説明

タイヤバルブユニット

【課題】タイヤセンサの着脱にかかる作業性を高く維持するとともに、回転運動に伴う力が作用してもタイヤセンサの位置を好適に維持することのできるタイヤバルブユニットを提供する。
【解決手段】タイヤバルブユニットUは、そのバルブステム12に装着されたタイヤの状態を検出するタイヤセンサ2が、車両用ホイールのリムRに装着された態様でリムRの内側に配置される。タイヤセンサ2をバルブステム12に固定する被連結部13Aには、バルブステム12の軸に交差する方向へ延びる貫通孔15が形成されている。被連結部13Aに嵌合する形状に形成された該被連結部13Aに固定される連結部23には、被連結部13Aの貫通孔15に連通するナット部材26のねじ穴が形成されている。そしてタイヤバルブユニットUは、被連結部13Aに嵌合された連結部23のナット部材26のねじ穴に、被連結部13Aの貫通孔15に挿通されたボルト3が螺合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ状態監視装置に用いられ、車両用ホイールのリムへ装着されるタイヤバルブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用タイヤにおける空気圧等のタイヤ状態を車室内で監視するタイヤ状態監視装置が知られているとともに、この装置に用いられるタイヤバルブユニットが種々提案されている。このタイヤバルブユニットは一般的に、タイヤバルブ、弾性筒状部材及びタイヤセンサを備えてなる。前記タイヤバルブは、バルブ本体と、バルブ本体から延出するバルブステムとを有している。バルブステムは、金属製の硬質筒状部材である。弾性筒状部材は、例えばゴム製であって、バルブステムを囲繞する。タイヤセンサは、例えば空気圧センサであって、バルブステムに装着される。そしてこのタイヤバルブユニットは、弾性筒状部材を介して車両用ホイールのリムに装着される。
【0003】
このようなタイヤバルブユニットの一例が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されるタイヤバルブユニットは、バルブ本体から延出されるバルブステムの端部にボルトの様なねじ溝が形成されている。そして、タイヤセンサはそこに凹設されたねじ穴に前記ねじ溝が螺合される態様でバルブステムに固定される。
【0004】
ところで、特許文献1に記載のタイヤバルブユニットはバルブステム自体がボルトの役割を担うため、このバルブステムに螺合されたタイヤセンサを一般的な工具を使用して着脱することができない。そのため、このタイヤバルブユニットは、タイヤセンサの着脱を伴うメンテナンス等の作業性が低いものであった。
【0005】
一方、メンテナンス等の作業性を高く維持するタイヤバルブユニットの一例が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示されるタイヤバルブユニットは、図9に示すように、バルブ本体50から延出されるバルブステム51の端部にボルト58が挿通される穴52の形成された連結部53を有している。タイヤセンサ55も、ボルト58が挿通される穴56の形成された連結部57を有している。そして、バルブステム51とタイヤセンサ55は、バルブステム51が有する連結部53の穴52とタイヤセンサ55が有する連結部57の穴56とが互いに連通するように配置されるとともに、その連通された穴に挿通されたボルト58により締結固定される。これにより、一般的なボルト58を使用してバルブステム51とタイヤセンサ55とを締結することができるようになることから、タイヤバルブユニットとしてもメンテナンス等の作業性が高く維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−94208号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2010/0064792号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、特許文献2に開示されたタイヤバルブユニットによれば、メンテナンス等の作業性が高く維持されるようにはなる。
ところで車両用ホイールには、車両の加速及び減速に伴う回転方向への力や、当該ホイールの回転に伴う遠心力などが作用する。このため、車両用ホイールに取り付けられるタイヤバルブユニットにも上述の回転方向への力や遠心力が作用する。そのため、特許文献
2に開示されたタイヤバルブユニットのように、バルブステム51の穴52にタイヤセンサ55の穴56を合わせてボルト58により締結する場合には、上述の回転方向への力や遠心力に対抗できる締結力によってボルト58が締結され続けなければならない。またボルト58の締結力が低下する場合には、タイヤセンサ55が当該ボルト58を中心軸として回動する結果、バルブステム51に対するタイヤセンサ55の取り付け角度が変化するおそれもある。
【0008】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、タイヤセンサの着脱にかかる作業性を高く維持するとともに、回転運動に伴う力が作用してもタイヤセンサの位置を好適に維持することのできるタイヤバルブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、筒状のバルブステムを有するタイヤバルブと、前記タイヤバルブに固定されるタイヤセンサとを備え、車両用ホイールのリムに装着されるとともに、前記タイヤセンサは前記リムの内側に配置されて該リムに装着されるタイヤの状態を検出するタイヤバルブユニットであって、前記バルブステムは、前記タイヤセンサを該バルブステムに固定する被連結部を有し、前記被連結部には、前記バルブステムの軸に交差する方向へ延びる貫通孔が形成され、前記タイヤセンサは、前記被連結部に嵌合する形状に形成された前記被連結部に固定される連結部を有し、前記連結部には、前記被連結部の貫通孔に連通する連通穴が形成され、前記バルブステムの前記被連結部に嵌合された前記タイヤセンサにおける前記連結部の前記連通穴に、前記被連結部の前記貫通孔に挿通された留め具が挿入されることによって、前記バルブステムに前記タイヤセンサが固定されていることを要旨とする。
【0010】
このような構成によれば、バルブステムにタイヤセンサが嵌合されることでバルブステムの取り付け位置にタイヤセンサがガイドされるとともに、バルブステムに嵌合されたタイヤセンサの位置が留め具により固定されるようになる。これにより、バルブステムへのタイヤセンサの取り付けが容易になるとともに、バルブステムに対するタイヤセンサの位置も好適に維持されるようになる。その結果、車両用ホイールの回転運動に基づいて生じるタイヤセンサを移動させようとする力に、留め具とともに連結部と被連結部との嵌合が対抗するようになるので、タイヤセンサのバルブステムに対する位置が好適に維持されるようにもなる。
【0011】
また、バルブステムやタイヤセンサとは別部材である留め具によりバルブステムにタイヤセンサを位置決め固定する。これにより、留め具として一般的なボルトやピンなどを採用することができるようになる。留め具として一般的なボルトやピンなどを用いるようにすれば、それらボルトやピンの取り付けや取り外しを一般的な工具を用いて行えるようにもなり、バルブステムに対するタイヤセンサの着脱などの作業性を高く維持することができるようにもなる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記留め具は、ねじ溝を有するボルトであり、前記連通穴には、前記ボルトのねじを締結させるねじ溝が形成されていることを要旨とする。
【0013】
このような構成によれば、バルブステムの貫通孔を挿通されたボルトが、タイヤセンサの連通穴のねじ溝にねじ留めされるようになる。これにより、バルブステムにタイヤセンサが強力に固定されるようになる。
【0014】
また、ボルトは一般的な工具による締め付けや取り外しが容易なので、バルブステムに対するタイヤセンサの着脱などの作業性をより高く維持することができなる。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記連結部の連通穴のねじ溝は、当該連結部に埋め込まれたナット部材に形成されたものであることを要旨とする。
【0015】
このような構成によれば、連通穴のねじ溝をナット部材にて構成することができるので連結部にねじ溝を設けることが容易になる。これにより、このようなタイヤバルブユニットの実施が容易になる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記留め具は、ねじ溝を有するボルトであり、前記連通穴は、前記連結部に貫通形成されており、前記ボルトは、前記連通穴を挿通した態様でナットに締結されていることを要旨とする。
【0017】
このような構成によれば、連通穴を挿通されたボルトの先にナット部材を有するので連通穴の加工が容易になる。これによってもタイヤバルブユニットの実施が容易になる。
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記留め具は、かしめピンであり、前記連通穴は、前記連結部に貫通形成されており、前記かしめピンは、前記連通穴を貫通した態様でかしめられていることを要旨とする。
【0018】
このような構成によれば、一旦締結されると緩むおそれのないかしめピンがバルブステムの貫通孔を挿通されてタイヤセンサの連通穴にかしめ留めされるようになる。これによってもバルブステムにタイヤセンサを強力に固定することができる。
【0019】
また、かしめピンも一般的な工具による取り付けが容易なので、バルブステムに対するタイヤセンサの装着などの作業性を高く維持することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記連結部は、前記タイヤセンサに溝状に形成されたものであることを要旨とする。
【0020】
このような構成によれば、連結部は溝状に形成されているのでバルブステムをその溝に嵌め込むことでバルブステムに対するタイヤセンサの位置が規定(位置決め)されることから外力に対する対抗性が向上するとともに、取り付け等の作業性が向上するようになる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記連結部は、前記タイヤセンサに前記被連結部の挿入される穴として形成されているとともに、前記挿入された被連結部の貫通孔に前記留め具を挿入可能にする挿入孔が形成されており、前記留め具は前記挿入孔に挿入された態様で前記貫通孔と前記連通穴に挿通されていることを要旨とする。
【0022】
このような構成によれば、連結部は穴状に形成されているのでバルブステムをその穴に挿入するようにして嵌め込むことでバルブステムに対するタイヤセンサの位置が好適に規定される。またこのように位置が規定される構造により外力に対する対抗性が高く発揮されるとともに、取り付け等の作業性がより向上するようになる。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニットにおいて、前記バルブステムには、前記バルブステムにあって前記リムの内側かつ、前記被連結部ではない位置に該バルブステムの筒内と筒外とを連通させる連絡孔が形成されていることを要旨とする。
【0024】
このような構成によれば、被連結部やその貫通孔及び貫通孔に挿通される留め具等の構
造にかかわらず、バルブステム筒内から筒外への空気の好適な流通が維持される。これにより、タイヤバルブユニットの連結部や被連結部の構成の自由度が高められるようになる。
【発明の効果】
【0025】
従って、上記記載の発明によれば、タイヤセンサの着脱にかかる作業性を高く維持するとともに、回転運動に伴う力が作用してもタイヤセンサの位置を好適に維持することのできるタイヤバルブユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化した第1の実施形態についてその概略構造を示す平面図。
【図2】同実施形態のタイヤバルブユニットについて、図1の2−2線における断面構造を示す断面図。
【図3】同実施形態のタイヤバルブユニットに取り付けられるタイヤセンサの正面構造を示す正面図。
【図4】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化した第2の実施形態についてその概略構造を示す断面図。
【図5】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化した第3の実施形態についてその概略構造を示す断面図。
【図6】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化したその他の実施形態についてその概略構造を示す断面図。
【図7】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化したまた他の実施形態についてその概略構造を示す断面図。
【図8】本発明にかかるタイヤバルブユニットを具体化したさらに他の実施形態についてその概略構造を示す断面図。
【図9】従来のタイヤバルブユニットについてその概略構造を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、本実施形態のタイヤバルブユニットUを示す。タイヤバルブユニットUは、車両用タイヤ内の空気圧や温度等のタイヤ状態を監視するタイヤ状態監視装置に用いられる。タイヤバルブユニットUは、タイヤバルブ1と該タイヤバルブ1にボルト3により締結されたタイヤセンサ2とを備え、車両用ホイールのリムRに設けられるバルブ装着孔Rhに装着される。
【0028】
図2に示すように、タイヤバルブ1は金属製のバルブ本体10を含み、該バルブ本体10の外周部にはキャップ10Aが装着される一方、該バルブ本体10内にはバルブ機構部品Vが収容されている。バルブ本体10は筒状のバルブステム12を含む。バルブステム12の筒内には、長手方向に延びる筒内空間としての連通路12Aが形成されている。バルブステム12は金属製であるが、硬質筒状部材であれば樹脂製でもよい。このバルブステム12は、タイヤバルブユニットUがリムRに装着された状態においてリムRの内側に位置する基端部を有し、その基端部は小径部13及び被連結部13Aを形成している。小径部13及び被連結部13Aは、バルブステム12の軸方向に延びる円筒形である。バルブステム12の長手方向中央部には、フランジ状の膨出部11が形成されている。小径部13には連通路12Aに連通された連絡孔14が設けられている。連絡孔14は、バルブステム12の連通路12AとリムRの内側との間の空気の流通を確保する。被連結部13Aには、バルブステム12の軸方向に交差する貫通孔15が形成されている。貫通孔15は、ボルト3においてねじ溝の形成されたねじ部3bが挿通可能な大きさに形成されてい
る。貫通孔15は、ボルト3のねじ部3bを挿通する一方、ねじ頭部3aを挿通させない。よって、貫通孔15を挿通されたボルト3が締め付けられると、ボルト3にかかる締め付け圧がねじ頭部3aを介して被連結部13Aに伝達される。
【0029】
弾性筒状部材16は、バルブステム12の膨出部11から基端部側の部位を囲繞している。弾性筒状部材16は、膨出部11と小径部13との間のバルブステム12の外周面の部位に固着されている。前記弾性筒状部材16はゴム部材であって、バルブステム12の先端部に向かってテーパ状をなす。弾性筒状部材16の外周面には、径方向外側に向かって延出する環状の第1係合部17及び第2係合部18が設けられている。第2係合部18は、弾性筒状部材16の基端部に設けられ、リムRの内側面に係合可能である。第1係合部17は、第2係合部18からリムRの厚さに相当する距離だけ弾性筒状部材16の軸方向に離間しており、リムRの外側面に係合可能である。これら第1及び第2係合部17,18間には、バルブ装着孔Rhの周囲のリムRの部分(装着部Ra)が嵌入される装着溝19が形成されている。本実施形態において、第1係合部17及び第2係合部18の各々は環状凸部であるが、周方向に沿って所定間隔を置いて配置された複数の突起によって構成されてもよい。
【0030】
弾性筒状部材16には、開口部20Aを有する凹設部20が設けられ、該凹設部20はタイヤバルブユニットUがリムRに装着された状態においてリムRの内側に位置する。開口部20AはリムRの内側に、すなわちタイヤの内部空間に向かって開放されている。凹設部20の径は、開口部20Aに向かうに従って増大する。凹設部20の内壁とバルブステム12の小径部13の外周面との間には、環状空間部Sが形成されている。環状空間部Sは、開口部20Aから弾性筒状部材16の装着溝19に対応する位置まで延びており、弾性筒状部材16の開口部20A側の端部は自由端となっている。
【0031】
図1〜3に示すように、タイヤセンサ2は、センサユニット(図示略)を収容する樹脂製のハウジング21を含む。ハウジング21は、蓋体22によって閉塞される開口を有する。センサユニットは、種々の電子部品やバッテリ、アンテナ等を含み、リムRに装着されるタイヤの状態(内部空気圧等)を検出する機能や、検出したタイヤ状態を車室内に設けられる受信装置(図示略)に送信する送信機能等を備えている。
【0032】
ハウジング21には、該ハウジング21をバルブステム12に連結させるための連結部23が設けられる。
連結部23には、バルブステム12の被連結部13Aを嵌合させる嵌合溝24が形成されている。嵌合溝24は、被連結部13Aの外形形状と同様の内形形状を有し、バルブステム12の軸方向に延設されている。具体的には、被連結部13Aは径方向断面が円形形状であることから、嵌合溝24は径方向断面が被連結部13Aの外形形状に対応する円形形状に形成されている。これにより、バルブステム12の軸方向に対するタイヤセンサ2の角度は、バルブステム12の被連結部13Aをその端部から嵌合溝24に挿入させることによって規定される。連結部23は、嵌合溝24内からハウジング21の上方に貫通する長穴25が開口されている。長穴25は、バルブステム12の径方向への幅がボルト3のねじ部3bを挿通可能な大きさに形成されている。また、連結部23において、嵌合溝24を挟んで長穴25に対向する位置にあたるハウジング21内には、ナット部材26が埋設けられている。ナット部材26はボルト3のねじ部3bが螺合される。該ナット部材26はステンレス等の金属材料によって形成され、インサート成形によってハウジング21と一体化されている。本実施の形態のナット部材26は金属製であるが、硬質部材であれば樹脂製でもよい。これによりナット部材26には、長穴25を挿通されたボルト3のねじ部3bが螺合可能になる。すなわち、バルブステム12の被連結部13Aに嵌合溝24を嵌合させて被連結部13Aの貫通孔15を挿通させたボルト3を締め付けることで、タイヤセンサ2がバルブステム12に締結されるようになる。
【0033】
ハウジング21は、弾性筒状部材16の開口部20Aを閉塞しないようにバルブステム12に取り付けられる。バルブステム12に取り付けられたハウジング21と弾性筒状部材16との間には、小径部13を介してバルブステム12の軸方向に所定の間隔が確保される。すなわち、ハウジング21は、バルブステム12に取り付けられた状態において、弾性筒状部材16の径方向内側へ向かう弾性変形や環状空間部Sへの空気の流通を妨げない。また上述した取り付け状態において、ハウジング21と弾性筒状部材16との間には、上記連絡孔14が配置される。すなわちハウジング21は、バルブステム12に取り付けられた状態において、連絡孔14からリム内部へ向う空気の流通を妨げない。またこれにより、被連結部13Aの連結部23への取り付け構造によらず、連通路12Aからリム内部への空気の流通が連絡孔14により確保される。
【0034】
次に、このようなタイヤバルブユニットUの構成における効果等についてタイヤセンサ2に関わる内容を中心に説明する。
図3に示すように、それぞれ個別であったタイヤバルブ1及びタイヤセンサ2は、バルブステム12の被連結部13Aに嵌合させた連結部23がボルト3のナット部材26への螺着を通じて連結されることによって、一体となって図1に示すタイヤバルブユニットUを構成する。この場合、バルブステム12の被連結部13Aに連結部23の嵌合溝24が嵌合した構成によってバルブステム12に対するタイヤセンサ2の位置が規定されるため、タイヤバルブ1にタイヤセンサ2を組み付ける作業の作業性が高い。
【0035】
一方、車両用ホイールには車両の加減速によって車両用ホイールの回転方向への力F1,F2(図1参照)が生じるとともに、車両用ホイールの回転によって遠心力F3(図2参照)が生じる。本実施形態のようにタイヤバルブ1に取り付けられたタイヤセンサ2は、嵌合溝24と被連結部13Aとが嵌合しているため、バルブステム12の径方向に対する移動の自由度がない。このため、回転方向への力F1,F2や遠心力F3が印加された場合でも、タイヤセンサ2のタイヤバルブ1に対する位置は維持される。また、このような移動の規制を嵌合溝24と被連結部13Aとの嵌合により確保しているために移動の自由度が大きくなるように変化するおそれも小さい。
【0036】
他方、バルブステム12の軸方向への力やバルブステム12の軸方向を回転中心とする回転力がタイヤセンサ2に生じるようなおそれもある。本実施形態では、被連結部13Aの貫通孔15と連結部23のナット部材26とをボルト3が串刺し状に挿通しているため、連結部23にはバルブステム12の軸方向への自由度がないとともに、バルブステム12の軸方向を回転中心として被連結部13Aを回転する自由度もない。このため、バルブステム12の軸方向への力やバルブステム12の軸方向を回転中心とする回転力が生じた場合でも、タイヤセンサ2のタイヤバルブ1に対する位置は維持される。また、このような移動の規制をボルト3のせん断応力により確保しているために移動の自由度が大きくなるように変化するおそれも小さい。
【0037】
すなわち、本実施形態のタイヤセンサ2は、被連結部13Aが嵌合溝24に嵌合することによって、それ自体の回転方向への力F1,F2や遠心力F3など、バルブステム12の軸方向に交差する方向に作用する力により変位し難い構成となっている。また、本実施形態のタイヤセンサ2は、ボルト3が貫通孔15に挿通されることによって、バルブステム12の軸方向の力やバルブステム12の軸方向を回転中心とする回転力により変位し難い構成となっている。その一方、ボルト3においては、ボルト3の長手方向軸心を回転中心とする回転力が加えられ難いため、こうしたボルト3に対しては、別途、同回転力に抗した力を付与する必要がない。これらのことから、ナット部材26に対するボルト3の締結力の強弱にかかわらず、ホイール回転方向への力F1,F2及び遠心力F3及び前記軸方向の力や前記軸を中心とした回転力など、これらの力によりタイヤセンサ2がタイヤバ
ルブ1に対して移動することはない。
【0038】
したがって、上述した車両用ホイールの加減速及び回転に伴い生じる力などはもとより、タイヤバルブユニットUが車両の走行中に大きな衝撃や振動を受けた場合でも、タイヤバルブ1に対するタイヤセンサ2の移動が防止される。
【0039】
以上説明したように、本実施形態のタイヤバルブユニットによれば、以下に列記するような効果が得られるようになる。
(1)バルブステム12にタイヤセンサ2が嵌合されることでバルブステム12の取り付け位置にタイヤセンサ2がガイドされるとともに、バルブステム12に嵌合されたタイヤセンサ2の位置がボルト3により固定されるようになる。これにより、バルブステム12へのタイヤセンサ2の取り付けが容易になるとともに、バルブステム12に対するタイヤセンサ2の位置も好適に維持されるようになる。その結果、車両用ホイールの回転運動に基づいて生じるタイヤセンサを移動させようとする力(F1,F2,F3)に、ボルト3とともに連結部23と被連結部13Aとの嵌合が対抗するようになるので、タイヤセンサ2のバルブステム12に対する位置が好適に維持されるようにもなる。
【0040】
(2)バルブステム12やタイヤセンサ2とは別部材であるボルト3によりバルブステム12にタイヤセンサ2を位置決め固定する。これにより、留め具として一般的なボルト3を採用することができるようになる。一般的なボルト3を用いるようにすれば、ボルト3の取り付けや取り外しを一般的な工具を用いて行えるようにもなり、バルブステム12に対するタイヤセンサ2の着脱などの作業性を高く維持することができるようにもなる。
【0041】
(3)バルブステム12の貫通孔15を挿通されたボルト3が、タイヤセンサ2の連通穴としてのナット部材26のねじ溝にねじ留めされるようになる。これにより、バルブステム12にタイヤセンサ2が強力に固定されるようになる。
【0042】
(4)ねじ溝をナット部材26にて構成することができるので連結部23にねじ溝を設けることが容易になる。これにより、このようなタイヤバルブユニットの実施が容易になる。
【0043】
(5)連結部23はその嵌合溝24が溝状に形成されているのでバルブステム12をその嵌合溝24に嵌め込むことでバルブステム12に対するタイヤセンサ2の位置が規定(位置決め)される。このことから外力(F1,F2,F3)に対する対抗性が向上するとともに、取り付け等の作業性が向上するようになる。
【0044】
(6)被連結部13Aやその貫通孔15及び貫通孔15に挿通されるボルト3の構造にかかわらず、バルブステム12筒内の連通路12Aから筒外への空気の好適な流通が維持される。これにより、タイヤバルブユニットの連結部23や被連結部13Aの構成の自由度が高められるようになる。
【0045】
(第2の実施形態)
本発明を具体化した第2の実施形態について図面に従って説明する。
なお、本実施形態のタイヤバルブユニットは、先の第1の実施形態に対して被連結部の構造が相違するものの、その他の構成などは同様であることから、ここでは主に相違点について説明することとし、説明の便宜上、同様の構成などには同様の符号を付しその説明を割愛する。
【0046】
図4に示すように、連結部28には、長穴25に対して嵌合溝24を挟んだ位置にハウジング21を貫通する穴29が設けられている。穴29の出口にはナット26Bが配置さ
れる。ナット26Bはボルト3Aのねじ部3jが螺合される。ナット26Bはステンレス等の金属材料によって形成され、ボルト3Aを締結するときにハウジング21に配置される。本実施の形態のナット26Bは金属製であるが、硬質部材であれば樹脂製でもよい。
【0047】
これにより、ナット26Bには長穴25、貫通孔15及び穴29を挿通されたボルト3Aのねじ部3jが螺合可能になる。すなわち、バルブステム12の被連結部13Aに嵌合溝24を嵌合させて長穴25、貫通孔15及び穴29を挿通させたボルト3Aを締め付けることで、タイヤセンサ2がバルブステム12に締結されるようになる。
【0048】
以上説明したように、本実施形態のタイヤバルブユニットによっても先の第1の実施形態の前記(1)〜(6)の効果と同等もしくはそれに準じた効果が得られるとともに、次のような効果が得られるようになる。
【0049】
(7)連通穴としての穴29を挿通されたボルト3Aの先にナット部材としてのナット26Bを有するので穴29の加工が容易になる。これによってもタイヤバルブユニットの実施が容易になる。
【0050】
(第3の実施形態)
本発明を具体化した第3の実施形態について図面に従って説明する。
なお、本実施形態のタイヤバルブユニットは、先の第1の実施形態に対して被連結部の構造が相違するものの、その他の構成などは同様であることから、ここでは主に相違点について説明することとし、説明の便宜上、同様の構成などには同様の符号を付しその説明を割愛する。
【0051】
図5に示すように、連結部30には、バルブステム12の被連結部13Aを嵌合させる嵌合孔31が形成されている。嵌合孔31は、バルブステム12の軸方向に延びるようにハウジング21の側面に設けられた孔であり、その径方向断面は被連結部13Aの径方向断面と同形状に形成されている。そして嵌合孔31にバルブステム12の被連結部13Aを端部から挿入させることによって、バルブステム12の軸方向に対するタイヤセンサ2の角度が規定される。
【0052】
連結部30には、嵌合孔31内からハウジング21の上方に貫通する大径穴32が開口されている。大径穴32は、ボルト3Bのねじ頭部3hを挿通させることの可能な内形を有している。また、連結部23は、大径穴32に対して嵌合孔31を挟んだ位置にあってハウジング21内にはナット部材26が埋設けられている。これにより、ナット部材26には大径穴32を挿通されたボルト3Bのねじ部3bが螺合可能になる。すなわち、バルブステム12の被連結部13Aに嵌合孔31を嵌合させて大径穴32及び貫通孔15を挿通させたボルト3Bを締め付けることで、タイヤセンサ2がバルブステム12に締結されるようになる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態のタイヤバルブユニットによっても先の第1の実施形態の前記(1)〜(4)及び(6)の効果と同等もしくはそれに準じた効果が得られるとともに、次のような効果が得られるようになる。
【0054】
(8)連結部30の嵌合孔31は穴状に形成されているのでバルブステム12の被連結部13Aをその穴に挿入するようにして嵌め込むことでバルブステム12に対するタイヤセンサ2の位置が好適に規定される。また、このように位置が規定される構造により外力(F1,F2,F3)に対する対抗性が高く発揮されるとともに、取り付け等の作業性がより向上するようになる。
【0055】
なお、上記各実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記第2の実施形態では、ボルト3Aとナット26Bによってタイヤセンサ2がバルブステム12に締結される場合ついて例示した。しかしこれに限らず、タイヤセンサをバルブステムに、かしめピンや割ピンなどにより締結するようにしてもよい。例えば、図6に示すように、かしめピン3Cを長穴25、貫通孔15及び穴29を挿通させるとともに、ハウジング21に突出した先端を潰すことでタイヤセンサ2をバルブステム12に締結することができるようになる。これによっても、バルブステムへのタイヤセンサの取り付けを一般的な工具により行なうことができるので、作業性の向上が図られる。
【0056】
また、一旦締結されると緩むおそれのないかしめピン3Cがバルブステム12の貫通孔15を挿通されてタイヤセンサ2の穴29にかしめ留めされるようになる。これによってもバルブステム12にタイヤセンサ2を強力に固定することができる。さらに、かしめピン3Cも一般的な工具による取り付けが容易なので、バルブステム12に対するタイヤセンサ2の装着などの作業性を高く維持することができる。
【0057】
・上記第1及び第3の実施形態では、ナット部材26はインサート成形によってタイヤセンサ2のハウジング21と一体化される場合について例示した。しかしこれに限らず、このようなナット部材26を省略してもよい。例えば図7に示すように、ハウジング21にナット部21aが一体に形成される、言い換えればナット部(雌ねじ)21aがハウジング21に直接的に形成されるようにしてもよい。このようにすれば、部品点数を少なくすることができる。
【0058】
・上記各実施形態では、嵌合部としての嵌合溝24又は嵌合孔31がハウジング21の内側に形成さる場合について例示した。しかしこれに限らず、嵌合部は、ハウジングの外側に形成されてもよい。例えば、図8に示すように、連結部35にハウジング21の側面から延設された円筒形状の嵌合部36を設けてもよい。そして、嵌合部36に被連結部13Aを嵌合させて嵌合部36の穴37と被連結部13Aの貫通孔15とにボルト3Dを挿通させて締結するようにしてもよい。これにより、連結部の設計自由度が高められる。
【0059】
・上記各実施形態では、被連結部13Aの径方向断面が円筒形状である場合について例示した。しかしこれに限らず、被連結部の径方向断面が楕円形の筒状や、多角形などの筒状であってもよい。また、筒のような内部空間を有さない円形、楕円形及び多角形などの形状であってもよい。
【0060】
・上記各実施形態では、被連結部13Aの外周の多くの部分が連結部23(28,30)に囲まれる場合について例示した。しかしこれに限らず、連結部に囲まれる被連結部の外周の範囲は特に限られず、例えば、外周の半分でも、半分より多くても、半分より少なくてもよい。例えば、連結部が被連結部の外周の4分の1に嵌合する場合であれ、ねじ等で被連結部と連結部とを離間しないように締結することでいずれの力にも好適に対抗することができるようになる。
【0061】
・上記各実施形態では、ボルト3,3A,3B,3Dの軸やかしめピン3Cの軸が車両用ホイールの中央方向に向く場合について例示した。しかしこれに限らず、ボルトの軸ややかしめピンの軸は、車両用ホイールに沿う方向など、車両用ホイールの中央方向ではない方向に向くように設けられてもよい。これによっても、バルブステムに対するタイヤセンサの位置が好適に維持されるとともに、接続部や被接続部の設計自由度も向上される。
【符号の説明】
【0062】
1…タイヤバルブ、2…タイヤセンサ、3,3A,3B,3D…留め具としてのボルト、3a,3h…ねじ頭部、3b,3j…ねじ部、3C…留め具としてのかしめピン、10
…バルブ本体、10A…キャップ、11…膨出部、12…バルブステム、12A…連通路、13…小径部、13A…被連結部、14…連絡孔、15…貫通孔、16…弾性筒状部材、17…第1係合部、18…第2係合部、19…装着溝、20…凹設部、20A…開口部、21…ハウジング、21a…ナット部、22…蓋体、23,28,30,35…連結部、24…嵌合溝、25…長穴、26…ナット部材、26B…ナット、29,37…穴、31…嵌合孔、32…大径穴、36…嵌合部、R…リム、S…環状空間部、U…タイヤバルブユニット、V…バルブ機構部品、Rh…バルブ装着孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のバルブステムを有するタイヤバルブと、
前記タイヤバルブに固定されるタイヤセンサとを備え、
車両用ホイールのリムに装着されるとともに、前記タイヤセンサは前記リムの内側に配置されて該リムに装着されるタイヤの状態を検出するタイヤバルブユニットであって、
前記バルブステムは、前記タイヤセンサを該バルブステムに固定する被連結部を有し、
前記被連結部には、前記バルブステムの軸に交差する方向へ延びる貫通孔が形成され、
前記タイヤセンサは、前記被連結部に嵌合する形状に形成された前記被連結部に固定される連結部を有し、
前記連結部には、前記被連結部の貫通孔に連通する連通穴が形成され、
前記バルブステムの前記被連結部に嵌合された前記タイヤセンサにおける前記連結部の前記連通穴に、前記被連結部の前記貫通孔に挿通された留め具が挿入されることによって、前記バルブステムに前記タイヤセンサが固定されている
ことを特徴とするタイヤバルブユニット。
【請求項2】
前記留め具は、ねじ溝を有するボルトであり、
前記連通穴には、前記ボルトのねじを締結させるねじ溝が形成されている
請求項1に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項3】
前記連結部の連通穴のねじ溝は、当該連結部に埋め込まれたナット部材に形成されたものである
請求項2に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項4】
前記留め具は、ねじ溝を有するボルトであり、
前記連通穴は、前記連結部に貫通形成されており、
前記ボルトは、前記連通穴を挿通した態様でナットに締結されている
請求項1に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項5】
前記留め具は、かしめピンであり、
前記連通穴は、前記連結部に貫通形成されており、
前記かしめピンは、前記連通穴を貫通した態様でかしめられている
請求項1に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項6】
前記連結部は、前記タイヤセンサに溝状に形成されたものである
請求項1〜5のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項7】
前記連結部は、前記タイヤセンサに前記被連結部の挿入される穴として形成されているとともに、前記挿入された被連結部の貫通孔に前記留め具を挿入可能にする挿入孔が形成されており、
前記留め具は前記挿入孔に挿入された態様で前記貫通孔と前記連通穴に挿通されている
請求項1〜5のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニット。
【請求項8】
前記バルブステムには、前記バルブステムにあって前記リムの内側かつ、前記被連結部ではない位置に該バルブステムの筒内と筒外とを連通させる連絡孔が形成されている
請求項1〜7のいずれか一項に記載のタイヤバルブユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−251635(P2011−251635A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127159(P2010−127159)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000204033)太平洋工業株式会社 (143)
【Fターム(参考)】