説明

タイヤの製造方法

【課題】張力が高いガスバリア性樹脂を成型後に付与することで、成型時の拡張で剥離させることなくガスバリア性樹脂をバリア層に導入することができ、且つ、ガスバリア性を向上することができるタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のタイヤの製造方法は、タイヤを成型する成型工程後に、前記成型されたタイヤの内面に、少なくとも2層のバリア層を含む積層体を形成する積層体形成工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関し、張力が高いガスバリア性樹脂を成型後に付与することで、成型時の拡張で剥離させることなくガスバリア性樹脂をバリア層に導入することができ、且つ、ガスバリア性を向上することができるタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの燃費を向上させるために、タイヤを軽量化させる開発が行われている。タイヤを軽量化させる方法として、ガスバリア性を有するフィルムをインナーライナーとして用いる手法がある。
通常、ガスバリア性を有するフィルム(インナーライナー)は、タイヤを成型する際に配置される。ここで、ガスバリア性が良好である樹脂の中には、張力が高すぎるためタイヤ成型時の拡張に耐えられず樹脂層がタイヤより剥離してしまうことから、インナーライナーの材料として用いることができないものがあり、インナーライナーの材料が限定されてしまうという問題がある。
また、ガスバリア性を有するフィルムとして、金属蒸着フィルム(例えば、特許文献1参照)をタイヤ成型時に配置すると、タイヤ成型時の拡張時において、フィルムが割れてしまい(フィルムにクラックが入ってしまい)、インナーライナーとしての効果(ガスバリア性)が失われてしまうという問題がある。
【0003】
また、曲面を形成するタイヤ内面にガスバリア性を有するフィルムを貼ることが困難であるという問題を解決すべく、ガスバリア性を有するフィルムを溶液状にして塗布することが従来よりなされている(例えば、特許文献2及び3参照)。
しかしながら、上記ガスバリア性を有するフィルムは、単層構造であるため、特に、きず(クラック)が入った場合などに、ガスバリア性が低くなってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−509111号公報
【特許文献2】特開平5−318618号公報
【特許文献3】特開平5−278409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、張力が高いガスバリア性樹脂を成型後に付与することで、成型時の拡張で剥離させることなくガスバリア性樹脂をバリア層に導入することができ、且つ、ガスバリア性を向上することができるタイヤの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、タイヤを成型した後に、前記成型されたタイヤの内面に、ガスバリア性樹脂を含むバリア層を少なくとも2層含む積層体を形成することにより、張力が高いガスバリア性樹脂を成型後に付与することで、成型時の拡張で剥離させることなくガスバリア性樹脂をバリア層に導入することができ、且つ、ガスバリア性を向上することができるタイヤの製造方法を実現できることを見出した。
【0007】
即ち、本発明のタイヤの製造方法は、タイヤを成型する成型工程後に、前記成型されたタイヤの内面に、ガスバリア性樹脂を含むバリア層を少なくとも2層含む積層体を形成する積層体形成工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、前記積層体形成工程において、前記バリア層を貼付により形成することもできる。
また、前記積層体形成工程において、前記バリア層を塗布により形成することもできる。
また、前記塗布に用いられる塗布液における溶媒が、沸点120℃以上のアルコールを含むことが好ましい。
また、前記沸点120℃以上のアルコールが、ベンジルアルコール及びエチレングリコールの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
また、前記タイヤを加硫する加硫工程をさらに含み、該加硫工程前に、前記積層体形成工程を行うこともできる。
また、前記タイヤを加硫する加硫工程をさらに含み、該加硫工程後に、前記積層体形成工程を行うこともできる。
また、前記積層体は、前記バリア層に隣接する弾性体層を含むことが好ましい。
また、前記積層体は、前記バリア層と前記弾性体層とを交互に含むことが好ましい。
また、前記バリア層に含まれるガスバリア性樹脂の20℃、65%RHでの空気透過係数が800×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下であることが好ましい。
また、前記積層体は、前記バリア層を7層以上有し、前記バリア層が、一層の平均厚さ0.001μm〜10μmの層であり、前記弾性体層が、一層の平均厚さ0.001μm〜40μmの層であることが好ましい。
また、前記ガスバリア性樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(エステル)、及びポリメタクリル酸(エステル)からなる群から選択された少なくとも1種を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、張力が高いガスバリア性樹脂を成型後に付与することで、成型時の拡張で剥離させることなくガスバリア性樹脂をバリア層に導入することができ、且つ、ガスバリア性を向上することができるタイヤの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のタイヤの製造方法により製造されるタイヤの一例を示す部分断面図である。
【図2】本発明における積層体の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(タイヤの製造方法)
本発明のタイヤの製造方法は、少なくとも、成型工程と、積層体形成工程とを含み、さらに必要に応じて、加硫工程等のその他の工程を含む。
【0012】
<タイヤ>
以下に、本発明のタイヤの製造方法により製造されるタイヤの一例を、図面を用いて詳細に説明する。
【0013】
以下に、図1に示すように、タイヤは、例えば、一対のビード部9及び一対のサイドウォール部10と、両サイドウォール部10に連なるトレッド部11とを有し、上記一対のビード部9間にトロイド状に延在して、これら各部9、10、11を補強するカーカス(カーカスコード+カーカスゴム)12と、該カーカス12のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された2枚のベルト層からなるベルト13と、上記ビード部9内に夫々埋設したリング状のビードコア14のタイヤ半径方向外側に配置したビードフィラー15を備え、さらに、該カーカス12の内側のタイヤ内面にはインナーライナー16が配置されている。
本発明において、インナーライナー16は、少なくとも2層のバリア層を含む積層体によって構成されていている。
【0014】
<成型工程>
前記成型工程は、タイヤを成型する工程である。
【0015】
−成型−
前記タイヤの成型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コードを数枚巻きつけ、該数枚巻きつけたコードの両側にビードをはめ、その後、トレッドを巻きつけて、生タイヤ(グリーンタイヤ)を成型すること、などが挙げられる。
【0016】
<加硫工程>
前記加硫工程は、前記成型工程において成型されたタイヤ(生タイヤ)を加硫する工程である。
−加硫−
前記加硫の時間、温度、圧力としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0017】
<積層体形成工程>
前記積層体形成工程は、前記成型されたタイヤの内面に、ガスバリア性樹脂を含むバリア層を少なくとも2層含む積層体を形成する工程である。
前記積層体形成工程は、成型工程後に行われる限り、加硫工程前に行われてもよいし、加硫工程後に行われてもよい。
ここで、前記積層体形成工程が、加硫工程前に行われると、加硫工程後に加硫済みタイヤの形状を保持しつつ冷却するPCI処理(ポストキュアインフレータ処理)により結晶が成長する可能性があり、バリア性が向上することもある。
加硫前に前記積層体を付与する時、ブラダーと前記積層体が密着することがあり、これを防止するために、離型剤を塗布してもよい。
加硫後に前記積層体を付与すると、前記積層体がブラダーに密着して加硫後に剥離するおそれがなくなる。
【0018】
−バリア層の形成方法−
前記バリア層の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、バリア層を貼付により形成する方法、バリア層を塗布により形成する方法、などが挙げられる。
【0019】
−−貼付−−
前記貼付としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガスバリア性樹脂フィルムをタイヤ内面に接着剤を用いて接着すること、などが挙げられる。ここで、ガスバリア性樹脂フィルムをタイヤ内面に1層づつ貼り付けて、2層以上のバリア層を形成してもよいし、2層以上のバリア層を含む積層体を予め作製し、該作製した積層体をタイヤ内面に貼り付けて、2層以上のバリア層を形成してもよい。
タイヤ内面は湾曲しているため前記樹脂フィルムの貼り付けが困難なこともある。あらかじめ、前記樹脂フィルムに熱を加え、タイヤ内面の形状に成型した後に、タイヤ内面にフィルムを貼り付けることで効率化することができる。
【0020】
−−塗布−−
前記塗布としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶液状(溶融状)にしたガスバリア性樹脂をタイヤ内面に塗布すること、などが挙げられる。ここで、ガスバリア性樹脂層の厚みを厚くするために、重ね塗りしてもよい。
また、前記塗布の方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレー塗布、はけ塗り、などが挙げられる。
さらに、塗布の方式としてタイヤ内面に溶液状にしたガスバリア性樹脂を入れ、タイヤを回転させることで均一に塗布する方法が挙げられる。
【0021】
前記塗布に用いられる塗布液における溶媒としては、ガスバリア性樹脂を溶解可能であり、かつ、共沸して一度に蒸発する溶媒である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、沸点120℃以上のアルコールを含むことが好ましい。
前記塗布液における溶媒として、沸点120℃以上のアルコールを含むことより、ガスバリア樹脂層が均一となり、ガスバリア性・耐クラック性が向上する効果が得られる。
また、前記塗布液における溶媒は、単一の溶媒でもよく、複数の溶媒からなる混合溶媒であってもよい。
【0022】
前記沸点120℃以上のアルコールの含有量としては、前記塗布液における溶媒に対して、5体積%〜50体積%である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、15体積%〜35体積%が好ましい。
前記含有量が5体積%未満又は50体積%超であると、ガスバリア樹脂を均一に塗布することができない。一方、前記好ましい範囲内であると、ガスバリア樹脂層が均一となり、ガスバリア性・耐クラック性が向上する効果が得られる点で好ましい。
【0023】
前記アルコールの沸点としては、120℃である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、120℃〜250℃が好ましく、150℃〜180℃がより好ましい。
前記アルコールの沸点が120℃未満であると、ガスバリア樹脂を均一に塗布することができず、250℃を超えると、溶媒を蒸発させるのが困難となることがある。一方、前記より好ましい範囲内であると、ガスバリア性樹脂を溶解させる(混合)溶媒と同時に蒸発が可能となる点で好ましい。
前記アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ガスバリア性樹脂の溶解性の点で、ベンジルアルコール、エチレングリコール、などが好ましい。
【0024】
−積層体−
前記積層体は、少なくとも、2層以上のバリア層を含み、さらに必要に応じて、弾性体層等のその他の層を含む。
ここで、前記積層体は、耐クラック性・タイヤ内面との接着性等の観点から、前記バリア層に隣接する弾性体層を含むことが好ましく、また、耐クラック性をさらに向上させる・走行後の内圧保持性を向上させる観点から、前記バリア層と前記弾性体層とを交互に含むことがより好ましい。
また、前記積層体とタイヤ内面との接着については、前記積層体の最外層がバリア層であると、タイヤ内面におけるゴムとの接着を得ることができないため、アンカーコートなどが必要と考えられる。前記アンカーコートとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシ残基と脂肪族不飽和結合残基を持つゴム組成物にウレタンを貼ったものなど、が挙げられる。
【0025】
以下に、前記インナーライナー(積層体)の一例を、図を参照しながら詳細に説明する。
図2に示すように、インナーライナーは、例えば、ガスバリア性樹脂を含むバリア層23,25と、エラストマーを含む弾性体層22,24,26とを交互に積層してなる5層構造の積層体21からなり 、タイヤ27に接着されている。ここで、図2の積層体は、バリア層と弾性体層とが交互に積層された5層構造であるが、本発明における積層体は、これに限定されるものではない。
【0026】
−−積層体(バリア層)に含まれるバリア性樹脂の空気透過係数
前記積層体に含まれるバリア性樹脂の20℃、65%RH条件下での空気透過係数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、800×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が好ましく、8.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下がより好ましく、5.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が特に好ましく、3.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が最も好ましい。20℃、65%RHにおける空気透過係数が800×10−12cm・cm/cm・sec・cmHgを超えると、タイヤの内圧保持性を高めるために、前記積層体を厚くせざるを得ず、インナーライナーの重量を十分に低減できなくなる。
【0027】
−−積層体の層構造−−
前記積層体の層構造としては、バリア層を2層以上有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、バリア層を7層以上有することがより好ましい。
前記バリア層を2層以上有することにより、きず(クラック)が入ってバリア層の一部の機能が失われた場合であっても、機能が失われていないバリア層によりインナーライナーの耐空気透過性が低減する(タイヤの内圧が低下する)ことを防止することができる。
【0028】
前記バリア層と前記弾性体層との合計層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、2層以上が好ましく、3層以上がより好ましく、5層以上がさらに好ましく、21層以上がより好ましく、48層以上がさらに好ましく、65層以上が特に好ましい。前記積層体は、さらに多層の構造体としてもよく、前記バリア層と前記弾性体層との合計層数として、128層以上、256層以上、512層以上、1024層以上とすることもできる。
前記合計層数を5層以上とすることにより、ピンホール、割れなどの欠陥が連続して発生することを抑制できる結果、積層体の全層の破断を防ぐことができ、高いガスバリア性、耐屈曲性(耐クラック性)・走行後の高い内圧保持性等の特性を有している。
【0029】
前記積層体は、前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)以外のその他の層(C層)を有することも可能である。また、前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)の積層順としては、例えば、
(1)A,B,A,B・・・A,B(つまり、(AB)
(2)A,B,A,B・・・・・A(つまり、(AB)A)
(3)B,A,B,A・・・・・B(つまり、(BA)B)
(4)A,A,B,B・・・A,A,B,B(つまり、(AABB)
等の積層順を採用することができる。また、その他の層(C層)を有する場合、例えば、
(5)A,B,C・・・A,B,C(つまり、(A,B,C)
等の積層順を採用することができる。
【0030】
前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)の積層順としては、上記(1)、(2)又は(3)のように、前記バリア層(A層)と前記弾性体層(B層)とが交互に積層されていることが好ましい。
さらに、前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)の積層順としては、上記(3)のように、前記積層体の両最外層が前記弾性体層(B層)であることが好ましい。前記積層体の両最外層が前記弾性体層(B層)であると、タイヤとの接着性の点で、有利である。
【0031】
また、前記積層体は、前記バリア層(A層)、前記弾性体層(B層)及びその他の層(C層)等からなる積層体の両面又は片面に、支持層が積層されてもよい。この支持層としては特に限定されず、例えば、一般的な合成樹脂層、合成樹脂フィルム等も用いられる。
【0032】
前記積層体において、前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)の一層の平均厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、それぞれ、0.001μm以上10μm以下、0.001μm以上40μm以下が好ましい。前記バリア層(A層)及び前記弾性体層(B層)の一層の平均厚みを前記好ましい範囲内とすることで、前記積層体の全体の厚さが同じである場合でも、層の数を増やすことができ、その結果、前記積層体のガスバリア性、耐屈曲性等をさらに向上させることができる。
【0033】
なお、前記積層体は、ガスバリア性樹脂を含み、上記範囲の厚みを有するバリア層(A層)と共に、エラストマーを含む弾性体層(B層)が積層されているため、ガスバリア性樹脂自体の延性が低い場合でも、延性が低い樹脂組成物からなるバリア層(A層)の延性を高めることができる。これは、延性に優れた弾性体層(B層)に、延性の低い樹脂組成物からなるバリア層(A層)を薄く積層させることで、この延性の低い樹脂組成物が、延性の高い状態に転移するためと考えられる。バリア層(A層)は一般に延性が低い材料からなるが、このように各層の厚みを非常に薄くすることで、タイヤ用インナーライナー等に求められるガスバリア性と耐屈曲性とを高度に両立することができる。そのため、積層体は、屈曲などの変形をさせて使用する場合でも、高いガスバリア性等の特性を維持することができる。
【0034】
前記バリア層(A層)一層の平均厚みの下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前述したように0.001μmが好ましく、0.01μmがより好ましく、0.05μmが特に好ましい。0.001μm以下では成膜安定性が得られず、ピンホールが生じる確率が高くなることから十分なバリア性が得られなくなるおそれがある。一方、前記バリア層(A層)一層の平均厚みの上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前述したように10μmが好ましく、7μmがより好ましく、5μmがさらに好ましく、3μmがさらに好ましく、1μmが最も好ましい。バリア層が10ミクロン以上あると屈曲疲労性が低下し、走行後の内圧保持性が著しく低下する恐れがある。
【0035】
前記バリア層(A層)一層の平均厚みが上記下限より小さいと、均一な厚みで成形することが困難になり、前記積層体のガスバリア性及びその耐屈曲性が低下するおそれがある。逆に、前記バリア層(A層)一層の平均厚みが上記上限を超えると、前記積層体全体の厚みが同じである場合、前記積層体の耐久性及び耐クラック性が低下するおそれがある。また、前記バリア層(A層)一層の平均厚みが上記上限を超えると、前記バリア層(A層)の延性向上が十分に発現しないおそれがある。なお、前記バリア層(A層)一層の平均厚みとは、前記積層体に含まれる全バリア層(A層)の厚みの合計をバリア層(A層)の層数で除した値をいう。
【0036】
前記弾性体層(B層)一層の平均厚みの下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、弾性体層の厚みが薄いとバリア層を緩衝する効果が得られないため、0.001μmが好ましく、0.01μmがより好ましく、0.1μmが特に好ましい。一方、前記弾性体層(B層)一層の平均厚みの上限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、厚いとタイヤ重量が増えて好ましくないため、40μmが好ましく、30μmがより好ましく、20μmがさらに好ましい。
【0037】
前記弾性体層(B層)一層の平均厚みが上記上限を超えると、前記積層体全体の厚みが同じである場合、前記積層体の耐久性及び耐クラック性が低下するおそれがある。なお、前記弾性体層(B層)一層の平均厚みとは、前記積層体に含まれる全弾性体層(B層)の厚みの合計を弾性体層(B層)の層数で除した値をいう。
【0038】
なお、前記弾性体層(B層)一層の平均厚みに関し、前記弾性体層(B層)一層の平均厚みの前記バリア層(A層)一層の平均厚みに対する比(B層/A層)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1/3以上が好ましく、1/2以上がより好ましい。また、上記比が、1以上、即ち、前記弾性体層(B層)一層の平均厚みが、前記バリア層(A層)一層の平均厚みと同じ又はそれ以上であることがさらに好ましく、2以上であることがさらに好ましく、3以上であることが特に好ましい。前記バリア層(A層)と前記弾性体層(B層)との厚みの比をこのようにすることで、前記バリア層(A層)の耐クラック性が向上する。
【0039】
さらに、前記積層体は、架橋されていることが好ましい。前記積層体が架橋されていない場合、タイヤの加硫工程で前記積層体(インナーライナー)が著しく変形して不均一となり、積層体のガスバリア性、耐屈曲性、耐疲労性が悪化するおそれがある。ここで、架橋方法としては、エネルギー線を照射する方法が好ましく、該エネルギー線としては、紫外線、電子線、X線、α線、γ線等の電離放射線が挙げられ、これらの中でも電子線が特に好ましい。電子線の照射は、前記バリア層をフィルムやシート等の成形体に加工した後に行うことが好ましい。ここで、電子線の線量は、10〜500kGyの範囲が好ましく、50〜300kGyの範囲がより好ましい。電子線の線量が10kGy未満では、架橋が進み難く、一方、500kGyを超えると、成形体の劣化が進み易くなる。また、前記バリア層は、他層との粘着性を向上させるために、酸化法や凹凸化法等によって表面処理を施してもよい。酸化法としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、凹凸化法としては、サンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの中でもコロナ放電処理が好ましい。
【0040】
前記積層体に含まれる、ガスバリア層、弾性体層には、架橋助剤としてラジカル架橋剤を配合してもよい。ガスバリア層、弾性体層がラジカル架橋剤を含むことで、活性エネルギー線照射時の架橋効果を高め、多層構造体の層間接着性を更に向上させ、加硫工程での積層体の変形をおさえることができる。また、ラジカル架橋剤が含まれていない場合と比べて、活性エネルギー線の照射量を少なくすることも可能である。ラジカル架橋剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましい。
【0041】
前記ラジカル架橋剤としては例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオフェニレングリコールジアクリレート等が挙げられる。なお、これのらのラジカル架橋剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
−−バリア層−−
前記バリア層は、インナーライナー(積層体)の空気バリア性を実現し、タイヤの内圧を保持するため、ガスバリア性樹脂を含む層である。前記バリア層を構成する樹脂組成物がガスバリア性樹脂を含むことで、ガスバリア性に優れるインナーライナー(積層体)を得ることができる。
【0043】
前記ガスバリア性樹脂とは、気体の透過を防止する機能を有する樹脂である。前記ガスバリア性樹脂の20℃、65%RH条件下での空気透過係数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、800×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が好ましく、8.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下がより好ましく、5.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が特に好ましく、3.0×10−12cm・cm/cm・sec・cmHg以下が最も好ましい。20℃、65%RHにおける空気透過係数が800×10−12cm・cm/cm・sec・cmHgを超えると、タイヤの内圧保持性を高めるために、前記バリア層を厚くせざるを得ず、インナーライナーの重量を十分に低減できなくなる。
【0044】
ここで、前記ガスバリア性樹脂の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(PMA)、ポリメタクリル酸(PMMA)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、前記ガスバリア樹脂を変性(改質)したものを用いてもよい。
これらの中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル樹脂が、ガスバリア性の点で好ましく、さらに、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニリデンが、ガスバリア性に加えて、溶融成形性・溶媒への溶解性の点で特に好ましい。また、前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)は、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)にエポキシ化合物等を反応させて得られる化合物であり、通常のエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)に比べて弾性率が低い。このため、バリア層の弾性率を低下させ、耐クラック性等の耐久性を向上させることもできる。
【0045】
−−−エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)及び変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)−−−
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、構造単位として、エチレン単位及びビニルアルコール単位を有し、通常、エチレンとビニルエステルとを重合し、得られるエチレン−ビニルエステル共重合体をケン化することにより得られる。
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、インナーライナーのガスバリア性、耐屈曲疲労性、溶融成形性・溶媒への溶解度及び層間接着性を向上させる観点から、エチレン含有量(EVOH中の単量体単位の総数に対するエチレンの数の割合)が3〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることが更に好ましく、20〜55モル%であることが一層好ましく、25〜50モル%であることが特に好ましい。エチレン含有量が3モル%未満では、インナーライナーの耐水性、耐熱水性、高湿度下でのガスバリア性及び溶融成形性が低下するおそれがあり、一方、70モル%を超えると、インナーライナーのガスバリア性が低下するおそれがある。
【0046】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、インナーライナーのガスバリア性、耐湿性及び層間接着性を向上させる観点から、ケン化度(EVOH中のビニルアルコール単位及びビニルエステル単位の総数に対するビニルアルコール単位の数の割合)が80%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが一層好ましく、99%以上であることが特に好ましい。一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、99.99%以下が好ましい。EVOHのケン化度が80%未満では、インナーライナーの溶融成形性、ガスバリア性、耐着色性及び耐湿性が低下するおそれがある。
【0047】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点から、メルトフローレート(MFR)が190℃、21.18N荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることが更に好ましい。
【0048】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、1,2−グリコール結合構造単位の含有量G(モル%)が下記式:
G ≦ 1.58−0.0244×E
[式中、Gは1,2−グリコール結合構造単位の含有量(モル%)であり、EはEVOH中のエチレン単位含有量(モル%)であり、但し、E≦64である]の関係を満たし、且つ、固有粘度が0.05〜0.2L/gの範囲であることが好ましい。このようなエチレン−ビニルアルコール共重合体を用いることで、得られるインナーライナー(積層体)は、ガスバリア性の湿度依存性が小さくなり、良好な透明性及び光沢を有し、他の樹脂からなる層への積層も容易になる。なお、1,2−グリコール結合構造単位の含有量は、「S.Aniyaら,Analytical Science Vol.1,91(1985)」に記載された方法に準じて、EVOH試料をジメチルスルホキシド溶液とし、温度90℃における核磁気共鳴法によって測定されることができる。
【0049】
前記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)は、エチレン単位及びビニルアルコール単位の他に、他の繰り返し単位(以下、構造単位ともいう)、例えば、これらの単位から誘導した繰り返し単位を1種又は複数種有する重合体である。なお、変性EVOHの好適なエチレン含有量、ケン化度、メルトフローレート(MFR)、1,2−グリコール結合構造単位の含有量及び固有粘度は、上述のEVOHと同様である。
【0050】
前記変性EVOHは、例えば、下記に示す構造単位(I)及び(II)から選ばれる少なくとも一種の構造単位を有することが好ましく、該構造単位を全構造単位に対して0.5〜30モル%の割合で含有することが更に好ましい。かかる変性EVOHであれば、樹脂又は樹脂組成物の柔軟性及び加工特性、並びにインナーライナーの層間接着性、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。
【化1】

上記式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又はヒドロキシ基を表す。また、R、R及びRのうちの一対が結合していてもよい(但し、R、R及びRのうちの一対が共に水素原子の場合は除く)。また、前記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、ヒドロキシ基、カルボキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい。一方、上記式(II)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又はヒドロキシ基を表す。また、RとR又はRとRは結合していてもよい(但し、RとR又はRとRが共に水素原子の場合は除く)。また、前記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、ヒドロキシ基、アルコキシ基、カルボキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい。
【0051】
前記変性EVOHにおいて、上記構造単位(I)及び/又は(II)の全構造単位に対する含有量の下限は、0.5モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、1.5モル%が更に好ましい。一方、前記変性EVOHにおいて、上記構造単位(I)及び/又は(II)の全構造単位に対する含有量の上限は、30モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、10モル%が更に好ましい。前記構造単位(I)及び/又は(II)を前記特定した割合で含有することで、樹脂又は樹脂組成物の柔軟性及び加工特性、並びにインナーライナーの層間接着性、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。
【0052】
上記構造単位(I)及び(II)において、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基等が挙げられ、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としてはフェニル基等が挙げられる。
【0053】
上記構造単位(I)において、前記R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基であることが好ましく、これらの中でも、それぞれ独立に水素原子、メチル基、ヒドロキシ基又はヒドロキシメチル基であることが更に好ましい。かかるR、R及びRであれば、インナーライナーの延伸性及び熱成形性を更に向上させることができる。
【0054】
EVOH中に上記構造単位(I)を含有させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンとビニルエステルとの共重合において、更に構造単位(I)に誘導される単量体を共重合させる方法、などが挙げられる。該構造単位(I)に誘導される単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3−ヒドロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−1−ペンテン、5−ヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4−アシロキシ−1−ペンテン、5−アシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ヒドロキシ−1−ヘキセン、5−ヒドロキシ−1−ヘキセン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−アシロキシ−1−ヘキセン、5−アシロキシ−1−ヘキセン、6−アシロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等のヒドロキシ基やエステル基を有するアルケンが挙げられる。それらの中でも、共重合反応性、及び得られるインナーライナーのガスバリア性の観点から、プロピレン、3−アシロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ブテン、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましい。具体的には、プロピレン、3−アセトキシ−1−プロペン、3−アセトキシ−1−ブテン、4−アセトキシ−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが更に好ましく、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが特に好ましい。なお、エステルを有するアルケンを用いる場合は、ケン化反応の際に、前記構造単位(I)に誘導される。
【0055】
上記構造単位(II)において、R及びRは共に水素原子であることが好ましい。特に、R及びRが共に水素原子であり、前記R及びRのうちの一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基で、他方が水素原子であることがより好ましい。構造単位(II)中の脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。また、インナーライナー(積層体)のガスバリア性を特に重視する観点から、R及びRのうちの一方がメチル基又はエチル基で、他方が水素原子であることが好ましい。更に、前記R及びRのうちの一方が(CHOHで表される置換基(但し、hは1〜8の整数である)で、他方が水素原子であることも好ましい。この(CHOHで表される置換基においては、hが1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0056】
また、EVOH中に上記構造単位(II)を含有させる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ケン化反応によって得られたEVOHに一価エポキシ化合物を反応させる方法、などが挙げられる。一価エポキシ化合物としては、下記式(III)〜(IX)で表される化合物が好適に挙げられる。
【化2】

上記式(III)〜(IX)中、R、R、R10、R11及びR12は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基等)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基又はシクロアルケニル基等)又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基等)を表す。なお、R及びR又はR11及びR12は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、i、j、k、p及びqは、1〜8の整数を表す。
【0057】
上記式(III)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−エチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、6−エチル−1,2−エポキシヘプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−プロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、などが挙げられる。
【0058】
上記式(IV)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ペンチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘキシルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘプチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−4−フェノキシブタン、1,2−エポキシ−4−ベンジルオキシブタン、1,2−エポキシ−5−メトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−エトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−プロポキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ブトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ペンチルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ヘキシルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−フェノキシペンタン、1,2−エポキシ−6−メトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−エトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−プロポキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ブトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ヘプチルオキシヘキサン、1,2−エポキシ−7−メトキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−エトキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−プロポキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−ブトキシヘプタン、1,2−エポキシ−8−メトキシオクタン、1,2−エポキシ−8−エトキシオクタン、1,2−エポキシ−8−ブトキシオクタン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール、などが挙げられる。
【0059】
上記式(V)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテル、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、ペンタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、ヘプタンジオールモノグリシジルエーテル、オクタンジオールモノグリシジルエーテル、などが挙げられる。
【0060】
上記式(VI)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−プロペン、4−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ブテン、5−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ペンテン、6−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘキセン、7−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘプテン、8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−オクテン、などが挙げられる。
【0061】
上記式(VII)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール、などが挙げられる。
【0062】
上記式(VIII)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、などが挙げられる。
【0063】
上記式(IX)で表される一価エポキシ化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン、などが挙げられる。
【0064】
前記一価エポキシ化合物の中では、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が好ましい。特に、化合物の取り扱いの容易さ及びEVOHに対する反応性の観点から、一価エポキシ化合物の炭素数は、2〜6がより好ましく、2〜4が更に好ましい。また、一価エポキシ化合物は、これらの式で表される化合物のうち式(III)又は(IV)で表される化合物であることが特に好ましい。具体的には、EVOHに対する反応性及び得られるインナーライナーのガスバリア性の観点から、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが好ましく、これらの中でもエポキシプロパン及びグリシドールが特に好ましい。
【0065】
本発明において、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレンとビニルエステルとを重合してエチレン−ビニルエステル共重合体を得、該エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化することにより得られる。また、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、上述のとおり、(1)エチレンとビニルエステルとの重合において、更に構造単位(I)に誘導される単量体を共重合させたり、(2)ケン化反応によって得られたEVOHに対して一価エポキシ化合物を反応させることにより得られる。ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであってもよい。また、連続式、回分式のいずれであってもよい。
【0066】
前記重合に用いることができるビニルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニル等が挙げられる。
【0067】
また、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造する場合、エチレン及びビニルエステルの他に、これら単量体と共重合し得る単量体を好ましくは少量で用いることがある。この共重合し得る単量体としては、上述の構造単位(I)に誘導される単量体に加えて、他のアルケン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物、塩、モノアルキルエステル若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、などが挙げられる。また、ビニルシラン化合物を単量体として用いることもでき、共重合体中に導入されるビニルシラン化合物の量は、0.0002モル%以上で且つ0.2モル%以下であることが好ましい。ビニルシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。これらビニルシラン化合物の中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
【0068】
重合に使用できる溶媒は、エチレン、ビニルエステル及びエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解し得る有機溶剤であれば特に限定されない。前記溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール;ジメチルスルホキシド、などが挙げられる。それらの中でも、反応後の除去分離が容易である点で、メタノールが特に好ましい。
【0069】
重合に使用できる開始剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤;イソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤、などが挙げられる。
【0070】
重合温度は、通常20℃〜90℃程度であり、好ましくは40℃〜70℃である。重合時間は、通常2時間〜15時間程度であり、好ましくは3時間〜11時間である。重合率は、仕込みのビニルエステルに対して通常10%〜90%程度であり、好ましくは30%〜80%である。重合後の溶液中の樹脂分は、5質量%〜85質量%程度であり、好ましくは20質量%〜70質量%である。
【0071】
所定時間の重合後又は所定の重合率に達した後、得られる共重合体溶液に必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去し、その後、未反応のビニルエステルを除去する。未反応のビニルエステルを除去する方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔の下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み、塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応のビニルエステルを除去した共重合体溶液を取り出す方法、などが採用される。
【0072】
次に、前記共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該溶液中に存在する共重合体をケン化する。ケン化方法は、連続式、回分式のいずれも可能である。前記アルカリ触媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水酸化ナトリム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラート、などが挙げられる。また、ケン化の条件は、例えば回分式の場合、共重合体溶液中のアルカリ触媒の濃度が10質量%〜50質量%程度、反応温度が30℃〜65℃程度、触媒使用量がビニルエステル構造単位1モル当たり0.02モル〜1.0モル程度、ケン化時間が1時間〜6時間程度であることが好ましい。
【0073】
ケン化反応後の(変性)EVOHは、アルカリ触媒、酢酸ナトリウムや酢酸カリウム等の副生塩類、その他不純物を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。ここで、ケン化反応後の(変性)EVOHを、イオン交換水等の金属イオン、塩化物イオン等をほとんど含まない水で洗浄する際、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等を一部残存させてもよい。
【0074】
−−−ポリアミド樹脂(PA)−−−
前記ポリアミド樹脂(PA)は、酸とアミンが反応してできるアミド結合を持つ高分子化合物の総称であり、機械特性が良く、引張り、圧縮、曲げ、衝撃に強いという特徴を有する。前記インナーライナーのガスバリア性、溶融成形性及び層間接着性を向上させる観点から、前記ポリアミド樹脂(PA)は、メルトフローレートJIS K 7210 1999(230℃ 21.18N)において100g/10分間であることが好ましく、30g/10分間であることが更に好ましい。
前記ポリアミド樹脂は、ラクタムの開環重合、又はアミノカルボン酸若しくはジアミンとカルボン酸との重縮合等によって得ることができる。
【0075】
前記ラクタムとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム、などが挙げられる。
【0076】
前記アミノカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸、などを挙げられる。
【0077】
前記ジアミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノ3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジン、などが挙げられる。
【0078】
前記ジカルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、デカリンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、トリシクロデカンジカルボン酸、ペンタシクロドデカンジカルボン酸、イソホロンジカルボン酸、3,9−ビス(2−カルボキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、トリカルバリル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2−メチルテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、テトラリンジカルボン酸等を挙げることができる。
【0079】
ポリアミド樹脂を合成する際の重縮合の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、溶融状態において重縮合する方法や、一旦溶融状態で重縮合して低粘度ポリアミドを得た後、固相状態で加熱処理する方法(いわゆる固相重合)を挙げられる。溶液状態における重縮合方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジアミンとジカルボン酸とのナイロン塩の水溶液を加圧下で加熱し、水及び縮合水を除きながら溶融状態で重縮合させる方法、ジアミンを溶融状態のジカルボン酸に直接加えて、常圧下で重縮合する方法、などが挙げられる。
【0080】
前記化合物等の重縮合物である具体的なポリアミド樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリカプロラクタム(ナイロン6)、ポリラウロラクタム(ナイロン12)、ポリヘキサメチレンジアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンアゼラミド(ナイロン69)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12、11−アミノウンデカン酸の縮合生成物(ナイロン11)等の脂肪族ポリアミド樹脂;ポリヘキサメチレンイソフタラミド(ナイロン6IP)、メタキシレンジアミン/アジピン酸共重合体(ナイロンMXD6)、メタキシレンジアミン/アジピン酸/イソフタル酸共重合体等の芳香族ポリアミド樹脂、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0081】
これらのポリアミド樹脂の中でも、優れたガスバリア性を有するナイロンMXD6が好ましい。このナイロンMXD6のジアミン成分としては、メタキシリレンジアミンが70モル%以上含まれることが好ましく、ジカルボン酸成分としては、アジピン酸が70モル以上含まれることが好ましい。ナイロンMXD6が前記配合範囲のモノマーから得られることで、より優れたガスバリア性や機械的性能を発揮することができる。
【0082】
−−−ポリエステル樹脂−−−
前記ポリエステル樹脂とは、エステル結合を有するポリマーであり、多価カルボン酸とポリオールとの重縮合等によって得ることができる。前記積層体のガスバリア性樹脂として用いられるポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリグリコール酸(PGA)、芳香族系液晶ポリエステル、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのポリエステル樹脂の中でも、ガスバリア性の高さの点から、ポリグリコール酸(PGA)及び全芳香族系液晶ポリエステルが好ましい。
【0083】
−−−−ポリグリコール酸(PGA)−−−−
前記ポリグリコール酸(PGA)は、−O−CH−CO−で表される構造単位(GA)を有する単独重合体又は共重合体である。前記ポリグリコール酸(PGA)における前記構造単位(GA)の含有割合としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましく、また、100質量%以下が好ましい。構造単位(GA)の含有割合が60質量%未満であると、ガスバリア性が十分に発揮されない場合がある。
【0084】
前記ポリグリコール酸(PGA)の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)グリコール酸の脱水重縮合により合成する方法、(2)グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合により合成する方法、(3)グリコリド(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)の開環重合により合成する方法、などが挙げられる。
【0085】
共重合体としてのポリグリコール酸(PGA)を合成する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上述の各合成方法において、コモノマーとして、例えば、シュウ酸エチレン(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等)、トリメチレンカーボネート、1,3−ジオキサン等の環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸又はそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールと、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそのアルキルエステルとの実質的に等モルの混合物;などを、グリコリド、グリコール酸又はグリコール酸アルキルエステルと適宜組み合わせて共重合する方法が挙げられる。
【0086】
前記(3)の開環重合の具体的方法としては、グリコリドを少量の触媒(例えば、有機カルボン酸スズ、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン等のカチオン触媒)の存在下で約120℃〜約250℃の温度に加熱して行う方法が挙げられる。この開環重合は、塊状重合法又は溶液重合法によることが好ましい。
【0087】
前記開環重合において、モノマーとして使用するグリコリドは、グリコール酸オリゴマーの昇華解重合法や、溶液相解重合法等によって得ることができる。
【0088】
前記高沸点極性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジ(2−メトキシエチル)フタレート等のフタル酸ビス(アルコキシアルキルエステル);ジエチレングリコールジベンゾエート等のアルキレングリコールジベンゾエート;ベンジルブチルフタレート、ジブチルフタレート等の芳香族カルボン酸エステル;トリクレジルホスフェート等の芳香族リン酸エステル;などが挙げられる。また、高沸点極性有機溶媒と共に、必要に応じて、オリゴマーの可溶化剤として、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどを併用することができる。
【0089】
−−−−全芳香族系液晶ポリエステル−−−−
全芳香族系液晶ポリエステルは、モノマーである多価カルボン酸とポリオールとが共に芳香族系の化合物である液晶性のポリエステルである。この全芳香族系液晶ポリエステルは、通常のポリエステルと同様、公知の方法で重合して得ることができる。
【0090】
芳香族系の多価カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、4,4´−ビフェニルジカルボン酸、3,3´−ビフェニルジカルボン酸、4,4´−メチレンジ安息香酸、ジフェン酸、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
芳香族系のポリオールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、4,4´−ジヒドロキシジフェニル、レゾルシノール、フェニルヒドロキノン、3,4´−ビスフェノールA、などが挙げられる。
【0092】
また、全芳香族系液晶ポリエステルは、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシ基及びカルボキシ基を有する芳香族化合物等を重合することにより、または前記芳香族系の多価カルボン酸及び芳香族系のポリオールと共重合することによっても得ることができる。
【0093】
−−−ポリビニルアルコール樹脂(PVA)−−−
前記ポリビニルアルコール樹脂(PVA)は、合成樹脂の一種であり、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。
【0094】
−−−バリア層を形成する樹脂組成物中の添加物−−−
バリア層を形成する樹脂組成物に、実施態様に応じ、リン酸化合物、カルボン酸及びホウ素化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物を含有させるとよい。かかるリン酸化合物、カルボン酸又はホウ素化合物をバリア層の樹脂組成物中に含有することによって、当該多層構造体の各種性能を向上させることができる。
【0095】
具体的には、EVOH等を含むバリア層の樹脂組成物中にリン酸化合物を含有することで、当該多層構造体の溶融成形時の熱安定性を改善することができる。リン酸化合物としては、特に限定されず、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が挙げられる。リン酸塩としては、例えば第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、その対カチオン種としても特に限定されないが、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが好ましい。特に、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ナトリウム又はリン酸水素カリウムが、熱安定性改善効果が高い点で好ましい。
【0096】
リン酸化合物の含有量(バリア層の乾燥樹脂組成物中のリン酸化合物のリン酸根換算含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、30質量ppmがさらに好ましい。一方、リン酸化合物の含有量の上限としては、10,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、300質量ppmがさらに好ましい。リン酸化合物の含有量が上記下限より小さいと、溶融成形時の着色が激しくなるおそれがある。特に、熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著であるために、前記樹脂組成物ペレットを成形して得られた成形物が回収性に乏しいものとなるおそれがある。逆に、リン酸化合物の含有量が上記上限を超えると、成形時のゲル・ブツが発生し易くなるおそれがある。
【0097】
また、EVOH等を含むバリア層の樹脂組成物中にカルボン酸を含有することで、樹脂組成物のpHを制御し、ゲル化を防止して熱安定性を改善する効果がある。カルボン酸としては25℃におけるpKaが3.5以上であるものが好ましい。25℃におけるpKaが3.5未満であるシュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸などのようなカルボン酸を含有すると、EVOH等を含む樹脂組成物のpHの制御が困難となり、耐着色性や層間接着性が不満足なものになるおそれがある。特に、カルボン酸としては、コストなどの観点から酢酸又は乳酸が好ましい。
【0098】
カルボン酸の含有量(バリア層の乾燥樹脂組成物中のカルボン酸の含有量)の下限としては1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、50質量ppmがさらに好ましい。一方、カルボン酸の含有量の上限としては、10,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。このカルボン酸の含有量が上記下限より小さいと、溶融成形時に着色が発生するおそれがある。逆に、カルボン酸の含有量が上記上限を超えると、層間接着性が不充分となるおそれがある。
【0099】
さらに、EVOH等を含むバリア層の樹脂組成物中にホウ素化合物を含有することで、熱安定性向上の効果がある。詳細には、EVOH等からなる樹脂組成物にホウ素化合物を添加した場合、EVOH等とホウ素化合物との間にキレート化合物が生成すると考えられ、かかるEVOH等を用いることによって、通常のEVOH等よりも熱安定性の改善、機械的性質を向上させることが可能である。ホウ素化合物としては、特に限定されるものではなく、例えばホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ酸類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、例えばオルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしては、例えばホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチルなどが挙げられ、ホウ酸塩としては、上記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂などが挙げられる。これらの中でもオルトホウ酸が好ましい。
【0100】
ホウ素化合物の含有量(バリア層の乾燥樹脂組成物中のホウ素化合物のホウ素換算含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、50質量ppmがさらに好ましい。一方、ホウ素化合物の含有量の上限としては、2,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が上記下限より小さいと、ホウ素化合物を添加することによる熱安定性の改善効果が得られないおそれがある。逆に、ホウ素化合物の含有量が上記上限を超えると、ゲル化しやすく、成形不良となるおそれがある。
【0101】
上記リン酸化合物、カルボン酸又はホウ素化合物をEVOH等を含む樹脂組成物に含有させる方法は、特に限定されるものではなく、例えばEVOH等を含む樹脂組成物のペレット等を調製する際に樹脂組成物に添加して混練する方法が好適に採用される。この樹脂組成物に添加する方法も、特に限定されないが、乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法などが例示される。これらの中で均質に分散させる観点から、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法が好ましい。これらの方法に用いられる溶媒は特に限定されないが、添加剤の溶解性、コスト的メリット、取り扱いの容易性、作業環境の完全性等の観点から水が好適に用いられる。これらの添加の際、後述の金属塩、EVOH等以外の樹脂やその他の添加剤などを同時に添加することができる。
【0102】
また、リン酸化合物、カルボン酸、ホウ素化合物を含有させる方法として、それらの物質が溶解した溶液に、上記ケン化の後押出機等により得られたペレット又はストランドを浸漬させる方法も、均質に分散させることができる点で好ましい。この方法においても、溶媒としては、上記と同様の理由で、水が好適に用いられる。この溶液に後述する金属塩を溶解させることで、リン酸化合物等と同時に金属塩を含有させることができる。
【0103】
バリア層の樹脂組成物は、分子量1,000以下の共役二重結合を有する化合物を含有することが好ましい。このような化合物を含有することによって、バリア層の樹脂組成物の色相が改善されるので、外観の良好な多層構造体とすることができる。このような化合物としては、例えば少なくとも2個の炭素−炭素二重結合と1個の炭素−炭素単結合とが交互に繋がってなる構造の共役ジエン化合物、3個の炭素−炭素二重結合と2個の炭素−炭素単結合とが交互に繋がってなる構造のトリエン化合物、それ以上の数の炭素−炭素二重結合と炭素−炭素単結合とが交互に繋がってなる構造の共役ポリエン化合物、2,4,6−オクタトリエンのような共役トリエン化合物等が挙げられる。また、この共役二重結合を有する化合物には、共役二重結合が1分子中に独立して複数組あってもよく、例えば桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も含まれる。
【0104】
上記共役二重結合を有する化合物は、例えばカルボキシ基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基及びその塩、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、二重結合、三重結合等の他の各種官能基を有していてもよい。かかる官能基は、共役二重結合中の炭素原子に直接結合されていてもよく、共役二重結合から離れた位置に結合されていてもよい。官能基中の多重結合は上記共役二重結合と共役可能な位置にあってもよく、例えばフェニル基を有する1−フェニルブタジエンやカルボキシ基を有するソルビン酸などもここでいう共役二重結合を有する化合物に含まれる。この化合物の具体例としては、例えば2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1,3−ジフェニル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、ソルビン酸、ミルセン等を挙げることができる。
【0105】
この共役二重結合を有する化合物における共役二重結合とは、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ソルビン酸のような脂肪族同士の共役二重結合のみならず、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1,3−ジフェニル−1−ブテンのような脂肪族と芳香族との共役二重結合も含まれる。但し、外観がより優れた多層構造体を得る観点からは、上記脂肪族同士の共役二重結合を含む化合物が好ましく、またカルボキシ基及びその塩、水酸基等の極性基を有する共役二重結合を含む化合物も好ましい。さらに極性基を有しかつ脂肪族同士の共役二重結合を含む化合物が特に好ましい。
【0106】
この共役二重結合を有する化合物の分子量としては、1,000以下が好ましい。分子量が1,000を超えると、多層構造体の表面平滑性、押出安定性等が悪化するおそれがある。この分子量が1,000以下の共役二重結合を有する化合物の含有量の下限としては、奏される効果の点から、0.1質量ppmが好ましく、1質量ppmがより好ましく、3質量ppmがさらに好ましく、5質量ppm以上が特に好ましい。一方、この化合物の含有量の上限としては、奏される効果の点から、3,000質量ppmが好ましく、2,000質量ppmがより好ましく、1,500質量ppmがさらに好ましく、1,000質量ppmが特に好ましい。
上記共役二重結合を有する化合物の添加方法としては、上述のように重合した後、かつ上記ケン化の前に添加するのが、表面平滑性と押出安定性を改善する点で好ましい。この理由については必ずしも明らかではないが、共役二重結合を有する化合物が、ケン化の前及び/又はケン化反応中のEVOH等の変質を防止する作用を有することに基づくものと考えられる。
【0107】
バリア層の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記添加物以外にEVOH等以外の他の樹脂、又は熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。バリア層の樹脂組成物が上記添加物以外の添加剤を含む場合、その量は樹脂組成物の総量に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0108】
バリア層の樹脂組成物は、その融点より10〜80℃高い温度の少なくとも1点における溶融混練時間とトルクの関係において、粘度挙動安定性(M100/M20、但しM20は混練開始20分後のトルク、M100は混練開始から100分後のトルクを表す)の値が0.5〜1.5の範囲であることが好ましい。粘度挙動安定性の値は1に近いほど粘度変化が少なく、熱安定性(ロングラン性)に優れていることを示す。
【0109】
−−弾性体層−−
インナーライナー(積層体)を構成する弾性体層は、エラストマーを含む層であり、エラストマーを含む層であれば、その他の構成については特に限定されるものではない。例えば、エラストマーからなる層又は該エラストマーがマトリクスとして存在するエラストマー組成物からなる層などが挙げられる。なお、マトリクスとは、連続相を意味する。
前記弾性体層を構成する樹脂組成物がエラストマーを含むことで、前記積層体の延性を高め、耐屈曲性を向上させることができる。さらに、所定厚さのバリア層と共にこのエラストマーを含む樹脂組成物からなる弾性体層を積層させることで、バリア層の樹脂組成物の延性が低い場合でも、バリア層の延性を高めることができる。
前記弾性体層はエラストマーのほかフィラー・可塑剤等種々の添加剤を含んでいてもよい。
エラストマーとは、常温付近で弾性を有する組成物をいい、23℃でのヤング率が前記ガスバリア性樹脂より小さいことを特徴とする。より具体的には、室温(20℃)の条件下で、2倍に伸ばし、その状態で1分間保持した後、1分間以内に元の長さの1.5倍未満に収縮する性質を有する樹脂をいう。また、エラストマーは、構造的には、通常、ガラス転移温度が室温以下であるモノマーからなる重合鎖と架橋点を有する重合体、もしくは重合体鎖中にハードセグメントとソフトセグメントとを有する重合体である。
【0110】
なお、前記インナーライナーを構成する弾性体層に含まれるエラストマーは、23℃でのヤング率が200MPa以下であることが好ましく、100MPa以下がより好ましく、50MPa以下が一層好ましい。また前記弾性体層に含まれるエラストマー20℃及び65%RHでの空気透過係数が、5×10−8cm・cm/cm・sec・cmHg以下が好ましい。5×10−8cm・cm/cm・sec・cmHgを超えると、前記バリア層を設けた場合であっても、十分な内圧保持性を確保できないおそれがあるからである。
【0111】
前記弾性体層に用いるエラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマー、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、イソブチレンゴム、臭素化イソブチレンゴム、クロロプレンゴムなどが挙げられる。これらの中でも、成形容易性・溶媒への溶解性の観点から、ポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリジエン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー及び、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、イソブチレンゴム、臭素化イソブチレンゴムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリウレタン系エラストマーがより好ましい。
【0112】
また、このようなエラストマーとしては、特に制限はなく、公知の熱可塑性エラストマー、非熱可塑性エラストマーの中から適宜選択して用いることができるが、溶融成形のためには熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0113】
前記熱可塑性エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、成形容易性の観点から、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、及びポリアミド系熱可塑性エラストマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーがより好ましい。
【0114】
−−−ポリスチレン系熱可塑性エラストマー−−−
前記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)と、ゴムブロック(ソフトセグメント)とを有し、芳香族ビニル系重合体部分が物理架橋を形成して橋かけ点となり、一方、ゴムブロックがゴム弾性を付与する。
該ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、分子中のソフトセグメントの配列様式により分けることができ、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられ、更にはポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体や、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体等も含まれる。なお、これらのポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、無水マレイン酸変性等の変性物であってもよい。
これらの中でも、機械的強度、耐熱安定性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、柔軟性、加工性等のバランスの面から、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が好適である。
【0115】
−−−ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー−−−
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーには、ハードセグメントとしてポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンブロックを、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のゴムブロックを備える熱可塑性エラストマー等が含まれる。なお、かかる熱可塑性エラストマーには、ブレンド型とインプラント化型がある。また、前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン−1共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ハロゲン化ブチル系ゴム、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン等を挙げることもできる。
【0116】
−−−ポリジエン系熱可塑性エラストマー−−−
前記ポリジエン系熱可塑性エラストマーとしては、1,2−ポリブタジエン系TPE及びトランス1,4−ポリイソプレン系TPE、水添共役ジエン系TPE、エポキシ化天然ゴム(ENR)等を挙げることができる。なお、1,2−ポリブタジエン系TPEは、分子中に1,2−結合を90%以上含むポリブタジエンであって、ハードセグメントとして結晶性のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、ソフトセグメントとして無定形1,2−ポリブタジエンとからなる。また、トランス1,4−ポリイソプレン系TPEは、分子中に98%以上のトランス1,4構造を有するポリイソプレンであって、ハードセグメントとしての結晶性トランス1,4セグメントと、ソフトセグメントとしての非結晶性トランス1,4セグメントからなる。
【0117】
−−−ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)−−−
前記ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)は、一般に、以下に示す3種類に大別される。なお、このTPVCも、無水マレイン酸変性PVC等の変性物を用いてもよい。
・タイプ1:高分子量ポリ塩化ビニル(PVC)/可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)ブレンド型TPVC
ハードセグメントに高分子量のPVCを用いて、ソフトセグメントに可塑剤で可塑化されたPVCを用いてなる熱可塑性エラストマーである。なお、ハードセグメントに高分子量のPVCを用いることで、微結晶部分にて架橋点の働きを持たせている。
・タイプ2:部分架橋PVC/可塑化PVCブレンド型TPVC
ハードセグメントに部分架橋又は分岐構造を導入したPVCを、ソフトセグメントに可塑剤で可塑化されたPVCを用いてなる熱可塑性エラストマーである。
・タイプ3:PVC/エラストマーアロイ型TPVC
ハードセグメントにPVCを、ソフトセグメントに部分架橋ニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム又はポリウレタン系TPE、ポリエステル系TPE等のTPEを用いてなる熱可塑性エラストマーである。
【0118】
−−−ポリ塩素化ポリエチレン(CPE)系熱可塑性エラストマー−−−
前記塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーは、水性懸濁液又は四塩化炭素のような溶媒中でポリエチレンを塩素ガスと反応させて得られる軟質樹脂であり、ハードセグメントには結晶性ポリエチレンブロックが、ソフトセグメントには塩素化ポリエチレン(CPE)ブロックが用いられる。なお、CPEブロックには、ポリエチレン及び塩素化ポリエチレンの両成分がマルチブロック又はランダム構造の混合物として混在している。
ポリ塩素化ポリエチレン(CPE)は、原料ポリエチレンの種類、塩素化度、製造条件などによって、塩素含有量、ブロック性、残存結晶化度などの分子特性がかわり、その結果、樹脂からゴムまでの広範囲によって加硫ゴムと同じような性質の製品も可能であり、無水マレイン酸変性などによる変性物とすることもできる。
【0119】
−−−ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)−−−
前記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)は、分子中のハードセグメントとしてポリエステルを、ソフトセグメントとしてガラス転移温度(Tg)の低いポリエーテル又はポリエステルを用いたマルチブロックコポリマーである。TPEEは、分子構造の違いによって次のようなタイプに分けることができ、ポリエステル・ポリエーテル型TPEEとポリエステル・ポリエステル型TPEEが主流を占めている。
(1)ポリエステル・ポリエーテル型TPEE
一般には、ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとしてポリエーテルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(2)ポリエステル・ポリエステル型TPEE
ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(3)液晶性TPEE
ハードセグメントとして剛直な液晶分子を、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
【0120】
−−−ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)−−−
前記ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)は、ハードセグメントとしてポリアミドを、ソフトセグメントとしてTgの低いポリエーテル又はポリエステルを用いたマルチブロックコポリマーである。ハードセグメントを構成するポリアミド成分は、ナイロン6,66,610,11,12等から選択され、ナイロン6、ナイロン12が主体を占めている。ソフトセグメントの構成物質には、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等の長鎖ポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールの代表例には、ジオールポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールの代表例には、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4アジペート)グリコール等が挙げられる。
【0121】
−−−フッ素樹脂系熱可塑性エラストマー−−−
前記フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてフッ素樹脂を、ソフトセグメントとしてフッ素ゴムからなるABA型ブロックコポリマーである。ハードセグメントを構成するフッ素樹脂には、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が用いられ、ソフトセグメントを構成するフッ素ゴムには、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等が用いられる。より具体的には、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴムや、フルオロポリエーテル、フルオロニトロソゴム、パーフルオロトリアジンを含むもの等が挙げられる。なお、フッ素樹脂系TPEは、他のTPEと同じようにミクロ相分離して、ハードセグメントが架橋点を形成している。
【0122】
−−−ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)−−−
前記ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)は、(1)ハードセグメントとして短鎖グリコールとイソシアネートとの反応で得られるポリウレタンと、(2)ソフトセグメントとして長鎖グリコールとイソシアネートとの反応で得られるポリウレタンとからなる直鎖状のマルチブロックコポリマーである。ここで、ポリウレタンとは、イソシアネート(−NCO)とアルコール(−OH)との重付加反応(ウレタン化反応)で得られるウレタン結合(−NHCOO−)を有する化合物の総称である。本発明のインナーライナーにおいては、弾性体層を形成するエラストマーがTPUであれば、該弾性体層を積層することで、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。また、かかるインナーライナーでは、弾性体層とバリア層との層間接着性を向上できるため、耐クラック性等の耐久性が高く、インナーライナーを変形させて使用しても、ガスバリア性及び延伸性を維持することができる。
【0123】
前記TPUは、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、鎖伸長剤等から構成される。該高分子ポリオールは、複数のヒドロキシ基を有する物質であり、重縮合、付加重合(例えば開環重合)、重付加等によって得られる。高分子ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はこれらの共縮合物(例えばポリエステル−エーテル−ポリオール)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。なお、これらの高分子ポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0124】
ここで、前記ポリエステルポリオールは、例えば、常法に従い、ジカルボン酸、そのエステル、その無水物等のエステルを形成し得る化合物と低分子ポリオールとを直接エステル化反応若しくはエステル交換反応によって縮合させるか、又はラクトンを開環重合することにより製造されることができる。
【0125】
前記ポリエステルポリオールの生成に使用できるジカルボン酸としては、特に限定されず、ポリエステルの製造において一般的に使用されるジカルボン酸が挙げられる。該ジカルボン酸として、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、炭素数が6〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸又はセバシン酸が特に好ましい。これらジカルボン酸は、ヒドロキシ基とより反応し易いカルボニル基を有しており、バリア層との層間接着性を大幅に向上させることができる。
【0126】
前記ポリエステルポリオールの生成に使用できる低分子ポリオールとしては、特に限定されず、ポリエステルの製造において一般的に使用される低分子ポリオールが挙げられる。該低分子ポリオールとして、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族2価アルコール等が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール等の側鎖にメチル基を有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールを用いて得たポリエステルポリオールは、ヒドロキシ基との反応が起こり易く、バリア層との層間接着性を大幅に向上させることができる。更に、前記低分子ポリオールと共に、少量の3官能以上の低分子ポリオールを併用することができる。3官能以上の低分子ポリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。
【0127】
前記ポリエステルポリオールの生成に使用できるラクトンとしては、例えばε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等を挙げることができる。
【0128】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレン)グリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
【0129】
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜12の脂肪族ジオール又はこれらの混合物を炭酸ジフェニル又はホスゲン等の作用により縮重合して得られる化合物が好適に挙げられる。
【0130】
前記高分子ポリオールは、数平均分子量の下限が、500であるのが好ましく、600であるのがより好ましく、700であるのが更に好ましい。一方、高分子ポリオールの数平均分子量の上限は、8,000が好ましく、5,000がより好ましく、3,000が更に好ましい。高分子ポリオールの数平均分子量が前記下限より小さいと、有機ポリイソシアネートとの相溶性が高過ぎ、得られるTPUの弾性が乏しくなるため、得られるインナーライナーの延伸性等の力学的特性や熱成形性が低下するおそれがある。一方、高分子ポリオールの数平均分子量が前記上限を超えると、有機ポリイソシアネートとの相溶性が低下して、重合過程での混合が困難になり、その結果、ゲル状物の塊の発生等により安定したTPUが得られなくなるおそれがある。なお、高分子ポリオールの数平均分子量は、JIS−K−1577に準拠して測定し、ヒドロキシ基価に基づいて算出した数平均分子量である。
【0131】
前記有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではなく、TPUの製造に一般的に使用される公知の有機ジイソシアネートが使用できる。該有機ジイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート等を挙げることができる。これらの中でも、得られるインナーライナーの強度及び耐屈曲性が向上できる観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。これらの有機ポリイソシアネートは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0132】
前記鎖伸長剤としては、特に限定されず、TPUの製造に一般的に使用される公知の鎖伸長剤が使用でき、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好適に使用される。鎖伸長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、得られるインナーライナーの延伸性及び熱成形性が更に向上できる観点から、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。これらの鎖伸長剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0133】
前記TPUの製造方法としては、前記高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を使用し、公知のウレタン化反応技術を利用する製造方法が挙げられ、プレポリマー法及びワンショット法のいずれを用いてもよい。特には、実質的に溶媒の不存在下にて溶融重合を行うことが好ましく、多軸スクリュー型押出機を用いた連続溶融重合を行うことが更に好ましい。
【0134】
前記TPUは、高分子ポリオールと鎖伸長剤との合計質量に対する有機ポリイソシアネートの質量の比[イソシアネート/(高分子ポリオール+鎖伸長剤)]が、1.02以下であることが好ましい。該比が1.02を超えると、成形時の長期運転安定性が悪化するおそれがある。
【0135】
前記TPUの窒素含有量は、高分子ポリオール及び有機ジイソシアネートの使用割合を適宜選択することにより決定されるが、実用的には1質量%〜7質量%の範囲が好ましい。
【0136】
また、前記弾性体層の樹脂組成物は、必要に応じて有機ポリイソシアネートと高分子ポリオールとの反応を促進する適当な触媒等を用いてもよい。さらに、前記弾性体層の樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、エラストマー以外の樹脂、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、フィラーなど種々の添加剤を含んでいてもよい。前記弾性体層の樹脂組成物が添加剤を含む場合、その量としては樹脂組成物の総量に対して50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。
【0137】
−タイヤ内面−
タイヤ内面とは、図2に示すように、タイヤの中で、積層体21と接合するゴム部材21のことである。
タイヤ27を構成するゴム成分として、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴムからなるゴム組成物であることが好ましい。
【0138】
前記ゴム組成物には、前記ゴム成分の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤、例えば、補強性充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、ゴム用加硫促進剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸等を目的に応じて適宜配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【実施例】
【0139】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0140】
<フィルム1の作製>
エチレン−ビニルアルコール共重合体[クラレ製;E105]と無水マレイン酸変性エチレンブテン共重合体[三井化学製;MH7010]とを1:1で混合したペレット二軸押出機で混練し、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物と熱可塑性ポリウレタン(TPU)[クラレ製;クラミロン3190]とを使用し、2種5層共押出装置を用いて5層フィルムを製膜した。得られたフィルムのバリア層と弾性体層の各層厚みはそれぞれ20μm、20μmであった。
【0141】
<フィルム2の作製>
エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[クラレ製;E105]と、熱可塑性ポリウレタン(TPU)[(株)クラレ製クラミロン3190]とを使用し、EVOH層が8層及びTPU層が9層の積層体が形成されるように、17層フィードブロックにて、共押出機に210℃の溶融状態として供給し、共押出を行い合流させることによって、多層の積層体とした。合流するEVOHとTPUの溶融物は、フィードブロック内にて各層流路を表面側から中央側に向かうにつれ徐々に厚くなるように変化させることにより、押出された積層体の各層の厚みが均一になるように押出された。また、隣接するEVOH層とTPU層の層厚さはほぼ同じになるようにスリット形状を設計した。このようにして得られた計17層からなる積層体からなる積層体を、表面温度25℃に保たれ静電印加したキャスティングドラム上で急冷固化した。急冷固化して得られたキャストフィルムを離型紙上に圧着し巻取りを行った。なお、EVOH及びTPUの溶融物が合流してからキャスティングドラム上で急冷固化されるまでの時間が約4分間となるように流路形状及び総吐出量を設定した。
【0142】
(比較例1)
エチレン−ビニルアルコール共重合体[クラレ製;E105]を単層押出した単層フィルムに対し、電子線照射装置[日新ハイボルテージ製;キュアトロンEB200−100]を用い、照射線量200kGyの電子線を照射して、架橋されたフィルムを得た。
得られたフィルムを定法によって成型されたタイヤに貼り付け、加硫を行い、図1に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。
【0143】
(比較例2)
前記比較例1において、ナイロン〔東レ製;CM1061〕単層フィルムを用いた以外は同様の製法にて空気入りタイヤを得た。
【0144】
(実施例1)
前記比較例1において、前記フィルム1を用いた以外は同様の製法にて空気入りタイヤを得た。
【0145】
(実施例2)
前記比較例1において、前記フィルム2を用いた以外は同様の製法にて空気入りタイヤを得た。
【0146】
(実施例3)
定法によって成型されたタイヤを加硫して図1に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。前記空気入りタイヤの内面に、前記フィルム2に電子線照射装置[日新ハイボルテージ製;キュアトロンEV200−100]を用いて照射線量200kGyの電子線を照射して架橋したフィルムを、貼り付けた。さらに120℃に加熱したアイロンを用いてフィルムをタイヤ内面に接着させた。
【0147】
(比較例3)
7gのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[クラレ製;E105]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。イソプロピルアルコール800mL,蒸留水200mLを混合させた混合溶媒を加え、120℃5時間加熱還流させることで、EVOH溶液を調製した。
定法に従って成型したタイヤ内面に、前記EVOH溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。
得られたタイヤを加硫して図1に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。
【0148】
(実施例4)
7gのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[クラレ製;E105]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。イソプロピルアルコール800mL、蒸留水200mLを混合させた混合溶媒を加え、120℃5時間加熱還流することで、EVOH溶液を調製した。
21gのポリウレタンペレット(TPU)[クラレ製;クラミロン3190]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。1,4−ジオキサン1Lを加え、100℃5時間加熱還流することでTPU溶液を調製した。
定法に従って成型したタイヤ内面に、前記TPU溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、EVOH溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、同様の方法でTPU溶液、EVOH溶液、TPU溶液を交互に吹き付け、溶媒の揮発を行った。
得られたタイヤを加硫して図1に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。
【0149】
(実施例5)
10gのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[クラレ製;E105]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。イソプロピルアルコール800mL、蒸留水200mL、ベンジルアルコール400mLを混合した混合溶媒を加え、120℃5時間加熱還流することで、EVOH溶液を調製した。
25gのポリウレタンペレット(TPU)[クラレ製;クラミロン3190]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。1,4−ジオキサン1L、ベンジルアルコール400mLを混合した混合溶媒を加え、100℃5時間加熱還流することでTPU溶液を調製した。
定法に従って成型したタイヤ内面に、前記TPU溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、EVOH溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、同様の方法でTPU溶液、EVOH溶液、TPU溶液を交互に吹き付け、溶媒の揮発を行った。
得られたタイヤを加硫して図1に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を作製した。
【0150】
(実施例6)
10gのエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)[クラレ製;E105]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。イソプロピルアルコール800mL、蒸留水200mL、ベンジルアルコール400mLを混合した混合溶媒を加え、120℃5時間加熱還流することで、EVOH溶液を調製した。
25gのポリウレタンペレット(TPU)[クラレ製;クラミロン3190]を2L4径ナスフラスコにとり、ジムロート冷却管を取り付けた。1,4−ジオキサン1L、ベンジルアルコール400mLを混合した混合溶媒を加え、100℃5時間加熱還流することでTPU溶液を調製した。
定法に従って成型・加硫することでタイヤ(195/65R15)を作製した。前記TPU溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、EVOH溶液100mLをスプレーで吹き付け、120℃の熱風で溶媒を揮発させた。溶媒を揮発させた後、同様の方法でTPU溶液、EVOH溶液、TPU溶液を交互に吹き付け、溶媒の揮発を行った。
【0151】
タイヤ内面に形成されたバリア性樹脂層単層及び積層体のトップトレッド下の任意5箇所の断面SEM写真により、各バリア性樹脂(組成物)層及び各弾性体(TPU)層の厚みを測定した。結果を表1及び表2にまとめた。
【0152】
<内圧保持性>
前記、比較例および実施例に従って作製したタイヤを6JJ×15のリムに装着した後、内圧を240kPaとし、3ヶ月放置した。3ヶ月後の内圧を測定し、下記式:
内圧保持性=((240−b)/(240−a))×100
[式中、aは試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)、bは比較例(比較例1又は3)の試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)である]を用いて内圧保持性を評価した。
比較例2及び実施例1〜3は比較例1を、実施例4〜6は比較例3を、それぞれ100として他の値を指数化した。指数値が大きいほど、内圧保持性に優れる。
【0153】
<走行後の内圧保持性>
前記、比較例および実施例に従って作製したタイヤを、室温で、空気圧140kPaで、80km/hの速度に相当する回転ドラムに荷重6kNで押し付けて10,000km走行させた。そして、走行させたタイヤ(試験タイヤ)を6JJ×15のリムに装着した後、内圧を240kPaとし、3ヶ月放置した。3ヶ月後の内圧を測定し、下記式:
測定後の内圧保持性=((240−b)/(240−a))×100
[式中、aは試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)、bは比較例(比較例1又は3)の試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)である]を用いて走行後の内圧保持性を評価した。
比較例2及び実施例1〜3を、実施例4〜6は比較例3を、それぞれ100として他の値を指数化した。指数値が大きいほど、走行後の内圧保持性に優れる。
【0154】
【表1】

【0155】
【表2】

【0156】
*1(出所)クラレ製 、(商品名)E105
*2(出所)東レ製 、(商品名)CM1061
*3(出所)三井化学製、(商品名)タフマー MH7010
*4(出所)クラレ製 、(商品名)クラミロン3190
【0157】
表1及び表2の結果から、実施例1〜3のタイヤは、比較例1のタイヤと比べて、実施例4〜6のタイヤは、比較例3のタイヤと比べて、張力が大きいガスバリア性樹脂をバリア層に適用しても内圧保持に優れるタイヤを作製することができ、且つ、走行後の内圧保持性を向上することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0158】
本発明のタイヤの製造方法により製造されたタイヤは、乗用車タイヤ、大型タイヤ、オフザロード用タイヤ、二輪車用タイヤ、航空機タイヤ、農業用タイヤなどに好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0159】
9 ビード部
10 サイドウォール部
11 トレッド部
12 カーカス
13 ベルト
14 ビードコア
15 ビードフィラー
16 インナーライナー
21 積層体(インナーライナー)
22 弾性体層
23 バリア層
24 弾性体層
25 バリア層
26 弾性体層
27 空気入りタイヤ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを成型する成型工程後に、
前記成型されたタイヤの内面に、ガスバリア性樹脂を含むバリア層を少なくとも2層含む積層体を形成する積層体形成工程を含むことを特徴とするタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記積層体形成工程において、前記バリア層を貼付により形成することを特徴とする請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記積層体形成工程において、前記バリア層を塗布により形成することを特徴とする請求項1に記載のタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記塗布に用いられる塗布液における溶媒が、沸点120℃以上のアルコールを含むことを特徴とする請求項3に記載のタイヤの製造方法。
【請求項5】
前記沸点120℃以上のアルコールが、ベンジルアルコール及びエチレングリコールの少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項6】
前記タイヤを加硫する加硫工程をさらに含み、該加硫工程前に、前記積層体形成工程が行われることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項7】
前記タイヤを加硫する加硫工程をさらに含み、該加硫工程後に、前記積層体形成工程が行われることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項8】
前記積層体は、前記バリア層に隣接する弾性体層を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項9】
前記積層体は、前記バリア層と前記弾性体層とを交互に含むことを特徴とする請求項8に記載のタイヤの製造方法。
【請求項10】
前記バリア層に含まれるガスバリア性樹脂の20℃、65%RHでの空気透過係数が800×10−12cm3・cm/cm・sec・cmHg以下であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項11】
前記積層体は、前記バリア層を7層以上有し、
前記バリア層が、一層の平均厚さ0.001μm〜10μmの層であり、前記弾性体層が、一層の平均厚さ0.001μm〜40μmの層であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のタイヤの製造方法。
【請求項12】
前記ガスバリア性樹脂は、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニリデン、アクリロニトリル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(エステル)、及びポリメタクリル酸(エステル)からなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のタイヤの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−250371(P2012−250371A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122902(P2011−122902)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】