説明

タイヤ用コードおよびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】高温時に高い熱収縮応力を発揮でき、かつ、加熱および冷却を繰り返した際にもその特性が失われることのないタイヤ用コードを提供する。また、これをタイヤに用いることで、タイヤ内部温度が高温状態であるランフラット走行時や高速走行時のみならず、市街地走行時などのタイヤ内部温度が低温状態である低速領域でも良好な操縦安定性が得られる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】鞘部に高剛性ポリマーを配し、芯部に高熱膨張性ポリマーを配した芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードである。フィラメントの、0.02N/dtexの荷重負荷時における伸び率が1.0〜10.0%であり、かつ、25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率が1〜10%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用コードおよびそれを用いた空気入りタイヤ(以下、単に「コード」および「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、芯鞘構造繊維を用いたタイヤ用コードおよびそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用車のタイヤ形状は、タイヤの内圧と、それを支える有機繊維からなる補強材とにより保持されている。近年では、乗用車の重量化やタイヤの高性能化に伴って、タイヤの使用環境が高速かつ高温化してきており、これら苛酷な使用環境に対応して、補強材として、高い剛性を持つ有機繊維が用いられている。
【0003】
しかし、これらタイヤ補強材として用いられる有機繊維のほとんどは熱可塑性樹脂からなるため、高速走行時にタイヤの内部温度が高温になると、これら補強材の剛性は低下することになる。そのため、かかる補強材がカーカスに適用されていると、補強材の剛性の低下に伴いタイヤの横剛性が大きく低下して、操縦安定性の大きな低下を招き、かかる補強材がベルト補強層に適用されていると、補強材の剛性の低下に伴いベルト振動が過大となって、ロードノイズの悪化に繋がり、いずれの場合も、タイヤに求められる性能の大幅な悪化を招くこととなる。また、近年普及が進んでいるランフラットタイヤにおいては、ランフラット走行中にサイド補強ゴムが発熱して、200℃以上の高温に達するが、このときカーカスの補強材が熱可塑性繊維からなるものであると、タイヤの撓みが増大して、早期故障に繋がることとなる。
【0004】
これに対し、カーカスの補強材としてレーヨン等の繊維を用いた場合、かかる繊維は高温下において高弾性であるため高速走行時の撓みを抑制する効果は得られるが、通常走行時においても高弾性であるためタイヤの接地面が十分確保できず、左折右折時にふらつく可能性があった。
【0005】
また、上記の問題を解決するための他の手法としては、有機繊維が加熱された際に、有機繊維を構成する樹脂中の非晶部の分子鎖が折り畳まれることに由来する熱収縮による応力を利用して、タイヤが高温となった際に高温部に発生する応力によって、繊維自体の剛性の軟化を補うことが考えられる。例えば、特許文献1等において、カーカスプライの補強材として、高温での熱収縮率が高いポリケトン繊維コードを用いることで、高温時の締付効果によってタイヤの横剛性を保持して、ランフラット走行時のランフラット耐久性を向上する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−024190号公報(特許請求の範囲等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、高温時に発現する上記のような有機繊維の熱収縮は、基本的に熱履歴が残る非可逆的なものである。そのため、このような有機繊維を用いた場合、タイヤ用コードとして高い熱収縮応力を有していても、これをタイヤに適用すると、その特性がタイヤ生産時の加硫工程における加熱で失われてしまうおそれがあった。また、加硫工程で失われなかったとしても、上記特性は、タイヤが高速走行に伴う高温化と停車時における低温化とを繰り返す間に徐々に失われていくため、このような繰り返しの加熱および冷却によっても高温時における熱収縮特性が失われない補強材が求められていた。
【0008】
そこで本発明の目的は、高温時に高い熱収縮応力を発揮でき、かつ、加熱および冷却を繰り返した際にもその特性が失われることのないタイヤ用コードを提供することにあり、また、これをタイヤに用いることで、タイヤ内部温度が高温状態であるランフラット走行時や高速走行時のみならず、市街地走行時などのタイヤ内部温度が低温状態である低速領域でも良好な操縦安定性が得られる空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、タイヤ用コードの材料として、鞘部に高剛性ポリマー、芯部に高熱膨張性ポリマーを配した芯鞘構造繊維のフィラメントを用い、その伸び率(剛性)およびフィラメント径の膨張率を所定の範囲内とすることで、高温時に高い熱収縮応力を発揮でき、かつ、加熱および冷却を繰り返しても同じ特性を維持できるタイヤ用コードが得られることを見出した。
【0010】
すなわち、熱膨張率の高いポリマーを用いた繊維は、高温時には加熱により熱膨張して体積を増大させるが、こうしたポリマー単体では剛性が低く、また、繊維軸方向にも膨張してしまうために、繊維軸方向において所望の熱収縮応力は得られない。そこで、本発明においては、かかる熱膨張率の高いポリマーを芯鞘構造繊維の芯部に配置し、その外側の鞘部に高剛性ポリマーを配置している。高剛性ポリマーを用いた繊維においては、繊維軸方向に分子鎖が配向しているために、この方向の弾性率は高いが、繊維径方向の弾性率は繊維軸方向に比べて低い。そのため、高剛性ポリマー繊維の膨張する方向は、弾性率の低い繊維径方向のみになる。したがって、かかる芯鞘構造繊維においては、芯部の高熱膨張率ポリマーの熱膨張に伴い、高剛性ポリマーからなる鞘部が、繊維軸方向については膨張せずに繊維径方向について膨張することになる。その結果、芯鞘構造繊維全体として繊維軸方向に大きな収縮力が働くことになるので、これを熱収縮性を有する補強材としてタイヤ用コードに用いることが可能となるのである。
【0011】
すなわち、本発明のタイヤ用コードは、鞘部に高剛性ポリマーを配し、芯部に高熱膨張性ポリマーを配した芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードであって、
前記高剛性ポリマーがポリエチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコールおよびアクリルからなる群から選ばれる1種以上であり、前記高熱膨張性ポリマーがポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、脂肪族ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群から選ばれる1種以上であり、かつ、前記フィラメントの、0.02N/dtexの荷重負荷時における伸び率が1.0〜10.0%であり、かつ、25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率が1〜10%であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明においては、前記フィラメントが、複数本を同時に紡糸して得られたマルチフィラメントからなることが好ましく、前記フィラメントからなるヤーンが、1本ないし複数本にて撚り合わされてなることも好ましい。さらにまた、前記ヤーンを撚糸して得られたコードが、レゾルシン・ホルマリン・ラテックスからなる接着剤で処理されてなることも好ましい。
【0013】
また、本発明の空気入りタイヤは、上記本発明のタイヤ用コードを補強材として用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記構成としたことにより、高温時に高い熱収縮応力を発揮でき、かつ、加熱および冷却を繰り返した際にもその特性が失われることのないタイヤ用コード、および、タイヤ内部温度が高温状態であるランフラット走行時や高速走行時のみならず、市街地走行時などのタイヤ内部温度が低温状態である低速領域でも良好な操縦安定性が得られる空気入りタイヤを実現することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一例を示す幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明のタイヤ用コードは、鞘部に高剛性ポリマーを配し、芯部に高熱膨張性ポリマーを配した芯鞘構造繊維のフィラメントからなるものであり、かかるフィラメントとして、0.02N/dtexの荷重負荷時における伸び率が1.0〜10.0%であって、かつ、25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率、すなわち、加熱の前後におけるフィラメント径の変化率が、1〜10%であるものを用いる点に特徴を有する。
【0017】
タイヤ用コードに上記特定の芯鞘構造繊維のフィラメントを用いたことで、前述したように、環境温度が高温となってフィラメント周辺が加熱され、芯部の高熱膨張性ポリマーが膨張する際に、フィラメントは、繊維軸方向へは膨張せずに繊維径方向へ膨張することとなる。その結果、フィラメントは繊維長としては縮む方向となって、高い熱収縮応力を発揮するものとなる。また、上記芯鞘構造繊維のフィラメントにおいて発現するかかる熱収縮応力は、温度変化に伴う高熱膨張性ポリマーの体積の膨張および収縮に起因するものであるため、加熱および冷却の繰り返しによっても失われることがない。したがって、上記フィラメントにおける熱収縮応力の発現機構は、走行による高温化と停車による冷却を繰り返すタイヤに適用されるタイヤ用コードにおいて、きわめて有効なものであるといえる。
【0018】
本発明において、かかるフィラメントの0.02N/dtexの荷重負荷時における伸び率は、1.0〜10.0%、好適には1〜4%である。上記伸び率が1.0%未満であると、剛性が過大となって、加硫時の拡張に追随できずに食い込みやコード露出が発生し、10.0%を超えると剛性不足となって車重を支えることができず、いずれにおいても本発明の所期の効果が得られない。
【0019】
また、かかるフィラメントの25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率は、1〜10%、好適には2〜7%である。上記膨張率が1%未満であると、タイヤに適用した際、高速走行時における繊維軸方向への収縮力が弱まるため、高速走行時の剛性が上昇せず、操縦安定性の向上に寄与できない。一方、上記膨張率が10%を超えると、タイヤに適用した際、熱収縮により剛性が高くなりすぎて縦ばねの上昇を生じ、乗心地性能が悪化してしまい、また、膨張による応力集中により、コードの破断を招く可能性も生ずる。なお、ここで、25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率を問題とするのは、停車時のタイヤ内部温度が常温(25℃)であるのに対し、高速走行時にはタイヤ内部温度が150℃程度まで達するためである。
【0020】
本発明において、上記芯鞘構造繊維のフィラメントの鞘部を構成する高剛性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、2,6−ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルアルコール(PVA)およびアクリルからなる群から選ばれる1種以上を用いる。特には、2,6−ポリエチレンナフタレートを用いることが、高い剛性を発揮させる上で、最も好ましい。
【0021】
また、上記芯鞘構造繊維のフィラメントの芯部を構成する高熱膨張性ポリマーとしては、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、脂肪族ポリアミド、例えば、ポリアミド6やポリアミド66、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)からなる群から選ばれる1種以上を用いる。特には、鞘部に2,6−ポリエチレンナフタレートを用いた場合の2,6−ポリエチレンナフタレートとの馴染みの良さや、熱膨張率の高さの観点から、ポリブチレンテレフタレートまたはポリトリメチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
【0022】
上記芯鞘構造を有する繊維は、溶融ポリマーを吐出して繊維とする際に用いるノズル穴を2重とすることによって、容易に得ることができる。
【0023】
本発明においては、上記フィラメントとして、複数本を同時に紡糸して得られるマルチフィラメントを用いることで、膨張時にフィラメント同士が物理的に干渉して、ヤーンとしての収縮が増大するとの効果が得られ、好ましい。
【0024】
さらにまた、本発明においては、上記のようにして得られたフィラメントを撚り合わせて用いることで、繊維径の膨張に伴う螺旋半径の増大によって撚りコード長についても縮もうとする力が働くため、さらに高い熱収縮応力が発揮でき、好ましい。
【0025】
本発明においては、上記構造のフィラメントからなるヤーンを、1本ないし複数本にて撚り合わせてタイヤ用コードとすることができる。この場合、上記ヤーンを撚糸して得られたコードは、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス(RFL)からなる接着剤等で適宜処理して、タイヤ製造に供することができる。
【0026】
図1に、本発明の空気入りタイヤの一例の幅方向断面図を示す。図示するように、本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部11と、それに連なる一対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12間に跨るトレッド部13とからなり、これら各部をビード部11内にそれぞれ埋設された一対のビードコア1相互間にわたって補強する1層以上のカーカス2を備えている。また、カーカス2のクラウン部タイヤ半径方向外側には順次、1層以上、図示例では2層のベルト層3a,3bと、1層以上のベルト補強層4,5とが配置されている。本発明のタイヤにおいては、上記本発明のタイヤ用コードを、カーカスまたはベルト補強層の補強材として用いる。
【0027】
上記本発明のタイヤ用コードをカーカスの補強材として用いた空気入りタイヤにおいては、高速走行に伴ってタイヤ内部温度が高温化しても、カーカス材に高い熱収縮応力が発生することによりタイヤの横剛性が低下せず、良好な操縦安定性を維持することが可能となる。特に、上記本発明のタイヤ用コードをサイド補強タイプのランフラットタイヤのカーカス材として用いた場合には、ランフラット走行時にサイド補強ゴムが軟化しても、上記タイヤ用コードの熱収縮応力によってタイヤの撓みを抑制できるので、高いランフラット耐久性能を発揮することが可能となる。
【0028】
また、上記本発明のタイヤ用コードをベルト補強層の補強材として用いた空気入りタイヤにおいては、高速走行によってタイヤトレッド部が高温となっても、上記タイヤ用コードの熱収縮応力によってベルト振動を抑えて、ロードノイズの悪化を抑制することが可能となる。
【0029】
さらに、上記本発明のタイヤ用コードの熱収縮応力は高温時にのみ発現するものであるので、これを用いた本発明のタイヤにおいては、タイヤ内部温度が高温状態であるランフラット走行時や高速走行時のみならず、市街地走行時などのタイヤ内部温度が低温状態である低速領域でも、良好な操縦安定性が得られるものである。すなわち、上記タイヤ用コードをカーカス材として用いることで、タイヤ内部温度が上昇する高速走行時等においては、芯鞘構造繊維の芯部体積が膨張して、これにより繊維径が膨張することに伴って、その繊維軸方向に収縮力が働く。これにより、カーカス材がタイヤを締め付けることでタイヤの撓みを防止でき、高速走行時においても剛性を保持して、操縦安定性を向上できる。一方、市街地走行時などの低速走行時には、芯鞘構造繊維の芯部体積が収縮して、繊維径が収縮することに伴って、繊維軸方向への収縮力が低下する。これにより、タイヤの剛性も低下するので、タイヤの接地面が大きくなって、右折左折時における操縦安定性を保持することができる。
【0030】
本発明のタイヤにおいては、上記本発明のタイヤ用コードをカーカスないしベルト補強層の補強材として用いる点のみが重要であり、それ以外のタイヤ構造の詳細や各部材の材質、配置条件等については、所望に応じ適宜決定することができ、特に制限されるものではない。
【0031】
例えば、カーカス2は、図示例では1層であるが、2層以上で配置してもよく、通常は図示するように、ビードコア1の周りにタイヤ内側から外側に折り返して係止される。また、ベルト層3a,3bは、タイヤ周方向に対し所定の角度をもって平行に配列されたスチールコードをゴム引きしてなり、少なくとも1層にて設けることが必要であるが、通常は図示するように、2層にて交錯配置される。
【0032】
さらに、ベルト補強層は、通常、ゴム被覆コードをタイヤ周方向にスパイラル状に巻回することで、連続コードからなる周方向ベルトとして形成することができる。かかるベルト補強層は、本発明のタイヤ用コードをカーカスに適用する場合には必ずしも必須ではなく、また、本発明のタイヤ用コードをベルト補強層に適用する場合にも、少なくとも1層にて配置すればよく、その配設幅にも特に制限はない。好適には、ベルト補強層4,5は、図示するように、ベルト層3の全幅以上にわたり配設されたキャップ層4、および/または、ベルト層3の両端領域に配置されたレイヤー層5からなるものとする。これらキャップ層4およびレイヤー層5は、いずれも1層で設けてもよく、2層以上で設けてもよい。より好適には、図示するように、キャップ層4およびレイヤー層5のそれぞれ1層からなるベルト補強層とする。
【0033】
さらにまた、本発明のタイヤにおいて、トレッド部13の表面には適宜トレッドパターンが形成されており、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。さらにまた、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の又は酸素分圧を変えた空気、もしくは窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
下記表中に示す条件に従い、通常の有機繊維フィラメントまたは芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードを作製した。これら有機繊維フィラメントおよび芯鞘構造繊維のフィラメントとしては、すべてマルチフィラメントを用いた。得られた各タイヤ用コードを、常法に従いRFLからなる接着剤で処理して、カーカスの補強材として適用し、タイヤサイズ225/45R17にて、各実施例および比較例の供試タイヤを作製した。
【0035】
得られた各実施例および比較例の供試タイヤにつき、30km/hの低速走行時および120km/hの高速走行時における操縦安定性について、ドライバーによるフィーリング評価を行った。結果は、比較例1の低速走行時の評価結果を100とする指数にて示した。数値が大なるほど、操縦安定性に優れ、結果が良好である。その結果を、下記表中に併せて示す。
【0036】
また、上記で得られた各タイヤ用コードを常法に従いRFLからなる接着剤で処理して、図1に示すようなキャップ層4およびレイヤー層5からなるベルト補強層の補強材として適用し、タイヤサイズ225/45R17にて、各実施例および比較例の供試タイヤを作製した。得られた各実施例および比較例の供試タイヤにつき、30km/hの低速走行時および120km/hの高速走行時におけるロードノイズを評価した。結果は、比較例1の低速走行時の評価結果を100とする指数にて示した。数値が大なるほど、ロードノイズが低く、結果が良好である。その結果を、下記表中に併せて示す。
【0037】
【表1】

*1)2,6−ポリエチレンナフタレート、帝人(株)製、品名テオネックス
*2)ポリエチレンテレフタレート、帝人(株)製、品名テトロン
*3)ポリブチレンテレフタレート、帝人(株)製、品名ファインセル
*4)ポリトリメチレンテレフタレート、帝人(株)製、品名ソロテックス
*5)一般的なディップ処理を施した加硫前のコードの25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する応力である。
【0038】
【表2】

【0039】
【表3】

【0040】
上記表中に示すように、本発明の条件を満足する芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードをカーカスの補強材として用いた各実施例の供試タイヤにおいては、従来一般的な有機繊維フィラメントからなるタイヤ用コードを用いた各比較例の供試タイヤと比較して、低速走行時および高速走行時の双方において、バランスよく良好な操縦安定性が得られていることが確かめられた。また、本発明の条件を満足する芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードをベルト補強層の補強材として用いた各実施例の供試タイヤにおいては、高速走行時においてもロードノイズの悪化を抑制できることが確かめられた。
【符号の説明】
【0041】
1 ビードコア
2 カーカス
3a,3b ベルト層
4 キャップ層
5 レイヤー層
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞘部に高剛性ポリマーを配し、芯部に高熱膨張性ポリマーを配した芯鞘構造繊維のフィラメントからなるタイヤ用コードであって、
前記高剛性ポリマーがポリエチレンテレフタレート、2,6−ポリエチレンナフタレート、ポリビニルアルコールおよびアクリルからなる群から選ばれる1種以上であり、前記高熱膨張性ポリマーがポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、脂肪族ポリアミド、ポリエチレンおよびポリプロピレンからなる群から選ばれる1種以上であり、かつ、前記フィラメントの、0.02N/dtexの荷重負荷時における伸び率が1.0〜10.0%であり、かつ、25℃から150℃まで加熱した際のフィラメント径の膨張率が1〜10%であることを特徴とするタイヤ用コード。
【請求項2】
前記フィラメントが、複数本を同時に紡糸して得られたマルチフィラメントからなる請求項1記載のタイヤ用コード。
【請求項3】
前記フィラメントからなるヤーンが、1本ないし複数本にて撚り合わされてなる請求項2記載のタイヤ用コード。
【請求項4】
前記ヤーンを撚糸して得られたコードが、レゾルシン・ホルマリン・ラテックスからなる接着剤で処理されてなる請求項3記載のタイヤ用コード。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載のタイヤ用コードを補強材として用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2012−57283(P2012−57283A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204190(P2010−204190)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】