説明

タイヤの製造方法及び装置

【課題】タイヤ構成部材及びリボン状ゴム積層体を重ねて配置することにより生タイヤを成型するときに、成型途中でタイヤ構成部材或いはリボン状ゴム積層体の形状又は重量の良否判定を可能にするとともに、不良の場合に生タイヤの最終形状又は重量を目標に近づける。
【解決手段】ベーストレッドゴム62をその目標形状データに基づいて、リボン状ゴムの積層により形成する。ベーストレッドゴム62の形状を測定し、目標形状との差異を算出する。差異が許容範囲を超えた場合は、キャップトレッドゴム63の目標形状データを補正する。補正後の目標形状データに基づいて、リボン状ゴムの積層により、キャップトレッドゴム63を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法及び装置に関し、より詳しくは、リボン状ゴムを積層することによりタイヤ構成部材を製造する工程を有するタイヤ製造方法及びそれに用いるタイヤ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生タイヤの成型工程では、トレッド、サイドウォール、インナーライナー等のための異なる配合の複数種のゴム部材を予め準備しておき、これらのゴム部材を成形ドラム上にて順次に貼り合わせていた。しかし、この成型方法では、ゴム部材の断面サイズが大きくなるため大型のゴム押出機が必要であり、また、それぞれのゴム部材に対して、タイヤの種類等に応じた多種類の口金を準備する必要があること、さらには、多品種少量生産の場合には、口金交換を含む段取りが頻繁に発生するため生産性の改善が望めない不具合があった。
【0003】
そこで、ゴム押出設備の小型化、タイヤの均一性向上、或いは多品種少量生産への柔軟な対応等を目的に、生タイヤを成型する際に、押出機から押し出されたリボン状ゴムを回転支持体上に側縁部を重ねながら螺旋状に巻回して所定の断面形状に積層することにより、リボン状ゴム積層体からなるタイヤ構成部材を形成するリボン積層法が知られている(特許文献1参照)。
【0004】
このリボン積層法は、図7Aに側面図で示すように、所定の断面形状の口金を有する押出機EXより連続してリボン状ゴムRを押出し、回転体Dを回転させながらリボン貼付け装置APでリボン状ゴムRを把持し、その位置と角度とを制御しつつ回転体Dの外周面にリボン状ゴムRを螺旋状に積層して所要の断面形状の積層体を形成するものである。そして、図7B、Cに断面図で示すように、同じ断面形状のリボン状ゴムRを用いて、幅がW1で厚さがt1の積層体a1も、幅がW2で厚さがt2の積層体a2も形成することができる。
【0005】
ここで、リボン状ゴムを巻回する際のゴムの断面形状は、リボン貼付け装置APの一対のロール間寸法などによって定められ、積層作業中は一定にしている。そして、リボン状ゴムの巻回数或いは側縁部の重ね量をタイヤ構成部材に応じて適宜調整することにより、互いに形状が異なるトレッド、サイドウォールなどのタイヤ構成部材を形成している。
【0006】
この方法によりタイヤを製造する場合、トロイダル状に膨出させた生ケース、或いはトロイダル状の剛体コアに貼付けられたカーカスバンド部材の外面にベルト層を貼り付けた後にリボン状ゴムを螺旋状に巻回してトレッドやサイドウォールを形成し、生タイヤを成型する。ここで、トレッドが複数層のゴム、例えばタイヤ半径方向内側のベーストレッドゴム及びその外側のキャップトレッドゴムを有する場合は、まずベーストレッドゴムを積層し、次いでその外側にキャップトレッドゴムを積層する。このように成型された生タイヤは形状及び重量測定などの検査を受けた後に加硫成型される。
【0007】
しかしながら、上述のように生タイヤの形状及び重量に基づいてその良否を判定する方法では、生タイヤの完成まで個々のリボン状ゴム積層体並びにその内側に形成されたベルト層などのタイヤ構成部材の形状及び重量の良否が分からないという問題がある。また、仮に成型途中で良好でないことが分かっても、生タイヤを完成させるまでの間に形状及び重量を補正する手段がないため、生タイヤの最終形状及び重量を目標に近づけることが出来ず、品質管理上問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2004−174765号公報(0058、0059、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、タイヤ構成部材及びリボン状ゴム積層体を各々が目標形状又は重量となるように重ねて配置することにより最終目標形状又は重量を有する生タイヤを成型するときに、成型途中でタイヤ構成部材或いはリボン状ゴム積層体の形状又は重量の良否の判定を可能にするとともに、不良であった場合でも生タイヤの最終形状又は重量を目標に近づけることが出来るようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、予め設定された目標形状又は重量となるようにタイヤ構成部材を成型する工程と、該成型されたタイヤ構成部材の形状又は重量を測定する工程と、該形状又は重量とその目標との差異に応じて、該タイヤ構成部材の外面に形成するリボン状ゴム積層体の予め設定された目標形状又は重量を補正する工程と、該リボン状ゴム積層体が補正された目標形状又は重量となるように、リボン状ゴムを前記タイヤ構成部材の外面に巻回し、積層する工程とを有することを特徴とするタイヤの製造方法である。
請求項2の発明は、請求項1記載のタイヤの製造方法において、前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケースであることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1記載のタイヤの製造方法において、前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケース及びその外周面に積層されたベルトであることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1記載のタイヤの製造方法において、前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケースの外周面に積層されたベルトの外周面に形成されたリボン状ゴム積層体であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤの製造方法において、前記差異が所定の基準を越えている場合に、前記目標形状又は重量の補正を行うことを特徴とする。
請求項6の発明は、タイヤ構成部材の目標形状又は重量データ、及び該タイヤ構成部材の外面にリボン状ゴムを巻回し、積層することにより形成されるリボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データが記憶される目標データ記憶手段と、前記タイヤ構成部材の目標形状又は重量データに基づいて、前記タイヤ構成部材が目標形状又は重量となるように成型するタイヤ構成部材成型手段と、前記リボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データに基づいて、前記リボン状ゴム積層体が目標形状又は重量となるように形成するリボン状ゴム積層体形成手段と、前記成型されたタイヤ構成部材の形状又は重量を測定する測定手段と、前記タイヤ構成部材の形状又は重量の測定データとその目標データとの差異に応じて、前記リボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データを補正する補正手段とを有することを特徴とするタイヤ製造装置である。
【0011】
(作用)
本発明によれば、タイヤ構成部材及びリボン状ゴム積層体を各々が目標形状又は重量となるように重ねて配置することにより最終目標形状又は重量を有する生タイヤを成型するときに、タイヤ構成部材を成型してその形状又は重量を測定し、その目標との差異に応じて、そのタイヤ構成部材に重ねて配置されるリボン状ゴム積層体の目標形状又は重量を補正し、その補正した目標形状又は重量となるように、前記リボン状ゴム積層体を形成する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、タイヤ構成部材及びリボン状ゴム積層体を各々が目標形状又は重量となるように重ねて配置することにより最終目標形状又は重量を有する生タイヤを成型するときに、成型途中でタイヤ構成部材或いはリボン状ゴム積層体の形状又は重量の良否の判定が可能になるともに、不良であった場合でも生タイヤの最終形状又は重量を目標に近づけることが出来る。このため、タイヤ製造の歩留りが向上するとともに、コストが低減する。また、製品タイヤの形状、重量のバラツキが低減するため、製品タイヤの品質が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施形態の空気入りタイヤのタイヤ軸方向の左半分の子午線断面図である。
【0014】
この空気入りタイヤ51は、トレッド部52と、その両側に連なる一対のサイドウォール部53と、その両側に連なる一対のビード部54とを有する。ビード部54にはビードコア55が埋設されており、一対のビードコア55間には上記各部を補強するためのカーカスプライ57がトロイダル状に跨がるように設けられている。また、カーカスプライ57のタイヤ半径方向外側にはトレッド部52を補強するベルト層59が設けられ、カーカスプライ57のビード部54内に配置されている部分の外側には、ビード部54を補強するワイヤーチェーファー58が設けられている。
【0015】
また、空気入りタイヤ51は、外側ゴム部材として、トレッド部52にトレッドゴム、サイドウォール部53にサイドウォールゴム65、それらの間にミニサイドゴム64、ビード部54にゴムチェーファー66を有する。ここで、トレッドゴムは、ベルト層59との接着を確保するためのクッションゴム61、そのタイヤ半径方向外側に配置されたベーストレッドゴム62、及びそのタイヤ半径方向外側に配置されたキャップトレッドゴム63からなる3層構造を持っている。
【0016】
さらに、空気入りタイヤ51は、内側ゴム部材として1層以上のインナーライナー56を有する。また、カーカスプライ57の本体部と折り返し部とに挟まれた部分には、ビード部54からサイドウォール部53の内部補強ゴムとして、硬フィラーゴム68a、軟フィラーゴム68bからなるビードフィラーゴム68を有する。また、ビードフィラーゴム68とカーカスプライ57の折り返し部との間には、ハットゴム67が配置されている。
【0017】
図2は、図1に示す空気入りタイヤ51の生タイヤを成型する工程の概略を示す図である。この工程は、例えば前出の特開2004−174765号公報に記載されている成型システムを用いて行うことができる。
まず、回転しているバンドドラム(図示せず)にインナーライナー56、ゴムチェーファー66、ハットゴム67、ワイヤーチェーファー58、カーカスプライ57等のバンド構成部材を次々と供給して、その周囲に巻き付け、円筒状のバンドを成型する(工程P1)。
【0018】
次いで、図示しないトランスファー装置により、バンドをバンドドラムから外し、図示しないタイヤ成型ドラムに嵌合させるとともに、ビードフィラーゴム68がプリセットされたビードコア55をバンドの外周側に配置する(工程P2)。
【0019】
次に、一対のビードコア55を互いに接近させながら、タイヤ成型ドラムをトロイダル状に膨出させるとともに、図示しない折り返し機構によりビードコア55より軸線方向外側のバンドを半径方向外側に向かって折り返す(工程P3)。このシェーピング工程により、生ケースが成型される。次に、生ケースの外周にベルト層59を貼付ける(工程P4)。
【0020】
これ以後はリボン状ゴムを積層することにより、順次、クッションゴム61、サイドウォールゴム65、ベーストレッドゴム62、キャップトレッドゴム63、及びミニサイドゴム64を形成する(工程P5〜P9)。以上により生タイヤが成型される。成型された生タイヤは図示しない加硫機により加硫成型され、製品タイヤとなる。
【0021】
工程P5〜P9におけるリボン状ゴムの積層は図3に示す成型システム1により行われる。この成型システム1は、基台11と、その側面から突出した回転軸12と、回転軸12に取り付けられた成型ドラム13とを備えており、基台11に内蔵されたモータにより回転軸12とともに成型ドラム13が回転可能である。
【0022】
成型ドラム13の外周面に口金を向けて押出機2が配置されている。また、図示を省略したが、押出機2の口金の前方には図7のリボン貼付け装置APと同様な貼付け装置が配置されている。押出機2は投入されたゴム材料をリボン状にして口金から押出し、貼付け装置はこのリボン状ゴムRを成型ドラム13の外周面に貼付けることが出来る。押出機2及び貼付け装置は、成型ドラム13の回転軸方向(図の矢印X方向)に移動することが出来るとともに、回転軸に直角な方向(図の矢印Y方向)にも移動することが出来る。また、図の矢印θ方向(X方向及びY方向に垂直な直線Zの回り)に揺動することも出来る。さらに、押出す向きをある程度変えることが出来るとともに、成型ドラム13の外周面に沿って移動することも出来る。押出機2及び貼付け装置はコントローラ5により駆動され、コントローラ5はコンピュータ4からの制御信号により制御される。
【0023】
成型ドラム13の外周には、工程P1〜P4により形成された生ケース及びベルト層59からなるタイヤ構成部材22が配置されており、このタイヤ構成部材22の外側に押出機3からリボン状ゴムRが供給される。成型ドラム13はタイヤ構成部材22とともに回転し、押出機2及び貼付け装置はコントローラ5に駆動制御されて主に回転軸方向に移動しながらリボン状ゴムRをタイヤ構成部材22の外面上に供給するので、リボン状ゴムRはタイヤ構成部材22の上に螺旋状に巻き付けられる。成型ドラム13の回転速度に対する押出機2のX方向の移動速度を制御することにより、リボン状ゴムRをその側縁が一部重なるようにし、その重なり程度も調整して螺旋状に巻き付けてタイヤ構成部材22の外面に円筒状のリボン状ゴム積層体を形成する。
【0024】
コンピュータ4はCPU41及びメモリ42を備えており、メモリ42には押出機2の能力に基づいて予め設計された所要の断面形状のリボン状ゴム積層体を得るための目標形状データ(ここでは、ベーストレッドゴム62、キャップトレッドゴム63を形成するための目標形状データ42a、42bを図示)が記憶されている。
【0025】
形状測定装置3は、成型ドラム13の外周面に配置されたタイヤ構成部材22の外周面に沿った子午線方向の一定の軌道を移動可能であるともに、レーザ光LBを送受し、その時間差に基づいて、形状測定装置3のレーザ光送出部から反射位置までの距離を測定することが出来る。従って、工程P5〜P9の各々において積層された個々のリボン状ゴム積層体、即ちクッションゴム61、サイドウォールゴム65、ベーストレッドゴム62、キャップトレッドゴム63、及びミニサイドゴム64までの距離を測定することが出来るので、各リボン状ゴム積層体を形成する前後の距離の差を演算することにより、各リボン状ゴム積層体の形状データを得ることが出来る。
【0026】
そして、各リボン状ゴム積層体の形状データと、メモリ42に記憶されている目標形状データとを比較し、その差異に応じて、各リボン状ゴム積層体の外側に重ねて配置されるリボン状ゴム積層体の目標形状データを補正する。図1の場合は、クッションゴム61の積層形状の測定データとその目標形状データとの差異に応じて、サイドウォールゴム65及びベーストレッドゴム62の目標形状データを補正し、サイドウォールゴム65の積層形状の測定データとその目標形状データとの差異に応じて、ベーストレッドゴム62の目標形状定データを補正し、ベーストレッドゴム62の積層形状の測定データとその目標形状データとの差異に応じて、キャップトレッドゴム63及びミニサイドゴム64の目標形状データを補正し、キャップトレッドゴム63の積層形状の測定データとその目標形状データとの差異に応じて、ミニサイドゴム64の目標形状データを補正する。最も内側のリボン状ゴム積層体、即ちクッションゴム61、及びサイドウォールゴム65のうち、クッションゴム61に重ならない部分については、生ケースの目標形状データと測定データとの差異に応じて、補正する。また、クッションゴム61のうち、ベルト層59に重ねて配置される部分は、ベルト層59の目標形状データと測定データとの差異に応じて、補正する。
【0027】
このように補正した目標形状データに基づいて、リボン状ゴム積層体を形成する。以下、ベーストレッドゴム62及びキャップトレッドゴム63を積層する工程(P7、P8)について説明する。ここで、便宜上、トレッドゴムは図4に示すように、クッションゴム61のタイヤ半径方向外側にベーストレッドゴム62が積層され、そのタイヤ半径方向外側にキャップトレッドゴム63が積層され、これら3つのゴムのタイヤ軸方向外側にミニサイドゴム64が積層された断面形状を有するものとする。
【0028】
まずコンピュータ4のCPU41は、メモリ42からベーストレッドゴム62の目標形状データ42aを読み出し、そのデータに基づいてコントローラ5を制御することにより、成型ドラム13を回転させるとともに押出機2を動作させ、成型ドラム13の外周に配置されているクッションゴム61の外側にベーストレッドゴム62を積層する(ステップS1)。
【0029】
ベーストレッドゴム62が積層されたら、その形状を測定する(ステップS2)。具体的には、成型ドラム13の回転を停止させ、図6に示すように、形状測定装置3をベーストレッドゴム62の外側のタイヤ子午線方向の一定の軌道を通るように移動させながら、レーザ光LBを送出し、ベーストレッドゴム62の表面からの反射光を検出する。レーザ光LBの送出から反射光の検出までの時間差より、上記軌道からベーストレッドゴム62の表面までの距離d1を求める。この距離測定データはコンピュータ4に送られる。コンピュータ4のCPU41は、ベーストレッドゴム62を積層する前に測定しておいたクッションゴム61の表面までの距離d0から距離d1を減算することにより、タイヤ周方向の1つの位置におけるベーストレッドゴム62のタイヤ幅方向(タイヤ子午線方向)の断面形状を求める。次いで成型ドラム13を一定角度回転させた後に、上記と同様にして、そのタイヤ周方向位置における断面形状を求める。この動作を繰り返すことにより、タイヤ周方向全体に対する断面形状を求める。
【0030】
次いで、コンピュータ4のCPU41は、ベーストレッドゴム62の形状の測定データと、目標形状データ42aとの差異を算出し(ステップS3)、その差異が予め定められた許容範囲であるか否かを判断する(ステップS4)。
【0031】
この判断の結果、許容範囲であった場合は(ステップS4:YES)、メモリ42からキャップトレッドゴム63の目標形状データ42bを読み出し、そのデータに基づいてコントローラ5を制御することにより、成型ドラム13を回転させるとともに押出機2を動作させ、成型ドラム13の外周面に配置されているベーストレッドゴム62の外面にキャップトレッドゴム63を積層する(ステップS6)。
【0032】
一方、許容範囲でなかった場合は(ステップS4:NO)、メモリ42に記憶されているキャップトレッドゴム63の目標形状データ42bを補正した後に(ステップS5)、その補正後のデータに基づいてコントローラ5を制御することにより、ベーストレッドゴム62の外面にキャップトレッドゴム63を積層する(ステップS6)。
【0033】
ここでは、キャップトレッドゴム63の目標形状データ42bの補正は上記の差異を相殺するように変更する補正である。例えば図6に示すように、ベーストレッドゴム62の目標形状データ42aに対応する外面の目標形状が62aであり、外面の測定形状が62bであった場合、ベーストレッドゴム62のタイヤ軸方向の左端部の斜面では積層量が不足し、斜面を登った部分では積層量が過剰となっている。従って、キャップトレッドゴム63を予めメモリ42に記憶されている目標形状データ42bに基づいて積層した場合、その外面形状には積層されたベーストレッドゴム62の目標形状との差異が反映されてしまう。
【0034】
そこで、キャップトレッドゴム63をベーストレッドゴム62の外面に積層するときに、ベーストレッドゴム62の上記斜面上に積層する量を増やし、上記斜面を登った部分の上に積層する量を減らすように、目標形状データ42bを変更する。そして、このように変更した目標形状データに基づいてキャップトレッドゴム63を積層することにより、ベーストレッドゴム62の目標形状との差異が低減或いは相殺されるので、キャップトレッドゴム63の外面の形状を予め設計された目標形状に近づけることが出来る。
【0035】
ここで、積層量の増減はリボン状ゴムRの側縁部の重ね幅を増減することにより実現することが出来る。また、重ね幅を変化させる代わりに、押出機2から押し出されたリボン状ゴムRの断面積を増減させることにより実現することも出来る。この断面積の増減は、押出機2から押し出されたリボン状ゴムRを貼付け装置で貼付けるときに、そのローラ対の間隔を増減するか、又は成型ドラム13の回転速度を増減すること等により、実現することが出来る。
【0036】
このように、本発明の実施形態によれば、空気入りタイヤ51のゴム部材であるクッションゴム61、ベーストレッドゴム62、キャップトレッドゴム63、ミニサイドゴム64、及びサイドウォールゴム65をリボン状ゴムの積層により形成するとともに、各ゴム部材を積層するときに、内側に配置されているタイヤ構成部材の外面の実際の形状とその目標形状との差異に応じて、外側に重ねて配置するゴムの断面の目標形状を補正するので、生タイヤの成型工程の途中で複数のトレッドゴムを順次形成しているときに、最後に形成するトレッドゴム(ここではミニサイドゴム64)以外のゴムについては、実際の積層形状が目標形状から許容範囲を越えて外れたとしても、外側に積層するゴムの積層形状を補正することで、生タイヤの最終形状を目標形状に近づけることが出来る。このため、タイヤ製造の歩留りが向上するとともに、コストが低減する。また、製品タイヤの形状のバラツキが低減するため、製品タイヤの品質が向上する。
【0037】
なお、以上の実施形態では、円筒状のバンドドラムを用いてバンドの成型を行い、トロイダル状に膨出可能な成型ドラムを用いて生ケースの成型を行い、その生ケース上にベルトを貼付けた後に、リボン状ゴムを積層することにより、トレッドゴムなどを積層したが、製品タイヤの内面形状に対応する外面形状を有する剛体コア上に各タイヤ構成部材を順次形成することにより、生タイヤを成型するように構成してもよい。この場合、空気入りタイヤの子午線断面形状は図1とは異なるものとなる。
【0038】
また、以上の実施形態では、トロイダル状にシェーピングされ生ケース上に積層されるゴム部材のみリボン積層法により形成したが、その他のゴム部材、即ちインナーライナー56、ゴムチェーファー66、ハットゴム67、及びビードフィラーゴム68もリボン積層法により形成することが出来る。ここで、インナーライナー56を2層のゴムで構成した場合、或いはビードフィラーゴム68の硬フィラーゴム68a、軟フィラーゴム68bについては、2層のうち先に積層するゴムの目標形状データと実測形状データとの差異に応じて、後から重ねて積層するゴムの目標形状データを補正することが出来る。
【0039】
さらに、以上の実施形態では、リボン状ゴム積層体の目標形状と実際の形状との差異に応じて、その外側に積層するリボン状ゴム積層体の目標形状を補正しているが、リボン状ゴム積層体の目標重量と実際の重量との差異に応じて、その外側に積層するリボン状ゴム積層体の目標重量を補正するように構成してもよい。この場合、個々のリボン状ゴム積層体の重量は、その積層前後に成型ドラム13から取り出して測定した重量の差から求めることも出来るし、ゴム押出機2と貼付け装置との間にロードセルなどの重量センサを配置し、ゴム押出機2から押し出されたリボン状ゴム積層体1個分のリボン状ゴムRの重量を測定することにより求めることも出来る。
【0040】
また、形状、重量の双方について、目標データと測定データとの差異に応じて、その外側に配置されるリボン状ゴム積層体の目標データを補正するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態の空気入りタイヤのタイヤ軸方向の左半分の子午線断面図である。
【図2】本発明の実施形態の生タイヤを成型する工程の概略を示す図である。
【図3】本発明の実施形態のリボン状ゴムの積層を行うシステムの構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態のトレッドゴムの断面形状を示す図である。
【図5】本発明の実施形態のベーストレッドゴム及びキャップトレッドゴムを積層する工程の詳細を示す図である。
【図6】本発明の実施形態のベーストレッドゴムの形状を測定する方法を説明するための図である。
【図7】リボン積層法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0042】
2・・・押出機、3・・・形状測定装置、4・・・コンピュータ、5・・・コントローラ、13・・・成型ドラム、22・・・タイヤ構成部材、42a・・・ベーストレッドゴムの目標形状データ、42b・・・キャップトレッドゴムの目標形状データ、62・・・ベーストレッドゴム、63・・・キャップトレッドゴム、R・・・リボン状ゴム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された目標形状又は重量となるようにタイヤ構成部材を成型する工程と、該成型されたタイヤ構成部材の形状又は重量を測定する工程と、該形状又は重量とその目標との差異に応じて、該タイヤ構成部材の外面に形成するリボン状ゴム積層体の予め設定された目標形状又は重量を補正する工程と、該リボン状ゴム積層体が補正された目標形状又は重量となるように、リボン状ゴムを前記タイヤ構成部材の外面に巻回し、積層する工程とを有することを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のタイヤの製造方法において、
前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケースであることを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項3】
請求項1記載のタイヤの製造方法において、
前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケース及びその外周面に積層されたベルトであることを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項4】
請求項1記載のタイヤの製造方法において、
前記タイヤ構成部材は、トロイダル状に成型された生ケースの外周面に積層されたベルトの外周面に形成されたリボン状ゴム積層体であることを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤの製造方法において、
前記差異が所定の基準を越えている場合に、前記目標形状又は重量の補正を行うことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項6】
タイヤ構成部材の目標形状又は重量データ、及び該タイヤ構成部材の外面にリボン状ゴムを巻回し、積層することにより形成されるリボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データが記憶される目標データ記憶手段と、前記タイヤ構成部材の目標形状又は重量データに基づいて、前記タイヤ構成部材が目標形状又は重量となるように成型するタイヤ構成部材成型手段と、前記リボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データに基づいて、前記リボン状ゴム積層体が目標形状又は重量となるように形成するリボン状ゴム積層体形成手段と、前記成型されたタイヤ構成部材の形状又は重量を測定する測定手段と、前記タイヤ構成部材の形状又は重量の測定データとその目標データとの差異に応じて、前記リボン状ゴム積層体の目標形状又は重量データを補正する補正手段とを有することを特徴とするタイヤ製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−279605(P2008−279605A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−123129(P2007−123129)
【出願日】平成19年5月8日(2007.5.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】