説明

タイヤ内面用インナーライナー

【課題】 空気バリア性および耐久性に優れる、軽量化されたタイヤ内面用インナーライナーを提供すること。
【解決手段】 エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物でなるタイヤ内面用インナーライナー。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、空気バリア性および耐久性に優れる、軽量化されたタイヤ内面用インナーライナーに関する。
【0002】
【従来の技術】昨今の省エネルギー化の流れの中、空気入りタイヤを使用する自動車の燃費節減は大きな社会的テーマである。この燃費節減の方策として、タイヤそのものの重量を軽量化することは有効な手段である。従前よりタイヤの空気圧を一定に保持する為のインナーライナー層には、ブチルゴムの様な比較的空気透過性の低いゴムが用いられてきた。しかしブチルゴムの空気透過性とタイヤ内面との接着力付与を考慮すると、インナーライナー層の厚みは1mmを超える厚さとなり、タイヤ重量を増大させる大きな原因となっていた。
【0003】これを解決する方法として、タイヤのインナーライナーをより高バリアの熱可塑性樹脂からなるフィルムに置き換えるという解決法がある。例えば、ブチルゴムの約2倍の空気バリアを有する高密度ポリエチレンをインナーライナー層として使用することで、インナーライナー層の重量は約2分の1に,またブチルゴムの約10倍の空気バリアを有するフィルムをインナーライナー層として使用することができれば、インナーライナー層の重量は約10分の1に低減できる。
【0004】特開平6−40207号公報には、タイヤのインナーライナーとしてポリ塩化ビニリデン系フィルム又はエチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムからなる非通気層を、ポリオレフィン系フィルム、脂肪族フィルム又はポリウレタン系フィルムからなる接着層を介してタイヤ内面に設けた空気入りタイヤについての記載がある。
【0005】しかし、上記公報記載のタイヤ用インナーライナーにはエチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)の詳細に関する記載がなく、インナーライナー用フィルムの作製法についても、ドライラミネート法に関する記述しかなかった。また実施例に記載されている多層構造体に用いられているエチレン−ビニルアルコール共重合体は、平均エチレン含有量が40モル%未満 、ケン化度が99.3モル%以上のものであり、このままでは柔軟性が低いため、連続的な応力に対する耐久性が不足しているという欠点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、空気バリア性および耐久性に優れる、軽量化されたタイヤ内面用インナーライナーを得ようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、タイヤ内面用インナーライナーについて鋭意検討を行った結果、エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物、あるいはエチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)、あるいはエチレン含有量45〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a2)からなる組成物を使用した場合に初めて空気バリア性、柔軟性、耐久性に優れたタイヤ用インナーライナーが得られることを見出し、本発明を完成したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の第一のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物を成形してなる。
【0009】本発明の第二のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)からなる樹脂組成物を成形してなる。
【0010】本発明の第三のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含有量45〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a2)を成形してなる。
【0011】好適な実施態様では、前記疎水性可塑剤(B)が脂肪族エステルからなる。より好適な実施態様では、疎水性可塑剤(B)がグリセリンエステルまたはジグリセリンエステルからなる。
【0012】好適な実施態様では、本発明のタイヤ内面用インナーライナーはエチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層を少なくとも含む積層体である。より好適な実施態様では、前記積層体が、共押出成形法によって成形されてなる。また、好ましい実施態様では、前記熱可塑性樹脂がポリオレフィン系樹脂またはポリアミド系樹脂である。
【0013】また、本発明は、前記タイヤ内面用インナーライナーをタイヤ内面に設けた空気入りタイヤに関する。
【0014】本発明に用いられるエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、エチレンとビニルエステルからなる共重合体をアルカリ触媒等を用いてケン化して得られる。ビニルエステルとしては酢酸ビニルが代表的なものとしてあげられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニルなど)も使用できる。
【0015】また、本発明に用いられるEVOHの好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10min.であり、より好適には0.5〜50g/10min.である。
【0016】本発明に用いられるEVOH(A)のエチレン含量は20〜70モル%である。タイヤ内面用インナーライナーの柔軟性および耐久性の観点からは、EVOHのエチレン含量の下限は好適には35モル%以上であり、より好適には40モル%以上であり、さらに好適には42モル%以上であり、特に好適には45モル%以上である。また、空気バリア性の観点からは、エチレン含量の上限は65モル%以下であり、より好適には60モル%以下である。エチレン含量が20モル%未満では、柔軟性が低下し溶融成形性も悪化する。また70モル%を越えると十分な空気バリア性が得られない。なおここで、EVOHがエチレン含量の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をエチレン含量とする。
【0017】また、本発明に用いられるEVOH(A)のビニルエステル成分のケン化度は85%以上である。タイヤ内面用インナーライナーの空気バリア性の観点からは、EVOHのケン化度は好適には90%以上であり、より好適には93%以上であり、特に好適には95%以上である。一方、タイヤ内面用インナーライナーの耐久性の観点からは、ケン化度の上限は99.2%以下であることが好ましく、より好ましくは99%以下であり、さらに好ましくは98%以下である。なおここで、EVOHがケン化度の異なる2種類以上のEVOHの配合物からなる場合には、配合重量比から算出される平均値をケン化度とする。ケン化度が80モル%未満では、高湿度時のガスバリア性が極端に低下するだけでなく、EVOHの熱安定性が悪化し、成形物にゲル・ブツが発生しやすくなる。
【0018】本発明に用いられる疎水性可塑剤(B)としては、たとえば芳香族エステル、脂肪族エステル、リン酸エステル、およびそれらのエポキシ化合物などが挙げられる。芳香族エステルとしては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ブチルラウリルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ブチルココナッツアルキルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、オクチルデカノイルフタレート、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチレングリコレート、メチルフタリルエチレングリコレート、ブチルフタリルブチレングリコレート、ジノニルフタレート、ジヘプチルフタレート、オクチルデシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ジカプリルフタレート、ビス(3,5,5−トリメチルヘキシル)フタレート、イソオクチルイソデシルフタレート、ビス(ジエチレングリコールモノメチルエーテル)フタレート、ヘンゾフェノールなどが挙げられる。
【0019】脂肪族エステルとしては、多価アルコール(2価、3価あるいはそれ以上の多価アルコール)と高級脂肪酸(炭素数8以上、好適には8〜30の高級脂肪酸)とのモノエステル、ジエステル、あるいはそれ以上の多価エステルが好適なものとして挙げられる。たとえばステアリン酸エステルとしてはグリセリンモノステアレート、グリセリンモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジステアレート、ジグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノステアレート;ラウリン酸エステルとしてはグリセリンモノラウレート、ジグリセリンモノラウレート、テトラグリセリンモノラウレートなどが例示される。それ以外の脂肪族エステルとしてはポリプロピレンアジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(2−メチルヘキシル)アジペート、ジカプリルアジペート、ジイソオクチルアジペート、オクチルデシルアジペート、イソオクチルイソデシルアジペート、ジブチルフマレート、ジオクチルフマレート、トリエチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリブチルシトレートなどがあげられる。
【0020】リン酸エステルとしては、トリクレジルフォスフェート、フェニルジクレジルフォスフェート、キシレニルジクレジルフォスフェート、クレジルジキシレニルフォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリクロルエチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリクロルエチルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、アリールアルキルフォスフェートなどがあげられる。
【0021】また、エポキシ系化合物としては、ブチルエポキシステアレート、オクチルエポキシステアレート、エポキシブチルオレエート、エポキシ化オレイン酸ブチル、エポキシ化ダイズ油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化アルキルオイル、エポキシ化アルキルオイルアルコールエステルなどが挙げられる。
【0022】前記した疎水性可塑剤(B)は単独で使用しても良く、上記に例示した中の2種以上の化合物をブレンドして使用しても良い。また、疎水性可塑剤(B)としては、前記した化合物の中でも、特に芳香族エステル、脂肪族エステル、エポキシ系化合物が好ましい。中でも、脂肪族エステルが可塑性の観点から好ましく、柔軟性および耐久性に優れたタイヤ内面用インナーライナーを得ることができる。特に、疎水性可塑剤(B)として、グリセリン系エステルあるいはジグリセリン系エステルを用いることが好適である。
【0023】本発明の第一のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物でなる。より好ましくは、前記樹脂組成物は、(A)70〜99重量%および(B)1〜30重量%からなり、さらに好ましくは、(A)80〜98重量%および(B)2〜20重量%からなる。
【0024】一方、タイヤ内面用インナーライナーがエチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のEVOH(a1)からなる場合(本発明の第二のタイヤ内面用インナーライナー)、およびタイヤ内面用インナーライナーがエチレン含有量45〜70モル%、ケン化度85%以上のEVOH(a2)からなる場合(本発明の第三のタイヤ内面用インナーライナー)は、疎水性可塑剤(B)を配合しなくても、空気バリア性、柔軟性および耐久性に優れたタイヤ内面用インナーライナーを得ることができる。しかしながら、本発明の効果をさらに顕著に発現させるためには、本発明の第二のタイヤ内面用インナーライナーおよび第三のタイヤ内面用インナーライナーのいずれにおいても、タイヤ内面用インナーライナーが、EVOHおよび疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物でなることが好ましい。特に、耐久性付与の観点から、疎水性可塑剤(B)を添加することが好ましい。
【0025】本発明の第二のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含量が20〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のEVOH(a1)からなる。このときEVOHのエチレン含量は好適には35〜65モル%であり、より好適には40〜60モル%である。また、前記EVOH(a1)のビニルエステル成分のケン化度は好適には90〜99.1%、より好適には95〜99%である。
【0026】好適な実施態様では、前記EVOH(a1)は疎水性可塑剤(B)を含有してなる。EVOH(a1)および疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物において、疎水性可塑剤(B)の含有量は、好適には2〜30重量%であり、より好適には3〜20重量%である。
【0027】本発明の第三のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含量が45〜70モル%、ケン化度85%以上のEVOH(a2)からなる。このときEVOH(a2)のエチレン含量は好適には45〜60モル%、より好適には46〜55モル%である。
【0028】好適な実施態様では、前記EVOH(a2)は疎水性可塑剤(B)を含有してなる。EVOH(a2)および疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物において、疎水性可塑剤(B)の含有量は、好適には2〜30重量%であり、より好適には3〜20重量%である。
【0029】特に好ましい実施態様では、本発明のタイヤ内面用インナーライナーは、エチレン含量が45〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のEVOHからなり、さらに好ましい実施態様では、エチレン含量が45〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のEVOH60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物でなる。
【0030】疎水性可塑剤(B)とEVOHの混練方法に関しては、特に限定されるものではなく、樹脂と可塑剤をドライブレンドしてそのまま溶融成形に供することもできるし、より好適にはバンバリーミキサー、単軸又は二軸スクリュー押出し機などで混練し、ペレット化してから溶融成形に供することもできる。分散状態を均一なものとし、ゲル、ブツの発生や混入を防止するためには、混練ペレット化操作時に混練度の高い押出機を使用し、ホッパー口を窒素シールし、低温で押出すことが望ましい。
【0031】本発明のEVOHからなる樹脂(組成物)には、必要に応じて各種の添加剤を配合することもできる。このような添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、あるいは他の高分子化合物を挙げることができ、これらを本発明の作用効果が阻害されない範囲でブレンドすることができる。
【0032】また、タイヤ用インナーライナーとして、EVOHからなる層と熱可塑性樹脂からなる層を含む少なくとも2層の積層体を用いることは、耐衝撃性の観点から、より好適である。
【0033】本発明に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などが挙げられるが、耐衝撃性、柔軟性、耐久性の観点から、ポリアミド系樹脂やポリオレフィン系樹脂が好適である。
【0034】積層体の製造方法は、公知の方法が採用可能であり、ドライラミネーション、押出コーティング、共押出成形などの方法を用いることができる。なかでも、各々の樹脂を押出機で溶融させ、丸ダイまたはTダイより多層で吐出・冷却する共押出成形による方法が、層間接着力が向上するほか、工程を簡略化でき、製造コストを抑えられる面から好ましい。また該複合フィルムないしシートを、縦および/または横方向に面積倍率で1.5倍以上に共延伸または共圧延する方法も、公知の方法が採用可能であり、ダブルバブル法、テンター法、ロール法などで一軸または二軸延伸する方法や、ロールで圧延する方法などが例示できる。
【0035】共押出成形においては、EVOHと熱可塑性樹脂間の接着性を発現あるいは向上させる為に接着性樹脂層を設けることは好適である。接着性樹脂は各層間を接着できるものであれば特に限定されるものではないが、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸など)をオレフィン系重合体または共重合体に共重合またはグラフト変性したもの(カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂)が好適に用いられる。
【0036】これらのうちでも、接着性樹脂がカルボン酸変性ポリオレフィン樹脂であることが、ポリオレフィンなどの表面層とEVOH層との接着性の観点からより好ましい。かかるカルボン酸変性ポリエチレン系樹脂の例としては、ポリエチレン{低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)}、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル(メチルエステル、またはエチルエステル)共重合体等をカルボン酸変性したものが挙げられる。またこれらの接着性樹脂層そのものを熱可塑性樹脂層として使用することも好適である。
【0037】本発明におけるタイヤの製造方法としては特に限定されないが、未加硫タイヤからなるグリーンタイヤの内面にインナーライナー層を貼り付け、ついで金型内にてこのグリーンタイヤの内部に温度140〜180℃、圧力10〜20kg/cm2の窒素ガスを導入して加硫を行うことが望ましい。このとき、積層体におけるタイヤとインナーライナーの接触面がEVOHの場合には、EVOHとタイヤ内面を接着させる必要がある。接着法としては接着剤を用いることが好ましい。接着剤は各層間を接着できるものであれば特に限定されるものではないが、ポリウレタン系、ポリエステル系一液型あるいは二液型硬化性接着剤が好適に用いられる。
【0038】かかる手法にて作製したタイヤは、空気バリア性、柔軟性、耐久性に優れており、またブチルゴムをインナーライナーとして使用したタイヤに比して、インナーライナー層の重量を大幅に軽減することができる。
【0039】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに説明するが、これにより何ら限定されるものではない。本発明における各種試験方法は以下の方法にしたがって行った。
【0040】(1)タイヤ作製(タイヤサイズ:185/70 R14)
グリーンタイヤの内面にインナーライナーを貼り付け、温度160℃、圧力15kg/cm2の窒素ガスを導入して加硫することによりタイヤを作製した。
【0041】(2)空気バリア性および重量それぞれの実施例および比較例で作製した、3種5層の積層体を用いて有効巾300mm×200mm、シール巾10mmのパウチを作製し、その内部にアルゴンガスを封入して密封した。そのパウチを、20℃・0%RHに調節した室内に3日間放置した後、封入されたアルゴンガス中の酸素濃度および窒素濃度を測定し、各々の透過係数を算出して、表面積および空気中の分圧(酸素0.2、窒素0.8)から、空気透過係数を算出した。対照のブチルゴムについても同様に透過係数を算出した。測定終了後、吸湿の影響を取り除く為、該パウチを70℃で24時間熱風乾燥し、重量測定を実施した。
【0042】(3)耐久性35℃、65%RHに調整した室内にて、空気圧140kPaに調整した空気入りタイヤに6kNの荷重をかけ、直径1707mmドラム上を、速度80km/hで走行10,000km後にタイヤ内面を目視検査し、亀裂、クラック、剥がれ、デラミが生じたものを不合格、変化がなかったものを合格とした。
【0043】実施例1エチレン含有量50モル%、ケン化度97モル%、190℃でのメルトインデックス7(g/10min)のEVOH90部およびジグリセリンモノステアレート10部をドライブレンドした後、直径40mm、L/D=24、圧縮比3.8のマドック型混練部を有するスクリューで溶融押出し、EVOHおよび疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物のペレットを得た。
【0044】得られたペレットを樹脂組成物層とし、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE){三井化学製ウルトゼックス2022L}を内外層、無水マレイン酸変性ポリエチレン{三井化学製アドマーNF500}を接着(AD)層とする構成で、T型ダイを備えた共押出機にて3種5層(LLDPE/AD/樹脂組成物層/AD/LLDPE=30μ/10μ/10μ/10μ/30μ)で全体厚みが90μmの積層体を得た。各層の押出温度は、LLDPE:210℃、AD:210℃、EVOH:200℃、ダイ温度:210℃であった。
【0045】得られた積層体をグリーンタイヤの内面に貼り付け、温度160℃、圧力15kg/cm2の窒素ガスを導入して加硫することによりタイヤを作製した。なお、積層体とグリーンタイヤの層間には、特に接着剤は使用しなかった。かかる積層体の、パウチ法による空気バリア性の評価結果は、空気透過係数9cm3/m2・Day・atm であった。また、パウチ重量は11.5gであった。また、かかる積層体を使用して作製したタイヤの疲労試験を上記の方法に従って実施したところ、インナーライナー表面には目視による変化は認められなかった。
【0046】実施例2〜4表1に記載のEVOHおよび表2に記載の疎水性可塑剤(B)を用いて、実施例1と同様にして3種5層の積層体を作製し、空気バリア性およびパウチ重量を評価した。樹脂組成物の組成および積層体の層構成を表3に示す。また、該積層体をインナーライナーとしたタイヤを実施例1に準じた方法で作製し、耐久性を評価した。評価結果を表4に示す。評価結果を表2に示す。
実施例5エチレン含有量50モル%、ケン化度97モル%、190℃でのメルトインデックス7(g/10min)のEVOH90部およびジグリセリンモノステアレート10部をドライブレンドした後、直径40mm、L/D=24、圧縮比3.8のマドック型混練部を有するスクリューで溶融押出し、EVOHおよび疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物のペレットを得た。
【0047】得られたペレットを樹脂組成物層とし、ポリアミド(PA){宇部興産製UBEナイロン1024B}を内外層とする構成で、T型ダイを備えた共押出機にて2種3層(PA/樹脂組成物層/PA=30μ/10μ/30μ)で全体厚みが70μmの積層体を得た。各層の押出温度は、PA:250℃、EVOH:200℃、ダイ温度:250℃であった。
【0048】得られた2種3層の積層体を用いて、実施例1と同様にして空気バリア性、パウチ重量および耐久性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0049】実施例6エチレン含有量50モル%、ケン化度97モル%、190℃でのメルトインデックス7(g/10min)のEVOH90部およびジグリセリンモノステアレート10部をドライブレンドした後、直径40mm、L/D=24、圧縮比3.8のマドック型混練部を有するスクリューで溶融押出し、EVOHおよび疎水性可塑剤(B)からなる樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物ペレットを一軸押出機を用いて200℃で押出し、厚さ15μmの無延伸フィルムを得た。
【0050】前記樹脂組成物のフィルムの両面に、厚さ30μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(東セロ(株)製 T.U.X TCS−30)を貼り合わせ複合フィルムとした。接着剤は、東洋モートン製、AD−503A/CAT−10を用いて塗布量を固形分4g/m2とし、温度70℃でラミネートし、40℃で5日間エージングした。
【0051】上記の方法で作製した積層体を用い、実施例1と同様にして、空気バリア性およびパウチ重量を評価した。また、該積層体をインナーライナーとしたタイヤを実施例1に準じた方法で作製し、耐久性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0052】比較例1グリーンタイヤの内面に、500μmの厚さのタイゴムを介して500μmのブチルゴムを貼り付け、インナーライナー層とし、温度160℃、圧力15kg/cm2の窒素ガスを導入して加硫することによりタイヤを作製した。なお、インナーライナーとグリーンタイヤの層間には、特に接着剤は使用しなかった。上記で作製した、タイゴム500μm/ブチルゴム500μmからなる積層体を用いて、上記の方法に従いパウチを作製し、空気バリア性を評価した。パウチ法による空気バリアは110cm3/m2・Day・atm、パウチ重量は120gであった。また、かかる積層体を使用して作製したタイヤを用いて、上記の方法に従って耐久試験を実施したところ、インナーライナー表面には目視による変化は認められなかった。
【0053】比較例2〜4表1に記載のEVOHおよび表2に記載の疎水性可塑剤(B)を用いて、実施例1と同様にして3種5層の積層体を作製し、空気バリア性およびパウチ重量を評価した。樹脂組成物の組成および積層体の層構成を表3に示す。また、該積層体をインナーライナーとしたタイヤを実施例1に準じた方法で作製し、耐久性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0054】
【表1】


【0055】
【表2】


【0056】
【表3】


【0057】
【表4】


【0058】
【発明の効果】本発明のタイヤ用インナーライナーは、空気バリア性、耐久性に優れており、軽量化タイヤあるいは高空気バリアタイヤとして好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(A)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物でなるタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項2】 疎水性可塑剤(B)が脂肪族エステルである、請求項1記載のタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項3】 エチレン含有量20〜70モル%、ケン化度85〜99.2%のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)からなるタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項4】 エチレン−ビニルアルコール共重合体(a1)60〜99重量%および疎水性可塑剤(B)1〜40重量%からなる樹脂組成物でなる請求項3に記載のタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項5】 エチレン含有量が35〜70モル%である、請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項6】 エチレン含有量45〜70モル%、ケン化度85%以上のエチレン−ビニルアルコール共重合体(a2)からなるタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項7】 エチレン−ビニルアルコール共重合体からなる層と熱可塑性樹脂からなる層を含む少なくとも2層の積層体からなる、請求項1〜6のいずれかに記載のタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項8】 エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂と熱可塑性樹脂の少なくとも2層を共押出法により成形した積層体からなる、請求項7に記載のタイヤ内面用インナーライナー。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載のタイヤ内面用インナーライナーをタイヤ内面に設けた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2002−52904(P2002−52904A)
【公開日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−244101(P2000−244101)
【出願日】平成12年8月11日(2000.8.11)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】