説明

タイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】配合工程において発生するアルデヒド類を効果的に消臭すると共に、作業性及び環境衛生上にも優れ、従来より更に高弾性かつ低発熱性を持つタイヤのビードフィラーやランフラットタイヤ用サイド補強ゴム等に好適なタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と、アルデヒド除去用消臭剤とを含有してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、乗用車、トラック、バス、二輪車用等のタイヤのビードフィラー及びランフラットタイヤ用サイド補強ゴム等に好適に使用できるタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤのカーカス部材及びスティフナー(ビードフィラー)には、高弾性なゴムが用いられている。例えば、ビード部にスティフナーを有する空気入りタイヤにおいて、ビード部の耐久性を更に向上させるために、スティフナー、特に該スティフナーのビードコアに隣接する低歪領域を中心に、高弾性なゴムを用いる手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、ゴムを高弾性化する手段としては、カーボンブラック等の充填剤を増量したり(例えば、特許文献2参照)、加硫剤の硫黄を増量して架橋点を増やす等の手法が知られているが、カーボンブラック等の充填剤を増量した場合、ゴム組成物の工場作業性や破断時伸び等の耐破壊性が悪化したり、ゴム組成物の発熱特性が悪化したりするという課題があり、また、加硫剤の硫黄を増量した場合、ゴム組成物が熱劣化し易くなるという課題がある。
【0004】
これに対して、ゴムの耐破壊性の低下を抑えながらゴムを高弾性化する手段としては、例えば、ノボラック型またはレゾール型の未変性フェノール樹脂を添加する方法や、トール油又はカシュー油等の不飽和油、或いはキシレン又はメシチレン等の芳香族炭化水素で変性したフェノール樹脂を添加する方法が提案されており、耐破壊性の低下を抑えながらゴム組成物を高弾性化するために広く用いられている(例えば、特許文献3及び4参照)。
【0005】
上記特許文献3及び4に記載の技術では、フェノール樹脂の硬化反応に通常用いられる硬化剤は、ヘキサメチレンテトラミンである。ノボラック型フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンを配合したゴムコンパウンドを加硫する際、ノボラック型フェノール樹脂がヘキサメチレンテトラミンと反応して硬化するが、その際アンモニアガスが発生する。このアンモニアガスは、ゴムコンパウンドと金属コードとの接着劣化を引き起こすので、その懸念がある場合には特定のメラミン誘導体を代替に用いる処方がなされてきている(例えば、特許文献5参照)。
【0006】
しかしながら、上記メラミン誘導体は、高温下に置かれるとホルムアルデヒドを発生する。職域における屋内空気中のホルムアルデヒドの濃度は、指針値が定められており、その数値以下になるように努めなければならない。通常、ゴムとメラミン誘導体を混練りする際、メラミン誘導体の配合部数が多い場合には、ゴムの温度が高くなると指針値以上のホルムアルデヒドが発生するという課題が生じている。
【特許文献1】特開平2−133208号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開平9−272307号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平5−98081号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2001−226528号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開昭61−160305号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、配合工程において環境衛生上安全な物質を用いてホルムアルデヒドを消臭すると共に、従来技術よりも更に高弾性かつ低発熱性を持つタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と特定の成分を含有せしめることにより、上記目的のタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本発明は、次の(1)〜(9)に存する。
(1) 天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と、アルデヒド除去用消臭剤とを含有してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
(2) ゴム成分100質量部に対してフェノール系熱硬化性樹脂が2〜40質量部、該フェノール系熱硬化性樹脂に対しメチレン供与体が5〜80質量%、該メチレン供与体に対しアルデヒド除去用消臭剤が4〜100質量%である上記(1)記載のタイヤ用ゴム組成物。
(3) アルデヒド除去用消臭剤がヒドラジド系化合物又は、2個若しくは3個の窒素原子含有複素環化合物である上記(1)又は(2)記載のタイヤ用ゴム組成物。
(4) アルデヒド除去用消臭剤がヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする上記(1)〜(3)の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(5) メチレン供与体がヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメトキシメチルメラミン、アセトアルデヒドアンモニア、α−ポリオキシメチレン、多価メチロールメラミン誘導体、オキサゾリジン誘導体、多価メチロール化アセチレン尿素から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(4)の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(6) フェノール系熱硬化性樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂から選ばれる少なくとも1種である上記(1)〜(5)の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(7) 樹脂のオイル変性に用いるオイルが、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のオイルである上記(6)記載のタイヤ用ゴム組成物。
(8) 上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物をビードフィラーゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
(9) 上記(1)〜(7)の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物をランフラットタイヤ用サイド補強ゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、配合工程において発生するホルムアルデヒドを消臭すると共に、作業性及び環境衛生上にも優れ、しかも、従来より更に高弾性かつ低発熱性を持つタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態を詳しく説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と、アルデヒド除去用消臭剤とを含有してなることを特徴とするものである。
【0012】
本発明に用いるゴム成分としては、天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種(これらの各単独又は2種以上の混合物、以下同様)が用いられ、例えば、天然ゴム、合成イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、架橋ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム等の少なくとも1種を使用することができる。
【0013】
本発明に用いるフェノール系熱硬化性樹脂は、ゴムの耐破壊性の低下を抑えながらゴムを高弾性化するために用いられるものであり、例えば、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
上記フェノール系熱硬化性樹脂のオイル変性に用いるオイルとしては、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のオイルが挙げられる。
【0014】
これらのフェノール系熱硬化性樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、2〜40質量部、好ましくは、5〜30質量部、更に好ましくは、10〜20質量部であることが望ましい。
このフェノール系熱硬化性樹脂の含有量が2質量部未満であると、ゴム組成物の高弾性化の効果が少なく、一方、40質量部を越えると、ゴム組成物の柔軟性が損なわれる。
【0015】
本発明に用いるメチレン供与体は、上記フェノール系熱硬化性樹脂の硬化剤として用いるものであり、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等の多価メチロールメラミン誘導体、オキサゾリジン誘導体、多価メチロール化アセチレン尿素、アセトアルデヒドアンモニア、α−ポリオキシメチレン、パラホルムアルデヒドなどの少なくとも1種が挙げられる。
これらの中でも、硬化速度が速く、より高弾性化したゴム組成物が得られるという点から、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサメトキシメチルメラミンの使用が望ましい。
【0016】
これらのメチレン供与体の含有量は、フェノール系熱硬化性樹脂全量に対して、好ましくは、5〜80質量%、更に好ましくは、30〜60質量%であることが望ましい。
このメチレン供与体の含有量が5質量%未満であると、フェノール系熱硬化性樹脂の硬化が十分に進まず、一方、80質量%を越えると、ゴムの架橋系に悪影響を及ぼす場合がある。
【0017】
本発明に用いるアルデヒド除去用消臭剤は、上記フェノール系熱硬化性樹脂とメチレン供与体を配合したゴムコンパウンドを製造する際に発生するホルムアルデヒド等のアルデヒド類を消臭するものであり、例えば、ヒドラジド化合物、2個又は3個の窒素原子含有複素環化合物から選ばれる少なくとも1種が挙げられ、好ましくは、ヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選ばれる少なくとも1種が望ましい。
【0018】
用いることができるヒドラジド化合物としては、例えば、ラウリン酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
用いることができる2個又は3個の窒素原子含有複素環化合物としては、アゾール化合物やアジン化合物等が挙げられ、例えば、3−メチル−5−ピラゾロン、1,3−ジメチル−5−ピラゾロン、3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン、3−フェニル−6−ピラゾロン、3−メチル−1−(3−スルホフェニル)−5−ピラゾロン等のピラゾロン類、ピラゾール、3−メチルピラゾール、1,4−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール、3,5−ジメチル−1−フェニルピラゾール、3−アミノピラゾール、5−アミノ−3−メチルピラゾール、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸メチルエステル、3−メチルピラゾール−5−カルボン酸エチルエステル、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−n−ブチル−3,5−ジメチル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジ−n−ブチル−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジアミノ−1,2,4−トリアゾール、5−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−フェニル−1,2,4−トリアゾール、3,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール−3−オン、ウラゾール(3,5−ジオキシ−1,2,4−トリアゾール)、1,2,4−トリアゾール−3−カルボン酸、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、5−ヒドロキシ−7−メチル−1,3,8−トリアザインドリジン、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、6−メチル−8−ヒドロキシトリアゾロピリダジン、4,5−ジクロロ−3−ピリダゾン、マレイン酸ヒドラジド、6−メチル−3−ピリダゾンなどの少なくとも1種が挙げられる。
【0020】
これらのアルデヒド除去用消臭剤は、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類を選択的に消臭すると共に、アルデヒド類と化学的な結合をつくり消臭後のリリースがなく、高い安全性を有するものであり、しかも、ゴム組成物の物性を損なうことなく使用することができるものである。
用いることができるアルデヒド除去用消臭剤としては、市販品では、薬剤1gあたり0.3〜0.4gのホルムアルデヒド類の消臭が可能である大塚化学社製の商品名「ケムキャッチ」、例えば、ケムキャッチH−1100(ヒドラジド類)、ケムキャッチH−6000HS(ヒドラジド類)、ケムキャッチT6900(トリアゾール類)、ケムキャッチP9600(ピラゾール類)などを好ましく使用することができる。
【0021】
これらのアルデヒド除去用消臭剤の含有量は、メチレン供与体全量に対して、好ましくは、4〜100質量%、更に好ましくは、10〜80質量%であることが望ましい。
このメチレン供与体の含有量が4質量%未満であると、アルデヒド類消臭効果が小さく、一方、100質量%を越えると、ゴムの架橋系に悪影響を及ぼす場合がある。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、上記ゴム成分、フェノール系熱硬化性樹脂、メチレン供与体(硬化剤)及びアルデヒド除去用消臭剤の他に、ゴム業界で通常使用される配合剤を本発明の効果を阻害しない範囲で用いることができ、例えば、充填剤、軟化剤、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤などを用途に応じて適宜配合することができる。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記各成分を、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー等により混練りすることにより製造することができる。また、本発明のゴム組成物を用いてタイヤを製造する場合は、例えば、押し出し機やカレンダー等によりビードフィラー部材、または、ランフラットタイヤ用サイド補強ゴムを作製し、これらを成型ドラム上で他の部材と張り合わせること等でグリーンタイヤを作製し、このグリーンタイヤをタイヤモールドに収め、内側から圧を加えながら加硫する方法などにより行うことができる。また、本発明のタイヤの内部には、空気の他に窒素や不活性ガスを充填することができる。
【0024】
このように構成される本発明のタイヤ用ゴム組成物では、天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と、アルデヒド除去用消臭剤とを含有せしめることにより、メラミン供与体が高温下におかれることにより発生するホルムアルデヒド類を確実に消臭することができ、作業性及び環境衛生上にも優れ、しかも、従来技術よりも更に高弾性かつ低発熱性を有するタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが得られることとなる。
また、アルデヒド除去用消臭剤をヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とすれば、配合工程において更に環境衛生上安全な物質を用いることができることとなる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に詳述するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0026】
〔実施例1〜8及び比較例1〜2〕
(実施例1の調製法)
下記表1に示す配合処方のゴム組成物を合計3回の練りステージで混練し調製した。第1ステージにて天然ゴム100質量部、HAF級カーボンブラック50質量部、亜鉛華5質量部、ステアリン酸2質量部、へトサメトキシメチルメラミン5質量部及びアルデヒド除去用消臭剤(大塚化学社製、ケムキャッチ、品番:H−1100)2質量部を投入し、第2ステージにおいてフェノール系熱硬化性樹脂10質量部を投入し、第3ステージにおいて老化防止剤6PPD〔N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン〕1質量部、加硫促進剤TBBS〔N−t−ブチル2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド〕2質量部、硫黄5質量部を投入して混練した。なお、第1ステージの混練りにおけるゴム排出時のゴム組成物の温度はいずれも約130℃であった。
【0027】
(実施例2〜5及び比較例1の調製法)
上記実施例1において、アルデヒド除去用消臭剤の配合量(4質量部、0質量部)、または、その種類を変える〔大塚化学社製、ケムキャッチ、品番:H−6000HS、並びに、3−メチル−5−ピラゾロン〕以外は上記実施例1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0028】
(実施例6の調製法)
下記表2に示す配合処方のゴム組成物を合計3回の練りステージで混練し調製した。第1ステージにて天然ゴム100質量部、HAF級カーボンブラック50質量部、亜鉛華5質量部、ステアリン酸2質量部を投入し、第2ステージにおいてフェノール系熱硬化性樹脂10質量部を投入し、第3ステージにおいてへトサメトキシメチルメラミン5質量部及びアルデヒド除去用消臭剤(大塚化学社製、ケムキャッチ、品番:H6000HS)1質量部、老化防止剤6PPD〔N−(1,3−ジメチルブチル)−N´−フェニル−p−フェニレンジアミン〕1質量部、加硫促進剤TBBS〔N−t−ブチル2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド〕2質量部、硫黄5質量部を投入して混練した。なお、第1及び第3ステージの混練りにおけるゴム排出時のゴム組成物の温度はいずれも約130℃であった。
【0029】
(実施例7〜8及び比較例2の調製法)
上記実施例6において、アルデヒド除去用消臭剤の種類を変える〔大塚化学社製、ケムキャッチ、品番:T6900、P9600〕、または、含有しない以外は上記実施例6と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0030】
上記実施例1〜8及び比較例1〜2のゴム組成物の混練り時に発生するホルムアルデヒドの濃度を下記方法により測定した。また、得られた各ゴム組成物を145℃で24分間加硫して物性測定用のサンプルを作製し、下記に示す各方法により、50%伸長時の引張応力、動的貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)を測定し、比較例1を共に100として指数表示した。
これらの結果を下記表1及び表2に示す。
【0031】
(ホルムアルデヒドの濃度測定方法)
第1ステージ、または、第3ステージにおいて、ゴム排出時にガス検知管〔ガステック社製、No.91及びNo.91LL〕を用い、ゴム排出口にてホルムアルデヒドの臭気測定を行った。
【0032】
(引張応力の測定方法)
上記加硫ゴム組成物からなるJISダンベル状3号形サンプルを用意し、JIS K 6251:2004に準拠して25℃で引張試験を行い、50%伸長時の引張応力を測定した。指数値が大きいほど引張応力に優れていることを示す。
【0033】
〔動的貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)の測定方法〕
上記加硫ゴム組成物について、東洋精機社製スペクトロメーターを用い、歪2%、測定温度25℃にて動的貯蔵弾性率(E´)及び損失正接(tanδ)の測定を行った。
なお、動的貯蔵弾性率(E´)については、指数値が大きいほど弾性率が高く、ゴム組成物が高弾性化していることを示し、損失正接(tanδ)については、指数値が小さいほどゴム組成物の発熱が小さく、低発熱性であることを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
上記表1及び表2の結果から明らかなように、本発明範囲となる実施例1〜8は、アルデヒド除去用消臭剤を配合しない比較例1〜2に較べて、配合時のホルムアルデヒドの発生量が大幅に減少できると共に、50%伸長時の引張応力及び動的貯蔵弾性率(E´)は向上し、かつ、損失正接(tanδ)は低下するので、従来のタイヤ用ゴム組成物よりも高弾性、低発熱性のタイヤ用ゴム組成物を得ることができることが判った。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明では、乗用車、トラック、バス、二輪車用等のタイヤのビードフィラー及びランフラットタイヤ用サイド補強ゴム等に好適に使用できるタイヤ用ゴム組成物及びそれを用いた空気入りタイヤが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム、合成イソプレンゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも1種のゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂と、メチレン供与体と、アルデヒド除去用消臭剤とを含有してなることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
ゴム成分100質量部に対して、フェノール系熱硬化性樹脂が2〜40質量部、該フェノール系熱硬化性樹脂に対しメチレン供与体が5〜80質量%、該メチレン供与体に対しアルデヒド除去用消臭剤が4〜100質量%である請求項1記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
アルデヒド除去用消臭剤がヒドラジド系化合物又は、2個若しくは3個の窒素原子含有複素環化合物である請求項1又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
アルデヒド除去用消臭剤がヒドラジド化合物、アゾール化合物及びアジン化合物から選ばれる少なくとも1種を有効成分とする請求項1〜3の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
メチレン供与体がヘキサメチレンテトラミン、パラホルムアルデヒド、ヘキサメトキシメチルメラミン、アセトアルデヒドアンモニア、α−ポリオキシメチレン、多価メチロールメラミン誘導体、オキサゾリジン誘導体、多価メチロール化アセチレン尿素から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜4の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
フェノール系熱硬化性樹脂が、ノボラック型フェノール樹脂、ノボラック型クレゾール樹脂、ノボラック型キシレノール樹脂、ノボラック型レゾルシノール樹脂及びこれらの樹脂をオイルで変性した樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
樹脂のオイル変性に用いるオイルが、ロジン油、トール油、カシュー油、リノール酸、オレイン酸及びリノレイン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種のオイルである請求項6記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物をビードフィラーゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一つに記載のタイヤ用ゴム組成物をランフラットタイヤ用サイド補強ゴムとして用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2008−189911(P2008−189911A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−937(P2008−937)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】