説明

タイヤ製造方法

【課題】路面と接地するタイヤトレッドが、タイヤケースの幅方向及び円周方向に位置ずれを生じることのないタイヤの製造方法を提供する。
【解決手段】加硫済みタイヤケースのトレッド貼付け面に複数分割された加硫済みトレッド片を貼着してタイヤを製造する方法であって、タイヤケースのトレッド貼付け面側及びトレッド片の非踏面側にそれぞれ互いに合致する凹凸部を形成し、当該凹凸部を合致させた状態でトレッド片を貼着する形態とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの製造方法に関し、特にタイヤケースの幅方向及び円周方向に生じるタイヤトレッドの位置ずれを防止可能なタイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤの土台となるタイヤケースと、当該タイヤケースの外周面に貼着され、路面と接地するタイヤトレッドとを一体化する更生タイヤの製造方法としては、加硫済みタイヤケースの外周面とタイヤトレッドの内周面とを切削し、切削後のタイヤケースの外周面にクッションゴムと呼ばれる未加硫のゴムを配置した後に、当該クッションゴムを介してタイヤトレッドを貼着し、加硫缶と呼ばれる加硫装置内に投入することにより、タイヤケースとタイヤトレッドとを一体化した更生タイヤを得る方法が知られている。
例えば、特許文献1に係る更生タイヤの製造方法は、複数の短尺状の未加硫のタイヤトレッドを重畳させた金型内に配置して加硫し、加硫して得られた短尺状のタイヤトレッドの端部同士を互いに接合して長尺な帯状のタイヤトレッドを成型し、当該帯状のタイヤトレッドをタイヤケース外周面に沿って貼着することによって、タイヤトレッドとタイヤケースとが一体化された更生タイヤの製造方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に係る製造方法は、帯状のタイヤトレッドをタイヤケースの外周面に沿って貼着する必要があるため、帯状のタイヤトレッドがタイヤケースの円周方向或いは幅方向に位置ずれし易く、タイヤケースの外周面に対してタイヤトレッドを正確に貼着することが困難であるという欠点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−120044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記課題を解決するため、タイヤトレッドがタイヤケースの幅方向及び円周方向に位置ずれを生じることのないタイヤの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明の第一の形態として、加硫済みタイヤケースのトレッド貼付け面に複数分割された加硫済みトレッド片を貼着してタイヤを製造する方法であって、タイヤケースのトレッド貼付け面側及びトレッド片の非踏面側にそれぞれ互いに合致する凹凸部を形成し、凹凸部を合致させた状態でトレッド片を貼着する形態とした。
本形態によれば、タイヤケースのトレッド貼付け面側及びトレッド片の非踏面側にそれぞれ互いに合致する凹凸部を形成し、凹凸部を合致させた状態でトレッド片を貼着するため、トレッド片がタイヤケースの幅方向及び円周方向に位置ずれすることを防止することができる。
また、本発明の第二の形態として、凹部をタイヤケースのトレッド貼付け面側に形成し、凸部をトレッド片の非踏面側に形成し、凹凸部を合致させた状態でトレッド片をタイヤケースの円周方向に沿って均等に貼着する形態とした。
本形態によれば、前記第一の形態から生じる効果に加えて、円周方向に沿って均等にトレッド片を貼着するため、タイヤの偏摩耗を防止できるとともに、安定した乗り心地性能を有するタイヤを得ることが可能となる。
また、本発明の第三の形態として、複数のトレッド片間にクッションゴムを充填する形態とした。
本形態によれば、トレッド片間にクッションゴムを充填するため、タイヤの円周において局所的にゴム層が薄い部分が発生することを防止できる。また、タイヤケースとトレッド片との間に異物等が侵入することを防止することができる。
また、本発明の第四の形態として、加硫済みタイヤケース及び加硫済みトレッド片を加硫する際に、トレッド貼付け面及び非踏面に接する目粗し手段を介して加硫する形態とした。
本形態によれば、加硫済みタイヤケース及び加硫済みトレッド片を加硫する際に、トレッド貼付け面及び非踏面が目粗しされるので、後工程によって配置されるクッションゴムの定着度が向上する。さらに、切削装置によるバフ工程を省略することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】タイヤケースとトレッド片とを示す斜視図である。
【図2】ケース加硫装置にタイヤケースを配置した状態を示す断面図である。
【図3】トレッド加硫装置にトレッド片を配置した状態を示す断面図である。
【図4】タイヤケースとトレッド片とを一体化したときの断面図である。
【図5】タイヤケース及びトレッド片の凹凸部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、加硫済みのタイヤケース1と当該タイヤケース1に貼着される加硫済みのトレッド片2とを示す斜視図である。同図に示すように、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aには、タイヤケース1の円周方向に沿って複数分割された加硫済みのトレッド片2が円周方向に沿って均一となるように貼着される。
また、同図に示すようにタイヤケース1は、トレッド貼付け面1Aに形成された凹部Cを有する。一方、トレッド片2は、非踏面2A側に凹部Cに合致する形状に形成された凸部Uを有しており、タイヤケース1に対して複数のトレッド片2を貼着する際には、凹部C及び凸部Uを互いに嵌め合わせて合致させることにより貼着される。
以下、上記構成からなるタイヤケース1及びトレッド片2の詳細について説明する。
【0008】
図2は、ケース加硫装置10内に加硫前の未加硫のタイヤケース1´を配置した状態を示す断面図である。同図を用いて、ケース加硫装置10の構造及びタイヤケース1´の加硫方法を説明する。タイヤケース1´は、加硫装置10の内部に横置き状態で配置されるタイヤの土台となる部材である。同図においてタイヤケース1´は、概略、上下方向に隔てて設けられる一対のビードコア5を有するビード部Tbと、当該一対のビード部Tbに跨るようにトロイダル状に延長し、上下のサイド部Ts及び上下のサイド部Tsと連続するクラウン部Tcを形成するカーカス6と、クラウン部Tcにおいてカーカス6上に積層される複数のベルト7とを含み、各部において所定の厚さに積層されるゴム層を有する。
【0009】
ケース加硫装置10は、概略、下プラテン11、下金型12、下ビードリング13、上プラテン14、上金型15、上ビードリング16、ブラダー17、固定盤18、昇降機構19を備える。
下プラテン11は、円環状の板体であって、図外の熱源供給装置から内部に高温高圧の蒸気や、液体等の加熱媒体が供給される流路11Aを有する。流路11Aは、タイヤケース1´の下側のビード部Tb及びサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の流路であって、主として上方に位置する下金型12を介して下側のビード部Tb及び下側のサイド部Tsを加熱する熱源として機能する。下プラテン11の上面側には、下金型12が固定される。下金型12は、例えばアルミニウム製の断面L字状の円環金属体であって、下方に位置する下プラテン11からの熱をタイヤケース1´に伝達する。
【0010】
下金型12は、タイヤケース1´の下側のサイド部Tsと対向する内周面が型付け面12pとして形成されたサイド型付部12Aと、タイヤケース1´のクラウン部Tcと対向する内周面が型付け面12qとして形成されたクラウン型付部12Bと、タイヤケース1´のクラウン部Tcにおける幅方向中間位置に形成される凹部Cと対向する内周面が型付け面12rとして形成された凹部型付部12Cとを有する。
サイド型付部12Aの型付け面12pは、タイヤケース1´の下側のサイド部Tsを囲繞するように半径方向に湾曲した面として形成される。
クラウン型付部12Bの型付け面12qは、型付け面12pと連続してタイヤケース1´の幅方向に略垂直に立ち上がる面であって、加硫完了後におけるタイヤケース1のトレッド貼付け面1Aを成型する面である。
凹部型付部12Cの型付け面12rは、クラウン部Tcの幅方向中間に位置して、型付け面12qから半径方向内側に僅かに突出した面であって、加硫完了後におけるタイヤケース1の凹部Cを成型する面である。
【0011】
下金型12の上方には、着脱自在な下ビードリング13が取着される。下ビードリング13は、タイヤケース1´の下側のビード部Tbの型付けを行うとともに把持部を介して後述のブラダー17を保持する円環体である。
【0012】
上プラテン14は、下プラテン11と同様、円環状の板体である。上プラテン14は、下プラテン11に対して上下方向に離間して、下プラテン11と対をなすように平行に配置される。また、下プラテン11は、後述の昇降機構19によって昇降動作が可能である。
上プラテン14の内部には、下プラテン11と同様に加硫時に高温高圧の加硫媒体が図外の熱源供給装置から供給される流路14Aが設けられる。
流路14Aは、タイヤケース1´の上側のビード部Tb及び上側のサイド部Tsに対応する位置に形成される環状の流路であって、主として下方に位置する上金型15を介して上側のビード部Tb及び上側のサイド部Tsを加熱する熱源として機能する。
上プラテン14は、固定盤18及び可動プレート21を介して昇降機構19と接続される。昇降機構19は、上下方向に伸縮自在なピストンを備え、当該ピストンの伸縮動作により、上プラテン14及び上プラテン14に固定された上金型15が一体的に昇降し、下方に位置する下金型12を閉塞又は開放する。
上プラテン14の下方側には、上金型15が固定される。上金型15は、下金型12と対をなす断面L字状の円環金属体であって、上方に位置する熱源としての上プラテン14からの熱をタイヤケース1´に伝達する。
【0013】
上金型15は、タイヤケース1´の上側のサイド部Tsと対向する内周面が型付け面15pとして形成されたサイド型付部15Aと、タイヤケース1´のクラウン部Tcと対向する内周面が型付け面15qとして形成されたクラウン型付部15Bと、タイヤケース1´のクラウン部Tcの幅方向中間位置に形成される凹部Cと対向する内周面が型付け面15rとして形成された凹部型付部15Cとを有する。
サイド型付部15Aの型付け面15pは、タイヤケース1´の上側のサイド部Tsを囲繞するように半径方向に湾曲した面として形成される。
クラウン型付部15Bの型付け面15qは、型付け面15pと連続してタイヤケース1´の幅方向に略垂直に垂下する面であって、加硫完了後におけるタイヤケース1のトレッド貼付け面1Aを成型する面である。
凹部型付部15Cの型付け面15rは、クラウン部Tcの幅方向中間に位置し、型付け面15qから半径方向内側に僅かに突出した面であって、加硫完了後におけるタイヤケース1の凹部Cを成型する面である。
つまり、下金型12の型付け面12q及び上金型15の型付け面15qにより、加硫完了後におけるタイヤケース1のトレッド貼付け面1Aが成型され、下金型12の型付け面12r及び上金型15の型付け面15rにより、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aの幅方向中央部において内部に窪む凹部Cが成型される。
【0014】
また、下金型12の型付け面12q、型付け面12r、及び上金型15の型付け面15q、型付け面15rには、表面を覆う目粗し手段20が設けられる。
目粗し手段20は、型付け面12q、型付け面12r、型付け面15q及び型付け面15rの表面に貼着される薄肉のシート体であって、例えば布、耐熱性樹脂、金属製メッシュ等の所定の表面粗さを有する部材が採用される。
そして、未加硫のタイヤケース1´の表面が目粗し手段20を介して型付け面12q、型付け面12r、型付け面15q及び型付け面15rによって型付けされることにより、加硫完了後のタイヤケース1のトレッド貼付け面1A及び凹部Cの表面は、目粗し手段20の表面粗さに応じた粗さで成型されることとなる。
なお、目粗し手段20としては、表面にシート体を貼着することに限らず、型付け面12q、型付け面12r、型付け面15q及び型付け面15rの表面を加工することにより、構成してもよい。
また、目粗し手段20は、必ずしも型付け面12r、型付け面15rに貼着する必要はなく、少なくとも型付け面12q及び型付け面15qに貼着してあればよい。
【0015】
上金型15の下方には、着脱自在な上ビードリング16が取着される。上ビードリング16は、タイヤケース1´の上側のビード部Tbの型付けを行うとともに把持部を介して後述のブラダー17を保持する円環体である。
【0016】
下ビードリング13及び上ビードリング16によって把持されるブラダー17は、伸長可能な袋状のゴム体であり、タイヤケース1´の内周面に沿って密着するように配置される。
ブラダー17には、加硫時に高温高圧の加熱媒体が図外の熱源供給装置から供給され、タイヤケース1´の内部において、タイヤケース1´の内側面に沿って密着しながら外側に膨張する。
下金型12、下ビードリング13、上金型15及び上ビードリング16によって形成される空間内に配置されたタイヤケース1´は、加硫時にブラダー17の膨張に伴って下金型12、下ビードリング13、上金型15、上ビードリング16側に押し付けられながら加熱されることにより、高温高圧状態で加硫され、所定時間経過後に下金型12及び上金型15が開放されて脱型されることにより加硫済みのタイヤケース1となる。
【0017】
図3は、トレッド加硫装置30に未加硫のトレッド片2´を配置した状態を示す幅方向断面図である。同図を用いて、トレッド加硫装置30の構造及びトレッド加硫装置30によるトレッド片2´の加硫方法を説明する。
同図において、トレッド片2´を加硫成型するトレッド加硫装置30は、概略、踏面基台31、踏面基台31上に固定される踏面プラテン32、踏面プラテン32上に固定される踏面金型33、踏面金型33に対向して設けられる非踏面金型34、非踏面金型34を固定する非踏面プラテン35、非踏面基台36、及び加圧昇降機構37を備える。
踏面基台31及び非踏面基台36は互いに対向する矩形状の板体であって、踏面基台31と接続される加圧昇降機構37の昇降動作により互いに近接または離間する。
【0018】
踏面プラテン32及び非踏面プラテン35は、踏面基台31、非踏面基台36よりも小さな矩形状の板体であって、内部に長手方向に沿って波線的に延長する流路32A;35Aを有する。流路32A;35Aは、図外の熱源供給装置から供給される高温の蒸気や液体等の加熱媒体が流入する流路である。踏面プラテン32及び非踏面プラテン35は、流路32A;35Aに供給される加熱媒体により、踏面金型33及び非踏面金型34をそれぞれ加熱する熱源として機能し、踏面金型33及び非踏面金型34が内部に配置されるトレッド片2´を加熱する。
【0019】
踏面金型33は、例えばアルミニウム製の金属体であって、下方に位置する熱源としての踏面プラテン32からの熱を内部のトレッド片2´に伝達可能である。踏面金型33は、加硫時にトレッド片2´の踏面と対向する内側面が型付け面33Aとして形成される。
型付け面33Aは、幅方向に沿って連続する凹凸が形成され、後述の非踏面金型34の型付け面34pとによって形成される成型空間内に配置されるトレッド片2´が、型付け面33Aに押し付けられることにより、トレッド溝2Cによって区画されたブロック状のトレッドパターンが形成される。
なお、本例においては、トレッド片2のトレッドパターンを所謂ブロックパターンとして形成する例を示したが、当該パターンに限定されるものではなく、他のパターンであってもよい。
【0020】
非踏面金型34は、踏面金型33と同様に、例えばアルミニウム製の矩形状金属体であって、上方に位置する熱源としての非踏面プラテン35からの熱をトレッド片2´に伝達可能である。
非踏面金型34は、加硫時にトレッド片2´の非踏面2Aと対向する内周面が型付け面34pとして形成された非踏面型付け部34Aと、トレッド片2´の幅方向中間位置に形成される凸部Uと対向する内周面が型付け面34qとして形成された凸部型付け部34Bとを有する。
非踏面型付け部34Aの型付け面34pは、幅方向及び円周方向に湾曲した面として形成される。よって、加硫完了後のトレッド片2の非踏面2Aの形状は、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aの湾曲形状と一致する。
凸部型付け部34Bの型付け面34qは、トレッド片2´の幅方向中央に位置し、非踏面型付け部34Aと連続してトレッド片2´の上方側へ窪んだ面として形成される。よって、加硫完了後のトレッド片2の非踏面2Aには、当該非踏面2Aから突出する凸部Uが成型される。
【0021】
加硫済みのトレッド片2の非踏面2Aを成型する型付け面34p及び非踏面2Aから突出する凸部Uを成型する型付け面34qの表面には、前記同様目粗し手段20が貼着される。
そして、未加硫のトレッド片2´の非踏面2A側の表面が目粗し手段20を介して型付け面34p及び型付け面34qによって型付けされることにより、加硫完了後のトレッド片2の非踏面2A及び凸部Uの表面は、目粗し手段20の表面粗さに応じた粗さで成型されることとなる。
【0022】
加圧昇降機構37は、踏面基台31の下方側に位置し、踏面基台31を水平状態で支持する。また、加圧昇降機構37は、踏面基台31の長手方向に沿って複数配置され、踏面基台31を下方から支持する。加圧昇降機構37は、図外の油圧ポンプによって上下方向に伸縮動作するピストンロッドを有し、ピストンロッドの伸縮動作に伴って上方の踏面金型33及び非踏面金型34のプレス動作又は開放動作が行われる。
【0023】
図3を用いて、トレッド加硫装置30によるトレッド片2´の加硫方法を説明する。
トレッド片2´は、加圧昇降機構37が伸縮動作されることにより踏面金型33及び非踏面金型34を開放した状態で踏面金型33上に載置される。
なお、加硫前の未加硫のトレッド片2´は、図外の押出成型機で予め矩形状等の断面形状及び長さに成型される帯状のゴム部材である。
【0024】
次に、加圧昇降機構37を作動させ、踏面基台31、踏面プラテン32及び踏面金型33を上昇させる。踏面金型33が上方の非踏面金型34と当接すると、非踏面型付け部34Aの型付け面34p及び凸部型付け部34Bの型付け面34qによって成型空間が形成され、当該成型空間内のトレッド片2´は、所定の圧力が印加された状態で密閉される。即ち、トレッド片2´は、踏面金型33及び非踏面金型34によって加圧され、型付け面34p及び型付け面34qに沿った形状に成型される。
【0025】
踏面金型33及び非踏面金型34によるプレス動作完了後、踏面プラテン32の流路32A及び非踏面プラテン35の流路35A内には、図外の熱源供給装置から加熱媒体が供給される。加熱媒体の供給により、踏面プラテン32及び非踏面プラテン35が加熱されるとともに、熱伝達によって踏面金型33及び非踏面金型34が加熱される。
踏面金型33及び非踏面金型34が加熱された状態において、金型内部に配置されるトレッド片2´の加硫反応は、踏面2B及び非踏面2Aからトレッド片2´の中心部に向かって進行する。そして、トレッド片2´は、踏面金型33及び非踏面金型34によって加圧された状態で徐々に加熱され、必要加硫度に達するまで加硫される。
【0026】
加硫成型が完了すると、加硫済みのトレッド片2の踏面2Bには、所定のトレッドパターンが形成され、トレッド片2の非踏面2A側には、タイヤケース1のトレッド貼付け面1A側に形成される凹部Cと合致する凸部Uが形成される。そして、非踏面2A及び凸部Uは、目粗し手段20によって、表面が目粗しされた状態となる。
【0027】
図4(a)は、タイヤケース1とトレッド片2とを一体化したときの断面図である。
同図を用いて、ケース加硫装置10によって加硫されたタイヤケース1及びトレッド加硫装置30によって加硫されたトレッド片2の構造と、タイヤケース1及びトレッド片2を用いて製品タイヤとして成形する方法とについて説明する。加硫成型を終えたタイヤケース1は、トレッド貼付工程及び加硫工程を経て、製品タイヤとして成形される。
タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aは、幅方向及び円周方向に沿って湾曲して形成される面であって、ケース加硫装置10により加硫される際に目粗し手段20によって目粗しされた面である。トレッド貼付け面1A側の幅方向中間位置には、断面矩形状の凹部Cが形成され、当該凹部Cは、タイヤケース1の円周方向に沿って等間隔に形成される。トレッド貼付け面1Aには、トレッド片2の非踏面2Aが未加硫のクッションゴム41を介して貼着される。
【0028】
トレッド片2の非踏面2Aは、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aと対向する面であり、幅方向及び円周方向に沿って湾曲した面が形成される。非踏面2Aは、トレッド加硫装置30により加硫される際に目粗し手段20によって目粗しされた面であって、トレッド貼付け面1Aと対向する面である。非踏面2A側の幅方向中間位置には、断面矩形状の凸部Uが形成され、当該凸部Uは、タイヤケース1のトレッド貼付け面1A側に形成された凹部Cと合致する。また、路面と接地するトレッド片2の踏面2Bは、円周方向に沿って所定の形状のトレッド溝2Cが形成される。
【0029】
次に、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aにトレッド片2を貼着する方法について説明する。
まず、トレッド貼付工程においては、タイヤケース1を保持する図外のケース保持装置に対してタイヤケース1に内圧を加えた状態で保持させる。
次に、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aには、クッションゴム41がトレッド貼付け面1Aの全域と凹部Cとを覆うようにタイヤケース1の円周方向に沿って均一な厚みとなるように配置される。
次に、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aには、クッションゴム41を介して複数のトレッド片2がタイヤケース1の円周方向に沿って均等となるように貼着され、タイヤケース1のトレッド貼付け面1A側の凹部Cとトレッド片2の非踏面2A側の凸部Uとが合致した状態で貼着される。
つまり、複数のトレッド片2は、互いの間隔が等間隔となるようにトレッド貼付け面1Aに貼着され、それぞれタイヤケース1の凹部Cとトレッド片2の凸部Uとが嵌め合わされる。
このように、タイヤケース1のトレッド貼付け面1A側に形成された凹部Cとトレッド片2の非踏面2A側に形成された凸部Uとを合致させた状態で、トレッド片2を貼着することにより、トレッド片2を容易にかつ精度良くトレッド貼付け面1Aに位置決めすることができ、生産効率を大幅に向上することが可能となる。
【0030】
図4(b)は、タイヤケース1と複数のトレッド片2とを一体化したときの部分斜視図である。
タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aにトレッド片2が貼着されると、隣接するトレッド片2同士には、隙間Gが形成される。
隙間Gは、タイヤケース1の円周方向に沿って等間隔に形成される空隙であって、当該隙間Gからトレッド貼付け面1Aが露出する。そのため、隙間Gに対して、未加硫のクッションゴム41を幅方向に沿って均一厚さで充填する。
これによって、後述の製品タイヤとして成形された後において、局所的にゴム層が薄い部分が発生することを防止でき、かつ、隙間Gから例えば水や砂等の異物が侵入することを防止できる。
【0031】
複数のトレッド片2が貼着されたタイヤケース1は、加硫工程に搬送される。
加硫工程においては、クッションゴム41を介して一体化されたタイヤケース1とトレッド片2とを外周より包み込むエンベロープ内に投入した後に、エンベロープ内の空気を吸引し減圧することにより、トレッド片2をタイヤケース1のトレッド貼付け面1Aに押し付けた状態とする。
次に、エンベロープ内に投入されたタイヤケース1及びトレッド片2を加硫缶と呼ばれる加硫装置に搬入する。加硫缶内部に搬入されたタイヤケース1及びトレッド片2は、加硫缶の本体内部の天井に設けられたフック等に縦置き状態で吊るされ、加熱加圧状態で加硫される。そして、加硫缶により、タイヤケース1とトレッド片2との間に介在するクッションゴム41を加硫することにより、タイヤケース1とタイヤのトレッド片2とが製品としての機能を発揮し得る製品タイヤとして製造される。
【0032】
以上のとおり、タイヤケース1のトレッド貼付け面1A側及びトレッド片2の非踏面2A側にそれぞれ互いに合致する凹部C及び凸部Uを形成し、当該凹部C及び凸部Uを合致させた状態で嵌め合せ、タイヤケース1の円周方向に沿って均等にトレッド片2を貼着するため、トレッド片2がタイヤケース1の幅方向及び円周方向に位置ずれすることを防止することが可能となる。
また、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aにトレッド片2が等間隔に貼着されるため、偏摩耗が生じることを防止でき、安定した乗り心地性能を得ることも可能となる。
また、隣接するトレッド片2間に生じる隙間Gにクッションゴム41を充填するため、局所的にゴム層が薄い部分を生じることを防止でき、さらに異物等が侵入することを防止することが可能となる。
また、タイヤケース1及びトレッド片2を加硫する際に、トレッド貼付け面1A及び非踏面2A側を目粗し手段20によって目粗しするので、クッションゴム41のトレッド貼付け面1A及び非踏面2Aの表面に対する定着度を向上させることができる。
また、トレッド片2は、円周方向に沿って複数に分割されるため、加硫装置の小型化と装置小型化による設備コストの低減を図ることが可能となる。
また、トレッド片2は、幅方向及び円周方向に沿って湾曲した形状として形成されるため、タイヤケース1のトレッド貼付け面1Aに帯状のタイヤトレッドを貼着する際に生じるタイヤトレッドの中央部と両端部の長さの不一致を防止することが可能となる。
【0033】
また、凹部C及び凸部Uの形状及び個数は上記実施例に限られるものではない。
以下、タイヤケース1及びトレッド片2の凹部C及び凸部U(以下凹凸部C;Uとする)の変形例について説明する。
図5(a)は、変形例に係る凹凸部C;Uの拡大断面図であって、トレッド貼付け面1A側に凸部Uが形成され、非踏面2A側に凹部Cが形成される点で上記実施例と異なる。
本変形例における凹凸部C;Uは、断面矩形状であって、タイヤケース1の幅方向中間位置においてそれぞれ互いに合致して嵌め合わされる。
【0034】
図5(b)は、他の変形例に係る凹凸部C;Uの拡大断面図であって、トレッド貼付け面1A側及び非踏面2A側に形成される凹凸部C;Uの形状が三角形である点で異なる。
本変形例における凹凸部C;Uは、断面V字状であって、タイヤケース1の幅方向中間位置においてそれぞれ互いに合致して嵌め合わされる。
【0035】
図5(c)は、他の変形例に係る凹凸部C;Uの拡大断面図であって、トレッド貼付け面1A側及び非踏面2A側に形成される凹凸部C;Uが複数存在する点で異なる。
即ち、本変形例における凹凸部C;Uは、断面矩形状であって、タイヤケース1の幅方向中間位置に形成される凹凸部C;Uと、当該凹凸部C;Uから幅方向外側に離間した位置に形成される一方の凹凸部C;Uと、他方の凹凸部C;Uとがそれぞれ互いに合致し、嵌め合わされる。
本変形例における凹凸部C;Uによれば、嵌め合わされる凹凸部C;Uの数が多くなり、凹凸部C;Uの合致する総面積が大きくなるため、トレッド片2がタイヤケース1の幅方向及び円周方向に生じる位置ずれを効果的に防止することが可能となる。
【0036】
以上、本発明の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態に多様な変更、改良を加えることは当業者にとって明らかであり、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、上記実施形態において、ケース加硫装置10及びトレッド加硫装置30によって新規に加硫成型されたタイヤケース1及びトレッド片2について説明したが、使用済みタイヤの外周面をバフ掛けしてトレッド貼付け面1A側と凹部Cとを形成し、当該凹部Cと合致する凸部Uをトレッド片2の非踏面2A側に形成し、タイヤケース1の円周方向に沿って凹凸部C;Uを嵌め合わせることによって、タイヤケース1にトレッド片2を貼着するいわゆる更生タイヤの形態とすることもなし得る。
【符号の説明】
【0037】
1 タイヤケース、1A トレッド貼付け面、
2 トレッド片、2A 非踏面、2B 踏面、
10 ケース加硫装置、11 下プラテン、12 下金型、13 下ビードリング、
14 上プラテン、15 上金型、16 上ビードリング、17 ブラダー、
20 目粗し手段、30 トレッド加硫装置、31 踏面基台、32 踏面プラテン、
33 踏面金型、34 非踏面金型、35 非踏面プラテン、36 非踏面基台、
41 クッションゴム、C 凹部、G 隙間、U 凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫済みタイヤケースのトレッド貼付け面に複数分割された加硫済みトレッド片を貼着してタイヤを製造する方法であって、
前記タイヤケースのトレッド貼付け面側及び前記トレッド片の非踏面側にそれぞれ互いに合致する凹凸部を形成し、
前記凹凸部を合致させた状態で前記トレッド片を貼着することを特徴とするタイヤ製造方法。
【請求項2】
前記凹部をタイヤケースのトレッド貼付け面側に形成し、
前記凸部をトレッド片の非踏面側に形成し、
前記凹凸部を合致させた状態で前記トレッド片を前記タイヤケースの円周方向に沿って均等に貼着することを特徴とする請求項1記載のタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記複数のトレッド片間にクッションゴムを充填することを特徴とする請求項1又は請求項2記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記加硫済みタイヤケース及び加硫済みトレッド片を加硫する際に、前記トレッド貼付け面及び非踏面に接する目粗し手段を介して加硫することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載のタイヤ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−40803(P2012−40803A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185165(P2010−185165)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】