説明

タイヤ側面故障検出方法及び装置

【課題】試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、試験準備時間を短縮できるタイヤ側面故障検出装置を得る。
【解決手段】ビデオカメラ20によって正面からタイヤ12の側面を撮影する際に、撮影範囲の一方の端で正反射光が撮影範囲に入る位置となるように光ファイバー18の先端18Aをビデオカメラ20に近づける。これにより、投射された正反射光は、基準高輝度部位に発生すると共に、タイヤ12の側面に局所的な微小な膨らみがあるその他の高輝度部位の輝度が、周辺の輝度に比べて高くなる。このため、パソコン24で基準高輝度部位とその他の高輝度部位とのタイヤ周方向の距離、及びその他の高輝度部位の輝度から、タイヤ12の側面の故障を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ耐久試験において回転するタイヤの側面の故障を検出するためのタイヤ側面故障検出方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤの耐久試験は、ドラムの外周上で試験用のタイヤを走行させながら耐久試験を実施し、タイヤに故障が発生した段階で、その故障を検出して試験を終了させる。従来、タイヤ耐久試験において、回転するタイヤの故障を検出する場合には、タイヤ側面のように故障を生じ易い部位にタッチセンサを設置することが行われている。また、このタッチセンサを改善した技術として、タイヤの故障により膨出したタイヤ表面が検知体に接触することでタイヤの故障を検出する装置(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−55380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、タイヤの外縁に沿って一方のビード部側から他方のビード部側にかけて延在する曲げ変形可能なU字状の検知体を使用している。このため、試験するタイヤを変更した場合には、作業者が変更したタイヤの外縁に沿って検知体を変形させる必要がある。この結果、装置の設定が煩雑になり試験準備に時間がかかる。
【0005】
本発明は、上記問題を解決すべく成されたもので、試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、試験準備時間を短縮できるタイヤ側面故障検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明のタイヤ側面故障検出方法は、タイヤの側面を撮影し、光源からの投射光により前記タイヤの側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、該基準位置に対応する径方向位置で、且つ前記基準位置以外で輝度が前記所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認し、前記その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、前記撮影画像内での前記基準高輝度部位と前記その他の高輝度部位との前記タイヤ周方向の距離及び前記その他の高輝度部位の輝度から、前記側面の故障を検出する。
【0007】
請求項1記載のタイヤ側面故障検出方法では、タイヤの側面を撮影する際に、光源からの投射光によりタイヤの側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、基準位置に対応する径方向位置で、且つ基準位置以外で輝度が所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認する。そして、その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、撮影画像内での基準高輝度部位とその他の高輝度部位とのタイヤ周方向の距離、及び前記その他の高輝度部位の輝度から、側面の故障を検出する。このため、試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、タイヤの側面を撮影すればよいので、タイヤのサイズに対応して容易に設定できる。この結果、試験準備時間を短縮できる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイヤ側面故障検出方法において、前記タイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、前記タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)とした。
【0009】
請求項2記載のタイヤ側面故障検出方法では、タイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)としたため、高速度対応の撮影装置でない一般的な撮影装置を用いて高速度対応の撮影装置と同様に、高速で回転するタイヤの側面を全周の撮影画像を得ることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤ側面故障検出方法において、前記光源を前記撮影間隔に同期して点灯させる。
【0011】
請求項3記載のタイヤ側面故障検出方法では、光源を撮影間隔に同期して点灯させるため、光源の消費電力を抑制できる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出方法において、前記光源からの投射光を前記タイヤの側面の近傍に導く。
【0013】
請求項4記載のタイヤ側面故障検出方法では、光源からの投射光をタイヤの側面の近傍に導くため、タイヤが破裂した場合に、光源が損傷するのを防止できる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出方法において、前記側面の故障検出時に、前記タイヤを停止する。
【0015】
請求項5に記載のタイヤ側面故障検出方法では、側面の故障検出時にタイヤを停止するため、タイヤの破裂を防止できる。
【0016】
請求項6に記載の発明のタイヤ側面故障検出装置は、タイヤを転動させる駆動装置と、前記タイヤの側面を撮影する少なくとも1台の撮影装置と、前記タイヤの側面に投射光を投射する光源と、前記撮影装置で撮影された前記側面の画像データから前記タイヤの側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、該基準位置に対応する径方向位置で、且つ前記基準位置以外で輝度が前記所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認し、前記その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、前記撮影画像内での前記基準高輝度部位と前記その他の高輝度部位との前記タイヤ周方向の距離及び前記その他の高輝度部位の輝度から、前記側面の故障を検出する画像処理手段と、を備えている。
【0017】
請求項6に記載のタイヤ側面故障検出装置では、少なくとも1台の撮影装置によって、駆動装置よって転動するタイヤの側面を撮影する。この際、光源からの投射光をタイヤの側面に投射する。また、画像処理手段により、タイヤ側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、基準位置に対応する径方向位置で、且つ基準位置以外で輝度が所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認する。そして、その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、撮影画像内での基準高輝度部位とその他の高輝度部位とのタイヤ周方向の距離、及び前記その他の高輝度部位の輝度から、側面の故障を検出する。このため、試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、タイヤの側面を撮影できる位置に撮影装置と光源とを配置すればよいので、タイヤのサイズに対応して容易に設定できる。この結果、試験準備時間を短縮できる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のタイヤ側面故障検出装置において、前記撮影装置は、前記タイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、前記タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)とした。
【0019】
請求項7記載のタイヤ側面故障検出装置では、撮影装置によってタイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)としたため、高速度対応の撮影装置でない一般的な撮影装置を用いて高速度対応の撮影装置と同様に、高速で回転するタイヤの側面を全周の撮影画像を得ることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のタイヤ側面故障検出装置において、前記光源は前記撮影間隔に同期して点灯する。
【0021】
請求項8記載のタイヤ側面故障検出装置では、光源を撮影間隔に同期して点灯させるため、光源の消費電力を抑制できる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、請求項6〜8の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出装置において、前記光源の投射光を前記タイヤの近傍に導く光ガイド手段を有する。
【0023】
請求項9記載のタイヤ側面故障検出装置では、光ガイド手段によって、光源からの投射光をタイヤの側面の近傍に導くため、タイヤが破裂した場合に、光源が損傷するのを防止できる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項6〜9の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出装置において、前記駆動装置は、前記画像処理手段による前記側面の故障検出時に停止する。
【0025】
請求項10に記載のタイヤ側面故障検出装置では、画像処理手段が側面の故障を検出した時に駆動装置が停止する。このため、側面の故障検出時にタイヤが停止しタイヤの破裂を防止できる。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したように請求項1に記載の本発明のタイヤ側面故障検出方法は、試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、試験準備時間を短縮できる。
【0027】
請求項2に記載の本発明のタイヤ側面故障検出方法は、一般的な撮影装置を使用できる。
【0028】
請求項3に記載の本発明のタイヤ側面故障検出方法は、光源の消費電力を抑制できる。
【0029】
請求項4に記載の本発明のタイヤ側面故障検出方法は、光源が損傷するのを防止できる。
【0030】
請求項5に記載の本発明のタイヤ側面故障検出方法は、タイヤの破裂を防止できる。
【0031】
請求項6に記載の本発明のタイヤ側面故障検出装置は、試験するタイヤのサイズを変更した場合にも、試験準備時間を短縮できる。
【0032】
請求項7に記載の本発明のタイヤ側面故障検出装置は、一般的な撮影装置を使用できる。
【0033】
請求項8に記載の本発明のタイヤ側面故障検出装置は、光源の消費電力を抑制できる。
【0034】
請求項9に記載の本発明のタイヤ側面故障検出装置は、光源が損傷するのを防止できる。
【0035】
請求項10に記載の本発明のタイヤ側面故障検出装置は、タイヤの破裂を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置で転動する空気タイヤを撮影している状態を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の原理を示す模式図である。
【図4】比較例の撮影画像を示す概略図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の撮影画像を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置における基準高輝度部位とその他の高輝度部位との関係を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の撮影画像を示す概略図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の撮影画像を示す概略図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の撮影画像を示す概略図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置の撮影画像を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置を図面に従って説明する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係るタイヤ側面故障検出装置10は、タイヤ12を転動させるための駆動装置11と、転動するタイヤ12の側面としてのサイドウォール部12Sのビード部12Aにハレーションを発生させるための光源の一例としてのランプ16を備えている。このランプ16は電源17のオン・オフによって所定の間隔で点滅するストロボランプとなっている。また、ランプ16とタイヤ12との間には光ガイド手段の一例としての光ファイバー18が設けれている。このため、ランプ16からの投射光は、光ファイバー18を介してタイヤ12のサイドウォール部12Sの近傍に導かれ、光ファイバー18の先端18Aからサイドウォール部12Sに投射されるようになっている。例えば、ランプ16及び光ファイバー18としてNissinElectronic製のファイヤーストロボ(商品名:CF−15)を使用する。
【0039】
従って、ランプ16として所定の間隔で点滅するストロボランプを使用するため、ランプを常時点灯させる装置に比べて消費電力を抑制できるようになっている。また、光ファイバー18を使用することによって、タイヤ12から離れた位置にランプ16を配置することができる。このため、タイヤ12が破裂した場合に、タイヤ12の破片によってランプ16が損傷するのを防止できるようになっている。
【0040】
また、タイヤ12のサイドウォール部12Sを撮影できる位置には撮影装置の一例としてのビデオカメラ20が配置されている。例えば、ビデオカメラ20としてSony製のビデオカメラ(商品名:XCD−U100)を使用する。
【0041】
なお、このビデオカメラ20(商品名:XCD−U100)は最大撮影速度が毎秒15コマで、トリガーモードを使用するとそのトリガー信号の間隔で撮影ができ、最大8枚までビデオカメラ内蔵メモリに保存することが可能である。また、ビデオカメラ内蔵メモリを使用せず、撮影画像を画像処理手段の一例としてのパソコン24に直接転送し、この直接転送により撮影可能速度が低下した場合には、前記撮影加算するタイヤ回転周期の倍数を2倍以上に調整することが可能である。また、撮影時間短縮のために、撮影加算するタイヤ回転周期の倍数に1/2等の分数を用いる場合には、回転角に合わせて撮影画像の並べ替えが必要となる。
【0042】
本実施形態では、ビデオカメラ20が、例えば、IEEE1394に準拠したケーブル22によって、画像処理手段の一例としてのパソコン24に接続されており、ビデオカメラ20とパソコン24との間で撮影条件の制御と撮影画像の転送が行われるようになっている。
【0043】
ビデオカメラ20はカメラケーブル26によってカメラアダプター28(例えば、ソニー製のCD−700)に接続されている。また、カメラアダプター28はBNCケーブル30によって電源17に接続されており、ランプ16がビデオカメラ20の撮影間隔に同期して点灯するようになっている。さらに、駆動装置11はパソコン24に接続されており、駆動装置11はパソコン24からの制御信号によって作動または停止するようになっている。
【0044】
図2に示すように、タイヤ12はリムを組み込んだ状態で駆動装置11の回転軸11Aに装着されており、図2の矢印A方向へ回転可能となっている。また、ビデオカメラ20は駆動装置11を覆うカバー34の下面34Aに固定されており、タイヤ12のサイドウォール部12Sを撮影できるようになっている。なお、ビデオカメラ20の撮影画像では矢印UP方向が画面上方となっている。また、タイヤ12の接地面12Bは試験用の無端ベルト36に当接しており、無端ベルト36はタイヤ12の回転によって図2の矢印B方向へ回転するようになっている。
【0045】
(タイヤ側面故障検出の原理)
図3に示すように、ビデオカメラ20の撮影範囲(撮影角度)をθ1(例えば、24度)とし、撮影距離をQ1(例えば、100mm)とした場合には、光ファイバー18の先端18Aをビデオカメラ20から距離M1(約42.5mm)離すことで、撮影範囲の一端で、タイヤ12の側面の一例としてのビード部12Aの周方向に沿った傾き無しの基準位置の入射角θ2と反射角θ3とが等しくなり(例えば、12度)正反射する(基準高輝度部位P1)。
【0046】
この時、光ファイバー18の先端18Aからの投射光が、画像中央部で正反射する(その他の基準高輝度部位P2)ためには、ビード部12Aの膨らみ等による表面の周方向に沿った傾き(α2)が約11.5度必要でる。また、光ファイバー18の先端18Aからの投射光が、他方の撮影範囲の他端で正反射(その他の基準高輝度部位P3)するためには、ビード部12Aの膨らみ等による表面の周方向に沿った傾き(α3)が約22.3(24/2+10.3)度必要になる。
【0047】
即ち、タイヤ12のビード部12Aの局所的な膨らみ等によるビード部12Aの表面の周方向に沿った傾きの増加に伴い、傾き無しの基準高輝度部位(P1)からより離れた(距離が長い)位置で正反射する。
【0048】
なお、ビデオカメラ20によって正面からタイヤ12のサイドウォール部12Sを撮影する場合に、光ファイバー18の先端18Aを、正反射光が撮影範囲に入らない位置までビデオカメラ20から離して配置すると、図4に示すように、破線四角で示した局所的な微小な膨らみ(F1)で、斜めからの照射光による薄い陰影があるのみで明確でない。
【0049】
これに対して、本実施形態では、ビデオカメラ20によって正面からタイヤ12のサイドウォール部12Sを撮影する際に、図5に示すように、撮影範囲の一方の端で正反射光が撮影範囲に入る位置(基準高輝度部位P1)となるように光ファイバー18の先端18Aをビデオカメラ20に近づける。これにより、光ファイバー18の先端18Aから投射された正反射光は、図3に示すように、撮影面(基準高輝度部位P1)に対する垂直軸(H)に対称で入射角(θ2)と反射角(θ3)が等しい方向に発生する。一方、タイヤ12のビード部12Aの側面は黒色で表面が滑らかなため、局所的な微小な膨らみ(その他の高輝度部位P2、P3)の周辺では拡散反射となる。この結果、局所的な微小な膨らみ(その他の高輝度部位P2、P3)の輝度が、周辺の輝度に比べて高くなる。
【0050】
即ち、タイヤ耐久試験における局所的は微小な膨らみ(その他の高輝度部位P2、P3)においては、傾き無しの(平らな)基準高輝度部位(P1)から膨らみ(その他の高輝度部位P2、P3)に向かって徐々に傾きが増加し、膨らみの中腹から頂点に向かい傾きが減少する。このため、その他の高輝度部位(P2、P3)の輝度は、図6に示すようになる。
【0051】
この結果、図6に示すように、ビード部12Aの基準高輝度部位(P1)の輝度(K1)と、例えば、その他の高輝度部位(P2)の輝度(K2)とが閾値(K0)より高くなり、基準高輝度部位(P1)での正反射光の光量(S1)と、その他の高輝度部位(P2)での正反射光の光量(S2)が大きくなる。
【0052】
このため、パソコン24では、基準高輝度部位(P1)に対してその他の高輝度部位(P2)が在るか否かを確認し、その他の高輝度部位(P2)が在ると確認した場合には、撮影画像内での基準高輝度部位(P1)とその他の高輝度部位(P2)とのタイヤ周方向の距離(L1)、及びその他の高輝度部位(P2)の輝度(S2)から、タイヤ12のビード部12Aの故障を検出することができる。
【0053】
(タイヤ回転中の同期及遅延撮影)
タイヤの耐久試験中の回転数は、例えば、時速80km/hの条件では約400rpmとなる。このため、図3に示すように、撮影範囲を角度θ1(例えば、24度)としたビデオカメラ20で、タイヤ12のサイドウォール部12Sの全域を撮影するためには、タイヤ12の1回転に24枚撮影することになる。このため、撮影間隔が約0.00625=(60/400)×(1/24)秒となり、高速度ビデオカメラが必要となる。
【0054】
これに対して、本実施形態では、タイヤ12の1回転で1枚撮影し、タイヤ12が24回転することで、サイドウォール部12Sの全域を撮影する。これは、タイヤの耐久試は長時間であるため、タイヤ12を24回転させて、サイドウォール部12Sの全域を撮影しても検出精度に大きな問題はないためである。
【0055】
即ち、本実施形態では、タイヤ12の回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をT±(T/N)とする。具体的には、撮影間隔をタイヤ12の回転周期Tの1倍となる約0.015秒を加え約0.15625秒≒(60/400)×(1+1/24)とする。これによって、撮影間隔が毎秒6.4コマとなる。
【0056】
このため、図7に示す1枚目の画像に対し、図8に示す2枚目の画像は1+1/24回転後の画像であり、図9に示す3枚目の画像は2+2/24回転後の画像である。このように、試験時間の長いタイヤの耐久試験では、1+1/24回転後や2+2/24回転後となってもタイヤの変化に大きな違いはない。なお、図7〜図9の矢印Aは画像上でのタイヤ12の回転方向を示している。
【0057】
従って、本実施形態では、タイヤ12のサイドウォール部12Sの全域を撮影するために、高速度ビデオカメラを必要としない。
【0058】
(試験例)
試験用のタイヤ12として、空気入りトラックバス用タイヤ295/75R22.5を使用し、タイヤ12に正規リムを組み込んで正規内圧とし、タイヤ12を回転させる試験装置に取付け、正規荷重を負荷した。ここで、「正規リム」とは、例えばJATMAが発行する2009年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズにおける標準リムを指し、「正規荷重」及び「正規内圧」とは、同様に、JATMAが発行する2009年版のYEAR BOOKに定められた適用サイズ・プライレーティングにおける最大荷重及び該最大荷重に対する空気圧を指す。使用地又は製造地において、TRA規格、ETRTO規格が適用される場合は、各々の規格に従う。
【0059】
そして、このタイヤ12を時速80km/hの走行となるように転動させた。この時、回転数は430rpm前後となる。また、光ファイバー18の先端18Aからの投射光をタイヤ12のサイドウォール部12Sに投射し、ビデオカメラ20で撮影した。この撮影画像を図5に示す。また、ビデオカメラ20で撮影された録画データをパソコン24で演算処理する。そして、図6に示す輝度の変化に基づいて、タイヤ12のビード部12Aの膨らみ、例えば、その他の高輝度部位(P2)が在るか否かを確認し、その他の高輝度部位(P2)が在ると確認した場合には、撮影画像内での基準高輝度部位(P1)とその他の高輝度部位(P2)とのタイヤ周方向の距離(L1)、及びその他の高輝度部位(P2)の輝度(S2)から、L1とS2の両者が予め定めた値の範囲外となった場合に、タイヤ12のビード部12Aの故障を検出し、駆動装置11を停止させた。これは、タイヤの表面には、タイヤ円周方向にも微細な凹凸が存在しており、高輝度部位が現れたとしても、あまりに基準高輝度部位に近い場合には、そもそものタイヤの凹凸が影響している場合の可能性が高い。そのため、S2に加えてL1についても所定の値を超えた場合に故障だと判定することで、故障ではない箇所を故障だと判定するような場合の割合を低減し、検査の工程速度を速めることを可能とするためである。
【0060】
(作用・効果)
このように、本実施形態では、試験するタイヤ12のサイズを変更した場合にも、タイヤ12のサイドウォール部12Sを撮影できる位置にビデオカメラ20と光ファイバー18の先端18Aとを配置すればよいので、タイヤ12のサイズに対応して容易に設定できる。この結果、試験準備時間を短縮できる。
【0061】
また、本実施形態では、タイヤ12のサイドウォール部12Sの全域を撮影するために、ビデオカメラ20の撮影間隔を、タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合にT±(T/N)としたため、撮影間隔が長い。この結果、高速度対応の高速ビデオカメラでない一般的なビデオカメラを用いて高速度対応の撮影装置と同様なタイヤ12の1回転分の撮影画像を得ることができる。この結果、タイヤサイドウォール部故障検出装置10のコストを低減できる。
【0062】
また、本実施形態では、ランプ16がビデオカメラ20の撮影間隔に同期して点灯するため、ランプ16の消費電力や温度上昇を抑制できる。
【0063】
また、本実施形態では、ランプ16とタイヤ12との間に、ランプ16の投射光をタイヤ12のサイドウォール部12Sに導く光ファイバー18を設けた。このため、タイヤ12から離れ位置にランプ16を配置できる。この結果、タイヤ12が破裂した場合にランプ16が損傷するのを防止できる。
【0064】
また、本実施形態では、図10に示す画像のように、タイヤ12のサイドウォール部12Sに亀裂Y1が発生した場合に、亀裂K1が発生した部位の輝度が正常な部位の輝度と比較して下がる。このため、この輝度の変化からサイドウォール部12Sの亀裂の発生も検出できる。
【0065】
[その他の実施形態]
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本発明はタイヤ12の側面におけるビード部12A以外の他の部位の故障検出にも適用できる。
【符号の説明】
【0066】
10 タイヤサイドウォール部故障検出装置
11 駆動装置
12 タイヤ
12A タイヤのビード部
12S タイヤのサイドウォール部(タイヤの側面)
16 ランプ(光源)
18 光ファイバー(光ガイド手段)
20 ビデオカメラ(撮影装置)
24 パソコン(画像処理手段)
26 カメラケーブル
28 カメラアダプター
30 ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの側面を撮影し、光源からの投射光により前記タイヤの側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、該基準位置に対応する径方向位置で、且つ前記基準位置以外で輝度が前記所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認し、前記その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、前記撮影画像内での前記基準高輝度部位と前記その他の高輝度部位との前記タイヤ周方向の距離及び前記その他の高輝度部位の輝度から、前記側面の故障を検出するタイヤ側面故障検出方法。
【請求項2】
前記タイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、前記タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)とした請求項1に記載のタイヤ側面故障検出方法。
【請求項3】
前記光源を前記撮影間隔に同期して点灯させる請求項2に記載のタイヤ側面故障検出方法。
【請求項4】
前記光源からの投射光を前記タイヤの側面の近傍に導く請求項1〜3の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出方法。
【請求項5】
前記側面の故障検出時に、前記タイヤを停止する請求項1〜4の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出方法。
【請求項6】
タイヤを転動させる駆動装置と、
前記タイヤの側面を撮影する少なくとも1台の撮影装置と、
前記タイヤの側面に投射光を投射する光源と、
前記撮影装置で撮影された前記側面の画像データから前記タイヤの側面の周方向に沿った傾き無しの基準位置での正反射による輝度が所定値より高い基準高輝度部位と、該基準位置に対応する径方向位置で、且つ前記基準位置以外で輝度が前記所定値より高いその他の高輝度部位が在るか否かを確認し、前記その他の高輝度部位が在ると確認した場合には、前記撮影画像内での前記基準高輝度部位と前記その他の高輝度部位との前記タイヤ周方向の距離及び前記その他の高輝度部位の輝度から、前記側面の故障を検出する画像処理手段と、
を備えたタイヤ側面故障検出装置。
【請求項7】
前記撮影装置は、前記タイヤの側面の全周をN回に分割して撮影し、前記タイヤの回転周期をT、nを正整数とした場合に、その撮影間隔をnT±(T/N)とした請求項6に記載のタイヤ側面故障検出装置。
【請求項8】
前記光源は前記撮影間隔に同期して点灯する請求項7に記載のタイヤ側面故障検出装置。
【請求項9】
前記光源の投射光を前記タイヤの近傍に導く光ガイド手段を有する請求項6〜8の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出装置。
【請求項10】
前記駆動装置は、前記画像処理手段による前記側面の故障検出時に停止する請求項6〜9の何れか1項に記載のタイヤ側面故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−220964(P2011−220964A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93125(P2010−93125)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】