説明

タイヤ構成部材の折返し方法および装置

【課題】省人化を図りながら折返しアーム42の半径方向内側限への揺動を確実とする。
【解決手段】折返しアーム42の揺動位置を検出する検出センサ61と、前記検出センサ61からの検出結果に基づき折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する判定手段とを備えているため、隣接する折返しアーム42同士の干渉等により折返しアーム42が半径方向内側限まで復帰していない場合、これを確実に検出センサ61、判定手段が認識して所定の対応をとることができ、しかも、この際、監視する作業者は不要であるので、省人化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビードより軸方向両外側に位置するタイヤ構成部材の折返し部を、半径方向外側に膨出変形した本体部に沿って折返すタイヤ構成部材の折返し方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤ構成部材の折返し方法および装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−319598号公報
【0004】
このものは、対をなすビード間において半径方向外側に膨出変形した本体部を有するタイヤ構成部材の軸方向に移動可能で、前記ビードの軸方向両外側に設置された一対の可動体と、各可動体に基端部を中心として半径方向に揺動できるよう連結され、タイヤ構成部材に向かって延在するとともに、周方向に離れて配置された複数の折返しアームと、前記折返しアームに半径方向内側に向かう付勢力を常時付与する付与部材と、各折返しアームの先端部に回転可能に支持された複数の折返しローラと、各可動体をタイヤ構成部材に接近するよう移動させることにより、折返しローラを前記ビードより軸方向両外側に位置するタイヤ構成部材の折返し部に転がり接触させながら、折返しアームを前記付勢力に対抗して半径方向外側に揺動させることで、前記折返し部を本体部に沿って折返す駆動機構とを備えたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、前述のような折返し装置により折返し部が折返されたタイヤ構成部材は、その後、中心軸回りに回転されながら前記折返し部に対し回転可能なステッチングローラが押し付けられることで、該折返し部に対するステッチングが行われ、折返し部と本体部との間に残留しているエアが排出されるが、前述した折返しアームが、例えば隣接する折返しアーム同士の干渉、異物の挟み込み等により、半径方向内側限まで復帰していないと、前記ステッチング作業時にステッチングローラが折返しアームに接触することがある。
【0006】
このような事態を避けるため、従来においては、作業者が折返し装置の作動状況を常時監視し、前述のような接触事故が発生しそうな場合には、折返し装置を停止して折返しアームを半径方向内側限まで復帰させていたが、このように作業者によって常時監視を行うと、作業者を折返し装置に配置する必要があるため、人件費が高額となり、また、作業者の熟練度が低いと監視に失敗することがあるという課題があった。
【0007】
この発明は、省人化を図りながら折返しアームの半径方向内側限への揺動を確実とすることができるタイヤ構成部材の折返し方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、第1に、円筒状のタイヤ構成部材を対をなすビード間に位置する本体部と、これらビードより軸方向両外側に位置する折返し部とに区画するとともに、該本体部を半径方向外側に膨出変形させる工程と、前記ビードの軸方向両外側に設置された一対の可動体を駆動機構によりタイヤ構成部材に接近するよう軸方向に移動させることにより、基端部が各可動体に連結され、タイヤ構成部材に向かって延在するとともに、周方向に離れて配置された複数の折返しアームを、付与部材から前記折返しアームに常時付与されている半径方向内側に向かう付勢力に対抗して、その基端部を中心として半径方向外側に揺動させながら、該折返しアームの先端部に回転可能に支持された複数の折返しローラを折返し部に転がり接触させることで、前記折返し部を本体部に沿って折返す工程と、駆動機構により可動体をタイヤ構成部材から離隔するよう移動させることで、折返しアームを付与部材による付勢力により半径方向内側に揺動させるとともに、検出センサにより折返しアームの揺動位置を検出し、該検出センサからの検出結果に基づいて判定手段により折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する工程とを備えたタイヤ構成部材の折返し方法により、達成することができる。
【0009】
第2に、対をなすビード間において半径方向外側に膨出変形した本体部を有するタイヤ構成部材の軸方向に移動可能で、前記ビードの軸方向両外側に設置された一対の可動体と、各可動体に基端部を中心として半径方向に揺動できるよう連結され、タイヤ構成部材に向かって延在するとともに、周方向に離れて配置された複数の折返しアームと、前記折返しアームに半径方向内側に向かう付勢力を常時付与する付与部材と、各折返しアームの先端部に回転可能に支持された複数の折返しローラと、各可動体をタイヤ構成部材に接近するよう移動させることにより、折返しローラを前記ビードより軸方向両外側に位置するタイヤ構成部材の折返し部に転がり接触させながら、折返しアームを前記付勢力に対抗して半径方向外側に揺動させることで、前記折返し部を本体部に沿って折返す駆動機構と、前記折返しアームの揺動位置を検出する検出センサと、前記検出センサからの検出結果に基づき折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する判定手段とを備えたタイヤ構成部材の折返し装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明においては、折返しアームの揺動位置を検出する検出センサと、前記検出センサからの検出結果に基づき折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する判定手段とを備えているため、隣接する折返しアーム同士の干渉等により折返しアームが半径方向内側限まで復帰していない場合、これを確実に検出センサ、判定手段が認識して所定の対応をとることができ、しかも、この際、監視する作業者は不要であるので、省人化を図ることができる。
【0011】
また、タイヤ構成部材の種類に変更があった場合、折返しアームの半径方向内側限の位置が変化するが、この場合でも、請求項2に記載のように構成すれば、基準値を作業者が再入力する必要がなく、しかも、サイズのばらつきにも問題なく対処することができる。さらに、請求項3に記載のように構成すれば、誤検出や折返しアーム同士の干渉等が自然に修復した場合における装置の停止を回避することができる。また、請求項5に記載のように構成すれば、折返しアームの揺動位置を高精度で検出することができる。さらに、請求項6に記載のように構成すれば、小型、安価でありながら高精度で折返しアームの揺動位置を検出することができる。また、請求項7に記載のように構成すれば、検出センサによる検出位置が弾性バンド、折返しローラからほぼ等距離離れているため、折返しアームが半径方向内側限から半径方向外側にある程度揺動した位置で停止しても、検出センサがこれら弾性バンド、折返しローラを検出するようなことはなく、誤検出を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の実施形態1を示す一部がブロックで描かれた概略平面図である。
【図2】折返しアームが拡開状態のときの図1のI−I矢視断面図である。
【図3】折返しアームが閉止状態のときの図2のII−II矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、11は乗用車やバス・トラック等に装着される空気入りタイヤ用のグリーンタイヤを成形するタイヤ成形ドラムであり、このタイヤ成形ドラム11は水平な中空の主軸12を有し、この主軸12は図示していない駆動部から駆動力を受けて軸線回り回転することができる。前記主軸12内には該主軸12と同軸で該主軸12と別個に駆動回転されるねじ軸13が遊嵌され、このねじ軸13の軸方向両側部外周には、それぞれ逆ねじであるおねじ14が形成されている。15はねじ軸13のおねじ14にそれぞれ螺合するナット16が固定された連結ブロックであり、該連結ブロック15は主軸12に形成され軸方向に延びる複数のスリット17を貫通している。
【0014】
21は前記主軸12の軸方向両側部外側にそれぞれ軸方向に移動可能に嵌合された略円筒状のスライダであり、これらのスライダ21には前記連結ブロック15がそれぞれ連結されている。この結果、これらのスライダ21は前記ねじ軸13が回転すると、逆ねじであるおねじ14によって逆方向に等距離だけ軸方向に移動し、互いに接近離隔する。前記スライダ21の軸方向内端部にはそれぞれ半径方向に延びる複数のガイド溝22が周方向に離れて形成され、各ガイド溝22にはビードロックセグメント23が半径方向に移動可能に挿入されている。これらのビードロックセグメント23の半径方向外端部には軸方向外側に向かって突出する受け24がそれぞれ形成され、これら受け24の弧状を呈する傾斜面には後述する折返しローラが載置可能である。
【0015】
27は各スライダ21内に形成されたシリンダ室であり、各シリンダ室27は該シリンダ室27内に摺動可能に収納されたピストン28によって内側室27aと外側室27bとに仕切られている。前記ピストン28の軸方向内側に延びる延在部28aには複数のリンク29の内端部が連結され、これらリンク29の外端部は前記ビードロックセグメント23に連結されている。そして、前記内側室27aに図示していない流体源から高圧流体が供給されると、ピストン28は軸方向外側に移動してビードロックセグメント23を半径方向内側に移動させ、一方、外側室27bに高圧流体が供給されると、ピストン28は軸方向内側に移動してビードロックセグメント23を半径方向外側に移動させる。
【0016】
Gはグリーンタイヤを成形する途中のタイヤ中間体であり、このタイヤ中間体Gは、例えば、補強コードが埋設されたカーカス層32および該カーカス層32の両端部にプリセットされたサイドトレッド33からなるタイヤ構成部材34と、フィラー35が装着されたリング状を呈する一対のビード36とから構成されている。そして、このようなタイヤ中間体Gは、例えば、概略以下のようにして成形する。即ち、サイドトレッド33がプリセットされた円筒状を呈するカーカス層32の外側にフィラー35付きのビード36をセットしたグリーンケースを、タイヤ成形ドラム11に搬入してその外側に嵌合するとともに、ビードロックセグメント23を前述のように半径方向外側に同期移動させてビード36を半径方向内側から把持するが、これにより、前記タイヤ構成部材34はビード36間に位置する本体部34aと、ビード36より軸方向両外側に位置する折返し部34bとに区画される。
【0017】
その後、タイヤ構成部材34の本体部34a内にエアを供給しながら、ねじ軸13を回転させてスライダ21、ビードロックセグメント23を一体的に軸方向内側に(軸方向中央に向かって)移動させることで互いに接近させると、対をなすビード36間において本体部34aは半径方向外側に膨出し子午線断面が略弧状となるよう変形する。なお、このとき、ビード36より軸方向両外側の折返し部34bは円筒状のままであるが、その後、後述のように本体部34aに沿って折り返され、前記タイヤ中間体Gが成形される。なお、この実施形態においては、ビード36を一対配置したが、2対以上配置してもよく、これらビード36は対をなしていればよい。また、この発明においては、前記タイヤ構成部材34にサイドトレッド33が含まれてなくてもよいが、この場合には、後述する折返し部34bの折返し後に、サイドトレッド33を本体部34aの軸方向両外側に貼付けることになる。
【0018】
40は各スライダ21の軸方向中央部外面に形成されたリング状の固定ピストンであり、これら固定ピストン40の外側には前記ビード36の軸方向両外側に設置された略円筒状を呈する一対の可動体41がタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)の軸方向に移動可能に嵌合されている。各可動体41の軸方向外端部には周方向に等角度離れて配置された複数の折返しアーム42の基端部(軸方向外端部)がピン43を介して回動可能に連結されており、この結果、これら折返しアーム42は前記可動体41との連結点(ピン43)である基端部を中心として半径方向に揺動することができる。
【0019】
そして、これらの折返しアーム42は前記基端部(ピン43)からタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)に向かってほぼ軸方向に延在するとともに、その先端部(軸方向内端部)には本体部34aの外周に対する接線に平行な軸線回りに回転する複数(折返しアーム42と同数)の折返しローラ44がフリー回転可能に支持されている。45は各可動体41にそれぞれ連結された全ての折返しアーム42の外側に嵌合されるとともに、該折返しアーム42の長手方向中央部に係止されたリング状の弾性バンド、例えばゴムバンド、スプリング等からなる少なくとも1本、ここでは2本の付与部材であり、これらの付与部材45は折返しアーム42に半径方向内側に向かう付勢力を常時付与して該折返しアーム42を閉止方向に揺動させる。
【0020】
ここで、前記スライダ21と可動体41との間には円筒状のシリンダ室47が形成されているが、これらのシリンダ室47は固定ピストン40によって内側室47aと外側室47bとに仕切られている。そして、外側室47bに図示していない流体源から高圧流体が供給されて、可動体41が図2に仮想線で示す軸方向外側限まで移動すると、折返しアーム42は付与部材45の付勢力(弾性力)により主軸12とほぼ平行となるまで半径方向内側に閉止するとともに、折返しローラ44は前記受け24の弧状をした傾斜面に係合し、ビードロックセグメント23により半径方向内側から支持される。
【0021】
一方、前記流体源から高圧流体が内側室47aに供給されると、可動体41、折返しアーム42は一体的にタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)に接近するよう軸方向内側に同期移動するが、このとき、各折返しアーム42は基端部を中心として付与部材45の付勢力に対抗しながら半径方向外側に拡開するよう揺動する一方、前記折返しローラ44は折返し部34bに転がり接触しながら半径方向外側に移動し、これにより、ビード36より軸方向外側に位置するタイヤ構成部材34の折返し部34bはフィラー35を間に介在させながら本体部34aの外側に該本体部34aに沿って折り返され、タイヤ中間体Gが成形される。このとき、前記付与部材45は折返しアーム42の半径方向外側への揺動により引き伸ばされるため、その弾性復元力(付勢力)が折返しアーム42に付与されて該折返しアーム42を半径方向内側に揺動させようとし、これにより、前記折返しローラ44は折返し部34bに押し付けられ、折返しローラ44の転動経路における折返し部34bを本体部34a、フィラー35に圧着させる。
【0022】
前述した固定ピストン40、シリンダ室47、流体源は全体として、各可動体41をタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)に接近するよう移動させることにより、折返しローラ44を折返し部34bに転がり接触させながら、折返しアーム42を付与部材45の付勢力に対抗して半径方向外側に揺動させることで、ビード36より軸方向外側に位置するタイヤ構成部材34の折返し部34bを本体部34aに沿って折り返す駆動機構48を構成する。なお、この発明においては、前記駆動機構として、ねじ機構、ラック・ピニオン機構等を用いてもよい。
【0023】
また、この発明においては、各スライダ21の軸方向内端部に、タイヤ構成部材34の折返し部34bが折り返されるとき、膨張して本体部34aの軸方向内側から前記折返しローラ44による押付け力に対抗して突っ張る内部ブラダを配置したり、あるいは、折返しローラ44と同期して半径方向外側に移動することで、本体部34aの軸方向内側から前記折返しローラ44による押付け力に対抗して突っ張る剛体から構成されたコア体を配置するようにしてもよく、このようにすれば、前記折返し部34bの折返しをより確実とすることができる。
【0024】
さらに、この発明においては、前記折返しアーム42が半径方向外側に揺動して拡開するに従い付与部材45を軸方向外側に移動させる一方、折返しアーム42が半径方向内側に揺動して閉止するに従い付与部材45を軸方向内側に移動させるようにしてもよく、このようにすれば、付与部材45の付勢力(弾性復元力)による折返しローラ44の折返し部34bに対する押付け力を均一化することができ、これにより、折返し部34bの折返し終盤において折返しローラ44の押付け力が過大となり折返しローラ44の条痕が折返し部34bの外表面に形成される事態を容易に抑制することができる。
【0025】
51はタイヤ中間体Gの軸方向両外側に設置された一対のステッチング手段であり、これらステッチング手段51は軸方向および半径方向に移動可能な支持プレート52をそれぞれ有し、これら支持プレート52にはタイヤ中間体Gの外表面に外周面が転がり接触することができるステッチングローラ53が回転可能に支持されている。そして、前述のようにタイヤ構成部材34の折返し部34bが折り返されてタイヤ中間体Gが成形されると、前記主軸12、スライダ21、タイヤ中間体Gが一体的に回転する一方、ステッチング手段51が作動することでステッチングローラ53がタイヤ中間体Gの折返し部34bに押し付けられて回転しながら半径方向外側に移動し、これにより、前記折返し部34bとフィラー35、本体部34aとの間に残留しているエアが排出される。
【0026】
ここで、前述のようにタイヤ中間体Gが成形された後、ステッチングのために主軸12、スライダ21が回転すると、この回転の遠心力により折返しアーム42がピン43を中心として半径方向外側に揺動しようとするが、このような折返しアーム42の揺動を許容すると、前記ステッチング手段51のステッチングローラ53等と折返しアーム42とが干渉し、作業を継続することができない。このため、この実施形態においては、前述した各スライダ21の軸方向外端部に半径方向外側に向かって突出する環状の外側フランジ56をそれぞれ一体形成し、これら外側フランジ56を可動体41が軸方向外側限まで移動したときの折返しアーム42の軸方向外端より軸方向外側に位置させるとともに、前記外側フランジ56の軸方向内側面に主軸12と同軸で軸方向内側に向かって突出するリング状のストッパー体57が固定し、一方、前記ストッパー体57に対向する各折返しアーム42の軸方向外端部に軸方向外側に向かって突出するストッパー体58をそれぞれ形成している。
【0027】
そして、前記ストッパー体58の半径方向内側面は、可動体41、折返しアーム42が軸方向外側限まで移動して折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動したとき、ストッパー体57の半径方向外側面に接触するが、このようにストッパー体58がストッパー体57に接触すると、前述のようにステッチング手段51によるステッチング作業の際、主軸12、スライダ21等が回転してもストッパー体57がストッパー体58の半径方向内側への移動、即ち折返しアーム42の半径方向外側への揺動を強力に規制するため、折返しアーム42は半径方向内側限に保持され続け、ステッチング手段51のステッチングローラ53等と折返しアーム42との干渉が確実に防止される。しかしながら、前述のようなストッパー体57、58を設けると、例えば、隣接する折返しアーム42同士の干渉、異物の挟み込み、タイヤ中間体Gの内圧のばらつき等により、いずれかの折返しアーム42が半径方向内側限への揺動の途中で停止して半径方向内側限まで復帰できないときには、該折返しアーム42のストッパー体58がストッパー体57に引っ掛かって可動体41および全ての折返しアーム42の軸方向外側限への移動を途中(直前)で停止させる。
【0028】
このように可動体41が軸方向外側限に到達できず途中で停止すると、折返しローラ44は受け24より上方に位置することになり、この結果、全ての折返しアーム42は半径方向内側限に到達する直前で、即ち若干拡開している状態で揺動が停止する。そして、このような状態で前述したステッチング作業が開始されると、前記折返しアーム42とステッチング手段51のステッチングローラ53とが干渉してしまうため、この実施形態においては、折返しアーム42の揺動位置を検出する検出センサ61を設けるとともに、前記検出センサ61からの検出結果に基づき折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する、例えばパソコン等の判定手段62を設けたのである。
【0029】
この結果、隣接する折返しアーム42同士の干渉等により折返しアーム42が半径方向内側限まで復帰していない場合、これを確実に検出センサ61、判定手段62が認識して以下のような所定の対応をとることができ、しかも、この際、監視する作業者も不要となって、省人化を図ることができる。ここで、前記判定手段62による判定作業で不可の判定が出たときには、該判定手段62から警報器63に不可信号が出力され、該警報器63が警報音の発生、警告灯の点灯を行って作業者に注意を喚起するとともに、タイヤ成形ドラム11、ステッチング手段51の作動を緊急停止させる。なお、前述のように判定手段62による判定作業で不可の判定が出たとき、該判定作業から所定時間経過後に判定手段62により再度同一の判定作業を行うことが好ましい。その理由は、このように判定作業を2度繰り返し行うようにすれば、誤検出や折返しアーム42同士の干渉等が自然に修復した場合における装置の停止を回避することができるからである。
【0030】
なお、この場合には、2回の判定作業が共に不可であると、前述と同様にタイヤ成形ドラム11、ステッチング手段51の作動を停止させることになる。一方、判定手段62による判定作業で可の判定が出たときには、次の作業、ここではステッチング作業が開始する。ここで、前記検出センサ61は折返しアーム42に対応してタイヤ中間体Gの両側にそれぞれ少なくとも1個、ここでは1個ずつ配置するとともに、各検出センサ61の検出ライン上に前記折返しアーム42のうちのいずれか1本とタイヤ構成部材34の軸線(前記タイヤ構成部材34を支持しているタイヤ成形ドラム11の主軸12の回転軸と同軸である)との双方を位置させている。
【0031】
これは前述のように少なくとも1本の折返しアーム42が半径方向内側限に復帰できない場合でも、他の全ての折返しアーム42はストッパー体58がストッパー体57に引っ掛かることで同様に半径方向内側限に復帰できないため、タイヤ中間体Gの両側に配置されている折返しアーム42のうちの、いずれか1本の折返しアーム42の揺動位置を検出すれば、他の折返しアーム42が半径方向内側限に復帰しているか否かを検出することができ、装置全体の構造を簡単とすることができるからである。また、前述のように各検出センサ61の検出ライン上にいずれかの折返しアーム42とタイヤ構成部材34の軸線との双方を位置させるようにすれば、折返しアーム42の揺動位置を高精度で検出することができる。なお、このような検出センサ61は、例えば、前記ステッチング手段51の図示していない固定フレームにブラケット64を介して取り付けることで、いずれかの折返しアーム42の半径方向外側に設置すればよい。
【0032】
また、前述した検出センサ61としては、検出センサ61と折返しアーム42との間の静電容量を計測することで折返しアーム42の揺動位置を検出する静電容量センサ、検出センサ61から折返しアーム42に照射したレーザ光が折返しアーム42で反射して検出センサ61に帰還するまでの時間を計測することで、折返しアーム42の揺動位置を検出するレーザセンサ、検出センサ61から折返しアーム42に照射した超音波が折返しアーム42で反射して検出センサ61に帰還するまでの時間を計測することで、折返しアーム42の揺動位置を検出する超音波センサ等を用いることができるが、その中でも、小型、安価でありながら高精度で折返しアーム42の揺動位置を検出することができる超音波センサが好適である。
【0033】
さらに、前述のように付与部材45が全ての折返しアーム42の外側に嵌合された伸縮する弾性バンドであるとき、該弾性バンドと折返しローラ44との中間部における折返しアーム42を検出センサ61によって検出することが好ましい。その理由は、前記検出センサ61による検出位置が付与部材45(弾性バンド)、折返しローラ44からほぼ等距離離れているため、折返しローラ44が半径方向内側限から半径方向外側にある程度揺動した位置で停止しても、検出センサ61がこれら付与部材45(弾性バンド)、折返しローラ44を検出するようなことはなく、この結果、誤検出を確実に防止することができるからである。
【0034】
また、前述のようなタイヤ成形ドラム11においては成形されるタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)の種類が必要に応じて変更されるが、このようにタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)の種類に変更があると、通常、折返しアーム42の半径方向内側限の位置が変化する。このため、前述のようにタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)の種類に変更がある度に、即ち変更のあったタイヤ構成部材34の折返し作業の開始直前に、検出センサ61により半径方向内側限に位置している折返しアーム42の揺動位置を検出し、該検出結果を基準値として判定手段62の記憶部に記憶するとともに、該基準値と、折返しアーム42の半径方向内側への揺動時における検出センサ61からの検出結果とを判定手段62により比較することで、折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動したか否かを判定手段62により判定することが好ましい。このようにすれば、タイヤ構成部材34の種類に変更があった場合でも基準値を作業者が再入力する必要がなく、しかも、サイズのばらつきにも問題なく対処することができる。なお、この発明においては、同一種類であっても新規のタイヤ構成部材34がタイヤ成形ドラム11に搬入される度に、検出センサ61により半径方向内側限に位置している折返しアーム42の揺動位置を検出し、該検出結果を基準値として判定手段62の記憶部に記憶するようにしてもよい。
【0035】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
前述のようなタイヤ成形ドラム11を用いてグリーンタイヤを成形する場合には、まず、円筒状をしたタイヤ構成部材34をフィラー35付きのビード36とともにタイヤ成形ドラム11に搬送して、該タイヤ成形ドラム11の外側に嵌合する。次に、ビードロックセグメント23を拡径してビード36を内側から把持するが、このとき、前記タイヤ構成部材34は本体部34aと折返し部34bとに区画される。次に、本体部34a内にエアを供給しながらスライダ21、ビードロックセグメント23を互いに接近させることで、本体部34aを断面略弧状となるまで半径方向外側に膨出変形させるが、このとき、折返し部34bは円筒状のままである。
【0036】
次に、可動体41、折返しアーム42を駆動機構48によりタイヤ構成部材34に接近するよう軸方向内側に移動させる。このとき、各折返しアーム42は基端部(ピン43)を中心として半径方向外側に拡開するよう揺動するとともに、折返しローラ44は折返し部34bに転がり接触しながら半径方向外側に移動し、折返し部34bはビード36回りにフィラー35、本体部34aの外側に沿って折り返され、タイヤ中間体Gが成形される。このとき、各折返しローラ44は折返しアーム42を介して付与部材45から付与された付勢力により折返し部34bに押し付けられるため、折返しローラ44の転動経路上における折返し部34bはフィラー35、本体部34aに強力に圧着される。
【0037】
このようにして折返し部34bの折返しが終了すると、駆動機構48が作動し可動体41、折返しアーム42はタイヤ中間体G(タイヤ構成部材34)から離隔するよう軸方向外側に移動する。このとき、各折返しアーム42は付与部材45の付勢力により基端部(ピン43)を中心として半径方向内側に閉止するよう揺動するとともに、折返しローラ44は折返し部34bに転がり接触しながら半径方向内側に移動する。これと同時にステッチング手段51のステッチングローラ53がステッチング開始位置に向かって移動するが、このとき、両動作が同時に行われるため、作業能率が向上する。このような折返しアーム42の揺動の途中で、隣接する折返しアーム42同士の干渉等により、いずれかの折返しアーム42が半径方向内側限まで復帰できないときには、該折返しアーム42のストッパー体58がストッパー体57に引っ掛かって可動体41および全ての折返しアーム42の軸方向外側への移動が途中(軸方向外側限の直前)で停止し、これにより、全ての折返しアーム42は半径方向内側限に到達する直前で、即ち若干拡開している状態で揺動が停止する
【0038】
このような折返しアーム42の揺動時、各検出センサ61は特定の折返しアーム42の揺動位置を検出しているが、前述のように折返しアーム42の半径方向内側への揺動が途中で停止すると、折返しアーム42は規定の時間となっても半径方向内側限まで到達できないので、検出センサ61は折返しアーム42が半径方向内側限より半径方向外側の位置に留まっていることを検出し、その検出結果を判定手段62に出力する。この結果、判定手段62は検出センサ61からの検出結果に基づき折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動していないと、即ち不可と判定するが、このように不可の判定を行った場合には、所定時間経過後に再度検出センサ61からの検出結果に基づいて判定を行い、即ち、判定作業を2回繰り返し行い、2回共不可の判定であると、警報器63に不可信号を出力して警報音を発生させるとともに、警告灯を点灯する一方、タイヤ成形ドラム11、ステッチング手段51の作動を緊急停止させる。
【0039】
一方、判定手段62による判定作業で可の判定が出たときには、判定手段62からステッチング手段51に開始信号が出力される。このように検出センサ61により折返しアーム42の揺動位置を検出し、その検出結果を判定手段62に出力するが、このとき、判定手段62は前記検出結果に基づいて折返しアーム42が半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する。そして、前述のように可の判定が出ると、主軸12、スライダ21、タイヤ中間体Gが一体的に回転する一方、ステッチング手段51が作動してステッチング開始位置のステッチングローラ53がタイヤ中間体Gの折返し部34bに押し付けられながら半径方向外側に移動する。これにより、ステッチングローラ53は折返し部34bに対してステッチングを施し、折返し部34bとフィラー35、本体部34aとの間に残留しているエアを排出する。
【0040】
このとき、ストッパー体58の半径方向内側面がストッパー体57の半径方向外側面に接触しているため、ストッパー体57がストッパー体58の半径方向内側への移動、即ち折返しアーム42の半径方向外側への揺動を強力に規制し、ステッチング手段51のステッチングローラ53等と折返しアーム42との干渉が確実に防止される。次に、前記タイヤ中間体Gの外側に円筒状のベルト・トレッドバンドを搬入するとともに、スライダ21、ビードロックセグメント23をさらに軸方向内側に移動させ互いに接近させる。これにより、タイヤ中間体Gは略トロイダル状に変形するとともに、その半径方向外端部が前記ベルト・トレッドバンドの内周に圧着し、グリーンタイヤが成形される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、タイヤ構成部材の折返し部を半径方向外側に膨出変形した本体部に沿って折返す産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
34…タイヤ構成部材 34a…本体部
34b…折返し部 36…ビード
41…可動体 42…折返しアーム
44…折返しローラ 45…付与部材
48…駆動機構 61…検出センサ
62…判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のタイヤ構成部材を対をなすビード間に位置する本体部と、これらビードより軸方向両外側に位置する折返し部とに区画するとともに、該本体部を半径方向外側に膨出変形させる工程と、前記ビードの軸方向両外側に設置された一対の可動体を駆動機構によりタイヤ構成部材に接近するよう軸方向に移動させることにより、基端部が各可動体に連結され、タイヤ構成部材に向かって延在するとともに、周方向に離れて配置された複数の折返しアームを、付与部材から前記折返しアームに常時付与されている半径方向内側に向かう付勢力に対抗して、その基端部を中心として半径方向外側に揺動させながら、該折返しアームの先端部に回転可能に支持された複数の折返しローラを折返し部に転がり接触させることで、前記折返し部を本体部に沿って折返す工程と、駆動機構により可動体をタイヤ構成部材から離隔するよう移動させることで、折返しアームを付与部材による付勢力により半径方向内側に揺動させるとともに、検出センサにより折返しアームの揺動位置を検出し、該検出センサからの検出結果に基づいて判定手段により折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する工程とを備えたことを特徴とするタイヤ構成部材の折返し方法。
【請求項2】
前記タイヤ構成部材の種類に変更がある度に検出センサにより半径方向内側限に位置している折返しアームの揺動位置を検出して基準値とするとともに、該基準値と折返しアームの半径方向内側への揺動時における検出センサからの検出結果とを比較することで、折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定するようにした請求項1記載のタイヤ構成部材の折返し方法。
【請求項3】
前記判定手段による判定作業で不可の判定が出たとき、該判定作業から所定時間経過後に再度同一の判定作業を行うようにした請求項1または2記載のタイヤ構成部材の折返し方法。
【請求項4】
対をなすビード間において半径方向外側に膨出変形した本体部を有するタイヤ構成部材の軸方向に移動可能で、前記ビードの軸方向両外側に設置された一対の可動体と、各可動体に基端部を中心として半径方向に揺動できるよう連結され、タイヤ構成部材に向かって延在するとともに、周方向に離れて配置された複数の折返しアームと、前記折返しアームに半径方向内側に向かう付勢力を常時付与する付与部材と、各折返しアームの先端部に回転可能に支持された複数の折返しローラと、各可動体をタイヤ構成部材に接近するよう移動させることにより、折返しローラを前記ビードより軸方向両外側に位置するタイヤ構成部材の折返し部に転がり接触させながら、折返しアームを前記付勢力に対抗して半径方向外側に揺動させることで、前記折返し部を本体部に沿って折返す駆動機構と、前記折返しアームの揺動位置を検出する検出センサと、前記検出センサからの検出結果に基づき折返しアームが半径方向内側限まで揺動したか否かを判定する判定手段とを備えたことを特徴とするタイヤ構成部材の折返し装置。
【請求項5】
前記検出センサの検出ライン上にいずれかの折返しアームとタイヤ構成部材の軸線との双方を位置させるようにした請求項4記載のタイヤ構成部材の折返し装置。
【請求項6】
前記検出センサを、折返しアームの半径方向外側に設置され、折返しアームで反射した超音波が帰還するまでの時間を計測することで、折返しアームの揺動位置を検出する超音波センサから構成した請求項4または5記載のタイヤ構成部材の折返し装置。
【請求項7】
前記付与部材が全ての折返しアームの外側に嵌合された伸縮する弾性バンドであるとき、該弾性バンドと折返しローラとの中間部における折返しアームを検出センサにより検出するようにした請求項4〜6のいずれかに記載のタイヤ構成部材の折返し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−71288(P2013−71288A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210800(P2011−210800)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】