説明

タイヤ空気圧監視システムの受信機

【課題】タイヤ通信機との通信成立性を確保することができるタイヤ空気圧監視システムの受信機を提供する。
【解決手段】TPMS受信機10のメモリ12に予め複数の制御プログラムP1,P2…を書き込んでおく。そして、タイヤに取り付けられたバルブが他の型に交換されたときには、TPMS受信機10にツール17を接続し、ツール17から書き換え指令をTPMS受信機10に注入することで、メモリ12内の制御プログラムP1,P2…のうち、書き換え指令に応じたものを、使用プログラムとして設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各タイヤに取り付けたタイヤ通信機からタイヤ空気圧信号を取得して、各タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムの受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両には、各タイヤの空気圧等を監視するタイヤ空気圧監視システム(特許文献1等参照)が搭載される傾向にある。タイヤ空気圧監視システムは、各タイヤにバルブを取り付け、バルブから無線により送信されるタイヤ空気圧信号からタイヤ空気圧を監視する。バルブには、自らが定期的にタイヤ空気圧信号を送信する方式と、車体からの電波をトリガとしてタイヤ空気圧信号を送信する方式とがある。車体は、車両受信機にてタイヤ空気圧信号を受信したとき、タイヤ空気圧を読み取り、タイヤ空気圧に異常を検出すると、そのタイヤ位置を運転者に通知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−250186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、タイヤ空気圧監視システムにおいては、バルブと車両受信機とで通信方式が一対一で対応している。この場合は、バルブと車両受信機とで通信方式が合うので、問題なく通信することができる。しかし、同じメーカであっても、仕向け先や搭載車種等に応じて、バルブの送信方式を変える場合がある。こうなると、バルブと車両受信機との通信方式が合わなくなるので、通信が実行できない問題に繋がる。送信方式には、例えば送信周波数、変調方式、データフォーマット等がある。
【0005】
また、バルブが故障したり、バルブの電池が切れたりした際には、バルブを新しいものに交換する必要がある。このとき、市場で販売されているバルブに付け替える場合もある。しかし、付け替える前のバルブと異なるメーカのバルブに交換してしまうと、車両チューナと通信方式が合わず、タイヤ空気圧監視システムが作動しないおそれもある。このとき、例えば車両チューナを新規バルブに応じたものに取り換えることも想定されるが、これではコストが大きくかかるので、実現性が低い。
【0006】
本発明の目的は、タイヤ通信機との通信成立性を確保することができるタイヤ空気圧監視システムの受信機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、タイヤに取り付けられたタイヤ通信機から送信されたタイヤ空気圧信号を無線により受信して、前記タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムの受信機において、電波受信時の自身の通信方式を、前記タイヤ通信機の送信方式に合わせ込む設定手段を備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、受信機の通信方式を、設定手段によって設定変更することが可能となる。よって、例えばタイヤに取り付くタイヤ通信機を他の型に交換しても、受信機の通信方式を、設定手段によって交換後のタイヤ通信機の送信方式に合わせ込めば、受信機の通信方式が交換後のタイヤ通信機に合った方式となる。このため、タイヤ通信機を他の型に交換しても、以前と同様にタイヤ通信機と受信機との通信が成立する。従って、タイヤ通信機の交換等に影響を受けずに、タイヤ通信機と受信機との通信成立性を確保することが可能となる。
【0009】
本発明では、異なる前記通信方式を複数記憶したメモリを備え、前記設定手段は、前記メモリ内の複数の前記通信方式の中からどれを使用するのかを通知する書き換え指令を外部から入力し、当該書き換え指令を基に、使用する前記通信方式を設定することを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、受信機のメモリに予め複数の通信方式を登録しておき、外部から入力する書き換え指令により、これら通信方式の中からどれを選択して使用するかを設定する。よって、予め複数の選択肢を用意しておいてその中の特定の1つを選択使用するという簡素な構成により、受信機の通信方式をタイヤ通信機の送信方式に対応させることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記設定手段は、前記通信方式の制御プログラムを外部から入力し、この新規の制御プログラムを使用プログラムとして登録することにより、使用する前記通信方式を設定することを要旨とする。
【0012】
この構成によれば、受信機の制御プログラムを外部から自由に書き換えることが可能となるので、受信機の通信方式を全く新規のものに変更したり、自由にバージョンアップしたりすることが可能となる。よって、通信方式の変更が汎用性のよいものとなる。
【0013】
本発明では、前記設定手段は、前記通信方式の詳細である機能パラメータを外部から入力し、この新規の機能パラメータを使用パラメータとして登録することにより、使用する前記通信方式を設定することを要旨とする。
【0014】
この構成によれば、通信方式の中の機能パラメータを変更することが可能となるので、受信機の通信方式を部分的に変更することが可能となる。よって、受信機の通信方式をわざわざ全て変更させずに済むので、通信方式の変更作業が簡素で済む。
【0015】
本発明では、前記設定手段は、前記タイヤ空気圧信号に含まれるヘッダ情報を読み取り、当該ヘッダ情報から前記タイヤ通信機の前記送信方式を把握し、前記通信方式を該ヘッダ情報に応じたものに設定することを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、タイヤ通信機から送信されるタイヤ空気圧信号に含まれるヘッダ情報から、受信機が設定すべき通信方式が分かる。よって、外部から各種情報を入力する変更作業をユーザに課さなくとも、受信機の通信方式をタイヤ通信機の送信方式に合わせ込むことが可能となるので、設定作業の面倒さが解消される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タイヤ空気圧監視システムにおいて、タイヤ通信機と受信機との通信成立性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態のタイヤ空気圧監視システムの構成図。
【図2】通信方式設定機能の構成を示すブロック図。
【図3】第2実施形態の通信方式設定機能の構成を示すブロック図。
【図4】第3実施形態の通信方式設定機能の構成を示すブロック図。
【図5】同じく通信方式設定機能の構成を示すブロック図。
【図6】第4実施形態の通信方式設定機能の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化したタイヤ空気圧監視システムの受信機の第1実施形態を図1及び図2に従って説明する。
【0020】
図1に示すように、車両1には、各タイヤ2(2a〜2d)の空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム3(TPMS:Tire Pressure Monitoring System)が搭載されている。タイヤ空気圧監視システム3は、各タイヤ2a〜2dのバルブ4から無線により送信されたタイヤ空気圧信号Stpから各タイヤ2a〜2dの空気圧を把握し、タイヤ空気圧に異常があるタイヤ2があると、そのタイヤ位置を車内インストルメントパネル等で運転者にインジケータ表示する。なお、バルブ4がタイヤ通信機に相当する。
【0021】
バルブ4には、バルブ4の動作を制御するコントローラ5が搭載されている。コントローラ5は、例えば1つのICチップから構成されている。コントローラ5には、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を送信可能なUHF送信機6が接続されている。つまり、バルブ4は、所定時間間隔でタイヤ空気圧信号Stpを断続送信する自励式となっている。
【0022】
また、バルブ4には、タイヤ2の空気圧を検出する圧力センサ7と、タイヤ2の温度を検出する温度センサ8と、タイヤ2にかかる重力を検出する加速度センサ9等が搭載されている。これらセンサ類は、コントローラ5に接続され、動作がコントローラ5にて管理されている。また、これらセンサ類の検出信号は、コントローラ5に出力される。
【0023】
車両1には、バルブ4から送信されたタイヤ空気圧信号Stpを車体側において受信するタイヤ空気圧監視システム3の受信機(以降、TPMS受信機10と記す)が設けられている。TPMS受信機10には、TPMS受信機10の動作を管理するタイヤ空気圧監視制御部11と、制御プログラムPを記憶したメモリ12と、UHF電波を受信可能なUHF受信機13とが設けられている。TPMS受信機10には、車内インストルメントパネルに配設されたメータ14が接続されている。
【0024】
制御プログラムPは、TPMS受信機10を動作させるときにタイヤ空気圧監視制御部11のCPUにて実行されるものである。つまり、制御プログラムPは、バルブ4と通信するときに実行されるソフトウェアであって、通信プロトコル等のアプリケーションが一義的に設定されている。
【0025】
UHF受信機13は、アンテナ15及び受信回路16を備えている。受信回路16は、アンテナ15で受信した電波を復調、増幅し、タイヤ空気圧監視制御部11に出力する。
バルブ4は、加速度センサ9の検出信号によりタイヤ2が回転状態に入ったことを検出すると、タイヤ空気圧等の各種情報の検出を開始し、その検出結果としてタイヤ空気圧信号StpをUHF送信機6からUHF電波により送信する。タイヤ空気圧信号Stpには、バルブ4の識別ID、タイヤ空気圧、タイヤ温度等が含まれている。
【0026】
TPMS受信機10は、UHF受信機13でタイヤ空気圧信号Stpを受信すると、タイヤ空気圧信号Stpからタイヤ2の状態を読み取る。このとき、タイヤ空気圧監視制御部11は、タイヤ空気圧信号Stp内の識別IDにて認証を実行し、認証が成立すれば、車両登録されたタイヤ2からの信号であると認識する。そして、同じタイヤ空気圧信号Stp内に含まれるタイヤ空気圧やタイヤ温度を読み取り、異常があればその旨をメータ14にて通知する。タイヤ空気圧監視制御部11は、バルブ4からタイヤ空気圧信号Stpを受信する度に、この動作を繰り返し実行する。
【0027】
図2に示すように、タイヤ空気圧監視システム3には、TPMS受信機10の通信方式(受信方式)をバルブ4の送信方式に合わせ込む通信方式設定機能が設けられている。これは、バルブ4によってはメーカや仕向け先に応じて送信方式が異なることがあるため、取り付けるバルブ4の仕様がTPMS受信機10と違うものであっても、TPMS受信機10の通信方式をこれに合わせるためである。
【0028】
この場合、TPMS受信機10のメモリ12には、複数の制御プログラムP1,P2…が予め登録されている。例えば、第1制御プログラムP1がA社製X型のバルブの送信方式に対応し、第2制御プログラムP2がA社製Y型のバルブの送信方式に対応し、第3制御プログラムP3社製Z型のバルブの送信方式に対応している。
【0029】
タイヤ空気圧監視制御部11には、外部のツール17とデータ通信を行うI/O部18と、TPMS受信機10で使用する制御プログラムPを選択及び指定する使用プログラム選択部19とが設けられている。使用プログラム選択部19は、I/O部18を介してツール17から書き換え指令を入力し、書き換え指令に応じた動作プログラムを選択する。書き換え指令は、複数存在する制御プログラムP1,P2…のうち、どれを使用プログラムとしてTPMS受信機10に登録するのかを通知するものである。なお、I/O部18及び使用プログラム選択部19が設定手段を構成する。
【0030】
ツール17は、制御プログラムPの書き換え指令をTPMS受信機10に出力するための機器である。ツール17は、例えばダイアグツールであって、車両ディーラ等に保管されている。
【0031】
さて、例えばバルブ4を交換したときなど、バルブ4の送信方式が今までのものから変更された場合には、TPMS受信機10の通信方式を、交換後のバルブ4に合った方式に切り換える必要がある。このときは、車両1をディーラ等に持ち込み、TPMS受信機10のツール接続ポート20にツール17を有線接続し、書き換え指令をタイヤ空気圧監視制御部11に出力する。書き換え指令には、どの制御プログラムPを使用するのかのデータの他に、例えばツール17の認証ID等も含まれている。
【0032】
I/O部18は、ツール接続ポート20にツール17が接続されて、ツール17と通信を開始したとき、ツール17とまず認証を行う。そして、認証が成立すれば、I/O部18はツール17との通信を許可する。I/O部18は、ツール17から書き換え指令を入力すると、書き換え指令を使用プログラム選択部19に出力する。
【0033】
使用プログラム選択部19は、メモリ12に予め登録された複数の制御プログラムP1,P2…のうち、書き換え指令に応じた制御プログラムPを選択し、これを使用プログラムとしてTPMS受信機10に登録する。このとき、タイヤ空気圧監視制御部11の制御機能が変更されるとともに、受信回路16の受信機能が変更される。これにより、TPMS受信機10の通信方式が、交換後のバルブ4の送信方式に合った形式に設定される。
【0034】
以上により、本例においては、TPMS受信機10のメモリ12に予め複数の制御プログラムP1,P2…を用意しておく。そして、バルブ4が他の型に交換されたときには、TPMS受信機10にツール17を接続し、ツール17から書き換え指令をTPMS受信機10に注入することで、メモリ12内の制御プログラムP1,P2…のうち、書き換え指令に応じたものを、使用プログラムとして設定する。よって、バルブ4が他の方に変更されても、以前と同様、TPMS受信機10はバルブ4と通信が成立するので、問題なくTPMS受信機10はバルブ4からタイヤ空気圧信号Stpを取得することが可能となる。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)TPMS受信機10のメモリ12に予め複数の制御プログラムP1,P2…を用意しておき、外部のツール17から入力する書き込み指令を基に、その中の特定の1つを使用プログラムとして登録可能とした。よって、バルブ4が他機種に交換されても、TPMS受信機10の通信方式を、交換後のバルブ4の送信方式に合わせ込むことが可能となる。このため、バルブ4の交換に寄らず、バルブ4とTPMS受信機10との通信成立性を確保することができる。
【0036】
(2)TPMS受信機10の通信方式設定は、メモリ12に予め複数の制御プログラムP1,P2…を用意しておき、その中の特定の1つを選択指定する方式である。よって、予め複数用意しておいた制御プログラムP1,P2の中の特定の1つを使用プログラムとして選び出すという簡素な方式によって、TPMS受信機10の通信方式を設定することができる。
【0037】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図3に従って説明する。本例は、TPMS受信機10の通信方式の切り換え方を変えた実施例である。なお、本例では、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる箇所のみ詳述する。
【0038】
図3に示すように、タイヤ空気圧監視制御部11には、メモリ12に登録された制御プログラムPを書き換え可能な使用プログラム書換部25が設けられている。使用プログラム書換部25は、ツール17から新規の制御プログラムPxを入力すると、これを使用プログラムとしてメモリ12に上書きする動作を実行可能である。なお、使用プログラム書換部25が設定手段を構成する。
【0039】
さて、TPMS受信機10の通信方式を変更する際には、まず新規の制御プログラムPx(交換後のバルブ4の送信方式と対応したもの)がインストールされたツール17を用意する。そして、このツール17をツール接続ポート20に接続し、ツール17から新規の制御プログラムPxをTPMS受信機10に注入する。
【0040】
使用プログラム書換部25は、I/O部18を介して新規の制御プログラムPxを入力すると、ツール17との認証成立を条件に、新規の制御プログラムPxをメモリ12に上書きする。これにより、タイヤ空気圧監視制御部11の制御機能と受信回路16の受信機能とが、交換後のバルブ4の送信方式と対応したものとなり、問題なく通信が実行可能となる。
【0041】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)に他に、以下の効果を得ることができる。
(3)ツール17から制御プログラムP自体をTPMS受信機10に注入し、メモリ12の制御プログラムPごと書き換えることにより、TPMS受信機10の通信方式を変更する。よって、例えばTPMS受信機10の通信方式を全く新規のものに変更したり、制御プログラムPを自由にバージョンアップしたりすることが可能となるので、TPMS受信機10の変更が汎用性のよいものとなる。
【0042】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図4及び図5に従って説明する。なお、本例も、第1実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0043】
図4に示すように、タイヤ空気圧監視制御部11には、メモリ12に登録された制御プログラムPの機能パラメータKを書き換え可能な機能パラメータ書換部30が設けられている。機能パラメータ書換部30は、ツール17から新規の機能パラメータKxを入力すると、これを使用パラメータとしてメモリ12に上書きする動作を実行可能である。なお、機能パラメータ書換部30が設定手段を構成する。
【0044】
機能パラメータKは、タイヤ空気圧信号Stpの信号情報の詳細である。ここで、機能パラメータKには、例えば送信周波数(433MHz、315MHz)、変調方式(ASK(Amplitude Shift Keying)、FSK(Frequency Shift Keying))、送信コード(マンチェスター、バイフェーズ)、送信速度、同期信号フォーマット、ボーレートBPS、各データ(空気圧データ、温度データ、識別ID、加速度データ、故障データ等)の信号内における先頭位置等がある。
【0045】
さて、TPMS受信機10の機能パラメータKを変更する際には、まず新規の機能パラメータKx(交換後のバルブ4の送信方式と対応したもの)がインストールされたツール17を用意する。そして、このツール17をツール接続ポート20に接続し、ツール17から新規の機能パラメータKxをTPMS受信機10に注入する。
【0046】
機能パラメータ書換部30は、I/O部18を介して新規の機能パラメータKxを入力すると、ツール17との認証成立を条件に、新規の機能パラメータKをメモリ12に上書きする。これにより、タイヤ空気圧監視制御部11の制御機能と受信回路16の受信機能との各機能パラメータが、交換後のバルブ4の送信方式の機能パラメータと対応したものとなり、問題なく通信が実行可能となる。
【0047】
また、機能パラメータKを変更する方式は、図5に示すイニシエータ型のタイヤ空気圧監視システム3にも応用可能である。この場合、車体の左右前後の各タイヤハウスには、バルブ4にLF(Low Frequency)帯のトリガ信号Sstを送信可能なイニシエータ31が各々取り付けられている。一方、バルブ4には、LF電波を受信可能なLF受信機32が設けられている。つまり、この場合のバルブ4は、電波の受信及び送信の両方が可能な送受信式となっている。
【0048】
タイヤ空気圧監視制御部11は、特定の監視タイミングにおいて、ある1つのイニシエータ31からトリガ信号SstをLF電波により送信する。トリガ信号Sstには、各バルブ4にタイヤ空気圧信号Stpを送信させる旨の通知が含まれる。バルブ4は、トリガ信号SstをLF受信機32で受信すると、タイヤ空気圧信号StpをUHF電波により送信する。そして、この動作を各タイヤハウスにて実行することにより、4本のタイヤ2からタイヤ空気圧を取得する。
【0049】
ここでトリガ信号Sstには、機能パラメータとして、例えば周波数、変調方式、信号速度、データフォーマット等がある。よって、制御プログラムP内の機能パラメータKのうち、トリガ信号Sstに関係するパラメータを適宜書き換えることも可能である。こうすれば、本例の技術をイニシエータ型のタイヤ空気圧監視システム3にも応用することが可能となる。
【0050】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)に他に、以下の効果を得ることができる。
(4)TPMS受信機10の通信方式として機能パラメータKを変更可能であるので、TPMS受信機10の通信方式を、機能パラメータKだけ部分的に変更することが可能となる。よって、例えばバルブ4の送信方式が一部分のみ部分的に変わる場合であっても、TPMS受信機10の制御プログラムPを丸々変えるのでなく、部分的に変更することが可能となるので、真に必要な箇所のみ更新することが可能となり、無駄な更新作業をユーザに課す必要がなくなる。
【0051】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を図6に従って説明する。なお、本例も、第1実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0052】
図6に示すように、バルブ4のコントローラ5には、タイヤ空気圧信号Stpの先頭にヘッダ情報Dhdを付加するヘッダ情報付加部40が設けられている。ヘッダ情報付加部40は、タイヤ空気圧信号Stpに含まれるヘッダ領域に、送信されるタイヤ空気圧信号Stpに関する情報を付加する。なお、この方式の場合は、タイヤ空気圧信号Stp内のヘッダ情報Dhdの位置、つまりタイヤ空気圧信号Stpのどのアドレスにヘッダ情報Dhdが位置しているのかということが、デファクトスタンダード化されていることが必要である。
【0053】
一方、タイヤ空気圧監視制御部11には、タイヤ空気圧信号Stp内のヘッダ情報Dhdを読み取り可能なヘッダ情報読取部41が設けられている。また、タイヤ空気圧監視制御部11には、ヘッダ情報読取部41が読み取ったヘッダ情報Dhdを基に、TPMS受信機10の通信方式を設定する通信方式設定部42が設けられている。なお、ヘッダ情報読取部41及び通信方式設定部42が設定手段を構成する。
【0054】
バルブ4は、タイヤ空気圧信号Stpを送信するとき、タイヤ空気圧信号Stpの特定のヘッダ領域にヘッダ情報Dhdを書き込んで送信する。ヘッダ情報Dhdには、バルブ4の送信方式が何であるのかの情報が含まれている。
【0055】
ヘッダ情報読取部41は、TPMS受信機10がタイヤ空気圧信号Stpを受信すると、タイヤ空気圧信号Stp内に含まれるヘッダ情報Dhdを読み取り、この情報を通信方式設定部42に出力する。通信方式設定部42は、ヘッダ情報読取部41からヘッダ情報Dhdを取得すると、ヘッダ情報Dhdからバルブ4の通信方式を把握し、TPMS受信機10の通信方式をヘッダ情報Dhdに応じた方式に設定する。つまり、TPMS受信機10の通信方式がバルブ4の通信方式に沿った方式をとる。
【0056】
従って、タイヤ空気圧監視制御部11は、ヘッダ情報Dhdに基づく形式に通信方式が設定されることになるので、バルブ4から送信されてきたタイヤ空気圧信号Stpのうち、ヘッダ情報Dhdに続く以降の信号を、問題なく読み取ることが可能となる。よって、TPMS受信機10は、バルブ4から送信されたタイヤ空気圧信号Stpを問題なく取り込むことが可能である。
【0057】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)に他に、以下の効果を得ることができる。
(5)バルブ4から送信されるタイヤ空気圧信号Stpに、バルブ4の送信方式が何であるのかを通知するヘッダ情報Dhdを含ませ、TPMS受信機10はタイヤ空気圧信号Stpを受信したとき、ヘッダ情報Dhdからバルブ4の送信方式を把握し、自身の通信方式をバルブ4に合わせ込む。よって、ツール17を使用しなくとも、TPMS受信機10の通信方式をバルブ4の送信方式に合わせることが可能となるので、設定作業の面倒さを解消することができる。
【0058】
(6)バルブ4からTPMS受信機10がタイヤ空気圧信号Stpを受信する度に、TPMS受信機10の通信方式の設定が実行されるので、TPMS受信機10の通信方式設定を、通信の度に実行することができる。よって、バルブ4とTPMS受信機10との方式が合っていない状況が生じ難くなる。
【0059】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1〜第4実施形態において、バルブ4に搭載されるセンサ類は、実施形態に述べたものに限定されず、適宜変更してもよいし、追加も可能である。
【0060】
・第1〜第4実施形態において、バルブ4は、加速度センサ9にてタイヤ2の回転を検出したときにタイヤ空気圧信号Stpの送信を開始するものに限定されない。例えば、タイヤ空気圧信号Stpを常時送信するものでもよい。
【0061】
・第1実施形態において、書き換え指令は、ツール17から取得することに限定されない。例えば、車載機器を使用して、特定の書き換え指令をTPMS受信機10に出力するものでもよい。
【0062】
・第1〜第3実施形態において、変更作業はツール17を使用した形式に限定されない。例えば車両1の無線通信インフラを使用して、無線によりTPMS受信機10に各種変更情報を入力してもよい。
【0063】
・第3実施形態において、イニシエータ型の場合、トリガ信号Sstの周波数は、LFに限定されず、他の周波数を使用してもよい。
・第4実施形態において、TPMS受信機10は、タイヤ空気圧信号Stpに含まれるヘッダ情報Dhdからバルブ4の送信方式を把握する形式に限定されない。即ち、タイヤ空気圧信号Stpに含まれている情報であれば、何を使用してもよい。
【0064】
・第1〜第4実施形態において、タイヤ空気圧信号Stpの周波数は、UHFに限らず、例えばLF等の他の周波数を使用してもよい。
・第1〜第4実施形態において、TPMS受信機10にて変更される機能は、タイヤ空気圧監視制御部11の制御機能と、受信回路16の受信機能との両方に限定されず、どちらか一方のみでもよい。
【0065】
第1〜第4実施形態に開示された構成は、他の実施形態に転用、流用することが可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0066】
(イ)請求項1において、前記設定手段は、前記受信機に接続された外部のツールから情報(例えば書き換え指令、制御プログラム、機能パラメータ等)を取得し、当該情報を基に、前記通信方式を設定する。この構成によれば、外部のツールを使用して、種々の新たな制御プログラムや機能パラメータを、自由に受信機に登録することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
2(2a〜2d)…タイヤ、3…タイヤ空気圧監視システム、4…タイヤ通信機としてのバルブ、10…受信機としてのTPMS受信機、12…メモリ、18…設定手段を構成するI/O部、19…設定手段を構成する使用プログラム選択部、25…設定手段を構成する使用プログラム書換部、30…設定手段を構成する機能パラメータ書換部、41…設定手段を構成するヘッダ情報読取部、42…設定手段を構成する通信方式設定部、Stp…タイヤ空気圧信号、P(P1〜P3)、Px…制御プログラム、K,Kx…機能パラメータ、Dhd…ヘッダ情報。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに取り付けられたタイヤ通信機から送信されたタイヤ空気圧信号を無線により受信して、前記タイヤの空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システムの受信機において、
電波受信時の自身の通信方式を、前記タイヤ通信機の送信方式に合わせ込む設定手段を備えた
ことを特徴とするタイヤ空気圧監視システムの受信機。
【請求項2】
異なる前記通信方式を複数記憶したメモリを備え、
前記設定手段は、前記メモリ内の複数の前記通信方式の中からどれを使用するのかを通知する書き換え指令を外部から入力し、当該書き換え指令を基に、使用する前記通信方式を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムの受信機。
【請求項3】
前記設定手段は、前記通信方式の制御プログラムを外部から入力し、この新規の制御プログラムを使用プログラムとして登録することにより、使用する前記通信方式を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムの受信機。
【請求項4】
前記設定手段は、前記通信方式の詳細である機能パラメータを外部から入力し、この新規の機能パラメータを使用パラメータとして登録することにより、使用する前記通信方式を設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムの受信機。
【請求項5】
前記設定手段は、前記タイヤ空気圧信号に含まれるヘッダ情報を読み取り、当該ヘッダ情報から前記タイヤ通信機の前記送信方式を把握し、前記通信方式を該ヘッダ情報に応じたものに設定する
ことを特徴とする請求項1に記載のタイヤ空気圧監視システムの受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−71755(P2012−71755A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219343(P2010−219343)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】