中で各カーカスコードCCが明確になり、コードウェーブの有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0036】
また、撮像装置20によって撮像された画像に動的二値化処理を行うようにしたので(ステップSA6〜SA7)、撮像装置20によって撮像された画像に光量の差やタイヤTの部材厚によって明暗が生じていても、明暗に拘わらずに各カーカスコードCCを明確にすることができ、コードウェーブの有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0037】
尚、本実施形態では、ステップSA10を行う前に、撮像装置20によって撮像された画像に二値化処理を行うようにしたものを示した(ステップSA6〜SA7)。これに対し、ステップSA11でコードウェーブの有無を判定する前に、ステップSA10によって抽出された抽出画像に二値化処理または動的二値化処理を行うことも可能である。この場合でも各カーカスコードCCを明確にすることができ、コードウェーブの有無の判定を正確に行う上で極めて有利である。
【0038】
また、本実施形態では、ステップSA7〜SA14を行う前に、ステップSA6を行い、撮像装置20によって撮像された画像から各カーカスコードCCが撮像されたカーカスコード領域(第1領域)を抽出するようにしている。これに対し、ステップSA6を省き、ステップSA7〜SA14を撮像装置20によって撮像された画像に対して直接行うことも可能である。この場合でも、ステップSA6を行う場合と同様にコードウェーブの有無の判定を正確に行うことができる。
【0039】
尚、本実施形態では、カーカスコード領域(第1領域)と拡張領域(第2領域)とを用い、各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出するものを示した。これに対し、カーカスコード領域(第1領域)を幅方向に収縮させて領域確定を行うことにより、各ベルトコードBCの近傍における各カーカスコードCCが撮像された領域を抽出することも可能であり、その他の方法を用いることも可能である。
【0040】
また、本実施形態では、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一周分の画像の画像処理を行い、画像処理された画像に基づきコードウェーブの有無を判定するものを示した。これに対し、制御装置31の制御部31aによってタイヤTの一部を撮像した画像の画像処理を行い、その画像処理が行われた画像に基づきコードウェーブの有無を判定することも可能である。
【0041】
尚、本実施形態では、ステップSA1〜SA14を第1制御装置31の制御部31aによって行うようにしたものを示したが、ステップSA1〜SA14のうち任意のステップを例えば検査員による制御部31aの操作によって行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明における一実施形態を示す照射装置及び撮像装置の概略図
【図2】タイヤ検査装置のブロック図
【図3】第1制御装置の制御部の動作を示すフローチャート
【図4】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図5】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図6】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図7】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図8】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図9】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図10】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図11】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図12】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図13】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【図14】第1制御装置の制御部によって処理される画像の概略図
【符号の説明】
【0043】
10…照射装置、20…撮像装置、21…上方カメラ、22…側方カメラ、30…検査装置本体、31…第1制御装置、31a…制御部、31b…表示部、31c…記憶部、32…第2制御装置、32a…制御部、32b…表示部、32c…記憶部、33…第3制御装置、33a…制御部、33b…表示部、33c…記憶部、CC…カーカスコード、BC…ベルトコード、T…タイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射するとともに、タイヤの外周面側に配置された撮像装置によってタイヤを透過した透過電磁波像を撮像し、透過電磁波像を撮像したタイヤにカーカスコードがうねるコードウェーブが生じているか否か検査するタイヤの検査方法において、
撮像装置によって撮像された画像からベルト部材を構成するベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する抽出ステップと、
抽出ステップによって抽出された抽出画像中のカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすと、透過電磁波像を撮像したタイヤにコードウェーブが生じていると判定する判定ステップとを含む
ことを特徴とするタイヤの検査方法。
【請求項2】
前記抽出ステップに、撮像装置によって撮像された画像中のカーカスコードが撮像された第1領域を確定する第1領域確定ステップと、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像された領域を画像幅方向に所定量だけ拡張した第2領域を確定する第2領域確定ステップと、撮像装置によって撮像された画像から第1領域と第2領域とが重複する重複領域を抽出することにより、撮像装置によって撮像された画像からベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する重複領域抽出ステップとを含めた
ことを特徴とする請求項1記載のタイヤの検査方法。
【請求項3】
前記第1領域確定ステップに、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調ステップと、強調ステップによってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調ステップと、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調ステップによって強調された成分が集合している領域以外の領域を確定する外領域確定ステップとを含めた
ことを特徴とする請求項2記載のタイヤの検査方法。
【請求項4】
前記第2領域確定ステップに、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調ステップと、強調ステップによってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調ステップと、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調ステップによって強調された成分が集合している領域を画像幅方向に所定量だけ拡張させた領域を確定する拡張領域確定ステップとを含めた
ことを特徴とする請求項2または3記載のタイヤの検査方法。
【請求項5】
前記抽出ステップの前に撮像装置によって撮像された画像を二値化処理する二値化ステップを含めた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のタイヤの検査方法。
【請求項6】
前記判定ステップの前に抽出ステップによって抽出された抽出画像を二値化処理する二値化ステップを含めた
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載のタイヤの検査方法。
【請求項7】
前記二値化ステップを、動的二値化処理を行うように構成した
ことを特徴とする請求項5または6記載のタイヤの検査方法。
【請求項8】
タイヤの内周面側からX線やγ線等の電磁波をタイヤに向かって照射する照射装置と、タイヤの外周面側に配置され、タイヤを透過した透過電磁波像を撮像する撮像装置とを備え、透過電磁波像を撮像したタイヤにカーカスコードがうねるコードウェーブが生じているか否か検査するタイヤの検査装置において、
撮像装置によって撮像された画像からベルト部材を構成するベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する抽出手段と、
抽出手段によって抽出された抽出画像中のカーカスコードの延設方向と画像幅方向とが所定角度以上の角度をなすと、透過電磁波像を撮像したタイヤにコードウェーブが生じていると判定する判定手段とを備えた
ことを特徴とするタイヤの検査装置。
【請求項9】
前記抽出手段に、撮像装置によって撮像された画像中のカーカスコードが撮像された第1領域を確定する第1領域確定手段と、撮像装置によって撮像された画像中のベルトコードが撮像された領域を画像幅方向に所定量だけ拡張した第2領域を確定する第2領域確定手段と、撮像装置によって撮像された画像から第1領域と第2領域とが重複する重複領域を抽出することにより、撮像装置によって撮像された画像からベルトコードの近傍におけるカーカスコードが撮像された領域を抽出する重複領域抽出手段とを設けた
ことを特徴とする請求項8記載の検査装置。
【請求項10】
前記第1領域確定手段に、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調手段と、強調手段によってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調手段と、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調手段によって強調された成分が集合している領域以外の領域を確定する外領域確定手段とを設けた
ことを特徴とする請求項9記載の検査装置。
【請求項11】
前記第2領域確定手段に、撮像装置によって撮像された画像のコントラストを強調する強調手段と、強調手段によってコントラストが強調された画像中のカーカスコードが延びる方向と略直交する方向の成分を強調する直交成分強調手段と、撮像装置によって撮像された画像中の直交成分強調手段によって強調された成分が集合している領域を画像幅方向に所定量だけ拡張させた領域を確定する拡張領域確定手段とを設けた
ことを特徴とする請求項9または10記載のタイヤの検査装置。
【請求項12】
前記抽出手段によって前記抽出を行う前に、撮像装置によって撮像された画像を二値化処理する二値化手段を備えた
ことを特徴とする請求項8、9、10または11記載のタイヤの検査装置。
【請求項13】
前記判定手段によって前記判定を行う前に、抽出手段によって抽出された抽出画像を二値化処理する二値化手段を備えた
ことを特徴とする請求項8、9、10または11記載のタイヤの検査装置。
【請求項14】
前記二値化手段を、動的二値化処理を行うように構成した
ことを特徴とする請求項12または13記載のタイヤの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−309646(P2008−309646A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157859(P2007−157859)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】