説明

タイヤ成形装置及びタイヤ成形方法

【課題】ストリップビルド工法でタイヤ形状を成形する場合に、ストリップゴムに対して無理な力を作用させることを抑制し、品質の良いタイヤ成形を可能にする。
【解決手段】成型用口金2aからストリップゴムを押し出す押出機2と、押し出されたストリップゴムSが巻き付けられる成形ドラム1と、を備え、押出機2の成型用口金2aを成形ドラム1に対して離間/接近させるための押出機駆動部10と、成型用口金2aに対する成形ドラム1の相対的高さ位置を変更させるための傾斜機構と、押出機駆動部10と傾斜機構を制御する相対位置関係制御部20bと、を備え、ストリップゴムSの巻き付け開始時は、成型用口金2aの高さが成形ドラム1の回転中心と同じ高さになるようにし、巻き付け開始後は、成型用口金2aの高さが成形ドラム1の巻き取り頂部と同じ高さになるように、巻き付け終了時は、再び、巻き付け開始時と同じ位置関係になるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型用口金からストリップゴムを押し出す押出機と、この押出機から押し出されたストリップゴムが巻き付けられる成形用回転体と、を備えたタイヤ成形装置及びこれを用いたタイヤ成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤ成形方法として、ストリップビルド工法が知られており、押出機の成型用口金から帯状のストリップゴムを押し出し、成形ドラム(成形用回転体に相当)の表面にストリップゴムを順次巻き付けていくことで、タイヤ形状を成形する(例えば、下記特許文献1,2参照)。具体的な巻き付け手順として、引用文献1の図3、図5に開示されている。
【0003】
すなわち、押出機を前進させて、その成型用口金を成形ドラムの表面に接近させる。次に、押出機からのストリップゴムの押し出しを開始すると共に、成形ドラムを回転駆動させる。これにより、成形ドラムの表面にストリップゴムが巻き付けられ始めると共に、押出機を成形ドラムから後退させる。押出機と成形ドラムが所定間隔離間した状態で、成形ドラムにストリップゴムを巻き付けていく。
【0004】
巻き付けを終了する時に、再び、押出機の成型用口金を成形ドラムの表面に接近させる。そして、成型用口金を積層された成形ドラムの表面に押しつける動作をした後、ストリップゴムの押し出しを停止させ、そのまま押出機を再び後退させることで、ストリップゴムを切断させることができ、所望のタイヤ形状が成形ドラムの表面に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−159622号公報
【特許文献2】特開2006−123381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の成形方法における課題は、次の通りである。成形ドラムの巻き付けられるストリップゴムの断面形状は、例えば、図7(a)のように、中央が厚く、両端部に行くほど厚さが薄くなっている。これは、ストリップゴムを巻き付けていく時に隣接するストリップゴムを少し重畳しながら巻き付けるが、重ねる時の段差を少なくするために、両端部の厚さを薄くしている。
【0007】
しかしながら、押し出された時の断面形状でストリップゴムが巻き付けられていけばよいが、実際には、図7(b)に示すように、両端部が少し持ち上がる傾向がある。これは、特許文献1の図3にも示すように、押出機の高さは、成形ドラムの回転中心の高さと始終同じになるように設定されているためである。すなわち、ストリップゴムの巻き付け開始や終了(ストリップゴムの切断)を行うためには、成型用口金の高さを成形ドラムの回転中心に合わせておく必要があるためである。
【0008】
このような高さ関係に設定しているため、成形動作中は、常にストリップゴムが上方に引っ張られるように作用する。これにより、ストリップゴムの断面形状の両端部が反り上がる傾向が生じてしまう。このような傾向のストリップゴムを積層していくと、図8に示すように、隣接するストリップゴムの間にエアーがたまりやすくなり、タイヤ品質上の問題が発生する。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、ストリップビルド工法でタイヤ形状を成形する場合に、押し出されたストリップゴムに対して無理な力を作用させることを抑制し、品質の良いタイヤ成形が可能なタイヤ成形装置及びタイヤ成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため本発明に係るタイヤ成形装置は、
成型用口金からストリップゴムを押し出す押出機と、この押出機から押し出されたストリップゴムが巻き付けられる成形用回転体と、を備えたタイヤ成形装置であって、
押出機の成型用口金を成形用回転体に対して離間/接近させるための押出機駆動部と、
押出機の成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更させるための高さ位置駆動部と、
前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することで前記成型用口金と成形用回転体の相対位置関係を調整する相対位置関係制御部と、を備え、この相対位置関係制御部は、
ストリップゴムの巻き付け開始時は、成型用口金の高さが成形用回転体の回転中心と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体の表面に接近させ、巻き付け開始後は、成型用口金の高さが成形用回転体の巻き取り頂部と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体から離間させ、巻き付け終了時は、再び、前記巻き付け開始時と同じ位置関係になるように、前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することを特徴とするものである。
【0011】
かかる構成によるタイヤ成形装置の作用・効果を説明する。この装置は、押出機を成形用回転体に対して離間/接近させるための押出機駆動部と、押出機の成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更させるための高さ位置駆動部と、を制御する相対位置関係制御部を備えている。この相対位置関係制御部による制御は次のように行われる。
(1)巻き付け開始時は、成型用口金は成形用回転体の回転中心と同じ高さにあり、かつ、成型用口金を成形用回転体の表面に近接させる。この状態で、ストリップゴムの押し出し成形が開始される。
(2)その後、成型用口金の高さと成形用回転体の巻き取り頂部が同じ高さになるように、制御する。従って、押出機から押し出し成形されたストリップゴムは、上方に引っ張られるなどの無理な力が作用することなく、押し出された時の姿勢で、成形用回転体の表面に巻き取られていく。
(3)巻き付け終了時には、巻き付け開始時と同様に、再び押出機を成形用回転体の表面に接近させると共に、成型用口金の高さを成形用回転体の回転中心に合わせるように制御する。
【0012】
以上のように、押出機の成型用口金と成形用回転体の相対的な位置関係を制御するようにしたので、押し出されたストリップゴムに対して無理な力を作用させることを抑制し、品質の良いタイヤ成形が可能になる。
【0013】
本発明に係る前記高さ位置駆動部は、成形用回転体の回転中心よりも下方に設定された傾斜支持部と、この傾斜支持部と前記回転中心を結ぶラインを傾斜駆動させることで、成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更する傾斜機構を備えていることが好ましい。
【0014】
成型用口金と成形用回転体の相対的な高さ関係を変更する機構として、上記のように傾斜駆動させることで実現することができる。例えば、傾斜支持部と回転中心を結ぶラインを通常は垂直姿勢とし、このラインを傾斜支持部を中心に回転するように駆動すれば、成形用回転体の高さを低くするように駆動することができる。これにより、簡素な駆動機構により、成形用回転体の高さ位置を変更させることができる。
【0015】
本発明において、前記傾斜駆動を行う時、前記押出機が前記離間/接近する方向と同じ方向の速度成分が、前記押出機の前記離間/接近する速度と同じになるように、前記相対位置関係制御部による制御が行われることが好ましい。
【0016】
傾斜駆動を行うのは、巻き付け開始時と終了時になるが、傾斜駆動を行う時は、例えば成形用回転体の水平速度成分は一定ではなく、徐々に変化する。かかる場合、押出機の移動速度と、成形用回転体が傾斜駆動するときの同じ方向の移動速度成分を同じになるように制御することで、成型用口金から押し出されたストリップゴムに無理なテンションが作用したり、ストリップゴムにたるみが生じたりすることを抑制することができる。
【0017】
本発明において、前記押出機のストリップゴムの押し出し速度と、前記成形用回転体によるストリップゴムの巻き取り速度が、一定の比率になるように制御する巻き取り制御部を備えていることが好ましい。
【0018】
ストリップゴムの押し出し速度と、ストリップゴムの巻き取り速度を一定の比率になるように制御することで、常に同じテンションが作用している状態でストリップゴムの巻き付け動作を行うことができる。
【0019】
上記課題を解決するため本発明に係るタイヤ成形方法は、
押出機の成型用口金からストリップゴムを押し出す工程と、この押出機から押し出されたストリップゴムが成形用回転体に巻き付けられる工程、を有するタイヤ成形方法であって、
押出機の成型用口金を成形用回転体に対して離間/接近させるための押出機駆動工程と、
押出機の成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更させるための高さ位置駆動工程と、
前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することで前記成型用口金と成形用回転体の相対位置関係を調整する相対位置関係制御工程と、を有し、この相対位置関係制御工程は、
ストリップゴムの巻き付け開始時は、成型用口金の高さが成形用回転体の回転中心と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体の表面に接近させ、巻き付け開始後は、成型用口金の高さが成形用回転体の巻き取り頂部と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体から離間させ、巻き付け終了時は、再び、前記巻き付け開始時と同じ位置関係になるように、前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することを特徴とするものである。
【0020】
また、前記高さ位置駆動工程は、成形用回転体の回転中心よりも下方に設定された傾斜支持部と、この傾斜支持部と前記回転中心を結ぶラインを傾斜駆動させることで、成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更することが好ましい。
【0021】
さらに、前記傾斜駆動を行う時、前記押出機が前記離間/接近する方向と同じ方向の速度成分が、前記押出機の前記離間/接近する速度と同じになるように、前記相対位置関係制御工程による制御が行われることが好ましい。
【0022】
更にまた、前記押出機のストリップゴムの押し出し速度と、前記成形用回転体によるストリップゴムの巻き取り速度が、一定の比率になるように制御する工程を有することが好ましい。
【0023】
かかる構成によるタイヤ成形方法の作用・効果は、すでに述べた通りであり、押出機の成型用口金と成形用回転体の相対的な位置関係を制御するようにしたので、押し出されたストリップゴムに対して無理な力を作用させることを抑制し、品質の良いタイヤ成形が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】成型ドラムとストリップゴム押出機の配置関係を示す図
【図2】ストリップゴムを成型ドラムに貼り付けるときの基本的な動作を説明する図
【図3】押出機と成型ドラムを駆動する駆動装置の構成を示す模式図
【図4】第3ドラム駆動部の構成と傾斜した状態を示す図
【図5A】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図
【図5B】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図
【図5C】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図
【図5D】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図
【図5E】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図
【図6B】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図(別実施形態)
【図6C】ストリップゴムを巻き付ける時の動作を説明する図(別実施形態)
【図7】従来技術の問題点を説明する図
【図8】従来技術の問題点を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係るタイヤ(グリーンタイヤ)成形装置及びタイヤ成形方法の好適な実施形態を図面を用いて説明する。図1は、成型ドラム(成形用回転体に相当)とストリップゴム押出機の配置関係を示す図である。
【0026】
<タイヤ成型設備の構成>
図1において、成型ドラム1は、ドラム軸1a周りに回転駆動されるように構成される。成型ドラム1は、タイヤ内面形状に対応した3次元曲面形状に形成されたドラム表面1bを有している。一方、押出機2は、成型用口金2aから帯状のストリップゴムSを押し出す。ストリップゴムSは所定の断面形状を備えており、これを順次、成型ドラム1に貼り付けて積層していくことで、所望の断面形状を有するタイヤを成型することができる。ストリップゴムSの断面形状は、例えば、図7で説明したように略三角形状であり、中央部が厚く両端部が薄くなるように形成される。また、成形ドラム1のストリップゴムが貼り付けられる表面は、実際のタイヤの内面形状と同じ形状を有している。
【0027】
図2は、ストリップゴムSを成型ドラム1に貼り付けるときの基本的な動作を説明する図である。押出機2は、先端に成型用口金2aが設けられており、この成型用口金2aから所定断面のストリップゴムSが押し出し成型される。押出機2は、ギヤーポンプ2bと、スクリュー2cを備えており、スクリュー2cにより混練されたゴムが、ギヤーポンプ2bにより定量がダイヘッド2aに向けて供給される。なお、押出機2としては、ギヤーポンプ2bはなくてもよい。
【0028】
図2(a)は、貼り付け工程を開始する前の状態を示している。ダイヘッド2aと成型ドラム1の表面との間には、わずかに間隔が開いている。また、成型用口金2aの高さは、成形ドラム1のドラム軸1a(回転中心)と同じ高さにある。次に、(b)のようにストリップゴムSを吐出させ、(c)のように、成型ドラム1を回転開始(矢印R)させる。これにより、成型ドラム1の表面に、ストリップゴムSが貼り付けられていく。貼り付け開始後に、押出機2は成型ドラム1から後退し、ダイヘッド2aと成型ドラム1の表面との間に間隔をあける。これにより、(d)に示すようにストリップゴムSが成型ドラム1に積層されていく。また、(d)に示す状態では、成形ドラム1の頂部と成型用口金2aの高さが同じになるように設定される。この点については、後で詳しく説明する。
【0029】
<駆動装置の構成>
次に、押出機と成型ドラムを駆動する駆動装置の構成を図3の模式図により説明する。図3(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【0030】
スクリュー駆動部10は、スクリュー2cを回転駆動する。スクリュー2cの回転速度を制御することで、成型用口金2aからのストリップゴムの押し出し速度を変更することができる。押出機駆動部11は、押出機2とスクリュー駆動部10の全体をx軸方向に駆動する。x軸方向とは、成型ドラム1に対して前進(近接)する方向、後退(離間)する方向である。
【0031】
成型ドラム1をドラム軸1a回りに回転させるドラム回転駆動部12が設けられている。ドラム軸1aと同芯上に駆動モータ12aが設けられる。成形ドラム1の回転速度を制御することにより、ストリップゴムを成形ドラム1に巻き取っていく速度を制御することができる。
【0032】
成型ドラム1を垂直に設定された軸(垂直な軸zと平行)に対して、押出機2に近づく側と遠ざかる側の間で傾斜させるための第3ドラム駆動部13(高さ位置駆動部に相当)が設けられる。ドラム軸1aは、支持アーム13aの上端部において支持されており、下端部が回転軸13b(傾斜支持部に相当)により支持されている。その回転軸13bが駆動モータ13cにより回転駆動させられる。回転軸13bの下部にも支持軸13dが設けられる(図4参照)。なお、支持軸13dは設けられていなくてもよい。
【0033】
駆動モータ13cを回転駆動することで、図4に示すように、支持アーム13aを回転軸13b周りに回転させることができる。その時の角度θが傾斜角度である。傾斜角度θが小さくなればなるほど、押出機2側に近づく方向になる。また、支持アーム13aを傾斜させると、成形ドラム1の頂部の高さは低くなる。さらに、傾斜角度θを検出するための角度検出センサー13eが設けられている。支持アーム13aを傾斜させて成形ドラム1の高さ位置を変更する機構は、傾斜機構に相当する。
【0034】
成型ドラム1を垂直に設定された軸z周りに回転させる第2ドラム駆動部14が設けられている。第2ドラム駆動部14は、駆動モータ14aと、その上に搭載されるベース14bを備えている。駆動モータ14aを回転駆動すると、ベース14bが一緒に回転する。これにより、ベース14bに搭載されている第3ドラム駆動部13や成型ドラム1等も一緒に回転する。その回転角度は図3(c)においてβで示される。回転角度βを検出するための角度検出センサー14cが設けられている。
【0035】
成型ドラム1を左右方向(図3(b)(c)のy方向)に移動させるための第1ドラム駆動部15が設けられている。第1ドラム駆動部15は、駆動モータ(不図示)と、ベース15aと、ガイドレール15bと、ガイドレール15bを支持する固定ベース16を備えている。ベース15aの上に駆動モータ14aが搭載されており、ベース15aが移動すると、成型ドラム1を含めた全体が左右方向に移動する。ガイドレール15bは公知の構造のものでよく、リニアサーボモータ等により、駆動モータを構成することができる。左右方向の移動量は、移動量検出センサー15cにより検出することができる。
【0036】
以上のような駆動装置を用いることで、タイヤ内面形状に対応した成型ドラム1の表面にストリップゴムSを貼り付けることができる。
【0037】
<制御部の構成>
各駆動装置の動作を制御するための制御部20が設けられている。成型ドラム1に貼り付けられるタイヤの形状、成型ドラム1の表面形状に対応して駆動装置を制御し、押出機2や成型ドラム1の位置、姿勢を制御する。押出機2や成型ドラム1の位置、姿勢については、前述のような各センサーにより検出することができる。また、タイヤの形状、成型ドラム1の表面形状に対応してプログラム20aが組み込まれており、これに従って、押出機2や成型ドラム1の位置、姿勢が制御される。
【0038】
制御部20には、相対位置関係制御部20bの機能が設けられている。この相対位置関係制御部20bは、押出機駆動部10と第3ドラム駆動部13(高さ位置駆動部)を制御することで、成型用口金2aと成形ドラム1の相対高さ位置関係を調整する。具体的には、すでに説明したように、ストリップゴムSを成形ドラム1に巻き付けていくときに、ストリップゴムSが上方に引っ張られるようなテンションが作用することを抑制し、ストリップゴムSの両端部が反り上がらないように巻き付けるためである。具体的には、支持アーム13aを傾斜させることで、巻き付け工程中は成型用口金2aの高さと成形ドラム1の頂部の高さを同じ(あるいはほぼ同じ)になるようにする。
【0039】
さらに、制御部20には、巻き取り制御部20cの機能が設けられている。この巻き取り制御部20cは、押出機2によるストリップゴムSの押し出し速度と、成形ドラム1によるストリップゴムSの巻き取り速度が、一定の比率になるように、押出機2のスクリュー2cの回転速度と、成形ドラム1の回転速度(周速)を制御する。具体的には、ストリップゴムSの巻き取り速度の方が、押し出し速度よりも少し(0.1%〜2%)早くなるように制御される。これにより、ストリップゴムSに必要以上にテンションが作用したり、たるみが生じないようにしている。
【0040】
<ストリップゴムの巻き付け動作>
次に、図3、図4に示すタイヤ成形装置により、成形ドラム1にストリップゴムSを巻き付ける時の動作を図5により説明する。
【0041】
図5Aは、巻き付け動作開始時の状態を示す。この時、成型用口金2aの高さは、成形ドラム1の回転中心であるドラム軸1aの高さに一致している。成型用口金2aは成形ドラム1の外表面に近接していると共に、支持アーム13aは垂直姿勢である。ストリップゴムSを成形ドラム1の表面に付着させるためには、上記の位置関係に設定することが適切である。
【0042】
次いで、ストリップゴムSの巻き付けを開始していくために、押出機2を成形ドラム1から離間する方向に駆動すると共に、支持アーム13aを回転軸13b周りに反時計方向に回転させていく(図5B参照)。また、成形ドラム1もドラム軸1aを中心に回転し始める。この時、押出機2の後退速度Vxと、成形ドラム1が傾斜していく時のX軸方向の移動速度Vθxが同じになるように、相対位置関係制御部20bによる制御が行われる。例えば、支持アーム13aを傾斜していく時の回転速度Vθが一定になるようにするのであれば、傾斜角度θにより、そのX軸方向の移動速度Vθx成分は異なるので、これに合わせるように、押出機2の後退速度Vxを制御することができる。そのような速度制御は、予めプログラムしておくことができる。上記に代えて、押出機2の後退速度Vxが一定になるように制御し、支持アーム13aの回転速度Vθを非線形に制御して、両者を合わせるようにしてもよい。
【0043】
これにより、ストリップゴムSに対して無理なテンションが作用したり、不必要なたるみが生じることを抑制することができる。
【0044】
また、ストリップゴムSが成型用口金2aから押し出される時の速度をVxαとすると、成形ドラム1によりストリップゴムSを巻き取る時の速度(周速)が上記Vxαよりも少し速くなるように、巻き取り制御部20cによる制御が行われる。この周速は、成形ドラム1の回転速度に依存する。以上のように、ストリップゴムSを巻き付けていく時に、たるみが生じることなく、適度なテンションが作用した状態で成形ドラム1の外表面に巻き付けを行う。
【0045】
ストリップゴムSの押し出し速度Vxαは、スクリュー2cの回転速度に依存する。そこで、傾斜角度θとスクリュー2cの回転数の関係は、予め、制御部20にプログラム20aとして格納することができ、角度検出センサー14cにより検出された傾斜角度に基づいて、スクリュー2cの回転数Scを制御することができる。また、ストリップゴムSの巻き取り速度は、成形ドラム1の回転速度に依存し、終始、ストリップゴムSのテンションを一定にするために、上記傾斜角度θと成形ドラム1の回転速度を予め設定したプログラムで制御運転してもよい。
【0046】
図5Bの状態から、更に支持アーム13aを傾斜させていき、図5Cに示すように、成型用口金2aの高さと成形ドラム1の頂部の高さが同じになるように設定する。この状態で、ストリップゴムSの巻き付けが行われていく。この状態では、押出機2から押し出し成型されるストリップゴムSは、ほぼ水平状態になり、ストリップゴムSに対して無理なテンションが作用しない。ストリップゴムSの巻き付け動作を行うためには、傾斜機構や押出機駆動部10のみならず、他の第2ドラム駆動部14や第1ドラム駆動部15なども駆動しながら行われる。これにより、タイヤ内面形状を有する成形ドラム1に対して、ストリップゴムSの貼り付け動作を精度よく行うことができる。この時、押出機2の成型用口金2aと成形ドラム1とは、所定間隔だけ離間した状態に設定される。
【0047】
次に、巻き付け終了時の動作を説明するが、巻き付け終了時は、巻き付け開始時の逆の動作をするように、押出機2や成形ドラム1に対する制御が行われる。すなわち、図5Dに示すように、支持アーム13aを傾斜状態から垂直姿勢にするために、支持アーム13aを時計方向に回転させる。それと同時に、押出機2の全体を成形ドラム1の方向に近接するように駆動する。この時も、押出機2の前進速度Vxは、成形ドラム1のX軸方向の移動速度Vθxと同じになるように、相対位置関係制御部20bによる制御が行われる。ストリップゴムSの押し出し速度Vxαについても同様である。
【0048】
図5Eは巻き付け終了時の状態であり、押出機2の成型用口金2aを成形ドラム1に巻き付けられたストリップゴムSの表面に接触させる。この状態から押出機2を後退させれば、ストリップゴムSを切断することができる。
【0049】
<別実施形態>
本実施形態では、傾斜機構により、成形ドラム1の頂部の高さを制御するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、押出機2の高さを変更できる機構を設けてもよい。
【0050】
本発明では、成型用口金2aの高さと成形ドラム1の頂部が同じ高さになるように制御されるが、これは、厳密に「同じ高さ」だけに限定されるものではない。同じ高さとみなされる範囲であれば、「同じ高さ」の概念に含まれる。例えば、成形ドラム1にストリップゴムSを2層3層と巻き付けていく場合、ストリップゴムSの厚み分は頂部の高さに変動が生じるが、その変動分に関係なく、「同じ高さ」の概念に含まれるものである。もちろん、ストリップゴムSの厚み分を考慮して、支持アーム13aの傾斜角度を変更するように制御してもよい。
【0051】
本実施形態では、図5B、図5Cに示すように、支持アーム13aを成型用口金2aに近づく方向(反時計方向)に傾斜させているが、図6B,図6Cに示すように、成型用口金2aから遠ざかる方向(時計方向)に傾斜させてもよい。
【0052】
本実施形態では、タイヤ内面形状を有する成形ドラムの場合を説明したが、通常の円筒形状を有する成形ドラムの場合にも、本発明を応用することができる。
【0053】
本実施形態では、ストリップゴムの断面形状として三角形状のものを説明したが、本発明において、ストリップゴムの断面形状は、特定の断面形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0054】
1 成型ドラム
2 押出機
2a 成型用口金
2b ギヤーポンプ
2c スクリュー
10 スクリュー駆動部
11 押出機駆動部
12 ドラム回転駆動部
13 第3ドラム駆動部
13a 支持アーム
13b 回転軸
13c 駆動モータ
13e 角度検出センサー
14 第2ドラム駆動部
15 第1ドラム駆動部
20 制御部
20a プログラム
20b 相対位置関係制御部
20c 巻き取り制御部
θ 傾斜角度
β 回転角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型用口金からストリップゴムを押し出す押出機と、この押出機から押し出されたストリップゴムが巻き付けられる成形用回転体と、を備えたタイヤ成形装置であって、
押出機の成型用口金を成形用回転体に対して離間/接近させるための押出機駆動部と、
押出機の成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更させるための高さ位置駆動部と、
前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することで前記成型用口金と成形用回転体の相対位置関係を調整する相対位置関係制御部と、を備え、この相対位置関係制御部は、
ストリップゴムの巻き付け開始時は、成型用口金の高さが成形用回転体の回転中心と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体の表面に接近させ、巻き付け開始後は、成型用口金の高さが成形用回転体の巻き取り頂部と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体から離間させ、巻き付け終了時は、再び、前記巻き付け開始時と同じ位置関係になるように、前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することを特徴とするタイヤ成形装置。
【請求項2】
前記高さ位置駆動部は、成形用回転体の回転中心よりも下方に設定された傾斜支持部と、この傾斜支持部と前記回転中心を結ぶラインを傾斜駆動させることで、成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更する傾斜機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ成形装置。
【請求項3】
前記傾斜駆動を行う時、前記押出機が前記離間/接近する方向と同じ方向の速度成分が、前記押出機の前記離間/接近する速度と同じになるように、前記相対位置関係制御部による制御が行われることを特徴とする請求項2に記載のタイヤ成形装置。
【請求項4】
前記押出機のストリップゴムの押し出し速度と、前記成形用回転体によるストリップゴムの巻き取り速度が、一定の比率になるように制御する巻き取り制御部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ成形装置。
【請求項5】
押出機の成型用口金からストリップゴムを押し出す工程と、この押出機から押し出されたストリップゴムが成形用回転体に巻き付けられる工程、を有するタイヤ成形方法であって、
押出機の成型用口金を成形用回転体に対して離間/接近させるための押出機駆動工程と、
押出機の成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更させるための高さ位置駆動工程と、
前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することで前記成型用口金と成形用回転体の相対位置関係を調整する相対位置関係制御工程と、を有し、この相対位置関係制御工程は、
ストリップゴムの巻き付け開始時は、成型用口金の高さが成形用回転体の回転中心と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体の表面に接近させ、巻き付け開始後は、成型用口金の高さが成形用回転体の巻き取り頂部と同じ高さになるように、かつ、成型用口金を成形用回転体から離間させ、巻き付け終了時は、再び、前記巻き付け開始時と同じ位置関係になるように、前記押出機駆動部と高さ位置駆動部を制御することを特徴とするタイヤ成形方法。
【請求項6】
前記高さ位置駆動工程は、成形用回転体の回転中心よりも下方に設定された傾斜支持部と、この傾斜支持部と前記回転中心を結ぶラインを傾斜駆動させることで、成型用口金に対する成形用回転体の相対的高さ位置を変更することを特徴とする請求項5に記載のタイヤ成形方法。
【請求項7】
前記傾斜駆動を行う時、前記押出機が前記離間/接近する方向と同じ方向の速度成分が、前記押出機の前記離間/接近する速度と同じになるように、前記相対位置関係制御工程による制御が行われることを特徴とする請求項6に記載のタイヤ成形方法。
【請求項8】
前記押出機のストリップゴムの押し出し速度と、前記成形用回転体によるストリップゴムの巻き取り速度が、一定の比率になるように制御する工程を有することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載のタイヤ成形方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−143945(P2012−143945A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3335(P2011−3335)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】