説明

タクティールスイッチ

【課題】特に回胴式遊技機の設定変更ボタンスイッチに適用した場合であっても、ホール側で適正に定めたボーナス出現確率を改変するような不正行為を有効に防止できるようにしたタクティールスイッチを提供する。
【解決手段】タクティールスイッチ11は、第2押しボタン6の自由状態で第1押しボタン5の押圧操作をロックし、第2押しボタン6の矢印B方向への押圧操作状態で第1押しボタン5を押圧操作し得るように構成されるため、クリック感を得ながら押圧操作し得るものでありながら、第2押しボタン6を押圧操作しなければ第1押しボタン5を操作できない状況を提供できる。従って、例えばスロットマシンの設定変更ボタンスイッチとして用いる場合、不正行為者による不正行為の実行を極めて有効に阻止できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押圧操作時にクリック感が得られるタクティールスイッチに係り、特にスロットマシン等の回胴式遊技機に用いて好適なタクティールスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スイッチケースから突出する押しボタンを押し込んだ際にクリック感を発しつつオン状態になり、押しボタンを離した際にオフ状態に復帰するように構成した常開タイプのタクティールスイッチ(Tactile Switch)が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のタクティールスイッチは、基台の凹部底面に固定接点を有し、該固定接点の上面に円形クリックバネが装着され、上記基台の底面に対して該円形クリックバネの上方に設けられた押しボタンが押圧された際、該押しボタンの作動部でクリックバネを押圧し、該押圧によりクリックバネの中央部を固定接点に接触させてオン作動させるように構成されている。そして、押しボタン及び作動部を弾性力を有するラバーで形成することにより、押しボタンの押圧時にクリックバネ等に過度の衝撃が作用することを軽減し、クリックバネ等の寿命を延ばすようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2001−84865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されるタクティールスイッチにあっては、操作時にクリック感が得られ、押圧による過度の衝撃を吸収することはできるものの、押しボタンの押圧操作で直接的にスイッチをオン/オフするだけの構成のため、例えば、スロットマシン等の回胴式遊技機の設定変更ボタンスイッチに適用する場合には、不正行為者(所謂ゴト師)による不正行為(所謂ゴト行為)によって比較的容易に設定変更される等の虞がある。
【0006】
一般にスロットマシンは、複数種の図柄を円周方向に複数有する左右方向3列の回胴リールを備え、該回胴リールをスタートレバーの操作で回転させた後、3個の停止ボタンをそれぞれ押圧操作することで、各停止ボタンに対応する回胴リールが順次停止し、各回胴リールに備えた所定の図柄が一致した際にボーナスが得られ、多数のメダルを取得できるように構成されている。近年、このようなスロットマシンを設置した遊技店(ホール)において、設定変更ボタンスイッチの操作でボーナス出現確率が適正に設定されたスロットマシンに対し、針金等の治具(ジグ)を用いる等によって上記設定変更ボタンスイッチを不正に操作し、ホール側で定めたボーナス出現確率とは異なる高いボーナス出現確率に改変した状態で、善良な遊技者を装い不正にメダルを取得する不正行為者が横行している。このような状況下、上述したようなタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチとして用いる場合、不正行為を効果的に防止することは困難である。
【0007】
そこで本発明は、特に回胴式遊技機の設定変更ボタンスイッチに適用した場合であっても、ホール側で適正に定めたボーナス出現確率を改変するような不正行為を有効に防止できるように構成し、もって上述した課題を解決したタクティールスイッチを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、スイッチケース(C1,C2)内に、互に絶縁状態にされた第1(13,14)及び第2接点(15)と、これら両接点(13,14,15)上で押圧変形されて該両接点を導通状態と絶縁状態とに切り換える可動接片(3)と、を備え、該可動接片(3)の押圧変形時にクリック感を発してオン/オフ動作してなるタクティールスイッチ(11,12)において、
前記スイッチケース(C1,C2)内に、互に交差する第1(矢印A方向)及び第2方向(矢印B方向)にそれぞれ移動可能に支持された第1及び第2押しボタン(5,6)を備え、
前記第1押しボタン(5)は、前記第1方向(矢印A方向)への移動にて前記可動接片(3)を押圧変形させて前記第1及び第2接点(13,14,15)を導通状態と絶縁状態とに切り換え、
前記第2押しボタン(6)は、初期位置(図1に示す位置)に復帰可能に付勢力を与えられ、かつ該初期位置にて前記第1押しボタン(5)の前記第1方向(矢印A方向)への移動を阻止する操作ロック部(17a,19a)と、前記付勢力に抗して前記第2方向(矢印B方向)に移動したとき前記第1押しボタン(5)の前記第1方向(矢印A方向)への移動を許容するロック解除部(17b,19b)と、を有し、
前記第2押しボタン(6)の自由状態にて前記第1押しボタン(5)の押圧操作をロックし、かつ前記第2押しボタン(6)の前記第2方向(矢印B方向)への押圧操作状態にて前記第1押しボタン(5)を押圧操作し得るように構成した、
ことを特徴とするタクティールスイッチ(11,12)にある。
【0009】
請求項2に係る本発明は(例えば図1〜図3及び図5参照)、前記第1押しボタン(5)が、前記第2押しボタン(6)の前記操作ロック部(17a,19a)に対向する位置に凸部(27a,27b)を有し、
前記第2押しボタン(6)は、前記ロック解除部(17b,19b)により前記第1押しボタン(5)の移動を許容した位置から前記初期位置(図1に示す位置)に復帰する際に前記第1押しボタン(5)の前記凸部(27a,27b)を押し上げる方向に傾斜する傾斜面(17c,19c)を前記操作ロック部(17a,19a)に有してなる、
請求項1記載のタクティールスイッチ(11,12)にある。
【0010】
請求項3に係る本発明は(例えば図1ないし図3参照)、前記スイッチケースが、前記第1(13,14)及び第2接点(15)を配置した第1ケース部(21)と、該第1ケース部(21)に装着される第2ケース部(7)と、を有し、
前記第1ケース部(21)は、前記第1(13,14)及び第2接点(15)にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子(11a〜11d)を有し、
前記第2ケース部(7)は、前記第1ケース部(21)がその対応する実装部(18)に実装された状態にて該第1ケース部(21)と該実装部(18)との間からの前記接続端子(11a〜11d)の露出を保護するカバー部(30)を有してなる、
請求項1又は2記載のタクティールスイッチ(11)にある。
【0011】
請求項4に係る本発明は(例えば図1ないし図3参照)、前記複数の接続端子(11a,11b,11c,11d)が、前記第1方向(矢印A方向)に沿うように前記第1ケース部(21)に設けられてなる、
請求項3記載のタクティールスイッチ(11)にある。
【0012】
請求項5に係る本発明は(例えば図4及び図5参照)、前記スイッチケースが、前記第1(13,14)及び第2接点(15)を配置した第1ケース部(22)と、該第1ケース部(22)に互に反対の方向から装着される第2ケース部(7)及び第3ケース部(33)と、を有し、
前記第1ケース部(22)は、前記第1(13,14)及び第2接点(15)にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子(31a〜31d)を有し、
前記第2及び第3ケース部(7,33)は、前記第1ケース部(22)がその対応する実装部(18)に実装された状態にて該第1ケース部(22)と該実装部(18)との間からの前記接続端子(31a〜31d)の露出を保護するカバー部を構成してなる、
請求項1又は2記載のタクティールスイッチ(12)にある。
【0013】
請求項6に係る本発明は(例えば図4及び図5参照)、前記複数の接続端子(31a,31b,31c,31d)が、前記第1方向(矢印A方向)と直交する方向(例えば矢印D方向)に沿うように前記第1ケース部(22)に設けられてなる、
請求項5記載のタクティールスイッチ(12)にある。
【0014】
請求項7に係る本発明は(例えば図6参照)、前記タクティールスイッチ(11,12)が、ボーナス出現確率を異ならせる設定変更機能を有する回胴式遊技機(40)用の設定変更ボタンスイッチとして用いられてなる、
請求項1ないし6のいずれかに記載のタクティールスイッチ(11,12)にある。
【0015】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る本発明によると、第2押しボタンの自由状態にて第1押しボタンの押圧操作をロックし、かつ第2押しボタンの第2方向への押圧操作状態にて第1押しボタンを押圧操作し得るように構成したので、クリック感を得ながら押圧操作し得るタクティールスイッチでありながら、第2押しボタンを押圧操作してからでなければ第1押しボタンを操作することができない状況を提供することができる。このため、例えば、本発明のタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチとして用いる場合、不正行為者が針金等の治具を用いる等によって設定変更ボタンスイッチを不正に操作しようとしても、第2押しボタンを押圧操作した状態を維持しつつ、これとは操作方向の異なる第1押しボタンを押圧操作しなければならず、従って、不正行為の実行を極めて有効に阻止することが可能になる。
【0017】
請求項2に係る本発明によると、操作ロック部に傾斜面を設けた簡単な構成により、第2押しボタンを第2方向に操作して第1押しボタンを押圧操作した後に第2押しボタンから手を離して開放するだけで、押し潰された可動接片が復元する際の第1押しボタンに対する付勢力の有無に拘わらず、該第1押しボタンを操作前の状態に復帰させ得るスイッチ構成を実現できる。
【0018】
請求項3に係る本発明によると、第1ケース部が、第1及び第2接点にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子を有し、第2ケース部が、第1ケース部がその対応する実装部に実装された状態にて該第1ケース部と該実装部との間からの接続端子の露出を保護するカバー部を有するので、接続端子がスイッチケースから外方に露出するような場合に比して、金属板等を用いて短絡障害(ショート)を発生させるような不正行為を確実に防止することができる。
【0019】
請求項4に係る本発明によると、複数の接続端子が第1方向に沿うように第1ケース部に設けられるので、接続端子をその対応する実装部に実装した状態で、第1押しボタンの押圧操作を安定して行うことができるようになる。
【0020】
請求項5に係る本発明によると、第1ケース部が、第1及び第2接点にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子を有し、第2及び第3ケース部が、第1ケース部がその対応する実装部に実装された状態にて該第1ケース部と該実装部との間からの接続端子の露出を保護するカバー部を構成するので、接続端子がスイッチケースから外方に露出するような場合に比して、金属板等を用いて短絡障害(ショート)を発生させるような不正行為を確実に防止することができる。
【0021】
請求項6に係る本発明によると、複数の接続端子が第1方向と直交する方向に沿うように第1ケース部に設けられるので、実装部の状況に応じて直立状態に実装できる構造を得ることができる。
【0022】
請求項7に係る本発明によると、タクティールスイッチが、ボーナス出現確率の設定変更機能を有する回胴式遊技機用の設定変更ボタンスイッチとして用いられるので、第2押しボタンを押し込みつつ第1押しボタンを押圧操作するという段階的操作を実行しなければ設定変更できない本タクティールスイッチにあっては、第1方向と第2方向という異なる方向に力を段階的に作用させる操作に起因して、針金等の治具を用いて行うような不正な遠隔操作が極めて困難になる。従って、不正発覚を恐れながら手早く作業を行いたい不正行為者にとっての不正行為を有効に抑止することができる。一方、遊技店(ホール)の係員が回胴式遊技機の前扉を正規の状態に開放して設定変更する場合には、片手の親指で第2押しボタンを押し込みつつ第1押しボタンを人差し指で押し込む等により、速やかに設定変更操作することができる。また、従来構造のタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチに適用する場合には、必要に応じてプラスチック等からなる保護カバーを設け該保護カバーをいちいち開けなければ設定変更を行うことができなかったが、本発明のタクティールスイッチによれば、そのような保護カバーの設置を不要にすることが可能であり、従って、遊技店係員による設定変更の操作をより迅速化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図1は本発明に係る実施形態におけるタクティールスイッチの初期状態を示す側面断面図、図2は本実施形態におけるタクティールスイッチの操作状態を示す側面断面図、図3はタクティールスイッチの全体構成を示す分解斜視図、図4はタクティールスイッチの変形例を示す全体斜視図、図5は該変形例の全体構成を示す分解斜視図、図6は本実施形態及び変形例のタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチとして用いたスロットマシンを前扉開放状態で示す正面図である。
【0024】
図3に示すように、本実施の形態におけるタクティールスイッチ11は、第1ケース部21と該第1ケース部21に装着される第2ケース部7とからなるスイッチケースC1を備えており、該スイッチケースC1内には、可動接片3及び板バネ4と、互に交差する矢印A方向(第1方向)及び矢印B方向(第2方向)にそれぞれ移動可能に支持された第1押しボタン5及び第2押しボタン6とが収容されている。該第1押しボタン5は、矢印A方向への移動にて可動接片3を押圧変形させて固定接点(第1接点)13,14及びコモン接点(第2接点)15を導通状態と絶縁状態とに切り換えるように構成される。また、第2押しボタン6は、初期位置(図1に示す位置)に復帰可能となるように板バネ4によって付勢力を付与され、かつ該初期位置にて第1押しボタン5の矢印A方向への移動を阻止する操作ロック部17a,19aと、上記付勢力に抗して矢印B方向に移動したとき第1押しボタン5の矢印A方向への移動を許容するロック解除部17b,19bと、を有している。
【0025】
すなわち、上記第1ケース部21は、4つの側面9a,9b,9c,9dと底面9eとで囲まれた収容部2aを有する略々矩形筒体状に構成されており、底面9eの中央部分の台座部10に形成された円形凹部10aに、コモン接点15と、該コモン接点15を挟んで両側に位置する固定接点13,14と、を露出して備えている。
【0026】
円形凹部10aには、ドーム状で平面視円形状の可動接片3が、外周縁部を固定接点13,14に接触させ、かつ中央の中心孔3aの部分を浮かせた状態で収容されている。この可動接片3は、導電性と共に弾性(バネ性)を有する板金をドーム状に打ち抜き加工することで作製されたものであり、互に絶縁状態の固定接点13,14及びコモン接点15の上部で第1押しボタン5の押圧操作によって押圧変形された際に固定接点13,14及びコモン接点15を導通状態とし、第1押しボタン5が解放されてドーム状に復帰した際に絶縁状態に戻す。
【0027】
可動接片3の頂点部(中心部)に形成された上記中心孔3aは、後述する第1押しボタン5の凸部26a(図1参照)を位置決めすると共に塵埃の集積を回避するために形成されている。このような可動接片3は、第1押しボタン5によって押下された際、頂点部が下向きに変形しつつ思案点を通過するとき、急峻に反転してクリック感を発生する。また可動接片3は、解放された自由状態では、そのバネ性(弾性)によって形状を急峻にドーム状に復元させてクリック感を発生すると共に、第1押しボタン5を凸部26aを介して押し上げて、第1押しボタン5の外周の規制部25を、第2ケース部7の蓋部29内面に当接させて該第1押しボタン5を初期状態(図1に示す位置)に戻す。
【0028】
また、側面9b,9cの内面における側面9dに近接する部位には、長方形状の板バネ4の両端部を挿入・係合して該板バネ4を第1ケース部21に支持するための縦方向の装着溝8,8が形成されている。更に側面9aには、第2押しボタン6の押圧操作部16を摺動自在に挿通して突出させる開口部2bが形成されている。上記板バネ4は、矢印B方向に移動する第2押しボタン6の凸部21に準じて図2に示すように弾性変形すると共に、第2押しボタン6への操作力が解除された際に凸部21を介して第2押しボタン6を矢印B方向と逆の方向に押し返して復帰させる。
【0029】
また、側面9aの左右に位置する側面9b,9cには、それぞれ凹部2c,2cが形成されており、これら凹部2c,2cには、中央部に係合凸部12がそれぞれ形成され、かつ凹部2c,2cにおける該係合凸部12の両側下部に、接続端子11a,11b及び接続端子11c,11dがそれぞれ設けられている。即ち、これら接続端子11a〜11dは、矢印A方向に沿うように第1ケース部21に設けられており、これにより、接続端子11a〜11dをその対応する実装部18(図1参照)に実装した状態での第1押しボタン5の押圧操作を安定して行うことができるようになる。
【0030】
そして、接続端子11a,11bは、コモン接点15に導通した状態で第1ケース部21の下部外方に突出形成され、接続端子11cは、固定接点14に導通した状態で第1ケース部21の下部外方に突出形成され、接続端子11dは、固定接点13に導通した状態で第1ケース部21の下部外方に突出形成されている。即ち、接続端子11a,11bは、コモン接点15に導通した状態でモールド成型され、接続端子11cは、固定接点14に導通した状態でモールド成型され、図3における第1ケース部21の奥側に設けられた接続端子11d(図1及び図2参照)は、固定接点13に導通した状態でモールド成型されている。
【0031】
第2押しボタン6は、開口部2bから第1ケース部21の外方に突出する押圧操作部16と、板バネ4に当接する凸部21と、該凸部21を板バネ4に弾性接触させた状態で開口部2b周囲の内面に係合して押圧操作部16の抜けを規制する規制部16aと、を有している。更に、第2押しボタン6は、板バネ4によって矢印B方向への移動前の初期位置(図1に示す位置)に復帰可能に付勢力を与えられ、かつ該初期位置にて第1押しボタン5の矢印A方向への移動を阻止する上記操作ロック部17a,19aと、板バネ4の付勢力に抗して矢印B方向に移動したとき第1押しボタン5の矢印A方向への移動を許容する上記ロック解除部17b,19bと、を有している。これら操作ロック部17a,19a及びロック解除部17b,19bは、押圧操作部16と凸部21の間で矢印B方向に延びる延在部20の一端部17及び他端部19にそれぞれ形成されている。操作ロック部17a,19aには、ロック解除部17b,19bにより第1押しボタン5の移動を許容した位置から上記初期位置に復帰する際に、後述の凸部27a,27bを押し上げる方向に傾斜(即ち、図2における矢印B方向と逆の方向に向かって下降するように傾斜)する傾斜面17c,19cが形成されている。
【0032】
第1押しボタン5は、矢印A方向への移動で可動接片3を押圧変形させて固定接点13,14及びコモン接点15を導通状態と絶縁状態とに切り換え得るように、スイッチケースC1内における延在部20と第2ケース部7との間に配置されている。この第1押しボタン5は、下部を収容部2a内に挿入した状態で第2ケース部7の略々小判形状の開口部29aから摺動自在に突出する平面視略々小判状の押圧操作部23と、開口部29a周囲の内面に係合して押圧操作部23の抜けを規制する規制部25と、を有している。更に第1押しボタン5は、図1及び図2に示すように、第2押しボタン6の操作ロック部17a,19aに対向する位置に上記凸部27a,27bを有すると共に、これら凸部27a,27bの中間(つまり、押圧操作部23の中心)から下方に突出する押圧部26を有している。該押圧部26の下部中央は、下方に円錐状に突出する上記凸部26aとして構成される。
【0033】
第2ケース部7は、開口部29aから第1押しボタン5の押圧操作部23を突出させた状態で第1ケース部21の上部に密接する矩形状の蓋部29と、該蓋部29の一端部及び他端部からそれぞれ垂下するように形成された一対のカバー部30,30と、を有している。これらカバー部30,30には、それぞれ、第1ケース部21の凹部2c,2cに上方から滑り移動して係合凸部12に係合する係合穴部30a,30aが形成されている。カバー部30,30は、弾性を有するように比較的薄い板状に形成されると共に、第1ケース部21がその対応する実装部18(図1参照)に実装された状態にて、これら第1ケース部21と実装部18との間からの接続端子11a〜11dの露出を保護するように機能する。
【0034】
上記構成を備える本タクティールスイッチ11は、図1及び図2に示す組立て状態にて、第2押しボタン6を初期位置から矢印B方向に移動させてロック解除部17b,19bにより第1押しボタン5の矢印A方向への移動を許容した状態で該第1押しボタン5を押圧操作し得るように、かつ可動接片3の押圧変形時にクリック感を発してオン/オフ動作するように構成される。
【0035】
すなわち、本タクティールスイッチ11は、図1の初期状態にあっては可動接片3がコモン接点15に接触しておらず開状態(即ち、オフ状態)にあり、接続端子11a,11bと接続端子11c,11dとを経由して電流が流れることはない。一方、タクティールスイッチ11は、図2の操作状態にあっては、可動接片3が思案点を超えて下向きに押圧変形されて中心孔3a付近がコモン接点15に急峻に接触して閉状態(即ち、オン状態)になり、接続端子11a,11bと接続端子11c,11dとを経由して電流が流れる。この閉状態において、第2押しボタン6の押圧操作部16に対する押圧力を解除すると、第1押しボタン5が、可動接片3の上向きに働く復元力と、板バネ4の復元力に準じて矢印B方向と逆向きに移動される第2押しボタン6の傾斜面17c,19cにより凸部27a,27bに働く押上げ力とで、矢印B方向と逆の方向に移動させられて復帰する。
【0036】
本実施の形態のタクティールスイッチ11は、スイッチケースC1における第1ケース部21が、固定接点13,14及びコモン接点15にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する接続端子11a〜11dを有し、第2ケース部7が、第1ケース部21が実装部18に実装された状態にて第1ケース部21と実装部18との間からの接続端子11a〜11dの露出を保護するカバー部30,30を有するので、接続端子がスイッチケースから外方に露出するような場合に比して、金属板等を用いて短絡障害(ショート)を発生させるような不正行為を確実に回避することができる。
【0037】
ついで、図4及び図5に沿って、横向き形状にしたタクティールスイッチの変形例について説明するが、この変形例は、図1ないし図3に示したタクティールスイッチ11に比し、接続端子の向きを横向きにすると共にその構成に必要な部位を変更して、図4及び図5の矢印A方向と直交する方向(即ち、図4の矢印D方向)に沿うように接続端子31a〜31dを設けた点等が異なるだけで、他の部分は略々同一なので、共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。即ち、図5においては、操作ロック部17a、ロック解除部17b、固定接点13,14、コモン接点15、傾斜面17c,19c、凸部27a,27b等の図示が省略されているが、それらは、図1〜図3で説明したタクティールスイッチ11の場合と同様に装備されている。
【0038】
図5に示すように、変形例のタクティールスイッチ12は、図3における第1ケース部21とは形状が異なる第1ケース部22と、該第1ケース部22の上部に装着される第2ケース部7と、該第1ケース部22の下部に装着される第3ケース部33と、からなるスイッチケースC2を備えている。
【0039】
第1ケース部22は、図3の第1ケース部21より同図上下方向に長く形成されており、内部には、台座部10、円形凹部10a、コモン接点15、固定接点13,14、板バネ4、第1押しボタン5及び第2押しボタン6を第1ケース部21と同様に備えている。第1ケース部22では、側面9b,9cの凹部2c,2cにそれぞれ係合凸部12が形成されると共に、側面9cの凹部2cから、矢印A方向と直交する方向(即ち、図4の矢印D方向)に沿うように接続端子31a,31b,31c,31dが突出形成されている。つまり、側面9cの凹部2cにおける係合凸部12の両側下部から、図5の左方に突出するように接続端子31b,31cが設けられ、かつ該接続端子31b,31cの下方から同方向に突出するように接続端子31a,31dが設けられている。また、第1ケース部22における側面9aの開口部2bの下側には係合凸部32が形成されており、同様に、側面9dの下側にも不図示の係合凸部が形成されている。
【0040】
上記接続端子31a〜31dも、タクティールスイッチ11の場合と同様、接続端子31c,31dが、コモン接点15に導通した状態で第1ケース部22の側部外方に突出形成され、接続端子31aが、固定接点14に導通した状態で第1ケース部22の側部外方に突出形成され、接続端子31bが、固定接点13に導通した状態で第1ケース部22の側部外方に突出形成される。接続端子31c,31dは、コモン接点15に導通した状態でモールド成型され、接続端子31aは、固定接点14に導通した状態でモールド成型され、接続端子31bは、固定接点13に導通した状態でモールド成型される。
【0041】
また、第3ケース部33は、第1ケース部22の下部に密接する矩形状の蓋部34と、該蓋部34の一端部及び他端部からそれぞれ上方に突出するように形成された一対の係合部35,35と、を有している。この係合部35,35には、それぞれ、第1ケース部22の凹部2d,2dに下方から滑り移動して係合凸部32,32に係合する係合穴部35a,35aが形成されている。蓋部34における両係合部35,35の間には、側面9b側の凹部2cに嵌合して段差を埋めるように突出する平板部36が形成されている。
【0042】
このような構成のタクティールスイッチ12にあっても、図4に示す組立て状態にて、図1〜図3で説明したタクティールスイッチ11と略々同様の機能を発揮する。そして、本タクティールスイッチ12では、第1ケース部22が、固定接点13,14及びコモン接点15にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する接続端子31a〜31dを有し、第2ケース部7及び第3ケース部33が、第1ケース部22がその対応する実装部18に実装された状態にて該第1ケース部22と該実装部18との間からの接続端子31a〜31dの露出を保護するカバー部を構成している。このため、接続端子がスイッチケースから外方に露出するような場合に比して、金属板等を用いて短絡障害を発生させるような不正行為を確実に防止することができる。
【0043】
また、本タクティールスイッチ12では、図4に示すように、矢印A方向と直交する矢印D方向に沿うように接続端子31a〜31dが第1ケース部22に設けられるので、実装部18の状況に応じて直立状態に実装できる構造を得ることができる。
【0044】
ところで、上述した本実施形態及び変形例のタクティールスイッチ11,12はいずれも、ボーナス出現確率(つまり出玉率)の設定変更機能を有するスロットマシン(回胴式遊技機)用の設定変更ボタンスイッチとして用いて好適である。このようなスロットマシンでは、全部で6段階の「設定」が用意されており、設定1から設定6に向かうにつれてボーナス出現確率が高く(即ち、出玉率が高く)なる。
【0045】
すなわち、スロットマシン40は、図6に示すように、箱状の筐体41と、筐体41の左側部に開閉自在に支持された前扉42と、を有している。筐体41の内部には、各種制御基板等を設置した制御系設置部43が上部に設けられ、回胴リール44a,44b,44cを有するリール装置44が制御系設置部43の下方に配置されている。更に筐体41の内部には、左側から順に、電源部45、メダルホッパ46、及びメダル収容箱47が配置されている。
【0046】
前扉42は、上下方向の中間部に、筐体41側に閉止された状態でリール装置44を視認可能にするために透明パネルが嵌め込まれた開口部50を有し、前面の最下部に、メダル受け皿51を有している。上記メダルホッパ46は、多数のメダルを収容すると共に、所定の契機でメダル受け皿51にメダルを放出する。またメダル収容箱47は、メダルホッパ46から落下した余剰メダルを収容する。
【0047】
電源部45は、上方から下方に向かって電源スイッチ48、設定スイッチ49、及び、タクティールスイッチ11又は12からなる設定変更ボタンスイッチを有している。例えば、電源スイッチ48の操作で主電源が投入される前に、設定スイッチ49の鍵穴にキー(図示せず)が差し込まれて回動操作されると、設定変更ボタンスイッチ(11又は12)による設定変更の準備がなされる。
【0048】
設定変更ボタンスイッチ(11又は12)は、前扉42を開放した際の最も奥側にて、該奥側に第2押しボタン6を向け、かつ第1押しボタン5を前側に向けた状態で実装されている。ここでいう電源部45の前面部が、前述した実装部18に相当する。この設定変更ボタンスイッチ(11又は12)を操作する場合、遊技店の係員が片手の2本の指を使い、親指で第2押しボタン6を押し込みつつ第1押しボタン5を人差し指で押し込むこと等により、設定を変更してボーナス出現確率を適正に決めることができる。また、設定変更ボタンスイッチ(11又は12)が、筐体41内の最も奥側に配置され、かつ該スイッチ(11又は12)の第2押しボタン6が、前扉42を正規の状態に開放しなければ操作し難い奥側に向いているため、たとえ不正行為者が遊技店係員等に発見されないように前扉42を僅かに開けた状態で設定変更ボタンスイッチ(11又は12)を不正に操作しようとしても、該操作は極めて困難なものとなる。
【0049】
なお、設定変更ボタンスイッチとしてタクティールスイッチ12を用いる場合には、電源部45の前面部に対する実装の向きが変わるが、例えば、図4に示した第1押しボタン5を電源部45の上方に向けると共に、図4に示した第2押しボタン6を電源部45の奥側に向けて実装することで、上述した配置が可能になる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態及び変形例におけるタクティールスイッチ11,12によると、第2押しボタン6の自由状態にて第1押しボタン5の押圧操作をロックし、かつ第2押しボタン6の矢印B方向への押圧操作状態にて第1押しボタン5を押圧操作し得るように構成したので、クリック感を得ながら押圧操作し得るタクティールスイッチ11,12でありながら、第2押しボタン6を押圧操作してからでなければ第1押しボタン5を操作することができない状況が提供できる。このため、例えば、本タクティールスイッチ11,12を設定変更ボタンスイッチとして用いる場合、不正行為者が針金等の治具を用いる等によって当該設定変更ボタンスイッチを不正に操作しようとしても、第2押しボタン6を押圧操作した状態を維持しつつ、これとは操作方向の異なる第1押しボタン5を押圧操作しなければならず、従って、設定変更ボタンスイッチの安易な誤作動を防止し、不正行為の実行を極めて有効に阻止することができる。
【0051】
すなわち、上述のタクティールスイッチ11,12を、ボーナス出現確率の設定を変更する機能を備えたスロットマシン40用の設定変更ボタンスイッチとして用いる場合、第2押しボタン6を押し込みつつ第1押しボタン5を押圧操作するという段階的操作を実行しなければ設定変更できないので、矢印B方向と矢印A方向という異なる方向に力を段階的に作用させる操作に起因して、針金等の治具を用いて行うような不正な遠隔操作を極めて困難化することができる。従って、不正発覚を恐れながら手早く作業を行いたい不正行為者にとっての不正行為を有効に抑止することができる。
【0052】
一方、遊技店の係員がスロットマシン40の前扉42を正規の状態に開放して設定を変更する場合には、片手の2本の指を使って、速やかに設定を変更操作することができる。また、従来構造のタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチに適用する場合には、必要に応じてプラスチック等からなる保護カバーを設け該保護カバーをいちいち開けなければ設定を変更できなかったが、本タクティールスイッチ11,12によれば、そのような保護カバーの設置を不要にすることが可能である。これにより、遊技店係員による設定変更の操作を、より迅速化させることができる。
【0053】
更に、上述のタクティールスイッチ11,12によれば、操作ロック部17a,19aに傾斜面17c,19cを設けた簡単な構成により、第2押しボタン6を矢印B方向に操作して第1押しボタン5を押圧操作した後に第2押しボタン6から手を離して開放するだけで、押し潰された可動接片3が復元する際の第1押しボタン5に対する付勢力の有無に拘わらず、該第1押しボタン5を操作前の状態に速やかに復帰させることができる。従って、可動接片3の復元力との合力により、第1押しボタン5の復帰を一層滑らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係る実施形態におけるタクティールスイッチの初期状態を示す側面断面図である。
【図2】本実施形態におけるタクティールスイッチの操作状態を示す側面断面図である。
【図3】本実施形態におけるタクティールスイッチの全体構成を示す分解斜視図である。
【図4】タクティールスイッチの変形例を示す全体斜視図である。
【図5】図4の変形例の全体構成を示す分解斜視図である。
【図6】本実施形態及び変形例のタクティールスイッチを設定変更ボタンスイッチとして用いたスロットマシンを前扉開放状態で示す正面図である。
【符号の説明】
【0055】
1,12 タクティールスイッチ
1,22 第1ケース部
3 可動接片
5 第1押しボタン
6 第2押しボタン
7 第2ケース部
11a〜11d 接続端子
13,14 第1接点(固定接点)
15 第2接点(コモン接点)
17a,19a 操作ロック部
17b,19b ロック解除部
17c,19c 傾斜面
18 実装部
27a,27b 凸部
30 カバー部
31a〜31d 接続端子
33 第3ケース部
40 回胴式遊技機(スロットマシン)
1,C2 スイッチケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチケース内に、互に絶縁状態にされた第1及び第2接点と、これら両接点上で押圧変形されて該両接点を導通状態と絶縁状態とに切り換える可動接片と、を備え、該可動接片の押圧変形時にクリック感を発してオン/オフ動作してなるタクティールスイッチにおいて、
前記スイッチケース内に、互に交差する第1及び第2方向にそれぞれ移動可能に支持された第1及び第2押しボタンを備え、
前記第1押しボタンは、前記第1方向への移動にて前記可動接片を押圧変形させて前記第1及び第2接点を導通状態と絶縁状態とに切り換え、
前記第2押しボタンは、初期位置に復帰可能に付勢力を与えられ、かつ該初期位置にて前記第1押しボタンの前記第1方向への移動を阻止する操作ロック部と、前記付勢力に抗して前記第2方向に移動したとき前記第1押しボタンの前記第1方向への移動を許容するロック解除部と、を有し、
前記第2押しボタンの自由状態にて前記第1押しボタンの押圧操作をロックし、かつ前記第2押しボタンの前記第2方向への押圧操作状態にて前記第1押しボタンを押圧操作し得るように構成した、
ことを特徴とするタクティールスイッチ。
【請求項2】
前記第1押しボタンは、前記第2押しボタンの前記操作ロック部に対向する位置に凸部を有し、
前記第2押しボタンは、前記ロック解除部により前記第1押しボタンの移動を許容した位置から前記初期位置に復帰する際に前記第1押しボタンの前記凸部を押し上げる方向に傾斜する傾斜面を前記操作ロック部に有してなる、
請求項1記載のタクティールスイッチ。
【請求項3】
前記スイッチケースは、前記第1及び第2接点を配置した第1ケース部と、該第1ケース部に装着される第2ケース部と、を有し、
前記第1ケース部は、前記第1及び第2接点にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子を有し、
前記第2ケース部は、前記第1ケース部がその対応する実装部に実装された状態にて該第1ケース部と該実装部との間からの前記接続端子の露出を保護するカバー部を有してなる、
請求項1又は2記載のタクティールスイッチ。
【請求項4】
前記複数の接続端子は、前記第1方向に沿うように前記第1ケース部に設けられてなる、
請求項3記載のタクティールスイッチ。
【請求項5】
前記スイッチケースは、前記第1及び第2接点を配置した第1ケース部と、該第1ケース部に互に反対の方向から装着される第2ケース部及び第3ケース部と、を有し、
前記第1ケース部は、前記第1及び第2接点にそれぞれ導通した状態で該第1ケース部外方に突出する複数の接続端子を有し、
前記第2及び第3ケース部は、前記第1ケース部がその対応する実装部に実装された状態にて該第1ケース部と該実装部との間からの前記接続端子の露出を保護するカバー部を構成してなる、
請求項1又は2記載のタクティールスイッチ。
【請求項6】
前記複数の接続端子は、前記第1方向と直交する方向に沿うように前記第1ケース部に設けられてなる、
請求項5記載のタクティールスイッチ。
【請求項7】
前記タクティールスイッチは、ボーナス出現確率を異ならせる設定変更機能を有する回胴式遊技機用の設定変更ボタンスイッチとして用いられてなる、
請求項1ないし6のいずれかに記載のタクティールスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−220345(P2007−220345A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−36606(P2006−36606)
【出願日】平成18年2月14日(2006.2.14)
【出願人】(390002543)株式会社フジソク (11)
【Fターム(参考)】