説明

タイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法

【課題】ツインタイプのタイヤ加硫機において、経済効率を向上させることができるようにする。
【解決手段】窒素ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構4LのブラダB内には、第1加熱装置11で加熱された窒素ガスが供給される。中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この窒素ガスは、第2加熱装置31で再加熱されて昇温される。よって、窒素ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構4RのブラダB内には、第2加熱装置31で加熱された窒素ガスが供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上モールドおよび下モールドを型締してグリーンタイヤを加硫成形するタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの製造工程では、タイヤの各構成部材を組み立てたグリーンタイヤをタイヤ加硫機で加硫する。開閉自在な上下モールド間に装入されたグリーンタイヤには、タイヤ加硫機の中心機構によって、低圧の圧力媒体で膨張するブラダがその内周面に密接される。その後、グリーンタイヤは、上下モールドの型締めとブラダ内への高圧の加熱媒体の導入により、内部から加熱される。また、上下モールドはプラテンで常時加熱されており、グリーンタイヤをその内面と外面から加熱することにより加硫する。
【0003】
加硫工程で使用されるタイヤ加硫機には、種々のタイプのものがあり、特許文献1には、一つの開閉装置が2組の上下モールドを開閉するツインタイプのタイヤ加硫機が開示されている。なお、市場では一つの開閉装置が1組の上下モールドを開閉するシングルタイプのタイヤ加硫機も使用されているが、ツインタイプのタイヤ加硫機の方が、1組の上下モールドあたりのコストが安価であるため、使用比率が極めて高い。
【0004】
特許文献2に開示されているように、従来のタイヤ加硫方法でブラダ内に導入される加熱媒体は水蒸気(スチーム)である。この水蒸気をブラダ内に注入してグリーンタイヤを加熱した後、さらに高圧の窒素ガスをブラダ内へ注入してブラダ内の圧力を一定範囲に保持している。特許文献2の例では、水蒸気の圧力は14kg/cmG(1.37Mpa)で、窒素ガスの圧力は26kg/cmG(2.55Mpa)となっている。また、水蒸気は飽和蒸気で温度は197℃となっている。なお、特許文献2のタイヤ加硫方法は、加硫時間が約1時間のTBタイヤの加硫方式である。一般的な乗用車用のタイヤの場合には、加硫時間が10分程度で、ガス圧力が2Mpa程度であることが多い。
【0005】
しかしながら、特許文献2のような水蒸気を用いるタイヤ加硫機においては、以下のような問題点がある。
【0006】
<上下温度差>
従来技術の加熱方式では、基本的には水蒸気の凝縮熱によって内側よりグリーンタイヤを加熱している。蒸気をブラダ内に導入すると、その蒸気の凝縮によってグリーンタイヤの内面は急速に加熱される。その後、蒸気の圧力が上昇して飽和蒸気圧力に達する。このとき、タイヤの内部下側にはドレーンが溜まり、内部上側には蒸気が存在するようになる。タイヤ下部に溜まったドレーンは、そのまま留まって伝熱により加熱されていき、さらなる凝縮によって温度が徐々に上昇していくことになる。タイヤ内面上部はほぼ飽和蒸気の温度になる一方、タイヤの内部下側の温度はドレーンによって決まる。そのため、加熱途上では上下で最大10℃以上の温度差が生じる。
【0007】
一般に、ゴムの加硫においては、加硫時間が不足すると急激に物性が低下するのに対し、最適時間以上加硫した場合には、その物性が徐々に低下することが知られている。従って、タイヤの加硫の場合も、その加硫時間は、最も加硫時間が遅い点の加硫度で決められることになる。また、ゴムの物性面の最高温度にも制限があるので、この温度から内部媒体の温度が決められることになる。
【0008】
このため、上下間に温度差が生じると、加硫時間はタイヤ内部の最も温度上昇の遅い点で決められることになり、下部のベルトエッジがその点となる。タイヤは上下対称の構造であるので、ドレーンの影響をなくして上部のベルトエッジと同様に下部のベルトエッジを加熱できれば、12%の加硫時間短縮が可能とされている。また、加硫時間を短くすることにより、他の部位の過加硫の割合が少なくなり、品質も向上することになる。
【0009】
<エネルギー損失>
加硫工程で使用される蒸気として、特許文献2に開示されているように、ブラダの内部加熱用に1.4Mpa程度の飽和蒸気が使用されている。この蒸気は、タイヤ工場に設置されたメインボイラーで工業用水を加熱することによって得られる。タイヤ工場には数十台から数百台のタイヤ加硫機が設置されており、ボイラーから各タイヤ加硫機に長い主配管を通って蒸気が供給される。これらの配管は十分保温されてはいるが、多くの熱が放熱によって失われている。
【0010】
<生産性>
加硫終了後、ブラダ内の内圧媒体を排出した後に、上下モールドを開いてタイヤを取り出すことになる。現在、市場でもっともよく採用されている特許文献2の加硫方式では、排気直前にはブラダ内部にドレーンと水蒸気と窒素ガスとが2Mpa程度の圧力で混在しており、かなりの量のドレーンが残っている。排気バルブを開くと、ブラダ内部のガスと蒸気は急速に排気される。さらに、残留していた100℃を越すドレーンは、圧力低下とともに再蒸発して排出される。ドレーンが再蒸発する際に、ドレーンは気化して急激に膨張するため排気に時間がかかる。実際の作動では、ドレーンに接触する部分の温度が100℃以下になると再蒸発は止まるが、ブラダや中心機構は加硫温度まで加熱されているため、ドレーンがこれらの部分に新たに接触すると再蒸発が起こる。この再蒸発によって中心機構、ブラダなどドレーンが接触している部材が冷却される。この再蒸発した蒸気はガスと混合しているため再利用はできない。特に、タイヤを取り出すためにブラダを上方に伸張した場合には、ブラダが再度膨張する現象が見られる。速やかに排気するために、通常ブラダ内を真空引きしてドレーンを抜いている。このため、バキュームする装置とそのエネルギー、バキューム工程のための時間が必要になっており、生産性が悪い。
【0011】
そこで、特許文献3には、ブラダ内に供給される加熱加圧媒体の圧力と温度とがそれぞれ個別に制御されるタイヤ加硫機が開示されている。このタイヤ加硫機は、高圧の窒素ガスを供給するガス供給源と低圧の窒素ガスを供給するガス供給源とを有している。加硫に先立って低圧の窒素ガスをブラダ内に供給することで、ブラダをタイヤの内周面に密接させる。このとき、高圧の窒素ガスは閉ループの媒体循環経路を循環しながら加熱手段により予備加熱されており、媒体循環経路とブラダ内とを連通させる媒体供給経路および媒体回収経路は弁操作により閉じられている。
【0012】
媒体循環経路を循環する高圧の窒素ガスは、所定温度まで昇温される。この状態で、上下モールドが閉じられて上下モールド間に締付力を作用させると、弁操作により媒体循環経路と媒体供給経路および媒体回収経路とが連通されて、加硫が行われる。予備加熱された高圧の窒素ガスは媒体供給経路を通ってブラダ内に供給される。また、ブラダ内から排出された窒素ガスは媒体回収経路を通って媒体循環経路に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−239734号公報
【特許文献2】特開平4−14413号公報
【特許文献3】特開2008−162269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献3のタイヤ加硫機では、1組の上下モールドに対して、加熱加圧媒体を循環させるシステムが一式設けられている。ところが、特許文献1のように、1つの開閉装置で2組の上下モールドを駆動するツインタイプのタイヤ加硫機が広く使用されている。ツインタイプのタイヤ加硫機に特許文献3のシステムを適用すると、2組の上下モールドの各々に対して、加熱加圧媒体を循環させるシステムを設けることになる。通常、ツインタイプのタイヤ加硫機では、2組の上下モールドの各々において同じサイズのタイヤが加硫される。そのため、同じシステムを2つ設けることになり、経済的でない。
【0015】
本発明の目的は、ツインタイプのタイヤ加硫機において、経済効率を向上させることが可能なタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明におけるタイヤ加硫機は、下モールドおよび当該下モールドに対して開閉自在な上モールドと、グリーンタイヤ内に装入されるブラダを備えた中心機構とを2組有し、前記グリーンタイヤにブラダを装着するシェーピングの後に、前記下モールドと前記上モールドとで前記グリーンタイヤを締め付けて加硫成形を行うタイヤ加硫機であって、加硫ガスを循環させる媒体循環経路と、前記中心機構毎に設けられて前記媒体循環経路に接続され、前記媒体循環経路を循環する前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する媒体供給経路と、前記中心機構毎に設けられて前記媒体供給経路よりも前記加硫ガスの循環方向の下流側において前記媒体循環経路に接続され、前記ブラダ内から排出された前記加硫ガスを前記媒体循環経路に戻す媒体回収経路と、前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所よりも上流側に配置されて前記加硫ガスを加熱する第1加熱装置と、前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体回収経路が前記媒体循環経路に接続する箇所と、前記加硫ガスの循環方向の下流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所との間に配置されて前記加硫ガスを加熱する第2加熱装置と、を有することを特徴とする。
【0017】
上記の構成によれば、加硫ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構のブラダ内には、第1加熱装置で加熱された加硫ガスが供給される。これにより、加硫ガスの循環方向の上流側に位置する上下モールドにおいて、グリーンタイヤの加硫成形が行われる。加硫ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構のブラダ内から排出された加硫ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この加硫ガスは、第2加熱装置で再加熱されて昇温される。よって、加硫ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構のブラダ内には、第2加熱装置で加熱された加硫ガスが供給される。これにより、加硫ガスの循環方向の下流側に位置する上下モールドにおいて、グリーンタイヤの加硫成形が行われる。加硫ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構のブラダ内から排出された加硫ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この加硫ガスは、第1加熱装置で再加熱されて昇温される。このようにして、2組の上下モールドの各々において、加硫成形が行われる。このように、中心機構毎に加硫ガスを循環させるシステムを設けなくても、2つの中心機構に共通する1つのシステムで、2つのグリーンタイヤの各々を加硫成形することができる。よって、経済効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明におけるタイヤ加硫機においては、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを外部に排気する媒体排気経路と、前記媒体排気経路に設けられ、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを貯留するタンクと、前記中心機構毎に設けられ、前記タンク内の前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する媒体供給路と、を更に有し、前記シェーピング時および前記加硫成形の初期の少なくとも一方において、前記タンク内の前記加硫ガスを前記媒体供給路を介して前記ブラダ内に供給してよい。
【0019】
上記の構成によれば、通常、加硫終了後に加硫ガスは媒体排気経路を通って排気されるので、加硫終了時にタイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーはタイヤ加硫機の外へ放出されることになり、エネルギー効率が悪い。そこで、ブラダ内から排出された加硫ガスをタンク内に貯留しておく。そして、タンク内に貯留しておいた加硫ガスをシェーピング時にブラダ内に供給する。通常、シェーピング時には低圧ガス供給源から供給される低圧ガスでブラダを伸展させるのであるが、低圧ガスの代わりにタンク内に貯留しておいた加硫ガスでブラダを伸展させる。このように、タンク内に貯留しておいた加硫ガスでブラダを伸展させることで、タイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、低圧ガス供給源から供給する低圧ガスの供給量を減少させることができる。また、タンク内に貯留しておいた加硫ガスを加硫成形の初期にブラダ内に供給する。通常、媒体循環経路を循環させておいた高温・高圧の加硫ガスで加硫成形を行うのであるが、加硫成形の初期に加硫ガスの圧力が低下するので、加硫ガス供給源から高圧の加硫ガスを補充し、補充した加硫ガスを加熱する必要がある。その点、タンク内に貯留しておいた加硫ガスを加硫成形の初期に使用することで、タイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、加硫ガス供給源から補充する高圧の加硫ガスの供給量を減少させ、補充した加硫ガスを加熱する熱エネルギーを減少させることができる。また、タンク内に貯留しておいた高温の加硫ガスを加硫成形の初期に使用することで、早期にブラダ内を昇温することができて、加硫時間を短縮することができる。これにより、エネルギー効率を向上させることができる。
【0020】
また、本発明におけるタイヤ加硫方法は、下モールドおよび当該下モールドに対して開閉自在な上モールドと、グリーンタイヤ内に装入されるブラダを備えた中心機構とを2組有するタイヤ加硫機において、前記グリーンタイヤにブラダを装着するシェーピングの後に、前記下モールドと前記上モールドとで前記グリーンタイヤを締め付けて加硫成形を行うタイヤ加硫方法であって、媒体循環経路において加硫ガスを循環させる工程と、前記中心機構毎に設けられて前記媒体循環経路に接続された媒体供給経路により前記媒体循環経路を循環する前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する工程と、前記中心機構毎に設けられて前記媒体供給経路よりも前記加硫ガスの循環方向の下流側において前記媒体循環経路に接続された媒体回収経路により前記ブラダ内から排出された前記加硫ガスを前記媒体循環経路に戻す工程と、前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所よりも上流側に配置された第1加熱装置で前記加硫ガスを加熱する工程と、前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体回収経路が前記媒体循環経路に接続する箇所と、前記加硫ガスの循環方向の下流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所との間に配置された第2加熱装置で前記加硫ガスを加熱する工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、加硫ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構のブラダ内には、第1加熱装置で加熱された加硫ガスが供給される。これにより、加硫ガスの循環方向の上流側に位置する上下モールドにおいて、グリーンタイヤの加硫成形が行われる。加硫ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構のブラダ内から排出された加硫ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この加硫ガスは、第2加熱装置で再加熱されて昇温される。よって、加硫ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構のブラダ内には、第2加熱装置で加熱された加硫ガスが供給される。これにより、加硫ガスの循環方向の下流側に位置する上下モールドにおいて、グリーンタイヤの加硫成形が行われる。加硫ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構のブラダ内から排出された加硫ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この加硫ガスは、第1加熱装置で再加熱されて昇温される。このようにして、2組の上下モールドの各々において、加硫成形が行われる。このように、中心機構毎に加硫ガスを循環させるシステムを設けなくても、2つの中心機構に共通する1つのシステムで、2つのグリーンタイヤの各々を加硫成形することができる。よって、経済効率を向上させることができる。
【0022】
また、本発明におけるタイヤ加硫方法においては、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを媒体排気経路により外部に排気する工程と、前記媒体排気経路に設けられたタンクで、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを貯留する工程と、前記中心機構毎に設けられた媒体供給路により、前記タンク内の前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する工程と、を更に有し、前記シェーピング時および前記加硫成形の初期の少なくとも一方において、前記タンク内の前記加硫ガスを前記媒体供給路を介して前記ブラダ内に供給してよい。
【0023】
上記の構成によれば、通常、加硫終了後に加硫ガスは媒体排気経路を通って排気されるので、加硫終了時にタイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーはタイヤ加硫機の外へ放出されることになり、エネルギー効率が悪い。そこで、ブラダ内から排出された加硫ガスをタンク内に貯留しておく。そして、タンク内に貯留しておいた加硫ガスをシェーピング時にブラダ内に供給する。通常、シェーピング時には低圧ガス供給源から供給される低圧ガスでブラダを伸展させるのであるが、低圧ガスの代わりにタンク内に貯留しておいた加硫ガスでブラダを伸展させる。このように、タンク内に貯留しておいた加硫ガスでブラダを伸展させることで、タイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、低圧ガス供給源から供給する低圧ガスの供給量を減少させることができる。また、タンク内に貯留しておいた加硫ガスを加硫成形の初期にブラダ内に供給する。通常、媒体循環経路を循環させておいた高温・高圧の加硫ガスで加硫成形を行うのであるが、加硫成形の初期に加硫ガスの圧力が低下するので、加硫ガス供給源から高圧の加硫ガスを補充し、補充した加硫ガスを加熱する必要がある。その点、タンク内に貯留しておいた加硫ガスを加硫成形の初期に使用することで、タイヤ加硫機内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、加硫ガス供給源から補充する高圧の加硫ガスの供給量を減少させ、補充した加硫ガスを加熱する熱エネルギーを減少させることができる。また、タンク内に貯留しておいた高温の加硫ガスを加硫成形の初期に使用することで、早期にブラダ内を昇温することができて、加硫時間を短縮することができる。これにより、エネルギー効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明のタイヤ加硫機およびタイヤ加硫方法によると、中心機構毎に加硫ガスを循環させるシステムを設けなくても、2つの中心機構に共通する1つのシステムで、2つのグリーンタイヤの各々を加硫成形することができる。よって、経済効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】タイヤ加硫機を示す断面図である。
【図2】タイヤ加硫機を示す断面図である。
【図3】タイヤ加硫機を示す模式図である。
【図4】タイヤ加硫機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
[第1実施形態]
(タイヤ加硫機の構成)
本実施形態によるタイヤ加硫機1は、図1に示すように、グリーンタイヤGを着脱可能に収容する上下モールド2,3を有している。グリーンタイヤGは、成形工程において、ビード、トレッド、サイドウォールなどの各構成部材を繋ぎ合わせ、貼り合わせることで成形、構成されている。このグリーンタイヤGが、加硫工程に運ばれ、タイヤ加硫機1で加硫成形される。
【0028】
下モールド2は、加熱源である下部熱板7の上に交換自在に設けられている。また、上モールド3は、加熱源である上部熱板8の下に交換自在に設けられている。上モールド3の周囲には、加熱源であるジャケット9が設けられている。上部構造体が上モールド3を上下動させることにより、上モールド3は下モールド2に対して上方から開閉自在にされている。図1に示すように、下モールド2と上モールド3とが開放された状態において、下モールド2上には、装入装置100によってグリーンタイヤGが搬入される。
【0029】
下モールド2の中心下方には、弾性を有する材料(例えば、ブチルゴム)からなる伸縮自在の袋状のブラダBを備えた中心機構4が配置されている。中心機構4には、ブラダB内にガスを導入する流体入口5と、ブラダB内からガスを排出させる流体出口6とが設けられている。中心機構4は、流体入口5からブラダB内に低圧の窒素ガスを導入することにより、ブラダBを伸展させて、下モールド2上に搬入されたグリーンタイヤGの内周面にブラダBを密接させる。この工程がシェーピング工程と呼ばれる。
【0030】
シェーピング工程が終わると、図2に示すように、グリーンタイヤGが加硫成形される。即ち、装入装置100が下モールド2上から待避される。そして、上モールド3が下降されることによって、上モールド3と下モールド2とが閉じられ、上下モールド2,3間に締付力が発生される。同時に、流体入口5からブラダB内に高温・高圧の窒素ガスが導入される。これにより、グリーンタイヤGが内側および外側から加熱されることで、グリーンタイヤGが加硫成形される。
【0031】
加硫成形工程が終わると、一部の加硫済タイヤは、ポストインフレータと呼ばれる装置で、冷却時の変形を防ぐために空気圧で膨張された状態で冷却され、さらに次の工程に搬送される。また、一部の加硫済タイヤは、そのまま自然冷却されて、次の工程に搬送される。
【0032】
なお、図1及び図2には、上下モールド2,3、および、ブラダBを備えた中心機構4が一組しか図示されていないが、本実施形態のタイヤ加硫機1では、上下モールド2,3、および、ブラダBを備えた中心機構4が2組並列に配置されている。
【0033】
ブラダBを内部から加熱する加硫システムの模式図を図3に示す。図3には、一つの開閉装置で開閉する2組の上下モールド2,3が示されている。各上下モールド2,3が形成するキャビティには、同種のグリーンタイヤGがそれぞれ収容されている。図3において、左側の中心機構4を中心機構4L、右側の中心機構4を中心機構4Rとする。
【0034】
タイヤ加硫機1は、窒素ガス(加硫ガス)を加硫成形前に予め所定の温度に昇温するにあたり時計回りに循環させる媒体循環経路51を有している。タイヤ加硫機1に供給するガスとしては、化学的に安定である高純度で常温の窒素ガスが一般的に用いられている。媒体循環経路51には、高圧ガス供給口12から高圧の窒素ガスが供給される。媒体循環経路51と高圧ガス供給口12との間には、加硫圧力を調整するための圧力制御弁26が設けられている。また、媒体循環経路51には、窒素ガスを加圧するポンプ10が設けられている。また、媒体循環経路51には、窒素ガスの逆流を防止するチェック弁20が設けられている。
【0035】
ポンプ10には、ポンプ10のベアリングを冷却するための工業用水が供給口27から供給される。供給口27からの工業用水の供給は、コントロール弁21により制御される。また、ポンプ10のベアリングには温度センサ24が設けられている。温度センサ24は、ポンプ10のベアリングの温度を監視している。コントロール弁21は、温度センサ24が検出した温度が所定温度より高くなると、供給口27から工業用水をポンプ10のベアリングに供給して、ポンプ10のベアリングを冷却する。
【0036】
また、タイヤ加硫機1は、中心機構4L,4R毎に設けられて媒体循環経路51に接続され、媒体循環経路51を循環する窒素ガスをブラダB内に供給する媒体供給経路52,62を有している。具体的には、中心機構4Lの流体入口5(図1参照)には、一端が媒体循環経路51に接続された媒体供給経路52の他端が接続されている。また、中心機構4Rの流体入口5(図1参照)には、一端が媒体循環経路51に接続された媒体供給経路62の他端が接続されている。媒体供給経路52には供給切替自動弁13が設けられている。また、媒体供給経路62には供給切替自動弁43が設けられている。
【0037】
また、タイヤ加硫機1は、中心機構4L,4R毎に設けられて媒体循環経路51に接続され、ブラダB内から排出された窒素ガスを媒体循環経路51に戻す媒体回収経路53,63を有している。具体的には、中心機構4Lの流体出口6(図1参照)には、一端が媒体循環経路51に接続された媒体回収経路53の他端が接続されている。また、中心機構4Rの流体出口6(図1参照)には、一端が媒体循環経路51に接続された媒体回収経路63の他端が接続されている。媒体回収経路53,63は、媒体供給経路52,62よりも窒素ガスの循環方向の下流側において、媒体循環経路51に接続されている。具体的には、媒体回収経路53は、媒体供給経路52よりも窒素ガスの循環方向の下流側において、媒体循環経路51に接続されている。同様に、媒体回収経路63は、媒体供給経路62よりも窒素ガスの循環方向の下流側において、媒体循環経路51に接続されている。媒体回収経路53には排気切替自動弁17が設けられている。また、媒体回収経路63には排気切替自動弁47が設けられている。
【0038】
また、タイヤ加硫機1は、媒体循環経路51に設けられ、窒素ガスを加熱する第1加熱装置11を有している。第1加熱装置11は、窒素ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構4Lに設けられた媒体供給経路52が媒体循環経路51に接続する箇所よりも上流側に配置されている。高圧ガス供給口12から供給された高圧の窒素ガスは、媒体循環経路51を通り、ポンプ10でさらに加圧された後に、第1加熱装置11で加熱されることとなる。
【0039】
第1加熱装置11の出口には、窒素ガスの温度を測定する温度センサ25が設けられている。第1加熱装置11は、温度センサ25が測定した温度に基づいて、第1加熱装置11の出口における窒素ガスの温度が一定になるように第1加熱装置11の出力をコントロールしている。
【0040】
媒体循環経路51には、バイパス自動弁18,48が設けられている。バイパス自動弁18は、媒体供給経路52が媒体循環経路51に接続する箇所と、媒体回収経路53が媒体循環経路51に接続する箇所との間に配置されている。また、バイパス自動弁48は、媒体供給経路62が媒体循環経路51に接続する箇所と、媒体回収経路63が媒体循環経路51に接続する箇所との間に配置されている。
【0041】
バイパス自動弁18,48が開かれ、供給切替自動弁13,43及び排気切替自動弁17,47が閉じられた場合には、窒素ガスは媒体循環経路51を循環することになる。一方、バイパス自動弁18,48が閉じられ、供給切替自動弁13,43及び排気切替自動弁17,47が開かれた場合には、媒体循環経路51を循環していた窒素ガスは、媒体供給経路52を通って左側の中心機構4LのブラダB内に供給されることとなる。そして、左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路53を通って媒体循環経路51に戻されることとなる。さらに、媒体循環経路51に戻された窒素ガスは、媒体供給経路62を通って右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。そして、右側の中心機構4RのブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路63を通って媒体循環経路51に戻され、チェック弁20を通ってポンプ10に戻されることとなる。
【0042】
また、タイヤ加硫機1は、媒体循環経路51に設けられ、窒素ガスを加熱する第2加熱装置31を有している。第2加熱装置31は、窒素ガスの循環方向の上流側に位置する中心機構4Lに設けられた媒体回収経路53が媒体循環経路51に接続する箇所と、窒素ガスの循環方向の下流側に位置する中心機構4Rに設けられた媒体供給経路62が媒体循環経路51に接続する箇所との間に配置されている。
【0043】
バイパス自動弁18,48が開かれ、供給切替自動弁13,43及び排気切替自動弁17,47が閉じられた場合には、媒体循環経路51を循環する窒素ガスは第2加熱装置31で加熱されることになる。一方、バイパス自動弁18,48が閉じられ、供給切替自動弁13,43及び排気切替自動弁17,47が開かれた場合には、左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、第2加熱装置31で加熱された後に、媒体供給経路62を通って右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。
【0044】
第2加熱装置31の出口には、ガスの温度を測定する温度センサ28が設けられている。第2加熱装置31は、温度センサ28が測定した温度に基づいて、第2加熱装置31の出口におけるガスの温度が一定になるように第2加熱装置31の出力をコントロールしている。
【0045】
媒体供給経路52には、低圧ガス供給口14から供給された低圧の窒素ガスが通過する媒体供給路55が接続されている。媒体供給路55には、低圧の窒素ガスの供給方向に沿って、減圧弁15と自動切替弁16とがこの順で設けられている。減圧弁15は、低圧ガス供給口14から供給された低圧の窒素ガスの圧力を調整する。供給切替自動弁13が閉じられ、自動切替弁16が開かれた場合には、低圧ガス供給口14から供給された低圧の窒素ガスは、媒体供給路55を通って媒体供給経路52に送られ、左側の中心機構4LのブラダB内に供給されることとなる。
【0046】
同様に、媒体供給経路62には、低圧ガス供給口44から供給された低圧の窒素ガスが通過する媒体供給路65が接続されている。媒体供給路65には、低圧の窒素ガスの供給方向に沿って、減圧弁45と自動切替弁46とがこの順で設けられている。減圧弁45は、低圧ガス供給口44から供給された低圧の窒素ガスの圧力を調整する。そして、供給切替自動弁43が閉じられ、自動切替弁46が開かれた場合には、低圧ガス供給口44から供給された低圧の窒素ガスは、媒体供給路65を通って媒体供給経路62に送られ、右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。
【0047】
また、タイヤ加硫機1は、各ブラダB内から排出された窒素ガスを外部に排気する媒体排気経路56,66,57を有している。具体的には、媒体回収経路53からは、媒体排気経路56が分岐している。また、媒体回収経路63からは、媒体排気経路66が分岐している。媒体排気経路56と媒体排気経路66とは、媒体排気経路57に合流している。媒体排気経路57には、排気自動弁19が設けられており、排気自動弁19を通った窒素ガスは逆流防止用のチェック弁22を通って排気口23から外部に排出される。排気切替自動弁17が閉じられ、排気自動弁19が開かれた場合には、左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路53、媒体排気経路56、および、媒体排気経路57を通って、排気口23から外部に排出されることとなる。また、排気切替自動弁47が閉じられ、排気自動弁19が開かれた場合には、右側の中心機構4RのブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路63、媒体排気経路66、および、媒体排気経路57を通って、排気口23から外部に排出されることとなる。
【0048】
通常、タイヤ工場では、タイヤ加硫機1は工場内に多数設置されており、これらタイヤ加硫機1のユーティリティ用に主配管が設けられている。図3に示した高圧ガス供給口12、低圧ガス供給口14、および、低圧ガス供給口44は、工場内の主配管との接続口である。
【0049】
(タイヤ加硫機の動作)
次に、タイヤ加硫機1の動作(タイヤ加硫方法)について説明する。
【0050】
タイヤの加硫成形は、上下モールド2,3、ブラダBなどを十分に予熱した後に開始される。また、媒体循環経路51を循環する窒素ガスの温度も予め所定の温度まで上昇(予熱)させておく必要がある。そこで、まず、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を閉じ、バイパス自動弁18,48を開く。この状態でポンプ10を回転させるとともに、媒体循環経路51中に設けられた第1加熱装置11および第2加熱装置31を稼働させる。高圧ガス供給口12から供給された窒素ガスは、ポンプ10により媒体循環経路51を循環し、その間に第1加熱装置11および第2加熱装置31で所定の温度まで加熱される。このとき、ポンプ10のベアリングの温度が所定値以上に上昇しないように、コントロール弁21が冷却水(工業用水)の供給をコントロールする。
【0051】
また、図1に示すように、加硫に先立って、各中心機構4(4L,4R)において、グリーンタイヤGを装入装置100で把持して下モールド2上に搬送する。そして、図3に示すように、左側の中心機構4Lにおいては、媒体供給路55からブラダB内に低圧の窒素ガスを供給する。具体的には、自動切替弁16を開いて低圧ガス供給口14からの低圧の窒素ガスを減圧弁15及び自動切替弁16を介してブラダB内に供給する。同じように、右側の中心機構4Rにおいては、媒体供給路65からブラダB内に低圧の窒素ガスを供給する。具体的には、自動切替弁46を開いて低圧ガス供給口44からの低圧の窒素ガスを減圧弁45及び自動切替弁46を介してブラダB内に供給する。これにより、各中心機構4L,4RにおいてブラダBが伸展し、グリーンタイヤGの内周面にブラダBが密接される。このとき、グリーンタイヤGの内周面にブラダBを密接させるために、低圧の窒素ガスの圧力を厳密に制御する必要がある。そこで、媒体供給路55,65にそれぞれ設けられた減圧弁15,45により、低圧の窒素ガスの圧力を個別に制御する。
【0052】
グリーンタイヤGの内周面にブラダBを密接させるシェーピング工程の後に、装入装置100を下モールド2上から退避させる。その後、図2に示すように、上モールド3を降下させて下モールド2と上モールド3とを閉じ、上下モールド2,3に締付力を発生させる。そして、図3に示すように、自動切替弁16,46をそれぞれ閉じる。また、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を開き、バイパス自動弁18,48を閉じる。これにより、媒体循環経路51、媒体供給経路52、左側の中心機構4LのブラダB内、媒体回収経路53、媒体循環経路51、媒体供給経路62、右側の中心機構4RのブラダB内、媒体回収経路63、媒体循環経路51という流れの閉回路が形成される。
【0053】
上記の閉回路が形成されると、加硫成形が開始される。加硫成形の開始直後、今まで媒体循環経路51を循環していた窒素ガスは、媒体供給経路52を通って左側の中心機構4LのブラダB内に供給される。このとき、ブラダB内の容量が大きいので、加硫成形の開始直後において閉回路の圧力が降下する。閉回路の圧力が降下すると、高圧ガス供給口12から常温で高圧の窒素ガスが閉回路内に補充され、この窒素ガスはポンプ10で加圧され、第1加熱装置11で加熱されて、左側の中心機構4LのブラダB内に供給される。左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、第2加熱装置31で再加熱された後に、右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。閉回路の圧力が所定圧力に達するまでは、高圧ガス供給口12から高圧の窒素ガスが供給され続ける。高圧ガス供給口12と媒体循環経路51との間に設けられた圧力制御弁26は、閉回路の圧力が所定圧力になるように制御する。なお、タイヤの加硫は、温度依存性が大きいが、圧力依存性は大きくないので、圧力制御弁26を使用せず、圧力制御された主配管から直接に高圧の窒素ガスを供給してもよい。閉回路を逆流する方向の窒素ガスの流れは、チェック弁20により抑制される。
【0054】
高圧ガス供給口12から高圧の窒素ガスを閉回路に供給すると、閉回路の圧力は短時間で供給圧力に達する。ポンプ10は、窒素ガスを循環させるために、1m程度の流量で入口と出口との間に0.1Mpa〜0.2Mpa程度の差圧を発生させる能力を有しており、入口側の窒素ガスを加圧して循環させる加圧循環装置として働く。ここで、閉回路を循環する窒素ガスの圧力損失がポンプ10の差圧発生能力以下になるようにシステムを設計すれば、新たに外部から高圧の窒素ガスを供給しなくても、窒素ガスは所定圧力で閉回路を循環することになる。
【0055】
閉回路を循環する窒素ガスは、まず第1加熱装置11で加熱される。このとき、第1加熱装置11の出口側の窒素ガスの温度を温度センサ25で測定し、温度センサ25が測定した温度に基づいて、第1加熱装置11の出力を制御することによって、第1加熱装置11の出口側における窒素ガスの温度を一定に保つ。例えば、加硫成形の開始直後、高圧ガス供給口12から常温で高圧の窒素ガスが供給されると、第1加熱装置11の出口側における窒素ガスの温度は急激に下がる。そこで、第1加熱装置11は出力を上昇させてフル出力で窒素ガスを加熱し、出口側における窒素ガスの温度が上昇するに連れて出力を下げていくことになる。
【0056】
窒素ガスの循環方向の上流側に位置する左側の中心機構4LのブラダB内には、第1加熱装置11で加熱された窒素ガスが供給される。これにより、左側の中心機構4L側の上下モールド2,3において、グリーンタイヤGの加硫成形が行われる。左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この窒素ガスは、第2加熱装置31で再加熱されて昇温される。このとき、第2加熱装置31の出口側の窒素ガスの温度を温度センサ28で測定し、温度センサ28が測定した温度に基づいて、第2加熱装置31の出力を制御することによって、第2加熱装置31の出口側における窒素ガスの温度を一定に保つ。よって、窒素ガスの循環方向の下流側に位置する右側の中心機構4RのブラダB内には、第2加熱装置31で加熱された窒素ガスが供給される。これにより、右側の中心機構4R側の上下モールド2,3において、グリーンタイヤGの加硫成形が行われる。右側の中心機構4RのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この窒素ガスは、再度ポンプ10に供給され、第1加熱装置11で再加熱されて昇温される。このようにして、窒素ガスは閉回路を循環し、2組の上下モールド2,3の各々において加硫成形が行われる。
【0057】
予め決められた時間が経過すると、加硫成形を終了する。具体的には、バイパス自動弁18,48を開くとともに、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を閉じ、排気自動弁19を開く。これにより、左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスが媒体排気経路56および媒体排気経路57を通って排気口23から主配管に排出されるとともに、右側の中心機構4RのブラダB内から排出された窒素ガスが媒体排気経路66および媒体排気経路57を通って排気口23から主配管に排出される。そして、下モールド2と上モールド3とを開き、加硫済タイヤを上下モールド2,3から取り出して、次工程に搬出する。
【0058】
また、加硫成形の終了時にポンプ10から出た窒素ガスは、第1加熱装置11を通り、バイパス自動弁18を通って、第2加熱装置31に送られ、さらにバイパス自動弁48を通ってポンプ10に戻る経路の媒体循環経路51を循環することになる。この循環において、第1加熱装置11および第2加熱装置31はそれぞれ出口側の窒素ガスの温度が所定の温度になるよう(予熱されるよう)出力を調整する。
【0059】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るタイヤ加硫機1およびタイヤ加硫方法によると、窒素ガスの循環方向の上流側に位置する左側の中心機構4LのブラダB内には、第1加熱装置11で加熱された窒素ガスが供給される。これにより、窒素ガスの循環方向の上流側に位置する(左側の中心機構4L側の)上下モールド2,3において、グリーンタイヤGの加硫成形が行われる。窒素ガスの循環方向の上流側に位置する左側の中心機構4LのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この窒素ガスは、第2加熱装置31で再加熱されて昇温される。よって、窒素ガスの循環方向の下流側に位置する右側の中心機構4Rのブラダ内には、第2加熱装置31で加熱された窒素ガスが供給される。これにより、窒素ガスの循環方向の下流側に位置する(右側の中心機構4R側の)上下モールド2,3において、グリーンタイヤGの加硫成形が行われる。窒素ガスの循環方向の下流側に位置する右側の中心機構4RのブラダB内から排出された窒素ガスは、加硫成形に使用されて温度が低下しているが、この窒素ガスは、第1加熱装置11で再加熱されて昇温される。このようにして、2組の上下モールド2,3の各々において、加硫成形が行われる。このように、中心機構4L,4R毎に窒素ガスを循環させるシステムを設けなくても、2つの中心機構4L,4Rに共通する1つのシステムで、2つのグリーンタイヤGの各々を加硫成形することができる。よって、経済効率を向上させることができる。
【0060】
[第2実施形態]
(タイヤ加硫機の構成)
次に、第2実施形態によるタイヤ加硫機201について説明する。なお、第1実施形態によるタイヤ加硫機1と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0061】
第2実施形態のタイヤ加硫機201が第1実施形態のタイヤ加硫機1と異なる点は、図4に示すように、媒体排気経路57に設けられ、各ブラダB内から排出された窒素ガスを貯留するタンク70と、中心機構4L,4R毎に設けられ、タンク70内の窒素ガスをブラダB内に供給する媒体供給路58,59,60と、を有している点である。
【0062】
各中心機構4L,4RのブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体排気経路56および媒体排気経路66を通って媒体排気経路57で合流する。媒体排気経路57は、自動切替弁29およびチェック弁22を通って排気口23から外部に排出される経路と、自動切替弁72を通ってタンク70内に流入する経路とに分岐している。
【0063】
タンク70内から排出された窒素ガスは自動排気弁71を通って、自動切替弁29およびチェック弁22を通った窒素ガスが排出されるのと同じ排気口23から外部に排出される。自動排気弁71は加硫成形時に閉じられており、タイヤ加硫機1の休止時に開放されて、タンク70内の窒素ガスを外部に排出する。
【0064】
媒体排気経路56と媒体排気経路66とが合流する箇所、および、タンク70の出口には、圧力センサ74,75がそれぞれ設けられている。圧力センサ74と圧力センサ75との差が一定値以下の場合には、自動切替弁72が閉じられ、自動切替弁29が開かれる。これにより、ブラダB内から排出された窒素ガスは、自動切替弁29およびチェック弁22を通って排気口23から外部に排出されることとなる。一方、圧力センサ74と圧力センサ75との差が一定値よりも大きい場合には、自動切替弁29が閉じられ、自動切替弁72が開かれる。これにより、ブラダB内から排出された窒素ガスは、タンク70内に貯留されることとなる。
【0065】
また、低圧ガス供給口14は、媒体供給路58を介して媒体供給路55と接続されているとともに、媒体供給路59、媒体供給路60を介して媒体供給路65と接続されている。媒体供給路58に媒体供給路59が接続する箇所よりも低圧ガス供給口14側には、切替弁76が設けられている。切替弁76が開けられた場合には、低圧ガス供給口14からの低圧の窒素ガスが、媒体供給路58および媒体供給路55を通って左側の中心機構4LのブラダB内に供給されるとともに、媒体供給路59、媒体供給路60、および、媒体供給路65を通って右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。一方、切替弁76が閉じられた場合には、タンク70内の窒素ガスが、媒体供給路59、媒体供給路58、および、媒体供給路55を通って左側の中心機構4LのブラダB内に供給されるとともに、媒体供給路60および媒体供給路65を通って右側の中心機構4RのブラダB内に供給されることとなる。
【0066】
タンク70の周りには、媒体循環経路51が配置されている。タンク70内の窒素ガスは、媒体循環経路51を循環する窒素ガスで加熱される。これにより、タンク70内の窒素ガスの温度低下が防止される。
【0067】
(タイヤ加硫機の動作)
次に、タイヤ加硫機201の動作(タイヤ加硫方法)について説明する。
【0068】
高圧ガス供給口12から供給された高圧の窒素ガスは、ポンプ10により媒体循環経路51を循環し、その間に第1加熱装置11及び第2加熱装置31で所定の温度まで加熱される。ここで、タイヤ加硫機1の稼働開始後、最初にグリーンタイヤGを加硫する際には、タンク70は圧力のない状態である。この場合、切替弁76を開く。左側の中心機構4Lにおいては、低圧ガス供給口14から媒体供給路58および媒体供給路55を通じて常温で低圧の窒素ガスをブラダB内に供給する。また、右側の中心機構4Rにおいては、低圧ガス供給口14から媒体供給路59、媒体供給路60、および、媒体供給路65を通じて、常温で低圧の窒素ガスをブラダB内に供給する。これにより、各ブラダBが伸展し、グリーンタイヤGの内周面にブラダBが密接される。低圧ガス供給口14は、タンク70内に圧力のない場合にのみ低圧の窒素ガスを供給し、通常は使用されない。
【0069】
シェーピング工程を終えると上モールド3と下モールド2とを閉める。そして、バイパス自動弁18,48を閉じ、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を開くことで、媒体循環経路51、媒体供給経路52、左側の中心機構4LのブラダB内、媒体回収経路53、媒体循環経路51、媒体供給経路62、右側の中心機構4RのブラダB内、媒体回収経路63、媒体循環経路51という流れの閉回路を形成して、高圧の窒素ガスを循環させて、加硫成形を行う。
【0070】
加硫成形が終了すると、バイパス自動弁18,48を開き、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を閉じる。それと同時に自動切替弁29を閉じ、自動切替弁72を開く。各ブラダB内から排出された高圧の窒素ガスは、媒体排気経路56、媒体排気経路66、媒体排気経路57を通ってタンク70内に貯留される。各ブラダB内とタンク70内との圧力差がなくなると、媒体排気経路56,66,57を窒素ガスが流れなくなるので、圧力センサ74と圧力センサ75との差が一定値以下になれば、自動切替弁72を閉じて自動切替弁29を開き、各ブラダB内に残った窒素ガスを排気口23から外部に排気する。
【0071】
自動切替弁72と自動切替弁29とを切り替える時の圧力センサ74,75の圧力差は、小さすぎると自動切替弁72と自動切替弁29との切り替えに時間がかかり、大きすぎるとエネルギーロスが大きくなる。そこで、自動切替弁72と自動切替弁29とを切り替える時の圧力センサ74,75の圧力差は、0.01〜0.03Mpaが好ましい。
【0072】
次のグリーンタイヤGがタイヤ加硫機201に装入され、シェーピング工程に入ると、低圧ガス供給口14からの低圧の窒素ガスの代わりに、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスでブラダBを伸展させる。具体的には、左側の中心機構4Lにおいては、タンク70内の窒素ガスを媒体供給路59、媒体供給路58、および、媒体供給路55を通じてブラダB内に供給する。また、右側の中心機構4Rにおいては、タンク70内の窒素ガスを媒体供給路60および媒体供給路65を通じてブラダB内に供給する。このとき、減圧弁15,45で窒素ガスの圧力を減圧してブラダB内に供給する。実際の運転では、高圧の窒素ガスの圧力は2Mpa程度で、シェーピングに必要な圧力は0.01〜0.02Mpa程度である。これにより、各ブラダBが伸展し、グリーンタイヤGの内周面にブラダBが密接される。このように、低圧ガス供給口14から供給される低圧の窒素ガスの代わりにタンク70内に貯留しておいた窒素ガスでブラダBを伸展させることで、タイヤ加硫機1内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、低圧ガス供給口14から供給する低圧の窒素ガスの供給量を減少させることができる。
【0073】
ブラダB内から排出された窒素ガスは、タンク70内に回収される。具体的には、左側の中心機構4Lにおいては、ブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路53、媒体排気経路56、および、媒体排気経路57を通ってタンク70内に回収される。また、右側の中心機構4Rにおいては、ブラダB内から排出されたガスは、媒体回収経路63、媒体排気経路66、および、媒体排気経路57を通ってタンク70内に回収される。
【0074】
シェーピング工程を終えると、上モールド3と下モールド2とを閉めて加硫成形を開始する。第1実施形態で述べたように、加硫成形の開始直後(初期)では、閉回路の圧力が降下する。そのため、第1実施形態では、高圧ガス供給口12から常温で高圧の窒素ガスを閉回路内に補充していた。しかし、本実施形態では、閉回路を形成する前に、自動切替弁29を閉じ、自動切替弁72を開いて、タンク70内の窒素ガスをブラダB内に供給する。なお、供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を閉じ、バイパス自動弁18,48を開くことで、媒体循環経路51において高温・高圧の窒素ガスを循環させておく。
【0075】
具体的には、左側の中心機構4Lにおいては、タンク70内の窒素ガスを媒体供給路59、媒体供給路58、および、媒体供給路55を通じてブラダB内に供給する。また、右側の中心機構4Rにおいては、タンク70内の窒素ガスを媒体供給路60および媒体供給路65を通じてブラダB内に供給する。このように、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスを加硫成形の初期に使用することで、タイヤ加硫機1内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、高圧ガス供給口12から補充する高圧の窒素ガスの供給量を減少させ、補充した窒素ガスを加熱する熱エネルギーを減少させることができる。また、タンク70内に貯留しておいた高温の窒素ガスを加硫成形の初期に使用することで、早期にブラダB内を昇温することができて、加硫時間を短縮することができる。
【0076】
各ブラダB内から排出された窒素ガスは、タンク70に回収される。具体的には、左側の中心機構4Lにおいては、ブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路53、媒体排気経路56、および、媒体排気経路57を通ってタンク70内に回収される。また、右側の中心機構4Rにおいては、ブラダB内から排出された窒素ガスは、媒体回収経路63、媒体排気経路66、および、媒体排気経路57を通ってタンク70内に回収される。この時もタンク70内の圧力とブラダB内の圧力との差がなくなると窒素ガスは流れなくなるので、圧力センサ74,75の差が小さくなると自動切替弁72を閉じて自動切替弁29を開き、ブラダB内に残っている窒素ガスを排気口23から外部に排気する。
【0077】
その後は、媒体循環経路51を循環していた窒素ガスで加硫成形を行う。供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を開き、バイパス自動弁18,48を閉じることで閉回路を形成して、閉回路において高温・高圧の窒素ガスを循環させる。
【0078】
加硫終了後は、再びバイパス自動弁18,48を開き供給切替自動弁13,43および排気切替自動弁17,47を閉じる。その後、自動切替弁29を閉じて自動切替弁72を開き、各ブラダB内から排出された窒素ガスをタンク70内に貯留する。その後、自動切替弁72を閉じて自動切替弁29を開き、ブラダB内に残っている窒素ガスを排気口23から外部に排気する。
【0079】
以上の動作によって、シェーピング時にタイヤ加硫機1内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーが再利用される。また、加硫成形の初期にタイヤ加硫機1内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーが再利用される。なお、エネルギーの再利用は、シェーピング時と加硫成形の初期のどちらか一方だけでもよい。再利用されるエネルギーはタンク70の容量によって決まるが、2つのブラダBの合計容量とタンク70の容量とが同一であり、外部への放熱が同一と仮定すれば、ブラダB内のエネルギーをすべて排出するのに比べて、タイヤ1本を加硫するのに必要なポンプ10、第1加熱装置11、および、第2加熱装置31のエネルギーの約3%を節約することが可能である。また、主配管から高圧ガス供給口12を介して供給する高圧の窒素ガスの量が約30%減少するので、高圧の窒素ガスの発生設備を小さくすることができる。さらに、加硫初期にタンク70内の高温の窒素ガスをブラダB内に供給することができるので、ブラダB内の早期の昇温が可能となり、加硫時間の短縮も可能となる。
【0080】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るタイヤ加硫機201およびタイヤ加硫方法によると、通常、加硫終了後に窒素ガスは媒体排気経路57を通って排気されるので、加硫終了時にタイヤ加硫機201内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーはタイヤ加硫機201の外へ放出されることになり、エネルギー効率が悪い。そこで、ブラダB内から排出された窒素ガスをタンク70内に貯留しておく。そして、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスをシェーピング時にブラダB内に供給する。通常、シェーピング時には低圧ガス供給口14から供給される低圧の窒素ガスでブラダBを伸展させるのであるが、低圧の窒素ガスの代わりにタンク70内に貯留しておいた窒素ガスでブラダBを伸展させる。このように、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスでブラダBを伸展させることで、タイヤ加硫機201内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、低圧ガス供給口14から供給する低圧の窒素ガスの供給量を減少させることができる。
【0081】
また、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスを加硫成形の初期にブラダB内に供給する。通常、媒体循環経路51を循環させておいた高温・高圧の窒素ガスで加硫成形を行うのであるが、加硫成形の初期に窒素ガスの圧力が低下するので、高圧ガス供給口12から高圧の窒素ガスを補充し、補充した窒素ガスを加熱する必要がある。その点、タンク70内に貯留しておいた窒素ガスを加硫成形の初期に使用することで、タイヤ加硫機201内に残存している熱エネルギーおよび圧力エネルギーを再利用することができるとともに、高圧ガス供給口12から補充する高圧の窒素ガスの供給量を減少させ、補充した窒素ガスを加熱する熱エネルギーを減少させることができる。また、タンク70内に貯留しておいた高温の窒素ガスを加硫成形の初期に使用することで、早期にブラダB内を昇温することができて、加硫時間を短縮することができる。これにより、エネルギー効率を向上させることができる。
【0082】
(本実施形態の変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0083】
1,201 タイヤ試験機
2 下モールド
3 上モールド
4,4L,4R 中心機構
5 流体入口
6 流体出口
10 ポンプ(加圧循環装置)
11 第1加熱装置
12 高圧ガス供給口
13,43 供給切替自動弁
14,44 低圧ガス供給口
15,45 減圧弁
16,46 自動切替弁
17,47 排気切替自動弁
18,48 バイパス自動弁
19 排気自動弁
20,22 チェック弁
23 排気口
24,25,28 温度センサ
26 圧力制御弁
29,72 自動切替弁
31 第2加熱装置
51 媒体循環経路
52,62 媒体供給経路
53,63 媒体回収経路
55,65 媒体供給路
56,57,66 媒体排気経路
58,59,60 媒体供給路
70 タンク
71 自動排気弁
74,75 圧力センサ
76 切替弁
100 装入装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下モールドおよび当該下モールドに対して開閉自在な上モールドと、グリーンタイヤ内に装入されるブラダを備えた中心機構とを2組有し、前記グリーンタイヤにブラダを装着するシェーピングの後に、前記下モールドと前記上モールドとで前記グリーンタイヤを締め付けて加硫成形を行うタイヤ加硫機であって、
加硫ガスを循環させる媒体循環経路と、
前記中心機構毎に設けられて前記媒体循環経路に接続され、前記媒体循環経路を循環する前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する媒体供給経路と、
前記中心機構毎に設けられて前記媒体供給経路よりも前記加硫ガスの循環方向の下流側において前記媒体循環経路に接続され、前記ブラダ内から排出された前記加硫ガスを前記媒体循環経路に戻す媒体回収経路と、
前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所よりも上流側に配置されて前記加硫ガスを加熱する第1加熱装置と、
前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体回収経路が前記媒体循環経路に接続する箇所と、前記加硫ガスの循環方向の下流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所との間に配置されて前記加硫ガスを加熱する第2加熱装置と、
を有することを特徴とするタイヤ加硫機。
【請求項2】
各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを外部に排気する媒体排気経路と、
前記媒体排気経路に設けられ、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを貯留するタンクと、
前記中心機構毎に設けられ、前記タンク内の前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する媒体供給路と、
を更に有し、
前記シェーピング時および前記加硫成形の初期の少なくとも一方において、前記タンク内の前記加硫ガスを前記媒体供給路を介して前記ブラダ内に供給することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ加硫機。
【請求項3】
下モールドおよび当該下モールドに対して開閉自在な上モールドと、グリーンタイヤ内に装入されるブラダを備えた中心機構とを2組有するタイヤ加硫機において、前記グリーンタイヤにブラダを装着するシェーピングの後に、前記下モールドと前記上モールドとで前記グリーンタイヤを締め付けて加硫成形を行うタイヤ加硫方法であって、
媒体循環経路において加硫ガスを循環させる工程と、
前記中心機構毎に設けられて前記媒体循環経路に接続された媒体供給経路により前記媒体循環経路を循環する前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する工程と、
前記中心機構毎に設けられて前記媒体供給経路よりも前記加硫ガスの循環方向の下流側において前記媒体循環経路に接続された媒体回収経路により前記ブラダ内から排出された前記加硫ガスを前記媒体循環経路に戻す工程と、
前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所よりも上流側に配置された第1加熱装置で前記加硫ガスを加熱する工程と、
前記媒体循環経路に設けられ、前記加硫ガスの循環方向の上流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体回収経路が前記媒体循環経路に接続する箇所と、前記加硫ガスの循環方向の下流側に位置する前記中心機構に設けられた前記媒体供給経路が前記媒体循環経路に接続する箇所との間に配置された第2加熱装置で前記加硫ガスを加熱する工程と、
を有することを特徴とするタイヤ加硫方法。
【請求項4】
各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを媒体排気経路により外部に排気する工程と、
前記媒体排気経路に設けられたタンクで、各ブラダ内から排出された前記加硫ガスを貯留する工程と、
前記中心機構毎に設けられた媒体供給路により、前記タンク内の前記加硫ガスを前記ブラダ内に供給する工程と、
を更に有し、
前記シェーピング時および前記加硫成形の初期の少なくとも一方において、前記タンク内の前記加硫ガスを前記媒体供給路を介して前記ブラダ内に供給することを特徴とする請求項3に記載のタイヤ加硫方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−922(P2013−922A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131802(P2011−131802)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】