説明

タイヤ構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラム

【課題】シート状材料のずれや落下を容易に防止できるタイヤ構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラムを提供する。
【解決手段】タイヤ成型ドラム10のドラム本体20における外周面20Aには、複数の刺状突起24が形成されており、刺状突起24はタイヤ成型ドラム10の正転方向へ傾斜している。従って、タイヤ成型ドラム10の正転方向への回転速度V1に対して、シート状材料12の搬送速度V2を遅くして(V1>V2)、シート状材料12にテンションを作用させることによって、刺状突起24の先端24Aがシート状材料12の裏面12Aに刺さると共に、刺状突起24がシート状材料12に食い込むようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外周面にシート状材料を巻き付けてドラム構成部材を成型するドラム構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラムについては、例えば、特許文献1がある。この従来技術では、タイヤ成型ドラムの外周面に巻き付けたシート状材料のずれや落下を防止するため、シート状材料を刺通可能な先端形状を有する係止爪を、その少なくとも一部が成型ドラム外周面からドラム径方向外側に突出した作動位置と、その全部がドラム内に格納された休止位置との間を移動可能に配設している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−264049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、タイヤ成型ドラムに設けた係止爪の押し出しを、例えば、空気圧若しくは油圧により作動するピストン、又はドラムの回転軸に連動したカム若しくはリンク機構、又はモーター等の駆動手段を用いて行う必要がある。このため、装置の構成が複雑になり、コストアップになる。
【0005】
本発明は、上記問題を考慮し、シート状材料のずれや落下を容易に防止できるタイヤ構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明のタイヤ構成部材の成型方法は、外周面に正転方向へ傾斜している複数の刺状突起を備えたタイヤ成型ドラムを、前記正転方向へ回転させながら前記タイヤ成型ドラムの外周面にシート状材料を巻き付けると共に、前記シート状材料に前記複数の刺状突起を刺して前記タイヤ成型ドラムの外周面に前記シート状材料を保持する。
【0007】
請求項1に記載のタイヤ構成部材の成型方法では、外周面に正転方向へ傾斜している複数の刺状突起を備えたタイヤ成型ドラムを、正転方向へ回転させながらタイヤ成型ドラムの外周面にシート状材料を巻き付ける。このとき、シート状材料に複数の刺状突起を刺してタイヤ成型ドラムの外周面にシート状材料を保持する。このため、シート状材料のずれや落下を容易に防止できる。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載のタイヤ構成部材の成型方法において、前記シート状材料の両端部を接合してタイヤ構成部材を成型した後、前記タイヤ構成部材を保持した状態で前記タイヤ成型ドラムの径を縮小させながら前記タイヤ成型ドラムを逆転方向へ回転させて、前記タイヤ構成部材から前記複数の刺状突起を抜き、前記タイヤ成型ドラムから前記タイヤ構成部材を取り外す。
【0009】
請求項2に記載のドラム構成部材の成型方法によれば、シート状材料の両端部を接合してタイヤ構成部材を成型した後、タイヤ構成部材を保持した状態で、タイヤ成型ドラムの径を縮小させながらタイヤ成型ドラムを逆転方向へ回転させて、タイヤ構成部材から複数の刺状突起を抜き、タイヤ成型ドラムからタイヤ構成部材を取り外す。このため、タイヤ構成部材とタイヤ成型ドラムとが密着することが無く、タイヤ構成部材をタイヤ成型ドラムから容易に取り外すことができる。
【0010】
請求項3に記載の本発明は、請求項1または請求項2に記載のタイヤ構成部材の成型方法において、前記シート状材料は、タイヤ赤道面に対して傾斜する複数本のコードをゴム被覆してなる交錯ベルトである。
【0011】
請求項3に記載のドラム構成部材の成型方法によれば、シート状材料がタイヤ赤道面に対して傾斜する複数本のコードをゴム被覆してなる交錯ベルトであるため、交錯ベルト層を容易に成型できる。
【0012】
請求項4に記載の本発明のタイヤ成型ドラムは、正転逆転が可能なドラム本体と、前記ドラム本体の外周面の周方向全域に立設され前記正転方向へ傾斜している複数の刺状突起と、を有する。
【0013】
請求項4に記載のタイヤ成型ドラムでは、正転逆転が可能なドラム本体の外周面の周方向全域に正転方向へ傾斜している複数の刺状突起が立設されており、これらの複数の刺状突起がタイヤ成型ドラムの外周面に巻き付けられるシート状材料に刺さることで、タイヤ成型ドラムの外周面にシート状材料を保持できる。この結果、シート状材料のずれや落下を容易に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明に係るタイヤ構成部材の成型方法は、上記方法としたので、シート状材料のずれや落下を容易に防止できる。
【0015】
請求項2に記載の本発明に係るタイヤ構成部材の成型方法は、上記方法としたので、タイヤ構成部材をタイヤ成型ドラムから容易に取り外すことができる。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係るタイヤ構成部材の成型方法は、上記方法としたので、交錯ベルト層を容易に成型できる。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係るタイヤ成型ドラムは、上記構成としたので、シート状材料のずれや落下を容易に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明における一実施形態のタイヤ構成部材の成型方法における巻き付け方法を示す概略斜視図である。
【図2】本発明における一実施形態のタイヤ構成部材の成型方法における巻き付け完了状態を示す概略斜視図である。
【図3】図1の3−3断面線に沿った拡大断面図である。
【図4】本発明における一実施形態のタイヤ成型ドラムの刺状突起を示す拡大側面図である。
【図5】本発明における一実施形態のタイヤ構成部材の成型方法における取り外し方法を示すハッチングを省略した概略側断面図である。
【図6】本発明における一実施形態のタイヤ構成部材の成型方法における取り外し方法を示すハッチングを省略した拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図6に従って本発明に係るタイヤ構成部材の成型方法及びタイヤ成型ドラムの一実施形態について説明する。
【0020】
(タイヤ成型ドラム)
図1に示すように、本実施形態のタイヤ成型ドラム10のドラム本体20は回転軸22に取付けられており、回転軸22は駆動装置(図示省略)を操作することで、正転方向(図1の矢印A方向)と逆点方向(図1の矢印B方向)とへ回転可能となっている。また、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20における外周面20Aには、複数の刺状突起24がドラム本体20の両端部を除く周方向全域に形成されている。なお、正転方向とは、ドラム本体20の外周面20Aにシート状材料を巻き付ける際の回転方向である。
【0021】
図2に示すように、刺状突起24は、タイヤ成型ドラム10の外周面20Aにおけるタイヤ成型ドラム10の軸線10Aに沿った幅W1の範囲に形成されており、刺状突起24の幅W1はシート状材料12の幅W2より広くなっている(W1>W2)。
【0022】
図4に示すように、刺状突起24はタイヤ成型ドラム10の正転方向(図4の矢印A方向)へ傾斜している。より具体的に説明すると、刺状突起24は円錐形状となっており、先端24Aから円形の下面24Bの中心24Cに伸びる中心線24Dが、タイヤ成型ドラム10の正転方向(図4の矢印A方向)へ傾斜している(傾斜角θ1)と共に、先端24Aから下面24Bの正転方向の先端24Eに伸びる外周線24Fが、タイヤ成型ドラム10の正転方向(図4の矢印A方向)へ傾斜している(傾斜角θ2)。
【0023】
従って、タイヤ成型ドラム10を正転方向(図4の矢印A方向)へ回転させて、シート状材料12をタイヤ成型ドラム10に巻き付ける際に、タイヤ成型ドラム10の正転方向(図4の矢印A方向)への回転速度V1に対して、シート状材料12の搬送速度V2を遅くして(V1>V2)、シート状材料12にテンションを作用させることで、刺状突起24の先端24Aがシート状材料12の裏面12Aに刺さると共に、刺状突起24がシート状材料12に食い込むようになっている。
【0024】
なお、図5に示すように、タイヤ成型ドラム10の外周側には、タイヤ構成部材30を保持するためのタイヤ構成部材保持装置のアーム40が周方向に所定の間隔で複数配置されている。
【0025】
なお、タイヤ構成部材保持装置の基本的な構成は、複数のアーム40を、タイヤ構成部材30の外周部30Aを保持する保持位置(図5に実線で示す位置)と、タイヤ構成部材30の外周部30Aから離間した待機位置(図5に二点鎖線で示す位置)と、へ移動可能とする従来から用いられている周知の構成であるため詳細の説明は省略する。
【0026】
また、タイヤ成型ドラム10におけるドラム本体20の基本的な構成は、複数のセグメントを拡縮可能に設け、ドラム本体20の外周面20Aが拡縮する従来から用いられている周知の構成であるため詳細の説明は省略する。
【0027】
(タイヤ構成部材の成型方法)
図1に示すように、本実施形態では、タイヤ成型ドラム10を正転方向(図4の矢印A方向)へ回転させて、シート状材料12をタイヤ成型ドラム10の外周部の幅方向中央部に巻き付ける。なお、シート状材料12は、図示を省略したサーバーからローラ14、16、18によって図1の矢印D方向へ搬送され、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周面20A上に供給される。
【0028】
このとき、タイヤ成型ドラム10の正転方向(図4の矢印A方向)への回転速度V1に対して、シート状材料12の搬送速度V2を遅くして(V1>V2)、シート状材料12にテンションを作用させる。これによって、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周部20Aに形成された刺状突起24の先端24Aが、シート状材料12の裏面12Aに刺さると共に、刺状突起24がシート状材料12に食い込む。
【0029】
次に、タイヤ成型ドラム10を正転させつつシート状材料12の供給を続けると、タイヤ成型ドラム10の外周面に沿ってシート状材料12が巻き付けられる。そして、タイヤ成型ドラム10を略1回転させ、シート状材料12の後端部を、既にタイヤ成型ドラム10に巻き付けられたシート状材料12の先端部に載置させる。この状態でシート状材料12の先端部と後端部とをステッチャーロール等を用いて接合すると、図2に示すように、タイヤ成型ドラム10上に円筒状のタイヤ構成部材30が成型される。
【0030】
次に、図5に示すように、タイヤ構成部材保持装置のアーム40を待機位置(図5に二点鎖線で示す位置)から保持位置(図5に実線で示す位置)へ移動させて、タイヤ構成部材30を保持する。この状態で、タイヤ成型ドラム10を逆転方向(図5の矢印B方向)へ回転させると同時に、ドラム本体20の外周面20Aを回転軸22に接近する方向(図5の矢印C方向)へ縮径する。これにより、図6に示すように、タイヤ構成部材30の裏面からタイヤ成型ドラム10の刺状突起24が抜ける。
【0031】
次に、タイヤ構成部材保持装置のアーム40によって保持されたタイヤ構成部材30を、タイヤ成型ドラム10に対して、タイヤ成型ドラム10の回転軸22の軸方向へ移動させて、タイヤ構成部材30をタイヤ成型ドラム10から取り外す。
【0032】
(作用・効果)
本実施形態では、タイヤ成型ドラム10を正転方向へ回転させながらタイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周面20Aにシート状材料12を巻き付けることで、タイヤ成型ドラム10の刺状突起24がシート状材料12に刺さり、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周面20Aにシート状材料12を保持できる。このため、タイヤ成型ドラム10からのシート状材料12のずれや落下を容易に防止できる。
【0033】
また、本実施形態では、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周面20Aにタイヤ成型ドラム10の正転方向へ傾斜している刺状突起24が立設されている。このため、作動位置と休止位置との間を移動する係止爪によってシート状材料をドラムに保持するような従来技術に比べて、タイヤ成型ドラム10の構成が簡単になりコストダウンになる。
【0034】
また、本実施形態では、図5及び図6に示すように、タイヤ成型ドラム10の径を縮小させながらタイヤ成型ドラム10を逆転方向へ回転させて、タイヤ構成部材30から刺状突起24を抜くことで、タイヤ成型ドラム10からタイヤ構成部材30を取り外すことができる。このため、タイヤ構成部材30とタイヤ成型ドラム10とが密着することが無く、タイヤ構成部材30をタイヤ成型ドラム10から容易に取り外すことができる。
【0035】
また、本実施形態では、シート状材料12を、図1に破線で示すように、タイヤ赤道面に対して傾斜する複数本のコード40を有し、これらのコード40をゴム被覆した交錯ベルトとすることができる。このため、タイヤ構成部材30としての交錯ベルト層を容易に成型できる。なお、シート状材料12は交錯ベルトに限定されない。
【0036】
(その他の実施形態)
以上、実施形態を挙げて本発明の実施の形態を説明したが、これらの実施形態は一例であり、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲がこれらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。例えば、上記実施形態では、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20の外周面20Aに、円錐形状の刺状突起24を形成したが、刺状突起24の形状は、円錐形状に限定されず、円柱の先端部が尖った針形状等の他の形状としてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、タイヤ成型ドラム10のドラム本体20における外周面20Aの両端部を除く全周に複数の刺状突起24を形成したが、これに代えて、複数の刺状突起24をドラム本体20における外周面20Aにドラム本体20の幅方向に所定の間隔を開けてリング状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
10 タイヤ成型ドラム
12 シート状材料
20 ドラム本体
20A ドラム本体の外周面
24 刺状突起
30 タイヤ構成部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に正転方向へ傾斜している複数の刺状突起を備えたタイヤ成型ドラムを、前記正転方向へ回転させながら前記タイヤ成型ドラムの外周面にシート状材料を巻き付けると共に、前記シート状材料に前記複数の刺状突起を刺して前記タイヤ成型ドラムの外周面に前記シート状材料を保持するタイヤ構成部材の成型方法。
【請求項2】
前記シート状材料の両端部を接合してタイヤ構成部材を成型した後、前記タイヤ構成部材を保持した状態で前記タイヤ成型ドラムの径を縮小させながら前記タイヤ成型ドラムを逆転方向へ回転させて、前記タイヤ構成部材から前記複数の刺状突起を抜き、前記タイヤ成型ドラムから前記タイヤ構成部材を取り外す請求項1に記載のタイヤ構成部材の成型方法。
【請求項3】
前記シート状材料は、タイヤ赤道面に対して傾斜する複数本のコードをゴム被覆してなる交錯ベルトである請求項1または請求項2に記載のタイヤ構成部材の成型方法。
【請求項4】
正転逆転が可能なドラム本体と、
前記ドラム本体の外周面の周方向全域に立設され前記正転方向へ傾斜している複数の刺状突起と、
を有するタイヤ成型ドラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−45737(P2012−45737A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187681(P2010−187681)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】